【課題】本発明は、USB3.1等の高速信号伝送用多芯ケーブルに使用される高速信号伝送用コネクタであって、高周波におけるインピーダンス特性及びノイズ性能の低下を抑制することができる高速信号伝送用コネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】高速信号伝送用コネクタ100は、同軸線14を含む複数の信号線11を編込線12で覆い、編込線12を被覆13で覆うことにより構成される高速信号伝送用ケーブル10に接続され、高速信号伝送用ケーブル10を構成する複数の信号線11、14のそれぞれに接続される複数のコンタクト端子107と、複数のコンタクト端子107を配列して固定するインシュレータ105と、インシュレータ105の高速信号伝送ケーブル10側に配置され、高速信号伝送ケーブル10の複数の信号線11、14を配列し、導電性を有する材料で形成されるケーブル収納部104とを備えることを特徴とする。
前記高速信号伝送用ケーブルの複数の信号線には、芯線がシールド線で覆われた高速信号伝送用の複数の同軸線が含まれることを特徴とする請求項2に記載の高速信号伝送用コネクタ。
【背景技術】
【0002】
情報技術の発達に伴い、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、音楽プレーヤ、カーエレクトロニクス、あるいは、その他の電子デバイスで使用されるコネクタについても、安定した形で信号伝送速度を高速化することが求められている。また、コンピュータ等の情報機器に周辺機器を接続するためのシリアルバス規格の1つであるUSB(Universal Serial Bus)規格が知られている。
【0003】
USB規格は、最大転送速度の向上などを求めて何度か規格が拡張されており、これらは1.1から3.1まで上位互換であり、機能や性能が下位規格に縛られることを除けば、下位規格品と上位規格品を接続しても正しく動作することが求められている。最新のUSB3.1規格では、USB3.0のデータ転送速度5Gbpsの「SUPER SPEED(Gen 1)」モードに加えて、新たに最大転送速度10Gbpsを誇る「SUPER SPEED PLUS(Gen 2)」モードが追加されている。また、USB3.1規格では、電気の最大出力が20V×5A(100W)まで強化されており、これはUSB3.0の5V×900mA(4.5W)と比較して約22倍もの電源供給が可能であり、さらに以前のUSB2.0規格から比較すると約40倍にもなり、飛躍的に電源供給能力が高くなっている。また、USB3.1規格には、上下の向きが決まっており、サイズがやや大きいtypeAと、12ピンが2列並列に並び、上下の向きが決まっておらず、逆向きに差しても機能するtypeCがある。
【0004】
従来から高速伝送用ケーブルとして、ツイストペアケーブルが使用されてきた。一般に、ツイストペアケーブルには、アンシールデッドツイストペアケーブル(UTP)とシールデッドツイストペアケーブル(STP)がある。アンシールデッドツイストペアケーブルは、一対の単線を撚り合わせることにより形成されたケーブルである。アンシールデッドツイストペアケーブルは、単なる平行線と比較して、外部からのノイズの影響を受け難く、ノイズ輻射も少ないといった良好なノイズ性能を有し、または取り回しが容易で安価であることから広く普及している。しかし、アンシールデッドツイストペアケーブルは、同軸ケーブルと比較するとノイズ性能が良いとはいえない。そこで、一対の単線を撚り合わせたものを導電シールドで被覆することによりノイズ性能をより良くしたシールデッドツイストペアケーブルも広く普及している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、ツイストペアケーブルを利用した多芯ケーブル用の電気コネクタが記載されており、この電気コネクタでは、ツイストペアケーブルの撚り戻し部におけるインピーダンスの増加またはノイズ性能の低下を抑制できることが記載されている。シールデッドツイストペアケーブルでは、ディファレンシャルペア線(2本)とドレイン線をツイストしてアルミ箔等で覆うシールド構造とすることにより高速伝送を実現している。しかし、コネクタと接続する部分は、コンタクトと圧着する必要があるため、アルミ箔を剥ぐ必要があり、アルミ箔を剥ぐことによりツイスト状態でなくなる。特許文献1に記載された電気コネクタでは、コネクタ側において金属などにより上記3本のケーブルをツイストまたは近接状態で覆うことにより、シールド構造を維持している。しかしながら、最終的にコンタクトを配列する際、ペア線とドレイン線の距離が一定でなくなるため、伝送特性の低下が生じてしまうという問題がある。
【0007】
また、ツイストペアケーブルでは、そもそもシールデッドツイストペアケーブルを利用したとしてもUSB3.1規格で規定する最大転送速度10Gbpsを達成するのが難しく、高速伝送用の信号線を全て同軸ケーブルにして高速信号伝送を実現することが試みられている。また、同軸ケーブルを使用した場合にも、コネクタ内部でインピーダンスの増加またはノイズ性能の低下を抑制する必要がある。
