【解決手段】分子中にベンゼン環を3つ以上有する芳香族アルキルフェノールポリオキシアルキレン付加物成分(A)と、ポリオキシアルキレングリコールの脂肪酸エステル成分(B)と、平滑剤成分(C)とを含む合成繊維用処理剤であって、処理剤の不揮発分に占める成分(A)及び前記成分(B)の合計の重量割合が1〜50重量%、成分(C)の重量割合が35〜85重量%であり、成分(C)の重量平均分子量が500〜1500である、合成繊維用処理剤。
分子中にベンゼン環を3つ以上有する芳香族アルキルフェノールポリオキシアルキレン付加物である成分(A)と、ポリオキシアルキレングリコールの脂肪酸エステル成分(B)と、平滑剤成分(C)とを含む合成繊維用処理剤であって、
前記処理剤の不揮発分に占める、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計の重量割合が1〜50重量%、前記成分(C)の重量割合が35〜85重量%であり、
前記成分(C)の重量平均分子量が500〜1500である、合成繊維用処理剤。
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル成分(D)及び脂肪族アルコールのポリオキシアルキレン付加物である成分(E)から選ばれる少なくとも1種をさらに含み、前記処理剤の不揮発分に占める前記成分(D)及び前記成分(E)の合計の重量割合が1〜40重量%である、請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
前記処理剤の不揮発分に占める、前記成分(A)の重量割合が0.9〜25重量%、成分(B)の重量割合が0.1〜25重量%である、請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
前記成分(A)が、ベンゼン環を3つ以上有する芳香族アルキルフェノール1モルにポリオキシアルキレンを1〜30モルの割合で付加させた構造を有する化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の合成繊維用処理剤。
前記成分(B)を構成するポリアルキレングリコールの重量平均分子量が100〜1000であり、前記成分(B)を構成する脂肪酸の炭素数が8〜24である、請求項1〜4のいずれかに記載の合成繊維用処理剤。
前記処理剤の不揮発分に占める有機アミン化合物及び/又はその誘導体(F)の合計の重量割合が10重量%未満である、請求項1〜5のいずれかに記載の合成繊維用処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の合成繊維用処理剤は、特定の成分(A)〜(E)を含むものである。以下詳細に説明する。
【0012】
(成分(A))
成分(A)は、ベンゼン環を3つ以上有する芳香族アルキルフェノールポリオキシアルキレン付加物である。前記成分(A)は、後述する成分(B)及び(C)と併用することで、熱セットロール表面への処理剤の熱劣化物析出を低減させる成分である。
ここで、処理剤の熱劣化物とは、処理剤である有機物が繊維製造時の200℃を超える熱ローラーによりラジカルを発生し、そのラジカル生成物同士が連鎖反応を繰り返すことで生成する高分子の有機化合物のことである。加熱されていることから、芳香族構造を有している場合がある。
前記成分(A)は、後述する成分(B)及び(C)と併用することで、熱セットロール表面への処理剤の熱劣化物析出を低減させる効果を発揮する理由は定かではないが、分子中に3つ以上のベンゼン環を有しているために、当該高分子化した熱劣化物と相溶性を有するため、当該高分子化した熱劣化物を処理剤へ溶解し易くすることにより、ローラー上の脱落を低減することができるものと推定している。特に、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどの芳香環を含む合成繊維では、熱セットロール表面への処理剤の熱劣化物析出を低減させる効果が大きいことから、前記成分(A)は、熱セットロール表面へ析出したオリゴマー類の処理剤への溶解性を向上させていると推定している。
また、処理剤との相溶性を向上させる観点から、分子中にベンゼン環を3つ以上有する、という要件では足りず、ポリオキシアルキレンが付加された構造を有することを必要とするのである。なお、ここで記述しているベンゼン環は単環芳香族炭化水素のことであり、ナフタレンやアントラセン等の多環芳香族炭化水素を含まない概念である。
【0013】
成分(A)は、分子中にベンゼン環を3つ以上有し、3〜5が好ましく、3又は4がさらに好ましい。
ポリオキシアルキレンのオキシアルキレン基としては、処理剤の他成分との相溶性が良好であるために、本願効果を発揮し易い観点から、オキシエチレン及び/又はオキシプロピレンが好ましく、オキシエチレン単独がより好ましい。
ポリオキシアルキレン基の付加モル数としては、特に限定はされないが、1〜30モルが好ましく、2〜12モルがより好ましく、3〜9モルがさらに好ましい。ポリオキシアルキレンが付加されていない場合や30モルを超える場合、熱セットロール表面上への熱劣化物の蓄積が増加することがある。
【0014】
成分(A)の分子量は、本願効果を発揮し易い観点から、290〜1300が好ましく、340〜950がより好ましく、380〜800がさらに好ましい。
【0015】
成分(A)としては、分子中にベンゼン環を3つ以上有する芳香族アルキルフェノールにポリオキシアルキレンが付加された構造を有することを充足する化合物であれば特に限定はされないが、例えば、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレントリスチリルメチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルメチルフェニルエーテル等が挙げられる。なお、成分(A)は、末端に水酸基を有することが、熱セットロール表面に発生した炭化が進んだ熱劣化物を処理剤へ溶かし込んで清掃する観点の理由から好ましい。そのため、分子中にベンゼン環を3つ以上有する芳香族アルキルフェノールにポリオキシアルキレンが付加され、かつ、該ポリオキシアルキレン基がエステル基等で封鎖されていない構造を有することが好ましい。
【0016】
〔成分(B)〕
成分(B)は、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルである。成分(B)は、成分(A)の成分(C)への相溶性を向上させる役割を発揮する成分である。
成分(B)が処理剤の相溶性を向上させる役割を発揮する理由としては定かではないが、アルキル基とポリオキシアルキレン鎖がエステル基を介して直線的に連結している単純な構造を有するため、成分(A)と成分(C)を混合した系での均一相溶性向上に寄与していると推定している。
【0017】
成分(B)を構成する脂肪酸の炭素数については、特に限定はないが、好ましくは4〜24、より好ましくは12〜22、さらに好ましくは16〜20である。4未満では、成分(A)の相溶性が低下することがあり、24を超えると摩擦が高くなって、毛羽や糸切れが増加することがある。
【0018】
