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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-138210(P2017-138210A)
(43)【公開日】2017年8月10日
(54)【発明の名称】車体歪測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/08 20060101AFI20170714BHJP
   B61K 9/02 20060101ALI20170714BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20170714BHJP
【FI】
   G01M17/00 F
   B61K9/02
   G01B11/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-19487(P2016-19487)
(22)【出願日】2016年2月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 善之
(72)【発明者】
【氏名】佐野 幸司
(72)【発明者】
【氏名】金谷 哲右
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA09
2F065AA65
2F065BB27
2F065CC11
2F065DD02
2F065DD06
2F065FF41
2F065FF61
2F065GG04
2F065HH04
2F065HH13
2F065JJ00
(57)【要約】
【課題】 天井クレーンを必要としない車体歪測定装置を提供すること。
【解決手段】ジャッキ装置11A、12A、11B、12Bが、車両が走行可能なレールRの両側に配置されていること、ジャッキ装置11A、12A、11B、12Bは、枕木方向に移動可能な移動手段であるベース部材26、27を有し、車両がレールR上を走行するときには、退避位置にあり、車両が定位置にあるときに、車両の空気バネ座60の近傍に当接して車体Bを持ち上げること、を特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4箇所の空気バネ座を備える鉄道車両を4個のジャッキ装置により支え、各ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定する車体歪測定装置において、
前記ジャッキ装置が、前記鉄道車両が走行可能な軌道の両側に配置されていること、
前記ジャッキ装置は、枕木方向に移動可能な移動手段を有し、前記鉄道車両が前記軌道上を走行するときには、退避位置にあり、前記鉄道車両が定位置にあるときに、前記鉄道車両の前記空気バネ座の近傍に当接して前記車体を持ち上げること、
を特徴とする車体歪測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載する車体歪測定装置において、
前記空気バネ座の各々の箇所に、1個の取付棒を介してレーザ三次元測定装置のターゲットを取り付け、前記車体から離れて配置した前記レーザ三次元測定装置が、1個の前記ターゲットを用いて、前記ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、前記空気バネ座での前記車体の歪を測定すること、
を特徴とする車体歪測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載する車体歪測定装置において、
前記取付棒は所定の長さを備え、1個の前記ターゲットは、前記車体の側カウルの下方に位置すること、
を特徴とする車体歪測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4箇所の空気バネ座を備える鉄道車両を4個のジャッキ装置により支え、各ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定する車体歪測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運行している鉄道車両は、定期的に整備が行われている。整備作業では、台車と車体が分離され各々の整備が行われ、整備終了後、再び台車と車体とを組み付けて鉄道車両としている。例えば、整備終了後の試験測定として、試験装置上で模擬的に台車を車体に対して旋回させ、台車の旋回時の台車旋回抵抗、輪重、横圧等の測定を行う場合もある(特許文献1参照)。
また、台車を取り外した車体に関しては、4箇所の空気バネ座を備える鉄道車両を4個のジャッキ装置により支え、各ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定する車体歪測定装置が実施されている。
