【課題】中芯材に天然木化粧板を折り曲げて貼着した木質系複合材の製造に際し、折曲げの際に割れが生じ難く、かつ表面が硬い木質系複合材の製造方法、木質系複合材の製造に用いられる天然木化粧板の製造方法、及び木質系複合材を提供する。
【解決手段】天然木化粧板の表面側に、軟質塗料を塗布して、軟質塗膜を形成し(ステップS5,S6)、軟質塗膜の上面に、硬質塗料を塗布して、乾燥後の塗膜表面硬度が軟質塗膜より高い硬質塗膜を形成し(ステップS8)、天然木化粧板の裏面側の折り曲げる部分に折曲げ溝を形成し(ステップS11)、天然木化粧板を折曲げ溝が内側になるように、折曲げ溝に沿って折り曲げて(ステップS12)、天然木化粧板の裏側を中芯材の貼着する(ステップS13)。
【背景技術】
【0002】
従来からカウンターボード、階段の踏み板等の造作材、またテーブルトップ、タンス等の家具材として、様々な木質系複合材が用いられている。例えば、MDF(中密度繊維板)、ラワン合板等の材質のボードを中芯材とし、中芯材に、天然木化粧板を貼着した木質系複合材を挙げることができる。天然の木材を用いた天然木化粧板を用いて製造された木質系複合材は、表面に塗装を施すことにより天然木の木目が鮮やかに浮かび上がるため、化粧材として人工シートを表面に貼着した複合材と比較して、高級感を演出することができるという利点がある。
【0003】
天然木化粧板を用いた木質系複合材は、例えば、中芯材の上面及び下面に、薄くスライスした突板を貼着し、中芯材の側面にエッジテープを貼着することで製造することができる。しかしながら、側面にエッジテープを貼着した木質系複合材では、仕上がり後の製品は、縁(角部)が目立つため美しさが損なわれるという問題があった。
【0004】
そこで、天然木化粧板を折り曲げる折曲げ加工を施し、折り曲げた天然木化粧板を、中芯材の角部を覆うように貼着することで、中芯材の角部が外に出ないようにする製造方法が提案された。ところが、加工が容易な人工シートとは異なり、天然木化粧板は、折り曲げ加工を施した場合、折り曲げられる角部の表面の塗装が割れるという問題が生じた。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1では、化粧単板に、軟質のホットメルト接着剤を塗布することにより、折り曲げ加工を施した場合においても、塗装の割れを抑制することができる木質材の製造方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている木質材の製造方法では、軟質の塗料(接着剤)を表面に塗布して仕上げを行うため、表面が軟らかく傷つき易いという問題がある。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、軟質塗料を塗布した軟質塗膜の上に、硬質塗膜を形成することにより、折り曲げ加工を施した場合の塗装の割れを抑制しながらも、表面の硬度を高めることが可能な木質系複合材の製造方法の提供を目的とする。
【0009】
また、本発明は、本発明の木質系複合材の製造に用いられる天然木化粧板の製造方法の提供を他の目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、本発明の木質系複合材の製造方法にて製造された木質系複合材の提供を更に他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために、本願記載の木質系複合材の製造方法は、天然木化粧板を折り曲げて中芯材に貼着した木質系複合材の製造方法であって、前記天然木化粧板は、天然木の単板の一面側に、軟質塗料を塗布して、軟質塗膜を形成する軟質塗料塗布工程と、前記軟質塗膜の表面に、硬質塗料を塗布して、乾燥後の塗膜表面強度が前記軟質塗膜より高い硬質塗膜を形成する硬質塗料塗布工程とを含む工程を行って製造され、前記天然木化粧板を折り曲げて、一面側が表側となるように中芯材に貼着する折曲げ貼着工程を行うことを特徴とする。
