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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-137450(P2017-137450A)
(43)【公開日】2017年8月10日
(54)【発明の名称】紫外線防御樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 12/08 20060101AFI20170714BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20170714BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20170714BHJP
【FI】
   C08G12/08
   A61K8/84
   A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-20695(P2016-20695)
(22)【出願日】2016年2月5日
(71)【出願人】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(72)【発明者】
【氏名】山口 信哉
(72)【発明者】
【氏名】菊地 徹
(72)【発明者】
【氏名】早野 亜衣子
(72)【発明者】
【氏名】宮木 博
【テーマコード(参考)】
4C083
4J033
【Fターム(参考)】
4C083AD071
4C083BB46
4C083CC19
4C083EE17
4C083FF01
4J033EA02
4J033EA18
4J033EA33
4J033EA51
4J033EB01
4J033EC01
4J033HA02
4J033HA10
4J033HB00
(57)【要約】
【課題】紫外線防御の性質を有し、非水溶性の新規の樹脂を提供する。
【解決手段】トリプトファン骨格を有するカルボキシル基を多数有する重量分子量数千〜6万の樹脂。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
で表される繰り返し単位を有する、重量分子量数千〜6万の紫外線防御樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線防御効果を有する新規な樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
人の肌や眼、髪の毛などが紫外線に晒されると、さまざまな悪影響を受けることが知られている。更に紫外線は人体ばかりでなく、プラスチック、電子材料、塗料、医薬品、化粧品等の劣化などにも影響する。そのため、紫外線を防御するためのさまざまな化合物が開発されている。紫外線防御の化合物として、水溶性の化合物、有機溶剤溶解性化合物、樹脂類など各種あり、そのうち樹脂は成形性の優れていることから多数開発されている。紫外線防御樹脂としては、酸化チタンや紫外線吸収剤を混合したり、プラスチックに酸化亜鉛を含有させたり(特許文献1)、ポリオレフィンにベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有させた樹脂(特許文献2)、アルコキシシリル基含有シラン変性フッ素樹脂(特許文献3)、芳香族―ポリカーボネート樹脂に紫外線吸収剤と酸化防止剤を添加したもの(特許文献4)、最外層にポリエチレンテレフタレート成分を組み合わせた樹脂(特許文献5)などがある。生体用途には、生体との適合性が良好な水不溶性の紫外線防御効果を有する物質が求められている。そのうち、皮膚などに使用する化粧品などでは、水に溶けるものは、付着性や持続性に劣る欠点がある。生体に相性の良い樹脂としてポリアクリレート、ポリウレタンなどの親水性の樹脂が知られており、紫外線防御効果を付与するため酸化チタンや酸化亜鉛等の無機化合物が混合されているが、分散性や光沢性に難がある。また、一部の紫外線吸収剤は皮膚に付着した場合、肌荒れやアレルギーなどのトラブルの原因となるおそれもある。一般に樹脂の分子にカルボキシル基や硫酸基、リン酸基などの陰イオン基を多数有するものは生体との親和性が優れていることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−116894号 公報
【特許文献2】特開2009−249464号 公報
【特許文献3】特開2008−81547号 公報
【特許文献4】特開平11−335546号 公報
