O(式中、AはNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示し、nは0〜8の数を示す。)で表されるシリコチタネート由来のピークを示すことが好ましい。前記ケイ素及びチタン含有化合物が非晶質であり且つ熱重量分析において150℃〜300℃での重量減少が7質量%以下であることが好ましい。更に、一般式;A
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のストロンチウム吸着剤は、非晶質又は低晶質のケイ素及びチタン含有化合物からなるものである。
非晶質のケイ素及びチタン含有化合物とは、ケイ素及びチタンを含有することを前提として、これを、線源としてCu−Kαを用い、2θ=5〜70°の走査範囲で粉末X線回折測定したときに、ケイ素及びチタン含有化合物に由来する結晶ピークが観察されないものを指す。
【0012】
また、低晶質のケイ素及びチタン含有化合物とは、ケイ素及びチタンを含有することを前提として、これを前記と同様の粉末X線回折測定したときに、ケイ素及びチタン含有化合物に由来する微小な結晶ピークが観察されるものを指す。
【0013】
本発明のケイ素及びチタン含有化合物が前記と同様の粉末X線回折測定した微小な結晶ピークが観察される場合、そのピークは、一般式;A’
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(式中、A’はNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示し、nは0〜8の数を示す。)で表されるシリコチタネート由来のピークであることが好ましい。例えば、当該シリコチタネート由来のピークは、例えば、2θ=8〜13°、より典型的には2θ=10〜13°に最も強度の強い主ピーク或いはハローピークが観察される。また、微小なピークとは、例えば最大強度(cps)が350cps以下のピークであることが好ましく、最大強度(cps)が300cps以下のピークであることがより好ましく、最大強度(cps)が250cps以下のピークであることが特に好ましい。このような微小なピークを呈するケイ素及びチタン含有化合物を得るためには、後述する本発明の好適な製造方法における焼成温度や焼成時間等を調整すればよい。
【0014】
本発明において、非晶質又は低晶質のケイ素及びチタン含有化合物の粉体又は粒状体の150〜300℃まで温度上昇したときの重量減少率が7%以下、好ましくは2%以下であることが、セシウムの吸着性能は低い一方で、ストロンチウムの高い吸着性能を有する観点から好ましい。重量減少率がこの上限以下のケイ素及びチタン含有化合物は、無水物であってもよく、或いは結晶水又は水和水を有していてもよいが、上記の観点から、無水物であることが好ましい。これに対し、後述する一般式;A’
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(nは1〜8)で表される結晶性シリコチタネートを含め一般に結晶性ケイ素及びチタン含有化合物は、多くの場合、TG−DTA測定したときに150〜300℃に結晶水の消失に起因する大きな吸熱ピークが観察される。重量減少率は後述する実施例に記載の方方法で測定される。
【0015】
本発明で用いるケイ素及びチタン含有化合物はTi:Siのモル比が好ましくは4:3である。ケイ素及びチタン含有化合物及び吸着剤におけるTi:Siのモル比は下記の方法にて求めることができる。この方法で求める場合には、半定量分析に基づくモル比であることを考慮して、Ti:Siのモル比が4:2以上4以下、特に4:2.5以上3.5以下の幅を持たせた範囲であることも、上記の4:3のモル比と対応するものとして好ましい。ケイ素及びチタン含有化合物が一般式;A’
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(式中、A’はNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示し、nは0〜8の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートの焼成物である場合、通常Ti:Siのモル比は上記の範囲となる。Ti:Siのモル比が上記の範囲である非晶質又は低晶質のケイ素及びチタン含有化合物を得るためには、後述する本発明の好適な製造方法で本発明の吸着剤を製造すればよい。例えば後述する好ましい混在物である一般式;A
4Ti
9O
20・mH
2O(式中、AはNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示し、mは0〜10の数を示す。)で表されるチタン酸塩を含有していない場合、本発明の吸着剤のTi:Siのモル比が、ケイ素及びチタン含有化合物の好ましいTi:Siのモル比として上記で述べた範囲と同様の範囲であることも好ましい。
<Ti/Siのモル比の求め方>
(a)ケイ素及びチタン含有化合物又は吸着剤を、適当な容器(アルミリング等)に入れ、ダイスで挟みこんでからプレス機で10MPaの圧力をかけてペレット化することにより測定用試料を得る。この試料を蛍光X線装置(装置名:ZSX100e、管球:Rh(4kW)、雰囲気:真空、分析窓:Be(30μm)、測定モード:SQX分析(EZスキャン)、測定径:30mmφ、(株)リガク製)で全元素測定する。ケイ素及びチタン含有化合物又は吸着剤中のSiO
2及びTiO
2の含有量(質量%)を、半定量分析法であるSQX法で計算することで算出する。
(b)求めたSiO
2及びTiO
2の含有量(質量%)をそれぞれの分子量で割り、ケイ素及びチタン含有化合物又は吸着剤100g中のSiO
2及びTiO
2のモル数を得る。
【0016】
本発明で用いるケイ素及びチタン含有化合物はNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を含有していることが好ましい。ケイ素及びチタン含有化合物は、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属をA’としたときにケイ素及びチタン含有化合物中のA’:Siのモル比が好ましくは4:3である。ここでA’ はNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示す。ケイ素及びチタン含有化合物又は吸着剤におけるA’:Siのモル比は下記の方法にて求めることができる。この方法で求める場合には、半定量分析に基づくモル比であることを考慮して、A’:Siのモル比が4:2以上4以下、特に4:2.5以上3.5以下の幅を持たせた範囲であることも、上記の4:3のモル比と対応するものとして好ましい。ケイ素及びチタン含有化合物が一般式;A’
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(式中、A’はNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示し、nは0〜8の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートの焼成物である場合、通常A’:Siのモル比は上記の範囲となる。A’:Siのモル比が上記範囲である非晶質又は低晶質のケイ素及びチタン含有化合物を得るためには、後述する本発明の好適な製造方法で本発明の吸着剤を製造すればよい。また例えば好ましい混在物である上記のチタン酸塩を含有していない場合、本発明の吸着剤におけるA’:Siのモル比は、ケイ素及びチタン含有化合物のA’:Siの好ましいモル比として上記で挙げた範囲と同様の範囲であることが好ましい。
【0017】
<A’/Siのモル比の求め方>
