(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-136385(P2017-136385A)
(43)【公開日】2017年8月10日
(54)【発明の名称】枕
(51)【国際特許分類】
A47G 9/10 20060101AFI20170714BHJP
【FI】
A47G9/10 M
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-38869(P2017-38869)
(22)【出願日】2017年3月2日
(62)【分割の表示】特願2011-266345(P2011-266345)の分割
【原出願日】2011年12月5日
(71)【出願人】
【識別番号】501426862
【氏名又は名称】大東寝具工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】大東 和子
【テーマコード(参考)】
3B102
【Fターム(参考)】
3B102AA00
3B102AA02
3B102AB07
3B102AC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】使用者の好みに応じた頭部高さや肩の高さを調整できるようにするとともに、使用時に身体をずり落とさないようにした枕を提供する。
【解決手段】ビーズ状のクッション材の量を選択して収納することのできる第一収納部2と、人間の肩部近傍に対応する位置に設けられ、ビーズ状のクッション材の量を選択して収納することのできる第二収納部3と、この第二収納部3から連続する扁平部4を有する頭部クッション体11を構成する。そして、この第一収納部2や第二収納部3に使用者の好みに応じたビーズ状のクッション材を挿入し、その扁平部4を折り返すことによって第一収納部2や第二収納部3を覆い、その頭部クッション体11を頭部カバー体13に収納する。また、その頭部カバー体13から下方側に連続する腰部カバー体14に腰部クッション体12を収納し、使用者の腰部で枕全体を固定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部クッション体と、腰部クッション体とを有し、横たわった使用者の食道を傾斜させて逆流性食道炎を防止する枕であって、
前記頭部クッション体は、
横たわった使用者の頭部に対応する位置に設けられ且つ内部にクッション材が収納された第1収納部と、
横たわった使用者の肩部近傍に対応する位置に設けられ且つ内部にクッション材が収納されて前記第1収納部よりも高さ寸法が低い第2収納部と、
クッション性と吸汗性を有する扁平状の扁平部とから構成されたものであり、
前記第1収納部、前記第2収納部、及び前記扁平部がこの順で連続し、前記第2収納部と前記扁平部の境界部分を境に前記扁平部を前記第1収納部側へ折り返した状態で、横たわる方向に並ぶ前記第1収納部及び前記第2収納部のうち使用者が凭れる側のみを前記扁平部で覆うように構成し、
前記腰部クッション体は、
横たわった使用者の腰近傍に対応する位置に設けられ少なくとも使用者が横たわった時に扁平状となるものであり、
前記扁平部を第1収納部側へ折り返した状態にある前記頭部クッション体を収納する頭部カバー体と、
前記頭部カバー体に連続して設けられ且つ扁平状の前記腰部クッション体を収納する腰部カバー体とをさらに備えていることを特徴とする枕。
【請求項2】
前記クッション材が、両端に開口部を有するビーズ状に形成されたものである請求項1に記載の枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、就寝時に使用される枕に関するものであり、より詳しくは、逆流性食道炎を防止できるようにした形状を有する枕に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、逆流性食道炎は、食後すぐに横になることによって胃酸が食道に逆流することによって引き起こされると言われている。このため、この逆流性食道炎を防止するためには、就寝時に横になった人間に対して、上半身を持ち上げるように傾斜させることによって胃酸の逆流を防止させる必要がある。
【0003】
このように横になった人間の上半身側を持ち上げるようにした枕としては、例えば、
図5に示すように、頭部から腰椎にかけて略三角形状をなすような形状を有する枕6などが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。このような枕6は、就寝時における頸椎や腰椎にかかる負担を防止することを目的とするものであるが、これと共に、逆流性食道炎を防止することもできると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−261512号公報
