【解決手段】錠剤印刷装置1は、錠剤3の側面9を吸着支持しつつ錠剤3を搬送する搬送ディスク5と、搬送ディスク5によって搬送される錠剤3の表裏面7a,7bに対し印刷処理が可能なインクジェットヘッド6とを有する。錠剤3は、搬送ディスク4に表裏面7a,7bが吸着されつつ搬送され、側面検査装置15によって側面9が検査される。錠剤受け渡し部8にて、錠剤3は搬送ディスク4から搬送ディスク5に移され、搬送ディスク5の端面5aに形成された吸着孔18によって、表裏面7a,7b全体が露出した状態で吸着支持される。その後、インクジェットヘッド6により、錠剤3の表裏面7a,7bが同時に印刷処理され、印字検査の後、良品のみが良品排出部10から排出される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1である錠剤印刷装置1の全体構成を示す説明図である。
図1の錠剤印刷装置1は、ホッパ2から供給された錠剤3を2つの搬送ディスク4,5にて1個ずつ吸着搬送し、インクジェットヘッド6により錠剤3の表・裏面(被印刷面)7a,7bに所望の印刷処理を行う。錠剤印刷装置1では、錠剤受け渡し部8にて、搬送ディスク4(第1搬送ディスク)から搬送ディスク5(第2搬送ディスク)へと錠剤3が移送され、搬送ディスク5の端面5aに錠剤3の側面9が吸着支持される。錠剤3は、側面9を上下方向に向けた立設状態(立設姿勢)でインクジェットヘッド6に搬送される。そして、インクジェットヘッド6にて錠剤3の表面7aと裏面7bが同時に印刷され、良品のみが良品排出部10から装置外へ排出される。
【0015】
図1に示すように、錠剤印刷装置1には、錠剤3を貯留、供給するホッパ2が設けられている。ホッパ2の下方には、振動フィーダ(錠剤フィーダ)11が配設されている。ホッパ2から振動フィーダ11に供給された錠剤3は、振動を受けつつ表・裏面7a,7b側のどちらか一方を下にして整列され、錠剤供給部12に送給される。錠剤供給部12には、円盤状の搬送ディスク4が配されている。搬送ディスク4は、回転軸13を中心に、図示しない駆動源(例えば、電動モータ)によって矢示方向に回転する。搬送ディスク4の端面4aは、突起のない平坦面となっており、周方向に沿って円形の吸着孔14が設けられている。吸着孔14は、真空ポンプ等の吸引装置(図示せず)と接続されている。錠剤供給部12に送給された錠剤3は、吸着孔14によって搬送ディスク4の端面4aに吸着される。このとき、錠剤3は、表・裏面7a,7bのどちらか一方が吸着された状態で端面4aに保持される。
【0016】
搬送ディスク4の近傍には、側面検査装置15が配置されている。側面検査装置15では、搬送ディスク4に吸引支持された錠剤3の側面9の状態(割れ、欠けの有無など)が検査される(側面検査)。錠剤印刷装置1では、錠剤外観や印刷状態の検査装置としてカメラが用いられており、検査装置にて撮影された映像は図示しない制御装置に送られ、良・不良の判別が行われる。側面検査装置15に使用されるカメラの撮影範囲には、ライトと、錠剤側面と対向するよう配置された1対のプリズムが設けられており、カメラは、ライトによって照らされた錠剤側面の様子を180°ずつ2個のプリズムを介して撮影する。側面検査装置15では、錠剤3の外観のみならず、錠剤3の厚さも測定可能であり、寸法不良の判別も行うことができる。ここで異常が検出された錠剤3は不良品として認識され、印刷処理は行わず、搬送ディスク5の後段に設けられた不良品排出部16から排出される。
【0017】
搬送ディスク4の後段には、円盤状の搬送ディスク5が配されている。搬送ディスク5は、回転軸17を中心に、図示しない駆動源によって矢示方向に回転する。搬送ディスク4,5は互いの回転軸13,17が直交する形で配設されており、両者は錠剤の搬送速度が同じになるよう同期駆動される。搬送ディスク5の端面5aも、搬送ディスク4と同様に、突起のない平坦面となっており、周方向に沿って円形の吸着孔(吸着部)18が設けられている。搬送ディスク4,5の端面4a,5aは、錠剤受け渡し部8にて直交状態に隣接、対向している。