図14に、従来の車体歪測定装置の平面図を示し、図15に側面図を示し、図16に正面図を示す。
【0003】
車体歪測定装置は、互いが10〜20メートル離れて配置された2台のジャッキアップ測定装置101A、101Bを有する。ジャッキアップ測定装置101は、図16に示すように、ベース板102の両端に一対のジャッキ103、104が付設されている。ジャッキ103の上には支柱105が、ジャッキ104の上には支柱106が取り付けられている。支柱105、106の上端は各々、鉄道車両の車体Bの空気バネ座に当接する。ベース板102A、102Bは、図15に示すように、高さ水準の形成された敷板E上に設置されている。
ここで、車体Bの歪を測定するためには、4個の支柱の高さ水準を形成しておく必要がある。また、ジャッキ103とジャッキ104の高さ水準を出すためには、両者が同じベース板102上に配置されている必要がある。
車体歪測定装置に対して、台車から外された車体Bが、図示しない天井クレーンにより載置される。
載置した車体Bの4箇所の空気バネ座を、4個のジャッキ103A、104A、103B、104Bで持ち上げて、4個のジャッキに掛かる荷重を等しくしたときの、各空気バネ座の高さを測定することにより、車体Bの歪を測定する。このため、4個のジャッキの高さ水準を一定とすることは必須条件なのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-229975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の車体歪測定装置には次のような問題があった。
ジャッキアップ測定装置の一対のジャッキ103、104は、高さ水準を出すためにベース板102の上に付設されているため、一対のジャッキ103、104の間に、鉄道車両を通行させるための軌道(図14に一点鎖線110で示す。)を設けることができず、台車から外された車体Bをクレーンにより載置する必要があることから、天井クレーンを設置しなければならず、余分なコストが発生していた。また、昇降装置であるジャッキ103、104自体が測定器を構成するため、定期的に装置精度を測定し校正を行う必要があり煩雑であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決して、天井クレーンを必要としない車体歪測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の車体歪測定装置は、次の構成を有している。
(1)4箇所の空気バネ座を備える鉄道車両を4個のジャッキ装置により支え、各ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定する車体歪測定装置であって、ジャッキ装置が、鉄道車両が走行可能な軌道の両側に配置されていること、ジャッキ装置は、枕木方向に移動可能な移動手段を有し、鉄道車両が軌道上を走行するときには、退避位置にあり、鉄道車両が定位置にあるときに、鉄道車両の空気バネ座の近傍に当接して車体を持ち上げること、を特徴とする。
【0008】
(2)(1)に記載する車体歪測定装置において、前記空気バネ座の各々の箇所に、1個の取付棒を介してレーザ三次元測定装置のターゲットを取り付け、前記車体から離れて配置した前記レーザ三次元測定装置が、1個の前記ターゲットを用いて、前記ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、前記空気バネ座での前記車体の歪を測定すること、を特徴とする。
(3)(2)に記載する車体歪測定装置において、前記取付棒は所定の長さを備え、1個の前記ターゲットは、前記車体の側カウルの下方に位置すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車体歪測定装置は、次のような作用、効果を奏する。
(1)4箇所の空気バネ座を備える鉄道車両を4個のジャッキ装置により支え、各ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定する車体歪測定装置であって、ジャッキ装置が、鉄道車両が走行可能な軌道の両側に配置されていること、ジャッキ装置は、枕木方向に移動可能な移動手段を有し、鉄道車両が軌道上を走行するときには、退避位置にあり、鉄道車両が定位置にあるときに、鉄道車両の空気バネ座の近傍に当接して車体を持ち上げること、を特徴とするので、天井クレーンが無くても、ジャッキ装置により車体を等しい荷重で持ち上げることができ、その状態で4箇所の空気バネの高さを測定して、車体の歪を測定することができる。
【0010】
