特開2017-137910(P2017-137910A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 武蔵精密工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2017137910-ベルト式無段変速機 図000003
  • 特開2017137910-ベルト式無段変速機 図000004
  • 特開2017137910-ベルト式無段変速機 図000005
  • 特開2017137910-ベルト式無段変速機 図000006
  • 特開2017137910-ベルト式無段変速機 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-137910(P2017-137910A)
(43)【公開日】2017年8月10日
(54)【発明の名称】ベルト式無段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 9/18 20060101AFI20170714BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20170714BHJP
   F16D 3/46 20060101ALI20170714BHJP
   F16C 25/04 20060101ALI20170714BHJP
【FI】
   F16H9/18 Z
   F16H25/20 B
   F16H25/20 E
   F16D3/46 A
   F16C25/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-17772(P2016-17772)
(22)【出願日】2016年2月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 学
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃尚
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭宏
【テーマコード(参考)】
3J012
3J050
3J062
【Fターム(参考)】
3J012AB01
3J012BB03
3J012DB02
3J012FB01
3J012FB04
3J050AA02
3J050BA03
3J050BB04
3J050CD06
3J050DA03
3J062AA09
3J062AB12
3J062AB21
3J062AB34
3J062AC07
3J062BA40
3J062CD02
3J062CD23
3J062CD45
3J062CG32
3J062CG37
3J062CG83
(57)【要約】
【課題】モータの回転力をねじ軸の推力に的確に変換してプーリを駆動することができるベルト式無段変速機を提供する。
【解決手段】
ボールジョイント25は、ねじ軸19に設けられるボールハウジング25と、このボールハウジング25に収容されるシート部材26と、このシート部材26により揺動可能に保持されるボール軸受27と、アーム13から延びてボール軸受27に嵌入される連結ピン28とを有し、連結ピン28が貫通する通し孔30をボールハウジング25に設けると共に、この通し孔30の内周に、連結ピン28の外周面28cに当接することで、ねじ軸19の軸線X1周りの回転角度を一定角度αに規制する第1ストッパ面32を設けた。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸(2)に支持される駆動プーリ(4)と、出力軸(3)に支持される従動プーリ(5)と、それら両プーリ(4,5)に巻き掛けられるベルト(6)と、前記両プーリ(4,5)のうちの何れか一方のプーリを駆動して該プーリの溝幅を変更可能なアクチュエータ(8)と、このアクチュエータ(8)の駆動力を前記何れか一方のプーリに伝達するアーム(13)とを備え、前記アクチュエータ(8)は、モータ(18)の回転力を受けて回転するナット部材(21)と、このナット部材(21)に螺合する雄ねじ(19a)により該ナット部材(21)の回転運動を直線運動に変換して前記何れか一方のプーリを駆動するねじ軸(19)とを有し、前記アーム(13)および前記ねじ軸(19)をボールジョイント(9)を介して連結したベルト式無段変速機であって、
