【実施例】
【0049】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る静電容量センサについて説明する。
【0050】
(実施例1)
図1は、本実施例1に係る静電容量センサである近接センサ1の構成を示す概略回路図である。
【0051】
図1に示すように、前記近接センサ1は、第1の交流信号発生源である発振器2Aと、バッファ(増幅器)6Aと、送信電極(アンテナ)3とを有し、発振器2Aで生成した交流信号をバッファ6Aにより充分なエネルギーにして送信電極3に供給し、発振信号Eaを被検出領域へ放射するように構成している。
【0052】
前記発振器2Aは、第1の交流信号発生源であり、例えば水晶振動子を用いて構成するが、本実施例1においては本回路を外部から制御する図示しないCPUから交流信号を供給するものとしている。
【0053】
前記送信電極3から放射される発信信号Eaの周波数及び強度の安定性は、近接センサ1の出力の安定性を左右する。特に前記発振信号Eaは、後述する位相検出部10に使用する第2の交流信号発生源である発振器13の発信信号の周期以上の波長の変化があってはならない。
【0054】
前記近接センサ1は、被検出領域からの受信信号Ebを受信する第1の受信電極(アンテナ)4Aと、前記受信信号Ebを増幅する増幅器である第1のチャージアンプ5Aと、を有している。
【0055】
同様に、前記近接センサ1は、被検出領域からの受信信号Ebを受信する第2の受信電極(アンテナ)4Bと、前記受信信号Ebを増幅する増幅器である第2のチャージアンプ5Bと、を有している。
【0056】
更に、前記近接センサ1は、前記発振器2Aからの発振信号を積分する第1の積分回路7Aと、前記発振器2Aからの発振信号を反転増幅し後述する検波器9Aで検波を行う参照信号を生成するための反転増幅器12Aと、この反転増幅器12Aの出力信号を積分する第2の積分回路7Bと、を有している。
【0057】
図1に示す近接センサ1では、発振器2Aからの交流信号を第1の積分回路7Aにより積分して三角波を生成するが、この三角波の振幅と第1の受信電極4Aからの入力信号の振幅との比率は増幅率を決定する。前記第2の積分回路7Bに関しても同様である。
【0058】
本願発明者の実験の結果、これらを同程度とすることがSN比向上に最適であることが判明した。
【0059】
なお、本実施例1においては、三角波をデューティー50%でコンパレートすると、コンパレートされた矩形波信号の位相は、第1の交流信号発生源である前記発振器2Aが生成する矩形波信号の位相を90°遅らせたものとなることを仮定しておく。
【0060】
前記近接センサ1は、更に前記第1のチャージアンプ5A、及び、第1の積分回路7Aの各出力信号を合成する第1の合成器15Aと、コンパレータ8Aと、前記第2のチャージアンプ5B、及び、第2の積分回路7Bの各出力信号を合成する第2の合成器15Bと、コンパレータ8Bと、前記コンパレータ8A、8Bの出力信号を検波する検波器9Aと、この検波器9Aの出力信号を時間軸方向に検出(計数)する位相検出部10と、この位相検出部10に交流信号である発信信号を供給する第2の交流信号発生源としての発振器13と、出力端子11を有している。
【0061】
前記コンパレータ8A、8Bは、各々第1、第2の合成器15A、15Bの出力信号を各々2値化し参照信号として検波器9Aに供給する。
【0062】
前記第1の受信電極4Aと第2の受信電極4Bは、それぞれ同じ温度特性を有するように設定している。
【0063】
また、前記第1の受信電極4Aと第2の受信電極4Bは、例えば、形状変更、加工が容易なVFF(ビニルフレキシブルフラット)コードを用いて構成するとともに、対をなし、同じ長さを有して平行に配置された直線状の電極、又は同心円状に配置されたリング状の電極等に構成している。なお、信号を増強するために容量を増加させたい場合は、アルペット板を矩形に切り抜いたものを重ね、又はこれらを曲げたものを用いて構成してもよい。
【0064】
