特開2017-133776(P2017-133776A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タカラトミーの特許一覧

<>
  • 特開2017133776-連発式輪ゴム銃 図000003
  • 特開2017133776-連発式輪ゴム銃 図000004
  • 特開2017133776-連発式輪ゴム銃 図000005
  • 特開2017133776-連発式輪ゴム銃 図000006
  • 特開2017133776-連発式輪ゴム銃 図000007
  • 特開2017133776-連発式輪ゴム銃 図000008
  • 特開2017133776-連発式輪ゴム銃 図000009
  • 特開2017133776-連発式輪ゴム銃 図000010
  • 特開2017133776-連発式輪ゴム銃 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-133776(P2017-133776A)
(43)【公開日】2017年8月3日
(54)【発明の名称】連発式輪ゴム銃
(51)【国際特許分類】
   F41B 7/02 20060101AFI20170707BHJP
   A63H 33/18 20060101ALI20170707BHJP
【FI】
   F41B7/02 A
   A63H33/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-15122(P2016-15122)
(22)【出願日】2016年1月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】叶内 茂
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150CA13
2C150DH04
2C150EB39
2C150EC15
2C150FB14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シンプルな構造で輪ゴムを連続して発射できるとともに製造コストを低減できる連発式輪ゴム銃を提供することを目的とする。
【解決手段】発射単位の輪ゴム1を係止するための前側輪ゴム係止部13と後側輪ゴム係止部14との組が円周方向に複数設けられるとともに、銃本体によって円周方向の一方側に回転可能に保持されたシリンダを備える連発式輪ゴム銃において、各組の前側輪ゴム係止部13は、同組の後側輪ゴム係止部14よりもシリンダの回転方向の反対側に1ピッチずれた状態で、シリンダに配置されており、シリンダは、輪ゴム1の緊張時に該輪ゴム1の引っ張りによって一方側に1ピッチ分回転して、緊張された輪ゴム1が引っ掛けられた前側輪ゴム係止部13が、1ピッチ分進んだ位置にある輪ゴムの発射位置に移動するように構成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射単位の輪ゴムを係止するための前側輪ゴム係止部と後側輪ゴム係止部との組が円周方向に複数設けられるとともに、銃本体によって円周方向の一方側に回転可能に保持されたシリンダを備え、発射単位ごとに前記輪ゴムを後方に引っ張ることによって緊張させて発射させる連発式輪ゴム銃において、
各組の前記前側輪ゴム係止部は、同組の前記後側輪ゴム係止部よりも前記シリンダの回転方向の反対側に1ピッチずれた状態で、前記シリンダに配置され、
前記シリンダは、前記輪ゴムの緊張時に該輪ゴムの引っ張りによって前記一方側に1ピッチ分回転して、緊張された前記輪ゴムが引っ掛けられた前記前側輪ゴム係止部が、1ピッチ分進んだ位置にある前記輪ゴムの発射位置に移動するように構成されていることを特徴とする連発式輪ゴム銃。
【請求項2】
前記シリンダは前後方向に移動可能であるとともに第一スプリングによって前方に付勢され、
前記シリンダと前記銃本体との間には、前記輪ゴムの緊張時において前記シリンダが前記第一スプリングの付勢力に抗して後方に移動した時に前記シリンダの前記一方側への回転をガイドし、かつ前記前側輪ゴム係止部を、前記輪ゴムの発射位置に移動させるアシスト手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の連発式輪ゴム銃。
【請求項3】
前記シリンダと前記銃本体との間には、前記輪ゴムの非緊張時において前記シリンダが前記第二スプリングの付勢力により前方に移動した時に前記シリンダの前記一方側への回転を規制する位置決め手段が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の連発式輪ゴム銃。
【請求項4】
前記シリンダは、
複数の前記前側輪ゴム係止部を有する前部シリンダと、
複数の前記後側輪ゴム係止部を有する後部シリンダと、
前記前側輪ゴム係止部を前記後側輪ゴム係止部よりも前記シリンダの回転方向の反対側に1ピッチずれた状態とするためのピッチ切り替え手段と、を備えており、
前記ピッチ切り替え手段は、
前記後部シリンダにおける後側の部位を構成するとともに前記後側輪ゴム係止部が設けられ、かつ、前後方向に移動可能であるとともに前記一方側およびその反対側に回転可能とされた第一部位と、
前記後部シリンダにおける前側の部位を構成する第二部位と、
前記第一部位を前記第二部位側に付勢する第二スプリングと、