【特許文献5】特開平10−6456号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、紫外線防御の性質を有し、非水溶性でかつ生体親和性の良い新規の樹脂を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の樹脂は、
【化1】
で表される繰り返し単位を有する、重量分子量数千〜6万の樹脂。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、紫外線防御の性質を有し、非水溶性で生体親和性の良い樹脂を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例1に係る本発明樹脂の1H−NMRの測定スペクトルを示す図である。
図2】実施例1に係る本発明樹脂の13C−NMRの測定スペクトルを示す図である。
図3】実施例1に係る比較対照であるL−トリプトファンの1H−NMRの測定スペクトルを示す図である。
図4】実施例1に係る比較対照であるL−トリプトファンの13C−NMRの測定スペクトルを示す図である。
図5】実施例1に係る本発明樹脂の赤外分光の測定スペクトルを示す図である。
図6】実施例1に係る比較対照であるL−トリプトファンの赤外分光の測定スペクトルを示す図である。
図7】実施例1に係る本発明樹脂の重量分子量分布を示す図である。
図8】実施例1に係る本発明樹脂の紫外可視領域の吸光度を示す図である。
図9】実施例1に係る比較対照であるL−トリプトファンの紫外可視領域の反射スペクトルを示す図である。
図10】実施例2に係る本発明樹脂の1H−NMRの測定スペクトルを示す図である。
図11】実施例2に係る本発明樹脂の赤外分光の測定スペクトルを示す図である。
図12】実施例2に係る本発明樹脂の重量分子量分布を示す図である。
図13】実施例2に係る本発明樹脂の紫外可視領域の吸光度を示す図である。
図14】実施例3に係る本発明樹脂の1H−NMRの測定スペクトルを示す図である。
図15】実施例3に係る比較対照であるD−トリプトファンの1H−NMRの測定スペクトルを示す図である。
図16】実施例3に係る本発明樹脂の赤外分光の測定スペクトルを示す図である。
図17】実施例3に係る比較対照であるD−トリプトファンの赤外分光の測定スペクトルを示す図である。
図18】実施例3に係る本発明樹脂の重量分子量分布を示す図である。
図19】実施例4に係る本発明樹脂の1H−NMRの測定スペクトルを示す図である。
図20】実施例4に係る本発明樹脂の赤外分光の測定スペクトルを示す図である。
図21】実施例4に係る本発明樹脂の重量分子量分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態をより具体的に説明する。
【0009】
本発明の樹脂は、後記記述の製造法により製造されるものであり、その繰り返し単位は、次のように示される。
【0010】
【化1】
【0011】
本発明の樹脂は、重量分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィーにより、数千〜6万であり、分子内に多数のカルボキシル基を有する。
【0012】
本発明の樹脂は、L−トリプトファンもしくはD−トリプトファンを含む酸性条件の水溶液に、モル比でトリプトファンの0.3倍量〜3倍量のホルムアルデヒドを存在させ、6時間〜1週間、15℃〜50℃で反応させることにより製造される。量論的にはトリプトファン1モルに対し、1モルのホルムアルデヒドが反応する。酸性条件としては、0.0001M〜1M濃度の塩酸などの無機酸や、0.001(V/V)%〜5(V/V)%濃度の酢酸などの有機酸が用いられる。反応後、本発明の樹脂は、白色状の沈殿物として得られる。得られた沈殿物は、未反応物のトリプトファン及びホルムアルデヒドを除去するため、数回水洗する。その後、自然乾燥や加熱乾燥、エタノールやアセトンなどの有機溶剤を用いて、乾燥してもよい。
【0013】
本発明樹脂は、以下の有機溶剤に不溶である。メタノール、エタノール、アセトン、2−プロパノール、1,2−ジクロロエタン、キシレン、イソアミルアルコール、ベンゼン、トルエン、ピリジン、ペンタノール、ヘキサン、石油エーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、四塩化炭素、アセトニトリル、トリエチルアミン、ジエチルアミン。また、酢酸や1M塩酸などの酸にも不溶である。
【0014】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これは単に例示の目的で述べるものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
