【解決手段】第1及び第2のトルク制御部11,21の回転速度推定部12,22は、第1のトルク制御部11において前記推定された発生トルクと前記慣性トルクとの偏差と前記第2のトルク制御部21において前記推定された発生トルクと前記慣性トルクとの偏差との和に基づいて、ダイナモメータ4a,5aの推定回転速度を求める。第1のトルク制御部11は、前記トルク入力値と、第2のトルク制御部21における前記偏差と、前記慣性トルクとに基づいて、第1のダイナモメータ4aをトルク制御する。第2のトルク制御部21は、前記トルク入力値と、第1のトルク制御部4aにおける前記偏差と、前記慣性トルクとに基づいて、第2のダイナモメータ4bをトルク制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両の試験装置において、車両の前後輪や左右輪などのような複数の車輪(第1輪及び第2輪)に対し、それぞれダイナモメータによって負荷を与えることにより、車両の走行状態を模擬する場合がある。このような場合に、ダイナモメータのトルク制御に上述の特許文献1に開示されている構成を適用すると、各ダイナモメータの発生トルクを精度良く制御することはできるものの、複数の車輪においてダイナモメータの回転速度を合わせることは難しい。
【0007】
すなわち、車両の各車輪に生じるトルクは異なるため、このトルクを推定してダイナモメータの発生トルクを制御する上述の特許文献1に開示されている構成では、それぞれのダイナモメータの発生トルクを合わせることは難しい。よって、上述の特許文献1に開示されている構成では、複数のダイナモメータの回転速度を合わせることは難しい。
【0008】
しかしながら、車両は、走行時には複数の車輪の回転速度が同じであるため、各車輪の回転速度に差が出ないような試験装置の構成にする必要がある。
【0009】
本発明の目的は、車両の走行状態を模擬する車両の試験装置において、該車両の第1輪及び第2輪にそれぞれ負荷を与えるようにトルク制御される第1及び第2のダイナモメータの回転速度を合わせることができる構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る車両の試験装置は、車両の走行状態を模擬する車両の試験装置である。この試験装置は、前記車両の第1輪及び第2輪に対してそれぞれ負荷を与えるように、トルク入力値を用いてトルク制御される第1及び第2のダイナモメータと、前記第1及び第2のダイナモメータの実回転速度をそれぞれ検出する第1及び第2の回転速度検出部と、前記第1及び第2の回転速度検出部によって検出された各実回転速度を用いて、前記第1及び第2のダイナモメータの発生トルクをそれぞれ制御する第1及び第2のトルク制御部とを備える。前記第1及び第2のトルク制御部は、それぞれ、前記各ダイナモメータの推定回転速度を求める回転速度推定部と、前記各実回転速度と前記各回転速度推定部によって求められた推定回転速度との差に基づいて、前記車両の発生トルクを推定する発生トルク推定部と、前記推定された発生トルクに基づいて慣性トルクを算出する慣性トルク算出部とを有する。前記回転速度推定部は、前記第1のトルク制御部において前記推定された発生トルクと前記慣性トルクとの偏差と前記第2のトルク制御部において前記推定された発生トルクと前記慣性トルクとの偏差との和に基づいて、前記推定回転速度を求める。前記第1のトルク制御部は、前記トルク入力値と、前記第2のトルク制御部における前記偏差と、前記慣性トルクとに基づいて、前記第1のダイナモメータをトルク制御する。前記第2のトルク制御部は、前記トルク入力値と、前記第1のトルク制御部における前記偏差と、前記慣性トルクとに基づいて、前記第2のダイナモメータをトルク制御する(第1の構成)。
【0011】
以上の構成では、第1及び第2のダイナモメータが、車両の第1輪及び第2輪にそれぞれ負荷を与えるように、トルク入力値を用いて第1及び第2のトルク制御部によってトルク制御される。これらのトルク制御部は、ダイナモメータの実回転速度と推定回転速度との差が外部(車両)から加わったトルク(発生トルク)によって生じているとして該トルクを推定し、該トルクからダイナモメータのトルク制御に必要な慣性トルクを求める。
【0012】
