【解決手段】中心軸90Aを中心として回転する太陽回転体14Aを有する入力軸10Aと、太陽回転体の周囲において、自転可能に支持された1または複数の遊星転動体26Aと、中心軸に対して偏心した外周面211Aを有し、遊星転動体の自転に伴い中心軸を中心として回転する筒状の偏心軸21Aと、外周面に複数の外歯を有し、偏心軸に第1軸受を介して支持される偏心揺動歯車22A、82Aと、偏心揺動歯車の外歯41Aと噛み合う内歯51Aを内周面に有するハウジング23Aと、偏心揺動歯車を軸方向に貫通する偏心揺動キャリアピン44Aを有し、中心軸を中心として偏心揺動歯車とともに回転する出力フランジ30Aとを有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、入力軸または太陽回転体の中心軸と平行な方向を「軸方向」、中心軸に直交する方向を「径方向」、中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。また、以下では、説明の便宜上、
図1または
図4中の右側を「入力側」、
図1または
図4中の左側を「出力側」、とそれぞれ称する。
【0009】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る減速機1Aを、中心軸90Aを含む平面で切断した縦断面図である。
図2は、
図1中のA−A位置から見た減速機1Aの横断面図である。
図3は、
図1中のB−B位置から見た減速機1Aの横断面図である。
【0010】
この減速機1Aは、外部の電動機など(図示せず)から得られる第1回転数の回転運動を、第1回転数よりも低い回転数の回転運動に2段階で変換して、出力フランジ30Aを回転させる装置である。減速機1Aは、例えば、作業ロボットにおけるアームの関節部分に組み込まれて、アームの屈伸運動を実現させるために用いられる。ただし、本発明の減速機1Aを有する電動機付き減速機は、アシストスーツ、ターンテーブル、工作機械の割出盤、車椅子、無人搬送車などの他の機器に組み込まれて、各種の回転運動を実現させるものであってもよい。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の減速機1Aは、入力軸10A、減速機構20A、および出力フランジ30Aを有する。
【0012】
入力軸10Aは、外部から入力される回転数である第1回転数で回転する部材である。本実施形態の入力軸10Aは、入力シャフト13Aと、太陽回転体14Aとを有する。入力シャフト13Aは、中心軸90Aに沿って配置された円筒状の部材である。入力シャフト13Aの入力側の端部131Aは、直接または他の動力伝達機構を介して、駆動源であるモータに接続される。モータを駆動させると、中心軸90Aを中心として、入力軸10Aが第1回転数で回転する。
【0013】
太陽回転体14Aは、入力シャフト13Aとともに、中心軸90Aを中心として回転する。太陽回転体14Aは、径方向外側へ向けて突出した複数の太陽歯141Aを有する。
【0014】
減速機構20Aは、入力軸10Aと出力フランジ30Aとの間に介在し、入力軸10Aの回転運動を、2段階で減速させつつ出力フランジ30Aへ伝達する機構である。本実施形態の減速機構20Aは、複数の遊星転動体26Aと、偏心軸21Aと、偏心揺動歯車(第1偏心揺動歯車22Aおよび第2偏心揺動歯車82A)と、ハウジング23Aとを有する。
【0015】
複数の遊星転動体26Aは、太陽回転体14Aの周りに、等間隔に配置されている。各遊星転動体26Aは、中央に挿通孔260Aを有する。当該挿通孔260Aには、遊星キャリアピン33Aが挿入される。各遊星転動体26Aは、この遊星キャリアピン33Aによって、太陽回転体14Aの周囲において、自転可能かつ公転可能に支持される。なお、複数の遊星キャリアピン33Aは、出力側に設けられた遊星キャリア34Aに備えられている。さらに、遊星キャリア34Aは、後述の出力フランジ30Aにボルトなどによって固定されている。また、各遊星転動体26Aの外周部には、太陽回転体14Aの太陽歯141Aと噛み合う複数の遊星歯261Aが設けられている。このため、太陽回転体14Aが回転すると、各遊星転動体26Aは、入力軸10Aおよび太陽回転体14Aとは逆向きに、自転する。なお、
