【課題】保冷庫の冷却のための電力を制御することにより、電力の基本料金の設定に用いられる一定期間内における消費電力を抑制しながらも、保冷庫内の温度を所定温度に維持する。
【解決手段】保冷庫40−1内に保冷材45を配置するとともに、保冷庫40−1及び負荷40−2〜40−nからなる負荷群のデマンド電力測定期間内における総デマンド電力の累計値が電力ピーク値を超えると判断した場合に、そのデマンド電力測定期間内において所定時間だけ保冷庫40−1に対する冷却のための電力の供給を停止する。
冷却機を備え、該冷却機によって内部が所定温度以下に冷却され、前記所定温度近傍以下に融点を有する保冷材が配置される保冷庫の前記冷却のための電力を制御する保冷庫電力制御システムであって、
前記保冷庫を含む負荷群の総デマンド電力を測定する総デマンド電力測定部と、
前記測定された総デマンド電力を用いて、所定の測定期間内における総デマンド電力の累計値が目標値を超えるかどうかを判断する判断部と、
前記負荷群から当該負荷の状況情報を取得する情報取得部と、
前記負荷群への電力供給を制御する電力供給制御部と、
時間を計測するタイマ部とを有し、
前記電力供給制御部は、前記判断部にて前記測定期間内における総デマンド電力の累計値が前記目標値を超えると判断された場合、前記タイマ部において当該測定期間内にて計測される所定時間だけ、前記保冷庫への前記冷却のための電力の供給を停止する、保冷庫電力制御システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、工場や商業ビル、病院、ホテル等の電力の大口需要家については、例えば30分といった一定期間毎の消費電力が測定され、この一定期間毎の消費電力のうち、例えば1年間といった所定期間において最も大きな消費電力となる電力ピーク値に基づいて電力の基本料金が設定されている。そのため、大口需要家においては、一定期間毎の消費電力を抑制することで電力料金を安くしようとしている。
【0006】
しかしながら、食品等を収容する保冷庫においては、上述したように、収容された食品等を低温で保管することが要求されるため、食品等の品質劣化の可能性を鑑みると、消費電力を抑制するためにただ闇雲に冷却機による冷却動作を停止させることは好ましくない。特許文献1に開示されたものは、保冷庫内に保冷材を配置することで停電時等における保冷庫内の温度を補償するものであり、冷却機による冷却動作を停止させるタイミング等については何ら考慮されていない。
【0007】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、保冷庫の冷却のための電力を制御することにより、電力の基本料金の設定に用いられる一定期間内における消費電力を抑制しながらも、保冷庫内の温度を所定温度に維持することができる、保冷庫電力制御方法及び保冷庫電力制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、
内部が所定温度以下に冷却される保冷庫の前記冷却のための電力を制御する保冷庫電力制御方法であって、
前記保冷庫内には、前記所定温度近傍以下に融点を有する保冷材が配置され、
前記保冷庫を含む負荷群の総デマンド電力を測定する測定処理と、
前記測定された総デマンド電力を用いて、所定の測定期間内における総デマンド電力の累計値が目標値を超えるかどうかを判断する判断処理と、
前記判断処理にて前記測定期間内における総デマンド電力の累計値が前記目標値を超えると判断した場合、当該測定期間内において所定時間だけ前記保冷庫の冷却動作を停止する動作停止処理とを有する。
【0009】
上記のように構成された本発明においては、保冷庫の内部が所定温度以下に冷却されている状態において、保冷庫を含む負荷群の総デマンド電力が測定され、測定された総デマンド電力を用いて、所定の測定期間内における総デマンド電力の累計値が目標値を超えるかどうかが判断される。そして、累計値が目標値を超えると判断された場合、その測定期間内において所定時間だけ保冷庫の冷却動作が停止することで、その測定期間内における総デマンド電力の累積値が目標値を大きく超えることが回避され、それにより、電力の基本料金の設定に用いる一定期間内における消費電力が抑制されることになる。ここで、保冷庫の冷却動作が停止した状態においても、保冷庫内を所定温度以下に冷却された状態に維持しておく必要があるが、保冷庫内には、所定温度近傍以下に融点を有する保冷材が配置されていることにより、保冷庫の冷却動作が停止されることで保冷庫内の温度が上昇したとしても、保冷材が全て融解するまでの時間は、保冷庫内が保冷材の融点近傍の温度以下に冷却された状態が維持されることとなる。