このような前記第1の受信電極4A、第2の受信電極4Bの構成により、第1の受信電極4A、第2の受信電極4Bを物体Oの形状に対応した形状とすることが容易であり、更に、これらの検出特性の均等化により検出信号の分解能向上に寄与することが可能となる。
【0065】
前記反転増幅器12Aは、信号移相部の一例であり、前記コンパレータ8Aは第1の合成部15Aの一部として、前記コンパレータ8Bは第2の合成部15Bの一部として構成している。
【0066】
前記物体Oは、被検出領域内で移動する、例えば、人間の指等の適度な誘電率を持つ被検出物体である。
【0067】
次に、本実施例1の近接センサ1の動作を、
図2乃至
図4を参照して説明する。ここに、
図2乃至
図4は、近接センサ1の動作を説明するための波形図である。
【0068】
本実施例1の近接センサ1において、前記発振器2Aが生成した交流信号をバッファ6Aにより増幅し、送信電極3により被検出領域へ発振信号Eaとして放射する。
【0069】
前記送信電極3から放射された発振信号Eaは、送信電極3で生成された電荷によって、被検出領域に電界を形成する。
【0070】
第1の受信電極4A及び第2の受信電極4Bは、被検出領域に存在する大気、誘電体及び物体O等による分極からの寄与を含めた電界から、電荷を生成する。
【0071】
すなわち、第1の受信電極4A及び第2の受信電極4Bは、被検出領域に形成される電界に応じた受信信号Ebを受信する。
この時、被検出領域に存在する物体Oが一切動かなければ、送信電極3が送信する発振信号Eaが形成する電界は定常的な状態となり、第1の受信電極4A及び第2の受信電極4Bが受信する受信信号Ebは安定した位相と振幅を持つ。
【0072】
一方、被検出領域内で、例えば、人間の指等の適度な誘電率を持つ物体Oが移動すると、第1の受信電極4A及び第2の受信電極4Bが受信する受信信号Ebの振幅が変化する。
【0073】
前記近接センサ1が、一般に使用上想定するような物体Oの距離(例えば、リング状アンテナの直径又は棒状アンテナの長さと同程度)では、物体Oが移動しても、第1の受信電極4A及び第2の受信電極4Bが受信する受信信号Ebの位相の変化は殆ど無い。
本実施例1の近接センサ1において、前記発振信号Eaは、前記バッファ6Aで増幅され、回路内では電源電圧を振幅とする矩形波の発振信号であり、送信電極3により空間に放出される。
【0074】
この場合に、第1の受信電極4A及び第2の受信電極4Bが受信する受信信号Ebは、物体Oの有無により、その振幅が変化する。
以下の説明では、物体Oが近接センサ1から遠く離れた状態(近接していない状態)を第1の状態とし、物体Oが近接センサ1に近接した状態を第2の状態とする。
【0075】
図2に示す受信信号Eb1は、第1の状態における、小さな振幅を持つ矩形波である。また、受信信号Eb2は、第1の状態と比較して振幅が増加した第2の状態の矩形波である。
【0076】
前記発振器2Aからの矩形波である発振信号は、前記第1の積分回路7Aにより、小さな振幅の三角波信号LPF(Ea)となる。
【0077】
この三角波信号LPF(Ea)は、
図2に破線で示す中間電位を中心に再度2値化することにより、発振信号Eaから90°位相の遅れた矩形波信号DLPF(Ea)となる(図示せず)。
【0078】
この位相の遅れは一例であって、前記第1の積分回路7Aの定数で決まるものである。
この例では、三角波の振幅が、チャージアンプ5Aにより増幅された第1の受信電極4Aからの信号振幅と同程度、かつ、受信信号からの位相遅れが90°程度となるように設定している。
【0079】
第1の状態では、第1のチャージアンプ5A及び第1の積分回路7Aの接続点において、前記第1の合成器15Aにより増幅された受信信号Eb1と三角波信号LPF(Ea)は合成され、第1の状態の合成信号D1(Eb1+LPF(Ea))が生成される。
【0080】
第2の状態では、第1のチャージアンプ5A及び第1の積分回路7Aの接続点において、増幅された受信信号Eb2と三角波信号LPF(Ea)は合成器15Aにより合成されて、第前記第1の合成器15Aにより2の状態の合成信号D2(Eb2+LPF(Ea))が生成される。
【0081】