前記第一部位を前記一方側に回転させた時と、前記反対側に回転させた時に、前記第二スプリングによる付勢力によって、前記第二部位に対する前記第一部位の回転を規制して位置決めを行う凹凸嵌合部と、を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の連発式輪ゴム銃。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連発式輪ゴム銃に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輪ゴムを使用する輪ゴム銃として、前爪(前側輪ゴム係止部)と後爪(後側輪ゴム係止部)との組を円周方向に等間隔に複数有するシリンダを備えたものが知られている。このような輪ゴム銃においては、各組を構成する前爪と後爪とに輪ゴムを係止し、シリンダを回転させることで発射すべき輪ゴムを選択した後、トリガを操作することによって、輪ゴムを発射することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3195039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、シリンダを回転させる手段として、往復直線動作する直動部材や歯車等を始めとする多くの部材が必要であり、構造の複雑化や製造コストの上昇を招く場合があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シンプルな構造で輪ゴムを連続して発射できるとともに製造コストを低減できる連発式輪ゴム銃を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、発射単位の輪ゴムを係止するための前側輪ゴム係止部と後側輪ゴム係止部との組が円周方向に複数設けられるとともに、銃本体によって円周方向の一方側に回転可能に保持されたシリンダを備え、発射単位ごとに前記輪ゴムを後方に引っ張ることによって緊張させて発射させる連発式輪ゴム銃において、
各組の前記前側輪ゴム係止部は、同組の前記後側輪ゴム係止部よりも前記シリンダの回転方向の反対側に1ピッチずれた状態で、前記シリンダに配置され、
前記シリンダは、前記輪ゴムの緊張時に該輪ゴムの引っ張りによって前記一方側に1ピッチ分回転して、緊張された前記輪ゴムが引っ掛けられた前記前側輪ゴム係止部が、1ピッチ分進んだ位置にある前記輪ゴムの発射位置に移動するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の連発式輪ゴム銃であって、前記シリンダは前後方向に移動可能であるとともに第一スプリングによって前方に付勢され、
前記シリンダと前記銃本体との間には、前記輪ゴムの緊張時において前記シリンダが前記第一スプリングの付勢力に抗して後方に移動した時に前記シリンダの前記一方側への回転をガイドし、かつ前記前側輪ゴム係止部を、前記輪ゴムの発射位置に移動させるアシスト手段が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の連発式輪ゴム銃において、前記シリンダと前記銃本体との間には、前記輪ゴムの非緊張時において前記シリンダが前記第二スプリングの付勢力により前方に移動した時に前記シリンダの前記一方側への回転を規制する位置決め手段が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の連発式輪ゴム銃であって、
前記シリンダは、
複数の前記前側輪ゴム係止部を有する前部シリンダと、
複数の前記後側輪ゴム係止部を有する後部シリンダと、
前記前側輪ゴム係止部を前記後側輪ゴム係止部よりも前記シリンダの回転方向の反対側に1ピッチずれた状態とするためのピッチ切り替え手段と、を備えており、
前記ピッチ切り替え手段は、
前記後部シリンダにおける後側の部位を構成するとともに前記後側輪ゴム係止部が設けられ、かつ、前後方向に移動可能であるとともに前記一方側およびその反対側に回転可能とされた第一部位と、
前記後部シリンダにおける前側の部位を構成する第二部位と、
前記第一部位を前記第二部位側に付勢する第二スプリングと、
前記第一部位を前記一方側に回転させた時と、前記反対側に回転させた時に、前記第二スプリングによる付勢力によって、前記第二部位に対する前記第一部位の回転を規制して位置決めを行う凹凸嵌合部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、前側輪ゴム係止部と後側輪ゴム係止部に引っ掛けられた輪ゴムを後方に引っ張って緊張させることでシリンダを回転させることができるので、発射される輪ゴム自体を、シリンダを回転させるための動力として利用することができる。これによって、シリンダを回転させる手段として多くの部材が必要なくなるので、シンプルな構造で輪ゴムを連続して発射できるとともに製造コストを低減できる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、アシスト手段によって、シリンダの円周方向一方側への回転をガイドし、前側輪ゴム係止部を輪ゴムの発射位置に移動させるので、シリンダを1ピッチ分ごとに確実に回転させることができる。そのため、輪ゴムをより正確に発射することができる。