そして、前記第1のトルク制御部は、第2トルク制御部において推定された前記発生トルクと前記慣性トルクとの偏差を用いて、第1のダイナモメータをトルク制御し、前記第2のダイナモメータは、第1トルク制御部において推定された前記発生トルクと前記慣性トルクとの偏差を用いて、第2のダイナモメータをトルク制御する。これにより、第1及び第2のトルク制御部は、相手のトルク制御部が演算した加速トルクを用いて、第1及び第2のダイナモメータのトルク制御を行うことができる。よって、第1及び第2のダイナモメータの加速度が合うため、両者の回転速度の差を小さくすることができる。
【0013】
また、前記第1及び第2のトルク制御部は、第1トルク制御部において推定された前記発生トルクと前記慣性トルクとの偏差と、第2トルク制御部において推定された前記発生トルクと前記慣性トルクとの偏差との和に基づいて、ダイナモメータの推定回転速度を求める。すなわち、第1及び第2のトルク制御部において、一方のトルク制御部では、他方のトルク制御部における加速トルクも考慮してダイナモメータの推定回転速度を求めることができる。
【0014】
これにより、ダイナモメータの推定回転速度と実回転速度とが合うため、第1及び第2のトルク制御部で演算された加速トルクの分が慣性トルクに含まれない。よって、前記第1及び第2のトルク制御部が前記加速トルクに応じて第1及び第2のダイナモメータをトルク制御する場合に、前記加速トルクに対応する慣性トルクが発生して前記第1及び第2のダイナモメータのトルク制御を阻害するのを防止できる。
【0015】
前記第1の構成において、前記回転速度推定部は、前記偏差の和以外に、前記第1の回転速度検出部によって検出された前記第1のダイナモメータの実回転速度と、前記第2の回転速度検出部によって検出された前記第2のダイナモメータの実回転速度との差から求められた速度差トルクも用いて、前記推定回転速度を求める(第2の構成)。
【0016】
これにより、慣性トルクを求めるために用いられるダイナモメータの推定回転速度に、第1のダイナモメータの実回転速度と第2のダイナモメータの実回転速度との差(以下、実回転速度差)が考慮される。よって、この実回転速度差を考慮した第1及び第2のダイナモメータの推定回転速度は、該第1及び第2のダイナモメータの実回転速度にそれぞれ合うため、前記実回転速度差に対応する慣性トルクが発生しない。これにより、第1及び第2のダイナモメータのトルク制御が阻害されるのを防止できる。
【0017】
前記第1または第2の構成において、前記回転速度推定部は、前記偏差の和以外に、前記トルク入力値も用いて、前記推定回転速度を求める(第3の構成)。これにより、慣性トルクを求めるために用いられるダイナモメータの推定回転速度を算出する際に、トルク入力値が考慮される。よって、このトルク入力値を考慮した第1及び第2のダイナモメータの推定回転速度は、該第1及び第2のダイナモメータの実回転速度にそれぞれ合うため、前記トルク入力値に対応する慣性トルクが発生しない。これにより、第1及び第2のダイナモメータのトルク制御が阻害されるのを防止できる。
【0018】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記慣性トルク算出部は、前記推定された発生トルクに対して(Jc−Jm)/Jcを乗算することにより、前記慣性トルクを算出する。前記Jmは、前記ダイナモメータの慣性である。前記Jcは、前記車両の全体の慣性である(第4の構成)。
【0019】
これにより、車両全体の慣性を、第1輪及び第2輪がそれぞれ分担する慣性に分けて計算する必要がなくなるため、第1輪及び第2輪における慣性トルクを容易に求めることができる。すなわち、上述の第1の構成では、第1及び第2のトルク制御部は、ダイナモメータの推定回転速度を求める際に、他方のトルク制御部で求められた加速トルクも考慮しているため、車両全体の加速トルクを考慮している。したがって、上述の構成のように、慣性トルク算出部において、車両全体の慣性を用いて慣性トルクを求めることが可能になる。
【0020】