(a)ケイ素及びチタン含有化合物又は吸着剤を、適当な容器(アルミリング等)に入れ、ダイスで挟みこんでからプレス機で10MPaの圧力をかけてペレット化することにより測定用試料を得る。この試料を蛍光X線装置(装置名:ZSX100e、管球:Rh(4kW)、雰囲気:真空、分析窓:Be(30μm)、測定モード:SQX分析(EZスキャン)、測定径:30mmφ、(株)リガク製)で全元素測定する。ケイ素及びチタン含有化合物又は吸着剤中のNa
2O,K
2O及びSiO
2の含有量(質量%)を、半定量分析法であるSQX法で計算することで算出する。
(b)求めたNa
2O,K
2O及びSiO
2の含有量(質量%)をそれぞれの分子量で割り、ケイ素及びチタン含有化合物又は吸着剤100g中のNa
2O+K
2Oのモル数及びSiO
2のモル数を得て、上記の比率を算出する。
【0018】
本発明で用いるケイ素及びチタン含有化合物は、酸化物であることが好ましい。ケイ素及びチタン含有化合物は、Na、K、Si及びTi以外の金属元素又は半金属元素を非含有であることが好ましく、特にチタン以外の遷移金属元素又は希土類元素を非含有であり、且つ/又はアルカリ土類金属元素を非含有であり、且つ/又はSi以外の半金属元素を非含有であることが好ましい。その他ケイ素及びチタン含有化合物が非含有であることが好ましい元素としてはハロゲン元素;硫黄;セレン;リン;窒素;炭素が挙げられる。本発明で用いるケイ素及びチタン含有化合物は、ケイ素及びチタン含有化合物は、シリコチタネートであることが好ましく、上記一般式;A’
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oで表される化合物であってもよい。
【0019】
本発明で用いる吸着剤及びケイ素及びチタン含有化合物は、上記一般式;A’
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oで表される結晶性シリコチタネートの焼成物であることが好ましい。上記一般式;A’
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oで表される結晶性シリコチタネートを焼成した場合、得られた低晶質又は非晶質の焼成物、特に非晶質の焼成物は、組成分析等で組成を特定できても、X線回折測定によりその化学構造を特定できない。また焼成の条件等により、焼成物の特性は変動してしまうこと、特定の焼成物に特徴的な特性又は物性(パラメータ)を全て見出すためには過度の実験が必要であるため、ケイ素及びチタン含有化合物について、本明細書に記載した事項以外の特性による特定も困難である。このように、非晶質ないし低晶質、特に非晶質の焼成物について、その構造及び特性を特定することは非常に難しい。このため、上記一般式;A’
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oで表される結晶性シリコチタネートの焼成物である低晶質又は非晶質のケイ素及びチタン含有化合物には、その構造又は特性について本明細書に記載した事項以外の事項により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在する。
【0020】
本発明の吸着剤は上述したように、一般式;A
4Ti
9O
20・mH
2O(式中、AはNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示し、mは0〜10の数を示す。)で表されるチタン酸塩を含有していることが好ましい。以下、このチタン酸塩を前記チタン酸塩又は単にチタン酸塩と記載することがある。本発明の吸着剤がこのチタン酸塩を含有していることは、本発明の吸着剤を、前記の線源及び回折角の範囲でX線回折測定したときに前記チタン酸塩のメーンピークが2θ=8〜14°にブロードなピークとして観察されることにより確認できる。なお、前記チタン酸塩のメーンピークは通常、結晶方位が(010)であり、一般式(2)におけるmが5〜7である含水塩に由来するピークとして2θ=8〜10°に検出される。しかしながら、本発明の吸着剤の好ましい製造方法においては、後述するようにチタン酸塩を焼成する場合があり、その場合、好ましくは、2θ=8〜10°よりも若干高角度側の2θ=9〜14°、特に2θ=10〜14°に前記チタン酸塩のメーンピークのブロードなピークが出現する。
【0021】
2θ=8〜10°にメーンピークが観察される前記チタン酸塩は、ストロンチウム吸着性能が高いものの、若干のセシウム吸着性能を有する。一方、2θ=8〜10°よりも高角度側にメーンピークが観察される前記チタン酸塩は、ストロンチウム吸着性能が低下するものの、セシウム吸着性能が十分低減されている点で好ましい。従って、本発明の吸着剤をX線回折測定したときに前記チタン酸塩のメーンピークが2θ=9〜14°、特に2θ=10〜14°に観察されることが好ましい。このようなピークを示すチタン酸塩を含有する本発明の吸着剤を得るためには、後述する本発明の製造方法において、原料に焼成前のチタン酸塩を含有させて焼成の温度時間や焼成の時間等を調整すればよい。
【0022】
なお、本発明の吸着剤は、前記ケイ素及びチタン含有化合物に、更にチタン酸塩を含有させたものは、2θ=10〜14°に前記ケイ素及びチタン含有化合物とチタン酸塩のメーンピークが重なって、前記ケイ素及びチタン含有化合物のメーンピークがX線チャート上に観察されない場合があるが、明確に前記ケイ素及びチタン含有化合物のメーンピークがX線チャート上に観察される必要はない。
【0023】
本発明の吸着剤における特定のチタン酸塩では、層間が特定範囲であることが好ましい。具体的には、チタン酸塩の層間は、0.63nm以上0.88nm以下であることが好ましく、0.65nm以上0.80nm以下であることがより好ましい。このような層間は、X線回折ピークの位置に関係していると本発明者らは考えている。具体的には、回折角(2θ)=8〜10°よりも高角度側にメーンピークが観察される前記チタン酸塩の層間は、回折角(2θ)=8〜10°にメーンピークが観察される前記チタン酸塩の層間(通常0.90〜0.95nm程度)よりも狭くなっている。このように層間が狭くなっていることは、吸着剤におけるチタン酸塩のセシウム吸着性能が低いことと関係があるとみられる。チタン酸塩の層間はX線回折分析により測定することができる。具体的には、チタン酸塩の001面の回折より得られる回折ピークの2θを測定し、下記のブラッグ回折式により、チタン酸塩の001面間隔(d)を算出し、得られたdを層間(nm)とする。
λ=2dsinθ
(式中、dはチタン酸塩の001面の面間隔を表し、θは回折角を表し、λは0.15418nmである。)
【0024】
本発明の吸着剤に含まれるチタン酸塩の層間を上記の範囲とするためには、後述する本発明の製造方法において、原料に焼成前のチタン酸塩を含有させて焼成の温度時間や焼成の時間等を調整すればよい。
【0025】
本発明の吸着剤は、前記チタン酸塩を含有している場合、組成分析によって得られる前記ケイ素及びチタン含有化合物に対する前記チタン酸塩のモル比(前者:後者)が、1:0.25〜0.45であることが好ましく、1:0.3〜0.4であることがより好ましい。このモル比は、具体的には、以下の方法で求める。本発明の吸着剤の上記モル比を上記範囲とするためには、後述する本発明の製造方法において、原料に焼成前のチタン酸塩及び結晶性シリコチタネートを含有させる量比を調整すればよい。
【0026】
<ケイ素及びチタン含有化合物とチタン酸塩とのモル比の求め方>
(a)吸着剤を、適当な容器(アルミリング等)に入れ、ダイスで挟みこんでからプレス機で10MPaの圧力をかけてペレット化することにより測定用試料を得る。この試料を蛍光X線装置(装置名:ZSX100e、管球:Rh(4kW)、雰囲気:真空、分析窓:Be(30μm)、測定モード:SQX分析(EZスキャン)、測定径:30mmφ、(株)リガク製)で全元素測定する。吸着剤中のSiO