前記ボールジョイント(9)は、前記ねじ軸(19)に設けられるボールハウジング(25)と、このボールハウジング(25)に収容されるシート部材(26)と、このシート部材(26)により揺動可能に保持されるボール軸受(27)と、前記アーム(13)から延びて前記ボール軸受(27)に嵌入される連結ピン(28)とを有し、前記連結ピン(28)が貫通する通し孔(30)を前記ボールハウジング(25)に設けると共に、この通し孔(30)の内周に、前記連結ピン(28)の外周面(28c)に当接することで、前記ねじ軸(19)の軸線(X1)周りの回転角度を一定角度αに規制する第1ストッパ面(32)を設けたことを特徴とするベルト式無段変速機。
【請求項2】
前記第1ストッパ面(32)を、前記ボールハウジング(25)の軸線(X2)に対して傾斜して前記連結ピン(28)の外周面(28c)と線接触状態で当接する傾斜面としたことを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機。
【請求項3】
前記通し孔(30)を、前記アーム(13)と対向する側に設け、前記ボールハウジング(25)の外方側に向かって大径となるテーパ孔としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のベルト式無段変速機。
【請求項4】
前記連結ピン(28)の一端部(28a)を前記アーム(13)に固設すると共に該連結ピン(28)の他端部(28b)を前記ボール軸受(27)に設けた連結孔(27a)に抜き差し可能に嵌入し、前記連結孔(27a)への前記連結ピン(28)の非嵌入状態において、前記ボール軸受(27)と当接することで該ボール軸受(27)の揺動角度を一定角度βに規制する第2ストッパ面(34)を前記ボールハウジング(25)に設け、前記角度βを、前記通し孔(30)から前記連結ピン(28)を前記連結孔(27a)に嵌入し得る角度に設定したことを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れかに記載のベルト式無段変速機。
【請求項5】
前記角度α及び前記角度βを、α<βと設定したことを特徴とする請求項4に記載のベルト式無段変速機。
【請求項6】
前記ボール軸受(27)への前記連結ピン(28)の非嵌入状態において、前記ボールハウジング(25)と当接することで前記ねじ軸(19)の軸線(X1)周りの回転角度を一定角度γに規制する回り止め(35)を、前記アクチュエータ(8)の外殻をなすユニットケース(14)に設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載のベルト式無段変速機。
【請求項7】
前記角度α及び前記角度γを、α<γと設定したことを特徴とする請求項6に記載のベルト式無段変速機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸に支持される駆動プーリと、出力軸に支持される従動プーリと、それら両プーリに巻き掛けられるベルトと、両プーリのうちの何れか一方のプーリの溝幅を変更可能なアクチュエータとを備えるベルト式無段変速機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなベルト式無段変速機として、下記特許文献1に開示されるように、アクチュエータの駆動力をプーリに伝達するアームを備え、アーム及びアクチュエータの出力ロッドをボールジョイントを介して連結したものが既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−92100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されるアクチュエータは、モータの回転力を出力ロッドの推力に変換するために、モータの回転力を受けて回転するナット部材と、このナット部材に螺合する雄ねじにより該ナット部材の回転運動を直線運動に変換するねじ軸とを有し、このねじ軸を出力ロッドとして構成したものであると考えられるが、その場合、アームおよびねじ軸がボールジョイントを介して連結されていることに起因して、ナット部材の回転に伴いねじ軸が共回りしてしまうので、モータの回転力を的確にねじ軸の推力に変換することができず、プーリを正確に駆動することの妨げとなる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、モータの回転力をねじ軸の推力に的確に変換してプーリを駆動することができるベルト式無段変速機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、入力軸に支持