【0018】
錠剤3は、錠剤供給部12にて搬送ディスク4の端面4aに吸着され、搬送ディスク4の回転に伴い、錠剤受け渡し部8まで搬送される。錠剤受け渡し部8に搬送されてきた錠剤3は、錠剤受け渡し部8にて搬送ディスク5の端面5aに吸着され、搬送ディスク5側に移送される。この場合、搬送ディスク4側では、錠剤受け渡し部8にて両ディスク4,5が最接近する位置まで吸着孔14に吸着力が付与される。錠剤3は、ディスク最接近位置にて吸着力を失った吸着孔14から、対向する搬送ディスク5の吸着孔18に吸着され、搬送ディスク5側に載せ替えられる。
【0019】
錠剤3は、その表・裏面7a,7bが搬送ディスク4に吸着されているため、錠剤受け渡し部8では、搬送ディスク5の端面5aに対してその側面9が対向する。従って、搬送ディスク5側では、錠剤3の側面9が吸着される形となり、錠剤3は立った状態で端面5aに保持される。この場合、錠剤受け渡し部8には、
図6に示すような錠剤受け渡しガイド60を設けても良い。錠剤受け渡しガイド60には、引きはがし部61と、姿勢安定ガイド62a,62bが設けられており、引きはがし部61は、搬送ディスク4に吸着されている錠剤3を端面4aから引きはがす働きを有している。また、姿勢安定ガイド62a,62bは、搬送ディスク5に乗り移った錠剤3が端面5aにて直立するようにガイドする働きを有している。なお、錠剤受け渡し部8における搬送ディスク4,5間のクリアランスは、錠剤3のサイズにより適宜変更可能であり、錠剤サイズを制御パネルから入力することにより自動的に調整される。
【0020】
錠剤受け渡し部8の後段には、搬送ディスク5に近接して印刷面検査装置19が配置されている。印刷面検査装置19では、搬送ディスク5に吸引支持された錠剤3の表・裏面7a,7bの状態が検査される(印刷面検査)。また、割線のある錠剤3では、印刷面検査装置19により、割線位置の検出も行われる。側面検査装置15の場合と同様に、ここで外観不良が検出された錠剤3は不良品として認識され、印刷処理は行わず、不良品排出部16から排出される。
【0021】
印刷面検査装置19の後段にはインクジェットヘッド6が配されているが、錠剤印刷装置1では、インクジェットヘッド6の前に粉取り装置20が設けられている。粉取り装置20は、錠剤3に対しノズル21から圧縮空気を吹き付け、錠剤表面に付着した粉末を印刷直前に除去する。錠剤表面から吹き飛ばされた粉は、吸引管22から回収される。打錠機にて成型された錠剤の表面には薬剤等の粉末が付着しており、それを取り除かずに錠剤表面に印刷処理を行うと、錠剤表面から粉と共に表示印刷が消えてしまったり、印刷が滲み表示が不明瞭になったりする可能性がある。これに対し、当該錠剤印刷装置1では、インクジェットヘッド6の直前に粉取り装置20を配することにより、錠剤3は、表面の粉が除去され、しかも、新たな粉が発生する前に印刷処理を行うことができる。従って、錠剤表面に付着した粉により、印刷が消えたり滲んだりすることがなく、鮮明で高品質な印刷処理が可能となる。
【0022】
インクジェットヘッド6では、錠剤3の表・裏面7a,7bに所定の印刷処理が施される。この際、錠剤3は、側面9が吸着された形で支持されており、表・裏面7a,7bは全面的に露出した状態にある。このため、錠剤印刷装置1では、錠剤3の全面に余すことなく印刷処理が可能であり、錠剤周囲に印刷不能な領域が生じることがない。また、表・裏面7a,7bに対し、同時に印刷処理を行うことが可能である。これにより、印刷面検査装置19で検出された割線の向きに応じて錠剤3の表面7aに印刷される文字の向きと、その裏面7bに印刷される文字の向きを一致させることが可能となる。このように、表・裏全面に所望の印刷を効率良く行うことができ、印刷デザインの自由度が向上すると共に、印刷時間の短縮や装置の小型化も図られる。なお、インクジェットヘッド6では、表面用6aと裏面用6bが同位置に対向配置されているが、両者をずらして配置しても良く、多色印刷対応のため、ヘッドを複数個配置することも可能である。