成分(B)を構成する脂肪酸としては、特に限定されないが、酪酸、クロトン酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、アラキジン酸、イソエイコサ酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ドコサン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、テトラコサン酸、イソテトラコサン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。
これらの中でも、合成繊維の製造工程で熱セットロール表面への処理剤の熱劣化物析出を抑制して、経時的に増加する毛羽や糸切れを抑えることができるとの観点から、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、などの炭素数C18以下の飽和脂肪酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸などの不飽和脂肪酸、イソセチル酸、イソステアリン酸、イソエイコサ酸、イソドコサン酸、イソテトラコサン酸などの分岐鎖脂肪酸が好ましい。
【0019】
成分(B)を構成するポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロックポリマー、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのランダムポリマー等が挙げられる。
成分(B)を構成するポリアルキレングリコールの重量平均分子量としては、本願効果を発揮し易い観点から、100〜1000が好ましく、200〜900がより好ましく、300〜800がさらに好ましい。なお、本発明における重量平均分子量は、東ソー(株)製高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、試料濃度3mg/ccで、昭和電工(株)製分離カラムKF−402HQ、KF−403HQに注入し、示差屈折率検出器で測定されたピークより算出した。
【0020】
成分(B)の重量平均分子量としては、本願効果を発揮し易い観点から、300〜1650が好ましく、400〜1500がより好ましく、500〜1350がさらに好ましい。
【0021】
成分(B)としては、特に限定はされないが、例えば、PEG(300)ジラウレート、PEG(400)ジラウレート、PEG(600)ジラウレート、PPG(600)ジラウレート、PEG(200)ジオレエート、PEG(300)ジオレエート、PEG(400)ジオレエート、PEG(600)ジオレエート、PEG(200)ジイソステアレート、PEG(300)ジイソステアレート、PEG(400)ジイソステアレート、PEG(600)ジイソステアレート、PEG(300)モノラウレート、PEG(400)モノラウレート、PEG(600)モノラウレート、PEG(200)モノオレエート、PEG(200)モノリシノレート、PEG(300)モノオレエート、PEG(400)モノオレエート、PEG(600)モノオレエート、PEG(200)モノイソステアレート、PEG(300)モノイソステアレート、PEG(400)モノイソステアレート、PEG(600)モノイソステアレート、PEG(200)モノヒドロキシステアレートのポリオキシエチレン3モル付加物、エチレンオキシド4モルとプロピレンオキシド4モルとのブロックポリマーのモノオレエート、エチレンオキシド6モルとプロピレンオキシド6モルとのランダムポリマーのモノオレエート等が挙げられる。なお、PEGとはポリエチレングリコールを、PPGとはポリプロピレングリコールを意味し、括弧内の数値は重量平均分子量を意味する。
【0022】
〔平滑剤成分(C)〕
本発明の処理剤は、平滑剤成分(C)を必須に含む。平滑剤成分(C)は、上記成分(A)〜(B)と併用することにより、処理剤の平滑性を向上させて毛羽や糸切れを抑制することができる。
【0023】
本発明の処理剤に用いられる平滑剤成分(C)には、多価アルコール脂肪酸エステル(C1)、多価カルボン酸脂肪族アルコールエステル(C2)、脂肪族一価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(C3)及び含硫黄エステル化合物(C4)が挙げられる。
【0024】
多価アルコール脂肪酸エステル(C1)は、炭素数2〜6の脂肪族2価アルコール又は、炭素数3又は4の脂肪族3価アルコール又は、炭素数5の脂肪族4価アルコールと、炭素数4〜24の脂肪酸とのエステルである。また分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。
【0025】
多価アルコール脂肪酸エステル(C1)を構成する多価アルコールは、製糸性の点から、炭素数3又は4の脂肪族3価アルコール及び/又は炭素数5の脂肪族4価アルコールが好ましい。
【0026】
炭素数2〜6の脂肪族2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
炭素数3又は4の脂肪族3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
炭素数5の脂肪族4価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0027】
多価アルコール脂肪酸エステル(C1)を構成する脂肪酸(脂肪族1価カルボン酸)は、飽和であっても不飽和であってもよい。不飽和結合の数については特に限定はないが、2つ以上有する場合、酸化により劣化が進行して処理剤が増粘して平滑性が損なわれるため、1つが好ましい。脂肪酸の炭素数としては、オリゴマーの処理剤への溶解度の向上によりオリゴマーの析出が抑制されるとの観点から、8〜24が好ましく、10〜20がより好ましく、12〜18がさらに好ましい。脂肪酸は、1種又は2種以上を使用してもよく、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を併用してもよい。
【0028】
脂肪酸としては、酪酸、クロトン酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、イソエイコサ酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ドコサン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、テトラコサン酸、イソテトラコサン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。
これらの中でも、オリゴマーの処理剤への溶解度の向上によりオリゴマーの析出が抑制されるとの観点から、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸などの炭素数C16以下の飽和脂肪酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸などの不飽和脂肪酸、イソセチル酸、イソステアリン酸、イソエイコサ酸、イソドコサン酸、イソテトラコサン酸などの分岐鎖脂肪酸が好ましい。
【0029】
