【実施例】
【0060】
[実施例1]
8配位サイトのTb
3+の一部がM
3+(Y
3+)及びSc
3+で置換され、6配位サイトがAl
3+及びSc
3+からなるガーネット型単結晶(TYSAG−1)を、CZ法により製造した。以下、
図1を参照しつつ説明する。
【0061】
まず、純度99.99%の酸化テルビウム(Tb
4O
7)原料粉末と、純度99.99%の酸化アルミニウム(Al
2O
3)原料粉末と、純度99.99%の酸化スカンジウム(Sc
2O
3)原料粉末と、純度99.99%の酸化イットリウム(Y
2O
3)原料粉末とを準備した。
【0062】
そして、上記各原料粉末を乾式混合して混合粉末を得た。このとき、混合粉末中の金属元素が、上記一般式(4)を満たす一般式(Tb
2.85Y
0.15)Sc
2Al
3.15O
12.225における金属元素のモル比を満たすように、表1に示すように各原料粉末を秤量した。すなわち、実施例1では、アルミニウムがリッチとなるように混合粉末を調製した。ここでは、混合粉末の質量が約430gとなるようにした。次いで、混合粉末をIr製ルツボ21に投入した。るつぼの形状は円筒形であり、直径は約50mm、高さは約50mmであった。
【0063】
混合粉末を室温から約1950℃まで加熱して溶解させることにより融液24を得た。次いで、この溶液に、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)からなる3mm×3mm×70mmの角棒状の種結晶25の先端を接触させ、種結晶を、10rpmの回転数で回転させながら、種結晶を1時間当たり1mmの速度で引き上げ、バルク状の結晶26を育成した。このとき、結晶の育成はN
2ガス雰囲気下で行い、N
2ガスの流量は1.0(l/min)とした。こうして直径約3cm、長さ約12cmの透明な単結晶を得た。単結晶を観察した結果を
図4に示す。
【0064】
得られた単結晶についてX線回折を行った。また、広域X線吸収微細構造(EXAFS)振動により単結晶中の各原子の原子位置について調べた。EXAFS振動用の試料には、切り出した単結晶と、単結晶を粉砕した粉末とを用いた。切り出した単結晶試料は、8×5mm
2結晶片((111)研磨面)であった。粉末試料を、TYSAG−1/BN(窒化ホウ素)の質量比が180mg/300mgとなるようにBN粉末で希釈した後、10mm径の円形のペレット状に圧粉した。測定は、育成したまま(as−grown)の単結晶試料及び粉末試料、並びに、これらの試料を、1200℃で4時間、大気中、熱処理した試料について行った。
【0065】
EXAFS振動の測定は、European Synchrotron Radiation Facility(フランス、グルノーブル)のビームラインFAME及びSPLINEを用いて行った。EXAFSスペクトルを、イットリウムK−edge(17038eV)について蛍光法で測定した。得られたEXAFSスペクトルは、総合的DEMETERソフトウェアパッケージ(B.Ravelら,ATHENA,ARTEMIS,HEPHAESTUS:data analysis for X−ray absorption spectroscopy using IFEFFIT, Journal of Synchrotron Radiation 12,537-541 (2005))により解析された。結果を
図5及び
図6に示す。さらに、蛍光X線分析(XRF)により結晶の組成を調べた。結果を表2に示す。
【0066】
次いで、単結晶から3.5mm×3.5mm×12mmとなるように角棒状に切り出した。切り出した結晶について、透過スペクトル及び反射スペクトルを測定した。結果を
図8に示す。得られた透過スペクトルから吸光度を求めた。結果を
図10に示す。
【0067】
角棒状に切り出した結晶を用いてファラデー回転角を測定した。ファラデー回転角の測定は以下のようにして行った。まず偏光子と偏光子との間に単結晶を配置しない状態で偏光子を回転させて消光状態にした。次に角棒状に切り出した単結晶を、偏光子と偏光子との間に配置し、単結晶の長手方向に沿って0.42Tの磁束密度を印加した状態で光を入射し、再度偏光子を回転させて消光状態にした。そして、偏光子と偏光子との間に単結晶を挟む前の偏光子の回転角と、単結晶を挟んだ後の偏光子の回転角との差を算出し、この角度差をファラデー回転角とした。光源の波長は400nm以上1100nm以下の波長域で変化させた。
