(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-136356(P2017-136356A)
(43)【公開日】2017年8月10日
(54)【発明の名称】アブレーション及び検知電極
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20170714BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20170714BHJP
A61B 5/0408 20060101ALI20170714BHJP
A61B 5/0478 20060101ALI20170714BHJP
A61B 5/0492 20060101ALI20170714BHJP
A61B 5/0402 20060101ALI20170714BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10
A61B5/04 300J
A61B5/04 310M
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-237484(P2016-237484)
(22)【出願日】2016年12月7日
(31)【優先権主張番号】14/962,831
(32)【優先日】2015年12月8日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
4C167
【Fターム(参考)】
4C127BB05
4C127LL08
4C160FF60
4C160KK47
4C160MM38
4C167AA06
4C167BB02
4C167BB27
4C167BB39
4C167BB40
4C167BB42
4C167BB62
4C167CC19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】心臓組織をアブレーションするための装置を提供する。
【解決手段】拡張可能な構造体38と、拡張可能な構造体38の表面上に配設された1つ又は2つ以上の電極の組44と、を含む、装置及び方法である。電極の組44の各々は、アブレーション電極46と、アブレーション電極46から電気的に絶縁されている少なくとも1つの検知電極48と、を備えており、検知電極48は、アブレーション電極46内に収容される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能な構造体と、
前記拡張可能な構造体の表面上に配設される1つ又は2つ以上の電極の組と、を備える、装置であって、前記組の各々が、
アブレーション電極と、
前記アブレーション電極から電気的に絶縁されている少なくとも1つの検知電極であって、前記検知電極が、前記アブレーション電極内に収容されている、検知電極と、を備える、装置。
【請求項2】
前記検知電極が、前記アブレーション電極内に完全に収容されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記拡張可能な構造体が、バルーンを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記1つ又は2つ以上の電極の組が、1〜5つの電極の組からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記アブレーション電極の表面積が、1〜50mm2である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記検知電極の表面積が、1〜10mm2である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記アブレーション電極の表面積と前記検知電極の表面積との比が、1〜10である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記アブレーション電極が、円筒状ではない、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記アブレーション電極が、平面状である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記検知電極が、環状ではない、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記拡張可能な構造体が、平面状ではない、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記拡張可能な構造体が、楕円体状である、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記拡張可能な構造体が、球状である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記電極の組が、前記拡張可能な構造体の前記表面に沿って円周方向に分配されている、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記拡張可能な構造体の前記表面上に配設された1つ又は2つ以上のプリント回路基板(PCB)を更に備え、前記PCBの各々に関して、前記PCBの第1の導電層が、前記電極の組のうちの1つを画定するように形状化され、前記PCBの第2の導電層が、前記検知電極に接続されている導電性要素を画定するように形状化されている、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