多価アルコール脂肪酸エステル(C1)の酸価は、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。多価アルコールエステル平滑剤(C1)の酸価が10超の場合、熱処理時に多量の発煙が発生したり、臭気が発生したりして、使用環境を悪化する場合がある。なお、本発明での酸価は、JIS K−0070に基づき測定した。
【0030】
多価アルコール脂肪酸エステル(C1)の水酸基価は、0.1〜25が好ましく、0.5〜23がより好ましく、1.0〜20がさらに好ましい。多価アルコール脂肪酸エステル(C1)の水酸基価が0.1未満の場合、エステルを得るのは困難な場合がある。一方、多価アルコールエステル平滑剤(C1)の水酸基価が25超の場合、オリゴマーの処理剤への溶解度の向上によるオリゴマーの析出抑制効果が不足する場合がある。なお、本発明での水酸基価は、JIS K−0070に基づき測定した。
【0031】
多価アルコール脂肪酸エステル(C1)の重量平均分子量は、500〜1500であり、500〜1200が好ましく、500〜700がより好ましい。該重量平均分子量が500未満の場合、油膜強度が不足し、毛羽が増加したり、熱処理時の発煙が増加したりする。一方、該重量平均分子量が1500超の場合、平滑性が不足して毛羽が多発する。なお、本発明における重量平均分子量は、東ソー(株)製高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、試料濃度3mg/ccで、昭和電工(株)製分離カラムKF−402HQ、KF−403HQに注入し、示差屈折率検出器で測定されたピークより算出した。
【0032】
多価アルコール脂肪酸エステル(C1)としては、例えば、トリメチロールプロパントリカプリレート、トリメチロールプロパントリカプリナート、トリメチロールプロパントリラウレート、トリメチロールプロパントリオレエート、トリメチロールプロパン(ラウレート、ミリスチレート、パルミテート)、トリメチロールプロパン(ラウレート、ミリスチレート、オレエート)、トリメチロールプロパン(トリパーム核脂肪酸エステル)、トリメチロールプロパン(トリヤシ脂肪酸エステル)、トリメチロールプロパンジカプリレート、トリメチロールプロパンジカプリナート、トリメチロールプロパンジラウレート、トリメチロールプロパンジオレエート、トリメチロールプロパン(ラウレート、ミリスチレート)、トリメチロールプロパン(ラウレート、オレエート)、トリメチロールプロパン(ミリスチレート、オレエート)、トリメチロールプロパン(ジパーム核脂肪酸エステル)、トリメチロールプロパン(ジヤシ脂肪酸エステル)、ヤシ油、菜種油、パーム油、グリセリントリラウレート、グリセリントリオレエート、グリセリントリイソステアレート、グリセリンジオレエート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタン(ラウレート、ミリスチレート、オレエート)、ソルビタンジラウレート、ソルビタンモノオレエート、ペンタエリスリトールテトラカプリレート、ペンタエリスリトールテトラカプリナート、ペンタエリスリトールテトララウレート、エリスリトールテトララウレート、ペンタエリスリトール(テトラパーム核脂肪酸エステル)、ペンタエリスリトール(テトラヤシ脂肪酸エステル)、エリスリトールトリオレエート、エリスリトールジパルミテート、1,6ヘキサンジオールジオレエート等が挙げられる。
【0033】
多価アルコール脂肪酸エステル(C1)は一般的に市販されている脂肪族多価アルコールと脂肪酸を用いて、公知の方法で合成し得られたものを使用してもよい。又、天然の果実、種子又は花など天然より得られる天然エステルであって、多価アルコールエステル平滑剤(C1)の構成を満足する天然エステルをそのまま使用したり、必要に応じて、天然エステルを公知の方法で精製したり、更に精製したエステルを公知の方法で融点差を利用して分離、再精製を行ったエステルを用いたりしてもよい。
【0034】
多価カルボン酸脂肪族アルコールエステル(C2)は、炭素数2〜6の脂肪族2価カルボン酸と炭素数4〜24の脂肪族アルコールとのエステルであり、また分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。エステル化合物(C2)は1種又は2種以上を使用できる。
【0035】
多価カルボン酸脂肪族アルコールエステル(C2)を構成する炭素数4〜24の脂肪族アルコールは、特に限定はなく、1種又は2種以上を使用できる。炭素数4〜24の脂肪族アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。不飽和結合の数については特に限定はないが、2つ以上有する場合、酸化により劣化が進行して処理剤が増粘して潤滑性が損なわれるため、1つが好ましい。炭素数4〜24の脂肪族アルコールの炭素数としては、平滑性と油膜強度の観点から、8〜24が好ましく、14〜24がより好ましく、18〜22がさらに好ましい。炭素数4〜24の脂肪族アルコールは、1種又は2種以上を使用してもよく、飽和脂肪族一価アルコールと不飽和脂肪族1価アルコールを併用してもよい。
【0036】
前記脂肪族アルコールとしては、ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ミリストレイルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、アラキジルアルコール、イソイコサニルアルコール、エイコセノイルアルコール、ベヘニルアルコール、イソドコサニルアルコール、エルカニルアルコール、リグノセリニルアルコール、イソテトラコサニルアルコール、ネルボニルアルコール、セロチニルアルコール、モンタニルアルコール、メリシニルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、本願効果が得られ易い観点から、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ミリストレイルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、アラキジルアルコール、イソイコサニルアルコール、エイコセノイルアルコール、ベヘニルアルコール、イソドコサニルアルコール、エルカニルアルコール、リグノセリニルアルコール、イソテトラドコサニルアルコール、ネルボニルアルコールが好ましく、ミリストレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、エイコセノイルアルコール、エルカニルアルコール、ネルボニルアルコールがより好ましく、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、エイコセノイルアルコール、エルカニルアルコールがさらに好ましい。
【0037】
多価カルボン酸脂肪族アルコールエステル(C2)を構成する脂肪族多価カルボン酸は、2価以上であれば特に限定はなく、1種又は2種以上を使用できる。本発明で用いる脂肪族多価カルボン酸は、チオジプロピオン酸等の含硫黄多価カルボン酸を含まない。脂肪族多価カルボン酸の価数は、2価が好ましい。同様に、分子内にヒドロキシル基を含まないことが好ましい。