【0068】
次に、ファラデー回転角θと、光の通過距離Llight、磁界の強さHから、ファラデー効果においてθ=γLlightHと表される式の比例定数γであるベルデ定数(Verdet constant)を算出した。これらの結果を
図12、表3及び表4に示す。
【0069】
[実施例2]
8配位サイトのTb
3+の一部がSc
3+及びM
3+(Y
3+)で置換され、6配位サイトがAl
3+及びSc
3+からなるガーネット型単結晶(TYSAG−2)を、
図1を参照して説明したCZ法により製造した。実施例2では、混合粉末中の金属元素が、上記一般式(3)を満たす一般式(Tb
2.85Y
0.15)Sc
2Al
3O
12における金属元素のモル比を満たすように、表1に示すように各原料粉末を秤量した以外は、実施例1と同様であった。すなわち、実施例2では、アルミニウムがリッチでない以外は実施例1と同様であった。
【0070】
実施例1と同様に、外観を観察し、X線回折、XAFS及びXRFを行った。実施例1と同様に、3.5mm×3.5mm×12mmとなるように角棒状に切り出し、切り出した単結晶について、透過スペクトル、反射スペクトル及び吸光度を求めた。角棒状の結晶を用いて、ファラデー回転角を測定し、ベルデ定数、ベルデパラメータを算出した。結果の一部を表2に示す。
【0071】
[実施例3]
8配位サイトのTb
3+の一部がSc
3+及びM
3+(Lu
3+)で置換され、6配位サイトがAl
3+及びSc
3+からなるガーネット型単結晶(TLSAG−5)を、
図1を参照して説明したCZ法により製造した。実施例3では、混合粉末中の金属元素が、一般式(Tb
2.8Lu
0.2)Sc
2Al
3O
12における金属元素のモル比を満たすように、純度99.99%の酸化イットリウム(Y
2O
3)原料粉末に代えて、純度99.99%の酸化ルテチウム(Lu
2O
3)原料粉末を用い、表1に示すように各原料粉末を秤量し、混合粉末の質量が約400gとなるようにした以外は、実施例2と同様であった。
【0072】
実施例1と同様に、外観を観察し、X線回折、XAFS及びXRFを行った。ただし、EXAFSスペクトルは、ルテチウムL
III−edge(9244eV)について蛍光法で測定された。実施例1と同様に、3.5mm×3.5mm×12mmとなるように角棒状に切り出し、切り出した単結晶について、透過スペクトル、反射スペクトル及び吸光度を求めた。角棒状の結晶を用いて、ファラデー回転角を測定し、ベルデ定数、ベルデパラメータを算出した。結果の一部を
図7及び表2に示す。
【0073】
[実施例4]
8配位サイトのTb
3+の一部がSc
3+及びM
3+(Lu
3+)で置換され、6配位サイトがAl
3+及びSc
3+からなるガーネット型単結晶(TLSAG−4)を、
図1を参照して説明したCZ法により製造した。実施例4では、混合粉末中の金属元素が、一般式(Tb
2.9Lu
0.1)Sc
2Al
3O
12における金属元素のモル比を満たすように、表1に示すように各原料粉末を秤量した以外は、実施例3と同様であった。
【0074】
実施例3と同様に、外観を観察し、X線回折、XAFS及びXRFを行った。実施例3と同様に、3.5mm×3.5mm×12mmとなるように角棒状に切り出し、切り出した単結晶について、透過スペクトル、反射スペクトル及び吸光度を求めた。角棒状の結晶を用いて、ファラデー回転角を測定し、ベルデ定数、ベルデパラメータを算出した。結果の一部を表2に示す。
【0075】
[実施例5]
8配位サイトのTb
3+の一部がSc
3+及びM
3+(Lu
3+)で置換され、6配位サイトがAl
3+及びSc
3+からなるガーネット型単結晶(TLSAG−3)を、
図1を参照して説明したCZ法により製造した。実施例5では、混合粉末中の金属元素が、一般式(Tb
2.95Lu
0.05)Sc
2Al
3O