さらに、このような輪ゴムを動力としたシリンダの回転を、シリンダと銃本体との間に設けられたアシスト手段によってアシストできるので、銃本体の内部機構を簡素化できる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、位置決め手段によって、輪ゴムの非緊張時におけるシリンダの回転を規制できるので、輪ゴムを後方に引っ張る際の操作や輪ゴムを装着させる作業が行いやすくなる。すなわち、操作等を行う際におけるシリンダの回転を位置決め手段によって抑えることができるので、操作に係る精度を向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、前側輪ゴム係止部と後側輪ゴム係止部との各組に輪ゴムを引っ掛ける際にはピッチを揃えた状態としておき、前側輪ゴム係止部と後側輪ゴム係止部との各組に輪ゴムを引っ掛けた後に、後側の部位を前側の部位に対して円周方向に回転させるだけで、1ピッチずらして輪ゴムをひねった状態とすることができるので、シリンダに対する輪ゴムの装着が容易となる。さらに、シリンダに装着させた輪ゴムの全てを一遍に1ピッチずらした状態にすることができるので効率が良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】連発式輪ゴム銃の外観斜視図である。
図2】(a)は連発式輪ゴム銃における銃本体の内部構造を示す側断面図であり、(b)は連発式輪ゴム銃におけるシリンダの後端部付近(E部)の内部構造を示す側断面図である。
図3】(a)は連発式輪ゴム銃の外観側面図であり、(b)はシリンダの後端部付近(F部)の拡大図であり、(c)はシリンダの前端部付近(G部)の拡大図である。
図4】前側輪ゴム係止部と後側輪ゴム係止部の位置関係を示す背面図である。
図5】輪ゴムの発射態様を示す平面図である。
図6】輪ゴムの発射態様を示す平面図であり、輪ゴムが発射位置にある状態を示している。
図7】輪ゴムの発射およびシリンダの回転態様を示す模式図である。
図8】トリガと係止部材との係合関係を示す図である。
図9】カム機構を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0016】
図1は連発式輪ゴム銃の外観斜視図である。
本実施形態における連発式輪ゴム銃100の理解を容易にするため、その使用方法の一例について説明する(図5図7参照)。
まず、スライド30が後方位置に係止されている状態でシリンダ10の外周に対して、当該シリンダ10の円周方向に等間隔に、かつ、ひねられた状態となるように6本の輪ゴム1を係止する。
この状態で、トリガ20を1回後方に引くとスライド30の係止が解除されて当該スライド30が前方位置まで移動し、発射位置(図4中の「▼」)にある1本の輪ゴム1の後端部にフック31が引っ掛かる。その後、スライド30を手で後方に移動させるとフック31が引っ掛かった1つの輪ゴム1の後端部が後方に引かれ当該輪ゴム1が緊張する。後方に移動させたスライド30は後方位置にて係止される。また、このように輪ゴム1を緊張させるのと同時に、後端部が後方に引っ張られた輪ゴム1を動力としてシリンダ10が回転し、輪ゴム1の前端部が発射位置(図4中の「▼」)に移動する。
この状態で、トリガ20を1回後方に引くと、スライド30の係止が解除され、スライド30が前方位置に向けて移動する。そして、緊張した輪ゴム1の後端部に対するフック31の引っ掛かりが解除され、当該輪ゴム1が前方に向けて発射される。この時、シリンダ10が回転し、次に発射される輪ゴム1の後端部が発射位置(図4中の「▼」)に移動する。そして、スライド30と共に前方に移動したフック31が当該次に発射される輪ゴム1の後端部に引っ掛かる。
このようにして、この連発式輪ゴム銃100では、シリンダ10に係止した複数の輪ゴム1を連続的に発射することが可能となっている。
【0017】
次に、この連発式輪ゴム銃100の構成の詳細を説明する。
図2は連発式輪ゴム銃100の内部構造を示す側面図である。
この連発式輪ゴム銃100は、銃本体2、シリンダ10、トリガ20、スライド30およびフック31の他、スライド係止手段A、アシスト手段B、位置決め手段C、ピッチ切り替え手段Dを備えている。
【0018】
銃本体2は、ユーザが把持するグリップ2aと、シリンダ10やトリガ20を始めとする各部が組み込まれるフレーム2bと、からなる。
フレーム2bは、シリンダ10を迂回するように当該シリンダ10の下方を経て当該シリンダ10の前方まで延びている。フレーム2bのうちシリンダ10の前方に位置する部分は、シリンダ10の前端を軸支している。さらに、フレーム2bのうちシリンダ10の後方に位置する部分は、シリンダ10の後端を軸支している。
なお、フレーム2bのうち、シリンダ10の下方から前方にかけて設けられる略L字状の部位2b1は、当該部位2b1よりも後方の部位2b2から分離できるように構成されている。すなわち、フレーム2bにおける略L字状の部位2b1とその後方の部位2b2は、凹凸嵌合構造によって結合される構造となっており、その嵌合状態を解除することによって分離可能となっている。
【0019】
シリンダ10は、当該シリンダ10の長さ方向に沿う軸を中心に、円周方向の一方側に回転可能となるように銃本体2によって保持されている。本実施形態におけるシリンダ10は、図3に示すように銃本体2の後部から見て右回りとなるように回転する。
このシリンダ10は分離可能な前部シリンダ10Aと後部シリンダ10Bと補助シリンダ10Cと後端軸部材11とで構成されている。このシリンダ10の外周には、外周方向に等間隔にかつ、輪ゴム1がひねられた状態となる輪ゴム掛けが6個設けられている。各輪ゴム掛けは、輪ゴム1の前端部を係止する前側輪ゴム係止部13と、輪ゴム1の後端部を係止する後側輪ゴム係止部14との組を備えている。
なお、補助シリンダ10Cは、前部シリンダ10Aと後部シリンダ10Bとの間に連結されるものであり、シリンダ10全体の長さを大きくすることができる。図示はしないが、補助シリンダ10Cの前端には前方に突出する角軸が設けられており、前部シリンダ10Aの後端に形成された角穴に差し込まれている。これにより、前部シリンダ10Aと補助シリンダ10Cとが連動して回転できるようになっている。