【0023】
また、当該錠剤印刷装置1においては、マガジンなどの搬送治具を使用せず、搬送ディスク5に吸引支持した状態で、錠剤3をインクジェットヘッド6の位置に搬送する。これにより、インクジェットヘッド6では、ヘッドノズルの直近を錠剤3が通過する形を取ることができ、ヘッドと錠剤との間の距離を極限まで短くすることが可能となる。従って、印刷精度の向上を図ることができ、より高品質な錠剤印刷が可能となる。
【0024】
さらに、錠剤印刷装置1のインクジェットヘッド6は、表・裏面7a,7bの形状に応じてインクの吐出量が調整されており、被印刷面が曲面の場合でも、歪みのない印刷が行える。例えば、表・裏面が球面状になっている錠剤の場合、中央と周辺部とではヘッドノズルと錠剤表面との間の距離に差があり、同条件で印刷を行うと、周辺域では印刷に歪みが生じる場合がある。そこで、錠剤印刷装置1では、錠剤の形状情報に基づき、ヘッドノズルの吐出量を調整し、歪みのない見やすい印刷を行っている。この場合、錠剤の形状情報は、装置の制御パネルからも入力できるが、側面検査装置15にて測定した錠剤3の厚さデータを使用することも可能である。
【0025】
インクジェットヘッド6の後段には、印字検査装置23が配されている。印字検査装置23は、インクジェットヘッド6による印刷結果を確認するために設けられており、印刷不良が検出された場合は、次段の不良品排出部16から不良品として排出される。不良品排出部16には、圧縮空気を噴射するジェットノズル24が配されており、外観不良や印刷不良と判断された錠剤3は、ジェットノズル24からの噴射エアによって搬送ディスク5から吹き飛ばされ、排除される。
【0026】
不良品排出部16の後段には、乾燥・冷却装置25が設けられている。錠剤3は、印刷面が未乾燥のまま良品排出部10に送られると、搬出路26にインクが付着したり、印刷がかすれたりするおそれがある。そこで、錠剤印刷装置1では、良品排出部10の前に乾燥・冷却装置25を配し、印刷面の乾燥とインクの固化を図っている。乾燥・冷却装置25には、加温ノズル27と冷却ノズル28が設けられており、加温ノズル27からの温風によってインクの溶媒を気化させた後、冷却ノズル28からの冷風によりインクを融点以下に冷却し固化させる。そして、印刷を錠剤表面に定着させた後、良品の錠剤3のみを良品排出部10から排出する。これにより、搬出路26に付着したインクにより良品の錠剤が汚れてしまうことがなく、また、搬出路26上を流れ落ちる際に印刷面が擦れてかすれてしまうことも防止でき、製品品質や歩留まりの向上が図られる。
【0027】
このように、本発明による錠剤印刷装置1にあっては、錠剤3の側面9を吸着支持しつつ印刷処理を行うので、錠剤3の表・裏面7a,7bが錠剤支持用のガイド等によって覆われることがない。このため、錠剤3は、被印刷面が全面的に露出した状態にて、検査や印刷処理が可能であり、錠剤周囲に検査や印刷が不能となる領域が生じない。また、錠剤3の表裏を反転させることなく、表裏両面を印刷することができ、錠剤反転に伴うインク転写や印刷のかすれ等のリスクを排除することが可能となる。また、錠剤3の両面に同時印刷することにより、表・裏面7a・7bに印刷する文字の向きを一致させることも可能となる。
【0028】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2である錠剤印刷装置31について説明する。
図2は、錠剤印刷装置31の全体構成を示す説明図である。なお、以下の実施形態では、実施の形態1と同様の部材、部品等については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0029】
実施の形態2の錠剤印刷装置31も、先の錠剤印刷装置1と同様に、錠剤3の側面9を吸着支持した状態で印刷処理が実施される。錠剤印刷装置31は、錠剤整列供給部32と、第1搬送ディスク33、第2搬送ディスク34とを備えており、第1搬送ディスク33近傍にインクジェットヘッド6が配されている。第1搬送ディスク33では、錠剤3の側面9が吸着支持され、インクジェットヘッド6によって印刷処理が行われる。錠剤3は、錠剤受け渡し部8にて第2搬送ディスク34に移送され、第2搬送ディスク34では、錠剤3の表・裏面7a,7bのどちらか一方を保持しつつ側面9の外観検査が行われる。