【0012】
また、本願記載の木質系複合材の製造方法は、前記天然木化粧板は、前記単板の他面側に下地板が貼着されており、前記下地板側から前記単板の途中まで達する折曲げ溝を形成する溝形成工程を含む工程により製造され、前記折曲げ貼着工程は、前記溝形成工程にて形成された折曲げ溝に沿って前記天然木化粧板を折り曲げることを特徴とする。
【0013】
また、本願記載の木質系複合材の製造方法は、前記硬質塗料塗布工程により形成された硬質塗膜の乾燥後の塗膜表面強度は、鉛筆硬度でH以上であることを特徴とする。
【0014】
本願記載の天然木化粧板の製造方法は、中芯材に折り曲げて貼着される天然木化粧板の製造方法であって、天然木の単板の一面側に、軟質塗料を塗布して、軟質塗膜を形成する軟質塗料塗布工程と、前記軟質塗膜の表面に、硬質塗料を塗布して、乾燥後の塗膜表面強度が前記軟質塗膜より高い硬質塗膜を形成する硬質塗料塗布工程とを行うことを特徴とする。
【0015】
本願記載の木質系複合材は、隣り合う複数の面にて形成された角部を有する中芯材と、前記中芯材の隣り合う複数の面に渡って貼着された天然木化粧板とを備える木質系複合材であって、前記天然木化粧板は、天然木の単板と、前記単板の一面側に形成された軟質塗膜と、前記軟質塗膜の表面に形成され、塗膜表面強度が前記軟質塗膜より高い硬質塗膜とを有し、前記中芯材の角部に対応する位置で折り曲げられ、一面側が表側となるように前記中芯材の隣り合う複数の面に渡って貼着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る木質系複合材の製造方法、天然木化粧板の製造方法、及び木質系複合材は、軟質塗膜の上に硬質塗膜を形成することにより、折り曲げ加工を施した場合の塗装の割れを抑制しながらも、表面の硬度を高めることが可能である等、優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0019】
本願では、中芯材に貼着する天然木化粧板を製造し、さらに、製造した天然木化粧板を中芯材に折り曲げて貼着することにより、木質系複合材を製造する方法について開示する。中芯材としては、MDF(中密度繊維板)、ラワン合板等の材質のボードを用いることが可能であり、本実施形態では、中芯材としてMDFを用いた例について説明する。天然木化粧板とは、天然木材を用いた単板を下地板に対して意匠的に貼着し、更に塗装を施した板材を示している。本実施形態では、スギ、トチ、クリ等の天然木材を厚さ0.2〜0.5mm程度に薄切(スライス)した突板を単板とし、このような突板(単板)を用いた突板合板を天然木化粧板とする例について説明する。なお、単板は、突板に限らず、天然木材をロータリーレース等の工作機械で桂剥きしたロータリー単板等の単板を用いることも可能である。ここでいう木質系複合材とは、木材を用いた造作材、家具材等の材料である。本願記載の製造方法により製造した木質系複合材は、カウンターボード、階段の踏み板、手摺、リフォーム材等の造作材として用いられる。また、本願記載の製造方法により製造した木質系複合材は、テーブルトップ、タンス等の家具材として用いられる。
【0020】
<製造方法>
天然木化粧板の製造方法及び天然木化粧板を用いた木質系複合材の製造方法について説明する。
図1は、本願記載の木質系複合材の製造方法の各工程の一例を示すフローチャートである。先ず、天然木化粧板(以降の説明では、単に「化粧板」と称する場合もある。)の製造を行う。薄板状をなすMDF、ベニヤ合板、不燃材(ダイライト等)等の板材を化粧板の下地板とし、ラミネータ等の工作機械により、下地板の裏面に対して紙、不織布等の材質のシート材を防湿シートとして裏貼りする下地板裏貼り工程を行う(ステップS1)。下地板には、厚さ2〜10mm程度、例えば、厚さ3mmの基材が用いられる。ステップS1において、下地板の裏面とは、塗装が施されて露出する表面(一面)側の反対側の面であり、中芯材に貼着される側の面(他面)を示している。