図2に示す再2値化信号F1は、第1の状態の合成信号D1(Eb1+LPF(Ea))をコンパレータ8Aにより、破線で示す中間電位を基準として、再度2値化した信号である。
【0082】
また、再2値化信号F2は、第2の状態の合成信号D2(Eb2+LPF(Ea))をコンパレータ8Aにより、破線で示す中間電位を基準として、再度2値化した信号である。
【0083】
図2に示すように、再2値化信号F2は、再2値化信号F1に対して、位相がP1だけ、僅かに進むことになる。
再2値化信号F2の位相が僅かに進む理由は、次の通りである。
【0084】
すなわち、LPF(Ea)と、第1の状態の受信信号Eb1及び第2の状態の受信信号Eb2とでは位相が90°異なる。
【0085】
また、第1の状態の受信信号Eb1より第2の状態の受信信号Eb2の方が、振幅が大きい。更に、第2の状態の方が、LPF(Ea)に対して位相の異なる信号を加算する割合が大きい。
【0086】
後述するように、第1の状態の合成信号D1(Eb1+LPF(Ea))と、第2の状態の合成信号D2(Eb2+LPF(Ea))の位相の違いは、物体Oの近接の度合いに相関する検出量である。
【0087】
すなわち、位相の違いは、近接センサ1のSN比を決定するものであることから、できるだけ大きく取れるようにするのが望ましい。
【0088】
図3において、反転発振信号Ea’は、反転増幅器12Aの出力信号であり、発振信号Eaの180°移相信号である。以下、反転発振信号Ea’とEb1,Eb2の合成について述べる。
【0089】
矩形波の反転発振信号Ea’は、積分回路7Bにより変形され、小さな振幅の三角波信号LPF(Ea’)となる。
【0090】
三角波信号LPF(Ea’)は、2値化することにより反転発振信号Ea’から90°位相の遅れた矩形波信号DLPF(Ea’)となる(図示せず)。
【0091】
ここで、矩形波信号DLPF(Ea’)は、Eaから90°位相の進んだ矩形波と見ることもできる。
第1の状態では、チャージアンプ5B及び積分回路7Bの接続点において、受信信号Eb1と三角波信号LPF(Ea’)は合成され、第1の状態の反転合成信号D1’(Eb1+LPF(Ea’))が生成される。
【0092】
第2の状態では、チャージアンプ5B及び積分回路7Bの接続点において、受信信号Eb2と三角波信号LPF(Ea’)は合成され、第2の状態の反転合成信号D2’(Eb2+LPF(Ea’))が生成される。
【0093】
再2値化反転信号F1’は、第1の状態の反転合成信号D1’(Eb1+LPF(Ea’))を、破線で示す中間電位を基準として、合成器15B及びコンパレータ8Bにより再度2値化した信号である。再2値化反転信号F2’は、第2の状態の反転合成信号D2’(Eb2+LPF(Ea’))を、破線で示す中間電位を基準として、合成器15B及びコンパレータ8Bにより再度2値化した信号である。
【0094】
図3に示すように、再2値化反転信号F2’は、再2値化反転信号F1’に対して、位相がP2だけ、僅かに遅れることになる。
【0095】
位相が僅かに遅れる理由は、次の通りである。
すなわち、第1の状態の増幅された受信信号Eb1より第2の状態の増幅された受信信号Eb2の方が振幅が大きく、第2の状態の方が、LPF(Ea)に対して位相の異なる信号を加算する割合が大きいためである。
第1の状態の反転合成信号D1’(Eb1+LPF(Ea’))と第2の状態の反転合成信号D2’(Eb2+LPF(Ea’))の位相の違いは、物体Oの近接の度合いに相関する検出量である。すなわち、位相の違いは、近接センサ1のSN比を決定するものなので、できるだけ大きく取れるようにするのが望ましい。
【0096】
図2及び
図3に示したように、発振信号Eaと増幅された受信信号Ebを合成した場合と、反転発振信号Ea’と増幅された受信信号Ebを合成した場合では、同じ増幅された受信信号Ebを合成したとしても、増幅された受信信号Ebの振幅の変化に対する各々の合成信号の移相方向は反対になる。
【0097】
次に、
図4を用いて、各々移相方向が反対になった、再2値化信号F1及びF2と、再2値化反転信号F1’及びF2’から直流電圧を得る仕組みを説明する。