【0008】
従って、本発明は、USB3.1等の高速信号伝送用多芯ケーブルに使用される高速信号伝送用コネクタであって、高周波におけるインピーダンス特性及びノイズ性能の低下を抑制することができる高速信号伝送用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の高速信号伝送用コネクタは、複数の信号線を編込線で覆い、編込線を被覆で覆うことにより構成される高速信号伝送用ケーブルに接続される高速信号伝送用コネクタであって、上記高速信号伝送用ケーブルを構成する複数の信号線のそれぞれに接続される複数のコンタクト端子と、上記複数のコンタクト端子を配列して固定するインシュレータと、上記インシュレータの上記高速信号伝送ケーブル側に配置され、上記高速信号伝送ケーブルの上記複数の信号線を配列し、導電性の材料で形成されるケーブル収納部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、上記導電性を有する材料で形成されるケーブル収納部の周囲を覆う外部金属シェルをさらに備えるものとしてもよい。
【0011】
また、上記高速信号伝送用ケーブルの複数の信号線には、芯線がシールド線で覆われた高速信号伝送用の複数の同軸線が含まれるものとしてもよい。
【0012】
また、上記複数の同軸線の周囲を覆い、上記シールド線に接続される複数の導電性を有する金属筒をさらに備えるものとしてもよい。
【0013】
また、上記複数の金属筒は、上記外部金属シェルに設けられた接触片により接続されるものとしてもよい。
【0014】
また、上記ケーブル収納部は、上記複数の同軸線の周囲にのみ配置されるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、USB3.1等の高速信号伝送用多芯ケーブルに使用される高速信号伝送用コネクタにおいて、高周波におけるインピーダンス特性及びノイズ性能の低下を抑制することができる高速信号伝送用コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の高速信号伝送用コネクタと、レセプタクルが嵌合した状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の高速信号伝送用コネクタの斜視図である。
【
図3】
図2に示す高速信号伝送用コネクタのモールドカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す高速信号伝送用コネクタの外部金属シェルを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す高速信号伝送用コネクタの内部金属シェルを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す高速信号伝送用コネクタのケーブル収納部を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の高速信号伝送用コネクタの内部金属シェルを示す斜視図であり、
図7(b)は、本発明の高速信号伝送用コネクタのケーブル収納部を示す斜視図である。
【
図8】
図8(a)は、本発明の高速信号伝送用コネクタのコンタクト端子を示す図であり、
図8(b)は、本発明の高速信号伝送用コネクタの金属板を示す図である。
【
図9】
図9(a)は、複数のコンタクト端子、金属板、内部金属シェルが組み込まれたインシュレータの斜視図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示すIXb−IXb線に沿った断面図であり、
図9(c)は、
図9(a)に示すIXc−IXc線に沿った断面図である。
【
図10】本発明の高速信号伝送用コネクタのケーブル収納部を取り付けた場合と取り外した場合のTDR法によるインピーダンス特性を示す図である。
【
図11】本発明の高速信号伝送用コネクタのケーブル収納部の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
尚、以下の説明における上下方向の概念は、添付の図面における上下に対応しており、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。また、以下の説明において、便宜的にコネクタの挿入方向を「先端」と示し、コネクタの挿入方向の逆方向を「後端」と示し、左右方向とは、コネクタの挿入方向に対し直交する方向を「左右」を示すこととするが、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0019】
図1は、本発明の高速信号伝送用コネクタ100と、レセプタクル200が嵌合した状態を示す斜視図である。
【0020】