拡張可能な構造体の表面に1つ又は2つ以上の電極の組を取り付けることを含む方法であって、前記組の各々が、
アブレーション電極と、
前記アブレーション電極から電気的に絶縁されており、かつ前記アブレーション電極内に収容されている、少なくとも1つの検知電極と、を含む、方法。
【請求項17】
プリント回路基板(PCB)であって、
第1の導電層であって、
アブレーション電極、及び
前記アブレーション電極から電気的に絶縁されており、かつ前記アブレーション電極内に収容されている、少なくとも1つの検知電極、を画定するように形状化された、第1の導電層と、
前記検知電極に接続されている導電性要素を画定するように形状化された第2の導電層と、を備える、プリント回路基板(PCB)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、心臓アブレーション術に使用され得るアブレーション及び検知電極に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動などの心不整脈は、心臓組織の諸領域が、隣接組織に電気信号を異常に導電することによって、正常な心周期を阻害し、非同期的な律動を引き起こす場合に発生する。
【0003】
不整脈を治療するための手技としては、不整脈を発生させている信号の発生源を外科的に破壊すること、及びそのような信号の導電路を破壊することが挙げられる。カテーテルを介してエネルギーを印加して心臓組織を選択的にアブレーションすることによって、心臓のある部分から別の部分への望ましくない電気信号の伝播を停止又は変更することが可能な場合がある。アブレーションプロセスは、非導電性病変の形成によって、望ましくない電気経路を破壊する。
【0004】
心房性不整脈を治療するためには、肺静脈口又はその近位において円周方向の病変が作られている。米国特許第6,012,457号及び同第6,024,740号(いずれもLesh)は、無線電極を含む、放射状に拡張可能なアブレーション装置を開示している。この装置を使用して、円周方向の導電ブロックを確立するために、高周波エネルギーを肺静脈に送達し、それにより肺静脈を左心房から電気絶縁することが提唱されている。
【0005】
本願と同一譲受人に譲渡され、参照により本願に組み込まれる米国特許第6,814,733号(Schwartzら)は、放射状に拡張可能な螺旋コイルを高周波エミッタとして有するカテーテル導入装置を説明している。一用途では、エミッタを経皮導入し、中隔を通して肺静脈口に前進させる。エミッタと肺静脈内壁とを円周方向に接触させるためにエミッタを放射状に拡張するが、これはその周囲にエミッタを巻き付けた固定バルーンを膨張させることで達成され得る。高周波発生器によってコイルがエネルギー印加されると、肺静脈の袖状心筋(myocardial sleeve)に円周方向のアブレーション病変が形成され、肺静脈と左心房との間の電気伝播を効果的に遮断する。
【0006】
別の例は、心房から肺静脈が延在する位置で組織の環状領域をアブレーションすることにより心房性不整脈を治療する組織アブレーションシステム及び方法を提案する米国特許第7,340,307号(Maguireら)に見出される。本システムは、アブレーション要素を備える円周方向のアブレーション部材を含み、アブレーション部材を位置に送達するための送達アセンブリを含む。円周方向のアブレーション部材は、送達シースを介した心房への送達、及びアブレーション要素と組織の円周方向領域とのアブレーション結合の両方を実現するために、異なる構成間の調節が一般に可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態に従い、例えば、心臓組織をアブレーションするために使用することができる、装置が提供される。本装置は、拡張可能な構造体を含む。1つ又は2つ以上の電極の組が、拡張可能な構造体の表面上に配設され、組の各々は、アブレーション電極と、少なくとも1つの検知電極と、を含む。検知電極は、アブレーション電極から電気的に絶縁されており、かつアブレーション電極内に収容されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、検知電極は、アブレーション電極内に完全に収容されている。
【0009】
いくつかの実施形態では、拡張可能な構造体は、バルーンを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の電極の組は、1〜5つの電極の組からなる。