【0010】
また、測定期間内における総デマンド電力の累計値が目標値を超えると判断したタイミングからその測定期間が終了するまでの残り時間が所定時間よりも短い場合は、その測定期間内における総デマンド電力の累計値を抑制すればよいことから、次の測定期間まで保冷庫の冷却動作を停止する必要はない。また、保冷庫の冷却動作の停止は、保冷庫内の温度上昇の面からはできるだけ短い時間とした方が好ましい。そこで、測定時間の残り時間だけ保冷庫の冷却動作を停止することで、測定期間内における総デマンド電力の累計値が抑制されながらも、冷却動作の停止による保冷庫内の温度上昇が抑制されることになる。
【0011】
また、保冷庫内に付着した霜を除去するためのデフロスト処理を実行するものにおいては、デフロスト処理の実行中は、保冷庫の冷却動作が停止しており、かつ、ヒーター等の熱により保冷庫内の温度が上昇しているため、累計値が目標値を超えると判断した場合にそれから所定時間保冷庫の冷却動作を停止すると、保冷庫内の温度がさらに上昇することとなって好ましくない。そこで、所定の測定期間内における総デマンド電力の累計値が目標値を超えると判断した場合であっても、デフロスト処理の実行終了後、前記保冷庫内の温度が前記所定温度よりも低い第2の所定温度以下となるまでは保冷庫の冷却動作を停止しないことで、保冷庫内の温度がさらに上昇してしまうことが回避される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、保冷庫を含む負荷群の所定の測定期間内における総デマンド電力の累計値が目標値を超えると判断した場合に、その測定期間内において所定時間だけ保冷庫の冷却動作を停止することにより、その測定期間内における総デマンド電力の累積値が目標値を大きく超えることが回避され、それにより、電力の基本料金の設定に用いる一定期間内における消費電力を抑制することができる。また、保冷庫内には、所定温度近傍以下に融点を有する保冷材が配置されていることにより、保冷庫の冷却動作が停止された状態においても、保冷庫内の温度を所定温度以下に維持することができる。
【0013】
また、測定期間内における総デマンド電力の累計値が目標値を超えると判断したタイミングからその測定期間が終了するまでの残り時間が所定時間よりも短い場合に、残り時間だけ保冷庫の冷却動作を停止するものにおいては、測定期間内における総デマンド電力の累計値を抑制しながらも、冷却動作の停止による保冷庫内の温度上昇を抑制することができる。
【0014】
また、保冷庫内に付着した霜を除去するためのデフロスト処理を実行するものにおいては、所定の測定期間内における総デマンド電力の累計値が目標値を超えると判断した場合であっても、デフロスト処理の実行終了後、前記保冷庫内の温度が前記所定温度よりも低い第2の所定温度以下となるまでは保冷庫の冷却動作を停止しないことにより、保冷庫内の温度が、デフロスト処理の実行によって上昇した状態からさらに上昇してしまうことを回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の保冷庫電力制御システムの実施の形態を示す図である。
【0018】
本形態は
図1に示すように、電力計10と、パルスセンサ20と、デマンドコントローラ30と、負荷群となる保冷庫40−1及び負荷40−2〜40−nとを備えている。
【0019】
電力計10は、保冷庫40−1及び負荷40−1〜40−nからなる負荷群の総デマンド電力を計量し、計量した総デマンド電力に対応したパルス信号を出力する。
【0020】
パルスセンサ20は、電力計10から出力されたパルス信号を監視用パルス信号に変換して出力する。
【0021】
デマンドコントローラ30は、パルスセンサ20から出力された監視用パルス信号に基づいて保冷庫40−1及び負荷40−2〜40−nに供給する電力を制御する。
【0022】
保冷庫40−1には、デマンドコントローラ30から供給される電力を用いて保冷庫40−1内を冷却するための冷却機41が設置されている。
【0023】
また、保冷庫40−1内には、冷却機41にて冷却された冷気を保冷庫40−1内に送り込んで循環させる送風機42と、保冷庫40−1内の温度を計測する温度センサ43とが設けられている。送風機42は、一般的に冷気は上方から下方に流れるため、例えば保冷庫40−1の天井に取り付けられている。温度センサ43は、例えば、送風機42にて循環される冷気の最も下流側に設けることで、保冷庫40−1内にて最も高い温度を計測することができる。