前記第4の構成において、前記慣性トルク算出部は、前記第1及び第2のダイナモメータの慣性の比を用いて、前記Jmを補正する(第5の構成)。第1及び第2のダイナモメータの慣性が異なる場合に、両者の慣性の比を用いてダイナモメータの慣性(Jm)を補正することにより、慣性トルクを精度良く求めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態に係る車両の試験装置によれば、第1及び第2のダイナモメータをそれぞれトルク制御する第1及び第2のトルク制御部は、第1及び第2のトルク制御部において推定された発生トルクと慣性トルクとのそれぞれの偏差の和に基づいて、前記第1及び第2のダイナモメータの推定回転速度を求める。この推定回転速度とダイナモメータの実回転速度との差を用いて、慣性トルク算出部によって慣性トルクを算出する。前記第1トルク制御部は、トルク入力値と、前記第2のトルク制御部における前記偏差と、前記慣性トルクとに基づいて、前記第1のダイナモメータをトルク制御する。前記第2のトルク制御部は、前記トルク入力値と、前記第1のトルク制御部における前記偏差と、前記慣性トルクとに基づいて、前記第2のダイナモメータをトルク制御する。これにより、車両の第1輪及び第2輪にそれぞれ負荷を与えるようにトルク制御される第1及び第2のダイナモメータの回転速度を合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る車両の試験装置1の概略構成を示す図である。この試験装置1は、例えば車両の車輪に走行状態を模擬するように負荷を与えるための装置である。試験装置1は、トルク制御装置2と、インバータ3a,3bと、ダイナモメータ4a,4bと、回転速度検出器5a,5bとを備える。
【0025】
試験装置1において、ダイナモメータ4a(第1のダイナモメータ)は、例えば車両の前輪または左輪(第1輪)に負荷を与える。一方、試験装置1において、ダイナモメータ4b(第2のダイナモメータ)は、例えば車両の後輪または右輪(第2輪)に負荷を与える。トルク制御装置2は、インバータ3a,3bに対して、ダイナモメータ4a,4bを回転駆動させるためのトルク指令を出力する。
【0026】
インバータ3a,3bは、トルク制御装置2から出力されるトルク指令に基づいて、ダイナモメータ4a,4bを駆動する。ダイナモメータ4a,4bは、発電機/電動機であって、発生トルクを制御することによって、車両の車輪等に対して実際に走行する車両の走行抵抗負荷を模擬できるように構成されている。ダイナモメータ4a,4bは、それぞれ、インバータ3a,3bによって駆動され、例えば車両の車輪に接触するローラ(図示省略)を回転させる。
【0027】
回転速度検出器5a,5b(第1及び第2の回転速度検出部)は、ダイナモメータ4a,4bの回転子の実回転速度を検出する。回転速度検出器5a,5bは、例えば、タコジェネレータである。なお、実回転速度の検出は、パルスエンコーダ、レゾルバ等の角度検出器を用いて行っても良い。
【0028】
インバータ3a,3b、ダイナモメータ4a,4b及び回転速度検出器5a,は、従来と同様の構成であるため、詳しい説明を省略する。
【0029】
トルク制御装置2は、トルク入力値に基づいて、インバータ3a,3bに出力するトルク指令を生成する。このトルク制御装置2では、ダイナモメータ4a,4bの推定回転速度を求めて、該ダイナモメータ4a,4bの実回転速度との差分を算出した後、該差分に基づいて外部(車両側)の発生トルクを推定する。そして、トルク制御装置2では、得られた外部の発生トルクの推定値を用いて、ダイナモメータ4a,4bの出力トルクを補正するための慣性トルクを算出し、該慣性トルクをインバータ3a,3bのトルク指令に利用する。
【0030】
ここで、上述のように、試験装置1は、例えば車両の前輪及び後輪(または左右輪)などのような2つの車輪に対して負荷を与えるために、それぞれの車輪に対応するダイナモメータ4a,4bを有する。これにより、それぞれの車輪に対して適した負荷をかけることが可能になる。しかしながら、車両の試験装置は、車輪同士の回転速度を合わせた状態で車両の試験を行う必要がある。
【0031】
そのため、トルク制御装置2では、車輪同士の回転速度の差を補正するトルク制御を行う。すなわち、トルク制御装置2では、一方の車輪に対して負荷を与えるダイナモメータ3aのトルク指令を算出する際に、他方の車輪に対して算出されたダイナモメータ4aの加速トルクを加算する。また、トルク制御装置2では、他方の車輪に対して負荷を与えるダイナモメータ4bのトルク指令を算出する際に、一方の車輪に対して算出されたダイナモメータ4bの加速トルクを加算する。これにより、ダイナモメータ4a,4bの回転加速度を合わせることが可能になるため、ダイナモメータ4a,4bの回転速度のずれを抑制することができる。