【特許文献2】実用新案登録第3145217号公報
【特許文献3】実開平6−220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの文献に記載された形状の枕では、次のような問題を生じる。
【0006】
すなわち、上記文献に記載された枕6は、基本的に頭部から腰にかけて単一のクッション素材で構成されているため、個人の好みに応じて頭部や肩の高さをそれぞれ調整することができない。また、
図5に示すように、頭部から腰まで一律に傾斜させた構造であると、就寝時に寝返りを打つことによって身体が下方にずり落ちるか、もしくは、枕6が上方にせり上がってしまい、胃の上方部分を傾斜させることができなくなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、使用者の好みに応じた頭部高さや肩の高さを調整できるようにするとともに、使用時に身体をずり落とさないようにした枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の枕は、上記課題を解決するために、頭部クッション体と、腰部クッション体とを有し、横たわった使用者の食道を傾斜させて逆流性食道炎を防止する枕であって、頭部クッション体として、横たわった使用者の頭部に対応する位置に設けられ且つ内部にクッション材が収納された第1収納部と、横たわった使用者の肩部近傍に対応する位置に設けられ且つ内部にクッション材が収納されて第1収納部よりも高さ寸法が低い第2収納部と、クッション性と吸汗性を有する扁平状の扁平部とから構成されたものを適用し、第1収納部、第2収納部、及び扁平部がこの順で連続し、第2収納部と扁平部の境界部分を境に扁平部を第1収納部側へ折り返した状態で、横たわる方向に並ぶ第1収納部及び第2収納部のうち使用者が凭れる側のみを扁平部で覆うように構成し、腰部クッション体は、横たわった使用者の腰近傍に対応する位置に設けられ且つ少なくとも使用者が横たわった時に扁平状となるものであり、扁平部を第1収納部側へ折り返した状態にある頭部クッション体を収納する頭部カバー体と、頭部カバー体に連続して設けられ且つ扁平状の腰部クッション体を収納する腰部カバー体とをさらに備えているものである。
【0009】
また、このような発明におけるクッション材としては、両端に開口部を有するビーズ状に形成されたものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、傾斜を持たせて逆流性食道炎を防止することができるとともに、腰部カバー体を腰部近傍で押圧することで枕のずれを防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態における枕の外観斜視図
【
図2】同形態における扁平部を展開した状態を示す図
【
図3】同形態における扁平部を折り返して第一収納部や第二収納部を覆った状態を示す図
【
図4】他の実施の形態におけるクッション材を示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。この実施の形態における枕1は、使用者の好みに応じて頭部や肩部近傍の高さ位置を調整しながら上半身を傾斜させるようにしたものであって、
図1に示すように、頭部クッション体11と腰部クッション体12とを有するように構成されている。このうち、頭部クッション体11については、
図2や
図3に示すように、頭部に対応する位置に設けられる第一収納部2と、肩部近傍に対応する位置に設けられる第二収納部3を有する頭部クッション体11と、これら第一収納部2や第二収納部3を覆う扁平部4を有し(
図3の状態)、その第一収納部2や第二収納部3に、ビーズ状のクッション材5を収納して好みの高さや傾斜を持たせて、逆流性食道炎を防止できるようにしたものである。以下、本実施の形態における枕1の構造について説明する。
【0013】
まず、この枕1のうち、頭部カバー体13に挿入される頭部クッション体11は、
図2に示すように、表裏をなす綿素材の生地を縫合することなどによって構成されており、上端部と平行に第一表裏縫合部23と第二表裏縫合部32を設けることによって第一収納部2や第二収納部3を独立に形成している。
【0014】