図1において、本発明の高速信号伝送用コネクタ100は、実装基板1に実装されたレセプタクル200に挿抜可能に嵌合される。なお、ここでは説明の都合上、プラグ側コネクタをコネクタと称し、レセプタクル側コネクタをレセプタクルと称する。レセプタクル200は、複数の金属製のレセプタクルコンタクト端子201、絶縁材で形成されレセプタクルコンタクト端子201を配列するレセプタクルインシュレータ202、及び、レセプタクルインシュレータ202の周囲を覆い金属材料で形成されるレセプタクルシェル203等から構成されるが、詳細な説明は省略する。
【0021】
図2は、本発明の高速信号伝送用コネクタ100の斜視図である。
【0022】
図2において、本発明の高速信号伝送用コネクタ100は、USB3.1ケーブル等の高速信号伝送用の多芯ケーブル10に接続されるコネクタである。なお、本実施形態では、高速信号伝送用コネクタ100をUSB3.1typeC規格に適用するように上下2段に12ピンずつ並列に配列したピン配列のコネクタに適用した例を説明するが、高速信号伝送が可能な多芯ケーブルに使用されるコネクタであれば、これには限定されない。また、本実施形態のUSB3.1typeC用の高速信号伝送用コネクタ100のピン配列は、
図2に示すように下側中央2箇所にコンタクト端子107が配置されていない部分があるが、これは車載用を想定しており車載用では逆差しを許容しない規格であるためであるが、これには限定されない。
【0023】
高速信号伝送用コネクタ100は、
図2に示すように外部がモールドカバー101により覆われている。モールドカバー101は、例えば樹脂等の絶縁材により形成され、後述する外部金属シェル102の外側に固定される。また、モールドカバー101の
図2に示す上面側には、ロック機構101aが設けられており、これにより高速信号伝送用コネクタ100はレセプタクル200に挿抜可能に嵌合される。
【0024】
図3は、
図2に示す高速信号伝送用コネクタ100のモールドカバー101を取り外した状態を示す斜視図である。
【0025】
図3において、モールドカバー101の内側には、外部金属シェル102が配置されている。外部金属シェル102は、例えばステンレス等の金属材料で形成され、コネクタ外部に放射されるノイズ、あるいは、コネクタ内部に侵入するノイズを抑制するために、後述する内部金属シェル103が配置された後にその外側に固定される。外部金属シェル102は、後述する内部金属シェル103、ケーブル収納部104、及び、インシュレータ105等を内部に収容するために略箱型の形状を有しており、後端側には、多芯ケーブル10の被覆13の周囲に折り返された編込線12を圧着して電気的に接続するためのGND固定部102aが形成される。
【0026】
多芯ケーブル10は、複数の信号線11を編込線12で覆い、編込線12を被覆13で覆うことにより構成される。複数の信号線11としては、一般的に、芯線11aが被覆11bで覆われた高速伝送用のツイストペアケーブル等が使用できるが、USB3.1では、最大転送速度10Gbpsの「SUPER SPEED PLUS(Gen 2)」モードを達成する必要があり、高速伝送用の信号線には、芯線14aが絶縁材14bを介してシールド線14cで覆われ、その周囲に被覆14dが設けられた同軸線14を使用することもできる。
【0027】
また、外部金属シェル102の先端側の上部には、上方に向かい90度折れ曲がり長方形状を有するモールドカバー保持部102bが形成される。モールドカバー保持部102bは、後端側から挿入されたモールドカバー101の先端側を保持する。
【0028】
また、外部金属シェル102には、
図3に示す上面および下面の中央付近に2箇所ずつ略箱形状の外部金属シェル102の内側に折れ曲がりばね性を有し例えば長方形状を有する4カ所の接触片102cが設けられている。4カ所の接触片102cは、そのばね性により、後述する複数の同軸線14の周囲に設けられ、同軸線14の被覆14dの周囲に折り返されるか、または、被覆14dをストリップして、その下から顕れたシールド線14cに接続された複数の金属筒106に接触される。金属筒106が外部金属シェル102の接触片102cと接触されることにより、GND接続が強固となり、高周波ノイズの放射と侵入のさらなる抑制が見込まれる。なお、ここでは、接触片102cが4ヶ所の長方形状に設けられるものとしたが、この数、この形状には限定されない。
【0029】
図4は、
図3に示す高速信号伝送用コネクタ100の外部金属シェル102を取り外した状態を示す斜視図である。
【0030】
図4において、外部金属シェル102の内側には、ステンレス等の金属材料で形成された内部金属シェル103と、ケーブル収納部104が配置される。内部金属シェル103は、後述する複数のコンタクト端子107が挿入されて固定されたインシュレータ105の外側に固定され、複数のコンタクト端子107の周辺のノイズの放射と侵入を抑制する。内部金属シェル103には、複数のコンタクト端子107のうちの幾つかに電気的に接触するための複数の外部接点103aが設けられるが、詳細な説明は