(2)(1)に記載する車体歪測定装置において、前記空気バネ座の各々の箇所に、1個の取付棒を介してレーザ三次元測定装置のターゲットを取り付け、前記車体から離れて配置した前記レーザ三次元測定装置が、1個の前記ターゲットを用いて、前記ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、前記空気バネ座での前記車体の歪を測定すること、を特徴とするので、レーザ三次元測定装置により、各空気バネ座に設けられた取付棒を介してターゲットを測定しているため、ジャッキ装置自体の高さ水準を出さなくても、4個のジャッキ装置が等しい荷重にあるときの、空気バネ座の高さを正確に測定することができる。そして、4個のジャッキ装置の高さ水準を出さなくても良いので、ベース板を必要とせず、ジャッキ間に軌道を配置することができる。
【0011】
(3)(2)に記載する車体歪測定装置において、前記取付棒は所定の長さを備え、1個の前記ターゲットは、前記車体の側カウルの下方に位置すること、を特徴とするので、レーザ三次元測定装置をどの場所に配置しても、1個のターゲットを確実に捉えることができるため、正確かつ簡便に車体の歪を測定することができる。取付棒の一端は、空気バネ座に垂直に固定され、取付棒の他端にターゲットが取り付けられているため、空気バネ座の高さを高精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車体歪測定装置により車体を測定している平面図である。
図2図1の側面図である。
図3図2の正面図である。
図4】ジャッキ装置の平面図である。
図5図4を下方向から見た側面図である。
図6図4の右方向から見た側面図である。
図7図4のXX断面の一部断面図である。
図8図4のYY断面図である。
図9】取付棒の構成を示す図である。
図10】車体歪測定方法の第1手順を示す図である。
図11】車体歪測定方法の第2手順を示す図である。
図12】車体歪測定方法の第3手順を示す図である。
図13】車体歪測定方法の第4手順を示す図である。
図14】従来の車体歪測定装置の平面図である。
図15図14の側面図である。
図16図14の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の車体歪測定装置の一実施の形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。図1に、車体歪測定装置により車体を測定している平面図を示し、図2図1の側面図を示し、図3図2の正面図を示す。
車体歪測定装置は、図1に示すように、鉄道車両が走行可能な軌道(一対のレール)Rの両側に配置されている4個のジャッキ装置11A、12A、11B、12Bを備える。4個のジャッキ装置11A、12A、11B、12Bは、各々が敷板Nの上に載置されている。
一対のジャッキ装置11A、12Aは各々、車体Bの前部台車取付部に両側に設けられた空気バネ座60の近傍位置に配置されている。一対のジャッキ装置11B、12Bは各々、車体Bの後部台車取付部に両側に設けられた空気バネ座60の近傍位置に配置されている。図2、3に示すように、4個のジャッキ装置11A、12A、11B、12Bにより、車体Bがある高さに保持されている。
車体Bから離れた地上にレーザ三次元測定装置55が配置されている。車体Bの4箇所の空気バネ座60には、取付棒50を介して、図9に示すように、レーザ三次元測定装置55のターゲット52が取り付けられている。なお、図2、3には、4本セットされた取付棒50が図示されているが、本実施形態では、1本の取付棒50を順次4箇所の空気バネ座60にセットすることにより車体Bを測定する。また、請求項で「空気バネ座の各々の箇所に、1個の取付棒を介してレーザ三次元測定装置のターゲットを取り付け」とは、図2、3のように、4本の取付棒50を取り付けた場合と、1本のみ取付棒50を取り付けた場合を含む。
【0014】
次に、ジャッキ装置11、12の構成について説明する。4個のジャッキ装置11A、12A、11B、12Bは、同じ装置なので、ジャッキ装置11として説明する。図4に、ジャッキ装置11の平面図を示し、図5図4を下方向から見た側面図を示し、図6図4の右方向から見た側面図を示す。図7に、図4のXX断面の一部断面図を示す。
図4、5、6に示すように、2本のベース部材26、27が連結板43により連結され、移動台を構成している。ベース部材26には、外側に突出して2個の支え板31が付設されている。支え板31の先端には、接触板32が取り付けられている。同様に、ベース部材27には、外側に突出して2個の支え板31が付設されている。支え板31の先端には、接触板32が取り付けられている。
【0015】
次に、ベース部材26、27の構造を説明する。図8に、図4のYY断面図を示す。ベース部材27の構造は、ベース部材26と同じなので、ベース部材26について説明する。ベース部材26のベース本体26aには、2個の車輪装置28、29が付設されている。
