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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-137911(P2017-137911A)
(43)【公開日】2017年8月10日
(54)【発明の名称】ベルト式無段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 9/18 20060101AFI20170714BHJP
   F16C 11/06 20060101ALI20170714BHJP
【FI】
   F16H9/18 Z
   F16C11/06 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-17773(P2016-17773)
(22)【出願日】2016年2月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 和利
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃尚
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭宏
【テーマコード(参考)】
3J050
3J105
【Fターム(参考)】
3J050AA02
3J050BA03
3J050BB04
3J050DA03
3J105AA23
3J105AA36
3J105CA02
3J105CB13
3J105CB14
3J105CB25
3J105CB62
3J105CC02
3J105CF01
3J105CF11
(57)【要約】
【課題】モータの回転力をねじ軸の推力に的確に変換してプーリを駆動することができ、且つ部品点数が少なくて構造も簡便なベルト式無段変速機を提供する。
【解決手段】
ボールジョイント13は、ねじ軸19に設けられるジョイントハウジング25と、アーム12から延びてジョイントハウジング25に揺動可能に支持されるボールスタッド26とを有し、ボールスタッド26には、球状の外周面を有するボール軸部26aと、それと同軸でボール軸部26aの直径よりも小径且つ円筒状の外周面を有する円筒軸部26bとを設け、ジョイントハウジング25には、ボール軸部26aが嵌入されるボール支持面25aと、円筒軸部26bの外周面26b′に当接してねじ軸19の軸線X1周りの回転角度を一定角度αに規制するストッパ面25bとを設けた。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸(2)に支持される駆動プーリ(4)と、出力軸(3)に支持される従動プーリ(5)と、それら両プーリ(4,5)に巻き掛けられるベルト(6)と、前記両プーリ(4,5)のうちの何れか一方のプーリを駆動して該プーリの溝幅を変更可能なアクチュエータ(8)と、このアクチュエータ(8)の駆動力を前記何れか一方のプーリに伝達するアーム(12)とを備え、前記アクチュエータ(8)は、モータ(18)の回転力を受けて回転するナット部材(21)と、このナット部材(21)に螺合する雄ねじ(19a)により該ナット部材(21)の回転運動を直線運動に変換して前記何れか一方のプーリを駆動するねじ軸(19)とを有し、前記アーム(12)および前記ねじ軸(19)をボールジョイント(13)を介して連結したベルト式無段変速機であって、
前記ボールジョイント(13)は、前記ねじ軸(19)に設けられるジョイントハウジング(25)と、前記アーム(12)から延びて前記ジョイントハウジング(25)に揺動可能に支持されるボールスタッド(26)とを有し、前記ボールスタッド(26)には、球状の外周面を有するボール軸部(26a)と、このボール軸部(26a)と同軸で該ボール軸部(26a)の直径よりも小径且つ円筒状の外周面を有する円筒軸部(26b)とを設け、前記ジョイントハウジング(25)には、前記ボール軸部(26a)が嵌入されるボール支持面(25a)と、前記円筒軸部(26b)の外周面(26b′)に当接して前記ねじ軸(19)の軸線(X1)周りの回転角度を一定角度αに規制するストッパ面(25b)とを設けたことを特徴とするベルト式無段変速機。
【請求項2】
前記ストッパ面(25b)を、前記ジョイントハウジング(25)の軸線(X2)に対して傾斜して前記円筒軸部(26b)の外周面(26b′)と線接触状態で当接する傾斜面としたことを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機。