図2に示すとおり、本実施形態の減速機1Aは4つの遊星転動体26Aを有しているが、遊星転動体26Aは1〜3つであっても、5つ以上であってもよい。なお、複数の遊星転動体26Aは、太陽回転体14Aの周りに、不等配位置に配置されてもよい。
【0016】
偏心軸21Aは、遊星転動体26Aよりも径方向外側に配置され、中心軸90Aに対して偏心した外周面を有する筒状の部材である。偏心軸21Aの内周部は、複数の遊星転動体26Aに接触する接触面を有し、遊星歯261Aと噛み合う複数の内歯212Aを有する円環状のインタナルリングとなっている。すなわち、複数の遊星転動体26Aの遊星歯261Aは、それぞれ、太陽回転体14Aの太陽歯141Aと、偏心軸21Aの内歯212Aと、の双方と常に噛み合っている。偏心軸21Aは、複数の遊星転動体26Aから、内歯212Aを有するインタナルリングを介して動力を受ける。上述のとおり、太陽回転体14Aが回転すると、複数の遊星転動体26Aが遊星キャリアピン33Aを中心として自転する。これに伴い、偏心軸21Aは、中心軸90Aを中心として入力軸10Aおよび太陽回転体14Aの第1回転数よりも低い第2回転数で、入力軸10Aおよび太陽回転体14Aとは逆の方向へ、ゆっくりと回転する。
【0017】
なお、太陽回転体14A、遊星転動体26A、および偏心軸21Aのインタナルリングとして、例えば「はすば歯車」が用いられる。しかし、太陽回転体14A、遊星転動体26A、および偏心軸21Aのインタナルリングとして、「平歯車」または「トラクションローラ」などの、「はすば歯車」以外の構造を有する部材が用いられてもよい。
【0018】
第1偏心揺動歯車22Aは、偏心軸21Aの偏心した外周面211Aに、第1軸受24Aを介して、取り付けられている。したがって、第1偏心揺動歯車22Aは、偏心軸21Aの偏心した外周面211Aの中心である第1中心軸91Aを中心として、回転自在に支持される。同様に、第2偏心揺動歯車82Aは、偏心軸21Aの偏心した外周面811Aに、第1軸受84Aを介して、取り付けられている。したがって、第2偏心揺動歯車82Aは、偏心軸21Aの偏心した外周面811Aの中心である第2中心軸92Aを中心として、回転自在に支持される。なお、
図1において減速機1Aは、2つの偏心揺動歯車を有しているが、偏心揺動歯車の数はこれに限定されない。
【0019】
図3中に拡大して示したように、第1偏心揺動歯車22Aは、その外周面に、径方向外側へ向けて突出する複数の外歯41Aを有する。また、隣り合う外歯41Aの間には、径方向内側へ向けて凹む外歯間溝42Aが設けられている。外歯41Aと外歯間溝42Aとは、第1中心軸91Aを中心として、周方向に交互に並んでいる。また、第2偏心揺動歯車82Aも、第1偏心揺動歯車22Aと同じように、外周部に複数の外歯(図示省略)と複数の外歯間溝(図示省略)とを有する。
【0020】
また、第1偏心揺動歯車22Aは、複数の挿通孔43Aを有する。複数の挿通孔43Aは、第1中心軸91Aを中心として、周方向に等間隔に並んでいる。各挿通孔43Aは、外歯41Aおよび外歯間溝42Aよりも径方向内側において、第1偏心揺動歯車22Aを軸方向に貫通する。なお、
図3において減速機1Aは、8つの挿通孔43Aを有しているが、挿通孔43Aの数はこれに限定されない。また、第2偏心揺動歯車82Aも、第1偏心揺動歯車22Aと同じように、複数の挿通孔43Aを有する。
【0021】