【0030】
なお、錠剤整列供給部32とインクジェットヘッド6の間には、錠剤印刷装置1と同様に、錠剤3の印刷面検査と割線検出を行う印刷面検査装置19と粉取り装置20が配されている。また、第1搬送ディスク33のインクジェットヘッド6後段には、印字検査装置23と乾燥・冷却装置25が配されている。さらに、第2搬送ディスク34側には、錠剤3の側面9の検査を行う側面検査装置15、不良品排出部16、良品排出部10が設けられている。
【0031】
第1搬送ディスク33は、実施の形態1の搬送ディスク4,5と同様に、その端面33aに吸着孔(吸着部)35が形成されている。第1搬送ディスク33に対しては、錠剤整列供給部32から錠剤が立った状態で供給される。錠剤3は、吸着孔35によって側面9が吸着された状態で端面33a上に保持される。錠剤3にはその状態のまま、印刷面検査装置19によって表・裏面7a,7bの検査と割線検出が行われ、粉取り装置20にて錠剤表面の粉末が除去された後、インクジェットヘッド6によって印刷処理が行われる。インクジェットヘッド6による印刷処理は、表・裏面7a,7b同時に行われる。
【0032】
印刷処理を行った後、印字検査装置23によって印刷状態がチェックされ、乾燥・冷却装置25によって印刷の定着が図られる。乾燥・冷却装置25での処理の後、錠剤3は第2搬送ディスク34側に受け渡され、側面検査装置15にて側面9の検査が行われる。第2搬送ディスク34は、第1搬送ディスク33に対し軸方向にずれた位置に配されており、そのディスク面34aの外周部には、周方向に沿って吸着孔36が複数個形成されている。吸着孔36は、第1搬送ディスク33の端面33aに吸着された錠剤3の中心と対向する位置に形成されている。第1搬送ディスク33によって錠剤受け渡し部8まで搬送されてきた錠剤3は、そこで対向する第2搬送ディスク34の吸着孔36に吸引され、第2搬送ディスク34側に移送される。
【0033】
第2搬送ディスク34のディスク面34aに吸着された錠剤3は、側面検査装置15によって側面9が検査される。そして、側面検査の後、表・裏面7a,7bや印刷状態、側面9に欠陥が発見されなかった錠剤3は、良品排出部10から排出される。これに対し、何れかに欠陥が発見された錠剤3は不良品排出部16から不良品として排出される。このように、実施の形態2の錠剤印刷装置31においても、錠剤3の側面9を吸着支持しつつ印刷処理を行うので、被印刷面が全面的に露出した状態にて、検査や印刷処理が可能となる。
【0034】
一方、錠剤印刷装置31の錠剤整列供給部32には、錠剤整列部41と錠剤供給部42が設けられている。
図3は錠剤整列部41の構成を示す説明図である。
図3に示すように、錠剤整列部41には、ホッパ2からベルトコンベア43によって錠剤3が搬送される。ベルトコンベア43の終端部にはガイドブロック44とスライドプレート45が設けられており、終端部に至った錠剤3は、ガイドブロック44よりスライドプレート45へと押し出され、側面9が上下方向となる姿勢で滑り落ちて錠剤フィーダ46に導入される。錠剤フィーダ46は、錠剤3が1個だけ入り得る幅となっており、第1搬送ディスク33に向けて下り勾配となるよう傾斜している。錠剤3は、錠剤フィーダ46内を1列で転動し、錠剤供給部42に搬送される。この際、錠剤印刷装置31では、錠剤3が錠剤フィーダ46内を転がるように移動し、両者の接触面が相対的に変化するため、錠剤を滑らせて供給する場合に比して、錠剤の摩耗が少なく、搬送時に錠剤が削れて変形してしまうのを防止できる。
【0035】