【請求項3】
前記ストッパ面(25b)を、前記ジョイントハウジング(25)の外方側に向かって大径となるテーパ面として、前記ボール支持面(25a)に対して前記アーム(12)側に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のベルト式無段変速機。
【請求項4】
前記ボール支持面(25a)を、前記ジョイントハウジング(25)の軸線(X2)方向に幅を持った円筒面としたことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のベルト式無段変速機。
【請求項5】
前記ストッパ面(25b)を、前記ジョイントハウジング(25)の内周側に膨らむ湾曲面としたことを特徴とする請求項4に記載のベルト式無段変速機。
【請求項6】
前記ジョイントハウジング(25)への前記ボールスタッド(26)の非嵌入状態において、前記ジョイントハウジング(25)と当接することで前記ねじ軸(19)の軸線(X1)周りの回転角度を一定角度βに規制する回り止め(28)を、前記アクチュエータ(8)の外殻をなすユニットケース(14)に設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載のベルト式無段変速機。
【請求項7】
前記角度α及び前記角度βを、α<βと設定したことを特徴とする請求項6に記載のベルト式無段変速機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸に支持される駆動プーリと、出力軸に支持される従動プーリと、それら両プーリに巻き掛けられるベルトと、前記両プーリのうちの何れか一方のプーリの溝幅を変更可能なアクチュエータとを備えるベルト式無段変速機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなベルト式無段変速機として、下記特許文献1に開示されるように、アクチュエータの駆動力をプーリに伝達するアームを備え、アーム及びアクチュエータの出力ロッドをボールジョイントを介して連結したものが既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−92100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されるアクチュエータは、モータの回転力を出力ロッドの推力に変換するために、モータの回転力を受けて回転するナット部材と、このナット部材に螺合する雄ねじにより該ナット部材の回転運動を直線運動に変換するねじ軸とを有し、このねじ軸を出力ロッドとして構成したものであると考えられるが、その場合、アームおよびねじ軸がボールジョイントを介して連結されていることに起因して、ナット部材の回転に伴いねじ軸が共回りしてしまうので、モータの回転力を的確にねじ軸の推力に変換することができず、プーリを正確に駆動することの妨げとなる。
【0005】
しかも、上記特許文献1のものは、シートやボールといった複数の部品でボールジョイントが構成されているために、部品点数が多く構造も複雑である。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、モータの回転力をねじ軸の推力に的確に変換してプーリを駆動することができ、且つ部品点数が少なくて構造も簡便なベルト式無段変速機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、入力軸に支持される駆動プーリと、出力軸に支持される従動プーリと、それら両プーリに巻き掛けられるベルトと、前記両プーリのうちの何れか一方のプーリを駆動して該プーリの溝幅を変更可能なアクチュエータと、このアクチュエータの駆動力を前記何れか一方のプーリに伝達するアームとを備え、前記アクチュエータは、モータの回転力を受けて回転するナット部材と、このナット部材に螺合する雄ねじにより該ナット部材の回転運動を直線運動に変換して前記何れか一方のプーリを駆動するねじ軸とを有し、前記アームおよび前記ねじ軸をボールジョイントを介して連結したベルト式無段変速機であって、前記ボールジョイントは、前記ねじ軸に設けられるジョイントハウジングと、前記アームから延びて前記ジョイントハウジングに揺動可能に支持されるボールスタッドとを有し、前記ボールスタッドには、球状の外周面を有するボール軸部と、このボール軸部と同軸で該ボール軸部の直径よりも小径且つ円筒状の外周面を有する円筒軸部とを設け、前記ジョイントハウジングには、前記ボール軸部が嵌入されるボール支持面と、前記円筒軸部の外周面に当接して前記ねじ軸の軸線周りの回転角度を一定角度αに規制するストッパ面とを設けたことを第1の特徴とする。