この第一収納部2は、比較的大きめの縦長寸法を有するように設定されており、その一方の側面に設けられた開閉可能なファスナー21によって表裏を開放できるようになっている。この実施の形態では、第一収納部2の寸法として、横長寸法を約70cm程度に設定し、縦長寸法を35cm程度に設定するが、これらの寸法については子供用、大人用、L寸、M寸、S寸など各寸法に応じて数種類用意することもできる。そして、その内部にクッション材5を収納することによって膨らみを持たせるようにしている。
【0015】
また、第二収納部3は、第一収納部2よりも比較的短めの縦長寸法を有するように設けられており、同様に、その一方の側面に設けられたファスナー31によって表裏を開放できるようになっている。このファスナー31については、第一収納部2のファスナー21とは別個に設けてもよく、あるいは、第一収納部2のファスナー21と連続するように一体的に設けても良い。また、この第二収納部3については、第一収納部2と同様に、横長寸法を約70cm程度にするとともに、縦長寸法について約20cm程度としている。そして、その内部にクッション材5を収納することによって、第一収納部2よりも低くできるようにしている。
【0016】
この第一収納部2や第二収納部3に収納されるクッション材5は、使用者の荷重を支えることができる比較的柔らかいものであって、ここでは
図2に示すようなビーズ状のクッション材5が用いられる。なお、
図2においては、ビーズ状のクッション材5は説明の関係上、拡大した状態で図示している。このビーズ状のクッション材5は、両端に開口部51を有する略楕円形状ないしは略矩形形状をなす合成樹脂によって形成されており、上下左右のいずれの方向から加重が加えられた場合であっても、変形によって荷重を支えられるようにしている。なお、ここでは、両端に開口部51を有するものを用いているが、両端を封止したものであると、内部の空気に逃げ場所がなくなってしまい、変形しにくくなってしまうからである。このため、ここではクッション性を持たせるようにするとともに、通気性も確保できるようなビーズ状のクッション材5を用いるようにしている。このクッション材5を収納する場合、例えば、第一収納部2から第二収納部3にかけての傾斜角度が約15度程度となるようにクッション材5を収納していく。このとき、第一収納部2や第二収納部3は、クッション材5の収納によって膨らみを生じるため、全体としてそれぞれの縦長寸法(55cm)よりも短い寸法となる。
【0017】
一方、この実施の形態では、第二収納部3から連続して扁平部4が設けられる。この扁平部4は、
図2に示すように、第二表裏縫合部32を介して第二収納部3の下方側に設けられる扁平状のものであって、これを展開することによって腰部近傍で押圧できるようにするとともに、これを折り返すことによって、
図3に示すように、第一収納部2や第二収納部3を覆えるようにしたものである。この扁平部4を構成する場合、表裏の綿素材の生地を縫い合わせるだけでなく、その内部に綿などを入れてクッション性や吸汗性を持たせるようにしている。ここでは、扁平部4の寸法については、横長方向70cm程度、縦長方向45cm程度としている。この扁平部4の下端部分と第一収納部2の上端部分には、それぞれを接合させるための紐状の留め具22、41が設けられており、それぞれを結びつけることによって第一収納部2や第二収納部3の上面に扁平部4で覆えるようにしている。このように扁平部4を被せれば、第一表裏縫合部23の凹部を覆うことができ、クッション性を持たせることができるようになる。
【0018】
このように構成された頭部クッション体11は、扁平部4が折り返された状態で頭部カバー体13に収納される(
図1参照)。また、この頭部カバー体13の下方側には、縫い目を介して腰部カバー体14が設けられており、そこに扁平状の布体やダウンなどから構成される腰部クッション体12が挿入されるようになっている。このとき、この腰部カバー体14内にダウンなどのクッション材を挿入すれば、就寝時において腰部による押圧によって扁平状にすることができるとともに、その周囲における身体への密着性を良くして保温性を高めることができるようになる。一方、扁平状の布体を挿入した場合は、夏期などにおける通気性や吸汗性を良くすることができるようになる
。
【0019】
次に、このような枕1を使用する場合の作用について説明する。
【0020】
まず、この枕1を使用する場合、第一収納部2のファスナー21を開けて、適当な量のビーズ状のクッション材5を挿入していく。このとき、好ましくは第一収納部2の高さ位置が17cm〜20cm程度となるようにしておく。そして、そのクッション材5を挿入した後にファスナー21を閉めてクッション材5を全体に均等に行きわたらせる。