【0032】
詳しくは、トルク制御装置2は、第1電気慣性演算部11(第1のトルク制御部)と、第2電気慣性演算部21(第2のトルク制御部)と、第1トルク加算部31と、第1トルク指令生成部32と、第2トルク加算部41と、第2トルク指令生成部42と、加速トルク加算部51,52と、速度差トルク算出部61とを有する。なお、トルク制御装置2は、回路によって構成されていてもよいし、コンピュータ内にプログラム等によって実現されてもよい。
【0033】
第1電気慣性演算部11は、ダイナモメータ4aの出力トルクを補正するための慣性トルクを演算する。第2電気慣性演算部21は、ダイナモメータ4bの出力トルクを補正するための慣性トルクを演算する。第1電気慣性演算部11と第2電気慣性演算部21とは、制御対象であるダイナモメータ4a,4bが異なるだけで、構成は同じなので、以下では、第1電気慣性演算部11についてのみ説明する。
【0034】
第1電気慣性演算部11は、回転速度推定部12と、差分算出部13と、発生トルク推定部14と、慣性トルク算出部15と、加速トルク算出部16,17と、速度推定用トルク演算部18とを備える。
【0035】
なお、第2電気慣性演算部21は、第1電気慣性演算部11の各構成に対応して、回転速度推定部22と、差分算出部23と、発生トルク推定部24と、慣性トルク算出部25と、加速トルク算出部26,27と、速度推定用トルク演算部28とを備える。
【0036】
回転速度推定部12は、速度推定用トルク演算部18から出力されたトルクに基づいて、ダイナモメータ4aの推定回転速度を求める。差分算出部13は、回転速度推定部12で求めたダイナモメータ4aの推定回転速度と、回転速度検出器5aによって検出されたダイナモメータ4aの実回転速度との差分を算出する。
【0037】
発生トルク推定部14は、差分算出部13によって算出された前記差分を用いて、外部(車両)で発生していると推定されるトルク(推定トルク)を求める。慣性トルク算出部15は、発生トルク推定部14で求めた推定トルクを用いて、慣性トルクを算出する。この慣性トルクの算出については、特許4045860号公報に開示されている方法と同様であり、下式によって算出する。
慣性トルク=(Jc−Jm)/Jc・(推定トルク) (1)
ここで、Jcは、車両全体の慣性量であり、Jmはダイナモメータ4aの慣性量である。
【0038】
なお、第2電気慣性演算部21においても、発生トルク推定部14で求めた推定トルクを用いて、慣性トルク算出部15で上式により慣性トルクを算出する。
【0039】
慣性トルク算出部15で求められた慣性トルクは、外部(車両)の慣性モーメントと試験装置1のダイナモメータ4a及び図示しないローラ等の慣性モーメントとが同一になるように、ダイナモメータ4aに対して電気的な補正を行うための値である。
【0040】
加速トルク算出部16,17は、発生トルク推定部14で求められた外部(車両)の推定トルクと前記慣性トルクとの偏差を求める。この偏差は、ダイナモメータ4aを加速させるトルク(以下、加速トルク)である。加速トルク算出部16で算出された加速トルクは、速度推定用トルク演算部18に入力される一方、加速トルク算出部17で算出された加速トルクは、後述する加速トルク加算部52に入力された後、第2電気慣性演算部21の速度推定用トルク演算部28に入力される。
【0041】
速度推定用トルク演算部18では、加速トルク算出部16で算出された加速トルクに、後述する速度差トルク算出部61によって算出された速度差補正トルクと、第2電気慣性演算部21で算出された加速トルクとを加えることにより、回転速度推定部12でダイナモメータ4aの推定回転速度を求める際に用いられるトルクを算出する。
【0042】
以上のように、第1電気慣性演算部11において、回転速度推定部12でダイナモメータ4aの推定回転速度を求める際に、自身で算出した加速トルクに、第2電気慣性演算部21で算出された加速トルクを加えた値を用いることにより、回転速度推定部12で算出される推定回転速度とダイナモメータ4aの実回転速度との差が小さくなる。これにより、第1電気慣性演算部11で求められる慣性トルクを、第2電気慣性演算部21で算出した加速トルクの分、小さくすることができる。よって、後述するように、第1トルク加算部31に前記加速トルクが入力された場合でも、該加速トルクによって慣性トルクは大きくならないため、ダイナモメータ4aの回転速度が慣性トルクによって無駄に低下するのを抑制できる。