【0008】
なお、ねじ軸の軸線周りの回転角度とは、ボールスタッドの軸線に対するジョイントハウジングの軸線の回転角度を言うものとする。
【0009】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記ストッパ面を、前記ジョイントハウジングの軸線に対して傾斜して前記円筒軸部の外周面と線接触状態で当接する傾斜面としたことを第2の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第1または第2の特徴に加えて、前記ストッパ面を、前記ジョイントハウジングの外方側に向かって大径となるテーパ面として、前記ボール支持面に対して前記アーム側に配置したことを第3の特徴とする。
【0011】
また本発明は、第1ないし第3の特徴の何れかに加えて、前記ボール支持面を、前記ジョイントハウジングの軸線方向に幅を持った円筒面としたことを第4の特徴とする。
【0012】
また本発明は、第4の特徴に加えて、前記ストッパ面を、前記ジョイントハウジングの内周側に膨らむ湾曲面としたことを第5の特徴とする。
【0013】
また本発明は、第1ないし第5の特徴の何れかに加えて、前記ジョイントハウジングへの前記ボールスタッドの非嵌入状態において、前記ジョイントハウジングと当接することで前記ねじ軸の軸線周りの回転角度を一定角度βに規制する回り止めを、前記アクチュエータの外殻をなすユニットケースに設けたことを第6の特徴とする。
【0014】
また本発明は、第6の特徴に加えて、前記角度α及び前記角度βを、α<βと設定したことを第7の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の特徴によれば、アクチュエータの作動によりナット部材が回転すると、ねじ軸の回転に伴いジョイントハウジングも回転しようとするが、ジョイントハウジングの内周に設けたストッパ面がボールスタッドの円筒軸部に当接してジョイントハウジングの回転が規制されるので、これによりねじ軸の回転が規制されてナット部材の回転に伴うねじ軸の共回りが阻止される。その結果、モータの回転力をねじ軸の推力に的確に変換してプーリを駆動することができる。さらに、ストッパ面と円筒軸部とが当接することで、その反力がボールスタッドの軸線と直交する方向に作用することになり、該反力がボールスタッドの軸線方向に作用することがないので、ジョイントハウジングからのボールスタッドの抜けを防止できる。しかも円筒軸部がストッパ面と当接しない範囲でボールスタッドが揺動可能なため、アクチュエータの構成部品の製作誤差や、ミッションケースへのアクチュエータの取付誤差等を吸収でき、またプーリの振動等に起因するアームの振動を吸収して、振動騒音の発生を防ぐと共にアクチュエータの耐久性を向上させることができる。また、ボールスタッドの最大揺動角度が円筒軸部とストッパ面との当接により規制されるので、ボールスタッドからねじ軸に作用する無用な側圧分力の増加が抑えられ、ねじ軸のスムーズな動作を保証することができる。
【0016】
また、ボールスタッドに直接ボール軸部が設けられると共にジョイントハウジングに直接ボール支持面が設けられていて、別体のボールやシートを用いる必要がないので、部品点数を少なくして製造コストを下げられる。しかも、ボールスタッドのボール軸部をジョイントハウジングのボール支持面で直接支持することで、ボール軸部を大径にしてボール支持面とボール軸部との接触面積を広く取ることが可能となるから、ボール支持面とボール軸部との推力伝達部の面圧を小さく抑えることができる。
【0017】
また本発明の第2の特徴によれば、ストッパ面をジョイントハウジングの軸線に対して傾斜して円筒軸部の外周面と線接触状態で当接する傾斜面としたので、当接部の面圧を低く抑え、当接部の耐摩耗性を高めることができる。
【0018】
また本発明の第3の特徴によれば、ストッパ面を、ジョイントハウジングの外方側に向かって大径となるテーパ面として、ボール支持面に対してアーム側に配置したので、ボールスタッドをジョイントハウジングに嵌入する際、ストッパ面がガイドとなってジョイントハウジングへのボールスタッドの嵌入を容易に行うことができる。