図4の最上段には、第1の状態の合成信号D1(Eb1+LPF(Ea))及びこれを二値化した再2値化信号F1を示し、次段には、第1の状態の反転合成信号D1’(Eb1+LPF(Ea’))及びこれを2値化した再2値化反転信号F1’を示した。
【0098】
パルス信号G1は、第1の状態において、第1の合成器15A及びコンパレータ8Aから出力される再2値化信号F1及び第2の合成器15B及びコンパレータ8Bから出力される再2値化反転信号F1’に基づいて、検波器9Aから出力される信号である。
【0099】
パルス信号G1は、再2値化信号F1及び再2値化反転信号F1’が互いに一致する部分において、パルス幅P3を持つパルスが発生するように生成されている。
【0100】
すなわち、パルス信号G1は、再2値化信号F1及び再2値化反転信号F1’をEXOR演算した結果に相当する。
【0101】
図4において、パルス信号G1の次段には、第2の状態の合成信号D2(Eb2+LPF(Ea))及びこれを二値化した再2値化信号F2を示し、次段には、第2の状態の反転合成信号D2’(Eb2+LPF(Ea’))及びこれを2値化した再2値化反転信号F2’を示した。
【0102】
パルス信号G2は、第2の状態において、第1の合成器15Aから出力される再2値化信号F2及び第2の合成器15Bから出力される再2値化反転信号F2’に基づいて、検波器9Aから出力される信号である。
【0103】
パルス信号G2は、再2値化信号F2及び再2値化反転信号F2’が互いに一致する部分において、パルス幅P4を持つパルスが発生するように生成されている。
【0104】
すなわち、パルス信号G2は、再2値化信号F2及び再2値化反転信号F2’をEXOR演算した結果に相当する。
【0105】
受信信号Eb2の振幅は受信信号Eb1の振幅より大きいので、各々の矩形波信号が反対方向に移相する量が増加して、互いに信号が一致しない部分が増加する。
【0106】
したがって、パルス幅P4は、パルス幅P3と比較して、幅が広いパルスとなっている。
図4に示すパルス信号G1及びパルス信号G2の論理演算結果は、前記位相検出部10により、第1の交流信号発生源である前記発振器2Aの発信信号に比べて非常に大きな周波数を持つ第2の交流信号発生源である前記発振器13の発信信号29の波数として計数され、計数結果はパルス幅に比例した数値又は直流電圧に変換され、出力端子11に出力される。
【0107】
この場合の計数手段としては、例えば
図8に示すように、発振器2Aの一周期あたり、ゲート信号28(パルス信号G1又はG2)の値が1(アクティブ)になっている間だけ第2の交流信号発生源である発振器13の出力する発信信号29の数を計数する論理回路で実現することができる。
【0108】
すなわち、ゲート信号28及び発信信号29の論理演算結果である信号30を計数する論理回路を前記位相検出部10に構成すればよい。
この手段では、前記発信信号29の数を計数するという構成とすることで、従来のゲート信号28をLPFにより平滑化した電圧レベルを見る方法に比べて、結果が電源電圧に影響されないという利点がある。
【0109】
一般に電源電圧は温度などで変動するが、電源電圧に比べて非常に小さな出力しか得られない本実施例1の近接センサ1では大きな特徴となる。
【0110】
この方法においては、計数結果の分解能は発信信号29の周波数を大きくすればいくらでも上げることができるが、回路系の位相ノイズの大きさ以上の分解能を得ることはできない。
【0111】
しかしながら、発振器2Aの発信信号の1回の周期に対して、ゲートされた発振器13の波数としてある計数値を得たとして、これを指定した回数だけ発振器2Aの何周期かに亘り、移動平均回路により移動平均すればその平均値は精度の良い、すなわち、分解能の高いものとすることができる。但し、時間分解能は平均回数だけ失われる。
【0112】
移動平均は、一般に平均回数分のデータを記憶しておき、最近のデータを加算する代わりに最古のデータを減算し、この結果を平均回数で除算することにより成されるが、平均回数が多くなるにつれて記憶しておくデータ量が大きくなる。
