【課題】レジストパターンの耐熱性を向上させ、かつ溶剤に対する溶解性を下げることができる、塗布性に優れた表面処理用組成物の提供。また、その表面処理用組成物を用いたレジストパターンの表面処理方法、ならびにその表面処理用組成物を用いたレジストパターンの形成方法の提供。
【解決手段】溶媒と、前記溶媒に可溶なポリシロキサン化合物とを含んでなり、前記ポリシロキサン化合物を構成するケイ素原子が、窒素で置換された炭化水素基と結合し、前記炭化水素基中のケイ素原子と直接結合している原子が炭素原子であることを特徴とする、レジストパターンの表面処理用組成物。また、その組成物を用いた表面処理方法、ならびにレジストパターンの形成方法。
溶媒と、前記溶媒に可溶なポリシロキサン化合物とを含んでなり、前記ポリシロキサン化合物を構成するケイ素原子が、窒素で置換された炭化水素基と結合し、前記炭化水素基中のケイ素原子と直接結合している原子が炭素原子であることを特徴とする、レジストパターンの表面処理用組成物。
一般式(II)で表される繰り返し単位を有するポリシロキサン化合物が、6面体の頂点の位置にSi原子が配置され、隣接するSi原子同士が酸素原子を介して結合されているSi8O12の構造である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
現像済みレジストパターン表面に、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を接触させることを含んでなることを特徴とする、現像済みレジストパターンの表面処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
表面処理用組成物
本発明による表面処理用組成物(以下、簡単に「組成物」ということがある)は、溶媒と、前記溶媒に可溶なポリシロキサン化合物とを含んでなるものである。以下、本発明による組成物に含まれる各成分について、詳細に説明する。
【0012】
(A)ポリシロキサン化合物
本発明によるポリシロキサン化合物は、化合物を構成するケイ素原子が、窒素で置換された炭化水素基と結合し、前記炭化水素基中のケイ素原子と直接結合している原子が炭素原子であることを特徴とするものである。
【0013】
ポリシロキサンは、Si−O−Si結合を含む重合体をさす。本発明において用いられるポリシロキサンは前記した特定の有機置換基を有する有機ポリシロキサンである。このようなポリシロキサンは、窒素で置換された炭化水素基の他、一般にシラノール基またはアルコキシシリル基を有するものである。このようなシラノール基およびアルコキシシリル基とはシロキサン骨格を形成するケイ素に直接結合した水酸基およびアルコキシ基を意味する。
【0014】
本発明において用いられるポリシロキサンの主鎖構造は特に制限されず、目的に応じて任意のものから選択することができる。ポリシロキサンの骨格構造は、ケイ素原子に結合している酸素数に応じて、シリコーン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が2)、シルセスキオキサン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が3)、およびシリカ骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が4)に分類できる。本発明においては、主に、シリコーン骨格またはシルセスキオキサン骨格であることが好ましい。ポリシロキサン分子が、これらの骨格構造の複数の組み合わせを含んだものであってもよいし、複数の構造を有するポリシロキサン分子の混合物であってもよい。
【0015】
本発明によるポリシロキサン化合物は、以下の一般式(I)または(II)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【化1】
式中、
L
1は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数6〜20のアリーレン基であり、
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、窒素含有基で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、または窒素含有基で置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基であり、
R
3は、水素原子、水酸基、窒素含有基で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または窒素含有基で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【化2】
式中、
L
2は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数6〜20のアリーレン基であり、
R
4およびR
5は、それぞれ独立に、水素原子、窒素含有基で置換されていてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、または窒素含有基で置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基である。
なお、本発明において、窒素含有基とは、アミノ基、アミド基、ニトロ基、イミド結合含有基、アミド結合含有基など、構造中に窒素原子を含む基である。窒素含有基は、式(I)中の−L
1−NR
1R
2と同じ構造を有する基であってもよい。本発明においては、窒素含有基は、これらのうち、アミノ基、モノアルキル置換アミノ基、またはジアルキル置換アミノ基が好ましい。