【0011】
いくつかの実施形態では、アブレーション電極の表面積は、1〜50mm2である。
【0012】
いくつかの実施形態では、検知電極の表面積は、1〜10mm2である。
【0013】
いくつかの実施形態では、アブレーション電極の表面積と検知電極の表面積との比は、1〜10である。
【0014】
いくつかの実施形態では、アブレーション電極は、円筒状ではない。
【0015】
いくつかの実施形態では、アブレーション電極は、平面状である。
【0016】
いくつかの実施形態では、検知電極は、環状ではない。
【0017】
いくつかの実施形態では、拡張可能な構造体は、平面状ではない。
【0018】
いくつかの実施形態では、拡張可能な構造体は、楕円体状である。
【0019】
いくつかの実施形態では、拡張可能な構造体は、球状である。
【0020】
いくつかの実施形態では、電極の組は、拡張可能な構造体の表面に沿って円周方向に分配されている。
【0021】
いくつかの実施形態では、該装置は、拡張可能な構造体の表面上に配設された1つ又は2つ以上のプリント回路基板(PCB)を更に含み、PCBの各々に対して、PCBの第1の導電層が、電極の組のうちの1つを画定するように形状化され、PCBの第2の導電層が、検知電極に接続されている導電性要素を画定するように形状化されている。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態に従い、被験者の組織とともに使用するための方法が更に提供される。拡張可能な構造体を組織に向けて前進させ、続いて、拡張させる。続いて、拡張可能な構造体の表面上に配設したアブレーション電極を使用して、アブレーション電流を組織の中へ駆動させる。アブレーション電流を組織の中へ駆動させる間に、アブレーション電極から電気的に絶縁されており、かつアブレーション電極内に収容されている、少なくとも1つの検知電極を使用して、組織の電気的活性を検知する。
【0023】
いくつかの実施形態では、組織は、被験者の肺静脈口を包囲する。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態に従い、アブレーション装置を製造するための方法が更に提供される。1つ又は2つ以上の電極の組が、拡張可能な構造体の表面に取り付けられ、組の各々は、アブレーション電極と、アブレーション電極から電気的に絶縁されており、かつアブレーション電極内に収容されている、少なくとも1つの検知電極と、を含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態に従い、プリント回路基板(PCB)が更に提供される。PCBは、(i)アブレーション電極、及び(ii)アブレーション電極から電気的に絶縁されており、かつアブレーション電極内に収容されている、少なくとも1つの検知電極を画定するように形状化された第1の導電層を含む。PCBは、検知電極に接続されている導電性要素を画定するように形状化された第2の導電層を更に含む。
【0026】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明を図面と併せ読むことによって、更に十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、電気活動を評価し、かつ生存被験者の心臓にアブレーション手技を実施するためのシステムの概略絵図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、アブレーション装置の模式図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、プリント回路基板の模式図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、アブレーション装置の使用方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
概説
組織のアブレーションを実施する間、手術中の医師にフィードバックを提供して組織の電気的活性を検知することにより、アブレーション手技の安全性及び/又は効率性を増加させることができる。例えば、組織の特定の部分で電気的活性の中断が観察された場合は、組織の特定の部分に対するアブレーションエネルギーの印加を終了することができる。反対に、十分な量の電気的活性が継続して検知される場合は、アブレーションエネルギーの印加を継続することができる。更に、検知に応じて、医師は適切なアブレーションのパラメータを選択することができる。例えば、十分な量の電気的活性が検知される場合、医師はこれまでのアブレーションが不成功であると推察して、それに応じてアブレーション電流の電力を増加させることができる。
【0029】