【0024】
さらに、保冷庫40−1内には金属ポール等が組み立てられてなるフレーム44が設置され、フレーム44によって保持される網棚上に保冷材45が載置されている。フレーム44は、例えば、送風機42に干渉しない限度において保冷庫40−1内にて最大の大きさのものとなっている。そして、保冷庫40−1の天井付近において、送風機42の送風口の近傍から冷気の流れに沿うように保冷材45が配置されている。保冷材45は、例えば保冷庫40−1内を−18℃以下に冷却する必要がある場合、−18℃近傍に融点を有するものが用いられるが、その融点が、保冷庫40−1内を冷却する必要がある温度以下であり、かつ、冷却機41の設定温度の範囲内で凍結が可能なものであればよい。また、近傍とは、±1℃程度の温度の違いによるものを示し、保冷材45の材料等によって生じた温度の違いを含む意味である。また、保冷材45の数については、保冷庫40−1の広さが例えば2坪であるとすると、48個の保冷材45がフレーム44によって保持される網棚上に並べて載置されている。
【0025】
冷却機41は、送風機42によって保冷庫40−1内に送り込まれる冷気を発生させる機能の他に、送風機42内に設けられたヒータ(不図示)を駆動させることで、冷却によって送風機42内に付着した霜を除去するためのデフロスト処理を実行する機能を有している。
【0026】
なお、負荷40−2〜40−nの中には、デマンドコントローラ30によって供給電力が制御されないものもあるが、パルスセンサ20から出力された監視用パルス信号は、それらの負荷も含めた総デマンド電力に応じたものとなっている。
【0027】
以下に、上記のように構成された保冷庫電力制御システムにおいて、保冷庫40−1及び負荷40−1〜40−nからなる負荷群のうち保冷庫40−1の冷却のための電力を制御する保冷庫電力制御方法について説明する。
【0028】
図2は、
図1に示したデマンドコントローラ30の構成例を示すブロック図である。
【0029】
図1に示したデマンドコントローラ30は、例えば
図2に示すように、総デマンド電力測定部31と、判断部32と、動作条件データベース33と、電力供給制御部34と、状況情報取得部35と、タイマ部36とを備える。
【0030】
総デマンド電力測定部31は、パルスセンサ20から出力された監視用パルスが入力され、この監視用パルスに基づいて、保冷庫40−1及び負荷40−1〜40−nからなる負荷群の総デマンド電力を測定する。
【0031】
判断部32は、総デマンド電力測定部31にて測定された総デマンド電力を、所定の測定期間であるデマンド電力測定期間毎に累積し、その累計値が、動作条件データベース33に登録された目標値となる電力ピーク値を超えるかどうかを判断する。なお、デマンド電力測定期間は、上述したように基本料金を設定するための消費電力を測定するための期間であり、一般に30分に決められている。本形態においても、デマンド電力測定期間を30分として説明する。
【0032】
状況情報取得部35は、温度センサ43にて計測された保冷庫40−1内の温度や、冷却機41による送風機42のデフロスト処理が実行中であるかどうかを示す情報等の、保冷庫40−1に対する電力制御に必要となる状況情報を冷却機41を介して保冷庫40−1から取得する。
【0033】
タイマ部36は、時間を計測するものである。
【0034】
電力供給制御部34は、判断部32にてデマンド電力測定期間内における総デマンド電力の累計値が電力ピーク値を超えると判断された場合、タイマ部36においてそのデマンド電力測定期間内にて計測される所定時間だけ保冷庫40−1への冷却のための電力の供給を停止することで、保冷庫40−1の冷却動作を停止する。
【0035】
図3は、
図1及び
図2に示した保冷庫電力制御システムにて保冷庫40−1の冷却のための電力を制御する保冷庫電力制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0036】
デマンドコントローラ30の電力供給制御部34から保冷庫40−1に冷却のための電力が供給されて冷却機41の動作が開始すると(ステップ1)、冷却機41が動作するとともに送風機42が動作し、冷却機41にて冷却された冷気が保冷庫40−1内に送り込まれて循環する。その際、送風機42の送風口の近傍から冷気の流れに沿うように保冷材45が配置されていることにより、冷却機41にて冷却された冷気が保冷材45にあたり、保冷材45が冷却され、保冷材45の温度が保冷庫40−1内の温度とともに低下していく。
【0037】