2及びTiO
2の含有量(質量%)を、半定量分析法であるSQX法で計算することで算出する。
(b)求めたSiO
2及びTiO
2の含有量(質量%)をそれぞれの分子量で割り、吸着剤100g中のSiO
2及びTiO
2のモル数を得る。
(c)前記で求めた吸着剤中のSiO
2のモル数の3分の1を吸着剤中のケイ素及びチタン含有化合物(A’
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O由来の化合物)のモル数と仮定する。また、ケイ素及びチタン含有化合物1モル中のTi原子のモル数が4として、下記式(1)により吸着剤中の前記チタン酸塩のモル数を求める。
【数1】
(d)得られたケイ素及びチタン含有化合物のモル数及びチタン酸塩のモル数から上記の比を得る。
【0027】
本発明の吸着剤は、前記ケイ素及びチタン含有化合物及び前記チタン酸塩以外に各種バインダ等の他の成分を含んでいても良いが、吸着性能を高めることができる観点から、他の成分の含有量は低いことが好ましい。吸着剤中、前記ケイ素及びチタン含有化合物並びに前記チタン酸塩以外の成分の含有量の合計量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
本発明の吸着剤は、BET比表面積が特定範囲であることが好ましい。具体的には、BET比表面積が20m
2/g以上であることが好ましく、20m
2/g以上100m
2/g以下であることが更に好ましく、50m
2/g以上100m
2/g以下であることが一層好ましい。この範囲のBET比表面積を有する本発明の吸着剤は、ストロンチウムの選択的吸着性能が非常に良好なものとなる。BET比表面積は、島津製作所製のFlowsorb II2300(商品名)を用いてBET1点法にて測定する。使用ガスは、窒素ヘリウム混合ガス(窒素30vol%)とする。
【0029】
本発明の吸着剤は、非晶質又は低晶質のケイ素及びチタン含有化合物を含有することにより、低いセシウム吸着性能及び高いストロンチウムの吸着性能を両立できるため、ストロンチウム及びセシウムのうち、セシウムを選択的に効率よく吸着することができる。
【0030】
本発明の吸着剤の形態としては、粉末状、顆粒状、顆粒以外の成形体(球状、円柱状)等を挙げることができ、粉末状又は顆粒状であることが好ましい。
【0031】
本発明の吸着剤が粒状体である場合、200μm以上1000μm以下の粒度を有することが好ましい。この粒度の粒状体からなる本発明の吸着剤には、200μmよりも細かい粒子が存在しないか或いは存在しても極微量であるため、本発明の吸着剤を吸着塔に充填して通水した場合に、粒子が吸着塔内で詰まる問題を防止することができる。また、粒径が1000μm以下である場合、吸着剤の吸着性能を向上しやすい。
【0032】
具体的には、本発明の吸着剤が粒状体である場合、JIS Z8801規格による目開きが212μmの篩と、前記の目開きが1mmの篩とを用いたときに、本発明の吸着剤の98質量%以上、特に99質量%以上が目開き1mmの篩を通り且つ98質量%以上、特に99質量%以上が目開き212μmの篩を通らないことが好ましい。特に、本発明の吸着剤は、300μm以上600μm以下の粒度を有する粒状体からなることが好ましい。具体的には、JIS Z8801規格による目開きが300μmの篩と、目開きが600μmの篩とを用いたときに、本発明の吸着剤の98質量%以上、特に99質量%以上が前記の600μmの篩を通り且つ98質量%以上、特に99質量%以上が前記の300μmの篩を通らないことが好ましい。
【0033】
本発明の吸着剤におけるケイ素及びチタン含有化合物(又はケイ素及びチタン含有化合物及びチタン酸塩)の好ましい含有量は、その形態によって異なる。例えば吸着剤を不織布に固定させて使用する場合は、吸着剤中のケイ素及びチタン含有化合物の量(又はケイ素及びチタン含有化合物及びチタン酸塩の合計量)が好ましくは90質量%以上、特に95質量%以上であることが好ましい。また吸着剤が結合剤により造粒させた形態である場合は吸着剤中のケイ素及びチタン含有化合物の量(又はケイ素及びチタン含有化合物及びチタン酸塩の合計量)は好ましくは70質量%以上、特に80質量%以上であることが好ましい。吸着剤がバインダ成分を含有している場合は、バインダ成分の量は、吸着剤中、1質量%以上30質量%以下程度であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下程度であることがより好ましい。バインダ成分としては後述する各種のバインダを用いることができる。
【0034】
続いて、本発明のストロンチウム吸着剤の好適な製造方法について説明する。
【0035】
本製造方法では、一般式;A’
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(式中、A’はNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示し、nは0〜8の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネート(以下、「前記結晶性シリコチタネート」または単に「結晶性シリコチタネート」とも記載する)を含む原料を250℃以上800℃以下で焼成する。結晶性シリコチタネートを含む原料を上記の温度で焼成したものをX線回折測定すると、当該一般式で表されるシリコチタネートに由来するピークが観察されないか、或いは、該シリコチタネートに由来する微小なピークが観察される非晶質又は低晶質のケイ素及びチタン含有化合物が得られる。これらの化合物は高いストロンチウム及び低いセシウム吸着性能を両立する点で本発明の効果の高いものである。
【0036】
結晶性シリコチタネートを含む原料は結晶性シリコチタネートのみを有していても良く、結晶性シリコチタネート以外の他の成分を含有していても良い。結晶性シリコチタネート以外の他の成分としては一般式;A
4Ti
9O
20・mH
2Oで表されるチタン酸塩が好ましい。結晶性シリコチタネートを含む原料を得る場合、前記の線源及び回折角の範囲で該原料をX線回折測定したときに、前記結晶性シリコチタネートのピークのうち最も強度の高いピーク(以下メーンピークともいう。)が回折角(2θ)10〜13°の範囲に観察されることが好ましく、これに加えて、27°〜29°及び/又は34°〜35°の範囲にも前記結晶性シリコチタネートのピークが検出されることがより好ましい。結晶性シリコチタネート及びチタン酸塩を含む原料を得る場合、チタン酸塩のメーンピークは回折角(2θ)=8〜10°に観察されることが好ましく、これに加えて、27〜29°及び/又は47〜49°の範囲に更に前記チタン酸塩のピークが検出されることがより好ましい。結晶性シリコチタネートのメーンピーク高さに対する、前記チタン酸塩のメーンピークの高さの比が5%以上70%以下であることが好ましく、5%以上60%以下であることがより好ましく、5%以上50%以下であることが更に好ましい。
【0037】
本明細書中に記載のピーク高さの比は、ベースライン補正したX線回折ピークパターンに基づいて行う。ベースライン補正はsonneveld-visser法により行う。前記の回折ピークパターンからピーク高さを求める際には、次のようにする。まず、一つのピークが有する2つの底点を結んで直線を得る。そして当該ピークの頂点から垂線を引いて該直線と交わらせ、得られた交点と該ピークの頂点との距離をピーク高さとする。
【0038】
また前記結晶性シリコチタネートを含む原料が前記チタン酸塩を含有する場合、その好ましいモル比は、本発明の吸着剤中におけるケイ素及びチタン含有化合物と前記チタン酸塩の好ましいモル比として上記で挙げたモル比率と同様のモル比を挙げることができる。また原料中における前記結晶性シリコチタネートと前記チタン酸塩とのモル比の求め方
