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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-136996(P2017-136996A)
(43)【公開日】2017年8月10日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20170714BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20170714BHJP
【FI】
   B60K35/00 A
   G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-20033(P2016-20033)
(22)【出願日】2016年2月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】建川 勉
(72)【発明者】
【氏名】山野 竹秀
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA02
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA17
2H199DA33
3D344AA08
3D344AA30
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンバイナの立ち上げ時間を短縮することができると共に、後方下部の設計自由度を高めて他の機器との干渉を防止することができる「ヘッドアップディスプレイ装置」を提供する。
【解決手段】本発明のHUD装置1は、コンバイナ5の移動経路上に設けられた第1開口部が第1カバー7によって開閉動作されると共に、発光ユニット6の投光部(第2ミラー16)からコンバイナ5に照射される光路上に設けられた第2開口部3が第2カバー8によって開閉動作されるようになっており、コンバイナ5が収納位置から突出位置に向かって突出動作しているときに、第2カバー8が第1カバー7と同様に前方へ回動しながらコンバイナ5と投光部との間に没入されるようにした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に第1および第2開口部が前側から後側に向かって連続して設けられたケーシングと、前記ケーシングの内部の収納位置と前記第1開口部から上方へ突出する突出位置との間を移動可能なコンバイナと、前記ケーシングの内部の投光部から前記第2開口部を通して突出位置にある前記コンバイナに表示光を照射する発光ユニットと、前記第1開口部を開閉可能な第1カバーと、前記第2開口部を開閉可能な第2カバーと、前記コンバイナと前記第1カバーおよび前記第2カバーを動作させる駆動手段とを備え、
前記第1カバーは前記第1開口部を閉鎖する閉鎖位置から前方へ移動して前記ケーシングの内部に没入可能であると共に、前記第2カバーは前記第2開口部を閉鎖する閉鎖位置から前方へ移動して前記コンバイナと前記投光部との間に没入可能であり、
前記駆動手段は、前記コンバイナが収納位置から突出位置に向かって突出動作しているときに、前記第2カバーの没入動作を行うことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記駆動手段はモータと伝達機構を含んでおり、前記モータが前記コンバイナの収納位置の前側に配置されると共に、前記第2カバーが前記コンバイナの収納位置の後側に揺動可能に配置されており、前記伝達機構は前記コンバイナの側方に配置されて前記コンバイナの収納位置の前側から後側に向かって延在しており、この伝達機構によって前記モータの動力が前記第2カバーに伝達されることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1の記載において、前記コンバイナが突出位置に移動したとき、前記コンバイナが収納位置で専有していた空間に前記第2カバーの少なくとも一部が入り込んでいることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイナを用いて運転者に車両情報やナビゲーション情報等を表示するヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバイナと発光ユニットをダッシュボードの内部に収納し、使用時にコンバイナをダッシュボードの上面から突出させた状態で、このコンバイナに対して発光ユニットから表示光を照射することにより、フロントガラスよりも運転者側に配置されたコンバイナに虚像を表示するようにしたヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置と称する)が知られている。