本発明の実施形態は、アブレーション電極内に収容されている検知電極を提供することによって、アブレーション中における組織の電気的活性の検知を容易にする。検知電極がアブレーション電極内に収容されることで、検知電極は、アブレーション電極でアブレーションされる、あるいはアブレーション電極によってアブレーションされる組織に少なくとも大部分が包囲される、組織上の位置の電気的活性を検知するように配設される。したがって、本検知電極は、検知電極が単にアブレーション電極と隣接して配置される場合と比較して、より妥当なフィードバックを提供することができる。
【0030】
システムの説明
最初に、本発明のいくつかの実施形態による、電気活動を評価し、かつ生存被験者の心臓12にアブレーション手技を実施するためのシステム10の概略絵図である
図1を参照する。システム10は、操作者16によって、患者の血管系を通して、心室又は心臓12の血管構造に経皮挿入されるカテーテル14を備える。典型的には医師である操作者16は、カテーテルの遠位先端部18を心壁の、例えば、アブレーション標的部位と接触させる。電気的活性化マップは、その開示が本明細書に参照により組み込まれる、米国特許番号第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに同一出願人による米国特許第6,892,091号に開示されている方法に従って、作成することができる。システム10の要素を具現化する1つの市販製品は、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)より入手可能なCARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。当業者は、本明細書に記載される本発明の原理を具現化するように、本システムを修正することが可能である。
【0031】
例えば、電気的活性化マップを評価することによって、異常であると判断される領域は、例えば、カテーテル内のワイヤを通して遠位先端部18の1つ又は2つ以上の電極に高周波電流を流して、電極が心筋に高周波エネルギーを印加することにより、熱エネルギーを印加してアブレーションすることができる。エネルギーは、組織に吸収され、組織の電気的興奮性が永久に失われる点(典型的には約60℃超)まで組織を加熱する。成功した場合は、この手技により心臓組織内に非導電性病変が生じ、このは、不整脈を引き起こす異常な電気経路を遮断する。本発明の原理は、多くの異なる心不整脈の診断及び治療を行うために異なる心腔に適用することができる。
【0032】
カテーテル14は典型的に、ハンドル20を備え、アブレーションに対する所望に応じて、操作者16が、カテーテルの遠位端を操縦する、位置付ける、及び配向させることを可能とする好適な制御部をハンドル上に有する。操作者16を支援するため、カテーテル14の遠位部分は、コンソール24内に配設されたプロセッサ22に信号を提供する位置センサ(図示せず)を収容する。
【0033】
ワイヤ接続部35は、コンソール24を、身体表面の電極30、並びにカテーテル14の位置及び配向座標を測定するための位置付けサブシステムの他の構成要素と、を連結する。プロセッサ22又は他のプロセッサ(図示せず)が、位置付けサブシステムの要素であってもよい。参照により本願に組み込まれる米国特許第7,536,218号(Govariら)で教示されるように、カテーテル電極(図示せず)及び身体表面電極30を使用して、アブレーション部位の組織インピーダンスを測定することができる。例えば、熱電対及び/又はサーミスタなどの温度センサ(図示せず)をカテーテル14の遠位部分のアブレーション表面に設置してもよい。
【0034】
コンソール24は典型的に、1つ又は2つ以上のアブレーション電力発生装置25が収容する。カテーテル14は、任意の既知のアブレーション技術、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及び/又はレーザー生成光エネルギーを使用して、心臓にアブレーションエネルギーを導電するように適合させることができる。このような方法は、参照により本明細書に組み込まれる同一出願人による米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0035】
一実施形態では、本位置付けサブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、所定の作業範囲内に磁場を発生させて、カテーテル内のこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び配向を判定する磁気位置追跡装置を備える。位置付けサブシステムは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,756,576号、及び上記の米国特許第7,536,218号に記載されている。
【0036】