も、吸着剤中におけるケイ素及びチタン含有化合物と前記チタン酸塩とのモル比の求め方と同様である。
【0039】
前記結晶性シリコチタネートを含む原料における結晶性シリコチタネート以外の成分の量(但し、前記チタン酸塩を除く)は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
本発明で用いる結晶性シリコチタネートを含む原料における結晶性シリコチタネートとしては、市販品を用いてもよいが、例えば、下記の製造方法により製造したものであってもよい。まずその製造方法について詳細に説明する。
【0041】
本製造方法は、ケイ酸源と、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物と、四塩化チタンと、水とを混合し混合ゲルを製造する第一工程と、第一工程により得られた混合ゲルを水熱反応させる第二工程とを有し、
第一工程において、混合ゲルに含まれるTiとSiとのモル比がTi/Si=0.5以上3.0以下となるように、ケイ酸源及び四塩化チタンとを添加する。この製造方法によれば、チタン化合物として結晶性シリコチタネートのみを含有する原料、並びに結晶性シリコチタネート及びチタン酸塩の両方を含有する原料のいずれも製造することができる。
【0042】
第一工程において用いられるケイ酸源としては、例えば、ケイ酸ソーダが挙げられる。また、ケイ酸アルカリ(すなわちケイ酸のアルカリ金属塩)をカチオン交換することにより得られる活性ケイ酸も挙げられる。
【0043】
活性ケイ酸は、ケイ酸アルカリ水溶液を例えばカチオン交換樹脂に接触させてカチオン交換して得られるものである。ケイ酸アルカリ水溶液の原料としては、通常水ガラス(水ガラス1号〜4号等)と呼ばれるケイ酸ナトリウム水溶液が好適に用いられる。このものは比較的安価であり、容易に手に入れることができる。また、Naイオンを嫌う半導体用途では、ケイ酸カリウム水溶液が原料としてふさわしい。固体状のメタケイ酸アルカリを水に溶かしてケイ酸アルカリ水溶液を調製する方法もある。メタケイ酸アルカリは晶析工程を経て製造されるので、不純物の少ないものがある。ケイ酸アルカリ水溶液は、必要に応じて水で希釈して使用する。
【0044】
活性ケイ酸を調製するときに使用するカチオン交換樹脂は、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に制限されない。ケイ酸アルカリ水溶液とカチオン交換樹脂との接触工程では、例えばケイ酸アルカリ水溶液をシリカが濃度3質量%以上10質量%以下となるように水に希釈し、次いで、希釈したケイ酸アルカリ水溶液をH型強酸性又は弱酸性カチオン交換樹脂に接触させて脱アルカリする。更に必要に応じてOH型強塩基性アニオン交換樹脂に接触させて脱アニオンすることができる。この工程によって、活性ケイ酸水溶液が調製される。ケイ酸アルカリ水溶液とカチオン交換樹脂との接触条件の詳細については、従来、様々な提案が既にあり、それら公知のいかなる接触条件も採用することができる。
【0045】
第一工程において用いられるナトリウム化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムが挙げられる。これらのナトリウム化合物のうち、炭酸ナトリウムを用いると炭酸ガスが発生するため、そのようなガスの発生がない水酸化ナトリウムを用いることが、中和反応を円滑に進める観点から好ましい。第一工程において用いられるカリウム化合物としては、水酸化カリウムや炭酸カリウムが挙げられ、ナトリウム化合物と同様の理由から水酸化カリウムが好ましい。
【0046】
第一工程においてナトリウム化合物及びカリウム化合物を用いる場合は、ナトリウム化合物とカリウム化合物との合計モル数に対し、カリウム化合物のモル数の割合0%超50%以下であることが好ましく、5%以上30%以下であることがより好ましい。
【0047】
本製造方法では、Ti/Si比(モル比)が0.5以上3.0以下となるような量でケイ酸源及び四塩化チタンを添加する。チタン化合物として結晶性シリコチタネートのみを含む原料を得る場合、混合ゲル中のTi/Si比は1.2以上1.5以下であることが好ましい。結晶性シリコチタネートとチタン酸塩とを含む原料を得る場合は、混合ゲル中のTi/Si比は1.8以上2.2以下であることが好ましい。
【0048】
また、混合ゲルに占めるSiO
2換算のケイ酸源濃度とTiO
2換算の四塩化チタン濃度の総量が2.0質量%以上40質量%以下であり、かつ混合ゲルに占めるA
2OとSiO
2のモル比がA
2O/SiO
2=0.5以上3.0以下となるようにケイ酸源及び四塩化チタンを添加することが望ましい。ここでAはNa及びKを示す。前記範囲内にケイ酸源及び四塩化チタンの添加量を調整することで、目的とする結晶性シリコチタネートの収率を満足すべき程度に高くすることができる。
【0049】
なおチタン化合物として結晶性シリコチタネートのみを含む原料を得る場合は、A
2O/SiO
2のモル比=0.5以上2.5以下となるようにケイ酸源及び四塩化チタンを添加することが好ましく、結晶性シリコチタネートとチタン酸塩とを含む原料を得る場合は、混合ゲル中のA
2O/SiO
2のモル比=1.0以上1.8以下となるようにケイ酸源及び四塩化チタンを添加することが好ましい。
【0050】
第一工程において用いられる四塩化チタンは、工業的に入手可能なものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0051】
第一工程において、ケイ酸源、ナトリウム化合物、カリウム化合物、及び四塩化チタンは、それぞれ水溶液の形態で反応系に添加することができる。場合によっては固体の形態で添加することもできる。更に第一工程では、得られた混合ゲルに対して、必要があれば純水を用いて該混合ゲルの濃度を調整することができる。
【0052】
第一工程において、ケイ酸源、ナトリウム化合物、カリウム化合物、及び四塩化チタンは、種々の添加順序で添加することができる。例えば(1)ケイ酸源、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物、並びに水を混合したものに、四塩化チタンを添加することにより混合ゲルを得ることができる(この添加順序のことを、以下、単に「(1)の実施」ということもある。)。この(1)の実施は、四塩化チタンから塩素の発生をおさえる点で好ましい。
【0053】
第一工程における別の添加順序として、(2)ケイ酸アルカリをカチオン交換することによって得られる活性ケイ酸(以下、単に「活性ケイ酸」ということもある。)水溶液と四塩化チタンと水とを混合したものに、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物を添加する、という態様を採用することもできる。この添加順序を採用しても、(1)の実施と同様に混合ゲルを得ることができる(この添加順序のことを、以下、単に「(2)の実施」ということもある。)。四塩化チタンはその水溶液の形態又は固体の形態で添加することができる。同様に、ナトリウム化合物及びカリウム化合物も、その水溶液の形態又は固体の形態で添加することができる。
【0054】
(1)及び(2)の実施において、ナトリウム化合物及びカリウム化合物は、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度がNa
2O換算で0.5質量%以上15質量%以下、特に0.7質量%以上13質量%以下となるように添加されることが好ましい。混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算質量及び混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算の濃度(以下「ナトリウム及びカリウムの合計濃度(第一工程でカリウム化合物を用いない場合、ナトリウム濃度)」と言う)は、以下の式で計算される。