【0020】
前側輪ゴム係止部13は、前部シリンダ10Aに備えられ、シリンダ10の半径方向外方に突出する1つの突片15の前端に切欠き15aを設けることによって形成されている。ただし、この場合の切欠き15aは無くてもよい。要は、輪ゴム1の前端部を係止できる爪となっていることである。
一方、後側輪ゴム係止部14は、後部シリンダ10Bに備えられ、シリンダ10の半径方向外方に突出し互いに平行な2つの突片16,17の後端にそれぞれ切欠き16a,17aを設けることによって形成されている。2つの突片16,17はシリンダ10の外周方向に互いに所定間隔を空けて形成されており、2つの突片16,17の間にはフック31の先端部が入り込めるようになっている。なお、後側輪ゴム係止部14の切欠き16a,17aは無くてもよい。要は、輪ゴム1の後端部を係止できる爪となっていることである。
なお、シリンダ10の回転方向の先に位置する一方の突片16は、図4に示すように、他方の突片17よりも外方への突出寸法が短くなるように設定されている。このように一方の突片16の突出寸法を短くすれば、輪ゴム1の後端部を後方に引っ張ることによってシリンダ10が円周方向に回転した際に、輪ゴム1を突片16から離脱させやすくなるので好ましい。
【0021】
そして、図4に示すように、各組の前側輪ゴム係止部13は、各組の後側輪ゴム係止部14よりもシリンダ10の回転方向の反対側に1ピッチずれた状態で配置されている。換言すれば、各組の後側輪ゴム係止部14が、各組の前側輪ゴム係止部13よりもシリンダ10の回転方向にピッチがずれた状態で配置されている。
つまり、各組の前側輪ゴム係止部13と後側輪ゴム係止部14は、一直線上に設けられるものではなく、シリンダ10の円周方向に互いに1ピッチずれた状態でシリンダ10に設けられている。
このようにピッチがずれた状態であれば、図5図7に示すように、輪ゴム1の発射位置に合わせた位置でフック31によって輪ゴム1の後端部を後方に引っ張ると、図6図7に示すように、輪ゴム1の後端部は後側輪ゴム係止部14から外れた状態となり、さらに前端部は、輪ゴム1の弾性力により後端部に追従しようとする。すなわち、輪ゴム1の後端部を後方に引っ張れば、シリンダ10が回転可能に構成されているため、輪ゴム1の前端部も輪ゴム1の発射位置まで移動させることができる。
なお、後述するが、このようなシリンダ10には、上記のアシスト手段B、位置決め手段C、ピッチ切り替え手段Dによって各種の機能が付帯される。
【0022】
後端軸部材11は、後部シリンダ10Bの後端部から前方に向かって形成された円孔10aに差し込まれる円筒状の差込部11aと、銃本体2における後部シリンダ10B側部に形成された円穴2d内に収納されて保持されるフランジ部11bおよび突部11cと、を備える。
差込部11aには、前方に向かって開口する円穴11dが形成されており、当該円穴11dには、後部シリンダ10Bが後方に移動した時に、後述する第二部位56の丸軸56bが差し込まれる。
フランジ部11bは、シリンダ10の前後方向の移動に伴って銃本体2の円穴2d内で前後方向に摺動するとともに、円穴2dの縁に引っ掛かって抜けを防止している。
突部11cは、銃本体2における円穴2dに収納される第一スプリング52(コイルばね52)が嵌められる部位である。
【0023】
図2に戻り、トリガ20は、トリガカバー21に覆われて設けられている。トリガ20は銃本体2のグリップ2aに設けられ、前後方向に移動可能に構成されている。そして、このトリガ20は、コイルばね22の付勢力によって前方に向けて付勢されている。したがって、ユーザがトリガ20を指で後方に引いた後に指の力を緩めるとトリガ20がコイルばね22の付勢力によって前方の初期位置に復帰する。なお、トリガ20は所定の軸を中心に回動可能に構成されていてもよい。
【0024】
続いて、スライド係止手段Aについて説明する。
スライド係止手段Aは、スライド30を後方位置に係止する機能と、トリガ20を後方に引いた際にスライド30の係止を解除する機能を有している。
このスライド係止手段Aは、トリガ20の一側面に付設された突起20aと、グリップ2a内でトリガ20の後方に配置され上下方向に往復直線動作可能な係止部材23とを備えている(図2図8参照)。
係止部材23は、上下の二箇所に設けられた縦方向に長尺な長孔23a,23aを有し、この長孔23a,23aにはグリップ2a内面に設けられた柱状部材24が入り込んでいる。そして、係止部材23は、この柱状部材24に案内されて上下方向に動作する。柱状部材24は螺子用のボスであってもよい。
この係止部材23には、下端部に側面視で楕円状の板ばね23bが付設されている。この板ばね23bは、下端がグリップ2a内の固定部25に当接しており、係止部材23を上方に向けて付勢している。この板ばね23bの代わりに、コイルばねやその他の付勢部材を設けてもよい。
また、係止部材23には、上記グリップ2aの突起20aに対向する部分に、トリガ20が後方に引かれた際に当該突起20aに摺接して当該係止部材23を板ばね23bの付勢力に抗して下方に移動させる摺接部23cが形成されている。この摺接部23cは、上記突起20aが上方から摺接する突起部として形成されていてもよいし、上記突起20aが入り込む溝やスリットとして形成されていてもよい。
なお、本実施形態の連発式輪ゴム銃100では、トリガ20側に突起20aを、係止部材23側に突起20aに摺接する摺接部23cを形成したが、係止部材23側に突起を、トリガ20側に当該突起に摺接する摺接部を形成してもよい。要は、トリガ20が後方に操作された際に、係止部材23が下降することである。