図7(a)を使用して後述する。
【0031】
図5は、
図4に示す高速信号伝送用コネクタ100の内部金属シェル103を取り外した状態を示す斜視図である。
【0032】
図5において、内部金属シェル103の内側には、インシュレータ105が配置され、その後端側にはケーブル収納部104が配置される。ケーブル収納部104は、ダイキャスト等の導電性の材料で形成され、USB3.1で規定される最大転送速度10Gbpsを達成するために問題となる高速信号伝送時における高周波のインピーダンス特性、及びノイズ性能の低下を抑制するために設けられる。ケーブル収納部104を設けることにより、後述する
図10に示す効果がある。ケーブル収納部104の形状は、後述する
図7(b)に示されるが、詳細な説明は後述する。
【0033】
図6は、
図5に示す高速信号伝送用コネクタ100のケーブル収納部104を取り外した状態を示す斜視図である。
【0034】
図6において、インシュレータ105は、樹脂等の絶縁材料で形成され、多芯ケーブル10の複数の信号線11の芯線11a、及び、同軸線14の芯線14aに接続された複数のコンタクト端子107が挿入され、固定される。高速伝送用の信号線である複数の同軸線14の周囲には、真鍮やステンレスなどの金属材料で形成された複数の金属筒106が設けられる。金属筒106は、圧着前にU字形状に形成され、同軸線14の周囲に嵌め込まれた後、被覆14dの下から顕れたシールド線14cに圧着され、筒形状に形成されるか、同軸線14の被覆14dの下から顕れたシールド線14cにはんだ付けすること等により電気的に接続される。金属筒106を設けることにより、高速信号伝送時に問題となる高周波伝送時のインピーダンス特性、及びノイズ性能の低下を抑制する効果がある。
【0035】
インシュレータ105の12ピンを上下二段に並列に配列された複数のコンタクト端子107を上下に分ける位置には、ステンレス等の金属材料で形成された金属板108が挿入される。金属板108には、後述する
図8(b)に示されるように複数のコンタクト端子107のうちの幾つかに電気的に接触するための複数の内部接点108aが設けられるが、詳細な説明は後述する。
【0036】
図7(a)は、本発明の高速信号伝送用コネクタ100の内部金属シェル103を示す斜視図であり、
図7(b)は、本発明の高速信号伝送用コネクタ100のケーブル収納部104を示す斜視図である。
【0037】
図7(a)において、内部金属シェル103は、ステンレス等の金属材料で形成され、複数のコンタクト端子107のうちの幾つかに電気的に接触するための複数の外部接点103aを備える。複数の外部接点103aに接続された幾つかのコンタクト端子107は、電気的に共用可能となる。これにより、はんだ付け等の定量的でない接続を避けることができ、容易に安定したコンタクト端子107間の接続を実現できる。なお、多芯ケーブル10の信号線11、及び、同軸線14は、共用可能となった幾つかのコンタクト端子107のうちの1つに接続すればよい。また、本実施形態では、USB3.1typeCのピン配列表に準拠し、上下二段に12ピンずつ並列に配列された各段の両端に配列された4本のピンをGNDピンとして共用可能に接続し、これら4本のピンに対応する位置に複数の外部接点103aが設けられるが、これらの位置、あるいは、本数には限定されない。また、複数の外部接点103aが先端側に向かい延び、ばね性を有する板状の突起片であるものとしたがこれには限定されず、複数のコンタクト端子107に電気的に接触できる形状であればよい。
【0038】
図7(b)において、ケーブル収納部104は、ダイキャスト等の導電性の材料で形成される。ケーブル収納部104には、複数の溝104aが形成され、インシュレータ105に挿入された複数のコンタクト端子107に接続された多芯ケーブル10の複数の信号線11、及び、同軸線14がインシュレータ105の後端側において配列される形状に形成される。なお、ここでは、USB3.1typeCのピン配列表に準拠し、上下二段に12ピンずつ並列に配列されたピン配列に適合するように複数の溝104aが形成されるものとしたが、これには限定されず、多芯ケーブル10に含まれる複数の信号線11、あるいは、同軸線14の本数に合わせて複数の溝104aが形成されればよい。また、ここではケーブル収納部104の材料として軽量化のためにダイキャストを使用するものとしたが、これには限定されずコネクタ内部のうち複数のコンタクト端子107の後端側の部分を導電性の材料で埋めることができれば、これには限定されない。また、後述する
図11に示すように、高速伝送用の信号線として使用される同軸線14の周辺にのみ、ケーブル収納部104を配置するものとしてもよい。
【0039】
図8(a)は、本発明の高速信号伝送用コネクタ100のコンタクト端子107を示す図であり、
図8(b)は、本発明の高速信号伝送用コネクタの金属板108を示す図である。
【0040】