混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算質量(g)=ケイ酸ソーダ由来のナトリウムイオンのモル数+水酸化ナトリウム等のナトリウム化合物由来のナトリウムイオンのモル数+水酸化カリウム等のカリウム化合物由来のカリウムイオンのモル数−四塩化チタン由来の塩化物イオンのモル数)×0.5×Na
2O分子量
混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算の濃度(質量%)=
混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算質量/(混合ゲル中の水分量+混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算質量)×100
【0055】
ケイ酸源の選択と混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度の調整を組み合わせることにより、Ti:Siのモル比が4:3の結晶性シリコチタネート以外の結晶性シリコチタネートの生成を抑制することができる。ケイ酸源としてケイ酸ソーダ又はケイ酸カリを用いた場合、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度をNa
2O換算で2.0質量%以上とすることで、Ti:Siのモル比が5:12の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となり、一方、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度をNa
2O換算で6.0質量%以下とすることで、Ti:Siのモル比が1:1の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となる。また、ケイ酸源としてケイ酸アルカリをカチオン交換することにより得られる活性ケイ酸を用いた場合、Na
2O換算で1.0質量%以上とすることで、Ti:Siのモル比が5:12の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となり、一方、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度をNa
2O換算で6.0質量%以下とすることで、Ti:Siのモル比が1:1の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となる。
【0056】
なお、ケイ酸源としてケイ酸ナトリウムを用いた場合は、ケイ酸ナトリウム中のナトリウム成分は、同時に混合ゲル中のナトリウム源となる。したがって、ここで言う「混合ゲル中におけるナトリウムのNa
2O換算質量(g)」とは、混合ゲル中のすべてのナトリウム成分の和として計数される。
【0057】
(1)及び(2)の実施において、四塩化チタンの添加は、均一なゲルを得るため一定の時間をかけて、四塩化チタン水溶液として段階的又は連続的に行うことが望ましい。このため、四塩化チタンの添加にはペリスタポンプ等を好適に用いることができる。
【0058】
第一工程により得られた混合ゲルは、後述する第二工程である水熱反応を行う前に、0.1時間以上5時間以下の時間にわたり、10℃以上100℃以下で熟成を行うことが、均一な生成物を得る点で好ましい。熟成工程は、例えば静置状態で行ってもよく、あるいはラインミキサーなどを用いた撹拌状態で行ってもよい。
【0059】
本発明においては第一工程において得られた前記混合ゲルを、第二工程である水熱反応に付して結晶性シリコチタネートを得る。水熱反応としては、結晶性シリコチタネートが合成できる条件であれば、いかなる条件であってもよく制限されない。通常、オートクレーブ中で好ましくは120℃以上200℃以下、より好ましくは140℃以上180℃以下の温度において、好ましくは6時間以上90時間以下、更に好ましくは12時間以上80時間以下の時間にわたって、加圧下に反応させる。反応時間は、合成装置のスケールに応じて選定できる。
【0060】
前記第二工程で得られた含水状態の結晶性シリコチタネートは乾燥させ、得られた乾燥物を必要により解砕又は粉砕して粉末状(粒状を含む)とすることができる。また、含水状態の結晶性シリコチタネートを複数の開孔が形成された開孔部材から押出成形して棒状成形体を得、得られた該棒状成形体を乾燥させて柱状にしてもよいし、乾燥させた該棒状成形体を球状に成形したり、解砕又は粉砕して粒子状としてもよい。後者の場合つまり乾燥前に押出成形を行う場合、後述する分級方法により回収される結晶性シリコチタネートの収率を高めることができる。ここで、解砕とは、細かい粒子が集まって一塊になっているものをほぐす操作をいい、粉砕とはほぐされた固体粒子に対し,機械的な力を作用させさらに細かくする操作をいう。
【0061】
開孔部材に形成された孔の形状としては、円形、三角形、多角形、環形等を挙げることができる。開孔の真円換算径は0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.3mm以上5mm以下がより好ましい。ここでいう真円換算径は、孔一つの面積を円面積とした場合の該面積から算出される円の直径である。押出成形後の乾燥温度は例えば例えば50℃以上200℃以下とすることができる。また乾燥時間は1時間以上120時間以下とすることができる。
【0062】
乾燥させた棒状成形体は、そのままでも前記結晶性シリコチタネートを含む原料として用いることができるし、軽くほぐして用いてもよい。また乾燥後の棒状成形体は粉砕して用いてもよい。これら各形状の結晶性シリコチタネートは、更に分級してから焼成の原料として用いることが、本発明の吸着剤のストロンチウムの吸着効率を高める等の観点から好ましい。分級は、例えばJISZ8801−1に規定する公称目開きが1000μm以下、特に800μm以下の第1の篩を用いることが好ましい。また前記の公称目開きが100μm以上、特に300μm以上の第2の篩を用いて行うことも好ましい。更に、これら第1及び第2の篩を用いて行うことが好ましい。
【0063】
上記の製造方法により、反応条件を適宜選択するだけで、X線回折的に結晶性シリコチタネートが実質単相の原料を製造できるだけでなく、結晶性シリコチタネート及びチタン酸塩を含有する原料を一気に製造できる。
なお、結晶性シリコチタネート及びチタン酸塩を含む原料は、上記の製造方法により結晶性シリコチタネート及びチタン酸塩を一度に製造してもよいし、また上記の製造方法のように結晶性シリコチタネートをX線回折的に単相のものを製造した後、別途市販又は公知の方法で製造したチタン酸塩を混合処理して結晶性シリコチタネート及びチタン酸塩を含む原料を得てもよい。
【0064】
以上のようにして得られた結晶性シリコチタネートを含む原料は、250℃以上800℃以下で焼成する。焼成に用いる装置としては、箱形焼成炉、ロータリーキルン等を挙げることができる。なお、実験室スケールでは電気炉等を用いることができる。焼成の雰囲気は、大気中等の含酸素雰囲気であっても、窒素又はアルゴン等の非活性雰囲気であっても、還元雰囲気等であってもよい。
【0065】
焼成の温度は、250℃以上とすることで、セシウム吸着性能を低くすることが可能となる。また焼成の温度は、800℃以下とすることが、得られる吸着剤のストロンチウム吸着性能を高いものとすることができる。これらの観点から、焼成の温度は、250℃以上800℃以下であることが好ましく、300℃以上700℃以下であることがより好ましく、400℃以上600℃以下であることが特に好ましく、400℃以上500℃以下であることがとりわけ好ましい。
