(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-136716(P2017-136716A)
(43)【公開日】2017年8月10日
(54)【発明の名称】中空ボード
(51)【国際特許分類】
B32B 3/26 20060101AFI20170714BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20170714BHJP
B60R 13/01 20060101ALI20170714BHJP
E04B 1/64 20060101ALN20170714BHJP
【FI】
B32B3/26 A
B32B5/18
B60R13/01
E04B1/64 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-17810(P2016-17810)
(22)【出願日】2016年2月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000199979
【氏名又は名称】川上産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 亮太
(72)【発明者】
【氏名】釼持 浩三
(72)【発明者】
【氏名】坂本 伸一
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DB03
2E001FA10
2E001GA03
2E001GA12
2E001GA16
2E001GA24
2E001GA42
2E001HA22
2E001HD01
2E001HD11
2E001JA06
4F100AA01B
4F100AA01C
4F100AA08B
4F100AA08C
4F100AK01B
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4F100YY00C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】木製板材と同程度の吸湿性を有している合成樹脂製の中空ボートを提供する。
【解決手段】中芯シート4に表層シート2、3を接合した内部に空間を有する合成樹脂製の中空ボード1であって、表層シート2の一部または全部が、無機粒子を5〜35重量%含有するとともにオープンセルの発泡構造となっており、好ましくは、表層シート2の最外層がオープンセルの発泡構造となっており、無機粒子が炭酸カルシウムである、中空ボート1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一層以上の中芯シートに少なくとも最外層が合成樹脂製の表層シートを接合した、内部に空間を有する中空ボードであって、
表層シートの一部または全部が、無機粒子を5〜35重量%含有するとともにオープンセルの発泡構造となっている中空ボード。
【請求項2】
前記表層シートが複数層の積層体であり、その最外層が無機粒子を5〜35重量%含有するとともにオープンセルの発泡構造となっている請求項1記載の中空ボード。
【請求項3】
前記無機粒子が炭酸カルシウムである請求項1または2記載の中空ボード。
【請求項4】
前記表層シートの発泡構造の外表面の表面積と正面投影面積との比の平均が2.4〜3.7の範囲内にある請求項1、2または3記載の中空ボード。
【請求項5】
前記表層シートの発泡構造の部位に親水化添加剤を添加している請求項1、2、3または4記載の中空ボード。
【請求項6】
前記親水化添加剤として界面活性剤を、前記表層シートの発泡構造の部位を構成する合成樹脂と無機粒子との混合物100重量部に対して0.35重量部以下添加している請求項5記載の中空ボード。
【請求項7】
前記表層シートの主原料がMFR6〜10のブロックポリプロピレンである請求項1、2、3、4、5または6記載の中空ボード。
【請求項8】
前記中芯シートが、内側が空洞である突起を複数成形したキャップシートである請求項1、2、3、4、5、6または7記載の中空ボード。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の中空ボードを用いた荷室内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中芯シートに表層シートを接合した内部に空間を有する中空ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、物流現場において、木製板材が忌避される傾向にある。その理由としては、木材の表面のささくれにより運搬物が傷つく、木材の破片や木粉が運搬物に付着または混入する、木材自体が腐敗しまたはカビや昆虫その他の微小生物の繁殖を招いて衛生環境を損なう、等が挙げられる。そして、これらの不具合を解消でき、かつ木材と比較して重量も軽いことから、木製板材から合成樹脂製中空ボート(例えば、下記先行技術文献を参照)への転換が進みつつある。