このようにして錠剤フィーダ46内を転動して来た錠剤3は、錠剤供給部42にて第1搬送ディスク33に供給され、その側面9がディスク端面33aに吸着される。その際、錠剤供給部42における錠剤3の供給ポイントSP(錠剤フィーダ46の終端と第1搬送ディスク33の近接点)は、水平方向に対して角度θ1(30°〜60°程度)の位置に設定される(供給ポイント角度位置)。また、錠剤フィーダ46の傾斜角度は、第1搬送ディスク33の中心Oと錠剤供給ポイントSPとを結ぶ直線に対してθ2(0〜30°)に設定されている(供給ポイントにおける錠剤進入角度)。両角度θ1,θ2をこのような設定とすることにより、重力を利用して錠剤3を連続的に供給できる一方、隣接する錠剤3を押す力が重力の角度成分となるため垂直方向に供給する場合よりも小さくなる。このため、錠剤3は、過荷重が加わることなく、スムーズに第1搬送ディスク33へと供給される。
【0036】
なお、錠剤整列部41は、
図3の構造以外にも、例えば、
図4(a),(b)のような構造も可能である。
図4(a)の場合、ベルトコンベア43から滑り落ちた錠剤3は、進行方向が180°反転して第1搬送ディスク33へと供給される。このように、錠剤進行方向を折り返すように切り替えると、
図3のように錠剤の進行方向が変わらない装置に比して、装置の占有面積を小さくすることができ、装置の小型化を図ることが可能となる。また、
図4(b)は、
図3や
図4(a)とは異なり、ベルトコンベア43の前方に向かって錠剤を滑り落としている。これにより、コンベアの配置に他のバリエーションを設けることができ、装置設計の自由度が向上する。
【0037】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3である錠剤印刷装置51の構成を示す説明図である。錠剤印刷装置51は、搬送ディスク52が傾斜した状態で配置されており、先の実施形態では2個用いられていた搬送ディスクを1個に削減した構成となっている。搬送ディスク52は、その回転軸53が水平に対し45°傾斜した形で設けられている。また、搬送ディスク52の周囲には、ディスク面52aから45°傾斜した状態でフランジ部54が形成されている。これにより、
図5に示すように、搬送ディスク52の上方ではフランジ部54が垂直方向に向き、下方ではフランジ部54が水平方向に向いた状態となる。フランジ部54が垂直方向に向くディスク上部(印刷位置P)には、インクジェットヘッド6が配されており、フランジ部54が水平方向に向くディスク下部(吸着位置A)は、振動フィーダ11の錠剤供給部12に接続されている。
【0038】
搬送ディスク52の端面、すなわち、フランジ部54の端面55には、周方向に沿って複数個の吸着孔(吸着部)56が形成されている。搬送ディスク52内には、吸着エアの流路57が形成されている。流路57は、図示しない吸引装置に接続されている。錠剤印刷装置51では、吸着位置にて搬送ディスク52の端面55に錠剤3が吸着され、搬送ディスク52の回転に伴って上方に移動し、印刷位置まで搬送される。印刷位置では、インクジェットヘッド6により、錠剤3の表・裏面7a,7bに印刷処理が行われる。そして、印刷処理の後、錠剤3はさらに約1/4回転搬送され、良品排出部10にて搬送ディスク52から解放、排出される。なお、錠剤印刷装置51においても、吸着位置と印刷位置の間には、側面検査装置15と、印刷面検査装置19、粉取り装置20が配されている。また、印刷位置と良品排出部10との間にも、印字検査装置23、不良品排出部16、乾燥・冷却装置25が配されている。
【0039】
このような錠剤印刷装置51にあっては、搬送ディスク52を傾斜配置することにより、ディスク1回転内に吸着位置と印刷位置を配することができ、1個に搬送ディスクにて錠剤印刷処理が可能となる。このため、装置構成がシンプルとなり、装置の小型化を図ることが可能となる。また、ディスク間の錠剤受け渡しもなくなるため、受け渡し失敗のリスクも回避でき、両ディスクの同期制御やクリアランス調整も不要となる。
【0040】
(実施の形態4)
図7は、本発明の実施の形態3である錠剤印刷装置71における錠剤供給部12の構成を示す説明図である。なお、錠剤印刷装置71の錠剤供給部12より下流の部分は、実施の形態1(