また、デマンドコントローラ30の総デマンド電力測定部31において、保冷庫40−1及び負荷40−1〜40−nからなる負荷群の総デマンド電力が測定される(ステップ2)。この総デマンド電力は、電力計10において、保冷庫40−1及び負荷40−1〜40−nからなる負荷群の総デマンド電力が計量され、計量された総デマンド電力に対応した監視用パルス信号がパルスセンサ20から出力され、総デマンド電力測定部31にてこの監視用パルス信号に基づいて測定されることになる。総デマンド電力測定部31にて測定された総デマンド電力は判断部32に送られる。
【0038】
判断部32においては、総デマンド電力測定部31から送られてきた総デマンド電力が、デマンド電力測定期間毎に累積されていく。すなわち、デマンド電力測定期間となる30分を1サイクルとして、そのサイクル毎に総デマンド電力が累積されていくこととなる。そして、判断部32において、現在総デマンド電力が測定されているデマンド電力測定期間における総デマンド電力の累積値が、動作条件データベース33に登録された目標値となる電力ピーク値を超えるかどうかが判断され、判断結果が電力供給制御部34に送られる(ステップ3)。ここで、上述したように、工場や商業ビル、病院、ホテル等の電力の大口需要家については、デマンド電力測定期間毎の消費電力のうち、例えば1年間といった所定期間において最も大きな消費電力となる電力ピーク値に基づいて基本料金が設定される。そこで、動作条件データベース33には、デマンド電力測定期間における総デマンド電力の累積値を抑制するための目安となる目標値が電力ピーク値として登録されている。
【0039】
総デマンド電力の累積値が、動作条件データベース33に登録された目標値となる電力ピーク値を超えると判断部32にて判断されると、まず、電力供給制御部34において、冷却機41による送風機42のデフロスト処理が実行中であるかどうかが判断される(ステップ4)。ここで、冷却機41による送風機42のデフロスト処理が実行中である場合は、その旨を示す状況情報が状況情報取得部35にて取得されている。そのため、電力供給制御部34においては、冷却機41によるデフロスト処理が実行中である旨を示す状況情報が状況情報取得部35にて取得されているかどうかを確認することで、冷却機41による送風機42のデフロスト処理が実行中であるかどうかを判断することができる。
【0040】
そして、冷却機41による送風機42のデフロスト処理が実行中ではない場合は、電力供給制御部34において、保冷庫40−1内の温度が第2の所定温度以下であるかどうかが判断される(ステップ5)。保冷庫40−1内の温度は、保冷庫40−1内に設けられた温度センサ43にて計測され、計測された温度が状況情報として状況情報取得部35にて取得されている。そのため、電力供給制御部34においては、状況情報取得部35にて取得された温度を確認することで、保冷庫40−1内の温度が、第2の所定温度以下であるかどうかを判断することができる。なお、第2の所定温度とは、冷却機41の動作を後述するように所定時間停止させた場合に、保冷庫40−1内の温度が、保冷庫40−1内を冷却したいとする温度を超えないようにするために十分な温度である。具体的には、上述したように、保冷庫40−1内を−18℃以下に冷却する必要があるために−18℃近傍に融点を有する保冷材45を用いた場合、冷却機41の動作を後述するように所定時間停止させた場合でも、保冷庫40−1内の温度が−18℃を超えないようにするために十分な温度であって、例えば、冷却機41を後述するように15分間停止させる場合は、−20℃程度となる。このように、第2の所定温度は、保冷庫40−1を冷却する必要がある所定温度よりも低い温度となる。
【0041】
保冷庫40−1内の温度が第2の所定温度以下である場合は、電力供給制御部34において、そのタイミングから現在のデマンド電力測定期間が終了するまでの残り時間が所定時間である15分以下であるかどうかが判断される(ステップ6)。この所定時間は、第2の所定温度として上述したように−20℃を設定した場合に、冷却機41の動作をその時間停止させても、保冷庫40−1内の温度が−18℃を超えないようにするために十分なものに設定されている。
【0042】
そして、現在のデマンド電力測定期間の残り時間が15分以下である場合、またはその後、時間が経過して15分以下となった場合(ステップ7)、そのデマンド電力測定期間が終了するまで、電力供給制御部34にて保冷庫40−1への冷却のための電力の供給が停止することで、冷却機41の動作が停止して保冷庫40−1の冷却動作が停止する(ステップ8,9)。