【0025】
次に、スライド30について説明する。
スライド30は、銃本体2に前後方向に延在するように形成された溝2cに嵌合する凸部(図示せず)を備え、当該凸部が当該溝2cに沿って移動することで、前後方向に往復直線動作するように構成されている。スライド30を往復直線動作させる構造は勿論これに限定されない。
スライド30には、図2に示すように、上記フック31と、上記係止部材23によって係止可能な被係止部32とが設けられている。
【0026】
フック31は、図2および図9に示すように、中間部がスライド30に軸31aを介して回動可能に支持されている。フック31の一端側の先端部には輪ゴム1の後端部に引っ掛けるための爪31bが形成されている。このフック31の軸31aにはねじれコイルばね(図示せず)が巻装されており、図2において爪31bが下動する方向(反時計方向)に付勢されている。また、フック31の他端部の側面には突起31dが形成されている。
【0027】
上記フック31の突起31dは、図9に示すように、銃本体2の内面に形成されたカム溝40に入り込んでいる。カム溝40は、前後方向に延在する下溝40aおよび上溝40bから形成されている。そして、下溝40aと上溝40bとは前端側および後端側で互いに結合されている。
カム溝40の前端部では上溝40bの上縁が膨らんでおり、スライド30が前方位置まで移動した際にフック31が、軸31aに巻装されたねじれコイルばねの付勢力によって、下動する方向(反時計方向)に回動する。これによって、フック31、具体的には爪31bが輪ゴム1の後端部に引っ掛かる。そして、この状態から、スライド30が後方に向けて移動すると、突起31dが上溝40bを倣うようにしてフック31も後方に向けて移動する。このときには、爪31bは輪ゴム1の後端部に引っ掛かったままである。スライド30が後方位置まで引かれ、スライド係止手段Aによって係止されると、突起31dはカム溝40の後端部に至る(図9に示す状態)。このとき、カム溝40の後端部は下溝40aと上溝40bの中間の高さ位置となるが、爪31bは輪ゴム1の後端部に引っ掛かったままである。また、このとき、フック31が銃本体2の固定部(図示せず)に突き当たり、突起31dは下溝40aと上溝40bとの仕切り壁40cの下側に僅かに潜り込む。この状態で、スライド30の係止が解除されると、スライド30はコイルばね30aの付勢力によって前方に移動する。このとき、突起31dは下溝40aを倣うが、仕切り壁40cの下面に摺接する。仕切り壁40cの下面は後端側が傾斜面となっているので、その箇所で、フック31が上動する方向(図2の時計方向)に回動する。これによって、輪ゴム1の後端部に対する爪31bの引っ掛かりが解除され、輪ゴム1が発射される。
なお、スライド30の係止が解除される形態は以下の通りである。すなわち、被係止部32は、スライド30とともに前後に移動するものであり、スライド30が銃本体2の後端部に移動した際に、係止部材23の上端部に引っ掛かって係止される。そして、トリガ20が操作されると係止部材23が下方に移動するため、被係止部32が係止部材23から離脱し、コイルばね30aの付勢力によってスライド30を前方に移動させることができる。
【0028】
次に、アシスト手段Bについて説明する。
このアシスト手段Bは、輪ゴム1の緊張時においてシリンダ10が第一スプリング52の付勢力に抗して後方に移動した時にシリンダ10の一方側への回転をガイドし、かつ前側輪ゴム係止部13を輪ゴム1の発射位置に移動させるものである。そして、シリンダ10における後部シリンダ10Bの後端部に形成された係止爪50と、銃本体2におけるシリンダ10後端部に対向する面に形成されて係止爪50が係止される被係止爪51と、後端軸部材11と銃本体2との間に設けられてシリンダ10を前方に付勢する第一スプリング52(コイルばね52)と、を備える。
係止爪50は、後部シリンダ10Bの後端部に対して、後端軸部材11の円周方向に沿うようにして複数(6つ)設けられている。より詳細に説明すると、係止爪50は、図2図6に示すように、シリンダ10の回転方向に向かうにつれて後方に突出する鋸歯状(ギザギザ)に形成され、かつ、後方から見た場合に弧状に形成されている。
被係止爪51は、銃本体2におけるシリンダ10後端部に対向する面に対して、後端軸部材11の円周方向に沿うようにして複数(左右に2つ)設けられている。より詳細に説明すると、被係止爪51は、シリンダ10の回転方向とは反対の方向に向かうにつれて前方に突出する鋸歯状(ギザギザ)に形成され、かつ、前方から見た場合に弧状に形成されている。
コイルばね52は、図2に示すように、シリンダ10の後端軸部材11と銃本体2のフレーム2bとの間に設けられて、シリンダ10を前方に付勢している。換言すれば、シリンダ10は、コイルばね52の付勢方向とは反対の方向に移動可能(すなわち、前後方向に移動可能)となっており、輪ゴム1の緊張時に、シリンダ10は、コイルばね52の付勢方向とは反対の方向に移動する。なお、コイルばね52は、銃本体2に形成された円穴2d内に収納されており、一端が後端軸部材11の突部11cに嵌められるとともにフランジ部11bに接し、他端が円穴2dの奥壁に接している。
このようなアシスト手段Bによれば、輪ゴム1の緊張時においてシリンダ10の円周方向一方側への回転をガイドし、かつ前側輪ゴム係止部13を輪ゴム1の発射位置に移動させることができる。すなわち、輪ゴム1を引っ張ることによって緊張させ、シリンダ10をコイルばね52の付勢力に抗して後方に移動させつつ、輪ゴム1を動力としてシリンダ10が回転する際に、係止爪50の傾斜面が、被係止爪51の傾斜面に沿って移動し、緊張した輪ゴム1が引っ掛けられた前側輪ゴム係止部13が輪ゴム1の発射位置に移動する。この時に、係止爪50と被係止爪51とが完全に合致した状態で係止する。