【0003】
このようなHUD装置の一例として、特許文献1に開示されているように、コンバイナと発光ユニットを収納するケーシングの上面にコンバイナの出し入れを可能とする開口部を設け、非使用時には、この開口部を2枚のカバーによって閉鎖しておき、使用時には、2枚のカバーを前方(フロントガラス側)と後方(運転手側)へ逆向きに回動してケーシングの内部に収納すると共に、それに伴って開放する開口部からコンバイナをケーシングの上方へ突出させ、この状態で発光ユニットの表示光を開口部を通してコンバイナに照射するように構成したものが提案されている。
【0004】
また、かかるHUD装置の他の例として、特許文献2に開示されているように、ケーシングの上面に設けられた開口部を2枚のカバーによって開閉可能となし、使用時には、2枚のカバーを互いの重なり幅が増えるように前方へ回動してケーシングの内部に収納させた後、両カバーの回動によって開放した開口部からコンバイナをケーシングの上方へ突出させ、この状態で発光ユニットの表示光を開口部を通してコンバイナに照射するように構成したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−254707号公報
【特許文献2】特開2014−201104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された前者のHUD装置では、2枚のカバーを前方と後方へ逆向きに回動することで開口部が開放されるようになっているため、2枚のカバーをケーシングの内部に収納して開口部を開放させる動作と、コンバイナをケーシングの内部から開口部の上方へ突出させる動作とを同時に行うことができ、使用時にコンバイナをケーシングの内部から上方へ短時間で突出させることが可能となる。しかし、開口部の開放時に一方のカバーを後方(運転手側)へ回動してケーシングの内部空間に収納する必要があるため、ケーシング内の後方下部の設計自由度が大きく制限されてしまい、運転席の前方に設置されるスピードメータ等の計器類の設置スペースと干渉してしまうという問題があった。
【0007】
これに対して特許文献2に開示され後前者のHUD装置では、2枚のカバーを前方へ回動させながら一方を他方の下側に潜り込ませることで開口部が開放されるようになっているため、装置全体が前後方向に大型化してしまうことはなくなる。しかし、前方へ回動する2枚のカバーがコンバイナの移動経路を通過してからでないと、コンバイナをケーシングの内部から上方へ突出させることができないため、使用時にコンバイナをケーシングの内部から上方へ突出させるまでの立ち上げ時間が長くなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、コンバイナの立ち上げ時間を短縮することができると共に、後方下部の設計自由度を高めて他の機器との干渉を防止することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のヘッドアップディスプレイ装置は、上面に第1および第2開口部が前側から後側に向かって連続して設けられたケーシングと、前記ケーシングの内部の収納位置と前記第1開口部から上方へ突出する突出位置との間を移動可能なコンバイナと、前記ケーシングの内部の投光部から前記第2開口部を通して突出位置にある前記コンバイナに表示光を照射する発光ユニットと、前記第1開口部を開閉可能な第1カバーと、前記第2開口部を開閉可能な第2カバーと、前記コンバイナと前記第1カバーおよび前記第2カバーを動作させる駆動手段とを備え、前記第1カバーは前記第1開口部を閉鎖する閉鎖位置から前方へ移動して前記ケーシングの内部に没入可能であると共に、前記第2カバーは前記第2開口部を閉鎖する閉鎖位置から前方へ移動して前記コンバイナと前記投光部との間に没入可能であり、前記駆動手段は、前記コンバイナが収納位置から突出位置に向かって突出動作しているときに、前記第2カバーの没入動作を行うことを特徴としている。
【0010】