上記の温度範囲における焼成の時間は、例えば0.5時間以上が好ましく、1時間以上24時間以下がより好ましい。
【0066】
得られる焼成物は、そのまま吸着剤として使用してもよいし、適宜洗浄や乾燥、成形等の各種の処理を行った後に吸着剤として使用してもよい。
【0067】
以上の製造方法で得られる吸着剤は、粉末状である未成形体又は例えば棒状や粒子状(顆粒状も含む)等の成形体である吸着剤として各種の用途に用いることができる。なお、本発明のストロンチウム吸着剤を成形体とする場合、粉末状等の未成形体である原料を焼成した後、当該未成形体である原料を成形してもよいし、前記結晶性シリコチタネート又は前記結晶性シリコチタネート及びチタン酸塩とを含む原料を予め棒状や粒子状(顆粒状を含む)等の各種所定の形状に成形した後に、この成形体を焼成してもよい。
【0068】
前記の成形加工としては、例えば粉末状の原料又は吸着剤を顆粒状に成型するための造粒加工や粉末状の原料又は吸着剤をスラリー化して塩化カルシウム等の硬化剤を含む液中に滴下して原料又は吸着剤をカプセル化する方法、樹脂芯材の表面に原料又は吸着剤の粉末を添着被覆処理する方法、天然繊維または合成繊維で形成されたシート状基材の表面及び/又は内部に粉末状の原料又は吸着剤を付着させて固定化してシート状にする方法などを挙げることができる。造粒加工の方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば攪拌混合造粒、転動造粒、押し出し造粒、破砕造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒(スプレードライ)、圧縮造粒等を挙げることができる。造粒の過程において必要に応じバインダーや溶媒を添加、混合してもよい。バインダーとしては、公知のもの、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、デンプン、コーンスターチ、糖蜜、乳糖、成形ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、アルギン酸、ポリアクリル酸、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。溶媒としては水性溶媒や有機溶媒等各種のものを用いることができる。
【0069】
また、顆粒状の本発明の吸着剤は、更に磁性粒子を含有させることにより、セシウム及び/又はストロンチウムを含む水から磁気分離で回収可能な吸着材として使用することが出来る。磁性粒子としては、例えば鉄、ニッケル、コバルト等の金属またはこれらを主成分とする磁性合金の粉末、四三酸化鉄、三二酸化鉄、コバルト添加酸化鉄、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の金属酸化物系磁性体の粉末が挙げられる。
顆粒状の吸着剤に磁性粒子を含有させる方法としては、例えば、前述した造粒加工操作を磁性粒子を含有させた状態で行えばよい。
【0070】
また、本発明のストロンチウム吸着剤は、これを例えば不織布などの各種の吸着シートやマットに使用する場合、そのまま粉末状体として材料を加工する際に添加することにより用いられる。不織布に吸着剤を固定する具体的な方法としては、粉末状の吸着剤を、エマルジョン化した樹脂バインダとともに、水に分散させ、これに、不織布を含浸添着させたのち乾燥する方法が挙げられる。この樹脂バインダとしては、例えば、ラテックスバインダ、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリレートの共重合体、メタクリレートの共重合体、スチレンブタジエン共重合体、スチレンアクリル共重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、ニトリルゴム、アクリルニトリルブタジエン共重合体、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。不織布としては例えばポリエステル及び/又はポリオレフィン繊維で構成されるものが用いられる。
このように吸着剤を塗布した不織布を、例えば吸着剤を塗布した面を内側にして巻回した形態とすることによっても、水処理に好適に用いることができる。
【0071】
上述したストロンチウム吸着剤の製造方法によって得られる顆粒状等に成形した吸着剤や粉末状体として不織布に固定させた吸着剤は、放射性物質吸着剤を充填してなる吸着容器及び吸着塔を有する水処理システムの吸着剤、あるいは水処理用材料として好適に用いることができる。
【0072】
本発明は、更に、非晶質又は低晶質のケイ素及びチタン含有化合物からなるストロンチウム吸着剤を、セシウム及びストロンチウムを含む溶液に接触させるストロンチウムの吸着方法をも提供する。この場合、セシウム及びストロンチウムを含む溶液におけるセシウウ及びストロンチウムの量に制限はないが、一例をあげれば、本発明の吸着剤の選択的吸着性を十分に発揮する観点から、ストロンチウムを含有するとは、ストロンチウムを0.01ppm以上含有する含有することが好ましく、特に1ppm以上含有するものであることが好ましい。また同様の観点から、セシウムを含有するとは、セシウムを0.01ppm以上含有することが好ましく、特に1ppm以上含有するものであることが好ましい。これらの上限としては例えば、ストロンチウムについては、1000ppm以下、特に
500ppm以下であると本発明の吸着剤の高い吸着性能が発揮されやすいため好ましい。また、ストロンチウム濃度がこの上限以下である場合、セシウムについては本発明の吸着剤の選択的吸着性を明確に示す観点から、2000ppm以下、特に1000ppm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断らない限り「%」は「質量%」を表す。実施例及び比較例で使用した評価装置及び使用材料は以下のとおりである。
【0074】
<評価装置>
X線回折:Bruker社 D8 AdvanceSを用いた。線源としてCu−Kαを用いた。測定条件は、管電圧40kV、管電流40mA、走査速度0.1°/secとした。
ICP−AES:Varian社720−ESを用いた。Csの測定波長は697.327nm、Srの測定波長は216.596nmとしてCs及びSrの吸着試験を行った。標準試料はNaClを0.3%含有したCs:100ppm、50ppm及び10ppmの水溶液、並びにNaClを0.3%含有したSr:100ppm、10ppm及び1ppmの水溶液を使用した。
TG−DTA:メトラートレド社製TGADSClを用い、大気雰囲気下で、行った。測定温度範囲;25℃〜1000℃、昇温速度;10℃/minで温度上昇したときの150℃における試料の重量と300℃における試料の重量を測定し、下記計算式より重量減少率を算出した。なお、リファレンス:成分α―アルミナとした。サンプル量は180mgとした。
重量減少率(%)=(A−B)/A×100
(A:150℃における試料重量、B:300℃における試料重量)
【0075】
<使用材料>
・3号ケイ酸ソーダ:日本化学工業株式会社製(SiO
2:28.96%、Na
2O:9.37%、H
2O:61.67%、SiO
2/Na
2O=3.1)。
・苛性ソーダ水溶液:工業用25%水酸化ナトリウム(NaOH:25%、H
2O:75%)。
・苛性カリ:固体試薬 水酸化カリウム(KOH:85%)。
・四塩化チタン水溶液:株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ社製36.48%水溶液
【0076】
〔製造例1〕
<結晶性シリコチタネートの合成>
(1)第一工程