なお、係止爪50については複数の係止爪50のそれぞれが連続して並んでいる必要があるが、被係止爪51については、少なくとも一つ設けられていればよい。要は、係止爪50が、前側輪ゴム係止部13と後側輪ゴム係止部14との組の数の分だけ設けられ、被係止爪51が、係止爪50と対称的な形状に形成されていることである。
また、本実施形態では、係止爪50がシリンダ10側に設けられ、被係止爪51が銃本体2側に設けられるものとしたが、逆でもよい。すなわち、係止爪50が銃本体2側に設けられ、被係止爪51がシリンダ10側に設けられてもよい。
【0029】
次に、位置決め手段Cについて説明する。
この位置決め手段Cは、輪ゴム1の非緊張時においてシリンダ10が第二スプリング57の付勢力により前方に移動した時にシリンダ10の一方側への回転を規制するものである。そして、この位置決め手段Cは、シリンダ10における前部シリンダ10Aの前端部に形成された係止突片53と、銃本体2におけるシリンダ10前端部に対向する部位に形成されて係止突片53が係止される被係止部54と、を備える。
係止突片53は、前部シリンダ10Aの前端部に対して、シリンダ10の円周方向に沿うようにして複数(6つ)設けられている。より詳細に説明すると、係止突片53は、図2図6に示すように、前方に突出する二等辺三角形状に形成され、かつ、前方から見た場合に弧状に形成されている。
被係止部54は、銃本体2におけるシリンダ10前端部に対向する部位に対して、シリンダ10の円周方向に沿うようにして複数(左右に2つ)設けられている。より詳細に説明すると、被係止部54は、後方に突出する二等辺三角形状に形成され、かつ、後方から見た場合に弧状に形成されている。
このような形状の係止突片53および被係止部54を備えた位置決め手段Cによれば、輪ゴム1の非緊張時においてシリンダ10の円周方向一方側への回転を規制することができる。すなわち、輪ゴム1の後端部がフック31によって後方に引っ張られていない状態の時や、輪ゴム1が発射された直後に、係止突片53と被係止部54とが完全に合致した状態で係止している(図2図5参照)。逆に、輪ゴム1が緊張した時には、シリンダ10がコイルばね52の付勢方向とは反対の方向に移動するため、係止突片53は被係止部54から離間した状態となり、シリンダ10の回転規制が解除された状態となる。また、輪ゴム1が発射されてシリンダ10がコイルばね52の付勢力によって元の位置に戻る際は、1つ隣の係止突片53が被係止部54に係止した状態となる。
なお、係止突片53については、複数の係止突片53それぞれが連続して並んでいる必要があるが、被係止部54については、少なくとも一つ設けられていればよい。要は、係止突片53が、前側輪ゴム係止部13と後側輪ゴム係止部14との組の数の分だけ設けられ、被係止部54が、係止突片53と対称的な形状に形成されていることである。
また、本実施形態では、係止突片53がシリンダ10側に設けられ、被係止部54が銃本体2側に設けられるものとしたが、逆でもよい。すなわち、係止突片53が銃本体2側に設けられ、被係止部54がシリンダ10側に設けられてもよい。
【0030】
また、この位置決め手段Cは、輪ゴム1が発射された後のアシスト手段としても機能する。すなわち、まず、輪ゴム1が後方に引っ張られ始めた時に、係止突片53が被係止部54から離間し始めるとともに、シリンダ10が回転し始める。
そして、輪ゴム1が後方に引っ張られて緊張した時(スライド30が係止された時)には、係止突片53の頂点が被係止部54の頂点を越えた箇所に位置している。この時、係止突片53と被係止部54はまだ離間した状態である。
輪ゴム1が発射された後は、シリンダ10の前方への移動に伴って、係止突片53も被係止部54に接近していく。そして、係止突片53の傾斜面と被係止部54の傾斜面とが接した時に、係止突片53は、被係止部54の傾斜面に倣って移動し、最終的に被係止部54と互いに噛み合った状態となる。すなわち、位置決めされた状態となる。
また、係止突片53が被係止部54の傾斜面に倣って移動する際には、シリンダ10自体も僅かに回転移動することになる。すなわち、輪ゴム1の発射後に、シリンダ10の回転が、位置決め手段Cによってアシストされた状態となる。
【0031】
次に、ピッチ切り替え手段Dについて説明する。
このピッチ切り替え手段Dは、シリンダ10に備えられ、前側輪ゴム係止部を前記後側輪ゴム係止部よりも前記シリンダの回転方向の反対側に1ピッチずれた状態とするためのものであり、具体的には後部シリンダ10Bに設けられている。また、後部シリンダ10Bは、第一部位55と、第二部位56と、に分割されて構成されている。第一部位55は、後部シリンダ10Bにおける後側の部位を構成するとともに後側輪ゴム係止部14が設けられ、かつ、前後方向に移動可能であるとともにシリンダ円周方向の一方側およびその反対側に回転可能とされている。また、第二部位56は、後部シリンダにおける前側の部位を構成するとともに補助シリンダ10C(補助シリンダ10Cを用いない場合は前部シリンダ10A)が連結されている。
ピッチ切り替え手段Dは、以上のような第一部位55および第二部位56を含んで構成されるものであり、これら第一部位55および第二部位56の他に、第一部位55を第二部位56側に付勢する第二スプリング57(コイルばね57)と、第一部位55を円周方向の一方側に回転させた時と、その反対側に回転させた時に、第二部位56に対する第一部位55の回転を規制して位置決めを行う凹凸嵌合部(係止爪55a、被係止部56a)と、を備える。
