(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-133196(P2017-133196A)
(43)【公開日】2017年8月3日
(54)【発明の名称】アスファルトコンクリート舗装の切削方法及び切削装置
(51)【国際特許分類】
E01C 23/12 20060101AFI20170707BHJP
【FI】
E01C23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-12368(P2016-12368)
(22)【出願日】2016年1月26日
(71)【出願人】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080724
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 久喜
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(74)【代理人】
【識別番号】100192692
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】緒方 辰男
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA03
2D053AA22
2D053AB03
2D053BA09
2D053BA10
2D053DA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】古くなった舗装路を切削する場合、切削する舗装の下の床版上面が平坦ではなく、切削する橋面舗装の厚さが一定ではないだけでなく、幅方向にも違いがあることが多い。従来の切削機では、実際の舗装厚みが不明なため、橋面舗装の全厚を切削しようとすると、舗装厚さよりも深く切削し、床版上面を切削し床版を損傷させる恐れがある。
【解決手段】切削すべきアスファルトコンクリート舗装路上を移動しつつ、舗装に信号波を照射し、その信号波の反射波を受信し、照射した信号波と受信した反射波から舗装の厚みを求め、求めた厚みに従って、切削具8の切削深さを制御する切削方法であって、切削具は独立して制御可能な複数用いる方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削すべきアスファルトコンクリート舗装路上を移動しつつ、該舗装に信号波を照射し、その信号波の反射波を受信し、該照射した信号波と受信した反射波から該舗装の厚みを求め、該求めた厚みに従って、切削具の切削深さを制御する切削方法であって、該切削具は独立して制御可能な複数用いることを特徴とするアスファルトコンクリート舗装の切削方法。
【請求項2】
該反射波によって、切削すべきアスファルトコンクリート舗装の幅も検知し、切削する幅も制御するものである請求項1記載のアスファルトコンクリート舗装の切削方法。
【請求項3】
信号波を発生する信号照射機、該信号波の反射波を受信する受信機、該受信した反射波を解析する解析部、該解析部からの信号により切削深さが調整できる切削具を有するものであって、該切削具は独立して深さ調整できるものが複数設けられていることを特徴とするアスファルトコンクリート舗装の切削装置。
【請求項4】
該切削具は、独立して幅方向にも制御できるものである請求項3記載のアスファルトコンクリート舗装の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトコンクリート舗装の切削方法及び切削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路や跨道橋等の車両用の道路橋では、一般に、橋面舗装として床版上にアスファルトコンクリート舗装が施されている。そして、車両の通行や経年により、この橋面舗装が劣化した場合は、路面切削機によってアスファルトコンクリートを切削、除去し、再度新たなアスファルトコンクリートが舗設されている。
【0003】
このような切削機としては、特許文献1に記載のような装置が知られている。この装置は、舗装体を切削する切削刃を有する回転ドラムが上下に位置を調整できるものである。これによって、適切に切削刃の深さ調整ができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−23755
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、切削する舗装の下の床版上面が平坦ではなく、切削する橋面舗装の厚さが一定ではないだけでなく、幅方向にも違いがあることが多い。上記した特許文献1では、実際の舗装厚みが不明なため、橋面舗装の全厚を切削しようとすると、舗装厚さよりも深く切削し、床版上面を切削し床版を損傷させる恐れがある。誤って床版を損傷した場合には、床版厚さが不足したり、床版上面に切削による衝撃のために微細なひび割れが生じ、床版の耐久性を大幅に低下させることとなる。