【0003】
尤も、車両の荷室、特に温度または湿度の調節機能が不十分な荷室の内装壁材としては、未だに木製板材が重用されている。既存の合成樹脂製中空ボードは、木製板材のような吸湿性を有しておらず、荷室内装材として用いた場合、多湿状態で表面に結露を生じてこれが運搬物に滴下するといった問題を招く懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−128845号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】川上産業株式会社、“プラパール|プチプチ発のかるいボード 川上産業のプラパール”、[online]、平成27年、川上産業株式会社、[平成27年12月1日検索]、インターネット<URL:http://www.putiputi.co.jp/shohin/PPL/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、木製板材と同程度以上の吸湿性を有した中空ボートを提供することを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、少なくとも一層以上の中芯シートに少なくとも最外層が合成樹脂製の表層シートを接合した、内部に空間を有する合成樹脂製の中空ボードであって、表層シートの一部または全部が、無機粒子を5〜35重量%含有するとともにオープンセルの発泡構造となっている中空ボードを構成した。
【0008】
前記表層シートが複数層の積層体である場合には、少なくともその最外層が無機粒子を5〜35重量%含有するとともにオープンセルの発泡構造となっていることが望ましい。
【0009】
前記無機粒子の具体例としては、炭酸カルシウムを挙げることができる。
【0010】
前記表層シートの発泡構造の外表面の表面積と正面投影面積との比の平均は、2.4〜3.7の範囲内にあることが好ましい。
【0011】
さらに、前記表層シートの発泡構造の部位に、親水化添加剤を添加することもできる。
【0012】
前記親水化添加剤として界面活性剤を添加する場合、前記表層シートの発泡構造の部位を構成する合成樹脂と無機粒子との混合物100重量部に対して、界面活性剤を0.35重量部以下とすることが好ましい。
【0013】
前記表層シートの主原料の具体例としては、MFR(Melf Flow Rate)が6〜10のブロックポリプロピレンを挙げることができる。
【0014】
前記中芯シートは、例えば、内側が空洞である突起を複数成形したキャップシートである。
【0015】
本発明に係る中空ボードは、荷室内装材に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、木製板材と同程度以上の吸湿性を有した中空ボートを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態の合成樹脂製中空ボードを一部破断して示す斜視図。
【
図3】同実施形態の中空ボードの表層シートを模式的に示す側断面図。
【
図4】同実施形態の中空ボードの表層シートの発泡構造層の実物を示す写真。
【
図5】同実施形態の中空ボードの表層シートの実施例及びこれと対比される比較例を示す表。
【
図6】同実施形態の中空ボードの表層シートの実施例及びこれと対比される比較例を示すグラフ。
【
図7】同実施形態の中空ボードの表層シートの実施例及びこれと対比される比較例を示すグラフ。
【
図8】同実施形態の中空ボードを車両の荷室の内装壁材として使用する状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の中空ボード1は、対をなす表層シート2、3間に中芯シート4を介在させたいわゆる気泡ボードである。具体的には、中芯シート4が、一面側に開放した多数の突起41を有するキャップシートであり、一方の表層シート2が、中芯シート4における突起41が開放している側の面に接合するバックシートである。並びに、他方の表層シート3が、中芯シート4における突起41の閉じた先端面に接合するライナーシート3である。