図1)と同様の構成となっている。
図7に示すように、錠剤印刷装置71では、錠剤供給部12の前段に、錠剤供給手段として、もう一つ別の搬送ディスク(錠剤供給ディスク72)が設けられている。錠剤3は、側面9を錠剤供給ディスク72に吸着され、水平姿勢(表面7a,裏面7bを垂直方向上下に向けた状態)で錠剤供給部12に搬送される。実施の形態1の錠剤印刷装置1と異なり、本実施の形態の錠剤供給部12は、ガイド部材なしに錠剤3を搬送供給するガイドレス構造となっており、種々のサイズの錠剤に柔軟に対応できるようになっている。
【0041】
錠剤供給ディスク72は、ディスク面72bが略水平となった状態で配置されており、垂直方向に延びる回転軸73を中心に、図示しない駆動源によって矢示方向に回転する。
図1に示すように、錠剤供給部12の後段に配された搬送ディスク4,5は、それぞれのディスク面4b,5bが垂直方向に立った状態となっているが、錠剤印刷装置71の錠剤供給ディスク72は、ターンテーブル状にディスク面72bが水平方向に寝た状態となっている。
【0042】
錠剤供給ディスク72の端面72aには、周方向に沿って円形の吸着孔(吸着部)74が設けられている。端面72aは、搬送ディスク4,5と異なり、各吸着孔74の近傍に、錠剤3が導入される凹部75が形成されている。錠剤供給ディスク72の端面72aは、搬送ディスク4の端面4aと直交状態に隣接、対向しており、錠剤供給ディスク72と搬送ディスク4との間にも錠剤受け渡し部76(第1の錠剤受け渡し部)が形成される。錠剤供給ディスク72もまた、錠剤の受け渡しを考慮し、錠剤の搬送速度が同じになるよう搬送ディスク4,5と同期駆動される。なお、搬送ディスク4,5の端面4a,5aにも同様の凹部を設けても良く、また、端面72aを搬送ディスク4,5と同様に突起のない平坦面としても良い。
【0043】
錠剤供給ディスク72の周回部には、回転フィーダ(錠剤フィーダ)81から錠剤3を受け取る錠剤取得部77が設けられている。錠剤印刷装置71では、錠剤供給ディスク72において、錠剤供給部12の上流側(錠剤供給ディスク72の回転方向と逆側)に錠剤取得部77が配されている。回転フィーダ81は、いわゆる無振動タイプの回転式パーツフィーダであり、円筒状の筐体82内に回転円盤83と環状回転板84を同軸状に設けた構成となっている。筐体82は、その一部が切り欠かれており、そこに錠剤供給ディスク72が臨む形で配置され錠剤取得部77が形成されている。筐体82のすぐ内側には環状回転板84が配されており、その内側には、回転円盤83が傾斜した状態で配置されている。回転円盤83は、外周の一部が環状回転板84と同じ高さとなっており、回転円盤83と環状回転板84の連絡部85となっている。連絡部85には、回転円盤83上の錠剤を環状回転板84側に案内するガイド板86が設けられている。
【0044】
ホッパ2から供給された錠剤3は、錠剤投入部87から、回転する回転円盤83上に供給される。回転円盤83上の錠剤3は、回転円盤83の回転に伴って周方向に移動し、ガイド板86により、回転円盤83と同速度で回転する環状回転板84側に移動する。環状回転板84上の錠剤3は、環状回転板84の回転に伴って周方向に移動し、錠剤取得部77に送られる。錠剤取得部77に送られた錠剤3は、回転する錠剤供給ディスク72の端面72aと対向し、吸着孔74に姿勢とタイミングが合致した錠剤3は、凹部75に嵌まりつつ吸着孔74に吸着される。このとき、錠剤3は、水平姿勢にて端面72aに吸着される。
【0045】
錠剤取得部77にて錠剤供給ディスク72に吸着された錠剤3は、錠剤供給ディスク72の回転に伴い、水平姿勢のまま錠剤供給部12に運ばれる。錠剤供給部12に来た錠剤3は、錠剤受け渡し部76にて、錠剤供給ディスク72から搬送ディスク4に移送される。搬送ディスク4の端面4aに吸着された錠剤3には、前述同様に検査や印刷等の処理が行われる。すなわち、搬送ディスク4の回転に伴い、錠剤3は水平姿勢から垂直姿勢(側面9を垂直方向上下に向けた状態)となり、側面検査が行われ、錠剤受け渡し部8に至る。錠剤3は、錠剤受け渡し部8にて搬送ディスク5に移送され、垂直姿勢のまま搬送され、印刷面の検査や粉取りの後、印刷処理が実施される。