また、床版の幅員方向端部には縁石や地覆があり、端部まで橋面舗装を切削するためには、切削機を縁石等に極限まで近接させて切削する必要があり、高度な操作技術が必要であり容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明切削方法及び切削装置を完成したものであり、その特徴とするところは、切削方法にあっては、切削すべきアスファルトコンクリート舗装路上を移動しつつ、該舗装に信号波を照射し、その信号波の反射波を受信し、該照射した信号波と受信した反射波から該舗装の厚みを求め、該求めた厚みに従って、切削具の切削深さを制御する切削方法であって、該切削具は独立して制御可能な複数用いる点にあり、切削装置にあっては、信号波を発生する信号照射機、該信号波の反射波を受信する受信機、該受信した反射波を解析する解析部、該解析部からの信号により切削深さが調整できる切削具を有するものであって、該切削具は独立して深さ調整できる複数設けられている点にある。
【0007】
ここでいうアスファルトコンクリート舗装は、限定はしないが、アスファルト層の下層面が、金属板、コンクリート層、鉄筋コンクリート床版、その他比較的平滑な面を有する舗装路が好適である。これは後述する信号波の反射を検出するためである。下面が平滑な例として、橋梁等の鋼床版、コンポジット舗装のコンクリート層等であるが特には限定しない。
場所は、橋梁、地面、トンネル内その他どのような場所でもよい。
【0008】
ここでいう信号波とは、電磁波、超音波、弾性波等の波であって、アスファルトコンクリート層を通過し、上記平滑面で反射するものであればよい。弾性波とは、地震波のようなものである。
【0009】
照射した信号波と受信した反射波から該舗装の厚みを求める。これは公知の方法でよく、特別なものである必要はない。例えば、特許文献1のような方法である。
アスファルトコンクリート層は通過し、その下の層で反射するような信号波を用いる方法等がある。
【0010】
方法としては、道路の長手方向に照射装置、受信装置が進行しながら、その幅方向全体にわたって、その深さを測定していくものである。よって、幅方向をX座標、進行方向をY座標とすると、すべてのXY点において舗装深さが求められるということである。勿論、近似的な曲線や折れ線で表してもよい。
この信号波の照射、受信は1つの装置で行ってもし複数でもよい。
【0011】
この信号波による測定は、厚みが必須であるが、幅も測定してもよい。幅は、前記した舗装路の長手方向に対して直角の方向である。
【0012】
切削具とは、アスファルトコンクリート舗装を回転によって除去するものであり、これ自体は公知のものでもよい。例えば、舗装路の幅方向に回転軸を有し、回転体の周囲に、研磨具が設けられたものである。研磨具は、金属刃、金属突起、セラミック粒子等である。また、舗装路の表面に対して垂直な回転軸を持ったもので、その下端部に回転切削部を有するものでもよい。
この切削具は当然上下に制御可能である。回転や上下動は、電気モーター、油圧、空気(ニューマチック)等公知のものでよい。
【0013】
本発明では、この切削具を複数用いるのがポイントである。勿論、それらは独立して上下動を制御できるものである。回転についても独立して制御するようにしてもよい。
【0014】
本発明方法を簡単に説明すると、切削すべきアスファルトコンクリート舗装路を進みながら、その幅全体(又は一部)に渡って、そのアスファルトコンクリートの厚みを測定し、それに従って掘削具を個々に制御し、切削していくのである。切削は、単に舗装部を切り離すだけでも、切り離した後除去してもよい。
厚みを測定しながら切削するため、舗装部分のみを正確に切削することができる。
【0015】
次に本発明切削装置について説明する。
上記説明した方法と同じ語は同じ用語として使用する。
信号照射機とは、信号波を照射するもので電磁波でも、超音波でも弾性波でも、それぞれの公知の発生機でよい。受信機も同様である。
【0016】
解析部とは、発生機及び受信機からのデータによって、アスファルトコンクリート層の厚みを計算する演算部であり、通常はコンピューターである。この解析部から後述する切削具を制御する。その上下高さや、必要ならば回転数である。また、幅方向にも制御してもよい。
【0017】
切削具は、アスファルトコンクリートを切削する強度を有する粒子や刃、突起等を表面に有する回転体である。上記方法において説明した通り、回転軸の方向は舗装路に対して平行でも垂直でも、傾斜を持っていても構わない。
形状的には、ドラムタイプ、円盤状のもの(回転の周囲端部が切削部位になっているもの)、円盤状で側面に研磨体が固着されたもの等、どのようなものでもよい。
この切削具自体は、公知のものでもよい。