より詳細に説明すると、まず、第一部位55は、当該第一部位55の後部側に上記の後側輪ゴム係止部14が設けられ、前端部から後端部にかけて円孔10aが貫通形成された円筒形状のものである。円孔10aは、その後部側が前部側よりも拡径された状態となっており、第二スプリングであるコイルばね57が拡径された箇所に収納されている。
また、第二部位56は、補助シリンダ10Cに連結する略円錐台形状の本体部と、本体部の中央から後方に突出する丸軸56bと、本体部の中央から前方に突出する角軸56cと、を備える。
丸軸56bは、第一部位55の円孔10aに挿入され、かつ第一部位55の後端部付近まで突出している。第一部位55は、この丸軸56bに沿って前後方向に移動可能であるとともに、丸軸56bの円周方向に沿って回転可能となっている。丸軸56bには、第二スプリングであるコイルばね57が装着されている。また、丸軸56bは、シリンダ10自体もしくは後部シリンダ10Bが後方に移動した時に、後端軸部材11の差込部11aにおける円穴11dに入り込み、シリンダ10自体もしくは後部シリンダ10Bが前方に移動した時には、円穴11dから抜けるように設定されている。
角軸56cは、補助シリンダ10Cに形成されて後方に向かって開口する角穴10bに差し込まれており、これにより、後部シリンダ10Bと補助シリンダ10C(前部シリンダ10A)が連動して回転可能となっている。
第二スプリングであるコイルばね57は、第一部位55の円孔10aにおける拡径部に収納されるとともに、第二部位56の丸軸56bに装着されている。さらに、その後端部は、後端軸部材11の差込部11aに接し、これにより、付勢力を発揮できるようになっている。
【0032】
ピッチ切り替え手段Dについて、より詳細に説明すると、図2に示すように、第一部位55における第二部位56側の端部には、第二部位56側に突出する係止爪55a(凹凸嵌合部における凸部)が形成され、第二部位56における第一部位55側の端部には互いに離間する複数(2つ)の被係止部56a(凹凸嵌合部における凹部)が形成されている。さらに、第一部位55は、第二スプリングであるコイルバネ57によって第二部位56側に付勢され、かつ、第二部位56の丸軸56bが第一部位55の円孔10aに挿入されることにより、第二部位56に対して連結した状態を維持できる。また、その連結状態を維持したまま、第二部位56から離間させたり、第二部位56に接触させたりすることができるように構成されている。
このような構成のピッチ切り替え手段Dによれば、第一部位55を第二部位56から離間させてから、シリンダ円周方向に回転させ、再度第二部位56に接触させる動作を行うことによって、第一部位55に形成された係止爪55aを、第二部位56に形成された一方の被係止部56aから他方の被係止部56aへと切り替えて係止させることができる。
なお、係止爪55aが、一方の被係止部56aに係止した状態においては、シリンダ10の前側輪ゴム係止部13と後側輪ゴム係止部14とが一直線上に並んだ状態となり、係止爪55aが、他方の被係止部56aに係止した状態においては、前側輪ゴム係止部13が、後側輪ゴム係止部14よりもシリンダ10の回転方向の反対側に1ピッチずれた状態となる。これにより、前側輪ゴム係止部13と後側輪ゴム係止部14との各組に輪ゴム1を引っ掛ける際にはピッチを揃えた状態としておき、前側輪ゴム係止部13と後側輪ゴム係止部14との各組に輪ゴム1を引っ掛けた後に、第一部位55を第二部位56に対して円周方向に回転させるだけで、引っ掛けた輪ゴム1の全てを同時にひねることができる。
各組の前側輪ゴム係止部13は、ピッチ切り替え手段Dによって、同組の後側輪ゴム係止部14よりもシリンダ10の回転方向(すなわち、一方側)の反対側に1ピッチずれた状態で、シリンダ10に配置されるが、実際の操作としては、第一部位55をシリンダ10の回転方向に回転させることによって、このような状態を構成している。
【0033】
以上の構成を踏まえ、輪ゴム1の装着方法の一例を説明する。
まず、第一部位55の係止爪55aを、第二部位56における一方の被係止部56aに係止させた状態とする。この場合、前側輪ゴム係止部13と後側輪ゴム係止部14とが一直線上に並んだ状態となっている。ここで、輪ゴム1を、各組の前側輪ゴム係止部13と後側輪ゴム係止部14とに引っ掛ける。
この状態で、第一部位55を、第二部位56に対してシリンダ円周方向に回転させ、第一部位55の係止爪55aを、第二部位56における他方の被係止部56aに係止させた状態とする。これにより、引っ掛けた輪ゴム1の全てを同時にひねることができ、各組の前側輪ゴム係止部13は、各組の後側輪ゴム係止部14よりもシリンダ10の回転方向の反対側に1ピッチずれた状態に配置されることになる。
【0034】
なお、図7においては、説明の便宜上、前側輪ゴム係止部13および後側輪ゴム係止部14に番号を付した。同じ番号が付された前側輪ゴム係止部13および後側輪ゴム係止部14が1つの組を構成している。
すなわち、番号「1」の前側輪ゴム係止部13および後側輪ゴム係止部14は、今回発射される輪ゴム1が引っ掛けられたものである。
番号「2」の前側輪ゴム係止部13は、既に輪ゴム1が発射され、シリンダ10の円周方向一方側に回転したものである。
番号「3」の前側輪ゴム係止部13および後側輪ゴム係止部14は、次回発射される輪ゴム1が引っ掛けられたものである。
図7の左図では、発射位置にある1本の輪ゴム1の後端部にフック31が引っ掛かった状態となっている。