【0043】
また、第1電気慣性演算部11において、回転速度推定部12でダイナモメータ4aの推定回転速度を求める際に、後述する速度差トルク算出部61によって算出された速度差補正トルクを用いることにより、第1電気慣性演算部11で求められる慣性トルクを、前記速度差補正トルクの分、小さくすることができる。よって後述するように、第1トルク加算部31に前記速度差補正トルクが入力された場合でも、該速度差補正トルクによって慣性トルクは大きくならないため、ダイナモメータ4aの回転速度が慣性トルクによって無駄に低下するのを抑制できる。
【0044】
第1トルク加算部31は、トルク入力値に対して加速トルク加算部51の出力を加算する。加速トルク加算部51は、第2電気慣性演算部21で算出された加速トルクと後述する速度差トルク算出部61で算出された速度差トルクとを加算する。すなわち、第1トルク加算部31では、トルク入力値と、第2電気慣性演算部21で算出された加速トルクと、速度差トルクとを加算する。
【0045】
第1トルク指令生成部32は、第1トルク加算部31の出力と、第1電気慣性演算部11で求めた慣性トルクとの偏差を算出することにより、トルク指令を生成する。第1トルク指令生成部32によって生成されたトルク指令は、インバータ3aに出力される。
【0046】
なお、第2トルク加算部41及び第2トルク指令生成部42は、それぞれ、第1トルク加算部31及び第1トルク指令生成部32と同じ構成を有するため、詳しい説明を省略する。
【0047】
加速トルク加算部51は、第2電気慣性演算部21で求めた加速トルクと、後述する速度差トルク算出部61で求めた速度差トルクとの差を算出する。加速トルク加算部51は、演算結果を第1トルク加算部31に出力する。
【0048】
加速トルク加算部52は、第1電気慣性演算部11で求めた加速トルクと、前記速度差トルクとの和を算出する。加速トルク加算部52は、演算結果を第2トルク加算部41に出力する。
【0049】
これにより、第2電気慣性演算部21で求めた加速トルクを、ダイナモメータ4aの制御に用いることができるとともに、第1電気慣性演算部11で求めた加速トルクを、ダイナモメータ4bの制御に用いることができる。よって、ダイナモメータ4a,4bにおける回転速度の差を少なくすることができる。
【0050】
速度差トルク算出部61は、回転速度検出器5aによって検出されたダイナモメータ4aの回転速度と回転速度検出器5bによって検出されたダイナモメータ4bの回転速度との差を速度差トルクとして求める。具体的には、速度差トルク算出部61は、回転速度差算出部62と、PI制御部63とを有する。
【0051】
回転速度差算出部62は、ダイナモメータ4aの回転速度とモータ4bの回転速度との差を算出する。PI制御部63は、回転速度差算出部62で算出した回転速度の差を用いて、速度差トルクを算出する。
【0052】
回転速度差算出部62で求めた速度差トルクは、上述のように、加速トルク加算部51,52を介して、第1トルク加算部31及び第2トルク加算部41に入力される。これにより、上述の加速トルクだけでなく、速度差トルクもダイナモメータ4a,4bの制御に用いることができる。したがって、ダイナモメータ4a,4bにおける回転速度の差をより少なくすることができる。
【0053】
本実施形態では、ダイナモメータ4bに対する慣性トルクを求める第2電気慣性演算部21で算出した加速トルクをダイナモメータ4aの駆動制御に用いている。また、ダイナモメータ4aに対する慣性トルクを求める第1電気慣性演算部11で算出した加速トルクをダイナモメータ4bの駆動制御に用いている。すなわち、ダイナモメータ4a,4bのそれぞれの駆動制御において、一方のダイナモメータの慣性トルクを求める電気慣性演算部で算出した加速トルクを他方のダイナモメータの駆動制御に用いている。これにより、ダイナモメータ4a,4bの加速度を合わせることができるため、該ダイナモメータ4a,4bの回転速度を合わせることが可能になる。
【0054】