12における金属元素のモル比を満たすように、表1に示すように各原料粉末を秤量した以外は、実施例3と同様であった。
【0076】
実施例3と同様に、外観を観察し、X線回折、XAFS及びXRFを行った。実施例3と同様に、3.5mm×3.5mm×12mmとなるように角棒状に切り出し、切り出した単結晶について、透過スペクトル、反射スペクトル及び吸光度を求めた。角棒状の結晶を用いて、ファラデー回転角を測定し、ベルデ定数、ベルデパラメータを算出した。結果の一部を、
図9、
図11、及び
図12、並びに表2〜表4に示す。
【0077】
[実施例6]
8配位サイトのTb
3+の一部がSc
3+及びM
3+(Lu
3+)で置換され、6配位サイトがAl
3+及びSc
3+からなるガーネット型単結晶(TLSAG−2)を、
図1を参照して説明したCZ法により製造した。実施例6では、混合粉末中の金属元素が、一般式(Tb
2.995Lu
0.005)Sc
2Al
3O
12における金属元素のモル比を満たすように、表1に示すように各原料粉末を秤量した以外は、実施例3と同様であった。
【0078】
実施例3と同様に、外観を観察し、X線回折、XAFS及びXRFを行った。実施例3と同様に、3.5mm×3.5mm×12mmとなるように角棒状に切り出し、切り出した単結晶について、透過スペクトル、反射スペクトル及び吸光度を求めた。角棒状の結晶を用いて、ファラデー回転角を測定し、ベルデ定数、ベルデパラメータを算出した。
【0079】
[実施例7]
8配位サイトのTb
3+の一部がSc
3+及びM
3+(Lu
3+)で置換され、6配位サイトがAl
3+及びSc
3+からなるガーネット型単結晶(TLSAG−1)を、
図1を参照して説明したCZ法により製造した。実施例7では、混合粉末中の金属元素が、一般式(Tb
2.998Lu
0.002)Sc
2Al
3O
12における金属元素のモル比を満たすように、表1に示すように各原料粉末を秤量した以外は、実施例3と同様であった。
【0080】
実施例3と同様に、外観を観察し、X線回折、XAFS及びXRFを行った。実施例3と同様に、3.5mm×3.5mm×12mmとなるように角棒状に切り出し、切り出した単結晶について、透過スペクトル、反射スペクトル及び吸光度を求めた。角棒状の結晶を用いて、ファラデー回転角を測定し、ベルデ定数、ベルデパラメータを算出した。
【0081】
[比較例8]
特許文献1及び非特許文献2〜3に記載のガーネット型単結晶として、Tb
3(Sc
1.95Lu
0.05)Al
3O
12単結晶を育成した。詳細には、特許文献1の実施例1及び非特許文献2〜3を参照し、混合粉末中の金属元素が、一般式Tb
3(Sc
1.95Lu
0.05)Al
3O
12における金属元素のモル比を満たすように、実施例3と同様の原料粉末を用意し、同様の手順にて単結晶を育成した。
【0082】
実施例1と同様に、3.5mm×3.5mm×12mmとなるように角棒状に切り出し、切り出した角棒状の結晶を用いて、ファラデー回転角を測定し、ベルデ定数、ベルデパラメータを算出した。結果を表3及び表4に示す。
【0083】
[比較例9]
非特許文献1に代表されるTb
3Ga
5O
12(TGG)として、Fujian Castech Crystals社製のTGG単結晶を用いた。実施例1と同様に、3.5mm×3.5mm×12mmとなるように角棒状に切り出し、切り出した単結晶について、透過スペクトル、反射スペクトル及び吸光度を求めた。角棒状の結晶を用いて、ファラデー回転角を測定し、ベルデ定数、ベルデパラメータを算出した。結果を
図10〜
図12、並びに表3及び表4に示す。
【0084】
以上の実施例及び比較例1〜8の単結晶の育成条件の一覧を、簡単のため、表1にまとめ、結果を説明する。
【0085】
【表1】
【0086】
図4は、実施例1の単結晶(TYSAG−1)の観察結果を示す図である。
【0087】
図4によれば、実施例1の単結晶は、直径3cm、長さ12cmの透明な単結晶であり、クラックはなかった。このことから、混合粉末中のアルミニウムがリッチとなるよう上述の一般式(4)を満たすように原料粉末が調製されることにより、良質な単結晶が得られることが分かった。図示しないが、他の実施例においても同様に大型の透明な単結晶が得られ、上述の一般式(3)を満たすように原料粉末が調製されることによっても、良質な単結晶が得られることを確認した。また、X線回折によれば、いずれの実施例の単結晶のXRDパターンにおいても、Tb