この状態で、スライド30を手で後方に移動させると、中央図のように、フック31が引っ掛かった1つの輪ゴム1の後端部が後方に引かれ当該輪ゴム1が緊張する。また、このように輪ゴム1を緊張させるのと同時に、後端部が後方に引っ張られた輪ゴム1を動力としてシリンダ10が回転し、輪ゴム1の前端部が、1ピッチ分進んだ位置にある輪ゴム1の発射位置に移動する。
この状態で、トリガ20を操作すると、スライド30の係止が解除され、スライド30が前方位置に向けて移動する。そして、緊張した輪ゴム1の後端部に対するフック31の引っ掛かりが解除され、当該輪ゴム1が前方に向けて発射される。この時、シリンダ10が回転し、右図のように、次に発射される輪ゴム1の後端部が輪ゴム1の発射位置に移動する。そして、スライド30と共に前方に移動したフック31が当該次に発射される輪ゴム1の後端部に引っ掛かる。
図7では、以上のような輪ゴム1の発射およびシリンダ10の回転態様を模式的に表している。
【0035】
本実施の形態によれば、前側輪ゴム係止部13と後側輪ゴム係止部14に引っ掛けられた輪ゴム1を後方に引っ張って緊張させることでシリンダ10を回転させることができるので、発射される輪ゴム1自体を、シリンダ10を回転させるための動力として利用することができる。これによって、シリンダ10を回転させる手段として多くの部材が必要なくなるので、シンプルな構造で輪ゴム1を連続して発射できるとともに製造コストを低減できる。
【0036】
また、アシスト手段Bによって、シリンダ10の円周方向一方側への回転をガイドし、前側輪ゴム係止部13を輪ゴム1の発射位置に移動させるので、シリンダ10を1ピッチ分ごとに確実に回転させることができる。そのため、輪ゴム1をより正確に発射することができる。
さらに、このような輪ゴム1を動力としたシリンダ10の回転を、シリンダ10と銃本体2との間に設けられたアシスト手段Bによってアシストできるので、銃本体2の内部機構を簡素化できる。
【0037】
また、位置決め手段Cによって、輪ゴム1の非緊張時におけるシリンダ10の回転を規制できるので、輪ゴム1を後方に引っ張る際の操作や輪ゴム1を装着させる作業が行いやすくなる。すなわち、操作等を行う際におけるシリンダ10の回転を位置決め手段Cによって抑えることができるので、操作に係る精度を向上させることができる。
【0038】
また、ピッチ切り替え手段Dによって、前側輪ゴム係止部13と後側輪ゴム係止部14との各組に輪ゴム1を引っ掛ける際にはピッチを揃えた状態としておき、前側輪ゴム係止部13と後側輪ゴム係止部14との各組に輪ゴム1を引っ掛けた後に、第一部位55を第二部位56に対して円周方向に回転させるだけで、1ピッチずらして輪ゴム1をひねった状態とすることができるので、シリンダ10に対する輪ゴム1の装着が容易となる。さらに、シリンダ10に装着させた輪ゴム1の全てを一遍に1ピッチずらした状態にすることができるので効率が良い。
【0039】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。
【0040】
〔変形例1〕
例えば、フレーム2bのうち、シリンダ10の下方から前方にかけて設けられる略L字状部位2b1として、前後方向の長さがより長いものや短いものを採用してもよい。前後方向の長さが長い略L字状部位を採用する場合には、長さの長い補助シリンダを採用し、前後方向の長さが短い略L字状部位を採用する場合には、長さの短い補助シリンダを採用するか、補助シリンダ10Cそのものを採用しなくてもよい。
要は、シリンダ10を構成する前部シリンダ10Aと後部シリンダ10Bと補助シリンダ10Cは、角軸を角穴に差し込む形で連結される構造となっていることである。これにより、補助シリンダ10Cの有無や長短に関わらず、シリンダ10全体が連動して回転できるようになっている。
【0041】
〔変形例2〕
フレーム2bの下側には、グリップ2aよりも前方に位置して、ユーザが把持できる前グリップ(図示せず)を取り付けてもよい。これにより、ユーザは、グリップ2aと前グリップの双方を把持して、連発式輪ゴム銃100を両手持ちでき、輪ゴム1をより精度よく発射させることができる。
【0042】
〔変形例3〕
フレーム2bには、例えば後端部に、輪ゴム1を複数ストックしておける部品を取り付けてもよい。これにより、輪ゴム1を別の場所に補充しに行く手間や、発射した輪ゴム1を拾う手間を軽減できる。
【0043】
〔変形例4〕
上記実施形態では、トリガ20の他に係止部材23を設けてスライド30を係止することとしたが、トリガ20によってスライド30を係止する構造としてもよい。
【0044】
〔変形例5〕
上記実施形態ではシリンダ10の外周に1本ずつ計6本の輪ゴム1を取り付けるようにしたが、1箇所に複数本ずつ輪ゴム1を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 輪ゴム
2 銃本体
10 シリンダ
10A 前部シリンダ
10B 後部シリンダ
10C 補助シリンダ
10a 円孔
10b 角孔
13 前側輪ゴム係止部
14 後側輪ゴム係止部
20 トリガ
30 スライド
31 フック
50 係止爪
51 被係止爪
52 第一スプリング(コイルばね)
53 係止突片
54 被係止部
55 第一部位
55a 係止爪
56 第二部位
56a 被係止部
57 第二スプリング(コイルばね)
100 連発式輪ゴム銃
A スライド係止手段
B アシスト手段
C 位置決め手段
D ピッチ切り替え手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9