【0021】
また、これとともに、第二収納部3にクッション材5を収納すべく、同様にファスナー31を開けてクッション材5を適量入れていく。このとき、第二収納部3の縦長寸法が第一収納部2よりも短く設定されているため、同じ密度の状態でクッション材5を挿入したとしても、第二収納部3の高さ位置が第一収納部2よりも高くなることがない。そして、このようにクッション材5を収納した後にファスナー31を閉めて、クッション材5を全体に行きわたらせる。
【0022】
そして、このようにビーズ状のクッション材5を収納した後、扁平部4を折り返して紐状の留め具22、41を結びつけ、その状態で頭部カバー体13に挿入する。
【0023】
次に、この頭部カバー体13の下方に設けられた腰部カバー体14に、ダウンや扁平状の腰部クッション体12を挿入して枕1を構成する。
【0024】
そして、このように構成された枕1を使用する場合は、使用者の頭部が位置する場所に第一収納部2が位置するように配置し、その状態で横たわれるようにする。すると、使用者の腰近傍の位置が腰部クッション体12の位置にくるようになり、その押圧によって枕全体がずれないようになる。このような状態で、頭部を頭部クッション体11の第一収納部2の上に載せるとともに第二収納部3の上の肩部を載せると、その第二収納部3の膨らみによって肩胛骨付近が持ち上げられ、食道を傾斜させて胃酸の逆流防止による逆流性食道炎を防止することができるようになる。
【0025】
このように上記実施の形態によれば、ビーズ状のクッション材5を収納することのできる第一収納部2と、前記第一収容部2よりも縦長寸法が短く、ビーズ状のクッション材5を収納することで高さ寸法が低くなるように設けられた第二収納部3と、当該第二収容部3の下方側から連続するように設けられ、第二収容部3との境界部分を境に第一収容部2側へ折り返すことによって前記第一収容部2および第二収容部3を覆えるようにするとともに、平面状に展開することによって腰部近傍を押圧できるようにした扁平状の扁平部4と、当該扁平部4を折り返した状態の第一収容部2および第二収容部3を収容する頭部カバー体13と、当該頭部カバー体13から使用者の腰近傍の位置まで連続して設けられ、腰部クッション体12を収容することのできる腰部カバー体14と備えるようにしたので、傾斜を持たせて逆流性食道炎を防止することができるとともに、展開された扁平部4や腰部カバー体14を腰部近傍で押圧することで枕1のずれを防止することができるようになる。
【0026】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0027】
例えば、上記実施の形態では、クッション材5としてビーズ状のものを用いるようにしたが、粒状のウレタン素材や発泡スチロール、もしくは、
図4に示すように、全体として一つの形状をなす低反発素材や高反発存在などを用いることもできる。このとき、
図4に示すように、第一収納部2用のクッション材5と、第二収納部3用のクッション材5とを個別に設けておき、また、好みに応じて高さを変えられるように数種類用意しておく。
【0028】
また、上記実施の形態では、留め具22として紐状のものを用いるようにしているが、これに限らず、ファスナーなどを用いるようにしてもよい。
【0029】
さらに、上記実施の形態では、第一表裏縫合部23で第一収納部2と第二収納部3を分離するようにしたが、表裏を縫合することなく内部に間仕切りなどを設けて第一収納部2と第二収納部3を設けるようにしてもよい。ただし、第一表裏縫合部23を設ける場合は、そこに凹部を形成することができるため、寝返りを打った際にそこに肩を位置させることができ、就寝時における使用感を良くすることができるというメリットを得ることができる。
【0030】
加えて、上記実施の形態では、腰部クッション体12を有する腰部カバー体14で枕全体を固定できるようにしたが、
図2に示すように、頭部クッション体11の扁平部4を展開してそこに腰部を位置させ、これによって頭部クッション体11全体を固定させるように使用することもできる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・枕
11・・・頭部クッション体
12・・・腰部クッション体
13・・・頭部カバー体
14・・・腰部カバー体
2・・・第一収納部
21・・・ファスナー
22・・・留め具
23・・・第一表裏縫合部
3・・・第二収納部
31・・・ファスナー
32・・・第二表裏縫合部
4・・・扁平部
41・・・留め具
5・・・クッション材
51・・・開口部