車輪装置28、29は各々、中空状のガイド筒44がベース本体26aに固設されている。ガイド筒44には、車輪軸40が摺動可能に保持されている。車輪軸40の下端には、ブラケット39が固設され、ブラケット39には、車輪38が回動可能に保持されている。また、2個の車輪軸40は、連結板41により連結されている。連結板41には、上下駆動用の油圧シリンダ45のロッドに固設された駆動板42が連結されている。また、ベース本体26aの下面には、接触板30が固設されている。
油圧シリンダ45が正駆動されることにより、油圧シリンダ45のロッドが突出して、車輪38が敷板Nに当接して移動台が移動可能状態となる。また、油圧シリンダ45を逆駆動することにより、ロッドが引っ込んで、車輪38が敷板Nから離間して接触板30が地面に敷かれた敷板Nに当接する。
【0016】
図4、5に示すように、連結板43の中央部には、ジャッキ柱21が直立して固定されている。ジャッキ柱21の対向する側面には、一対の取手22が付設されている。取手22は、作業者がジャッキ装置11を任意の位置に移動させるための物である。また、一方の取手22の近くには、作業者がジャッキ装置11を操作するための操作盤23が取り付けられている。
図6に示すように、ジャッキ柱21の一側面には、スリット21aが形成されている。スリット21aから、ジャッキ部材37が突出している。ジャッキ部材37の受け部には、荷重測定用のロードセル46が付設されている。
図7に示すように、ジャッキ柱21内には、外周にネジ部が形成されたスクリュ軸33が直立して回転可能に保持されている。スクリュ軸33には、内側にネジ部と係合する上下移動体34が直線移動可能に取り付けられている。上下移動体34には、ブラケット36が付設され、ブラケット36には、ジャッキ部材37が取り付けられている。ブラケット36は、図示しない回り止めにより、上下動は可能であるが回転しないように保持されている。
また、スクリュ軸33の上端は、減速機25の出力軸と嵌合されている。減速機25は、モータ24に接続されている。これにより、スクリュ軸33は、モータ24により正逆方向に回転駆動される。
【0017】
次に、ジャッキ装置11の簡単な作用について説明する。作業者は、操作盤23のスイッチで油圧シリンダ45を駆動させて、油圧シリンダ45のロッドを突出させることにより、ジャッキ装置11の車輪38を敷板Nに当接させ、さらに接触板30を敷板Nから離間させる。これにより、ジャッキ装置11は、自由に移動可能となる。
この状態で作業者は、一対の取手22を用いてジャッキ装置11のロードセル46が、車体Bの空気バネ座60の近傍の所定の箇所に当接する位置に移動させる。この状態では、未だ、ロードセル46には荷重が掛かっていない。
次に、油圧シリンダ45を逆駆動させることにより、ロッドが引っ込んで、車輪38が地面から離間して接触板30が地面に敷かれた敷板Nに当接する。次に、モータ24を駆動して、スクリュ軸33を回転させて、ジャッキ部材37を上昇させ、ロードセル46を車体Bの空気バネ座60の近傍の所定の箇所に当接させる。
作業者は、これらの作業を4個のジャッキ装置11A、12A、11B、12Bで順次行う。または、数名の作業者が並行作業しても良い。
【0018】
図9に、取付棒50の構成を示す。所定の長さを有する棒部材51の上端には、永久磁石を備えるマグネットホルダ53が固設されている。マグネットホルダ53の上面には、車体Bの空気バネ座60の凹部と嵌合する凸部54が形成されている。凸部54が空気バネ座60の凹部に嵌合して、マグネットホルダ53が車体Bに磁力で吸着することにより、棒部材51は、車体Bの空気バネ座60から垂直に垂下される。
棒部材51の先端には、レーザ三次元測定装置55用のターゲット52が取り付けられている。ターゲット52は、レーザ三次元測定装置55から発せられたレーザ光をレーザ三次元測定装置55に反射する。レーザ三次元測定装置55は、ターゲット52からの反射光を受けて、ターゲット52の三次元位置を正確に算出することができる。
【0019】
次に、上記構成を有するレーザ三次元測定装置55を用いて車体Bの歪を測定する方法について説明する。図10〜13に測定手順を示す。
図10は、仮台車(または本台車)に搭載した車体Bを牽引車等により一対のレールR上を移動させ、図1に示す所定の位置に停車させる。このとき、図10(b)に示すように、4個のジャッキ装置11A、12A、11B、12Bは、いずれも車体Bに接触しない位置に退避している。
次に、図10の状態で、仮台車(または本台車)と車体Bとを切り離す作業を行う。
【0020】
次に、図11に示すように、4個のジャッキ装置11A、12A、11B、12Bを用いて、車体Bを上昇させる。この作業を詳細に説明する。