される駆動プーリと、出力軸に支持される従動プーリと、それら両プーリに巻き掛けられるベルトと、前記両プーリのうちの何れか一方のプーリを駆動して該プーリの溝幅を変更可能なアクチュエータと、このアクチュエータの駆動力を前記何れか一方のプーリに伝達するアームとを備え、前記アクチュエータは、モータの回転力を受けて回転するナット部材と、このナット部材に螺合する雄ねじにより該ナット部材の回転運動を直線運動に変換して前記何れか一方のプーリを駆動するねじ軸とを有し、前記アームおよび前記ねじ軸をボールジョイントを介して連結したベルト式無段変速機であって、前記ボールジョイントは、前記ねじ軸に設けられるボールハウジングと、このボールハウジングに収容されるシート部材と、このシート部材により揺動可能に保持されるボール軸受と、前記アームから延びて前記ボール軸受に嵌入される連結ピンとを有し、前記連結ピンが貫通する通し孔を前記ボールハウジングに設けると共に、この通し孔の内周に、前記連結ピンの外周面に当接することで、前記ねじ軸の軸線周りの回転角度を一定角度αに規制する第1ストッパ面を設けたことを第1の特徴とする。
【0007】
なお、ねじ軸の軸線周りの回転角度とは、連結ピンの軸線に対するボールハウジングの軸線の回転角度を言うものとする。
【0008】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記第1ストッパ面を、前記ボールハウジングの軸線に対して傾斜して前記連結ピンの外周面と線接触状態で当接する傾斜面としたことを第2の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1または第2の特徴に加えて、前記通し孔を、前記アームと対向する側に設け、前記ボールハウジングの外方側に向かって大径となるテーパ孔としたことを第3の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第1ないし第3の特徴の何れかに加えて、前記連結ピンの一端部を前記アームに固設すると共に該連結ピンの他端部を前記ボール軸受に設けた連結孔に抜き差し可能に嵌入し、前記連結孔への前記連結ピンの非嵌入状態において、前記ボール軸受と当接することで該ボール軸受の揺動角度を一定角度βに規制する第2ストッパ面を前記ボールハウジングに設け、前記角度βを、前記通し孔から前記連結ピンを前記連結孔に嵌入し得る角度に設定したことを第4の特徴とする。
【0011】
なお、ボール軸受の揺動角度とは、ボールハウジングの軸線に対するボール軸受の軸線の揺動角度、より詳しくは、通し孔の軸線に対する連結孔の軸線の揺動角度を言うものとする。
【0012】
また本発明は、第4の特徴に加えて、前記角度α及び前記角度βを、α<βと設定したことを第5の特徴とする。
【0013】
また本発明は、第1ないし第5の特徴の何れかに加えて、前記ボール軸受への前記連結ピンの非嵌入状態において、前記ボールハウジングと当接することで前記ねじ軸の軸線周りの回転角度を一定角度γに規制する回り止めを、前記アクチュエータの外殻をなすユニットケースに設けたことを第6の特徴とする。
【0014】
また本発明は、第6の特徴に加えて、前記角度α及び前記角度γを、α<γと設定したことを第7の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の特徴によれば、アクチュエータの作動によりナット部材が回転すると、ねじ軸の回転に伴いボールハウジングも回転しようとするが、ボールハウジングの通し孔内周に設けた第1ストッパ面が連結ピンの外周面に当接してボールハウジングの回転が規制されるので、これによりねじ軸の回転が規制されてナット部材の回転に伴うねじ軸の共回りが阻止される。その結果、モータの回転力をねじ軸の推力に的確に変換してプーリを駆動することができる。さらに、第1ストッパ面と連結ピンの外周面とが当接することで、その反力が連結ピンの軸線と直交する方向に作用することになり、該反力が連結ピンの軸線方向に作用することがないので、ボール軸受からの連結ピンの抜けを防止できる。しかも、連結ピンが第1ストッパ面と当接しない範囲で揺動可能なため、アクチュエータの構成部品の製作誤差や、ミッションケースへのアクチュエータの取付誤差等を吸収でき、またプーリの振動等に起因するアームの振動を吸収して、振動騒音の発生を防ぐと共にアクチュエータの耐久性を向上させることができる。また、連結ピンの最大揺動角度が第1ストッパ面との当接により規制されるので、連結ピンからねじ軸に作用する無用な側圧分力の増加が抑えられ、ねじ軸のスムーズな動作を保証することができる。