【0021】
次に、防湿シートを裏貼りした下地板の表面に対し、接着剤を塗布し、不織布を貼り付ける下地板不織布貼り工程を行う(ステップS2)。ステップS2では、突板の割れ防止を目的として、不織布が貼り付けられる。
【0022】
次に、不織布を貼り付けた下地板の表面に対し、不織布の上から突板を張り付ける突板貼り工程を行う(ステップS3)。ステップS3では、例えば、下地板に貼り付けた不織布の上に接着剤を塗布し、100℃×60秒等の条件によるホットメルト法により、突板を下地板に貼り付ける工程を行う。突板には、簿切したスギ、トチ、クリ等の木材が用いられる。
【0023】
次に、下地板に貼り付けられた突板の表面を、ワイドベルトサンダー等の工作機械により研磨する研磨工程を行う(ステップS4)。そして、研磨された突板の表面には必要に応じて下地の着色を行い、更に80℃程度の温風を吹き付けて乾燥処理を行う。
【0024】
次に、研磨された突板の表面に、軟質塗料を塗布して軟質塗膜を形成する軟質塗料塗布工程を行う(ステップS5,S6)。軟質塗料塗布工程は、フローコーター等の工作機械による下塗り(ステップS5)、及びロールコーター等の工作機械による中塗り(ステップS6)の2回に分けて行い、塗布後、乾燥棚にて24時間程度の乾燥処理を行う。軟質塗膜を形成することにより、小さい曲率半径で化粧板を折り曲げた場合であっても、突板に割れが生じることを防止し、しかも塗膜自体の割れについても防止することができる。
【0025】
下塗り用の軟質塗料としては、例えば、TA22−068F;6000重量部、塗料用ポリイソシアネート{日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネート(登録商標)L」(商品名)};800重量部、二液型ウレタンシーラー{サンユーペイント株式会社製「NTX−GR−920」)(商品名)をA液:B液:シンナー=1:1:0.4〜0.6で配合};5000部、及び硬化触媒{日東化成株式会社製「ネオスタン(登録商標)U」(商品名)};110重量部を混合し、岩田粘度カップNK−2(アネスト岩田株式会社製)にて測定した粘度の指標が45秒となるように調整した薬剤を使用することができる。
【0026】
中塗り用の軟質塗料としては、例えば、ポリウレタン樹脂{日立化成ポリマー株式会社製「TA22−068F」(商品名)[ポリウレタン樹脂:50重量%、酢酸ブチル:25重量%、メチルエチルケトン:25重量%]};3000重量部、アルキド樹脂{日立化成ポリマー株式会社製「テスラック(登録商標)2012−60B」(商品名)[アルキド樹脂:60重量%、酢酸ブチル:40重量%]};5000重量部、塗料用ポリイソシアネート{日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネート(登録商標)L」(商品名)};2200重量部、二液型ウレタンシーラー、及び硬化触媒{日東化成株式会社製「ネオスタン(登録商標)U−100」(商品名)};100重量部を混合し、岩田粘度カップNK−2(アネスト岩田株式会社製)にて測定した粘度の指標が45秒となるように調整した薬剤を使用することができる。
【0027】
次に、突板の表面に形成された軟質塗膜の上面を、ワイドベルトサンダー等の工作機械により研磨する研磨工程を行う(ステップS7)。ステップS7の研磨は、この後に塗布する硬質塗料にて形成される硬質塗膜と、軟質塗膜との密着性を向上させるための工程であり、省略することも可能である。また、ステップS6の軟質塗料の中塗りは、研磨用の塗膜を形成するための工程であるため、ステップS7の研磨工程を省略する場合、ステップS6の中塗りをも省略して、軟質塗料塗布工程としては、ステップS5の下塗りのみの工程としても良い。