図8(a)において、コンタクト端子107は、銅等の金属で形成され、コネクタ嵌合時にレセプタクルコンタクト端子201と接触する略四角柱形状のコンタクト部107aと、多芯ケーブル10の信号線11の芯線11a、及び、同軸線14の芯線14aを圧着により固定する圧着部107bと、信号線11の被覆11b、及び、同軸線14の絶縁材14bを固定する固定部107cとを備える。なお、上述のように共用可能とされる幾つかのコンタクト端子107には、内部金属シェル103、あるいは、金属板108が接触されるため、多芯ケーブル10の信号線11、及び、同軸線14のうちの1本が接続されればよい。
【0041】
図8(b)において、金属板108は、ステンレス等の金属材料で形成され、複数のコンタクト端子107のうちの幾つかに電気的に接触するための複数の内部接点108aを備える。複数の内部接点108aに接続された幾つかのコンタクト端子107は、電気的に共用可能となる。これにより、はんだ付け等の定量的でない接続を避けることができ、容易に安定したコンタクト端子107間の接続を実現できる。なお、多芯ケーブル10の信号線11、及び、同軸線14は、共用可能となった幾つかのコンタクト端子107のうちの1つに接続すればよい。また、本実施形態では、USB3.1typeCのピン配列表に準拠し、上下二段に12ピンずつ並列に配列された各段の4番目と9番目に配列された4本のピンを電源ピンとして共用可能に接続し、これら4本のピンに対応する位置に複数の内部接点108aが設けられるが、これらの位置、あるいは、本数には限定されない。また、本実施形態では、金属板108が金属材料を折り曲げて2枚密着曲げに形成され上下に複数の内部接点108aを設けるものとしたが、これには限定されない。また複数の内部接点108aが後端側に向かい延び、ばね性を有する板状の突起片であるものとしたがこれには限定されず、複数のコンタクト端子107に電気的に接触できる形状であればよい。
【0042】
図9(a)は、複数のコンタクト端子107、金属板108、内部金属シェル103が組み込まれたインシュレータ105の斜視図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示すIXb−IXb線に沿った断面図であり、
図9(c)は、
図9(a)に示すIXc−IXc線に沿った断面図である。
【0043】
上述したように、
図9(b)において、金属板108に設けられた複数の内部接点108aは、複数のコンタクト端子107の幾つかに電気的に接触され、接触された幾つかのコンタクト端子107が電気的に共用可能となる。同様に、
図9(c)において、内部金属シェル103に設けられた複数の外部接点103aは、複数のコンタクト端子107の幾つかに電気的に接触され、接触された幾つかのコンタクト端子107が電気的に共用可能となる。
【0044】
図10は、本発明の高速信号伝送用コネクタ100のケーブル収納部104を取り付けた場合と取り外した場合のTDR法によるインピーダンス特性を示す図である。
【0045】
図10において、横軸は時間(s)を示し、縦軸はインピーダンス(Ω)を示し、実線はケーブル収納部104を取り付けた場合を示し、点線はケーブル収納部104を取り外した場合を示す。TDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射)法は、ケーブルやプリント基板の配線などのインピーダンス特性を測定する手法である。TDR法により、伝送線路上の任意の位置におけるインピーダンス特性がわかるため、ケーブル、プリント基板、その他部品の性能を評価できる。
【0046】
図10に示すように、点線のケーブル収納部104を取り外した場合には、インピーダンスが一定値を超える2箇所のピークを有することがわかるが、実線のケーブル収納部104を取り付けた場合には、2箇所のピークが小さくなり改善されていることがわかる。このことから本発明の高速信号伝送用コネクタ100は、ダイキャスト等の導電性の材料で形成されたケーブル収納部104を設けることにより高周波におけるインピーダンス特性が改善されることがわかる。
【0047】
図11は、本発明の高速信号伝送用コネクタ100のケーブル収納部の別の例104Aを示す図である。
【0048】
図11において、ケーブル収納部104Aは、高速伝送用の信号線である複数の同軸線14が配置される左右両端にのみ配置され、高速伝送が要求されない複数の信号線11が配置される中央付近には配置されない。このような形状とすることによっても、上述の
図10に示すようなケーブル収納部104と同等の効果が得られる。なお、
図7(b)にケーブル収納部104、及び、
図11にケーブル収納部104Aをそれぞれ示したが、ケーブル収納部の形状は、これらの形状には限定されない。
【0049】
以上のように、本発明の高速信号伝送用コネクタによれば、USB3.1等の高速信号伝送用多芯ケーブルに使用される高速信号伝送用コネクタにおいて、高周波におけるインピーダンス特性及びノイズ性能の低下を抑制することができる。