【0043】
このように、電力供給制御部34においては、保冷庫40−1内の温度が第2の所定温度以下である場合であっても、現在のデマンド電力測定期間の残り時間が15分以下とならなければ、保冷庫40−1への冷却のための電力の供給が停止しない。すなわち、電力供給制御部34においては、1つのデマンド電力測定期間について所定時間である最大15分間だけしか保冷庫40−1への冷却のための電力の供給を停止しないこととなる。そのため、現在のデマンド電力測定期間の残り時間が15分以下であれば、その残り時間だけ保冷庫40−1への冷却のための電力の供給が停止されることとなる。これは、デマンド電力測定期間内における総デマンド電力の累計値が電力ピーク値を超えると判断したタイミングからそのデマンド電力測定期間が終了するまでの残り時間が所定時間となる15分よりも短い場合は、そのデマンド電力測定期間内における総デマンド電力の累計値を抑制すればよいことから、次のデマンド電力測定期間まで保冷庫40−1の冷却動作を停止する必要はないためである。一方、保冷庫40−1の冷却動作の停止は、保冷庫40−1内の温度上昇の面からはできるだけ短い時間とした方が好ましい。そこで、デマンド電力測定期間の残り時間だけ保冷庫40−1の冷却動作を停止することで、デマンド電力測定期間内における総デマンド電力の累計値が抑制されながらも、冷却動作の停止による保冷庫40−1内の温度上昇が抑制されることになる。
【0044】
保冷庫40−1への冷却のための電力の供給が停止された後、そのデマンド電力測定期間が終了すると、電力供給制御部34にて保冷庫40−1への冷却のための電力の供給が再開することで、冷却機41が動作して保冷庫40−1の冷却動作が再開する(ステップ10)。
【0045】
このように、総デマンド電力測定部31にて測定された、保冷庫40−1及び負荷40−1〜40−nの総デマンド電力がデマンド電力測定期間毎に累積されていき、その総デマンド電力の累積値が電力ピーク値を超えると判断された場合に、そのデマンド電力測定期間内において所定時間となる15分間だけ保冷庫40−1の冷却動作を停止することにより、そのデマンド電力測定期間内における総デマンド電力の累積値が電力ピーク値を大きく超えることが回避され、それにより、電力の基本料金の設定に用いるデマンド電力測定期間内における消費電力を抑制することができる。そのため、ステップ3において、総デマンド電力の累積値が電力ピーク値を超えないと判断された場合は、保冷庫40−1の冷却動作を停止する必要はない。
【0046】
また、保冷庫40−1内には、所定温度である−18℃に融点を有する保冷材45が配置されていることにより、保冷庫40−1の冷却動作が停止された状態においても、一定時間は保冷庫40−1内の温度を所定温度以下に維持することができる。保冷庫40−1内の温度を所定温度以下に維持しながらも保冷庫40−1の冷却動作を停止することができる時間は、保冷材45や冷却機41の性能を鑑みて設定されるが、保冷庫40−1内に保冷材45が配置されていることで、保冷庫40−1内の温度が上昇したとしても、保冷材45の温度がその融点近傍の温度に一定時間維持されることにより、保冷庫40−1内に保冷材45が配置されていない場合と比べて保冷効果が向上する。
【0047】
また、ステップ4において、冷却機41による送風機42のデフロスト処理が実行されていると判断された場合には、例え、総デマンド電力の累積値が電力ピーク値を超えると判断された場合であっても、保冷庫40−1の冷却動作を停止する制御を行わないことで、保冷庫40−1内の温度がさらに上昇してしまうことが回避される。これは、デフロスト処理の実行中は、冷却機41による保冷庫40−1の冷却動作が停止しており、かつ、ヒーター等の熱により保冷庫40−1内の温度が上昇しているため、保冷庫40−1の冷却動作を停止すると、保冷庫40−1内の温度がさらに上昇することとなって好ましくないためである。なお、デフロスト処理の実行中は、送風機42の動作も停止しているが、保冷材45が保冷庫40−1の天井付近に配置されていることにより、保冷庫40−1内に保冷材45が配置されていない場合と比べて保冷庫40−1内の温度上昇が抑制されるとともに、保冷材45の冷気が保冷庫40−1内にて上方から下方に流れることで、保冷庫40−1内の温度のばらつきが抑制されることになる。
【0048】