【0028】
次に、研磨された軟質塗膜の上面に、フローコーター等の工作機械により硬質塗料を塗布して硬質塗膜を形成する硬質塗料塗布工程を行う(ステップS8)。硬質塗料を塗布後、乾燥棚にて48時間程度の乾燥処理を行う。なお、乾燥室の温度が10℃以下の場合、温風により強制乾燥が行われる。乾燥後の硬質塗膜は、乾燥後の軟質塗膜より、塗膜表面強度が高い塗膜となる。ここでいう塗膜表面強度とは、JISK5600−5−4として規定される鉛筆硬度試験(鉛筆引っかき試験)にて測定した鉛筆硬度である。硬質塗膜を形成することにより、表面の硬度を高めることが可能である。また、硬質塗膜の下に軟質塗膜が形成されているため、化粧板を折り曲げた場合であっても、硬質塗膜に割れが生じることを防止している。
【0029】
硬質塗料としては、例えば、二液型ウレタン樹脂塗料{サンユーペイント株式会社製「NTX−W−12−575」(商品名)をA液:B液:シンナー=1:1:0.1〜0.3(重量比)で配合}を、岩田粘度カップNK−2(アネスト岩田株式会社製)にて測定した粘度の指標が45秒となるように調整した薬剤を使用することができる。
【0030】
次に、突板の表面に形成された硬質塗膜の上面を、ワイドベルトサンダー等の工作機械により400番程度の細かさで研磨する研磨工程を行う(ステップS9)。
【0031】
次に、研磨された硬質塗膜の上面に、ロールコーター等の工作機械により上塗り(仕上げ)剤を塗布する上塗り(仕上げ)工程を行う(ステップS10)。上塗り剤を塗布後、乾燥棚にて乾燥処理を行う。
【0032】
上塗り剤としては、例えば、ウレタン塗料{サンユーペイント株式会社製「セラウッド(登録商標)ハウスCWH−80」(商品名)}を使用することができる。なお、セラウッドハウスCWH−80は、主剤及び硬化剤を混合して用いる液型ウレタン塗料である。
【0033】
上塗り剤を塗布後、乾燥棚にて乾燥処理を行い、突板を加工した化粧板が完成する。このようにして化粧板の製造が行われる。
【0034】
次に、下地板が貼着されている突板の裏面側を、Vカットマシン等の工作機械により切削加工し、突板の途中まで達するV字状の折曲げ溝を形成する切削加工工程(溝形成工程)を行う(ステップS11)。折曲げ溝は、中芯材に貼着すべく折り曲げる際に、折り曲げにより形成される角部の内側、所謂谷折りの位置に形成される。また、V字の角度及び深さは、折曲げ角度及び化粧板の厚さに基づいて決定される。さらに、折曲げ溝が突板に達しない場合、折曲げ加工の際に突板に割れが生じやすくなり、折曲げ溝が突板を超えると、縁部の意匠性が損なわれる。
【0035】
次に、切削加工した化粧板を、折曲げ溝に沿って折り曲げて(ステップS12)、化粧板の裏面を中芯材の表面に貼着する(ステップS13)、折曲げ貼着工程を行う。なお、折曲げ貼着工程に際し、中芯材の表面又は化粧板の裏面に接着剤が塗布される。そして、接着剤が硬化後、必要な仕上げ処理を行い、化粧板が完成する。このようにして天然木化粧板が製造される。
【0036】
化粧板から木質系複合材を製造する各工程について更に説明する。
図2は、本願記載の木質系複合材の製造方法において、切削加工後の天然木化粧板の一例を模式的に示す説明図である。
図2(a)は、化粧板1の外観を示す概略斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)中に破線で示す化粧板1の折曲げ溝1aを中心に拡大して模式的に示す断面図である。
図2(a)に示すように、化粧板1の上面は突板の木目が現れており、下面には複数の折曲げ溝1aが形成されている。
【0037】