このように構成されたヘッドアップディスプレイ装置では、コンバイナの移動経路上に設けられた第1開口部が第1カバーによって開閉動作されると共に、発光ユニットの投光部からコンバイナに照射される光路上に設けられた第2開口部が第2カバーによって開閉動作されるが、コンバイナが収納位置から突出位置に向かって突出動作しているときに、第2カバーが第1カバーと同方向へ移動しながらコンバイナと投光部との間に没入するようになっているため、コンバイナと第2カバーを互いに干渉することなく同時動作させることができる。したがって、コンバイナの立ち上げ時間を短縮することができると共に、第1および第2カバーが両方共に前方へ移動してケーシング内に収納されるようになっているため、後方下部の設計自由度を高めて他の機器との干渉を防止することができる。
【0011】
上記の構成において、駆動手段はモータと伝達機構を含んでおり、このモータがコンバイナの収納位置の前側に配置されると共に、第2カバーがコンバイナの収納位置の後側に揺動可能に配置されており、伝達機構はコンバイナの側方に配置されてコンバイナの収納位置の前側から後側に向かって延在しており、この伝達機構によってモータの動力が第2カバーに伝達されることが好ましい。
【0012】
また、上記の構成において、コンバイナが突出位置に移動したとき、コンバイナが収納位置で専有していた空間に第2カバーの少なくとも一部が入り込むようになっていると、第2カバーをコンバイナの収納位置に近づけた状態でケーシングの内部に収納することができるため、ケーシング内の後方下部におけるスペースの省略化を図ることができて好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のヘッドアップディスプレイ装置によれば、コンバイナの立ち上げ時間を短縮することができると共に、後方下部の設計自由度を高めて他の機器との干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態例に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す非使用時の斜視図である。
図2】該ヘッドアップディスプレイ装置の非使用時の断面図である。
図3】該ヘッドアップディスプレイ装置の使用時の斜視図である。
図4】該ヘッドアップディスプレイ装置の使用時の断面図である。
図5図1のヘッドアップディスプレイ装置からケーシングを取り除いて示す斜視図である。
図6】該ヘッドアップディスプレイ装置に備えられるコンバイナと第2カバーの開閉機構の要部を示す斜視図である。
図7】該ヘッドアップディスプレイ装置に備えられる駆動機構の要部説明図である。
図8】該コンバイナの収納状態を示す説明図である。
図9】該コンバイナの立ち上げ開始状態を示す説明図である。
図10】該コンバイナの立ち上げ途中状態を示す説明図である。
図11】該コンバイナの立ち上げ完了状態を示す説明図である。
図12】該コンバイナのチルト動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、本実施形態例に係るヘッドアップディスプレイ装置1(以下、HUD装置1と称す)は、車室内の運転席よりも前方のダッシュボードに配置され、車両情報やナビゲーション情報等を表示する表示装置である。なお、以下の説明では、図1の矢印で示すY1−Y2方向を前後方向、X1−X2方向を左右方向、Z1−Z2方向を上下方向とする。
【0016】
このHUD装置1は、上面に第1および第2開口部2,3を有する上部ケース4と、上部ケース4の内部に収納されて第1開口部2から上方へ突出可能なコンバイナ5と、上部ケース4の内部に配置されて第2開口部3を通して外部に表示光を照射可能な発光ユニット6と、第1開口部2を開閉可能な第1カバー7と、第2開口部3を開閉可能な第2カバー8と、これらコンバイナ5と第1カバー7および第2カバー8を動作させる駆動機構9等を備えており、非使用時にコンバイナ5を上部ケース4の内部に収納しておき、このコンバイナ5を使用時に上部ケース4の内部から上方へ突出させるというポップアップタイプのものである。
【0017】
上部ケース4は下部ケース10と組み合わされて中空構造のケーシング11を構成しており、図5に示すように、このケーシング11の内部には筐体状のシャーシ12が配設されている。ケーシング11は上部ケース4の上面を露出させた状態でダッシュボードの凹所内に配置されるようになっており、その場合、運転席から見て第2開口部3が手前側で第1開口部2が前方側(フロントガラス側)を向くように配置される。
【0018】