【0019】
キャップシート4は、平面視略円筒状をなし内側が空洞である突起41を複数成形した立体的な構造のシートである。各突起41は千鳥配列されており、それら突起41間の隙間が中空ボード1における中空な内部空間となる。キャップシート4は合成樹脂製であり、その素材は例えばポリエチレンとポリプロピレンとを所定の割合で配合したブロックポリプロピレンである。無論、キャップシート4の構成材料はブロックポリプロピレンには限定されず、100%ポリプロピレンであってもよい。
【0020】
バックシート2は、中空ボード1の一方側の面を形作る平坦な薄板体である。キャップシート4の一方側の面に接合したバックシート2は、突起41の開放した空洞を閉塞して、突起41とともに中空ボード1内の中空な気泡を形成する。バックシート2は合成樹脂製であり、その主な素材は例えばブロックポリプロピレンである。無論、バックシート2の構成材料はブロックポリプロピレンには限定されず、100%ポリプロピレン(但し、後述するように、無機粒子や親水化添加剤を添加することがある)であってもよい。
【0021】
ライナーシート3は、中空ボード1の他方側の面を形作る平坦な薄板体である。ライナーシート3もまた合成樹脂製であり、その主な素材は例えばブロックポリプロピレンである。無論、ライナーシート3の構成材料はブロックポリプロピレンには限定されず、100%ポリプロピレン(無機粒子や親水化添加剤を添加することがある)であってもよい。
【0022】
中空ボード1の外表面の全体、即ち表層シート2、3の表面の全体に均等な厚みの発泡構造5を形成するためには、MFRが6〜10であるブロックポリプロピレンを素材として用いることが好ましい。より好ましくは、MFRが7.7のブロックポリプロピレンを採用する。
【0023】
本実施形態では、中空ボード1の表層シート2、3を作製するに際し、その素材となる樹脂に発泡剤を添加して、当該表層シート2、3にオープンセルの発泡構造体の層5を形成している。オープンセルの発泡構造とは、スポンジのように泡構造の茎の部分(Cell edge)だけが残った通気性のある構造であるが、泡構造の膜面(Cell face)を一部残しつつもその膜面が破れており通気性を有している構造であれば、ここに言うオープンセルの発泡構造に該当する。さらに、表層シート2、3の素材となる樹脂に、吸水性の無機粒子、及び親水性分子である親水化添加剤を混交することにより、水分を吸収するオープンセルの発泡構造にその効果を高める無機粒子及び親水性添加剤を含ませている。
【0024】
詳述すると、本実施形態における表層シート2、3は、
図3に示すように、合成樹脂材による複数の層5、6を積層したものである。そして、少なくともその最外層5、即ち中空ボード1の外表面として表出する層(換言すれば、中芯シート4から最も遠く離れた層)を、上に述べた無機粒子及び親水化添加剤を含有するオープンセルの発泡構造層としている。
図4に、発泡構造層5の実物を示している。
【0025】
表層シート2、3の吸湿性を担保する発泡構造層5は、吸水性の無機粒子を5〜35重量%含有することが好ましい。用いる無機粒子としては、炭酸カルシウムが好適である。無機粒子の他の選択肢としては、シリカ、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、ワラストナイト等を挙げることができる。
【0026】
また、発泡構造層5には、当該発泡構造層5の構成材料である合成樹脂及び無機粒子の混交物100重量部に対して、親水性添加剤を0.35重量部以下添加することが好ましい。親水性添加剤の例は、フッ素系のもの等種々考えられるが、界面活性剤が好適である。親水性添加剤としては、モノグリセライド、ジグリモノエステル、脂肪族アミン、脂肪族アマイド等といった一般的な界面活性剤を採用することが可能である。
【0027】
一方で、表層シート2、3の最外層と中芯シート4との間には、泡構造即ち小孔を有さない中実な層6を設ける。そのために、当該中実層6の素材となる樹脂には、発泡剤を添加しない。このような中実層6を最外層5の内側に配するのは、発泡構造層5が吸収した水分が中空ボード1の内部まで浸透することを中実層6によって阻止する意図である。表層シート2、3の中実層6は、吸水性の無機粒子や親水化添加剤を含有していなくともよい。
【0028】
図5、
図6及び