ハウジング23Aは、入力軸10A、遊星転動体26A、偏心軸21A、偏心揺動歯車(第1偏心揺動歯車22Aおよび第2偏心揺動歯車82A)、および出力フランジ30Aを内部に収容する略円筒状の部材である。
図3中に拡大して示したように、ハウジング23Aは、その内周面に、径方向内側へ向けて突出する複数の内歯51Aを有する。また、隣り合う内歯51Aの間には、径方向外側へ向けて凹む内歯間溝52Aが設けられている。内歯51Aと内歯間溝52Aとは、中心軸90Aを中心として、周方向に交互に並んでいる。
【0022】
第1偏心揺動歯車22Aの複数の外歯41Aと、ハウジング23Aの複数の内歯51Aとは、互いに噛み合う。すなわち、減速機1Aの動作時には、ハウジング23Aの内歯間溝52Aに第1偏心揺動歯車22Aの外歯41Aが嵌り、第1偏心揺動歯車22Aの外歯間溝42Aにハウジング23Aの内歯51Aが嵌りながら、第1偏心揺動歯車22Aが回転する。同様に、第2偏心揺動歯車82Aの複数の外歯(図示せず)と、ハウジング23Aの複数の内歯51Aとが、互いに噛み合う。このように、本実施形態では、ハウジング23Aが、内歯歯車としての機能を果たしている。ただし、ハウジング23Aとは別に、ハウジング23Aの内周部に、内歯歯車が別部材として設けられていてもよい。
【0023】
第1偏心揺動歯車22Aおよび第2偏心揺動歯車82Aは、入力軸10Aの動力によって、遊星転動体26Aおよび偏心軸21Aを介して、中心軸90Aの周りを公転しながら、ハウジング23Aの内歯51Aと噛み合うことによって自転する。ここで、ハウジング23Aが有する内歯51Aの数は、第1偏心揺動歯車22Aが有する外歯41Aの数よりも、多い。このため、第1偏心揺動歯車22Aの1公転ごとに、ハウジング23Aの同じ位置の内歯51Aに噛み合う外歯41Aの位置がずれる。これにより、第1偏心揺動歯車22Aが、偏心軸21Aとは逆の方向、すなわち入力軸10Aおよび太陽回転体14Aの回転方向と同じ方向へ、第2回転数よりも低い第3回転数で、ゆっくりと回転する。したがって、第1偏心揺動歯車22Aの挿通孔43Aの位置も、第3回転数で、ゆっくりと回転する。同様に、第2偏心揺動歯車82Aが、偏心軸21Aとは逆の方向、すなわち入力軸10Aおよび太陽回転体14Aの回転方向と同じ方向へ、第2回転数よりも低い第3回転数で、ゆっくりと回転する。
【0024】
第1偏心揺動歯車22Aが有する外歯41Aの数をNとし、ハウジング23Aが有する内歯51Aの数をMとすると、減速比Pは、P=(第2回転数)/(第3回転数)=N/(M−N)となる。
図3の例では、N=59,M=60なので、この例における減速比は、P=59である。すなわち、第3回転数は、第2回転数の1/59の回転数となる。ただし、本発明における減速機構の減速比は、他の値であってもよい。なお、第2偏心揺動歯車82Aが有する外歯(図示せず)の数は、第1偏心揺動歯車22Aが有する外歯41Aの数と同じである。
【0025】
図1および
図3に示すとおり、偏心軸21Aの内周面と入力軸10Aとの径方向の間には、さらに複数の第2軸受25Aが介在する。これにより、減速機1Aにおける各部材の配置精度を高めることができる。その結果、偏心軸21Aおよび各偏心揺動歯車の回転が安定し、各部材の摩耗および損傷を抑制することができるとともに、減速機1Aを長寿命化することができる。なお、
図1において減速機1Aは2つの第2軸受25Aを有しているが、第2軸受25Aの数は1つであっても、3つ以上であってもよい。
【0026】
なお、複数の第2軸受25Aのうちの少なくとも一つ(
図1の第2軸受25A1)は、玉軸受であることが望ましい。上述のとおり、遊星転動体26Aとして「はすば歯車」を用いた場合、軸方向に負荷が発生する。この場合、玉軸受を用いることで、発生した負荷を吸収しやすくなる。また、第2軸受25Aのうちの少なくとも一つ(
図1の第2軸受25A2)は、ニードル軸受であることが望ましい。これにより、減速機1Aを径方向に薄型化できる。