プラスチック製遠沈管に、0.01(V/V)%塩酸(試薬特級,関東化学(株))を含む水溶液40mLを入れ、L−トリプトファン(関東化学(株))400mg加え、撹拌溶解した。これに試薬特級ホルムアルデヒド溶液(ホルムアルデヒド含量35%、関東化学(株))を412μL加え、撹拌した。20℃の恒温器に7日間放置した。生じた白い沈殿物を遠心分離し、上清を廃棄し、次に水を10mL添加し、沈殿を撹拌し、沈殿物を洗浄した。再び遠心分離し、同様の操作を全部で5回繰り返した。最後に沈殿物にエタノールを加え、洗浄し、遠心分離し、上清を廃棄し、沈殿物を乾燥し、樹脂を得た。
【0016】
(溶解性試験)
上記で得られた樹脂約5mgを密栓付きガラス製試験管に入れ、以下の各種溶媒を0.5mL加え、撹拌し、20℃で放置した。水、酢酸、メタノール、エタノール、アセトン、2−プロパノール、1,2−ジクロロエタン、キシレン、イソアミルアルコール、ベンゼン、トルエン、ピリジン、ペンタノール、ヘキサン、石油エーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、四塩化炭素、アセトニトリル、1M水酸化ナトリウム水、トリエチルアミン、ジエチルアミン、15Mアンモニア水、1M(V/V)%アンモニア水。加えた溶媒は水とアンモニア水以外は試薬特級である。24時間後、溶解していたのは、15Mアンモニア水、1Mアンモニア水のみであった。また、1ヶ月後観察したところ、ジメチルスルホキシドも溶解していた。
【0017】
(フーリエ変換核磁気共鳴分光法(NMR)による分析)
得られた樹脂5mgを試薬特級15Mアンモニア水0.08mL(関東化学(株))、重水0.72mL(>D2O99.8%、メルク社)を混合した溶液に溶解し、1H−NMRと13C−NMRを測定した。測定装置はJNM−EX270(270MHz、日本電子製)で、積算回数は1H−NMRは32回、13C−NMRは8万回行った。測定とデータ解析は装置付属のプログラムソフトであるEXcalibur for windows98 ver4.1(日本電子製)により行った。比較対照として原料のL−トリプトファン(関東化学(株))を同様に調製し、1H−NMRと13C−NMRを測定した。
【0018】
図1図4は、NMRのスペクトルを示し、縦軸は相対強度、横軸は無次元値δ(ppm)である。図1は得られた樹脂の1H−NMRの測定スペクトルであり、図中の数字は得られた樹脂由来の特徴的なシグナルを示し、1はδ:3.920ppm、2はδ:3.946ppmである。図2は得られた樹脂の13C−NMRの測定のスペクトルであり、図中の数字1は得られた樹脂由来の特徴的なシグナルを示し、δ:41.911ppmである。図中の数字2はδ:181.518ppmで、カルボン酸の炭素である。図3は比較対照の原料のL−トリプトファンの1H−NMRの結果を示すスペクトルである。図4は比較対照の原料のL−トリプトファンの13C−NMRの結果を示すスペクトルである。これらの結果は本発明を支持するものであった。
【0019】
(元素分析による分析)
得られた樹脂の元素分析を燃焼法による元素分析装置vario EL cube(エレメンタール製)を用い、炭素、水素、窒素の測定は炭素、水素、窒素、硫黄の4元素を同時に測定する形式で行い、酸素の測定は酸素のみの単元素を測定する形式で行った。測定は炭素、水素、窒素は4回、酸素は5回測定し、各元素の平均値として求めた。その結果、炭素、水素、酸素、窒素の含量はそれぞれ66.03(W/W)%、5.54(W/W)%、15.84(W/W)%,12.77(W/W)%であり、モル比で12:12:2:2.2であった。この結果は本発明を支持するものであった。
【0020】
(赤外分光による分析)
得られた樹脂をメノウ製の乳鉢にて粉砕し、KBrディスク法により赤外分光測定を行った。測定装置は、FT/IR−420(日本分光製)で、測定及びデータ処理は装置のプログラムであるスペクトルマネージャにより行った。比較対照として、原料のL−トリプトファン(関東化学(株))を同様に測定した。
【0021】
図5図6は、赤外分光の測定のスペクトルであり、縦軸は透過率(%)、横軸は波数(cm−1)である。図5は得られた樹脂の測定スペクトルで、図中の数字はピークを表す。1は2786cm−1、2は1635cm−1、3は1451cm−1、4は1403cm−1、5は1309cm−1、6は1265cm−1、7は1222cm−1、8は736cm−1である。図6は比較対照の原料のL−トリプトファンの測定スペクトルで、図中の数字はピークを表す。1は1665cm−1、2は1458cm−1、3は1415cm−1、4は1357cm−1、5は1231cm−1、6は921cm−1、7は744cm−1である。