しかも、第1電気慣性演算部11で算出した加速トルクを第2電気慣性演算部21に入力し、ダイナモメータ4bの推定回転速度を求める際に用いている。また、第2電気慣性演算部21で算出した加速トルクを第1電気慣性演算部11に入力し、ダイナモメータ4aの推定回転速度を求める際に用いている。すなわち、第1電気慣性演算部11及び第2電気慣性演算部21は、それぞれが求めた加速トルクをもう一方に入力することにより、ダイナモメータ4a,4bの推定回転速度を求める際に利用している。
【0055】
これにより、ダイナモメータ4a,4bの駆動制御において上述のように加速トルクを考慮した場合でも、ダイナモメータ4a,4bの推定回転速度と実測値との差をなくすことができる。よって、ダイナモメータ4a,4bに対して、加速トルク分の慣性トルクが生じないようにすることができる。したがって、ダイナモメータ4a,4bの回転速度をより確実に合わせることができる。
【0056】
また、上述のように、第1電気慣性演算部11で算出した加速トルクを第2電気慣性演算部21に入力し、第2電気慣性演算部21で算出した加速トルクを第1電気慣性演算部11に入力することにより、第1電気慣性演算部11及び第2電気慣性演算部21において、車両全体の慣性量Jcを用いて慣性トルクを算出することができる。すなわち、第一電気慣性演算部11及び第2の電気慣性演算部21において、互いの加速トルクの和を用いてダイナモメータ4a,4bの推定回転速度を求めるため、慣性トルクを算出する際には、車両全体の慣性量Jcを考慮すればよい。よって、ダイナモメータ4a,4bが負荷を与える車輪の慣性量を該車輪毎に考慮する必要がなくなるため、慣性トルクの計算が容易になる。
【0057】
なお、上述のように、第1電気慣性演算部11で算出した加速トルクを第2電気慣性演算部21に入力し、第2電気慣性演算部21で算出した加速トルクを第1電気慣性演算部11に入力する構成の場合、慣性トルクを算出する式(1)において、ダイナモメータ4a,4bの慣性量が同等であることが前提である。ダイナモメータ4a,4b等(ローラ等も含む。以下同じ。)の慣性量が異なる場合には、一方の慣性トルクを算出する際に、慣性量の比を乗算すればよい。例えば、ダイナモメータ4a,4b等の慣性量がそれぞれJm1,Jm2の場合、ダイナモメータ4a等の慣性トルクを計算する際に、式(1)にJm2/Jm1をかけて求めればよい。これにより、ダイナモメータ4a,4b等の慣性量が異なる場合でも、精度良く慣性トルク及び加速トルクを算出することができる。
【0058】
しかも、上述の加速トルクに加えて、ダイナモメータ4a,4bに、該ダイナモメータ4aの回転速度とダイナモメータ4bの回転速度との差から求められる速度差トルクをそれぞれ入力することにより、ダイナモメータ4a,4bの回転速度の差をさらに確実になくすことができる。
【0059】
また、前記速度差トルクを、それぞれ、第1電気慣性演算部11及び第2電気慣性演算部21に入力してダイナモメータ4a,4bの回転速度を求める際に利用することにより、慣性トルクに前記速度差トルクの分が含まれないようにすることができる。これにより、ダイナモメータ4a,4bの回転速度をより確実に合わせることができる
【0060】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0061】
前記実施形態では、トルク入力値が第1トルク加算部31及び第2トルク加算部41に入力されている。すなわち、トルク入力値は、第1電気慣性演算部11及び第2電気慣性演算部21に入力されていない。
【0062】
しかしながら、
図2に示すように、トルク入力値を第1電気慣性演算部11及び第2電気慣性演算部21に入力するようにしてもよい。すなわち、
図2に示す試験装置100では、トルク入力値は、第1トルク加算部131及び第2トルク加算部141にそれぞれ入力された後、速度差トルク及び加速トルクとともに、第1電気慣性演算部11及び第2電気慣性演算部21に入力される。この構成により、慣性トルクにトルク入力値の分も含まれないため、その分、無駄な慣性トルクが生じずに、ダイナモメータ4a,5aの回転速度の低下を防止できる。
【0063】
前記実施形態では、速度差トルク及びトルク入力値が、それぞれ、第1電気慣性演算部11及び第2電気慣性演算部21に入力され、ダイナモメータ4a,4bの推定回転速度の算出に用いられている。しかしながら、速度差トルク及びトルク入力値の一方または両方が、第1電気慣性演算部11及び第2電気慣性演算部21に入力されなくてもよい。