脂肪族多価カルボン酸としては、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、アコニット酸、オキサロ酢酸、オキサロコハク酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。これらの中でも、アコニット酸、オキサロ酢酸、オキサロコハク酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸が好ましく、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸がより好ましい。
【0038】
多価カルボン酸脂肪族アルコールエステル(C2)としては、例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジオレイル、アジピン酸次イソセチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジラウリル、セバシン酸ジオレイル、セバシン酸ジイソセチル等を挙げることができる。
【0039】
多価カルボン酸脂肪族アルコールエステル(C2)は、分子内に2個以上のエステル結合を有する化合物である。多価カルボン酸脂肪族アルコールエステル(C2)のヨウ素価については、特に限定はない。
【0040】
多価カルボン酸脂肪族アルコールエステル(C2)の重量平均分子量は、500〜1500であり、500〜1200が好ましく、500〜700がより好ましい。該重量平均分子量が500未満の場合、油膜強度が不足し、毛羽が増加したり、熱処理時の発煙が増加したりする。一方、該重量平均分子量が1500超の場合、融点が高くなり、製織や編み工程でのスカム発生の原因となり、品位が劣る。
【0041】
多価カルボン酸脂肪族アルコールエステル(C2)、は一般的に市販されている脂肪族一価アルコールと脂肪族多価カルボン酸を用いて、公知の方法で合成し、得ることができる。
【0042】
脂肪族一価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(C3)は、炭素数4〜24の一価脂肪酸と炭素数4〜24の一価脂肪族アルコールとのエステルである。
炭素数4〜24までの脂肪酸としては、上記エステル(C1)のものと同じものが挙げられる。炭素数4〜24の一価脂肪族アルコールとしては、上記エステル(C2)のものと同じものが挙げられる。
【0043】
(含硫黄エステル化合物(C4))
含硫黄エステル化合物は、チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのジエステル化合物及びチオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのモノエステル化合物から選ばれる少なくとも1種である。
含硫黄エステル化合物は、抗酸化能を有する成分である。該含硫黄エステル化合物を使用することで、処理剤の耐熱性を高めることができる。含硫黄エステル化合物は、1種又は2種以上を使用できる。該含硫黄エステル化合物を構成するチオジプロピオン酸の分子量は、500〜1500であり、500〜1200が好ましく、600〜800がより好ましい。該含硫黄エステル化合物を構成する脂肪族アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。また、脂肪族アルコールは、直鎖状であっても分岐構造を有していてもよいが、分岐構造を有するものが好ましい。脂肪族アルコールの炭素数は8〜24が好ましく、12〜24がより好ましく、16〜24がさらに好ましい。脂肪族アルコールとしては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソセチルアルコール、オレイルアルコールおよびイソステアリルアルコールなどが挙げられ、これらの中でもオレイルアルコール、イソステアリルアルコールが好ましい。
含硫黄エステル化合物は、チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのジエステル化合物(本段落において、単にジエステルという)とチオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのモノエステル化合物(本段落において、単にモノエステルという)の混合物であってもよい。その際のジエステルとモノエステルのモル比は、100/0〜70/30が好ましく、100/0〜75/25がより好ましく、100/0〜80/20がさらに好ましい。
【0044】
〔成分(D)〕
成分(D)は、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルである。成分(D)は、他の成分(A)、(B)及び(C)との併用により、処理剤の集束性を向上させる役割を発揮する成分である。集束性を向上させることにより、熱セットロールでの糸割れを抑制し、毛羽を低減させ、糸品位の向上を図る成分である。
成分(D)が処理剤の集束性を向上させる役割を発揮する理由としては定かではないが、成分(D)の分子構造が3価以上の多価アルコールを骨格としているため、嵩高の構造をとっているため、3次元的な分子間相互作用を強く有するために、繊維同士を集める効果が発揮されると推定している。
【0045】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールに対して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドが付加した化合物と、脂肪酸とがエステル結合した構造を持つ化合物である。
多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでも、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトールが好ましい。
【0046】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、イソテトラコサン酸等が挙げられる。
【0047】
アルキレンオキシドの付加モル数としては、3〜100が好ましく、5〜70がより好ましく、10〜50がさらに好ましい。また、アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの重量平均分子量は、300〜7000が好ましく、500〜5000がより好ましく、700〜3000がさらに好ましい。該分子量が300未満の場合、熱処理工程で発煙が発生し、環境を悪化する場合がある。また、断糸の発生を低減できないことがある。一方、該分子量が7000を超えると、処理剤の摩擦が高くなり、毛羽、断糸の発生を低減できないばかりか、かえって悪化することがある。