【0016】
一般式(I)において、L
1は、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、フェニレン基、ナフタレンジイル基、およびアントラセンジイル基などが挙げられる。特に、L
1がトリメチレン基である化合物は、その原料となるモノマーが入手しやすく、良好な保存安定性のため好ましい。
【0017】
一般式(I)において、R
1およびR
2としては、例えば水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、フェニル基、アミノエチル基、1,3−ジメチル−ブチリデン基およびビニルベンジル基などが挙げられる。特にR
1およびR
2が同時に水素原子である化合物は、その原料となるモノマーが入手し易く、煩雑な工程を必要とせず製造できるため好ましい。
【0018】
一般式(I)において、R
3としては、例えば、水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、およびアミノアルキル基などが挙げられる。特に、R
3が水酸基である化合物は、その原料となるモノマーがアルコキシ基の加水分解で生じるため好ましい。
【0019】
一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリシロキサン化合物の具体例としては、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルシロキサン、3−アミノプロピルシロキサン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデンプロピルシロキサン、N−フェニル−3−アミノプロピルシロキサンおよび3−ウレイドプロピルメチルシロキサンなどが挙げられ、その中でもは、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルシロキサン、アミノプロピルシロキサンは、入手しやすいため、好ましい。
【0020】
一般式(II)において、L
2は、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、シクロヘキシル基、およびフェニレン基などが挙げられる。特に、L
2がトリメチレン基である化合物は、その原料となるモノマーが入手しやすく、保存安定性が良いため好ましい。
【0021】
一般式(II)において、R
4およびR
5としては、例えば水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、フェニル基、アミノエチル基、1,3−ジメチル−ブチリデン基およびビニルベンジル基などが挙げられる。特にR
4およびR
5が同時に水素原子である化合物は、その原料となるモノマーが入手し易く、煩雑な工程を必要とせず製造できるため好ましい。
【0022】
一般式(II)で表される繰り返し単位を有するポリシロキサン化合物の具体例としては、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルシルセスキオキサン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデンプロピルシルセスキオキサン、N−フェニル−3−アミノプロピルシルセスキオキサン、およびアミノプロピルシルセスキオキサンなどが挙げられ、その中でもアミノプロピルシルセスキオキサンは、原料のモノマーが入手しやすいため、好ましい。
【0023】
一般式(II)で表される繰り返し単位を有するポリシロキサン化合物は、6面体の頂点の位置にSi原子が配置され、隣接するSi原子同士が酸素原子を介して結合されているSi
8O
12の構造であることが好ましい。ただし、6面体構造の一部が開裂して、一般式(II)で表される繰り返し単位に、一般式(I)で表される繰り返し単位が結合した構造のポリシロキサン化合物も、本発明による組成物に用いることもできる。
【0024】
本発明によるポリシロキサン化合物の質量平均分子量は、通常200〜100,000である。好ましくは、300〜10,000であり、より好ましくは300〜5,000である。ここで、質量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるスチレン換算質量平均分子量である。
【0025】
(B)溶媒
本発明による組成物は、溶媒を含んでなる。本発明による組成物は、一般的にレジストパターン上に直接塗布される。このため、組成物がレジスト膜に影響を与え、パターン形状の悪化などを起こさないものであることが望ましい。このため、レジスト膜に影響の少ない水の含有率が高い水性溶媒であることが好ましい。典型的には溶媒として水が用いられる。このような水性溶媒に用いられる水としては、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理等により、有機不純物、金属イオン等が除去されたものが好ましい。
【0026】
また、組成物に含まれる溶媒の含有率は、目的に応じて調整されるが、一般に組成物の総質量を基準として、0.1〜30質量%であり、1〜10質量%であることが好ましい。ポリシロキサン化合物の含有率は過度に高いと形成されると、極紫外光の吸収が大きくなることがあるので、注意が必要である。
【0027】