3Al
5O
12と同等のピークが確認され、ガーネット型単結晶であることが分かった。なお、「同等」とは、本発明の単結晶の構成元素は、Tb
3Al
5O
12のそれと異なっているため、本発明の単結晶のXRDパターンのピークの位置は、Tb
3Al
5O
12のXRDパターンのピークのそれからわずかにずれているものの、ピークパターンは一致しており、実質的に同じXRDパターンであることを意図している。
【0088】
以上より、本発明の製造方法を採用すれば、クラックのない大型の単結晶が得られることが確認された。また、混合粉末におけるアルミニウムの含有量がリッチであれば、良質な単結晶の育成が促進されることを確認した。
【0089】
図5は、ガーネット型単結晶のTbの周りの局所的な格子サイト環境を模式的に示す図である。
図6は、実施例1の単結晶(TYSAG−1)のEXAFSスペクトルを示す図である。
図7は、実施例3の単結晶(TLSAG−5)のEXAFSスペクトルを示す図である。
【0090】
図5によれば、Tbサイトは、最近接原子として8個のO原子を、第2の近接原子として2個のAl原子を、第3の近接原子として4個のSc原子を、第4の近接原子として4個のTb原子を有する。
【0091】
図6及び
図7によれば、測定したY/Luの周りの局所的な結晶環境は、極めて規則的であり、Y/Luの周りに4つの近接シェルが明瞭に観察された。このことは、実施例1の単結晶(TYSAG−1)及び実施例3の単結晶(TLSAG−5)は、極めて結晶性の高い結晶であることを示す。
【0092】
図6では、EXAFSスペクトル(実験データ)のフーリエ変換|χ(R)|を実線で、8配位のサイトにY
3+がすべて存在する(すなわち、8個のOイオンからなる第1の近接シェル、2個のAlイオンからなる第2の近接シェル、4個のScイオンからなる第3の近接シェル及び4個のTbイオンからなる第4の近接しシェル)と仮定してフィッティングしたスペクトルのフーリエ変換|χ(R)|を一点鎖線で示す。これらのスペクトルは、極めて良好な一致を示した。このことから、本発明のガーネット型単結晶において、Y
3+イオンは、8配位サイトにすべて置換されており、6配位サイトには存在しないことが確認された。
【0093】
同様に、
図7でも、EXAFSスペクトル(実験データ)のフーリエ変換|χ(R)|を実線で、8配位のサイトにLu
3+がすべて存在すると仮定してフィッティングしたスペクトルのフーリエ変換|χ(R)|を一点鎖線で示し、これらは極めて良好な一致を示した。このことから、本発明のガーネット型単結晶において、Lu
3+イオンは、8配位サイトにすべて置換されており、6配位サイトには存在しないことが確認された。
【0094】
図示しないが、粉末試料及び熱処理後の単結晶/粉末試料のEXAFSスペクトル、並びに、他の実施例の試料についても、
図6及び
図7のそれと同じであった。
【0095】
次に、XRFによる組成分析の結果を表2に示す。表2には、参考のため、特許文献1の実施例1で得られたICP分析の結果を比較例8として示す。
【0096】
【表2】
【0097】
表2によれば、本発明のガーネット型単結晶は、下記一般式(2)で表され、
(Tb
3−a−bM
aSc
b)(Sc
2−cAl
c)Al
3O
12−d ・・・(2)
パラメータa、b、c及びdは、
0<a≦0.6
0≦b≦0.2
0<c≦0.6
0≦d≦0.3
を満たすことが分かった。
【0098】
以上より、本発明のガーネット型単結晶は、Tb及びM(Mは、Y及び/又はLuである)を含む8配位サイト、Sc及びAlからなる6配位サイト、Alからなる4配位サイトで構成されており、クラックのない大型の単結晶であることが確認された。
【0099】
図8は、実施例1の単結晶(TYSAG−1)の透過スペクトル及び反射スペクトルを示す図である。
図9は、実施例5の単結晶(TLSAG−3)の透過スペクトル及び反射スペクトルを示す図である。