また、ステップ5において、デフロスト処理の終了後、保冷庫40−1内の温度が第2の所定温度を超えていると判断された場合においても、デフロスト処理によって保冷庫40−1内の温度が上昇している状態にて保冷庫40−1の冷却動作を停止すると、保冷庫40−1内の温度がさらに上昇することとなって好ましくないため、例え、総デマンド電力の累積値が電力ピーク値を超えると判断された場合であっても、保冷庫40−1の冷却動作を停止せず、保冷庫40−1内の温度がさらに上昇してしまうことを回避している。
【0049】
以下に、上述した保冷庫電力制御方法について具体例を挙げて説明する。なお、以下の具体例においては、保冷材45として−18℃の融点を持つものを使用し、デマンド電力測定期間(1サイクル)を30分、保冷庫40−1の冷却動作を停止する所定時間を15分間、第2の所定温度を−20℃とする。
【0050】
まず、冷却機41による送風機42のデフロスト処理が実行されていない状態における保冷庫電力制御方法について説明する。
【0051】
図4は、
図1及び
図2に示した保冷庫電力制御システムにおける保冷庫電力制御方法の具体例を説明するための図である。
【0052】
デマンドコントローラ30の電力供給制御部34から保冷庫40−1に冷却のための電力が供給されて冷却機41の動作が開始すると、
図4に示すように、冷却機41への供給電力がON状態とOFF状態に一定周期で切り替えられ、それにより、保冷庫40−1内の温度が−23℃から−20℃の間に維持される。なお、この場合における供給電力のOFF状態時においては、厳密には冷却機41に電力が供給されていないことになるが、これは、保冷庫40−1内の温度を一定温度に維持するためのものであり、保冷庫40−1の冷却動作を停止するものではない。
【0053】
また、デマンドコントローラ30の総デマンド電力測定部31において、保冷庫40−1及び負荷40−1〜40−nからなる負荷群の総デマンド電力が測定され、判断部32において、
図4に示す1サイクル目における総デマンド電力の累積値が、動作条件データベース33に登録された電力ピーク値を超えるかどうかが判断されるが、1サイクル目においては、総デマンド電力の累積値が電力ピーク値を超えそうではないと判断されることにより、保冷庫40−1に対して冷却のための電力が継続して供給され、保冷庫40−1の冷却動作が引き続き行われる。
【0054】
次に、
図4に示す2サイクル目において、2サイクル目の開始から12分後に、2サイクル目における総デマンド電力の累積値が電力ピーク値を超えると判断されたとする。しかしながら、2サイクル目の開始から12分後においては、2サイクル目が終了するまでの残り時間が15分を超えているため、この時点では、保冷庫40−1に対する冷却のための電力の供給を停止しない。そして、2サイクル目の開始から15分後となると、2サイクル目が終了するまでの残り時間が15分以下となるため、保冷庫40−1に対する冷却のための電力の供給が、2サイクル目が終了するまでの15分間停止することとなる。保冷庫40−1に対する冷却のための電力の供給が停止している期間は、冷却機41による保冷庫40−1内の冷却動作が停止しているため、保冷庫40−1内の温度が上昇していくことになるが、保冷庫40−1内には、−18℃の融点を持つ保冷材45が配置されていることにより、保冷庫40−1内の温度が上昇しにくくなり、また、−18℃近傍まで上昇した後は、保冷材45が全て融解するまでの一定時間だけ保冷庫40−1内の温度を保冷材45の融点である−18℃近傍の温度に維持することができる。
【0055】
その後、
図4に示す3サイクル目においては、保冷庫40−1内の温度が−18℃近傍まで上昇しているため、保冷庫40−1内の温度が−23℃から−20℃の範囲となるまで、保冷庫40−1内を冷却するために冷却機41への供給電力が継続的にON状態とされる。そして、保冷庫40−1内の温度が−23℃から−20℃の範囲となると、上述したように、冷却機41への供給電力がON状態とOFF状態に一定周期で切り替えられ、保冷庫40−1内の温度が−23℃から−20℃の間に維持される。その後、3サイクル目の開始から20分後に、3サイクル目における総デマンド電力の累積値が電力ピーク値を超えると判断されたとする。3サイクル目の開始から20分後においては、3サイクル目が終了するまでの残り時間が15分以下であるため、保冷庫40−1に対する冷却のための電力の供給が、3サイクル目が終了するまでの残り時間である10分間だけ停止することとなる。
【0056】
次に、冷却機41による送風機42のデフロスト処理が実行されている状態における保冷庫電力制御方法について説明する。
【0057】
図5は、
図1及び
図2に示した保冷庫電力制御システムにおける保冷庫電力制御方法の具体例を説明するための図である。