上述した通り、カテーテル14は、操作者16がカテーテル14の機能を観察及び制御することを可能にするコンソール24に連結している。コンソール24は典型的に、プロセッサ22及び適切な信号処理回路を備えたコンピュータを含む。本プロセッサは、モニタ29を駆動するように連結される。典型的には、信号処理回路は、電気、温度、及び接触力センサなどのセンサによって生成された信号、並びに/又はカテーテル14の遠位に位置付けられた複数の位置検知電極(図示せず)によって生成された信号を含むカテーテル14からの信号を受信、増幅、濾波、及びデジタル化する。デジタル化された信号は、カテーテル14の位置及び配向を計算し、かつ電極からの電気信号を解析するため、コンソール24及び位置付けシステムによって受信及び使用される。
【0037】
電気解剖学的マップを生成するために、典型的にプロセッサ22は、電気解剖学的マップ生成器と、画像位置合わせプログラムと、画像又はデータ解析プログラムと、モニタ29上に図画情報を提示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェースと、を備える。
【0038】
典型的には、システム10は、簡略化のために図面には示されていない、他の要素を含む。例えば、システム10は、ECG同期信号をコンソール24に提供するために、1つ又は2つ以上の身体表面電極からの信号を受信するように連結された心電図(ECG)モニタを含んでもよい。上述したように、システム10はまた、典型的に、被験者の身体外面に取り付けられた外部貼付式基準パッチ上、又は心臓12に挿入され、心臓12に対して固定位置に維持される体内配置式カテーテル上のいずれかに基準位置センサを含む。カテーテル14内に液体を循環させてアブレーション部位を冷却するための従来型のポンプ及びラインが提供される。システム10は、MRIユニットなどの外部画像診断装置からの画像データを受信することができ、また、画像の生成及び表示のためにプロセッサ22に組み込む、あるいはプロセッサ22によって起動することのできる画像処理装置を含む。
【0039】
ここで、本発明のいくつかの実施形態によるアブレーション装置36の模式図である
図2を参照する。装置36は、膨張可能なバルーン40又は拡張可能なバスケットなどの拡張可能な構造体38を備える。1つ又は2つ以上の電極の組44(例えば、1〜5つの電極の組)は、例えば、拡張可能な構造体38の表面上に配設されたプリント回路基板(PCB)66上に形成することによって、拡張可能な構造体38の表面上に配設される。組44の各々は、アブレーション電極46、及び1つ又は2つ以上の(例えば、少なくとも1つ、及び/又は5つ未満(例えば、3つ))の検知電極48を備える。
【0040】
典型的には、組44は、拡張可能な構造体の表面に沿って円周方向に分配される(例えば、均等に分配される)。例えば、図に示すように、連続する組の各対の間の角度θが30〜180度となるように組を円周方向に分配してもよい。電極の組を円周方向に分配することによって、アブレーション電極の各々を順番に活性化することで装置を実質的に移動することなく組織の円周部を完全にアブレーションできるという点で肺口43を包囲する組織のアブレーションが容易になる。
【0041】
一般的は、上述したようにアブレーション手技のフィードバックを提供するために組織の電気的活性を検知する時は、検知電極をアブレーションする組織の部分に可能な限り近接させることが有利である。例えば、アブレーション電極が肺口に対して「12時」の方向にアブレーションする間は、「12時30分」又は「11時30分」に位置する組織ではなく、むしろ「12時」に位置する組織の電気的活性を検知する方がよい。本発明の実施形態は、図面に示されるように、各検知電極48がアブレーション電極46内に収容されるという点において利点を提供する。
【0042】
本出願の特許請求の範囲及び明細書との関係において、各検知電極をアブレーション電極内に「収容」するとは、(i)検知電極の外辺部50及び/若しくは領域A1の大部分(例えば、90%超などの75%超)がアブレーション電極内に収容される、並びに/又は(ii)検知電極が、アブレーション電極でアブレーションされる組織上の位置の電気的活性を検知するように配設されているか、若しくはアブレーション電極でアブレーションされる組織によって少なくとも大部分が包囲されていることを意味する。例えば、図に示すように、各検知電極はアブレーション電極内に完全に収容されていてもよい。
【0043】
図2に示すように、検知電極は、典型的には、(i)円周方向(円周方向に分配されたアブレーション電極内に収容されることにより)かつ(ii)各アブレーション電極に沿った「縦方向」の両方で分配される。こうした構成は、拡張可能な構造体の配向又は正確な位置に関わらず、複数の異なる点で複数の検知電極が口と接触する傾向を増加させる。したがって、こうした構成は組織の電気的活性のより正確かつ/又は精密な評価を促進する。
【0044】
アブレーション電極とアブレーション電極内に収容される検知電極とのクロストークを防ぐため、検知電極は、アブレーション電極46と電気的に絶縁される。例えば、
図2は、検知電極をアブレーション電極から絶縁する非導電性材料を備える環状の「堀部」52を示している。(したがって、検知電極はアブレーション電極内に「島部」として配設される。)
【0045】