なお、組成物の成分の溶解性を改良することなどを目的として、前記水性溶媒は、その総重量を基準として30重量%以下の有機溶媒を少量含むものであってもよい。そのような混合溶媒に用いられる有機溶媒としては、(a)炭化水素、例えばn−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン等、(b)アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等、(c)ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン等、および(d)エステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等、(e)エーテル、例えばジエチルエーテル、ジブチルエーテル等、(f)その他の極性溶媒、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、アルキルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート等、などから目的に応じて任意のものを用いることができる。これらのうち、炭素数が1〜20のアルコール、特にメチルアルコール、エチルアルコール、またはイソプロピルアルコールはレジストに対する影響が少ないので好ましいものである。
【0028】
本発明による組成物は、前記した(A)および(B)を必須とするものであるが、必要に応じて、更なる添加剤を組み合わせることができる。これらの組み合わせることができる材料について説明すると以下の通りである。なお、組成物全体にしめる(A)および(B)以外の成分は、全体の重量に対して、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。
【0029】
更なる添加剤の例として、例えば、界面活性剤、酸、塩基等が挙げられる。これらの成分は本発明の効果を損なわない種類および添加量の範囲内で用いられるべきである。
【0030】
界面活性剤は、組成物の均一性の維持、塗布性の改良などを目的として、用いられる。組成物における界面活性剤の含有率は、レジストの表面粗さの改良効果を最大に発揮させるために、組成物の全質量を基準として50〜100,000ppmとされることが好ましく、50〜50,000ppmであることがより好ましく、50〜20,000ppmであることが最も好ましい。界面活性剤の含有量が多すぎると、現像不良などの問題が起こることがあるので注意が必要である。
【0031】
酸または塩基は、組成物のpHを調整したり、各成分の溶解性を改良するために用いられる。また、塩基は、露光により発生した酸の拡散距離を制御するために加えられ得る。この拡散距離の制御により、解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくすることができる。用いられる酸または塩基は本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択できるが、例えばカルボン酸、アミン類、アンモニウム塩が挙げられる。これらには、脂肪酸、芳香族カルボン酸、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、アンモニウム化合物類が包含され、これらは任意の置換基により置換されていてもよい。より具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0032】
本発明による組成物はその他、さらに殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、および/または防カビ剤を含んでもよい。これらの薬剤はバクテリアまたは菌類が経時した組成物中で繁殖するのを防ぐために用いられる。これらの例には、フェノキシエタノール、イソチアゾロン等のアルコールが包含される。日本曹達株式会社から市販されているベストサイド(商品名)は特に有効な防腐剤、防カビ剤、および殺菌剤である。典型的には、これらの薬剤は組成物の性能には影響を与えないものであり、通常、組成物の全質量を基準として1%以下、好ましくは0.1%以下、また好ましくは0.001%以下の含有量とされる。
【0033】
パターン形成方法
次に、本発明によるレジストパターンの形成方法について説明する。本発明の表面処理用組成物が適用される代表的なパターン形成方法をあげると、次のような方法が挙げられる。
【0034】
まず、必要に応じて前処理された、シリコン基板、ガラス基板等の基板の表面に、感光性樹脂組成物をスピンコート法など従来から公知の塗布法により塗布して、感光性樹脂組成物層を形成させる。感光性樹脂組成物の塗布に先立ち、反射防止膜を基板表面に形成させてもよい。このような反射防止膜により断面形状および露光マージンを改善することができる。
【0035】
本発明のパターン形成方法には、従来知られている何れの感光性樹脂組成物を用いることもできる。本発明のパターン形成方法に用いることができる感光性樹脂組成物の代表的なものを例示すると、ポジ型では、例えば、キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とからなるもの、化学増幅型感光性樹脂組成物などが、ネガ型では、例えば、ポリケイ皮酸ビニル等の感光性基を有する高分子化合物を含むもの、芳香族アジド化合物を含有するもの或いは環化ゴムとビスアジド化合物からなるようなアジド化合物を含有するもの、ジアゾ樹脂を含むもの、付加重合性不飽和化合物を含む光重合性組成物、化学増幅型ネガ型感光性樹脂組成物などが挙げられる。
【0036】
ここでキノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とからなるポジ型感光性樹脂組成物において用いられるキノンジアジド系感光剤の例としては、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸、これらのスルホン酸のエステル或いはアミドなどが、またアルカリ可溶性樹脂の例としては、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、アクリル酸或はメタクリル酸の共重合体などが挙げられる。ノボラック樹脂としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール等のフェノール類の1種又は2種以上と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド類の1種以上から製造されるものが好ましいものとして挙げられる。
【0037】
また、化学増幅型の感光性樹脂組成物は、ポジ型、ネガ型、およびネガ型有機現像レジストのいずれであっても本発明のパターン形成方法に用いることができる。化学増幅型レジストは、紫外線照射により酸を発生させ、この酸の触媒作用による化学変化により紫外線照射部分の現像液に対する溶解性を変化させてパターンを形成するもので、例えば、紫外線照射により酸を発生させる酸発生化合物と、酸の存在下に分解しフェノール性水酸基或いはカルボキシル基のようなアルカリ可溶性基が生成される酸感応性基含有樹脂からなるもの、アルカリ可溶樹脂と架橋剤、酸発生剤からなるものが挙げられる。
【0038】
基板上に形成された感光性樹脂組成物層は、例えばホットプレート上でプリベークされて感光性樹脂組成物中の溶剤が除去され、厚さが通常0.03〜10μm程度のレジスト膜とされる。プリベーク温度は、用いる溶剤或いは感光性樹脂組成物により異なるが、通常20〜200℃、好ましくは50〜150℃程度の温度で行われる。
【0039】
レジスト膜はその後、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、軟X線照射装置、電子線描画装置など公知の照射装置を用い、必要に応じマスクを介して露光が行われる。
【0040】
露光後、必要に応じ露光後ベーク(PEB)を行った後、例えばパドル現像などの方法で現像が行われ、レジストパターンが形成される。レジストの現像は、通常アルカリ性現像液を用いて行われる。アルカリ性現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)などの水溶液或いは水性溶液が用いられる。ネガ型有機現像レジストの場合には、現像液として有機溶剤が用いられ、例えば、酢酸n−ブチル(nBA)、メチルn−アミルケトン(MAK)等が用いられる。現像処理後、リンス液を用いてレジストパターンのリンス(洗浄)が行われる。なお、形成されたレジストパターンは、エッチング、メッキ、イオン拡散、染色処理などのレジストとして用いられ、その後必要に応じ剥離される。
【0041】
次いで、このレジストパターンを覆うように本発明による組成物を塗布などによって接触させ、レジストパターンの表面上に被覆層を形成させる。なお、表面処理用組成物の塗布に先立って、現像後のレジストパターンを純水などにより洗浄することが好ましい。組成物を塗布する前のレジストパターンは、乾燥処理をすることで、レジストパターン表面、またはレジストパターンを膨潤させている水分または溶媒が除去されたものであってもよいし、現像後または洗浄後の未乾燥の状態であってもよい。乾燥処理を行う場合には、現像または洗浄の後に、引き続き乾燥処理を行い、さらに引き続いて組成物の塗布(被覆層の形成)を行うことができる。このとき、乾燥処理とは、積極的にレジストパターンの水分または溶媒を除去する処理であり、例えば加熱、乾燥気体の吹きつけなどが挙げられる。加熱は、例えば30〜170℃の環境に10〜300秒間保持することで行うことができる、乾燥気体を吹き付ける場合、気体としては空気の他、窒素、アルゴンなどの不活性気体を用いることができる。また、未乾燥の状態で組成物を塗布する場合には、現像または洗浄の後に連続的に組成物の塗布を行うことができる。この際、現像または洗浄の後、積極的な乾燥処理を行わないことが一般的である。さらには、現像または洗浄の後のレジストパターンを乾燥させたあと、保存または搬送し、別に独立した工程において本発明による組成物の塗布を行うこともできる。
【0042】
被覆層が形成されたレジストをベーク(ミキシングベーク)することにより、被覆層成分のレジストへの浸透、レジスト樹脂層と被覆層の界面近傍における反応が起こり、レジストパターン表面の酸がシロキサンポリマーのアミノ基と水素結合で固まり、層が生じ、レジスト表面がシリコン材に改質される。そして、最後に未反応の表面処理用組成物を、水や溶剤によりリンス処理して除去し、レジスト表面が改質されたパターンを得ることができる。
【0043】
本発明によるパターン形成方法において、組成物を塗布する方法は、例えばレジスト樹脂組成物を塗布する際に従来から使用されている、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、浸漬塗布法、ローラーコート法などの任意の方法を用いることができる。塗布された被覆層は、必要に応じベークされる。
【0044】
被覆層の加熱処理(ミキシングベーク)の条件は、必要に応じて行われるものであるが、必要である場合の条件は、例えば40〜200℃、好ましくは50〜100℃、の温度、10〜300秒、好ましくは30〜120秒程度である。形成される被覆層の膜厚は、加熱処理の温度と時間、使用するレジスト樹脂組成物の種類などに応じて適宜調整することができる。一般に、組成物塗布直後の被覆層の厚さはレジストパターンの表面からの厚さで、一般に0.001〜0.5μmとするのが一般的である。