図2(a)中、点線は化粧板1の折り曲げる位置を示しており、折曲げ位置の下方に折曲げ溝1aが形成されている。折曲げ位置は、直方体状をなす中芯材に貼り付けた場合に角部となる箇所であり、90度に1回折り曲げて角部に対応させる箇所と、それぞれ45度に2回折り曲げて角部に対応させる箇所とがある。1回の折曲げに対応する箇所には、V字の先端が90度の角度をなす1本の折曲げ溝1aが切削により凹設されており、2回の折曲げに対応する箇所には、それぞれ45度の角度をなす2本の折曲げ溝1aが平行して凹設されている。
【0038】
図2(b)は、折曲げ溝1aの周辺を模式的に示しており、下面側から上面側へかけて、不織布10、下地板11、不織布12、突板13、軟質塗膜14、硬質塗膜15及び上塗り塗膜16が積層している。なお、
図2(b)において層状に示した、不織布10、下地板11、不織布12、突板13、軟質塗膜14、硬質塗膜15及び上塗り塗膜16の厚さは、視認し易くするために適宜比率を変えて模式的に示したものであり、実際の層の厚さの比率とは異なる。折曲げ溝1aの先端は、突板13の途中まで達しており、化粧板1を折り曲げた場合に、突板13も折り曲げられる。突板13を折り曲げた場合、突板13に割れが生じる虞があるが、軟質塗膜14により、割れの発生が抑制される。また、軟質塗膜14に積層して硬質塗膜15が形成されているため、化粧板1の表面の硬度が向上している。なお、硬質塗膜15を形成せずに軟質塗膜14のみとした場合、表面の硬度が低くなる。また、軟質塗膜14を形成せずに硬質塗膜15のみとした場合、突板13を折り曲げた場合に、硬質塗膜15に割れが生じ易くなる。
【0039】
図3は、本願記載の木質系複合材の製造方法において、折曲げ貼着工程の一例を模式的に示す概略斜視図であり、
図4は、本願記載の木質系複合材の製造方法において、完成した木質系複合材の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図3は、化粧板1を折り曲げて、合板を用いた中芯材2の一側面(
図3に向かって左側の側面)、上面、一側面と相対する他側面、及び下面のそれぞれの表面に貼着する状況を示している。中芯材2の一側面の上方と上面とには化粧板1が既に貼着され、他側面、下面及び一側面の下方に対して化粧板1が貼着されようとしている状況である。
図4は、化粧板1を貼着し終わった状況を示しており、中芯材2の一側面、上面、他側面及び下面からなる中芯材2の周囲を化粧板1が周回して覆っている。
図3及び
図4に示す例では、中芯材2の一側面側の途中で、化粧板1の一端及び他端が相対する境目が生じるように折曲げ貼着される。また、中芯材2の一側面側の上下端となる角部では、化粧板1は90度に1回折り曲げられており、他側面側の上下端となる角部では、化粧板1は45度に2回折り曲げられている。なお、化粧板1の表面(
図2に示す上面)に現れる木目は、木材を加工した一枚の突板の天然のものであり、化粧板1を折り曲げた角部においても、木目に境目が生じること無く連続した木目として現れ、美しい仕上がりとなる。したがって、中芯材2の面毎に、それぞれ異なる突板、木目シート等の化粧材を貼着した場合と比べ、本願記載の木質系複合材は、高級感のある優れた意匠性を感得させることができる。
【0040】
<実施例>
次に、本願記載の天然木化粧板の製造方法に係る実施例について説明する。下記表1は、試験用に作成した天然木化粧板の実施例1及び実施例2、並びに比較例についての塗膜の条件及び試験結果を示している。
【0042】
実施例1、実施例2及び比較例において、下地板は、MDFを使用し、突板は、スギ材を簿切したものを使用した。表1において、「軟質塗料(下塗り)」及び「軟質塗料(中塗り)」の項目は、
図1中、ステップS5及びS6として説明した軟質塗料塗布工程における下塗り及び中塗りの条件を示している。軟質塗料塗布工程は全て同じ条件としており、1尺角(1尺