【0016】
また本発明の第2の特徴によれば、第1ストッパ面を、ボールハウジングの軸線に対して傾斜して連結ピンの外周面と線接触状態で当接する傾斜面としたので、当接部の面圧を低く抑え、当接部の耐摩耗性を高めることができる。
【0017】
また本発明の第3の特徴によれば、通し孔を、アームと対向する側に設け、ボールハウジングの外方側に向かって大径となるテーパ孔としたので、連結ピンをボール軸受に嵌入する際、通し孔がガイドとなって、ボール軸受への連結ピンの嵌入を容易に行うことができる。
【0018】
また本発明の第4の特徴によれば、連結孔への連結ピンの非嵌入状態において、ボール軸受と当接することで該ボール軸受の揺動角度を一定角度βに規制する第2ストッパ面をボールハウジングに設け、角度βを、通し孔から連結ピンを連結孔に嵌入し得る角度に設定したので、連結孔への連結ピンの嵌入時、ボール軸受の姿勢を調整しなくても必然的に連結孔が連結ピンを受け入れ得る状態となって、連結孔への連結ピンの嵌入を容易に行うことができる。特に連結孔が目視できない状況で連結ピンを嵌入しなければならない場合には、その作業を格段に向上させることができる。
【0019】
また本発明の第5の特徴によれば、角度α及び角度βを、α<βと設定したことで、アクチュエータの作動によるナット部材の回転時には、第1ストッパ面が連結ピンに当接する以前にボール軸受が第2ストッパ面と当接することがないので、ボール軸受に無用な荷重を作用させずに済む。
【0020】
また本発明の第6の特徴によれば、ボール軸受への連結ピンの非嵌入状態において、ボールハウジングと当接することでねじ軸の軸線周りの回転角度を一定角度γに規制する回り止めをユニットケースに設けたので、ボール軸受への連結ピンの嵌入が容易になると共に、アクチュエータの搬送時等の取り扱い時に、振動等によるねじ軸の回転方向の妄動を防ぎ、その妄動によるナット部材からのねじ軸の脱落を防ぐことができる。
【0021】
また本発明の第7の特徴によれば、角度α及び角度γを、α<γと設定したことで、アクチュエータの作動によるナット部材の回転時には、第1ストッパ面が連結ピンに当接する以前にボールハウジングが回り止めと当接することがないので、ボールハウジングと回り止めとの接触による無用なねじ軸の動作の妨げとなる摩擦抵抗を発生させずに済む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態におけるベルト式無段変速機の平断面図。
図2】本発明の実施形態におけるベルト式無段変速機の側面図(図1 の2矢視図。
図3図1の矢視3部分の拡大図。
図4図3の4−4線断面図。
図5図3の4−4線断面図において、連結孔に連結ピンが嵌入される以前の状態を示す図であって、(A)はボール軸受が第2ストッパ面に当接した状態を示す図、(B)はボールハウジングの背面が回り止めに当接した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のベルト式無段変速機を自動二輪車等の車両に適用した実施形態を、添付図面に基づいて以下に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係るベルト式無段変速機の平断面図であり、図2図1の2矢視図である。
【0025】
図1図2に示すように、ベルト式無段変速機1は、図示せぬエンジンやモータ等の動力源から動力を伝達される入力軸2と、この入力軸2に平行で図示せぬ車輪に動力を伝達する出力軸3と、入力軸2に支持される駆動プーリ4と、出力軸3に支持される従動プーリ5と、それら両プーリ4,5に巻き掛けられるベルト6と、それら両プーリ4,5およびベルト6を収容するミッションケース7と、そのミッションケース7に取り付けられて駆動プーリ4の溝幅を変更可能なアクチュエータ8とを備えて、自動二輪車等の車両に搭載される。なお、アクチュエータ8は従動プーリ5の溝幅を変更するものであってもよい。
【0026】
駆動プーリ4は入力軸2に固定される駆動側固定シーブ4aと、入力軸2に支持されて入力軸2の軸線方向に移動可能な駆動側可動シーブ4bとからなっており、従動プーリ5は出力軸3に固定される従動側固定シーブ5aと、出力軸3に支持されて出力軸3の軸線方向に移動可能な従動側可動シーブ5bとからなっている。
【0027】