【0045】
その後、余剰の表面処理用組成物を洗浄処理液により洗浄処理し、さらに乾燥することが好ましい。洗浄処理液としては、組成物中の溶媒と同一のもの、例えば純水が用いられることが好ましい。その後、必要に応じて、形成されたパターンはポストベークされる。
【0046】
このようにして得られたレジストパターンは、表面近傍にあるポリシラザン化合物のほとんどがシリコンに改質されている。そして、本発明によるレジストパターンはエッチング耐性が高く、溶剤に対する溶解性が低いものである。
【0047】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
【0048】
ポリシロキサン化合物1の合成:アミノプロピルシロキサンの調製
3−アミノプロピルトリエトキシシラン100mlを500mlのフラスコに採取した。そして、そのフラスコを氷水浴しながら、純水100mlを滴下漏斗を用いて10分間にわたりそのフラスコに滴下した。フラスコ中の生成物を30分間撹拌した後、氷水浴からフラスコを取り出し、室温で1時間撹拌した。副生成物であるエタノールは、60℃減圧条件下(30 Torr、1時間)で、生成物から取り除き、ポリシロキサン化合物1を得た。生成物の濃度は、オーブンで水分を蒸発させてから、質量減少法(Weight reduction method)により計測した。収率は54%であった。生成物の分子量はGPCにより計測され、ポリスチレン換算で、数平均分子量は1178、質量平均分子量は1470であった。
【0049】
ポリシロキサン化合物2の合成:N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルシロキサンの調製
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン100mlを500mlのフラスコに採取した。そして、そのフラスコを氷水浴しながら、純水100mlを滴下漏斗を用いて10分間にわたりそのフラスコに滴下した。フラスコ中の生成物を30分間撹拌した後、氷水浴からフラスコを取り出し、室温で1時間撹拌した。副生成物であるエタノールは、60℃減圧条件下(30 Torr、1時間)で、生成物から取り除き、ポリシロキサン化合物2を得た。生成物の濃度は、オーブンで水分を蒸発させてから、質量減少法により計測した。収率は47%であった。生成物の分子量はGPCにより計測され、ポリスチレン換算で、数平均分子量は1530、質量平均分子量は1968であった。
【0050】
ポリシロキサン化合物3の合成:アミノプロピルシルセスキオキサンの調製
3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.25モル、Me
4NOH0.77モルおよび溶媒としてメタノール500mlを1000mlのフラスコに採取し、窒素雰囲気下で合成し、オクタアミノプロピルシルセスキオキサンを得た。その際、室温で24時間で反応させ、次に60℃で24時間反応させた。次に過剰なMe
4NOHおよび水を取り除き、残留物を110℃で24時間保持した。最後に、残留物をn−ヘキサン100mlおよびトルエン100mlで精製し、ポリシロキサン化合物3を得た。このとき、モル収率は92.7%であった。なお、精製物の分子量はGPCにより計測され、ポリスチレン換算で、数平均分子量は817、質量平均分子量は817であった。
【0051】
前述の方法で得られたポリシロキサン化合物5グラムを、溶媒100mlに溶解させ、室温条件下で3時間撹拌し、被覆形成用組成物を得、実施例101とした。以下の表1の組成とした以外は同様にして、被覆形成用組成物を得、それぞれ実施例102、103、比較例101、102とした。
【0053】
塗布性評価
以下の3種類の基板を準備し、その基板上に組成物1を塗布し、60℃60秒でベークし、実施例201とした。目視により塗布性評価を行い、評価結果は表2の通りであった。組成物を表2の通りに変更した以外は同一の条件で、同様に、実施例202、203、比較例201、202を行った。
基板1:シリコン基板
基板2:シリコン基板上にArFレジスト組成物(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製AX1120P(商品名))をスピンコーターで2000rpmの条件で塗布し、100℃/110秒の条件でベーク処理して、膜厚が0.12μmsのレジスト膜を有する基板を基板2とした。
基板3:基板2に、ArF露光装置(ニコン株式会社製NSR−S306C型(商品名))を用いて、26mJで露光し、100℃で110秒間加熱した。引き続き23℃の2.38%TMAH水溶液で120秒間現像し、脱イオン水でリンス処理することによって0.12μmの幅を有する1:1のライン&スペースパターンを有する現像済みレジスト基板を作製し、基板3とした。
【0054】
【表2】
なお、評価基準は以下の通りである。
A:均一な膜になっている
B:膜に斑が確認される
C:膜が形成されていない
【0055】
エッチング耐性評価
基板2上に、組成物1を塗布し、60℃60秒でベークし、被覆層を形成し、実施例301とした。アルバック製NE5000Nドライエッチング装置を用いて、O
2ガスおよびN
2ガスの混合ガス(流量比:O
2/N
2=30/70)による酸素プラズマエッチング処理(圧力:0.67Pa);RF:100W;温度:25℃;処理時間:15秒)条件下で、エッチングを行い、エッチングレートを測定した。実施例301と同様に、表3の通りに組成物を塗布し、被覆層を形成し、エッチングレートを測定した。結果は、表3に示す通りであった。