【0027】
さらに、
図1に示すとおり、減速機1Aの複数の第2軸受25Aの少なくとも一部は、偏心軸21Aの偏心した外周面211Aと径方向に重なる位置に配置されている。これにより、減速機1Aを軸方向および径方向に薄型化できる。
【0028】
出力フランジ30Aは、第1円板体31A、第2円板体32A、および偏心揺動歯車(第1偏心揺動歯車22Aおよび第2偏心揺動歯車82A)を軸方向に貫通する偏心揺動キャリアピン44Aを有する。
【0029】
第1円板体31Aは、中心軸90Aに対して垂直に配置された、円環状の部材である。第1円板体31Aは、第1偏心揺動歯車22Aおよび第2偏心揺動歯車82Aよりも、出力側に配置されている。
【0030】
偏心軸21Aと、出力フランジ30Aの第1円板体31Aとの径方向の間には、さらに第3軸受60Aが介在する。これにより、減速機1Aにおける出力フランジ30Aの配置精度をさらに高めることができる。その結果、出力フランジ30Aの回転が安定し、各部材の摩耗および損傷をより抑制することができるとともに、減速機1Aをより長寿命化することができる。
【0031】
また、第1円板体31Aには、複数の偏心揺動キャリアピン44Aを圧入するための複数(本実施形態では8つ)の被圧入孔311Aが、設けられている。複数の被圧入孔311Aは、中心軸90Aを中心として、周方向に等間隔に並んでいる。各被圧入孔311Aは、第1円板体31Aを軸方向に貫通する。
【0032】
第2円板体32Aは、中心軸90Aに対して垂直に配置された、円環状の部材である。第2円板体32Aは、第1偏心揺動歯車22Aおよび第2偏心揺動歯車82Aよりも、入力側に配置されている。
【0033】
偏心軸21Aと、出力フランジ30Aの第2円板体32Aとの径方向の間には、第3軸受60Aが介在する。これにより、減速機1Aにおける出力フランジ30Aの配置精度をさらに高めることができる。その結果、出力フランジ30Aの回転が安定し、各部材の摩耗および損傷をより抑制することができるとともに、減速機1Aをより長寿命化することができる。なお、
図1において減速機1Aは2つの第3軸受60Aを有しているが、第3軸受60Aの数は1つであっても、3つ以上であってもよい。
【0034】
また、第2円板体32Aには、複数の偏心揺動キャリアピン44Aの入力側の端部を挿入するための、複数(本実施形態では8つ)の固定用孔321Aが設けられている。複数の固定用孔321Aは、中心軸90Aを中心として、周方向に等間隔に並んでいる。各固定用孔321Aは、第2円板体32Aを軸方向に貫通する。
【0035】
複数の偏心揺動キャリアピン44A(本実施形態では8本)は、第1円板体31Aと第2円板体32Aとを接続する、円柱状の部材である。各偏心揺動キャリアピン44Aは、中心軸90Aと略平行に配置される。各偏心揺動キャリアピン44Aは、第1円板体31Aの複数の被圧入孔311Aに、それぞれ圧入され、第1偏心揺動歯車22Aおよび第2偏心揺動歯車82Aの複数の挿通孔43Aに、それぞれ挿入される。また、各偏心揺動キャリアピン44Aの出力側の端部には、拡径された抜け止め部331Aが、設けられている。抜け止め部331Aは、第1円板体31Aと軸方向に接触する。これにより、各偏心揺動キャリアピン44Aの入力側への抜けが防止される。また、各偏心揺動キャリアピン44Aの入力側の端部は、第2円板体32Aの固定用孔321Aに挿入され、ナットなどによって、第2円板体32Aに固定される。
【0036】
図3に示すように、各挿通孔43Aを構成する面と、偏心揺動キャリアピン44Aの外周面との間には、隙間が介在する。そして、当該隙間には、円環状のブッシュリング61Aが挿入されている。第1偏心揺動歯車22Aおよび第2偏心揺動歯車82Aが減速後の第3回転数で回転すると、当該動力がブッシュリング61Aを介して各偏心揺動キャリアピン44Aに伝達される。その結果、複数の偏心揺動キャリアピン44Aと、これを有する出力フランジ30Aとが、2つの偏心揺動歯車とともに中心軸90Aを中心として、第3回転数で回転する。