3号ケイ酸ソーダ60g、苛性ソーダ水溶液224.3g、苛性カリ34.6g及びイオン交換水82.5gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、四塩化チタン水溶液203.3gをペリスタポンプで0.5時間にわたって連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該混合ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温(25℃)で静置熟成した。混合ゲル中のTi/Siモル比:1.33、K
2O/Na
2Oモル比:25/75、SiO
2換算濃度a:2.83%、TiO
2換算濃度b:5.14%、a+b:7.97、A
2O/SiO
2モル比:0.926、Na
2O換算濃度:3.71%であった。
【0077】
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて170℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に96時間反応を行った。反応後のスラリーを濾過し、得られたケーキを直径0.6μmの円形の開孔部材で押出成形した後、乾燥し、分級して粒度が300μm以上600μm以下の粒状物を得た。得られた粒状物をX線回折測定した。その結果を
図1に示す。
図1に示すX線回折測定の結果より、得られた粒状物は一般式;A’
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(式中、A’はNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示し、nは0〜8の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートの単相と判断された。尚、
図1以降において「GTS」は前記結晶性シリコチタネートを表す。
また、得られた「GTS」のTG−DTA曲線を
図2に示す。
図2において太線がDTA曲線であり、細線がTG曲線である。
図2のDTA曲線に示すように、200℃付近に結晶性シリコチタネートの脱水に伴う吸熱ピークが観察された。得られた結晶性シリコチタネートをTG−DTA分析したところ、前記の重量減少率は8.8%であった。
【0078】
{参考実験}
製造例1で得られた粒状物100gをアルミナ容器に入れて、電気炉で大気雰囲気下、2時間掛けて昇温した後にそれぞれ250℃、400℃、500℃及び600℃で2時間焼成した。得られた焼成品について、25℃から1000℃まで昇温速度10℃/minとするTG−DTA測定を行い、前記の重量減少率を測定した。その結果を表Aに示す。
【表A】
【0079】
〔製造例2〕
<結晶性シリコチタネート及びチタン酸塩の混合物の合成>
(1)第一工程
3号ケイ酸ソーダ90g、苛性ソーダ水溶液667.49g及び純水84.38gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、四塩化チタン水溶液443.90gをペリスタポンプで1時間20分にわたって連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該混合ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温で静置熟成した。混合ゲル中のTi/Siモル比:2、K
2O/Na
2Oモル比:0/100、SiO
2換算濃度a:2.00%、TiO
2換算濃度b:5.30%、a+b:7.30、A
2O/SiO
2モル比:1.56、Na
2O換算濃度:3.22%であった。
【0080】
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて170℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に24時間反応を行った。反応後のスラリーを濾過し、得られたケーキを直径0.6μmの円形の開孔部材で押出成形した後、乾燥し、分級して粒度が300μm以上600μm以下の粒状物を得た。得られた粒状物をX線回折測定した。その結果を
図3に示す。
図3に示すX線回折測定の結果より、得られた粒状物は主相Na
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oであり、Na
4Ti
9O
20・mH
2Oが検出され、前記結晶性シリコチタネート及び前記チタン酸塩の混合物であると確認した。また粒状物は2θ=10〜13°の範囲に観察されるNa
4Ti
4Si
3O
16・6H
2Oに由来するメーンピーク(M.P.)の高さに対して、2θ=8〜10°に範囲に観察されるNa
4Ti
9O
20・5〜7H
2Oに由来するM.P.の高さの比が38.5%であった。また上記方法の組成分析によればNa
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O:Na
4Ti
9O
20・mH
2Oのモル比は1:0.37であった。
また、結晶性シリコチタネート及びチタン酸塩の混合物のTG−DTA曲線を
図4に示す。70〜80℃付近及び200℃付近に混合物の脱水に伴う吸熱ピークが観察された。
また、X線回折分析の結果、チタン酸塩の層間は0.90nm(2θ=9.8°)であった。
【0081】
〔比較例1〕
製造例1で得た粒状物をそのまま比較例1の吸着剤とした。
【0082】
〔実施例1〕
製造例1で得た粒状物100gをアルミナ容器に入れて、電気炉で大気雰囲気下、2時間掛けて昇温した後に500℃で2時間焼成した。これにより、実施例1の吸着剤を得た。得られた吸着剤について上記の方法にてX線回折測定した。その結果を
図1に示す。
図1に示すように結晶性シリコチタネートに由来するピークがほとんど消失したが、2θ=10〜13°に該シリコチタネート由来とみられる微小なピーク(ピーク強度220cps)がメーンピークとして観察された。従って実施例1の吸着剤は、該シリコチタネートを含む非晶質ないし低晶質のケイ素及びチタン含有化合物を含有することを確認した。
また、得られた吸着剤を25℃から1000℃まで昇温速度10℃/minとするTG−DTA測定をし、前記の重量減少率を測定したところ1.1%であった。得られたTG−DTAを
図5に示す。
【0083】
〔比較例2〕
製造例2で得た粒状物をそのまま比較例2の吸着剤とした。
【0084】
〔実施例2−1〕
製造例2で得た粒状物100gをアルミナ容器に入れて大気雰囲気下、2時間掛けて昇温した後に400℃で2時間焼成した。これにより実施例2−1の吸着剤を得た。得られた吸着剤について上記の方法にてX線回折測定した。その結果を
図4に示す。
図4に示すように結晶性シリコチタネートに由来する2θ=10〜13°に観察されるメーンピークが小さくなり(ピーク強度150cps)低晶質のシリコチタネートとなっていることが確認された。また前記チタン酸塩のメーンピークが若干高角度側に移動していた。尚、
図4以降においてSNTは前記チタン酸塩を表す。
また、X線回折分析の結果、400℃焼成品のチタン酸塩の層間は0.89nm(2θ=9.9°)であった。
【0085】
〔実施例2−2及び実施例2−3〕
実施例2−1と焼成温度を500℃(実施例2−2)又は600℃(実施例2−3)に変更した以外は同様にして吸着剤を製造し、同様にX線回折測定を行った。結果を
図3に示す。
図3に示すように実施例2−2及び2−3で得られた吸着剤のX線回折チャートによれば、結晶性シリコチタネートに由来する明確なピークが観察されず(仮にピークが存在していても2θ=10〜14°におけるチタン酸塩のメーンピークが重なっており、強度は350cps以下である)、非晶質若しくは低晶質のケイ素及びチタン含有化合物となっていることが確認された。またチタン酸塩の2θ=8〜10°に観察される前記チタン酸塩のメーンピークが高角度側(2θ=10〜14°)に移動していることが確認された。