駆動側可動シーブ4bの背後で入力軸2にはランププレート10が固定されて、この駆動側可動シーブ4bとランププレート10との間に複数の遠心ウエイト11が保持される。いま入力軸2が回転して、その回転速度に応じた遠心力が遠心ウエイト11に作用すると、遠心ウエイト11が駆動側可動シーブ4bのカム面4cに沿って径外方へ移動し、駆動側可動シーブ4bを駆動側固定シーブ4a側へ移動させることでベルト6の巻き掛け半径が大きくなる。
【0028】
また、駆動側可動シーブ4bには、軸受12を介してアーム13が相対回転可能に連結されており、そのアーム13には、該アーム13を介して駆動側可動シーブ4bを入力軸2の軸線方向に駆動するアクチュエータ8がボールジョイント9を介して連結される。
【0029】
図1の矢視3部分の拡大図である図3を併せて参照して、アクチュエータ8は、その外殻をなす第1ケース半体14aと第2ケース半体14bとで構成されるユニットケース14を備えており、これら第1,第2ケース半体14a,14b間には扁平な収納空間15が画成される。第1ケース半体14aの第2ケース半体14bとは反対側の外壁面14a′は、ミッションケース7に形成された取付部7aへの取り付け面とされており、この外壁面14a′からミッションケース7内に、第1ケース半体14aの第1,第2膨出部16,17が膨出している。
【0030】
第1膨出部16内にはモータ18が配置されると共に、第2膨出部17内にはねじ軸19が配置されており、ミッションケース7の取付部7aには、第1,第2膨出部16,17をミッションケース7内に挿入するための開口部7bが形成されている。また、収納空間15内には、モータ18の出力を減速する減速ギヤ機構20と、この減速ギヤ機構20を介してモータ18により回転駆動されるナット部材21とが配置される。
【0031】
ナット部材21はベアリング22,23を介して第1,第2ケース半体14a,14bに回動可能に支持されており、このナット部材21の内周に形成された雌ねじ21aがねじ軸19に形成された雄ねじ19aと螺合することで、ナット部材21の回転運動をねじ軸19の直線運動に変換する送りねじ機構が構成される。ねじ軸19は、先端部19bを第2膨出部17から外方に突出させるようにして該第2膨出部17内に摺動自在に配置されており、ナット部材21がモータ18の回転力を受けて回転することで、第2膨出部17から先端部19bを突出させたねじ軸19がナット部材21の軸線に沿って進退動する。なお、雄ねじ19aはねじ軸19と一体に形成されるものであっても、別体に形成されてねじ軸19に一体化されるものであっても良い。
【0032】
図3の4−4矢視図である図4を併せて参照して、ねじ軸19の先端部19bには、該ねじ軸19の軸線X1と直交する軸線X2を有する筒状のボールハウジング25が設けられ、このボールハウジング25内に、該ボールハウジング25の軸線X2と共通の軸線を有する筒状のシート部材26と、このシート部材26により揺動可能に支持されるボール軸受27とが収容され、ボール軸受27にはアーム13から延びる連結ピン28を嵌入するための連結孔27aが形成される。
【0033】
連結ピン28は、その一端部28aがアーム13先端の嵌合孔13aに嵌め込まれて該アーム13に固設されると共に、アーム13先端から突出させた他端部28bがボール軸受27の連結孔27aに抜き差し可能に嵌入され、ボールハウジング25がアーム13に組み付けられることでボールジョイント9が構成される。なお、この連結ピン28はアーム13と一体に形成されていても良い。
【0034】
ボールハウジング25のアーム13との対向する側の対向面25aには、該ボールハウジング25の周縁部から中央部に向かって延びる壁部29が形成されていて、該壁部29の中央部に連結ピン28を貫通させるための通し孔30が、ボールハウジング25の軸線X2と共通の軸線を有するようにして形成されている。またボールハウジング25の背面25b(対向面25aと反対側の面)は開放面とされていて、シート部材26を保持すると共に塵埃の流入を避けるために蓋体31が設けられているが、必要がなければ該蓋体31は省略しても良い。
【0035】
ボールハウジング25の通し孔30の内周には、連結ピン28の外周面28cに当接することでねじ軸19の軸線X1周りの回転角度(連結ピン28の軸線X3に対するボールハウジング25の軸線X2の回転角度)を一定角度αに規制する第1ストッパ面32が設けられていて、該第1ストッパ面32は、連結ピン28の外周面28cとの当接部の面圧を低く抑え得るよう、軸線X2に対して角度αだけ傾斜して連結ピン28の外周面28cと線接触状態で当接する傾斜面とされている。しかも通し孔30は、全体がボールハウジング25の外方側に向かって大径となるテーパ孔に形成されており、これにより、連結ピン28をボール27に嵌入する際、通し孔30がガイドとなって、ボール軸受27への連結ピン28の嵌入を容易に行うことを可能にしている。