【0048】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルとしては、グリセリンエチレンオキシド付加物モノラウレート、グリセリンエチレンオキシド付加物ジラウレート、グリセリンエチレンオキシド付加物トリラウレート、ひまし油エチレンオキシド付加物、硬化ひまし油エチレンオキシド付加物、硬化ひまし油エチレンオキシド付加物トリオレエート、硬化ひまし油エチレンオキシド付加物2モルとマレイン酸とのエステル化物の残存水酸基をステアリン酸で封鎖した化合物、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物トリラウレート、ソルビタンエチレンオキシド付加物モノオレエート、ソルビタンエチレンオキシド付加物ジオレエート、ソルビタンエチレンオキシド付加物トリオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物モノオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物ジオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物トリオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物トリラウレート、ショ糖エチレンオキシド付加物トリラウレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
〔成分(E)〕
成分(E)は、脂肪族アルコールのポリオキシアルキレン付加物である。成分(E)は、他の成分(A)、(B)及び(C)との併用により、処理剤のマルチフィラメント繊維への浸透性を向上させる役割を発揮する成分である。浸透性を向上させることにより、熱セットロールでの糸揺れを抑制し、毛羽を低減させ、糸品位の向上を図る成分である。
成分(E)が処理剤の浸透性を向上させる役割を発揮する理由としては定かではないが、成分(E)が、直線状の分子構造で分子配向が容易であるため、繊維表面への吸着配向が速いためと推定している。
成分(E)を構成する脂肪族アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。
不飽和結合の数については特に限定はないが、2つ以上有する場合、酸化により劣化が進行して処理剤が増粘して潤滑性が損なわれるため、1つが好ましい。脂肪族アルコールの炭素数としては、平滑性と油膜強度の観点から、8〜24が好ましく、14〜24がより好ましく、18〜22がさらに好ましい。脂肪族アルコールは、1種又は2種以上を使用してもよく、飽和脂肪族一価アルコールと不飽和脂肪族1価アルコールを併用してもよい。
【0050】
成分(E)を構成するオキシアルキレン基としては、本願効果を発揮し易い観点から、オキシエチレン及び/又はオキシプロピレンが好ましく、オキシエチレン単独がより好ましい。
ポリオキシアルキレン基の付加モル数としては、特に限定はされないが、1〜30モルが好ましく、2〜12モルがより好ましく、3〜9モルがさらに好ましい。ポリオキシアルキレンが付加されていない場合や30モルを超える場合、熱セットロール表面上への熱劣化物の蓄積が増加することがある。
【0051】
前記脂肪族アルコールとしては、ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ミリストレイルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、アラキジルアルコール、イソイコサニルアルコール、エイコセノイルアルコール、ベヘニルアルコール、イソドコサニルアルコール、エルカニルアルコール、リグノセリニルアルコール、イソテトラコサニルアルコール、ネルボニルアルコール、セロチニルアルコール、モンタニルアルコール、メリシニルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、本願効果が得られ易い観点から、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ミリストレイルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、アラキジルアルコール、イソイコサニルアルコール、エイコセノイルアルコール、ベヘニルアルコール、イソドコサニルアルコール、エルカニルアルコール、リグノセリニルアルコール、イソテトラドコサニルアルコール、ネルボニルアルコールが好ましく、ミリストレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、エイコセノイルアルコール、エルカニルアルコール、ネルボニルアルコールがより好ましく、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、エイコセノイルアルコール、エルカニルアルコールがさらに好ましい。
【0052】
〔合成繊維用処理剤〕
本発明の合成繊維用処理剤は、分子中にベンゼン環を3つ以上有する芳香族アルキルフェノールポリオキシアルキレン付加物である成分(A)と、ポリオキシアルキレングリコールの脂肪酸エステル成分(B)と平滑剤成分(C)を含む合成繊維用処理剤であって、
前記処理剤の不揮発分に占める、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計の重量割合が1〜40重量%であり、前記成分(C)の重量割合が40〜80重量%であり、前記成分(C)の重量平均分子量が500〜1500である、合成繊維用処理剤である。
前記成分(A)、前記成分(B)及び前記成分(C)に加え、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル成分(D)及び脂肪族アルコールのポリオキシアルキレン付加物である成分(E)から選ばれる少なくとも1種を含むと、熱セットロールでの糸割れや糸揺れを抑制する観点から好ましく、
前記成分(D)及び前記成分(E)の重量割合が1〜40重量%であると好ましい。
【0053】
前記処理剤の不揮発分に占める、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計の重量割合は1〜50重量%であり、6〜44重量%が好ましく、10〜38重量%がより好ましく、14〜32重量%がさらに好ましく、15〜30重量%が特に好ましい。1重量%未満では、成分(A)の量が少なすぎるために合成繊維の製造工程で熱セットロール表面への処理剤の熱劣化物析出を抑制することができない。一方、50重量%では、成分(B)の量が多すぎるために合成繊維の製造工程で熱セットロール表面への処理剤の熱劣化物析出を抑制することができない。
【0054】
前記処理剤の不揮発分に占める前記成分(A)の重量割合は0.9〜25重量%が好ましく、3〜22重量%がより好ましく、5〜19重量%がさらに好ましく、7〜16重量%が特に好ましい。0.9重量%未満では、成分(A)の量が少なすぎるために合成繊維の製造工程で熱セットロール表面への処理剤の熱劣化物析出を抑制することができないことがある。一方、25重量%以上では、成分(A)の後述成分(C)への相溶性が低下して実用に供することができないことがある。
【0055】
前記処理剤の不揮発分に占める前記成分(B)の重量割合は0.1〜25重量%が好ましく、3〜22重量%がより好ましく、5〜19重量%がさらに好ましく、7〜16重量%が特に好ましい。0.1重量%未満では、B成分の量が少なすぎるため、成分(A)の後述成分(C)への相溶性が低下して実用に供することができないことがある。一方、25重量%以上では、成分(B)の量が多すぎるために合成繊維の製造工程で熱セットロール表面への処理剤の熱劣化物析出を抑制することができないことがある。