【0019】
また本発明の第4の特徴によれば、ボール支持面をジョイントハウジングの軸線方向に幅を持った円筒面としたので、プーリの振動等に起因するアームの振動によりボール軸部が軸線方向に変位した場合でも、ボール軸部をボール支持面内で確実に支持することができて、ボール支持面とボール軸部との推力伝達を確実に行うことができる。
【0020】
また本発明の第5の特徴によれば、ストッパ面をジョイントハウジングの内周側に膨らむ湾曲面としたので、プーリの振動等に起因するアームの振動によりボール軸部が軸線方向に変位した場合でも、円筒軸部の外周面がストッパ面のエッジに当接することなく、曲面状の面内で当接するので、当接部の耐摩耗性を高めることができる。
【0021】
また本発明の第6の特徴によれば、ジョイントハウジングへのボールスタッドの非嵌入状態において、ジョイントハウジングと当接することでねじ軸の軸線周りの回転角度を一定角度βに規制する回り止めをユニットケースに設けたので、ジョイントハウジングへのボールスタッドの嵌入が容易になると共に、アクチュエータの搬送時等の取り扱い時に、振動等によるねじ軸の回転方向の妄動を防ぎ、その妄動によるナット部材からのねじ軸の脱落を防ぐことができる。
【0022】
また本発明の第7の特徴によれば、角度α及び角度βを、α<βと設定したことで、アクチュエータの作動によりナット部材を回転させてねじ軸を動作させる時に、ストッパ面が円筒軸部に当接する以前にジョイントハウジングが回り止めと当接することがないので、ジョイントハウジングと回り止めとの接触による無用なねじ軸の動作の妨げとなる摩擦抵抗を発生させずに済む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態におけるベルト式無段変速機の平断面図。
図2】本発明の実施形態におけるベルト式無段変速機の側面図(図1 の2矢視図。
図3図1の矢視3部分の拡大図。
図4図3の4−4線断面図。
図5図3の4−4線断面図において、ジョイントハウジングにボールスタッドが嵌入される以前の状態を示す図であって、ジョイントハウジングの背面が回り止めに当接した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のベルト式無段変速機を自動二輪車等の車両に適用した実施形態を、添付図面に基づいて以下に説明する。
【0025】
図1は、本発明に係るベルト式無段変速機の平断面図であり、図2図1の2矢視図である。
【0026】
図1図2に示すように、ベルト式無段変速機1は、図示せぬエンジンやモータ等の動力源から動力が伝達される入力軸2と、この入力軸2に平行で図示せぬ車輪に動力を伝達する出力軸3と、入力軸2に支持される駆動プーリ4と、出力軸3に支持される従動プーリ5と、それら両プーリ4,5に巻き掛けられるベルト6と、それら両プーリ4,5およびベルト6を収容するミッションケース7と、そのミッションケース7に取り付けられて駆動プーリ4の溝幅を変更可能なアクチュエータ8とを備えて、自動二輪車等の車両に搭載される。なお、アクチュエータ8は従動プーリ5の溝幅を変更するものであってもよい。
【0027】
駆動プーリ4は入力軸2に固定される駆動側固定シーブ4aと、入力軸2に支持されて入力軸2の軸線方向に移動可能な駆動側可動シーブ4bとからなっており、従動プーリ5は出力軸3に固定される従動側固定シーブ5aと、出力軸3に支持されて出力軸3の軸線方向に移動可能な従動側可動シーブ5bとからなっている。
【0028】
駆動側可動シーブ4bの背後で入力軸2にはランププレート9が固定されて、この駆動側可動シーブ4bとランププレート9との間に複数の遠心ウエイト10が保持される。いま入力軸2が回転して、その回転速度に応じた遠心力が遠心ウエイト10に作用すると、遠心ウエイト10が駆動側可動シーブ4bのカム面4cに沿って径外方へ移動し、駆動側可動シーブ4bを駆動側固定シーブ4a側へ移動させることでベルト6の巻き掛け半径が大きくなる。
【0029】
また、駆動側可動シーブ4bには、軸受11を介してアーム12が相対回転可能に連結されており、そのアーム12には、該アーム12を介して駆動側可動シーブ4bを入力軸2の軸線方向に駆動するアクチュエータ8がボールジョイント13を介して接続される。
【0030】