【0036】
アクチュエータ8をミッションケース7に取り付けるには、アクチュエータ8の第1ケース半体14aの第1,第2膨出部16,17をミッションケース7の開口部7bからミッションケース7内に挿入し、ボール軸受27の連結孔27aに、アーム13先端から延びた連結ピン28の他端部28bを嵌入した後、ミッションケース7の開口部7bを第1ケース半体14aの外壁面14a′で覆うようにして、アクチュエータ8のユニットケース14をミッションケース7に固定するが、その際、ボール軸受27の連結孔27aに連結ピン28の他端部28bが嵌入される以前の状態では、ボール軸受27がボールハウジング25に対して自由に揺動し得る状態であるので、ボール軸受27の連結孔27aの軸線X4の方向が通し孔30の軸線X2の方向から大きくずれてしまったり、またボールハウジング25もねじ軸19の軸線X1周りに自由に回転し得る状態であるので、振動等によりねじ軸19が妄動してナット部材21から脱落してしまうような状態が生じる虞がある。
【0037】
而るに本実施形態では、連結孔27aに連結ピン28が嵌入される以前の状態を示す図5の(A)に示すように、連結孔27aへの連結ピン28の非嵌入状態において、ボール軸受27の壁部29側の側面27bと当接することで通し孔30の軸線X2に対する連結孔27aの軸線X4の揺動角度を一定角度βに規制する第2ストッパ面34がボールハウジング25の壁部29の裏面に設けられており、その角度βは通し孔30から連結ピン28を連結孔27aに嵌入し得る角度に設定されているので、連結孔27aへの連結ピン28の嵌入時、ボール軸受27の姿勢を調整しなくても必然的に連結孔27aが連結ピン28を受け入れ得る状態となって、連結孔27aへの連結ピン28の嵌入を容易に行うことができる。
【0038】
しかも該角度βは、α<βに設定されていて、アクチュエータ8の作動によるナット部材21の回転時には、第1ストッパ面32が連結ピン28に当接する以前にボール27軸受の側面27bが第2ストッパ面34に当接することがないので、ボール軸受27に無用な荷重を作用させずに済む。
【0039】
また、第1ケース半体14aの第2膨出部17の先端には、図5の(B)に示すように、連結孔27aへの連結ピン28の非嵌入状態において、ボールハウジング25の背面25bと当接することでねじ軸19の軸線X1周りの回転角度(連結孔27aへの連結ピン28の嵌入状態における、連結ピン28の軸線X3に対するボールハウジング25の軸線X2の回転角度)を一定角度γに規制する回り止め35が突設されているので、連結孔27aへの連結ピン28の嵌入が容易になると共に、アクチュエータ8の搬送時等の取り扱い時に、振動等によるねじ軸19の回転方向の妄動を防ぎ、その妄動によるナット部材21からのねじ軸19の脱落を防ぐことができる。
【0040】
しかも該角度γは、α<γに設定されていて、アクチュエータ8の作動によるナット部材21の回転時には、第1ストッパ面32が連結ピン28に当接する以前にボールハウジング25が回り止め35に当接することないので、ボールハウジング25と回り止め35との接触による無用なねじ軸19の動作の妨げとなる摩擦抵抗を発生させずに済む。
【0041】
なお、第2ストッパ面34は、それをボールハウジング25の背面25b側に設けて、ボール軸受27の側面27bと反対側の側面27cを該第2ストッパ面34に当接させるようにしてもよい。
【0042】
また、アクチュエータ8の搬送時等の取り扱い時に、ボール軸受27の連結孔27aが必ず連結ピン28を受け入れ得る状態となっているようにするために、角度α,β,γは、α<β<γに設定されていることが望ましい。
【0043】
次に、この実施形態の作用を説明する。
【0044】