図7に、オープンセルの発泡構造を備えた合成樹脂製表層シート2、3の実施例、及びこれと対比される合成樹脂製シートの比較例を示している。各実施例の表層シート2、3の発泡構造層5の組成は、以下の通りである。
・実施例1:ブロックポリプロピレンと炭酸カルシウムとの重量比が90:10、化学発泡剤をブロックポリプロピレン及び炭酸カルシウムの混交物100重量部に対して2.0重量部添加、界面活性剤は添加せず
・実施例2:ブロックポリプロピレンと炭酸カルシウムとの重量比が80:20、化学発泡剤をブロックポリプロピレン及び炭酸カルシウムの混交物100重量部に対して2.0重量部添加、界面活性剤は添加せず
・実施例3:ブロックポリプロピレンと炭酸カルシウムとの重量比が70:30、化学発泡剤をブロックポリプロピレン及び炭酸カルシウムの混交物100重量部に対して2.0重量部添加、界面活性剤は添加せず
・実施例4:ブロックポリプロピレンと炭酸カルシウムとの重量比が70:30、化学発泡剤をブロックポリプロピレン及び炭酸カルシウムの混交物100重量部に対して2.0重量部添加、さらに界面活性剤をブロックポリプロピレン及び炭酸カルシウムの混交物100重量部に対して0.1重量部添加
・実施例5:ブロックポリプロピレンと炭酸カルシウムとの重量比が70:30、化学発泡剤をブロックポリプロピレン及び炭酸カルシウムの混交物100重量部に対して2.0重量部添加、さらに界面活性剤をブロックポリプロピレン及び炭酸カルシウムの混交物100重量部に対して0.2重量部添加
・実施例6:ブロックポリプロピレンと炭酸カルシウムとの重量比が70:30、化学発泡剤をブロックポリプロピレン及び炭酸カルシウムの混交物100重量部に対して2.0重量部添加、さらに界面活性剤をブロックポリプロピレン及び炭酸カルシウムの混交物100重量部に対して0.3重量部添加
また、各比較例のシートの組成は、以下の通りである。
・比較例1:炭酸カルシウムを混交していないブロックポリプロピレン、化学発泡剤及び界面活性剤を添加せず
・比較例2:炭酸カルシウムを混交していないブロックポリプロピレン、化学発泡剤をブロックポリプロピレン100重量部に対して1.0重量部添加、界面活性剤は添加せず
・比較例3:炭酸カルシウムを混交していないブロックポリプロピレン、化学発泡剤をブロックポリプロピレン100重量部に対して1.5重量部添加、界面活性剤は添加せず
・比較例4:炭酸カルシウムを混交していないブロックポリプロピレン、化学発泡剤をブロックポリプロピレン100重量部に対して2.0重量部添加、界面活性剤は添加せず
なお、上掲の実施例、比較例ともに、オープンセルの発泡構造層5はシート2、3の片面にのみ存在しており、反対側の面は発泡していない中実な層6となっている。
【0029】
化学発泡剤は、材料の押出機からの押出工程で気泡を形成するためにガス化して製品の外部に抜ける。故に、シート2、3の成形後において、その重量は無視できる。
【0030】
図5、
図6及び
図7に示している表面積増加率は、対象となる合成樹脂シートの発泡構造について、その外表面側の表面積と正面投影面積との比(表面積/正面投影面積)の平均を求めたものである。発泡させていない比較例1のシートにおける表面積増加率は、当然ながら1である。表面積増加率の計測には株式会社キーエンス製の三次元形状測定機VR−3200を使用し、撮影倍率は120倍、微小領域を無視しない設定で、1mm×1mmの大きさの領域の表面積及び正面投影面積の測定を、発泡構造をなすシートの外表面上の50箇所の点で行い、それらの測定値を平均した。発泡剤を添加して最外層を発泡させる加工上、シートの外表面上の各箇所における表面積のばらつきが大きくなるため、多数の箇所で測定を行い、それらを総合して評価する必要があるからである。
【0031】
付言すれば、本発明に係る表層シート2、3といえども、その外表面上の特定の箇所に限って見れば、発泡構造の表面積と正面投影面積との比の平均が2.4〜3.7の範囲から逸脱していることがあり得る。あくまでも、外表面上の多数の箇所(例えば、50箇所)で測定した表面積と正面投影面積との比の測定値の平均、または外表面の広範な領域に亘って測定した表面積と正面投影面積との比が、2.4〜3.7の範囲内にあるということである。
【0032】
また、
図5、
図6及び