【0056】
前記処理剤の不揮発分に占める前記成分(C)の重量割合は35〜85重量%が好ましく、39〜80重量%がより好ましく、43〜75重量%がさらに好ましく、47〜70重量%が特に好ましい。35重量%未満では、平滑性が不足するため、製造された合成繊維の毛羽が増加して糸品位が低下することがある。一方、85重量%以上では、集束性が不足するため、製造された合成繊維の毛羽が増加して糸品位が低下することがある。
【0057】
前記処理剤の不揮発分に占める前記成分(D)の重量割合は1〜40重量%が好ましく、3〜35重量%がより好ましく、5〜30重量%がさらに好ましく、7〜25重量%が特に好ましい。1重量%未満では、成分(D)の量が少なすぎるために集束性向上効果が発揮されないため、熱セットロールでの糸割れを抑制することによる毛羽の低減が見られず、糸品位の向上が認められない場合がある。一方、40重量%以上では、成分(D)の量が多すぎるために合成繊維の製造工程で熱セットロール表面への処理剤の熱劣化物析出を抑制することができないことがある。
【0058】
前記処理剤の不揮発分に占める前記成分(E)の重量割合は1〜40重量%が好ましく、3〜35重量%がより好ましく、5〜30重量%がさらに好ましく、7〜25重量%が特に好ましい。1重量%未満では、成分(E)の量が少なすぎるために浸透性向上効果が発揮されないため、処理剤の均一付着性向上による熱セットロールでの糸揺れを抑制することによる毛羽の低減が見られず、製造された合成繊維の毛羽を抑制して糸品位の向上が認められない場合がある。一方、40重量%以上では、成分(D)の量が多すぎるために合成繊維の製造工程で熱セットロール表面への処理剤の熱劣化物析出を抑制することができないことがある。
【0059】
(その他成分)
本発明の合成繊維用処理剤は、処理剤のエマルション化、繊維への付着性補助、繊維からの処理剤の水洗、繊維への制電性、潤滑性、集束性の付与等のために、有機アミン化合物(F)、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤を含有していてもよい。
【0060】
有機アミン化合物及び/又はその誘導体(F)の有機アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等の、脂肪族アミン化合物、2)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の、アルカノールアミン化合物、3)N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ブチルアミン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)オクチルアミン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ラウリルアミン等の、脂肪族アルカノールアミン化合物、4)ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン等の、脂肪族アミン化合物のアルキレンオキサイド付加物、5)アニリン、2−ナフチルアミン、ベンジルアミン等の、芳香族アミン化合物、6)ピリジン、モルホリン、ピペラジン等の、複素環アミン化合物が挙げられるが、なかでもポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン等の炭素数6〜22の脂肪族アミン化合物及び/又は炭素数6〜22の脂肪族アミン1モルに対してアルキレンオキサイドを1〜50モルの割合で付加させた化合物が好ましい。
有機アミン誘導体としては、特に限定されないが、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどの両性界面活性剤、パルミチン酸ジエタノールアミドなどの炭素数6〜22の脂肪酸と脂肪族アルカノールアミンとのアミド化合物のほか、クエン酸やリンゴ酸などのαーヒドロキシ多価カルボン酸と炭素数6〜22脂肪族アルコールのポリオキシアルキレン付加物とのエステル化合物や、炭素数6〜22の脂肪酸などと、前述の有機アミン化合物との塩などが挙げられる。
【0061】
アニオン性界面活性剤としては、有機脂肪酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸エステル塩及び有機リン酸エステル塩から選ばれる一つ又は二つ以上が挙げられ、さらに具体的には、オクタン酸カリウム塩、オレイン酸カリウム塩、アルケニルコハク酸カリウム塩、ペンタデシルスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸エステルナトリウム塩、オクチルリン酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルリン酸エステルカリウム塩、オレイルリン酸エステルとトリエタノールアミンとの塩、ポリオキシエチレンオレイルリン酸エステルとポリオキシエチレンラウリルアミンとの塩等が挙げられる。
【0062】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、耐熱性を付与するため、さらに酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系、チオ系、ホスファイト系等の公知のものが挙げられる。酸化防止剤は1種又は2種以上を使用できる。酸化防止剤を含有する場合の処理剤の不揮発分に占める酸化防止剤の重量割合は、特に限定はないが、0.1〜5重量%が好ましく、0.1〜3重量%が好ましい。
【0063】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、更に原液安定剤(例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)を含有してもよい。処理剤に占める原液安定剤の重量割合は、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がさらに好ましい。
【0064】
本発明の合成繊維用処理剤は、不揮発分のみからなる前述の成分で構成されていてもよく、不揮発分と原液安定剤とから構成されてもよく、不揮発分を低粘度鉱物油で希釈したものでもよく、水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョンであってもよい。本発明の合成繊維用処理剤が水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョンの場合、不揮発分の濃度は5〜35重量%が好ましく、6〜30重量%がより好ましい。
【0065】
本発明の合成繊維用処理剤の製造方法については、特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。合成繊維用処理剤は、構成する前記の各成分を任意又は特定の順番で添加混合することによって製造される。
【0066】
[合成繊維フィラメント糸条の製造方法及び繊維構造物]