第1開口部2はコンバイナ5の移動経路上に設けられており、第2開口部3は発光ユニット6の後述する投光部から突出状態のコンバイナ5に向けて照射される光路上に設けられている。これら第1開口部2と第2開口部3は前側から後側に向かって連続形成され、互いの一辺を共通する長方形状の切欠きであるが、第1開口部2が前後方向に比べて左右方向の長さが遥かに長い横長形状であるのに対し、第2開口部3の左右方向の長さは第1開口部2に比べて幾分短めに設定されている。
【0019】
コンバイナ5はハーフミラー等からなる表示パネルユニットであり、矩形状の透明板を前方側へ緩やかに湾曲させた形状となっている。図6に示すように、コンバイナ5の下辺部には支持体13が固定されており、この支持体13の左右両端部には脚片13aが突設されている。これら脚片13aには軸部13bと長孔13cおよび突起13dが設けられており、軸部13bには作動板14が回転可能に連結されている。この作動板14の外表面には一対のガイドピン14aが設けられており、作動板14の内表面には連結ピン14bが設けられている。この連結ピン14bは脚片13aの長孔13cに挿入されており、支持体13と作動板14の相対角度は連結ピン14bが長孔13cを移動できる範囲内に規定されている。
【0020】
図2に示すように、発光ユニット6はシャーシ12の後方下部に配設されており、発光ユニット6から出射された表示光は、第2開口部3の前方下部に配置された第1ミラー15で反射した後、第2開口部3の後方下部に配置された第2ミラー16へ向かうようになっている。この第2ミラー16は発光ユニット6の投光部に相当する部位であり、詳細については後述するが、図4に示すように、コンバイナ5が突出位置にあるとき、第2ミラー16(投光部)で反射した発光ユニット6の表示光は第2開口部3を通ってコンバイナ5に照射される。
【0021】
図7に示すように、第1カバー7は第1開口部2とほぼ同形状の蓋部7aを有しており、この蓋部7aの左右両端部から突出する脚片7bの先端部にはガイドピン7cが設けられている。第1カバー7は脚片7bの軸部7dを中心としてシャーシ12に回転可能に支持されており、ガイドピン7cは後述する駆動板のカム孔に挿入されるようになっている。
【0022】
図6に示すように、第2カバー8は第2開口部3とほぼ同形状の蓋部8aを有しており、この蓋部8aの四隅から突出する脚片8bには4つのガイドピン8cが設けられている。第2カバー8の前側の脚片8bにはリンクアーム17が回転可能に連結されており、このリンクアーム17はシャーシ12の側部に軸支された中継ギア18に固定されている。中継ギア18には別の中継ギア19が噛合されており、この中継ギア19に固定されたリンクアーム20は作動板14に回転可能に連結されている。さらに、中継ギア19には扇形ギア21が噛合されており、この扇形ギア21にはガイドピン21aが設けられている。
【0023】
図7に示すように、シャーシ12の左右両側部には第1ガイド部材22と第2ガイド部材23が取り付けられている。第1ガイド部材22には斜め方向へ延びるガイド孔22aが形成されており、このガイド孔22aに作動板14のガイドピン14aが移動可能に挿入されている。第2ガイド部材23には一対のガイド孔23a,23bが形成されており、一方のガイド孔23aに第2カバー8の前側のガイドピン8cが移動可能に挿入されると共に、他方のガイド孔23bに第2カバー8の後側のガイドピン8cが移動可能に挿入されている。
【0024】
また、シャーシ12の左右両側部には駆動板24が前後方向へ移動可能に支持されており、この駆動板24はコンバイナ5の側方に配置されてコンバイナ5の収納位置の前側から後側に向かって延在している。駆動板24には2つのカム孔24a,24bが形成されており、上段側のカム孔24aには第1カバー7の先端側のガイドピン7cが移動可能に挿入され、下段側のカム孔24bには扇形ギア21のガイドピン21aが移動可能に挿入されている。
【0025】
したがって、駆動板24が前後方向へ移動すると、ガイドピン7cが上段側のカム孔24a内を摺動することにより、第1カバー7が軸部7dを回転中心として回動し、それに伴って第1開口部2の開閉動作を行うことができる。また、このように駆動板24が前後方向へ移動すると、扇形ギア21のガイドピン21aが下段側のカム孔24bに沿って移動するため、扇形ギア21の回転に伴って2つの中継ギア18,19が逆向きに回転する。その結果、一方の中継ギア18の回転がリンクアーム17を介して第2カバー8に伝達され、第2カバー8の各ガイドピン8cが第2ガイド部材23のガイド孔23a,23bに沿って移動するため、第2カバー8が回動して第2開口部3の開閉動作を行うことができる。これと同時に他方の中継ギア19の回転がリンクアーム20を介して作動板14に伝達され、作動板14のガイドピン14aが第1ガイド部材22のガイド孔22aに沿って移動するため、作動板14に連結されたコンバイナ5をケーシング11の内部と第1開口部2の外部との間で移動させることができる。