【0022】
(重量分子量測定)
得られた樹脂を1.5Mアンモニア水に溶解し、ゲルろ過クロマトグラフィー法により重量分子量を測定した。ゲルろ過クロマトグラフィー用樹脂はトヨパール HW40C(内径2.6cm、高さ122cm、東ソー(株))を用いた。溶離液は1.5Mアンモニア水、流速1mL/分で、4mLずつ溶出液を分画した。得られた各溶出液分画の280nmの吸光度を測定することにより、樹脂の重量分子量分布を求めた。重量分子量標準物質としてブルーデキストラン(Voとして。ファルマシア社)、アルブミン(牛血清由来、重量分子量66,000、ファルマシア社)、アルブミン(チキン卵白由来、重量分子量44,300、シグマ社)、キモトリプシノーゲンA(重量分子量25,000、ファルマシア社)、L−トリプトファン(Vtとして。関東化学(株))を用いた。
【0023】
図7は、得られた樹脂のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すものであり、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーの分画番号、縦軸はゲルろ過クロマトグラフィー溶出分画の280nmでの吸光度(Abs)を示す。図中の数字1は重量分子量標準物質(重量分子量44,300)であるアルブミン(チキン卵白由来)の溶出分画位置を示す。数字2は重量分子量標準物質(重量分子量25,000)であるキモトリプシノーゲンAの溶出分画位置を示す。Voはゲルの排除分画位置、Vtはべッド分画位置を表す。なお、アルブミン(牛血清由来、重量分子量66,000)の溶出分画位置は、Voのブルーデキストランと同じであった。この結果から、得られた樹脂の重量分子量は約数千〜4万と推定された。
【0024】
(紫外線吸収測定)
得られた樹脂の紫外可視領域の吸光度を測定した。測定装置は内壁に硫酸バリウムが塗布された積分球ISN−470(日本分光製)を具備した紫外可視近赤外分光光度計V−570(日本分光製)を用い、キャップの試料と接する面にアルミニウム箔を付した窓板として石英を用いている粉末試料用ホルダPSH−001(日本分光製)(以下、「アルミニウム具備粉末試料用ホルダ」という。)を窓板に紫外光が照射されるように粉末試料用ホルダを積分球の試料側反射板ホルダにセットしてベースライン補正を行った後に、アルミニウム具備粉末試料用ホルダに測定試料を充填し、窓板に紫外光が照射されるように粉末試料用ホルダを積分球の試料側反射板ホルダにセットして試料の吸光度を測定した。比較対照として原料のL−トリプトファン(関東化学(株))を同様に測定した。
【0025】
図8は、得られた樹脂の紫外可視領域の吸収スペクトルを示すものであり、縦軸は吸光度(Abs)、横軸は波長(nm)である。図9は、比較対照のL−トリプトファンの紫外線領域の吸収を示すものである。その結果、得られた樹脂は、紫外線を防御する性質を有することが示された。
【実施例2】
【0026】
プラスチック製遠沈管に、1(V/V)%酢酸(試薬特級,関東化学(株))を含む水溶液10mLを入れ、L−トリプトファン(関東化学(株))100mg加え、撹拌溶解した。これに試薬特級ホルムアルデヒド溶液(ホルムアルデヒド含量35%、関東化学(株))を206μL加え、撹拌した。20℃の恒温器に3日間放置した。生じた白い沈殿物を遠心分離し、上清を廃棄し、次に水を10mL添加し、沈殿を撹拌し、沈殿物を洗浄した。再び遠心分離し、同様の操作を5回繰り返した。最後に沈殿物にエタノールを加え、洗浄し、遠心分離し、上清を廃棄し、沈殿物を風乾し、樹脂を得た。
【0027】
(フーリエ変換核磁気共鳴分光法(NMR)による分析)
得られた樹脂5mgを試薬特級15Mアンモニア水0.08mL(関東化学(株))、重水0.72mL(>D2O99.8%、メルク社)を混合した溶液に溶解し、1H−NMRを測定した。測定装置、測定条件、データ解析は実施例1と同様に行った。図10は、得られた樹脂の1H−NMRの結果を示すスペクトルであり、縦軸は相対強度、横軸は無次元値δ(ppm)である。図中の数字は特徴的なシグナルを示し、1はδ:3.925ppm、2はδ:3.951ppmである。シグナルは実施例1と同様のパターンを示し、これらの結果は本発明を支持するものであった。
【0028】
(元素分析による分析)