本発明の合成繊維フィラメント糸条の製造方法は、原料合成繊維フィラメント糸条に、本発明の合成繊維用処理剤を付与する工程を含むものである。発明の製造方法によれば、スカムや糸切れの発生を低減することができ、糸品位に優れた合成繊維フィラメント糸条を得ることができる。なお、本発明における原料合成繊維フィラメント糸条とは、処理剤が付与されていない合成繊維フィラメント糸条をいう。
【0067】
合成繊維用処理剤を付与する工程としては、特に限定はなく、公知の方法を採用することできる。通常、原料合成繊維フィラメント糸条の紡糸工程で合成繊維用処理剤を付与する。処理剤が付与された後、熱ローラーにより延伸、熱セットが行われ、巻き取られる。このように、処理剤を付与した後、一旦巻き取れられることなく熱延伸する工程を有する場合に、本発明の合成繊維用処理剤は好適に使用することができる。熱延伸する際の温度として一例をあげると、ポリエステル、ナイロンでは、産業資材用であれば190〜260℃、衣料用であれば110〜220℃が想定される。
【0068】
原料合成繊維フィラメント糸条に付与する際の合成繊維用処理剤は、前述したように、不揮発分のみからなる処理剤、不揮発分を低粘度鉱物油で希釈した処理剤、又は水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョン処理剤等が挙げられる。付与方法としては、特に限定されるものではないが、ガイド給油、ローラー給油、ディップ給油、スプレー給油等が挙げられる。これらの中ででも、付与量の管理のしやすさから、ガイド給油、ローラー給油が好ましい。
【0069】
合成繊維用処理剤の不揮発分の付与量は、原料合成繊維フィラメント糸条に対して、0.05〜5重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましく、0.1〜2重量%がさらに好ましい。0.05重量%未満の場合、本発明の効果を発揮することができない場合がある。一方、5重量%超の場合、処理剤の不揮発分が糸道に脱落しやすく、本発明の効果を発揮することができない場合がある。
【0070】
(原料)合成繊維フィラメント糸条としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維のフィラメント糸条が挙げられる。本発明の合成繊維用処理剤は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維に適している。ポリエステル繊維としては、エチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PET)、トリメチレンエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PTT)、ブチレンエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PBT)、乳酸を主たる構成単位とするポリエステル(PLA)等が挙げられ、ポリアミド繊維としては、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられ、ポリオレフィン繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。合成繊維フィラメント糸条の製造方法としては、特に限定はなく、公知の手法を採用できる。
【0071】
(繊維構造物)
本発明の繊維構造物は、上記の本発明の製造方法で得られた合成繊維フィラメント糸条を含むものである。具体的には、本発明の合成繊維用処理剤が付与された合成繊維フィラメント糸条を用いてウォータージェット織機、エアジェット織機、または、レピア織機で織られた織物、および丸編み機、経編み機、または、緯編み機で編まれた編物である。また繊維構造物の用途としては、タイヤコード、シートベルト、エアバッグ、魚網、ロープ等の産業資材、衣料用等が挙げられる。織物、編物を製造する方法としては、特に限定はなく、公知の手法を採用できる。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例により本発明を説明する、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、文中及び表中の「%」は「重量%」を、意味する。
【0073】
[実施例1〜15、比較例1〜13]
表1及び2に記載の下記成分を混合して、均一になるまで攪拌し、処理剤を調製した。調製した各処理剤を用いて、下記の方法でオリゴマー脱落防止性及び加熱劣化物の除去性を評価した。その結果を表1及び2に示す。
A−1 POE(5)トリスチレン化フェノール
A−2 POE(5)ジスチレン化フェノール
a´−3 POE(5)モノスチレン化フェノール
A−4 POE(10)トリベンジルフェノール
A−5 POE(10)ジベンジルフェノール
a´−6 POE(10)モノベンジルフェノール
(ここで、a´成分は、A成分に該当しないことを意味する。)
ar−1 POE(8)ノニルフェノール
ar−2 POE(16)ジベンジルフェノールラウレート
ar−3 2,4−ビス(n−ドデシルチオメチル)−6−メチルフェノール
ar−4 2―エチルヘキサノール(メルカプトベンゾチアゾール)プロピオン酸エステル
ar−5 2―エチルヘキサノール(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル
ar−6 メタノールEO8モル付加物(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル
ar−7 POE(3)ビスフェノールAジラウレート
ar−8 トリメリット酸トリオクチル
B−1 PEG600ジオレエート
B−2 PEG600モノオレエート
B−3 エチレンオキシド6モルとプロピレンオキシド6モルとのランダムポリマーのモノステアレート
B−4 PEG200モノオレエート
B−5 PEG(200)モノヒドロキシステアレートのポリオキシエチレン3モル付加物
C−1 グリセリンジオレエートモノパルミテート(重量平均分子量:815)
C−2 トリメチロールプロパンジラウレートモノオレエート(重量平均分子量:720)
C−3 1,6−ヘキサンジオール・ジオレエート(重量平均分子量:615)
C−4 ペンタエリスリトール・テトラカプリレート(重量平均分子量:580)
C−5 ジオレイルチオジプロピオネート(重量平均分子量:680)
C−6 菜種油
C−7 2−デシルテトラデシルオレエート
C−8 ラウリルアルコールEO3モル付加物のチオジプロピオン酸ジエステル
C−9 ラウリルオレエート
C−10 ジペンタエリスリトールヘキサヘキシルデカネート
D−1 POE(20)硬化ヒマシ油
D−2 POE(20)硬化ヒマシ油トリオレエート
D−3 POE(20)グリセリントリオレエート
D−4 POE(20)ソルビタントリオレエート
D−5 POE(25)トリメチロールプロパントリラウレート
D−6 POE(25)硬化ひまし油エーテル2モルとマレイン酸1モルのエステルの末端水酸基をステアリン酸で封鎖した化合物
E−1 POE(8)オレイルエーテル
E−2 POP(12)POE(12)2−エチルヘキシルエーテル(ブロック)