【0058】
図5に示す1サイクル目の途中において、冷却機41による送風機42のデフロスト処理が開始されたものとする。なお、デフロスト処理の実行中においては、冷却機41による保冷庫40−1の冷却動作は停止している。
【0059】
そして、
図5に示す2サイクル目において、2サイクル目の開始から15分後に、2サイクル目における総デマンド電力の累積値が電力ピーク値を超えると判断されたとする。しかしながら、2サイクル目の開始から15分後においては、冷却機41による送風機42のデフロスト処理が実行中であるため、この時点では、保冷庫40−1に対する冷却のための電力の供給を停止する制御は行わない。
【0060】
冷却機41による送風機42のデフロスト処理が終了すると、保冷庫40−1に対する冷却のための電力の供給が再開し、冷却機41が動作して保冷庫40−1内が冷却される。その際、デフロスト処理によって保冷庫40−1内の温度が−18℃を超えているため、保冷庫40−1内の温度が−23℃から−20℃の範囲となるまで、冷却機41への供給電力が継続的にON状態とされる。そして、保冷庫40−1内の温度が第2の所定温度となる−20℃以下となるまでは、2サイクル目における総デマンド電力の累積値が電力ピーク値を超えそうだと判断されているものの、保冷庫40−1に対する冷却のための電力の供給は停止しない。この際、上述したように、保冷材45が保冷庫40−1内に配置されていることにより、デフロスト処理の実行中における保冷庫40−1内の温度上昇が抑制されているため、その後、保冷庫40−1内の温度を−23℃から−20℃の範囲とするまでの冷却のための電力量が抑制される。
【0061】
その後、
図5に示す2サイクル目の開始から28分後に、保冷庫40−1内の温度が第2の所定温度となる−20℃以下となると、保冷庫40−1に対する冷却のための電力の供給が、3サイクル目が終了するまでの2分間停止することとなる。なお、2サイクル目の開始から28分後であれば、2サイクル目が終了するまでの残り時間が15分以下であるため、
図4に示した2サイクル目のように、保冷庫40−1に対する冷却のための電力の供給の停止を一定時間待機する必要がない。
【0062】
このように、デフロスト処理の実行中においては、保冷庫40−1内の温度が−18℃を超えてしまうことになるが、デフロスト処理は30分〜60分程度の短時間処理であり、また1日の中で行われる周期も一般に1回〜4回程度の少ないものであるため、運用上、許容できる。すなわち、本発明においては、保冷庫40−1内の温度を、その一例として−18℃以下に維持するものであるが、デフロスト処理の実行による保冷庫40−1内の温度上昇については除外して考えるものとする。なお、霜付の状況によっては、デフロスト処理の実行回数が一日に4回よりも増えることもある。
【0063】
なお、上述した実施の形態においては、保冷庫40−1内の温度を−18℃以下に維持するために、−18℃に融点を有する保冷材45を用い、第2の所定温度として−20℃を設定しているが、保冷庫40−1に対する冷却のための電力の供給停止は、保冷庫40−1内に設置された温度センサ43にて計測された温度に基づくため、保冷庫40−1に対する冷却のための電力供給が停止される際の保冷庫40−1内の実際の温度には、温度センサ43の設置位置によってばらつきがある。例えば、温度センサ43が保冷庫40−1内で温度がより高くなる位置に設置されていれば、保冷庫40−1に対する冷却のための電力供給が停止される際の保冷庫40−1内の実際の温度は−18℃よりも低くなるし、温度センサ43が保冷庫40−1内で温度がより低くなる位置に設置されていれば、保冷庫40−1に対する冷却のための電力供給が停止される際の保冷庫40−1内の実際の温度は−18℃よりも高くなる。
【0064】
また、上述した実施の形態においては、電力供給制御部34において、1つのデマンド電力測定期間について所定時間である最大15分間だけしか保冷庫40−1への冷却のための電力の供給を停止しないため、そのデマンド電力測定期間における総デマンド電力の累積値が電力ピーク値を超えると判断されたとしても、そのデマンド電力測定期間が終了するまでの残り時間が15分となるまで、保冷庫40−1への冷却のための電力の供給の停止を待機しているが、デマンド電力測定期間における総デマンド電力の累積値が電力ピーク値を超えると判断されたタイミングから保冷庫40−1への冷却のための電力の供給を停止し、15分経過後に保冷庫40−1への冷却のための電力の供給を再開する構成としてもよい。