【0037】
さらに、出力フランジ30Aに固定されている遊星キャリア34A、および遊星キャリア34Aに備えられている複数の遊星キャリアピン33Aが、出力フランジ30Aの回転とともに中心軸90Aを中心として回転する。これに伴い複数の遊星キャリアピン33Aが支持する複数の遊星転動体26Aが、中心軸90Aを中心として公転する。すなわち、複数の遊星転動体26Aは、太陽回転体14Aおよび偏心軸21Aの双方に接触しつつ、太陽回転体14Aまたは遊星キャリアピン33Aを介して動力を受けることによって、自転しながら中心軸90Aを中心として公転する。
【0038】
上述のとおり、本実施形態における減速機1Aの偏心軸21Aは、太陽回転体14Aを有する入力軸10Aによる動力によって、遊星転動体26Aを介して、入力軸10Aおよび太陽回転体14Aとは逆の方向へ、ゆっくりと回転する。減速機1Aの遊星転動体26Aは、インタナルリングを有する偏心軸21Aと、径方向に重なる位置に配置されている。これにより、減速機1Aを軸方向に薄型化できる。
【0039】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る減速機1Bを、中心軸90Bを含む平面で切断した縦断面図である。なお、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。
【0040】
図4に示すとおり、第2実施形態の減速機1Bは、中心軸90B付近の一部が、出力側に突出している。具体的には、太陽回転体14B、複数の遊星転動体26B、およびインタナルリング36Bが、出力フランジ30Bの第1円板体31Bよりも、出力側に突出している。このような構造でも、遊星転動体26Bの外周部に設けられたインタナルリング36Bを、減速機1Bが取り付けられる機器側に埋め込むことで、減速機1Bおよび機器全体を軸方向に薄型化できる。
【0041】
本実施形態の減速機1Bは、第1実施形態の減速機1Aと同様に、入力軸10B、減速機構20B、および出力フランジ30Bを有する。太陽回転体14Bを有する入力軸10Bは、モータを駆動させると、中心軸90Bを中心として、外部から入力される回転数である第1回転数で回転する。減速機構20Bは、複数の遊星転動体26Bと、偏心軸21Bと、複数の偏心揺動歯車(第1偏心揺動歯車22Bおよび第2偏心揺動歯車82B)と、インタナルリング36Bと、ハウジング23Bとを有する。
【0042】
複数の遊星転動体26Bは、太陽回転体14Bの周りに、等間隔に配置されている。各遊星転動体26Bは、中央に挿通孔260Bを有する。当該挿通孔260Bには、遊星キャリアピン33Bが挿入される。各遊星転動体26Bは、この遊星キャリアピン33Bによって、自転可能かつ公転可能に支持される。なお、複数の遊星キャリアピン33Bを有する遊星キャリア34Bは、後述の偏心軸21Bに固定されている。また、各遊星転動体26Aの外周部には、太陽回転体14Bが有する太陽歯141Bと噛み合う複数の遊星歯261Bが設けられている。このため、太陽回転体14Bが第1回転数で回転するのに伴い、各遊星転動体26Bは、入力軸10Bおよび太陽回転体14Bと同じ方向へ、第1回転数よりも低い第2回転数で中心軸90Bを中心として公転する。なお、複数の遊星転動体26Bは、太陽回転体14Bの周りに、不等配位置に配置されてもよい。
【0043】
偏心軸21Bは、中心軸90Bに対して偏心した外周面を有する筒状の部材である。偏心軸21Bは、中心軸90Bを中心とした複数の遊星転動体26Bの公転に伴い、遊星キャリア34Bを介して動力を受け、入力軸10Bおよび太陽回転体14Bと同じ方向へ、中心軸90Bを中心として第2回転数で回転する。
【0044】