【0026】
駆動板24の上面にはラック24cが形成されており、このラック24cにはギア25が噛合されている。図5に示すように、ギア25はシャーシ12の左右方向へ延びる同期シャフト26の両端に固着されており、シャーシ12の前方下部に配設されたモータ27を駆動源として同期シャフト26が回転すると、左右一対の駆動板24が前後方向へ移動するようになっている。また、駆動板24の上部には押圧突起24dが形成されており、詳細については後述するが、コンバイナ5の立ち上げ動作が完了した後に駆動板24をさらに移動させると、押圧突起24dが突起13dに当接して支持体13を回転させることにより、コンバイナ5のチルト動作を行うことができるようになっている。なお、これらモータ27やギア25、駆動板24、扇形ギア21、中継ギア18,19、リンクアーム17,20、作動板14等によって、コンバイナ5と第1カバー7および第2カバー8を動作させる駆動機構9(駆動手段)が構成されている。また、駆動板24、扇形ギア21、中継ギア18、リンクアーム17等によって、モータ27の動力を第2カバー8に伝達する伝達機構が構成されている。
【0027】
次に、このように構成されたHUD装置1におけるコンバイナ5の立ち上げ動作を、図8図12を参照しつつ説明する。
【0028】
図1,2はHUD装置1の非使用状態を示しており、この非使用状態において、上部ケース4の上面に設けられた第1開口部2と第2開口部3はそれぞれ第1カバー7と第2カバー8によって閉鎖されており、コンバイナ5はケーシング11の内部の収納位置に保持されている。この場合、図8に示すように、駆動板24は図中左端の前進位置で停止しており、第1カバー7のガイドピン7cは上段側カム孔24aの図中右端部と係合し、扇形ギア21のガイドピン21aは下段側カム孔24bの図中右端部と係合している。また、作動板14のガイドピン14aは第1ガイド部材22のガイド孔22aの下端部と係合しており、コンバイナ5は最も下端側の収納位置で停止している。
【0029】
この状態でモータ27を正逆いずれか一方向へ回転駆動すると、モータ27の回転が同期シャフト26を介してギア25に伝達されるため、駆動板24が前進位置から後退位置に向かって図中右方向(矢印A方向)へ移動し始める。これにより、図9に示すように、第1カバー7のガイドピン7cが上段側カム孔24aの傾斜部へ移行するため、第1カバー7が軸部7dを中心に前方へ回動して上部ケース4の内部に収納され、それに伴って第1開口部2が開放される。
【0030】
また、このように駆動板24が後退位置に向かって移動し始めると、扇形ギア21のガイドピン21aが下段側カム孔24bの傾斜部へ移行するため、扇形ギア21が図中の反時計回りに回転して一対の中継ギア18,19を逆向きに回転させる。これにより、中継ギア19に固定されたリンクアーム20の動きが作動板14に伝達され、作動板14のガイドピン14aが第1ガイド部材22のガイド孔22aの下端部から上方へ移行するため、作動板14に連結されたコンバイナ5が収納位置から第1開口部2に向かって上昇し始める。それと同時に中継ギア18に固定されたリンクアーム17の動きが第2カバー8に伝達され、第2カバー8の各ガイドピン8cが第2ガイド部材23のガイド孔23a,23bの図中右端部から左方向へ移行するため、第2カバー8が前方へ回動しながら上部ケース4の内部へと向かい、それに伴って第2開口部3の後端側が次第に開放されていく。
【0031】
駆動板24がさらに後退位置に向かって移動し続けると、図10に示すように、コンバイナ5が第1開口部2から上部ケース4の上方へ突出し始めると共に、第2カバー8が上部ケース4の内部に入り込んでいく。そして、駆動板24が後退位置まで移動した時点でモータ27を停止すると、図11に示すように、コンバイナ5がその全体を第1開口部2から突出した突出位置に保持されると共に、第2カバー8が第2開口部3を全開状態とするように上部ケース4の内部に収納され、この時点でコンバイナ5の立ち上げ動作が完了する。
【0032】