典型的に、拡張可能な構造体は、平面状ではない。例えば、図面に示されるように、拡張可能な構造体は、楕円体状である(例えば、球状、扁球状、又は長球状)。拡張可能な構造体の楕円形状によって、拡張可能な構造体と肺口43との接触、及び口を包囲する組織のアブレーションが容易になる。
【0046】
典型的に、各アブレーション電極の表面積A0(収容される全ての検知電極の合計表面積を一切含まない)は、1〜50mm2であり、かつ/又は、各検知電極の表面積A1は、1〜10mm2である。代替的に又は更に、A0とA1との比は、1〜10であってもよい。アブレーション電極及び検知電極は典型的に、円筒状でも環状でもない。
【0047】
ここで更に、本発明のいくつかの実施形態によるプリント回路基板(PCB)66の模式図である
図3を参照する。図の上部及び下部は、それぞれPCB 66の上面図及び側面図を示す。PCB 66は典型的に、少なくとも2つの導電層を有する。PCB 66の第1の導電層68は、アブレーション電極46及び検知電極48を含む電極の組44を画定するように形状化されている。(簡略化のため、
図3は、検知電極を1つのみ有する実施形態を示す。)ワイヤ74は、カテーテル14を介してアブレーション電極を被験者の身体外部にある装置、例えば、コンソール24に接続する。
【0048】
PCBの第2の導電層72は、検知電極に接続した導電性要素75(配線とも称され得る)を画定するように形状化されている。ワイヤ76は、カテーテル14を介して導電性要素75を被験者の身体外部にある装置、例えば、コンソール24に接続する。典型的に、誘電体層70は、第1の導電層68と第2の導電層72との間に配設され、導電性要素75は、めっき穴(「ビア」と称される場合もある)78又は誘電体層70を通る他の導電性相互接続を介して、検知電極に接続する。
【0049】
いくつかの実施形態では、PCB 66は、第2の導電層72又は導電性要素75を備えておらず、ワイヤ76は、めっき穴78を介して検知電極に直接接続する。堀部52は、誘電体層の表面が検知電極とアブレーション電極との間に非導電性バリアを構成するように、検知電極の周囲に環をエッチングすることで形成される。
【0050】
典型的には、PCB 66は、少なくともある程度可撓性である。PCB 66の可撓性は、手技の前後でPCBがカテーテルの内側に嵌合するのに役立つ、かつ/又は拡張可能な構造体を拡張した時に、PCBが拡張可能な構造体38の表面にぴったり一致するのに役立つ。いくつかの実施形態では、PCB 66が拡張した拡張可能な構造体の表面上に配設された時も平面状であるように、拡張可能な構造体を拡張した時のPCB 66の撓みは、比較的小さい。同様に、アブレーション電極及び/又は検知電極も、拡張した拡張可能な構造体の表面上に配設された時に平面状であってよい。
【0051】
ここで更に、本発明のいくつかの実施形態による装置36を使用するための方法53のフローチャートである
図4を参照する。前進工程54では、拡張可能な構造体38をアブレーションする組織に向けて前進させる。(例えば、拡張可能な構造体38を、カテーテル14の遠位端から展開して(
図1)、続いてカテーテルを心臓の左心房内に展開してもよい。)続いて、拡張工程56で、拡張可能な構造体を拡張し、アブレーション電極の1つ又は2つ以上(例えば、全部)を組織と接触させる(例えば、押し付ける)。
【0052】
続いて、アブレーション及び検知工程58で、アブレーション電極を使用して、組織内にアブレーション電流を駆動させながら、アブレーション電極内に収容された少なくとも1つの検知電極を使用して、組織の電気的活性を検知する。検知された電気的活性に応じて、第1の決定工程60で、手術中の医師がアブレーションを続けるか否かを決定する。医師がアブレーションを続けると決定した場合(例えば、組織が依然として電気的に活性であることに応じて)、方法53は、第2の決定工程62に進み、ここで医師は、アブレーションパラメータのいずれか(例えば、アブレーション電流の振幅)を変更するか否かを決定する。医師がパラメータを変更すると決定した場合、パラメータ変更工程64で、パラメータを変更する。続いて、医師が、組織が十分にアブレーションされたと満足するまでアブレーション及び検知工程58を繰り返す。
【0053】
肺静脈45の口43を包囲する組織をアブレーションする場合、方法53は、典型的には繰り返し実施されるため、方法53の各実施では、電極の異なる組を使用して、組織を「360度(around the clock)」アブレーションする。
【0054】
典型的に、
図1に関して上述した信号処理回路を使用して、(i)組織の電気的活性に対応する信号の低周波部分を維持し、(ii)高周波アブレーション信号に対応する信号の高周波部分を破棄するように、検知電極から受信した信号を濾波する。
【0055】
本発明の範囲は、電極の1つ又は2つ以上の組44を拡張可能な構造体38の表面に取り付けることによって、装置36を製造するための方法を更に含む。
【0056】
本明細書に記載される装置及び技術は、参照により本願に組み込まれる米国特許出願第14/578,807号(Govari)に記載の装置及び技術と組み合わせて実践することができる。例えば、