すなわち、作業者は、ジャッキ装置11Aにおいて、油圧シリンダ45を駆動させて、ロッドを突出させることにより、ジャッキ装置11Aの車輪38を敷板Nに当接させ、さらに接触板30を敷板Nから離間させる。これにより、ジャッキ装置11は、自由に移動可能となる。
作業者は、一対の取手22を用いてジャッキ装置11のロードセル46が、車体Bの空気バネ座60の近傍の所定の箇所に当接する位置に移動させる。この状態では、未だ、ロードセル46には荷重が掛かっていない。次に、油圧シリンダ45を逆駆動させることにより、ロッドが引っ込んで、車輪38が地面から離間して接触板30が地面に敷かれた敷板Nに当接する。次に、モータ24を駆動して、スクリュ軸33を回転させて、ジャッキ部材37を上昇させ、ロードセル46を車体Bの空気バネ座60の近傍の所定の箇所に当接させる。
これらの作業を残りの3個のジャッキ装置12A、11B、12Bで順次行う。これにより、図11(b)の矢印L1、L2に示すように、ジャッキ装置11A、12A、11B、12Bが車体Bをリフトアップ(矢印L3で示す。)する。
【0021】
車体Bがリフトアップされることにより、車体Bが仮台車(または本台車)から切り離されるので、仮台車(または本台車)を搬出する。
次に、図12、13に示すように、車体Bの4箇所の空気バネ座60のうちの一つに1本の取付棒50とレーザ三次元測定装置55をセットする。この状態で、車体Bがカウルを有している場合であっても、取付棒50の棒部材51の長さが十分長いので、1個のターゲット52が車体Bの最下面より下に位置している。1本の取付棒50を順次4箇所(ジャッキ装置11A、12A、11B、12B)の空気バネ座60にセットすることにより、レーザ三次元測定装置55でターゲット52の三次元位置の変位量を測定する。なお、測定する際、1本の取付棒50を順次4箇所の空気バネ座60に取り付けて測定するが、説明が煩雑となるため、取付棒50の移動については説明を省略する。
まず、4個のジャッキ装置11A、12A、11B、12Bのモータ24を駆動して、各々のロードセル46を車体Bの所定箇所に当接させ、4個のジャッキ装置11A、12A,11B、12Bの高さを同じ高さに合わせる。
次に、図12に示すように、ロードセル46により、4個のジャッキ装置11A、12A、11B、12Bの荷重差を測定する。ロードセル46の荷重差は、1kN(0.1ton)単位で測定可能である。この工程により、歪みの測定を行う前段階として、4点のレベル差を均一にしたときの荷重差を測定するとともに、荷重差により歪みがあるかどうかを確認する。
ジャッキ装置11A、12Aが位置する前部台車側を基準とするため、ジャッキ装置11A、12Aを操作して前部台車取付部に設けられた空気バネ座60のレベルを均一にする。そして、ジャッキ装置11B、12Bを操作して、ジャッキ装置11B、12Bが位置する後部台車側の荷重を均一にする。次に、前部台車側の空気バネ座60のレベルが均一になり、後部台車側の荷重が均一になったとき、図12に示すように、レーザ三次元測定装置(レーザトラッカ)55にて後部台車側のターゲット52の三次元位置の変位量(レベル差)を測定し、記録する。
【0022】
次に、後部台車側を基準とするため、ジャッキ装置11B、12Bを操作して後部台車取付部に設けられた空気バネ座60のレベルを均一にする。そして、ジャッキ装置11A、12Aを操作して、前部台車側の荷重を均一にする。次に、図13に示すように、レーザ三次元測定装置55にて前部台車側のターゲット52の三次元位置の変位量(レベル差)を測定し、記録する。
【0023】
以上詳細に説明したように、本実施形態の車体歪測定装置によれば、以下の効果を奏する。
(1)4箇所の空気バネ座60を備える車両を4個のジャッキ装置11A、12A、11B、12Bにより支え、ジャッキ装置11A、12A、又は11B、12Bの荷重を等しくしたときの、空気バネ座60での車体Bの歪を測定する車体歪測定装置であって、ジャッキ装置11A、12A、11B、12Bが、車両が走行可能なレールRの両側に配置されていること、ジャッキ装置11A、12A、11B、12Bは、枕木方向に移動可能な移動手段であるベース部材26、27を有し、車両がレールR上を走行するときには、退避位置にあり、車両が定位置にあるときに、車両の空気バネ座60の近傍に当接して車体Bを持ち上げること、を特徴とするので、天井クレーンが無くても、ジャッキ装置11A、12A、11B、12Bにより車体Bを等しい荷重で持ち上げることができ、その状態で4箇所の空気バネ座60の高さを測定して、車体Bの歪を測定することができる。
【0024】