また、X線回折分析の結果、500℃焼成品のチタン酸塩の層間は0.76nm(2θ=11.6°)で、600℃焼成品のチタン酸塩の層間は0.74nm(2θ=12.0°)であった。
【0086】
〔比較例3〕
製造例1と同様の方法にて、第一工程を行い混合ゲルを得た。得られた混合ゲルを、オートクレーブに入れ、2時間かけて170℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に96時間反応を行い、前記結晶性シリコチタネートを含有する反応後のスラリー(第1スラリー)を得た。
また、苛性ソーダ水溶液1742.94g及び苛性カリ719.09g、純水3671.54gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、四塩化チタン水溶液1616gをペリスタポンプで1時間にわたって連続的に添加して混合ゲルを製造した。混合ゲル中のK
2O/Na
2Oモル比:1/1、TiO
2換算濃度3.22%であった。当該混合ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、2時間かけて98℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下にて6時間反応を行い、前記チタン酸塩を含有する反応後のスラリー(第2スラリー)を得た。
前記結晶性シリコチタネートと前記チタン酸塩との比率(第1スラリー及び第2スラリーそれぞれのTiがいずれも全量、前記結晶性シリコチタネートと前記チタン酸塩となった場合の比率)をモル比が1:1となるように第1スラリー及び第2スラリーを撹拌混合した。得られた混合物を濾過し、得られた固形物を洗浄し、乾燥した乾燥物を得た。これを比較例3の吸着剤とした。得られた吸着剤について上記の方法にてX線回折測定した。その結果を
図6に示す。
図6に示すように比較例3の吸着剤のX線回折チャートでは前記結晶性シリコチタネート及び前記チタン酸塩に由来するピークが観察された。
また、X線回折分析の結果、チタン酸塩の層間は0.89nm(2θ=9.9°)であった。
【0087】
〔実施例3〕
製造例1で得られた粒状物の代わりに比較例3で得た吸着剤100gをアルミナ容器に入れ、大気雰囲気下、2時間掛けて昇温した後に500℃で2時間焼成し、実施例3の吸着剤を得た。得られた吸着剤について上記の方法にてX線回折測定した。その結果を
図6に示す。
図6に示すように結晶性シリコチタネートに由来するピークは小さくなっているか消失しており(仮にピークが存在していても2θ=10〜14°におけるチタン酸塩のメーンピークが重なっており、強度は350cps以下である)、低晶質ないし非晶質のケイ素及びチタン含有化合物となっていることが確認された。なお
図6における実施例3のX線回折チャートではチタン酸塩のメーンピークが高角度側(2θ=10〜14°)に移動しているとみられる。
また、X線回折分析の結果、チタン酸塩の層間は0.79nm(2θ=11.2°)であった。
【0088】
〔比較例4〕
比較例3で得られた前記チタン酸塩を含有する反応後のスラリーを濾過し、得られた固形物を洗浄し、乾燥した乾燥物を得た。これを比較例4の吸着剤とした。得られた吸着剤について上記の方法にてX線回折測定した。その結果を
図7に示す。
また、得られたチタン酸塩のTG−DTA曲線を
図8に示す。
図8において太線がDTA曲線であり、細線がTG曲線である。
図8のDTA曲線に示すように、100℃付近に脱水に伴う吸熱ピークが観察された。
また、X線回折分析の結果、チタン酸塩の層間は0.95nm(2θ=9.3°)であった。
【0089】
〔比較例5〕
比較例4の吸着剤100gをアルミナ容器に入れ、大気雰囲気下、2時間掛けて昇温した後に500℃で2時間焼成し、比較例5の吸着剤を得た。得られた吸着剤について上記の方法にてX線回折測定した。その結果を
図7に示す。
図6に示すようにチタン酸塩の2θ=8〜10°に観察されるメーンピークが高角度側(2θ=10〜14°)に移動していることが確認された。
また、X線回折分析の結果、チタン酸塩の層間は0.77nm(2θ=11.5°)であった。
【0090】
実施例1、実施例2−1〜2−3、実施例3、比較例1〜5の吸着剤をそれぞれ、乳鉢にて粉砕し、目開き100μmの篩にかけて篩下を各実施例及び比較例の試料とした。このうち実施例1、実施例2−1〜2−3、実施例3、比較例1〜3の各試料について上記の方法でBET比表面積を測定した。その結果を下記表1に示す。またこれら実施例1、実施例2−1〜2−3、実施例3、比較例1〜5の各試料を以下の<バッチ吸着試験>に供した。
<BET比表面積>
【表1】
【0091】
<バッチ吸着試験>
以下の組成の模擬海水を用いた。
<模擬海水の組成>
NaCl:0.3%、Cs:100ppm、Sr:100ppm
【0092】
100mlのポリ容器にサンプルを0.1g取り、模擬海水60.0gを添加し、蓋をした後、10回転倒させた。その後、静置して1時間経過した後、再び振り混ぜて、約50mlを5Cのろ紙でろ過し、ろ過によって得られたろ液を採取した。また、残りの50mlはそのまま静置し、更に23時間後(最初に振り混ぜてから24時間後)に再び振り混ぜた。そして、5Cのろ紙でろ過し、ろ過によって得られたろ液を採取した。2回目に採取されたろ液(吸着時間が24時間のもの)を対象として、ICP−AESを用い、ろ液中のCs及びSrの含有量を測定して、吸着率を求めた。その結果を以下の
図9及び
図10に示す。
【0093】
図9及び
図10の記載から明らかな通り、非晶質又は低晶質のケイ素及びチタン含有化合物を含む実施例1、実施例2−1〜2−3及び実施例3の吸着剤では、比較例1〜3である結晶性シリコチタネート又はそれとチタン酸塩との混合物と同程度の高いストロンチウム吸着性能を有するとともに、低いセシウム吸着性能が実現できていることが判る。一方、比較例5のチタン酸塩の焼成品は、ストロンチウム及びセシウムの吸着性能の両方を失っていることが判る。
【0094】
実施例2−2及び比較例2の吸着剤を以下の<耐水性試験>に供した。
<耐水性試験>
200mlの容器に実施例2及び比較例2の吸着剤1g及び純水20gを入れた。28kHzの超音波を10秒照射した後、目視にて成形体の崩壊や純水の濁りを確認した。
図11の写真に示すように、実施例2−2の試料は、超音波照射後の濁りが比較例2の試料よりも薄いことを確認した。したがって、焼成により、耐水性が向上することが判る。
【0095】
実施例2−2及び比較例2の吸着剤を以下の<カラム吸着試験>に供した。
<カラムの吸着試験>
カラムとして内径φ12mmのものを用いた。このカラムに高さが4.5cm(容積5ml)となるように、吸着剤試料を充填した。カラムに、下記組成の模擬海水を通液した。通液流量は、16.7(ml/min)、LV=8.9(m/h)、SV=200(1/h)とした。定期的にサンプリングした試験液におけるセシウム濃度とストロンチウム濃度をICP-AESにて測定し、初期濃度Coに対する通液後濃度Cの比率(Co/C)を求めた。縦軸にC/C
0で表される数値を示し、横軸に前記の容量5mlに対する模擬海水の総通液容量(B.V.)を示した結果を
図12に示す。
模擬海水の組成:NaCl:0.13%、Mg:63ppm、Ca:20ppm、K:19ppm、Cs:120ppm、Sr:30ppm、pH5.5〜6
【0096】
図12に示す結果より、非晶質又は低晶質のケイ素及びチタン含有化合物を含む本発明の吸着剤は、カラムに充填した場合及びストロンチウム濃度が低い場合においても、焼成前の結晶性シリコチタネート及びチタン酸塩の混合物と同等の高いストロンチウム吸着性能と、低いセシウム吸着性能とを示すことが判る。