【0100】
図8及び
図9によれば、本発明のガーネット型単結晶は、波長395nm以上1500nm以下の全域にわたって極めて高い透過率を有することが分かった。その透過率は、反射率を考慮すれば、80%を超えていた。図示しないが、他の実施例についても同様の透過/反射スペクトルが得られた。このことから、本発明のガーネット型単結晶は、発振波長が1060nm以上1100nm以下であるレーザ(具体的には、1080nmであるYbドープファイバレーザ、発振波長が1064nmであるNd:YAGレーザ等)や、波長395nm以上1060nm未満である半導体レーザなどに好適であることが確認された。測定では、コーティングなどを付与していない切り出した単結晶を用いたが、切り出した単結晶にコーティングを付与すれば、透過率を実質100%まで増大できることは言うまでもない。
【0101】
図10は、実施例1の単結晶(TYSAG−1)の吸収スペクトルを示す図である。
図11は、実施例5の単結晶(TLSAG−3)の吸収スペクトルを示す図である。
【0102】
図10及び
図11には、比較のため、比較例9のTGGの吸収スペクトルを併せて示す。
図10及び
図11によれば、本発明のガーネット型単結晶の吸収係数は、波長400nm付近(具体的には395nm)においても極めて低い値を示したが、比較例9のTGGのそれは、波長400nm付近において急激に上昇した。図示しないが、他の実施例についても同様の吸収スペクトルが得られた。このことは、本発明のガーネット型単結晶が、TGGに比べて、欠陥のない良質な単結晶であることを示す。
【0103】
図12は、実施例1の単結晶(TYSAG−1)及び実施例5の単結晶(TLSAG−3)のベルデ定数の波長依存性を示す図である。
【0104】
図12には、比較のため、比較例9のTGGのベルデ定数の波長依存性を併せて示す。
図12に示すように、波長400nm〜1100nmの全波長域において、本発明のガーネット型単結晶のベルデ定数は、TGGのそれよりも大きかった。その増分は、8%に相当した。さらに、波長400nm〜1100nmの全波長域において、実施例5の単結晶(TLSAG−3)のベルデ定数は、実施例1の単結晶(TYSAG−1)のそれよりも大きかった。実施例5の単結晶(TLSAG−3)のベルデ定数の増分は、TGGのそれに対して20%に相当した。このことから、元素Mが、Luの場合、大きなベルデ定数が得られることが示された。図示しないが、他の実施例についても同様のベルデ定数の波長依存性が得られ、いずれもTGGのそれよりも大きいことを確認した。
【0105】
表3にベルデパラメータを、表4に種々の波長におけるベルデ定数を示す。表3及び表4には、比較例8の単結晶(TSLAG)及び比較例9の単結晶(TGG)の結果も併せて示す。
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
表3によれば、本発明のガーネット型単結晶のベルデパラメータは、比較例9のTGGのそれよりも大きかった。このことは、本発明のガーネット型単結晶は、TGGに比べて、磁気光学特性に優れることを示す。詳細には、実施例5の単結晶(TLSAG−3)のベルデパラメータEは、実施例1の単結晶(TYSAG−1)のそれより大きく、比較例8の単結晶(TSLAG)のそれを凌ぐ又は匹敵することが分かった。
【0109】
表4によれば、
図12を参照して説明したように、本発明のガーネット型単結晶のベルデ定数は、すべての波長において、比較例9のTGGのそれよりも大きかった。また、実施例5の単結晶(TLSAG−3)のベルデ定数は、実施例1の単結晶(TYSAG−1)のそれより大きく、比較例8の単結晶(TSLAG)のそれを凌ぐ又は匹敵することが分かった。
【0110】
図12、表3及び表4から、本発明のガーネット型単結晶は、TGGよりも優れた磁気光学特性を有しており、特許文献1〜3あるいは非特許文献2〜3の単結晶を凌ぐあるいは匹敵する磁気光学特性を有していることを確認した。このことから、本発明のガーネット型単結晶は、ファラデー回転子として有効であり、TGGより優れており、特許文献1〜3あるいは非特許文献2〜3の単結晶に代替できることが示された。