得られた樹脂の元素分析を燃焼法による元素分析装置vario EL cube(エレメンタール製)を用い、炭素、水素、窒素の測定は炭素、水素、窒素、硫黄の4元素を同時に測定する形式で行い、酸素の測定は酸素のみの単元素を測定する形式で行ったその結果、炭素、水素、酸素、窒素の含量はそれぞれ62.90(W/W)%、5.776(W/W)%、17.29(W/W)%、11.92(W/W)%であり、モル比で12:13:2.5:1.9であった。この結果は本発明を支持するものであった。
【0029】
(赤外分光による分析)
得られた樹脂を実施例1と同様に、KBrディスク法により赤外分光測定を行った。図11は、得られた樹脂の赤外分光の結果を示すものであり、縦軸は透過率(%)、横軸は波数(cm−1)である。図中の数字はピークを表す。1は2788cm−1、2は1635cm−1、3は1451cm−1、4は1402cm−1、5は1310cm−1、6は1265cm−1、7は1222cm−1、8は736cm−1である。
【0030】
(重量分子量測定)
得られた樹脂を1.5Mアンモニア水に溶解し、実施例1と同様にゲルろ過クロマトグラフィー法により重量分子量を測定した。図12は、得られた樹脂のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すものであり、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーの溶出分画番号、縦軸はゲルろ過クロマトグラフィー溶出液分画の280nmでの吸光度(Abs)を示す。図中の数字1は重量分子量標準物質(重量分子量44,300)であるアルブミン(チキン卵白由来)の溶出分画位置を示す。数字2は重量分子量標準物質(重量分子量25,000)であるキモトリプシノーゲンAの溶出分画位置を示す。Voはゲルの排除分画位置、Vtはべッド分画位置を表す。この結果から、得られた樹脂の重量分子量は約数千〜2万と推定された。
【0031】
(紫外線吸収測定)
得られた樹脂の紫外可視領域の吸光度を測定した。測定装置は内壁に硫酸バリウムが塗布された積分球ISN−470(日本分光製)を具備した紫外可視近赤外分光光度計V−570(日本分光製)を用い、アルミニウム具備粉末試料用ホルダを窓板に紫外光が照射されるように粉末試料用ホルダを積分球の試料側反射板ホルダにセットしてベースライン補正を行った後に、アルミニウム具備粉末試料用ホルダに測定試料を充填し、窓板に紫外光が照射されるように粉末試料用ホルダを積分球の試料側反射板ホルダにセットして試料の吸光度を測定した。
【0032】
図13は、得られた樹脂の紫外可視領域の吸収スペクトルを示すものであり、縦軸は吸光度(Abs)、横軸は波長(nm)である。その結果、得られた樹脂は、紫外線を防御する性質を有することが示された。
【実施例3】
【0033】
プラスチック製遠沈管に、1(V/V)%塩酸(試薬特級,関東化学(株))を含む水溶液10mLを入れ、D−トリプトファン(和光純薬工業(株))100mg加え、撹拌溶解した。これに試薬特級ホルムアルデヒド溶液(ホルムアルデヒド含量35%、関東化学(株))を206μL加え、撹拌した。20℃の恒温器に3日間放置した。生じた白い沈殿物を遠心分離し、上清を廃棄し、次に水を10mL添加し、沈殿を撹拌し、沈殿物を洗浄した。再び遠心分離し、同様の操作を5回繰り返した。最後に沈殿物にエタノールを加え、洗浄し、遠心分離し、上清を廃棄し、沈殿物を風乾し、樹脂を得た。
【0034】
(フーリエ変換核磁気共鳴分光法(NMR)による分析)
得られた樹脂5mgを試薬特級15Mアンモニア水0.08mL(関東化学(株))、重水0.72mL(>D2O99.8%、メルク社)を混合した溶液に溶解し、1H−NMRを測定した。測定装置、測定条件、データ解析は実施例1と同様に行った。比較対照として原料のD−トリプトファン(関東化学(株))の1H−NMRを同様に測定した。図14図15は1H−NMRの測定のスペクトルであり、図の縦軸は相対強度、横軸は無次元値δ(ppm)である。図14は得られた樹脂のスペクトルであり、図中の数字は特徴的なシグナルを示し、1はδ:3.949ppm、2はδ:3.975ppmである。図15は比較対照の原料のD−トリプトファンのスペクトルである。これらの結果は本発明を支持するものであった。
【0035】
(赤外分光による分析)