図1の矢視3部分の拡大図である図3を併せて参照して、アクチュエータ8は、その外殻をなす第1ケース半体14aと第2ケース半体14bとで構成されるユニットケース14を備えており、これら第1,第2ケース半体14a,14b間には扁平な収納空間15が画成される。第1ケース半体14aの第2ケース半体14bとは反対側の外壁面14a′は、ミッションケース7に形成された取付部7aへの取り付け面とされており、この外壁面14a′からミッションケース7内に、第1ケース半体14aの第1,第2膨出部16,17が膨出している。
【0031】
第1膨出部16内にはモータ18が配置されると共に、第2膨出部17内にはねじ軸19が配置されており、ミッションケース7の取付部7aには、第1,第2膨出部16,17をミッションケース7内に挿入するための開口部7bが形成されている。また、収納空間15内には、モータ18の出力を減速する減速ギヤ機構20と、この減速ギヤ機構20を介してモータ18により回転駆動されるナット部材21とが配置される。
【0032】
ナット部材21はベアリング22,23を介して第1,第2ケース半体14a,14bに回動可能に支持されており、このナット部材21の内周に形成された雌ねじ21aがねじ軸19に形成された雄ねじ19aと螺合することで、ナット部材21の回転運動をねじ軸19の直線運動に変換する送りねじ機構が構成される。ねじ軸19は、先端部19bを第2膨出部17から外方に突出させるようにして該第2膨出部17内に摺動自在に配置されており、ナット部材21がモータ18の回転力を受けて回転することで、第2膨出部17から先端部19aを突出させたねじ軸19がナット部材21の軸線に沿って進退動する。なお、雄ねじ19aはねじ軸19と一体に形成されるものであっても、別体に形成されてねじ軸19に一体化されるものであっても良い。
【0033】
図3の4−4矢視図である図4を併せて参照して、ねじ軸19の先端部19bには、該ねじ軸19の軸線X1と直交する軸線X2を有する筒状のジョイントハウジング25が設けられ、このジョイントハウジング25と、該ジョイントハウジング25に揺動可能に支持されるボールスタッド26とでボールジョイント13が構成される。
【0034】
ボールスタッド26は、その一端側がアーム12先端の嵌合孔12aに嵌め込まれて該アーム12に固設されると共に、アーム12から突出させた他端側に、球状の外周面を有するボール軸部26aと、このボール軸部26aと同軸で該ボール軸部26aの直径よりも小径且つ円筒状の外周面を有する円筒軸部26bとが、ボール軸部26aの両側に円筒軸部26bが配置されるようにして連設される。なお、このボールスタッド26はアーム12と一体に形成されていても良い。
【0035】
ジョイントハウジング25の内周には、ボールスタッド26のボール軸部26aを抜き差し可能に嵌入させるボール支持面25aが形成される。このボール支持面25aは、ジョイントハウジング25内をボール軸部26aがボールスタッド26の軸線X3方向に変位した場合でも、該ボール軸部26aをボール支持面25a内で確実に支持して密接な接触が保たれるように、ジョイントハウジング25の軸線X2方向に幅を持った円筒面に形成されるが、該ボール支持面25aの形状は特にこのような円筒面に限定されるものではない。
【0036】
またジョイントハウジング25の内周には、円筒軸部26bの外周面26b′に当接してねじ軸19の軸線X1周りの回転角度(ボールスタッド26の軸線X3に対するジョイントハウジング25の軸線X2の回転角度)を一定角度αに規制するストッパ面25bが、ボール支持面25aと連続するようにして該ボール支持面25aの軸方向両側に設けられており、該ストッパ面25bは、ボール軸部26aがボールスタッド26の軸線X3方向に変位した場合でも、円筒軸部26bの外周面26b′との当接部の面圧を低く抑え得るよう、軸線X2に対して角度αだけ傾斜すると共にジョイントハウジング25の内周側に膨らむ湾曲面に形成されている。
【0037】
なお、円筒軸部26b及びストッパ面25bは、各々ボール軸部26aの一方側及びそれに対向するボール支持面25aの一方側だけに設けても良い。その場合、本実施形態のように、該ストッパ面25bをボール支持面25aに対してアーム12側に配置していれば、ストッパ面25bがジョイントハウジング25の外方側に向かって大径のテーパ面となるので、ボールスタッド26をジョイントハウジング25に嵌入する際、ストッパ面25bがガイドとなってジョイントハウジング25へのボールスタッド26の嵌入を容易に行うことができる。なお、本実施形態のように、円筒軸部26b及びストッパ面25bをボール軸部26a及びボール支持面25aの両側に設けた場合には、一方側だけに設ける場合と比較して、当接部の面圧を分散して、当接部の耐摩耗性を高めることができる。