アクチュエータ8の作動によりナット部材21が回転すると、ねじ軸19の回転に伴いボールハウジング25も回転しようとするが、ボールハウジング25の通し孔30内周に設けた第1ストッパ面32が、それに近接する連結ピン28の外周面28cに当接してボールハウジング25の回転が規制されるので、これによりねじ軸19の回転が規制されてナット部材21の回転に伴うねじ軸19の共回りが阻止される。その結果、モータ18の回転力をねじ軸19の推力に的確に変換して駆動プーリ4の駆動側可動シーブ4bを駆動することができる。さらに、第1ストッパ面32と連結ピン28の外周面28cとが当接することで、その反力が連結ピン28の軸線X3と直交する方向に作用することになり、該反力が連結ピン28の軸線X3方向に作用することがないので、ボール軸受27からの連結ピン28の抜けを防止できる。しかも、連結ピン28が第1ストッパ面32と当接しない範囲で揺動可能なため、アクチュエータ8の構成部品の製作誤差や、ミッションケース7へのアクチュエータ8の取付誤差等を吸収でき、また駆動プーリ4の振動等に起因するアーム13の振動を吸収して、振動騒音の発生を防ぐと共にアクチュエータ8の耐久性を向上させることができる。また、連結ピン28の最大揺動角度が第1ストッパ面32との当接により角度αに規制されるので、連結ピン28からねじ軸19に作用する無用な側圧分力の増加が抑えられ、ねじ軸19のスムーズな動作を保証することができる。
【0045】
また、第1ストッパ面32をボールハウジング25の軸線X2に対して傾斜して連結ピン28の外周面28cと線接触状態で当接する傾斜面としたので、当接部の面圧を低く抑え、当接部の耐摩耗性を高めることができる。
【0046】
また、通し孔30を、アーム13と対向する側に設け、ボールハウジング25の外方側に向かって大径となるテーパ孔としたので、連結ピン28をボール軸受27に嵌入する際、通し孔30がガイドとなって、ボール軸受27への連結ピン28の嵌入を容易に行うことができる。
【0047】
また連結孔27aへの連結ピン28の非嵌合状態において、ボール軸受27と当接することで該ボール軸受27の揺動角度を一定角度βに規制する第2ストッパ面34をボールハウジング25の壁部29の裏面側に設け、角度βを、通し孔30から連結ピン28を連結孔27aに嵌入し得る角度に設定したので、連結孔27aへの連結ピン28の嵌入時、ボール軸受27の姿勢を調整しなくても必然的に連結孔27aが連結ピン28を受け入れ得る状態となって、連結孔27aへの連結ピン28の嵌入を容易に行うことができる。特に連結孔27aが目視できない状況で連結ピン28を嵌入しなければならない場合には、その作業を格段に向上させることができる。
【0048】
また、角度α及び角度βを、α<βと設定したことで、アクチュエータ8の作動によるナット部材21の回転時には、第1ストッパ面32が連結ピン28に当接する以前にボール軸受27が第2ストッパ面34と当接することがないので、ボール軸受27に無用な荷重を作用させずに済む。
【0049】
また、ボール軸受27への連結ピン28の非嵌合状態において、ボールハウジング25の背面25bと当接することでねじ軸19の軸線X1周りの回転角度を一定角度γに規制する回り止め35をユニットケース14の第2膨出部17の先端に突設したので、ボール軸受27への連結ピン28の嵌入が容易になると共に、アクチュエータ8の搬送時等の取り扱い時に、振動等によるねじ軸19の回転方向の妄動を防ぎ、その妄動によりねじ軸19がナット部材21から脱落することを防ぐことができる。
【0050】
また更に、角度α及び角度γを、α<γと設定したことで、アクチュエータ8の作動によるナット部材21の回転時には、第1ストッパ面32が連結ピン28に当接する以前にボールハウジング25が回り止め35と当接することがないので、ボールハウジング25と回り止め35との接触による無用なねじ軸19の動作の妨げとなる摩擦抵抗を発生させずに済む。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0052】
例えば、本発明のベルト式無段変速機は、自動二輪車に搭載されるものに限定されるものでなく、どのような形態の車両にも用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
2・・・・入力軸
3・・・・出力軸
4・・・・駆動プーリ
5・・・・従動プーリ
6・・・・ベルト
8・・・・アクチュエータ
9・・・・ボールジョイント
13・・・アーム
14・・・ユニットケース
18・・・モータ
19・・・ねじ軸
19a・・雄ねじ
21・・・ナット部材
25・・・ボールハウジング
26・・・シート部材
27・・・ボール軸受
27a・・連結孔
28・・・連結ピン
28a・・一端部
28b・・他端部
28c・・外周面
30・・・通し孔
32・・・第1ストッパ面
34・・・第2ストッパ面
35・・・回り止め
X1・・・ねじ軸の軸線
X2・・・ボールハウジングの軸線
α・・・・第1ストッパ面により規制されるねじ軸の軸線周りの回転角度
β・・・・ボール軸受の揺動角度
γ・・・・回り止めにより規制されるねじ軸の軸線周りの回転角度
図1
図2
図3
図4
図5