【0056】
【表3】
なお、下層膜は、メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製AZ U98−85(商品名)を用いて、カーボンアンダーレイヤーを形成させたものであった。
【0057】
ポジレジストパターン上の被覆層形成評価
下層反射防止膜形成用組成物(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製AZ ArF 1C5D(商品名))をスピンコーターで塗布し、200℃60秒の条件でベーク処理し、膜厚37nmとした。その上に、にレジスト組成物(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製AX1120P(商品名))をスピンコーターで2000rpmの条件で塗布し、100℃110秒の条件でベーク処理して、膜厚が120nmのレジスト膜を得た。その後、ArF露光装置(ニコン株式会社製NSR−S306C型(商品名))を用いて26mJの条件で露光し、100℃110秒間加熱した。引き続き23℃の2.38%TMAH水溶液で120秒間現像し、脱イオン水でリンス処理することによって120nmの幅を有する1:1のライン&スペースパターンを有する現像済みレジスト基板を作製した。
【0058】
作製したパターン付きレジスト基板に、それぞれ表4に示す組成物をスピンコーターで1500rpmの条件で塗布し、表4に示す条件でミキシングベークを行った。その後、表4に示す洗浄処理液で洗浄処理を行い、110℃60秒でポストベークを行い、実施例401、402、比較例401、402を得た。得られた基板を、PGMEAにパドルで60秒浸し、スピンにより乾燥させ、断面をSEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製S−4700(商品名))により観察した。なお、レジストパターン形成後、ミキシングパターン形成後には、パターンが存在することは確認済である。
【0059】
評価基準は以下の通りである。
A:ミキシングパターン形成後とほぼ同様のパターンが確認された。
B:パターンのスペース幅が、ミキシングパターン形成後のパターンのスペース幅より、5%以上縮小している。
C:パターンが確認されなかった。これは、レジストパターンが被覆されておらず、PGMEAに溶解したためと考えられる。
【0061】
ネガレジストパターン上の被覆層形成評価
下層反射防止膜形成用組成物(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製AZ ArF 1C5D(商品名))をスピンコーターで塗布し、200℃60秒の条件でベーク処理し、膜厚37nmとした。その上に、にレジスト組成物(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製AX1120P NTD(商品名))をスピンコーターで2000rpmの条件で塗布し、100℃110秒の条件でプリベークして、膜厚が120nmのレジスト膜を得た。その後、ArF露光装置(ニコン株式会社製NSR−S306C型(商品名))を用いて、20mJの条件で露光し、120℃60秒間露光後加熱を行った。引き続きメチルn−アミルケトン(MAK)100秒間現像し、120nmの幅を有する1:1のライン&スペースパターンを有する現像済みレジスト基板を作製した。
【0062】
作製したパターン付きレジスト基板に、それぞれ表4に示す組成物をスピンコーターで1500rpmの条件で塗布し、表5に示す条件でミキシングベークを行った。その後、表5に示す洗浄処理液で洗浄処理を行い、110℃60秒でポストベークを行い、実施例501、502、503、比較例501、502を得た。得られた基板を、PGMEAにパドルで60秒浸し、スピンにより乾燥させ、断面をSEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製S−4700(商品名))により観察した。なお、レジストパターン形成後と、ミキシングパターン形成後とには、パターンが存在することは確認済である。
【0063】
【表5】
なお、評価基準は、前述と同一である。
【0064】
レジストパターン上でのエッチング耐性評価
シリコン基板に、レジスト組成物(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製AX1120P(商品名))をスピンコーターで2000rpmの条件で塗布し、100℃110秒の条件でベーク処理して、膜厚が120nmのレジスト膜を得た。その後、ArF露光装置(ニコン株式会社製NSR−S306C型(商品名))を用いて、10mJの条件で露光し、100℃110秒間加熱した。引き続き23℃の2.38%TMAH水溶液で100秒間現像し、脱イオン水でリンス処理することによって10mm×10mmの半開口パターンを形成した。
【0065】
得られたパターン付きレジスト基板に、それぞれ表6に示す組成物をスピンコーターで1500rpmの条件で塗布し、その後、表6に示す洗浄処理液で洗浄処理を行い、実施例601〜603、比較例601、602を得た。株式会社アルバック製NE5000Nドライエッチング装置を用いて、O
2ガスおよびN
2ガスの混合ガス(流量比:O
2/N
2=30/70)による酸素プラズマエッチング処理(圧力:0.67Pa);RF:100W;温度:25℃;処理時間:15秒)条件下で、エッチングを行い、エッチングレートを測定した結果は、表6に示す通りであった。