(2)(1)に記載する車体歪測定装置において、空気バネ座60の各々の箇所に、1個の取付棒50を介してレーザ三次元測定装置55のターゲット52を取り付け、車体Bから離れて配置したレーザ三次元測定装置55が、1個のターゲット52を用いて、ジャッキ装置11A、12A、又は11B、12Bの荷重を等しくしたときの、空気バネ座60での車体Bの歪を測定すること、を特徴とするので、レーザ三次元測定装置55により、各空気バネ座60に設けられた取付棒50を介してターゲット52を測定しているため、ジャッキ装置11A、12A、11B、12B自体の高さ水準を出さなくても、4個のジャッキ装置11A、12A、又は11B、12Bが等しい荷重にあるときの、空気バネ座60の高さを正確に測定することができる。そして、4個のジャッキ装置11A、12A、11B、12Bの高さ水準を出さなくても良いので、ベース板を必要とせず、ジャッキ間にレールRを配置することができる。
【0025】
(3)(2)に記載する車体歪測定装置において、取付棒50は所定の長さを備え、1個のターゲット52は、車体Bの側カウルの下方に位置すること、を特徴とするので、レーザ三次元測定装置55をどの場所に配置しても、1個のターゲット52を確実に捉えることができるため、正確かつ簡便に車体Bの歪を測定することができる。取付棒50の一端は、空気バネ座60に垂直に固定され、取付棒50の他端にターゲット52が取り付けられているため、空気バネ座60の高さを高精度で測定することができる。
【0026】
本発明の鉄道車両の車体歪測定装置については、上記実施の形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
本実施形態では、レーザ三次元測定装置55を車体Bの中央付近に設置しているが、車体Bから外れた位置に設置しても同様である。
本実施形態では、精度を一定に保つため、4箇所のバネ座60の各々の箇所に対し、1本の取付棒50を順次セットすることで4箇所の三次元位置を測定しているが、4箇所の空気バネ座60に4本の取付棒50を各々セットしても同様である。また、前部台車側(ジャッキ装置11A、12A)と後部台車側(ジャッキ装置11B、12B)に各々2本ずつ取付棒50をセットしても同様である。この場合、より効率良く4箇所の三次元位置を測定することができる。
【符号の説明】
【0027】
B 車体
R レール
11A、12A、11B、12B ジャッキ装置
26、27 ベース部材
38 車輪
45 油圧シリンダ
50 取付棒
52 ターゲット
55 レーザ三次元測定装置
60 空気バネ座
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2017年3月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の車体歪測定装置は、次の構成を有している。
(1)4箇所の空気バネ座を備える鉄道車両を4個のジャッキ装置により支え、各ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定する車体歪測定装置であって、ジャッキ装置が、鉄道車両が走行可能な軌道の両側に配置されていること、ジャッキ装置は、枕木方向に移動可能な移動手段を有し、鉄道車両が軌道上を走行するときには、退避位置にあり、鉄道車両が定位置にあるときに、鉄道車両の空気バネ座の近傍に当接して車体を持ち上げること、空気バネ座の各々の箇所に、取付棒を介してレーザ三次元測定装置のターゲットを取り付け、車体から離れて配置したレーザ三次元測定装置が、ターゲットを用いて、ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定すること、を特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
(2)4箇所の空気バネ座を備える鉄道車両を4個のジャッキ装置により支え、各ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定する車体歪測定装置において、ジャッキ装置が、鉄道車両が走行可能な軌道の両側に配置されていること、ジャッキ装置は、枕木方向に移動可能な移動手段を有し、鉄道車両が軌道上を走行するときには、退避位置にあり、鉄道車両が定位置にあるときに、鉄道車両の空気バネ座の近傍に当接して車体を持ち上げること、前記空気バネ座の各々の箇所に、1個の取付棒を介してレーザ三次元測定装置のターゲットを取り付け、前記車体から離れて配置した前記レーザ三次元測定装置が、1個の前記ターゲットを用いて、前記ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、前記空気バネ座での前記車体の歪を測定すること、を特徴とする。
(3)(2)に記載する車体歪測定装置において、前記取付棒は所定の長さを備え、1個の前記ターゲットは、前記車体の側カウルの下方に位置すること、を特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の車体歪測定装置は、次のような作用、効果を奏する。