【0018】
さらに、本発明ではこの切削具を複数用いるのがポイントである。複数の切削具はここに独立して制御可能である。上下方向への移動を制御できる。また、回転数や幅方向への制御も可能でもよい。
【0019】
複数の切削具は、幅方向に一列に並べても、幅方向に一部重複するように並べてもよい。一部重複するようにするのは、一回の走行で全体を切削できるようにするためである。
【0020】
本発明切削装置の本体は、公知の切削装置と同様であり、舗装路上を走行でき、切削具等が積載できればよい。運転者が乗車して運転操作するタイプであっても、運転者が乗らないタイプでもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明には次のような効果がある。
(1) 厚みを測定しながら、切削するため手間が省ける。
(2) 切削具が複数あり、測定した厚みに対応して、独立して切削深さが制御できるため、深く切削してコンクリート層や鋼床版等の下方部材を損傷することが少ない。
(3) 完全自動化も可能であり、操作者は切削装置を車のように運転するだけでもできるようになる。
(4) さらには、無人化運転も考えられる。
(5) 幅方向にも制御するものでは、舗装路の側面の縁石等にも損傷を与えることが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明切削装置1の1例を示す側面図である。
【
図3】本発明に使用できる切削具の他の例を示す斜視図である。
【
図4】本発明切削装置の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下図面に示す実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明切削装置1の1例を示す概略側面図である。この例のものは、運転者がハンドル2の前に乗って操作する車両タイプである。場所はコンクリート床版であり、床版3の上にアスファルトコンクリート層4がある部分である。先端部下方に、電磁波照射装置5及び受信機6が設けられている。これらによってアスファルトコンクリート層の厚みが測定される。さらに、舗装路自体の表面位置(高さ)を測定するための舗装上面位置計測装置7も設けられている。この舗装上面位置計測装置7も同様に電磁波を使用するものでも、表面までの距離を測定するだけであるため、より簡単な方法、例えば超音波方式等でもよい。
舗装路の上面位置装置は、前記した電磁波照射装置5と受信機6が兼ねてもよい。
【0025】
この例に、舗装端計測装置を別途設けて、それにしたがって、切削具を幅方向に制御してもよい。しかし、電磁波照射装置と受信機がそれも兼ねてもよい。
【0026】
これらの測定部より後方に、切削具8が複数設けられている。
図1では2つ見えているが、実際にはこの例では3つである。勿論、より多数、例えば3〜6個等でもよい。
この切削装置は、前方(この図では右方向)に進みながら、厚みを測定し、そのデータから切削具をここに制御しつつ切削するものである。
【0027】
図2は、
図1の例の切削具8の斜視図である。この図のように、進行方向に切削残りがないように、横1列ではなく、互い違いに一部進行方向に重複するように配置されている。
この例の切削具8は、回転軸9が路面に略平行である。この軸に切削突起10が多数設けた回転体11を取り付けている。そして、この回転体11が上下するように制御される。
本体内部にコンピューター(図示せず)が設けられ、電磁波のデータによって、切削具8を上下するように制御する。
【0028】
図3は、本発明に使用できる切削具の他の例を示す斜視図である。この例では、回転軸が舗装面と垂直であり、円錐台状の回転体12の下端部に切削突起10が設けられている。この例でも、切削具8は多数設けて、進行方向に切削されない舗装部分が残らないようにしている。
【0029】
図4は、本発明切削装置21の他の例であり、操作する者が乗らないタイプである。ハンドル22を持って、歩いて操作するものである。先端部下方に、舗装厚さ計測装置23(電磁波照射装置及び受信機)が設けられている。これらによってアスファルトコンクリート層の厚みが測定される。さらに、舗装路自体の表面位置(高さ)を測定するための舗装上面位置計測装置24も設けられている。
【0030】
この例では、切削具25は回転円盤状(配管を切断する回転カッターのようなタイプ)であり、左右に設けられている。要するにこのタイプは、切れ目を入れていくものである。
【符号の説明】
【0031】
1 切削装置
2 ハンドル
3 橋梁床版
4 舗装体
5 電磁波照射装置
6 受信機
7 舗装上面位置計測装置
8 切削具
9 回転軸
10 切削突起
11 回転体
12 回転体
21 切削装置
22 ハンドル
23 舗装厚さ計測装置
24 舗装上面位置計測装置
25 円盤状切削具