【0038】
またボール軸部26aがボールスタッド26の軸線X3方向に変位しない構造である場合には、該ストッパ面25bを、単にジョイントハウジング25の軸線X2に対して角度αだけ傾斜して円筒軸部26bの外周面26b′と線接触状態で当接する傾斜面とすることで、当接部の面圧を低く抑え、当接部の耐摩耗性を高めることができる。
【0039】
またジョイントハウジング25の背面25c(アーム12と反対側の面)は、塵埃の流入を避けるために密封されているが、密封する代わりに蓋体を設けたり、必要がなければそれを開放面としても良い。
【0040】
アクチュエータ8をミッションケース7に取り付けるには、アクチュエータ8の第1ケース半体14aの第1,第2膨出部16,17をミッションケース7の開口部7bからミッションケース7内に挿入し、ジョイントハウジング25のボール支持面25aに、アーム12先端から延びたボールスタッド26のボール軸部26aを嵌入した後、ミッションケース7の開口部7bを前記第1ケース半体14aの前記外壁面14a′で覆うようにして、アクチュエータ8のユニットケース14をミッションケース7に固定するが、その際、ジョイントハウジング25のボール支持面25aにボールスタッド26のボール軸部26aを嵌入する以前の状態では、ジョイントハウジング25がねじ軸19の軸線X1周りに自由に回転し得る状態であるので、ジョイントハウジング25の軸線X2の方向がボールスタッド26の軸線X3の方向から大きくずれてしまったり、アクチュエータ8の搬送時等の取り扱い時に、振動等によりねじ軸19が妄動してナット部材21から脱落してしまうような状態が生じる虞がある。
【0041】
而るに本実施形態では、ジョイントハウジング25にボールスタッド26が嵌入される以前の状態を示す図5のように、ジョイントハウジング25へのボールスタッド26の非嵌入状態において、ジョイントハウジング25の背面25cと当接することでねじ軸19の軸線X1周りの回転角度(ボール軸部26aをボール支持面25aに嵌入した状態における、ボールスタッド26の軸線X3に対するジョイントハウジング25の軸線X2の回転角度)を一定角度βに規制する回り止め28が第1ケース半体14aの第2膨出部17の先端に突設されているので、ジョイントハウジング25へのボールスタッド26の嵌入が容易になると共に、アクチュエータ8の搬送時等の取り扱い時に、振動等によるねじ軸19の回転方向の妄動を防ぎ、その妄動によるナット部材21からのねじ軸19の脱落を防ぐことができる。
【0042】
しかも該角度βは、α<βに設定されていて、アクチュエータ8の作動によりナット部材21を回転させてねじ軸19を動作させる時に、ストッパ面25bが円筒軸部26bに当接する以前にジョイントハウジング25が回り止め28と当接することがないので、ジョイントハウジング25と回り止め28との接触による無用なねじ軸19の動作の妨げとなる摩擦抵抗を発生させずに済む。
【0043】
次に、この実施形態の作用を説明する。
【0044】
アクチュエータ8の作動によりナット部材21が回転すると、ねじ軸19の回転に伴いジョイントハウジング25も回転しようとするが、ジョイントハウジング25の内周に設けたストッパ面25bがボールスタッド26に設けた円筒軸部26bに当接してジョイントハウジング25の回転が規制されるので、これによりねじ軸19の回転が規制されてナット部材21の回転に伴うねじ軸19の共回りが阻止される。その結果、モータ18の回転力をねじ軸19の推力に的確に変換して駆動プーリ4の駆動側可動シーブ4bを駆動することができる。さらに、ストッパ面25bと円筒軸部26bの外周面26b′とが当接することで、その反力がボールスタッド26の軸線X3と直交する方向に作用することになり、該反力がボールスタッド26の軸線X3方向に作用することがないので、ジョイントハウジング25からのボールスタッド26の抜けを防止できる。しかも円筒軸部26bがストッパ面25bと当接しない範囲でボールスタッド26が揺動可能なため、アクチュエータ8の構成部品の製作誤差や、ミッションケース7へのアクチュエータ8の取付誤差等を吸収でき、また駆動プーリ4の振動等に起因するアーム12の振動を吸収して、振動騒音の発生を防ぐと共にアクチュエータ8の耐久性を向上させることができる。また、ボールスタッド26の最大揺動角度が円筒軸部26bとストッパ面25bとの当接により規制されるので、ボールスタッド26からねじ軸19に作用する無用な側圧分力の増加が抑えられ、ねじ軸19のスムーズな動作を保証することができる。