【0113】
本実施例1においては、前記発振器2Aの発信信号の数を積算する積算回路と、平均化回路とを前記位相検出部10に組み込み、ある期間に亘って新しい値を積算回路により積算し続け、平均化回路により、平均値を求めた後、新しい値を加える都度、積算した値を指定した数値で割った値を減算して位相ずれの量を求めることで前記パルス信号G1又はG2のパルス幅に比例した高分解能の数値又は直流電圧として出力端子11に出力する。
【0114】
ここで、従来の移動平均法について、簡単の為4回の移動平均を例にとって説明すると、データをXiとすれば移動平均値Siは、
Si =Xi+Xi+1+Xi+2+Xi+3 (1)
Si+1=Xi+1+Xi+2+Xi+3+Xi+4 (2)
したがって、(2)−(1)により、Si+1−Si = Xi+4 − Xi、すなわち、
Si+1 = Si + Xi+4 − Xiとなる。
この場合の移動平均法においては移動平均値Si+1の値はその前のSiに新しいデータXi+4を加え、最初(4回平均なら4個前)のデータXiを減じて行けば得られる。
【0115】
本発明が採用する擬似的な移動平均法においては、データXiの値を記憶するのではなく、データXiの値はSi/4とさほど変わらないであろうという予測に基づき、減算するデータXiの値をSi/4で代替するものである。
したがつて、上述した擬似的な移動平均法においては、
Si+1 = Si + Xi+4 − Si/4として、この式により移動平均値Si+1を求めるものであり、この擬似的な移動平均法による実験の結果は良好であることを確認した。
【0116】
更に、計算機の仕組みから、/2は数値を1ビット右シフト、/4は数値を2ビット右シフト、/256は8ビット右シフトで計算すると除算よりはるかに早く計算できることが判明した(ただし、平均回数は2のn乗とする)。
例えば、1100(12)を1ビットシフトすると0110(6)となり、更に1ビットシフトすると0011(3)となる。
【0117】
数1に256回の移動平均を行う場合における本実施例1の擬似的な移動平均法の数式を示す。
【0118】
【数1】
【0119】
この場合には、データXiを256個記憶する必要がなく前記位相検出部10の構成の簡略化を図ることができるという利点がある。
【0120】
数2に256回の移動平均を行う場合における従来の移動平均法の数式を示す。
【0121】
【数2】
【0122】
この場合には、データXiを256個記憶する記憶容量が必要であり、位相検出部10の回路構成が大規模化する。
【0123】
ここで、前記積算した値を割る指定値は、2の累乗からなる値とする。
【0124】
このような構成によれば、前記位相検出部10に大量のデータを記憶しておく必要は無くなり、前記位相検出部10の回路構成の小規模化を図ることができるとともに、結果として高感度の検出信号を得ることが可能となる。
【0125】
図5は、本実施例1における前記第1又は第2のチャージアンプ5A又は5Bの構成を模式的に記したものである。
【0126】
図5において、出力端子20は、送信電極3の導線部を示し、入力端子21は第1の受信電極4A又は第2の受信電極4Bの導線部を示し、送信電極3の導線部と、第1の受信電極4A又は第2の受信電極4Bの導線部との間の空間の被測定容量C1をコンデンサ17で示している。
【0127】
また入力端子21とグランドの間には模式上寄生容量(送信電極3、第1の受信電極4A又は第2の受信電極4Bが構成する容量)C2を有するコンデンサ18が形式上挿入されるのと等価である。
【0128】
被測定容量C1を増幅する前記第1又は第2のチャージアンプ5A又は5Bは、入力端子21の電荷を反転入力とするオペアンプ19及び帰還容量C3を有するコンデンサ16により構成され、オペアンプ19の出力端子を第1又は第2のチャージアンプ5A又は5Bの出力部23で示す。
【0129】
この構成において前記第1又は第2のチャージアンプ5A又は5Bの入力部は前記出力端子20となる。
【0130】