【0046】
一方、姿勢とタイミングが合わず、吸着孔74に吸着されなかった錠剤3は、回転する回転円盤83上にそのまま戻る。すなわち、正しい姿勢で吸着された錠剤3は、錠剤供給ディスク72にて錠剤供給部12に運ばれ、次工程以降の各処理に進む。これに対し、吸着姿勢が整わないものは、回転フィーダ81内に戻され、再び錠剤供給部12に向かって自動的に搬送される(自動リターン・自動リトライ)。
【0047】
このように、錠剤印刷装置71では、錠剤供給ディスク72を用いて、回転フィーダ81から錠剤供給部12に錠剤3を吸着搬送する。これにより、ガイドレスにて錠剤3をピックアップし、搬送ディスク4に供給することが可能となる。ここで、実施の形態1(
図1)の錠剤印刷装置1では、振動フィーダ11と錠剤供給部12との間に、錠剤サイズに合わせた搬送ガイド29を配し、そこで錠剤3を整列させて錠剤供給部12に供給している。従って、錠剤サイズが変わると搬送ガイド29を交換する必要がある。この場合、錠剤より小さいサイズのガイドは当然に使用できず、また、大き過ぎるガイドは錠剤の流れや供給位置が不安定になる。このため、搬送ガイド29は、錠剤サイズに合った専用のものを用いる必要がある。
【0048】
一方、近年、ジェネリック医薬品など、薬効成分が同じでありながら、錠剤のサイズや形状が異なる薬品が多く出回っている。また、同じ薬でも処方量の異なる大小の錠剤が種々存在する場合も少なくない。ところが、搬送ガイドを用いた装置では、同成分の錠剤でもサイズが変われば部品交換が必要となり、そのたびに装置を停止させて交換・清掃作業を行わなければならず、手間がかかる上に処理時間も増大する。この作業は、全く同じ薬剤で大きさが異なれば同様の手間が必要であり、異なるサイズの錠剤を区別することなく印刷処理可能な装置が望まれていた。
【0049】
これに対し、当該錠剤印刷装置71は、搬送ガイドを用いることなく、錠剤供給ディスク72によって錠剤3を錠剤供給部12に供給するため、ディスクに吸着可能でありさえすれば、錠剤の大小に関わらず、錠剤を正しい姿勢で後段に供給することができる。従って、同成分の錠剤を大小ミックスさせた状態で搬送供給でき、処理効率を大きく改善させることが可能となる。本発明の錠剤印刷装置は、後段の搬送ディスク4,5も吸着搬送を行いつつ印刷処理を行うため、錠剤サイズに関わらす所望の印刷が可能であり、錠剤供給ディスク72の使用により、当該装置の特性を最大限に発揮した効率の良い印刷処理が可能となる。
【0050】
また、錠剤印刷装置71には搬送ガイドが存在しないため、その交換や清掃の手間もかからず、装置メンテナンスの工数も削減される。さらに、また、吸着孔74のピッチは予め決まっているため、錠剤供給部12に対し、処理能力以上の錠剤を供給してしまうこともなく、錠剤滞留による問題も生じない。
【0051】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態では、印刷対象を円形の錠剤としたが、本発明による印刷装置は、円形錠剤以外にも、オブロング錠やキャブレット錠、多角形錠剤など種々の錠剤に対応可能である。また、錠剤のみならず、カプセル(ハード、ソフト)に対する印刷処理も可能である。従って、本発明における錠剤は、所謂円形の錠剤のみならず、各種形状の錠剤やカプセルなどを含む概念である。
【0052】
また、前述の実施形態の搬送ディスクに形成された吸着孔の形状は円形には限定されず、楕円や多角形であっても良い。また、吸着孔と共に、錠剤外形形状に合わせた内周面を持つ曲面状の吸着溝を設けても良い。その際、吸着溝の形状も、V字状やU字状、四角状など種々の形状を採用することが可能である。例えば、錠剤供給ディスク72などに、
図8のような略V字状の溝を形成し、三角錠等の異形錠に対応しても良い。なお、最も一般的な錠剤が円盤状であり、錠剤の大きさが多少異なっていてもフィットする曲面状が望ましい。