図2は、Govariの第807号特許に記載されるように、肺静脈45の内壁に係合させることによって、装置36を安定化させるために使用され得るガイド42を示す。代替的に又は更に、Govariの第807号特許に記載されるように、拡張可能な構造体38は、アブレーション中に洗浄流体(例えば、生理食塩水)が拡張可能な構造体から放出され得るように、有窓であってもよい。
【0057】
当業者には、本発明は、本明細書で具体的に図示及び記載したものに限定されないことが理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、上記で説明される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの双方、並びに上記の説明を読むことで当業者が想到するであろう、従来技術には存在しないそれらの変形及び修正を含む。
【0058】
〔実施の態様〕
(1) 拡張可能な構造体と、
前記拡張可能な構造体の表面上に配設される1つ又は2つ以上の電極の組と、を備える、装置であって、前記組の各々が、
アブレーション電極と、
前記アブレーション電極から電気的に絶縁されている少なくとも1つの検知電極であって、前記検知電極が、前記アブレーション電極内に収容されている、検知電極と、を備える、装置。
(2) 前記検知電極が、前記アブレーション電極内に完全に収容されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記拡張可能な構造体が、バルーンを備える、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記1つ又は2つ以上の電極の組が、1〜5つの電極の組からなる、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記アブレーション電極の表面積が、1〜50mm
2である、実施態様1に記載の装置。
【0059】
(6) 前記検知電極の表面積が、1〜10mm
2である、実施態様5に記載の装置。
(7) 前記アブレーション電極の表面積と前記検知電極の表面積との比が、1〜10である、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記アブレーション電極が、円筒状ではない、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記アブレーション電極が、平面状である、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記検知電極が、環状ではない、実施態様1に記載の装置。
【0060】
(11) 前記拡張可能な構造体が、平面状ではない、実施態様1に記載の装置。
(12) 前記拡張可能な構造体が、楕円体状である、実施態様1に記載の装置。
(13) 前記拡張可能な構造体が、球状である、実施態様12に記載の装置。
(14) 前記電極の組が、前記拡張可能な構造体の前記表面に沿って円周方向に分配されている、実施態様1に記載の装置。
(15) 前記拡張可能な構造体の前記表面上に配設された1つ又は2つ以上のプリント回路基板(PCB)を更に備え、前記PCBの各々に関して、前記PCBの第1の導電層が、前記電極の組のうちの1つを画定するように形状化され、前記PCBの第2の導電層が、前記検知電極に接続されている導電性要素を画定するように形状化されている、実施態様1に記載の装置。
【0061】
(16) 被験者の組織とともに使用するための方法であって、
拡張可能な構造体を前記組織に向けて前進させることと、
続いて、前記拡張可能な構造体を拡張させることと、
続いて、前記拡張可能な構造体の表面上に配設したアブレーション電極を使用して、前記組織の中へアブレーション電流を駆動させることと、
前記アブレーション電流を前記組織の中へ駆動させる間に、前記アブレーション電極から電気的に絶縁されており、かつ前記アブレーション電極内に収容されている、少なくとも1つの検知電極を使用して、前記組織の電気的活性を検知することと、を含む、方法。
(17) 前記組織が、前記被験者の肺静脈口を包囲する、実施態様16に記載の方法。
(18) 拡張可能な構造体の表面に1つ又は2つ以上の電極の組を取り付けることを含む方法であって、前記組の各々が、
アブレーション電極と、
前記アブレーション電極から電気的に絶縁されており、かつ前記アブレーション電極内に収容されている、少なくとも1つの検知電極と、を含む、方法。
(19) プリント回路基板(PCB)であって、
第1の導電層であって、
アブレーション電極、及び
前記アブレーション電極から電気的に絶縁されており、かつ前記アブレーション電極内に収容されている、少なくとも1つの検知電極、を画定するように形状化された、第1の導電層と、
前記検知電極に接続されている導電性要素を画定するように形状化された第2の導電層と、を備える、プリント回路基板(PCB)。
【外国語明細書】