図3,4はコンバイナ5の立ち上げ動作が完了したHUD装置1の使用状態を示しており、この使用状態において、発光ユニット6から表示光が出射されると、この表示光は第1ミラー15と第2ミラー16で反射した後に第2開口部3を通ってコンバイナ5に照射される。その際、図4から明らかなように、第1カバー7はコンバイナ5の移動経路の前方位置で停止しており、第2カバー8はその前端部をコンバイナ5が収納位置で専有していた空間Sに入り込ませた状態で停止している。
【0033】
なお、このHUD装置1には、突出位置に保持されたコンバイナ5の向きを調整可能なチルト機能が備えられている。すなわち、コンバイナ5の立ち上げ動作が完了した後に、駆動板24を図11に示す後退位置から図中右方へさらに移動すると、図12に示すように、駆動板24の押圧突起24dが支持体13の突起13dを押圧するため、軸部13bを介して回転可能に連結された支持体13と作動板14の相対角度が変化する。これにより、支持体13に一体化されたコンバイナ5が軸部13bを中心に回転し、コンバイナ5の向きをユーザの所望する角度に調整することができる。
【0034】
また、立ち上げ動作したコンバイナ5をケーシング11の内部の収納位置に没入動作する際は、モータ27を上記と逆方向へ回転することにより、駆動板24を図11に示す後退位置から図8に示す前進位置まで移動させれば良い。
【0035】
以上説明したように、本実施形態例に係るHUD装置1では、コンバイナ5の移動経路上に設けられた第1開口部2が第1カバー7によって開閉動作されると共に、発光ユニット6の投光部である第2ミラー16からコンバイナ5に照射される光路上に設けられた第2開口部3が第2カバー8によって開閉動作されるが、コンバイナ5が収納位置から突出位置に向かって突出動作しているときに、第2カバー8が第1カバー7と同様に前方へ回動しながらコンバイナ5と投光部(第2ミラー16)との間に没入するようになっているため、コンバイナ5と第2カバー8を干渉することなく同時に動作させることが可能となり、コンバイナ5の立ち上げ時間を短縮することができる。しかも、第1カバー7と第2カバー8が両方共に前方へ回動してケーシング11の内部に収納されるため、ケーシング11の後方下部に第2カバー8の収納スペースを確保する必要がなくなり、装置全体を前後方向に小型化してスピードメータ等の計器類との干渉を防止することができる。
【0036】
また、本実施形態例では、コンバイナ5が突出位置に移動したとき、コンバイナ5が収納位置で専有していた空間Sに第2カバー8の一部が入り込むようになっているため、第2カバー8をコンバイナ5の収納位置に近づけた状態でケーシング11の内部に収納することができ、その分だけケーシング11内の後方下部におけるスペースを省略化することができる。
【0037】
なお、上記実施形態例では、発光ユニット6の表示光を第1ミラー15と第2ミラー16で反射させた後、この第2ミラー16を投光部としてコンバイナ5へ表示光を照射するように構成されているが、使用されるミラーの数は2枚に限らず、例えば、発光ユニット6の表示光を第2ミラー16のみを用いてコンバイナ5へ照射するようにしても良い。あるいは、ミラーを全く使用せずに発光ユニット6からコンバイナ5へ表示光を直接照射するようにしても良く、その場合は、発光ユニット6が投光部に相当することになる。
【0038】
また、上記実施形態例では、駆動板24の下段側カム孔24bに係合する扇形ギア21によって一対の中継ギア18,19を逆向きに回転させ、これら中継ギア18,19の回転に伴ってコンバイナ5と第2カバー8が同時に動作するようにしているが、例えば、駆動板24にコンバイナ5の動作用カム孔と第2カバー8の動作用カム孔を個別に形成することにより、コンバイナ5の立ち上げ動作が開始してから第2カバー8が開放動作するようにしても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 HUD装置(ヘッドアップディスプレイ装置)
2 第1開口部
3 第2開口部
4 上部ケース
5 コンバイナ
6 発光ユニット
7 第1カバー
8 第2カバー
9 駆動機構(駆動手段)
10 下部ケース
11 ケーシング
12 シャーシ
13 支持体
14 作動板
15 第1ミラー
16 第2ミラー(投光部)
17,20 リンクアーム
18,19 中継ギア
21 扇形ギア
22 第1ガイド部材
23 第2ガイド部材
24 駆動板
24a,24b カム孔
25 ギア
26 同期シャフト
27 モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12