図5に模式的に示した第1又は第2のチャージアンプ5A又は5Bにおいて、その入力部(前記出力端子20)よりの入力信号をVinとし、出力部23の出力信号Voutとして、増幅率Vout/Vinを計算すると以下のようになる。
【0131】
図5に模式的に示した第1又は第2のチャージアンプ5A又は5Bにおいて、入力信号Vinと出力信号Voutとの間に鳳テブナンの定理を適用すると、
図5に示す回路は
図6に示す回路に等価的に変換される。
【0132】
すなわち、
図6において、第1又は第2のチャージアンプ5A又は5Bの入力部(前記出力端子20)とオペアンプ19との間には、被測定容量C1を表すコンデンサ17ではなく、被測定容量C1を示すコンデンサ17及び寄生容量C2を示すコンデンサ18が並列で配置され、寄生容量C2を表すコンデンサ18はもはや接地されない。
【0133】
ただし、入力部(前記出力端子20)における入力信号Vinは、C1/(C1+C2)倍されたもので置き換えられる。
【0134】
ここに、第1又は第2のチャージアンプ5A又は5Bの増幅率Vout/Vinは、次のように容易に計算される。
【0135】
すなわち、入力部(前記出力端子20)のインピーダンスを、Zi=1/jω(C1+CC2)及び帰還部のインピーダンスZr=1/jωC3とすると、反転増幅器19の増幅率はZr/Zi=(C1+C2)/C3となるが、入力電圧はC1/(C1+C2)倍されているので、増幅率Vout/Vin=(C1+C2)/(C3×C1)/(C1+C2)=C1/C3となる。
【0136】
再記すると、出力信号Vout=(C1/C3)×Vinとなり、これは寄生容量C2の値に依存しないことを示している。
【0137】
したがって、上述した構成の第1又は第2のチャージアンプ5A又は5Bを用いることにより、本実施例1の近接センサ1は、前記寄生容量C2に影響されることなく、すなわち、前記送信電極3、第1、第2の受信電極4A、4Bの静電容量の変化に影響されることなく、物体Oからの受信信号Ebを増幅した受信信号Eb1又はEb2を得ることが可能となる。
【0138】
図7に前記積分回路7A又は積分回路7Bに相当する積分回路7Cの構成を模式的に示す。
【0139】
前記積分回路7Cの入力部24には、第1の交流信号発生源である発振器2Aの発信信号を入力し、また、オペアンプ19の入力部には抵抗26を接続し、オペアンプ19の入力部と出力部25との間にはコンデンサ27を接続して、積分結果を出力部25より得るように構成したものである。
【0140】
この場合、前記発振器2Aの発信信号は矩形波信号なので、積分回路7Cの出力信号は三角波信号となる。
【0141】
そして、前記三角波信号の傾斜部の傾きは、前記抵抗26及びコンデンサ27の値により自由に設定することが可能である。
【0142】
(実施例2)
次に、
図9を参照して、本発明の実施例2に係る近接センサ1Aについて説明する。
【0143】
なお、
図9に示す実施例2の近接センサ1Aにおいて、既述した実施例1の近接センサ1の場合と同一要素には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0144】
本発明の実施例2に係る近接センサ1Aにおいて、既述した実施例1の近接センサ1では、合成信号(Eb+LPF(Ea))と反転合成信号(Eb+LPF(Ea’))の位相を比較することにより、その一方の変化のみを見る場合に比べてSN比が向上し、大きな出力信号を得ることができるが、回路規模が大きくなることを考慮して、反転信号側の各回路要素を省略し、全体として簡略構成としたことが特徴である。
【0145】
すなわち、前記近接センサ1Aにおいては、前記第2の受信電極4B、第2のチャージアンプ5B、第2の積分回路7B、コンパレータ8B、反転増幅器12A、第2の合成器15Bを省略している。
【0146】
このような構成の実施例2によれば、出力信号のSN比が厳しく要求されないような用途に適用して好適な簡略構成の近接センサ1Aを実現することができる。
但し、本発明の技術的範囲は上述した実施例の内容に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。