E−3 POP(14)POE(12)ステアリルエーテル(ランダム)
E−4 POE(7)オレイルエーテル
E−5 POE(11)POP(8)ノルマルブチルエーテル[ランダム]
E−6 POE(42)POP(32)ノルマルブチルエーテル[ランダム]
E−7 POE(12.5)POP(15)2−エチルヘキシルエーテル[ブロック]
F−1 オレイルホスフェートジブチルエタノールアミン塩
F−2 PO2EO2−2エチルヘキシルエーテル・クエン酸エステル・ジブチルエタノールアミン塩
F−3 N,N−ジメチルラウリル=N−アミンオキサイド
F−4 POE(7)ラウリルアミノエーテル・オレイン酸塩
F−5 POE(15)牛脂アルキルアミノエーテル
G−1 アルカンスルホネートソーダ塩
G−2 ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]
G−3 ソルビタンモノステアレート
G−4 ソルビタンモノオレエート
G−5 ドデセニルコハク酸カリウム塩
G−6 オクタン酸カリウム塩
G−7 1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸
G−8 ビス[2−メチル−4−(3−n−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィド
G−9 オレイルアルコールリン酸エステルカリウム塩
G−10 ポリジメチルシロキサン[粘度20mm2/s(25℃)]
G−11 POP(4)POE(4)ラウリルエーテルラウレート
G−12 ジソジウム−2−エチルヘキシルサクシネート
G−13 鉱物油(350mPa・s、25℃)
【0074】
(糸品位評価方法)
繊維オリゴマーの脱落防止性の評価は、固有粘度1.0のポリエチレンテレフタレートチップを常法により乾燥した後、エクストルーダー型紡糸機を用いて295℃にて溶融紡糸した。紡糸口金から吐出し、冷却固化した後の走行糸条に、表1〜3に示した処理剤の15重量%濃度水性エマルションをガイド給油法にて給油し、処理剤として0.8%付着させた給油糸として、これを80℃の引き取りロールで500m/分の速度で引き取った後、引き続き110℃の第1延伸ロール、130℃の第2延伸ロール、255℃の第3延伸ロール、255℃の第4延伸ロール、255℃の第5伸ロール、150℃の弛緩ロールを介して全延伸倍率5.0倍となる条件で延伸して、1500デニール196フィラメントのポリエステル繊維を得た。24時間連続運転後の弛緩ロールに脱落したオリゴマー量(mg)を溶剤で拭き取り秤量した。尚、拭き取った弛緩ロール脱落物は、赤外吸収スペクトルによる特性吸収及び融点からポリエステルの環状オリゴマーであることを確認した。
糸品位評価方法は、上記評価時に、弛緩ロールと巻取機の間の糸道に光学式毛羽検知器を取り付け、9kgのポリエステル繊維を巻き取る間に検出される毛羽の検知数が0回の場合◎、1回の場合○、2回〜4回の場合△、5回以上×とした。
【0075】
繊維表面のオリゴマー付着量の測定は、メタノールを用いて繊維1gの繊維表面オリゴマーを抽出し、抽出液を乾燥した後、固形物をクロロホルムに溶解して液体クロマトグラフィーを用い、ポリエステルの3量体および4量体の量を測定し、それを付着量とし、次の4段階で評価した。◎及び○を合格とした。
◎ :オリゴマー付着量が100ppm以下
○ :オリゴマー付着量が100ppm超300ppm以下
△ :オリゴマー付着量が300ppm超500ppm以下
× :オリゴマー付着量が500ppm超
【0076】
(目視によるオリゴマー付着量の評価方法)
また、目視による判定方法は、走査型電子顕微鏡を用いて撮影し、繊維の表面に存在するオリゴマーの付着状況を確認し、次の4段階で評価し、◎及び○を合格とした。
◎:繊維表面にオリゴマーは全くない
○:繊維表面に僅かに付着している
△:繊維表面に疎らに付着している
×:繊維表面全体に付着している
【0077】
(加熱劣化物の除去性評価法)
処理剤加熱劣化物の除去性評価法は、調製した処理剤を市販のナイロンエアバッグ糸(462dtx)に処理剤(純分)として10.0重量%となるように付着させた試験糸を、温度20℃、湿度65%の雰囲気下で、温度255℃の摩擦体(表面梨地クロムメッキ、直径5cm)に初期荷重300g、糸速度4.0m/min、接触角180°で8時間接触させ、接触後の摩擦体に堆積した加熱劣化物の粒子径及び個数を走査電子顕微鏡(SEM)にて測定し、次の基準で判定した。なお、測定面積は7mm2とした。値が低い程、処理剤劣化物の除去性が良好であり、紡糸、延伸工程で毛羽が発生し難く、掃除周期が延長でき生産性が向上することを示す。◎及び○を合格とした。
なお、処理剤加熱劣化物の除去性評価は、オリゴマー脱落評価の一環である。市販のナイロンエアバッグ糸を洗浄して付着しているオリゴマーを除去すると、本評価後の処理剤の加熱劣化物が減少することから、延伸工程での加熱による合成繊維からのオリゴマーの生成量が多いほど、摩擦体の合成繊維との接触面上へのオリゴマーの析出及び脱落が多くなり、脱落オリゴマーが核となり処理剤の加熱劣化物が増加すると考えられる。そのため、処理剤加熱劣化物の除去性評価は、オリゴマー脱落の抑制と関連する。
[判定基準]
◎ : 平均粒子径が5μm未満かつ個数が99個以下
○ : 平均粒子径が5μm以上10μm未満かつ個数が99個以下
△ : 平均粒子径が10μm以上30μm未満かつ個数が99個以下
× : 平均粒子径が30μm以上または個数が100個以上
【0078】
(張力上昇の評価方法)
張力上昇の評価は、上記の処理剤加熱劣化物の除去性評価を行った際、開始直後30分間の平均張力値に対する終了前30分間の平均張力値の増加分により判定した。張力上昇は低いほど良好。
[判定基準]
◎ : 張力上昇が10%未満
○ : 張力上昇が10%以上20%未満
× : 張力上昇が20%以上
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表1及び2から分かるように、実施例1〜15の合成繊維用処理剤は、分子中にベンゼン環を3つ以上有する芳香族アルキルフェノールポリオキシアルキレン付加物である成分(A)と、ポリオキシアルキレングリコールの脂肪酸エステル成分(B)と、平滑剤成分(C)とを含む合成繊維用処理剤であって、前記処理剤の不揮発分に占める、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計の重量割合が1〜50重量%、前記成分(C)の重量割合が35〜85重量%であり、前記成分(C)の重量平均分子量が500〜1500を充足しているため、合成繊維の製造工程で熱セットロール表面への処理剤の熱劣化物析出を抑制して、経時的に増加する毛羽や糸切れを抑えることができている。
一方、分子中にベンゼン環を3つ以上有する芳香族アルキルフェノールポリオキシアルキレン付加物である成分(A)がない場合(比較例1〜10)、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計の重量割合が1〜50重量%の範囲にない場合(比較例11)、前記成分(C)の重量割合が35〜85重量%の範囲にない場合(比較例12及び13)には、本願の課題が解決できていない。