得られた樹脂を実施例1と同様に、KBrディスク法により赤外分光測定を行った。比較対照として、原料のD−トリプトファン(和光純薬工業(株))を同様に測定した。図16図17は、赤外分光の測定のスペクトルであり、縦軸は透過率(%)、横軸は波数(cm−1)である。図16は得られた樹脂の測定スペクトルで、図中の数字はピークを表す。1は2789cm−1、2は1636cm−1、3は1450cm−1、4は1304cm−1、5は1309cm−1、6は1265cm−1、7は1221cm−1、8は736cm−1である。図17は比較対照の原料のD−トリプトファンの測定スペクトルで、図中の数字はピークを表す。1は1666cm−1、2は1458cm−1、3は1415cm−1、4は1357cm−1、5は1231cm−1、6は921cm−1、7は744cm−1である。
【0036】
(重量分子量測定)
得られた樹脂を1.5Mアンモニア水に溶解し、実施例1と同様にゲルろ過クロマトグラフィー法により重量分子量を測定した。図18は、得られた樹脂のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すものであり、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーの溶出分画番号、縦軸はゲルろ過クロマトグラフィー溶出液分画の280nmでの吸光度(Abs)を示す。図中の数字1は重量分子量標準物質(重量分子量44,300)であるアルブミン(チキン卵白由来)の溶出分画位置を示す。数字2は重量分子量標準物質(重量分子量25,000)であるキモトリプシノーゲンAの溶出分画位置を示す。Voはゲルの排除分画位置、Vtはべッド分画位置を表す。この結果から、得られた樹脂の重量分子量は約数千〜3万と推定された。
【実施例4】
【0037】
プラスチック製遠沈管に、1(V/V)%酢酸(試薬特級,関東化学(株))を含む水溶液10mLを入れ、D−トリプトファン(和光純薬工業(株))100mg加え、撹拌溶解した。これに試薬特級ホルムアルデヒド溶液(ホルムアルデヒド含量35%、関東化学(株))を206μL加え、撹拌した。20℃の恒温器に3日間放置した。生じた白い沈殿物を遠心分離し、上清を廃棄し、次に水を10mL添加し、沈殿を撹拌し、沈殿物を洗浄した。再び遠心分離し、同様の操作を5回繰り返した。最後に沈殿物にエタノールを加え、洗浄し、遠心分離し、上清を廃棄し、沈殿物を風乾し、樹脂を得た。
【0038】
(フーリエ変換核磁気共鳴分光法(NMR)による分析)
得られた樹脂5mgを試薬特級15Mアンモニア水0.08mL(関東化学(株))、重水0.72mL(>D2O99.8%、メルク社)を混合した溶液に溶解し、1H−NMRを測定した。測定装置、測定条件、データ解析は実施例1と同様に行った。図19は得られた樹脂の1H−NMRの結果を示すスペクトルであり、縦軸は相対強度、横軸は無次元値δ(ppm)である。図中の数字は特徴的なシグナルを示し、1はδ:3.928ppm、2はδ:3.955ppmである。シグナルは実施例3と同様のパターンを示し、これらの結果は本発明を支持するものであった。
【0039】
(赤外分光による分析)
得られた樹脂を実施例1と同様に、KBrディスク法により赤外分光測定を行った。図20は得られた樹脂の赤外分光の結果を示すものであり、縦軸は透過率(%)、横軸は波数(cm−1)である。図中の数字はピークを表す。1は2789cm−1、2は1635cm−1、3は1450cm−1、4は1402cm−1、5は1308cm−1、6は1265cm−1、7は1221cm−1、8は735cm−1である。
【0040】
(重量分子量測定)
得られた樹脂を1.5Mアンモニア水に溶解し、実施例1と同様にゲルろ過クロマトグラフィー法により重量分子量を測定した。図21は、得られた樹脂のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すものであり、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーの溶出分画、縦軸はゲルろ過クロマトグラフィー溶出液分画の280nmでの吸光度(Abs)を示す。図中の数字1は重量分子量標準物質(重量分子量44,300)であるアルブミン(チキン卵白由来)の溶出分画位置を示す。数字2は重量分子量標準物質(重量分子量25,000)であるキモトリプシノーゲンAの溶出分画位置を示す。Voはゲルの排除分画位置、Vtはべッド分画位置を表す。この結果から、得られた樹脂の重量分子量は約5万〜6万と推定された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の方法により、紫外線防御剤として、化粧品や化成品の分野などで、広く利用されることが可能である。
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