(1)4箇所の空気バネ座を備える鉄道車両を4個のジャッキ装置により支え、各ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定する車体歪測定装置であって、ジャッキ装置が、鉄道車両が走行可能な軌道の両側に配置されていること、ジャッキ装置は、枕木方向に移動可能な移動手段を有し、鉄道車両が軌道上を走行するときには、退避位置にあり、鉄道車両が定位置にあるときに、鉄道車両の空気バネ座の近傍に当接して車体を持ち上げること、空気バネ座の各々の箇所に、取付棒を介してレーザ三次元測定装置のターゲットを取り付け、車体から離れて配置したレーザ三次元測定装置が、ターゲットを用いて、ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定すること、を特徴とするので、天井クレーンが無くても、ジャッキ装置により車体を等しい荷重で持ち上げることができ、その状態で4箇所の空気バネの高さを測定して、車体の歪を測定することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
(2)4箇所の空気バネ座を備える鉄道車両を4個のジャッキ装置により支え、各ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定する車体歪測定装置において、ジャッキ装置が、鉄道車両が走行可能な軌道の両側に配置されていること、ジャッキ装置は、枕木方向に移動可能な移動手段を有し、鉄道車両が軌道上を走行するときには、退避位置にあり、鉄道車両が定位置にあるときに、鉄道車両の空気バネ座の近傍に当接して車体を持ち上げること、前記空気バネ座の各々の箇所に、1個の取付棒を介してレーザ三次元測定装置のターゲットを取り付け、前記車体から離れて配置した前記レーザ三次元測定装置が、1個の前記ターゲットを用いて、前記ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、前記空気バネ座での前記車体の歪を測定すること、を特徴とするので、レーザ三次元測定装置により、各空気バネ座に設けられた取付棒を介してターゲットを測定しているため、ジャッキ装置自体の高さ水準を出さなくても、4個のジャッキ装置が等しい荷重にあるときの、空気バネ座の高さを正確に測定することができる。そして、4個のジャッキ装置の高さ水準を出さなくても良いので、ベース板を必要とせず、ジャッキ間に軌道を配置することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4箇所の空気バネ座を備える鉄道車両を4個のジャッキ装置により支え、各ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定する車体歪測定装置において、
前記ジャッキ装置が、前記鉄道車両が走行可能な軌道の両側に配置されていること、
前記ジャッキ装置は、枕木方向に移動可能な移動手段を有し、前記鉄道車両が前記軌道上を走行するときには、退避位置にあり、前記鉄道車両が定位置にあるときに、前記鉄道車両の前記空気バネ座の近傍に当接して前記車体を持ち上げること、
前記空気バネ座の各々の箇所に、取付棒を介してレーザ三次元測定装置のターゲットを取り付け、前記車体から離れて配置した前記レーザ三次元測定装置が、前記ターゲットを用いて、前記ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、前記空気バネ座での前記車体の歪を測定すること、
を特徴とする車体歪測定装置。
【請求項2】
4箇所の空気バネ座を備える鉄道車両を4個のジャッキ装置により支え、各ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、空気バネ座での車体の歪を測定する車体歪測定装置において、
前記ジャッキ装置が、前記鉄道車両が走行可能な軌道の両側に配置されていること、
前記ジャッキ装置は、枕木方向に移動可能な移動手段を有し、前記鉄道車両が前記軌道上を走行するときには、退避位置にあり、前記鉄道車両が定位置にあるときに、前記鉄道車両の前記空気バネ座の近傍に当接して前記車体を持ち上げること、
前記空気バネ座の各々の箇所に、1個の取付棒を介してレーザ三次元測定装置のターゲットを取り付け、前記車体から離れて配置した前記レーザ三次元測定装置が、1個の前記ターゲットを用いて、前記ジャッキ装置の荷重を等しくしたときの、前記空気バネ座での前記車体の歪を測定すること、
を特徴とする車体歪測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載する車体歪測定装置において、
前記取付棒は所定の長さを備え、1個の前記ターゲットは、前記車体の側カウルの下方に位置すること、
を特徴とする車体歪測定装置。