また、偏心軸21Bの内周面と入力軸10Bとの径方向の間には、複数の第2軸受25Bが介在する。これにより、減速機1Bにおける各部材の配置精度を高めることができる。その結果、偏心軸21Bの回転が安定し、各部材の摩耗および損傷を抑制することができるとともに、減速機1Bを長寿命化することができる。
【0045】
なお、複数の第2軸受25Bのうちの少なくとも一つ(
図4の第2軸受25B1)は、玉軸受であることが望ましい。上述のとおり、遊星転動体26Bとして「はすば歯車」を用いた場合、軸方向に負荷が発生する。この場合、玉軸受を用いることで、発生した負荷を吸収しやすくなる。また、第2軸受25Bのうちの少なくとも一つ(
図4の第2軸受25B2)は、ニードル軸受であることが望ましい。これにより、減速機1Bを径方向に薄型化できる。
【0046】
インタナルリング36Bは、遊星転動体26Bよりも径方向外側に配置され、複数の遊星転動体26Bに接触する接触面を有する円環状の部材である。インタナルリング36Bは、出力フランジ30Bに固定されている。また、インタナルリング36Bは、内周部に、遊星歯261Bと噛み合う複数の内歯361Bを有する。複数の遊星転動体26Bは、それぞれ、太陽回転体14Bの太陽歯141Bと、インタナルリング36Bの内歯361Bとの双方と常に噛み合っている。
【0047】
第1偏心揺動歯車22Bは、偏心軸21Bの偏心した外周面211Bに、第1軸受24Bを介して、取り付けられている。したがって、第1偏心揺動歯車22Aは、偏心軸21Bの偏心した外周面211Bの中心である第1中心軸91Bを中心として、回転自在に支持される。同様に、第2偏心揺動歯車82Bは、偏心軸21Bの偏心した外周面811Bに、第1軸受84Bを介して、取り付けられている。したがって、第2偏心揺動歯車82Bは、偏心軸21Bの偏心した外周面811Bの中心である第2中心軸92Bを中心として、回転自在に支持される。
【0048】
出力フランジ30Bは、第1円板体31B、第2円板体32B、および偏心揺動歯車(第1偏心揺動歯車22Bおよび第2偏心揺動歯車82B)を軸方向に貫通する複数の偏心揺動キャリアピン44Bを有する。このため、偏心揺動歯車(第1偏心揺動歯車22Bおよび第2偏心揺動歯車82B)の回転に伴い、複数の偏心揺動キャリアピン44Bを介して出力フランジ30Bに動力が伝達される。
【0049】
さらに、偏心軸21Bと、出力フランジ30Bの第1円板体31B、および第2円板体32Bとの径方向の間には、第3軸受60Bが介在する。これにより、減速機1Bにおける出力フランジ30Bの配置精度をさらに高めることができる。その結果、第1実施形態と同様に出力フランジ30Bの回転が安定し、各部材の摩耗および損傷をより抑制することができるとともに、減速機1Bをより長寿命化することができる。
【0050】
なお、
図4に示すとおり、第3軸受60Bの少なくとも一部は、第2軸受の少なくとも一部と、軸方向に重なる位置に配置されることが望ましい。これにより、各々の回転中心を互いに揃えやすい。また、偏心軸21Bの厚みを薄くすることができ、減速機1Bを径方向に薄型化できる。
【0051】
上述のとおり、この実施形態では、互いに固定されたインタナルリング36Bおよび出力フランジ30Bが、複数の遊星転動体26Bおよび複数の偏心揺動キャリアピン44Bを介して動力を受ける。これに伴って、インタナルリング36Bおよび出力フランジ30Bは、入力軸10Bおよび太陽回転体14Bと逆の方向へ、第2回転数よりも低い第3回転数で中心軸90Bを中心として公転する。
【0052】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0053】
また、減速機の細部の形状については、本願の各図に示された形状と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。