【0045】
また、ボールスタッド26に直接ボール軸部26aが設けられると共にジョイントハウジング25に直接ボール支持面25aが設けられていて、別体のボールやシートを用いる必要がないので、部品点数を少なくして製造コストを下げられる。しかも、ボールスタッド26のボール軸部26aをジョイントハウジング25のボール支持面25aで直接支持することで、ボール軸部26aを大径にしてボール支持面25aとボール軸部26aとの接触面積を広く取ることが可能となるから、ボール支持面25aとボール軸部26aとの推力伝達部の面圧を小さく抑えることができる。
【0046】
また、ストッパ面25bをジョイントハウジング25の軸線X2に対して傾斜して円筒軸部26bの外周面26b′と線接触状態で当接する傾斜面としたので、当接部の面圧を低く抑え、当接部の耐摩耗性を高めることができる。
【0047】
また、ストッパ面25bを、ジョイントハウジング25の外方側に向かって大径となるテーパ面として、ボール支持面25aに対してアーム12側に配置したので、ボールスタッド26をジョイントハウジング25に嵌入する際、ストッパ面25bがガイドとなってジョイントハウジング25へのボールスタッド26の嵌入を容易に行うことができる。
【0048】
また、ボール支持面25aをジョイントハウジング25の軸線X2方向に幅を持った円筒面としたので、駆動プーリ4の振動等に起因するアーム12の振動によりボール軸部26aがボールスタッド26の軸線X3方向に変位した場合でも、ボール軸部26aをボール支持面25a内で確実に支持することができて、ボール支持面25aとボール軸部26aとの推力伝達を確実に行うことができる。
【0049】
また、ストッパ面25bをジョイントハウジング25の内周側に膨らむ湾曲面としたので、駆動プーリ4の振動等に起因するアーム12の振動によりボール軸部26bがボールスタッド26の軸線X3方向に変位した場合でも、円筒軸部26bの外周面26b′がストッパ面25bのエッジに当接することなく、曲面状の面内で当接するので、当接部の耐摩耗性を高めることができる。
【0050】
また、ジョイントハウジング25へのボールスタッド26の非嵌入状態において、ジョイントハウジング25の背面25cと当接することでねじ軸19の軸線X1周りの回転角度を一定角度βに規制する回り止め28をユニットケース14に設けたので、ジョイントハウジング25へのボールスタッド26の嵌入が容易になると共に、アクチュエータ8の搬送時等の取り扱い時に、振動等によるねじ軸19の回転方向の妄動を防ぎ、その妄動によるナット部材21からのねじ軸19の脱落を防ぐことができる。
【0051】
また、角度α及び角度βを、α<βと設定したことで、アクチュエータ8の作動によりナット部材21を回転させてねじ軸19を動作させる時に、ストッパ面25bが円筒軸部26bに当接する以前にジョイントハウジング25が回り止め28と当接することがないので、ジョイントハウジング25と回り止め28との接触による無用な摩擦抵抗を発生させずに済む。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0053】
例えば、本発明のベルト式無段変速機は、自動二輪車に搭載されるものに限定されるものでなく、どのような形態の車両にも用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
2・・・・入力軸
3・・・・出力軸
4・・・・駆動プーリ
5・・・・従動プーリ
6・・・・ベルト
8・・・・アクチュエータ
12・・・アーム
13・・・ボールジョイント
14・・・ユニットケース
18・・・モータ
19・・・ねじ軸
19a・・雄ねじ
21・・・ナット部材
25・・・ジョイントハウジング
25a・・ボール支持面
25b・・ストッパ面
26・・・ボールスタッド
26a・・ボール軸部
26b・・円筒軸部
26b′・外周面
28・・・回り止め
X1・・・ねじ軸の軸線
X2・・・ジョイントハウジングの軸線
α・・・・ストッパ面により規制されるねじ軸の軸線周りの回転角度
β・・・・回り止めにより規制されるねじ軸の軸線周りの回転角度
図1
図2
図3
図4
図5