2 )の表面に対して、それぞれ14gの軟質塗料の下塗り、及び3gの軟質塗料の中塗りを行った。下塗りに使用した軟質塗料は、TA22−068F/塗料用ポリイソシアネート/二液型ウレタンシーラー/硬化触媒を、6000重量部/800重量部/5000重量部/110重量部で混合し、岩田粘度カップNK−5にて測定した粘度の指標が45秒となるように調整した薬剤である。中塗りに使用した軟質塗料は、TA22−068F/TL2012−60B/塗料用ポリイソシアネート/二液型ウレタンシーラー/硬化触媒を、3000重量部/5000重量部/2200重量部/2600重量部で混合し、岩田粘度カップNK−5にて測定した粘度の指標が45秒となるように調整した薬剤である。なお、各薬剤は、
図1を用いて説明した製造方法中で例示した薬剤を用いた。
【0043】
表1において、「硬質塗料」の項目は、
図1中、ステップS8として説明した硬質塗料塗布工程における条件を示している。硬質塗料は、1尺角の表面に対し、実施例1では30g、実施例2では14gの塗布を行った。なお、比較例には硬質塗料の塗布を行っていない。使用した硬質塗料は、二液型ウレタン樹脂塗料{A液:B液:シンナー=1:1:0.2(重量比)で配合}を、岩田粘度カップNK−2にて測定した粘度の指標が45秒となるように調整した薬剤である。なお、薬剤は、
図1を用いて説明した製造方法中で例示した薬剤を用いた。
【0044】
表1において、「上塗り」の項目は、
図1中、ステップS10として説明した上塗り工程における条件を示している。上塗り工程は全て同じ条件としており、1尺角の表面に対して、それぞれ2gの塗料の上塗りを行った。上塗りに使用した塗料は、ウレタン塗料(セラウッド)である。なお、塗料は、
図1を用いて説明した製造方法中で例示した薬剤を用いた。
【0045】
実施例1、実施例2及び比較例において、乾燥条件等の他の条件は全て同じとした。
【0046】
表1において、「鉛筆硬度」の項目は、塗膜表面強度の指標として用いた鉛筆強度試験の結果を示している。なお、鉛筆強度試験は、JISK5600−5−4として規定される試験方法に即して行った。表1に示すように、実施例1は「3H」、実施例2は「2H」、比較例は「B」であった。製品としては、「3B」以上が必要であり、この基準によれば、実施例1、実施例2及び比較例の全てが、その基準を満たしている。そして、硬質塗膜を形成することにより、実施例1及び実施例2のいずれも「H」以上という更に優れた結果を得ることができた。また、割れを抑えるためには、「2H」以下とすることが好ましく、「2H」以下となった実施例1、実施例2及び比較例のいずれにおいても割れは生じなかった。
【0047】
上記塗膜表面強度(鉛筆硬度)以外に、塗膜付着性試験(JISK5600−5−6:クロスカット法)、耐溶剤性試験(シンナー、アルカリ、酸;溶剤を滴下、時計皿被覆6時間の後、表面状態を観察)、汚染試験(マジック、クレヨン、インク;筆記による汚染後、エタノール拭き取りを行い、残った汚染の程度を確認)等の各種試験を行った結果、実施例1、実施例2及び比較例の全てで良好な結果が得られた。
【0048】
前記実施形態は、本発明の無数に存在する実施例の一部を開示したに過ぎず、目的、用途、仕様、設計等の様々な要因を加味して適宜設計することが可能である。
【0049】
例えば、前記実施形態では、中芯材の角部に対して、1本又は2本の折曲げ溝を凹設して折り曲げる形態を示したが、3本以上の折曲げ溝を凹設する等、様々な形態に展開することが可能である
【0050】
また、例えば、前記実施形態では、中芯材の一側面、上面、他側面及び下面からなる中芯材の周囲を周回して天然木化粧板で覆う形態を示したが、本発明はこれに限らず、中芯材の三面、二面等の周囲の一部を天然木化粧板で覆う等、様々な形態に展開することが可能である。
【0051】
さらに、前記実施形態では、軟質塗料塗布工程及び硬質塗料塗布工程の後に、溝形成工程を行う形態を示したが、本発明はこれに限らず、溝形成工程を行った後に、軟質塗料塗布工程及び硬質塗料塗布工程を行う等、様々な形態に展開することが可能である。