図7に示している吸水率は、本発明の発明者独自の方法を以て計測したものである。具体的には、実施例及び比較例の各シートを50mm×150mmの大きさに切り出し、その重量を測定するとともに、当該シートの発泡構造層5を形成した面(比較例1にあっては、片面)に対して1.5gの水分を満遍なく供給して一分間保持した後、再度各シートの重量を測定した。そして、水分供給後のシートの重量から水分供給前のシートの重量を減算して得られる(当該シートに吸収された)水分量を、供給水分重量である1.5gで除算することにより、吸水率を算出した。因みに、ある既製の木製合板の吸水率を同様の手法を以て計測した結果の値は、69%であった。
【0033】
比較例から明らかなように、合成樹脂に発泡剤を添加して樹脂シート2、3に発泡構造層5を形成することにより、一応の吸湿性能の向上が見られる。しかしながら、樹脂に添加する発泡剤の量を増量するだけでは、発泡構造層5の表面積が増大するだけで、吸湿性能の一層の良化は期待できない。
【0034】
これに対し、実施例から明らかなように、発泡構造層5を構成する樹脂に無機物の微粉末を添加すると、木材に匹敵する吸湿性能を発揮できるようになる。基本的に、表層シート2、3の吸湿性能は、含有する無機粒子の量が増すほど高まると考えられるが、あまり多くの量の無機粒子を樹脂に混交すると、表層シート2、3の製造時に材料の樹脂を押し出す押出機の内壁やスクリューの摩耗を早めることになる。故に、樹脂に対する無機粒子の添加量は、35重量%以下に抑えることが好ましく、特に30重量%またはその近傍に設定することが好適である。
【0035】
さらに、実施例4、5及び6のように、表層シート2、3の発泡構造層5を構成する樹脂に親水化剤を添加すれば、当該発泡構造層5の親水性が増進されるため、木材を超越する吸湿性能を得ることも可能となる。表層シート2、3の吸湿性能は、含有する親水化添加剤の量が増すほど高まると考えられるが、あまり多くの量の親水化添加剤を樹脂に混交すると、表層シート2、3の製造時に材料の樹脂を押し出す押出機からの樹脂の押出量が損なわれる。故に、表層シート2、3の吸湿性能と製造時の安定性との両立を図るべく、樹脂及び無機粒子の混交物に対する親水化添加剤の添加量は、0.35重量部以下に抑えることが好ましく、特に0.3重量部またはその近傍に設定することが好適である。
【0036】
図5、
図6及び
図7に示しているように、既製の木製合板に匹敵し、またはこれを上回る吸湿性能を備えた発泡構造層5の外表面の表面積と正面投影面積との比の平均は、2.4〜3.7の範囲内にある。
【0037】
木製板材と同程度以上の吸湿性を有した本実施形態の合成樹脂製中空ボード1は、例えば
図8に示すように、車両等の荷室の内装壁材として使用することができる。
【0038】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、表層シート2、3の発泡構造層5に含有させる吸水性の無機粒子は、炭酸カルシウムには限定されない。並びに、表層シート2、3の発泡構造層5に含有させる親水化添加剤は、界面活性剤には限定されない。また、実施例1、2及び3から明らかなように、表層シート2、3の発泡構造層5に親水化添加剤を含有させることは必須ではない。
【0039】
中芯シート4の両面に表層シートとしてバックシート2及びライナーシート3を具備している三層中空ボード1にあっては、バックシート2及びライナーシート3の両方に発泡構造層5を設けてもよいし、それらのうちの何れか一方にのみ発泡構造層5を設けてもよい。発泡構造層5は、バックシート2及び/またはライナーシート3の全域に設けてもよいし、そのうちの一部の領域に限定して設けてもよい。一部吸湿機能が不要な領域が存在する場合、その上から他の素材を被せて当該領域の発泡構造層5を覆ってもよいし、後加工で不要な発泡構造層5を除去してもよい。
【0040】
さらには、バックシート2とライナーシート3とのうち一方を省略した二層中空ボード1を構成し、残った他方に発泡構造層を設けてもよい。バックシート2とライナーシート3とのうち一方を省略する場合、露出する中芯シート4の最外層を発泡させて発泡構造層とし、その発泡構造層に無機粒子及び/または親水化添加剤を添加することもできる。
【0041】
発泡構造層5を有したバックシート2及び/またはライナーシート3は、その外表面が平坦でないことがある。
【0042】
また、中芯シート4は、二層以上存在していることがある。
【0043】
中空ボード1における発泡構造層5以外の部位、例えば中実層6や中芯4は、合成樹脂以外の吸湿性のない材料から構成されることがある。
【0044】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…中空ボード
2、3…表層シート
4…中芯シート
5…オープンセルの発泡構造の層