【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、可動ハウジングを備える可動コネクタについては、端子の保護等を目的として、可動ハウジングの過剰な変位を止めるストッパー構造を設けるのが一般的である。こうしたストッパー構造は、可動ハウジングと固定ハウジングとの接触構造によって構成されており、例えば可動ハウジングの長手方向における各側壁に側方に向けて設けた当接突起と、固定ハウジングの内部に設けた当接受け部とで実現される。
【0006】
このような可動ハウジングに接続対象物を挿入していくと、可動ハウジングは、接続対象物の挿入力を受けることで、当接突起が当接受け部に突き当たるまで変位する。そして突き当たった後も所定の嵌合位置に到達するまで接続対象物が挿入され続けることになる。このとき可動ハウジングは、両端の当接突起によって接続対象物の挿入力を受け続けており、長手方向における中央部分が接続対象物の挿入方向で弓状に突出するように湾曲変形してしまう。そうすると、可動ハウジングの中央部分にある端子では、可動片が嵌合当初から僅かに伸ばされて常に負荷がかかった状態となることから、設計値よりも疲労耐久性が弱くなり、その状態で振動等により変位する可動ハウジングを弾性支持し続けると、可動片が折損するおそれがあり、接続信頼性を損ねてしまうことになる。
【0007】
また、可動ハウジングが前述のように弓状に湾曲変形すると、可動ハウジングの中央部分では端子に対する接続対象物の嵌合長が短くなることから、設計値の嵌合長が得られず、この点でも接続信頼性が低下するおそれがある。
【0008】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明である。その目的は、可動コネクタについて端子の接続信頼性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は以下のように構成される。
【0010】
本発明は、内部に収容室を有する外側ハウジングと、収容室に配置され、接続対象物の挿入口を有する内側ハウジングと、外側ハウジングに対して内側ハウジングを変位可能に支持する可動片を有する端子と、を備える可動コネクタについて、内側ハウジングは、接続対象物の嵌合挿入方向に沿う前端部に当接部を有しており、外側ハウジングは、当接部と向き合う対向壁を有しており、当該対向壁は接続対象物の嵌合挿入時に当接部が突き当たる当接受け部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の可動コネクタは、内側ハウジングが接続対象物の嵌合挿入方向に沿う前端部に当接部を有しており、外側ハウジングが当接部と向き合う対向壁を有しており、当該対向壁には接続対象物の嵌合挿入時に当接部が突き当たる当接受け部を有するため、接続対象物の嵌合挿入時に、内側ハウジングの前端部に位置する当接部が外側ハウジングの当接受け部に突き当たる。これにより変位する内側ハウジングの前端位置で弓状の湾曲変形を抑えることができ、端子の可動片が接続対象物の嵌合当初から僅かに伸ばされて常に負荷がかかる状態となるのを抑制することができる。したがって本発明によれば可動片における優れた柔軟性と疲労耐久性を両立して発揮することができる。また、内側ハウジングの弓状の湾曲変形を抑制できるので、接続対象物を所定の嵌合長で正しく適切に導通接続することができる。
【0012】
上記本発明の可動コネクタは、内側ハウジングに対する接続対象物の嵌合挿入方向(Z方向)での変位を止めるストッパー機能については、前述の当接部と当接受け部によって実現することができる。これに対して、端子の配列方向(X方向)、その直交方向(Y方向)、接続対象物の抜去方向(Z方向)での変位を止めるストッパー機能については、外側ハウジングと内側ハウジングに設ける他の当接部と当接受け部を設けてもよい。
【0013】
前記本発明は、外側ハウジングが、内部に前記収容室を有する凹状に形成されており、前記対向壁は凹状の収容室の底面を形成する壁にて構成することができる。
これによれば、外側ハウジングが凹状であって、対向壁となる凹状の収容室の底面を形成する壁を、周壁によって取り囲むように形成することができるため、内側ハウジングの当接部が突き当たって挿入力がかかる対向壁を周壁によって確実に支持することができる。
【0014】
前記本発明は、内側ハウジングが離れて配置した複数の当接部を有する。
これによれば、複数の当接部が外側ハウジングの当接受け部に突き当たることで、内側ハウジングが斜めに傾いたりせずに正しい姿勢を安定して維持することができ、接続対象物を適切に挿入することができる。
【0015】
前記本発明の可動コネクタは複数の前記端子を有する。
本発明の可動コネクタは、接続対象物の嵌合挿入時における内側ハウジングの弓状の湾曲変形を抑制する効果があり、それによって端子の可動片に嵌合当初から余計な負荷が掛からないようにして、可動片の柔軟性と疲労耐久性を両立するものである。これは可動コネクタが長尺で撓みやすい多極コネクタの場合に効果的であるが、端子と接続対象物との適切な嵌合状態を得て可動片の柔軟性と疲労耐久性を両立するという点では、端子が1本しかないコネクタにも有効である。したがって前述した又は後述する本発明の可動コネクタは、端子が1本以上であるものに適用することができる。
【0016】
前記本発明の当接受け部は、内側ハウジングが変位して位置ずれしても当接部が突き当たる接触面を有する。
本発明によれば、接続対象物の嵌合挿入時に、その嵌合挿入方向と交差する方向で内側ハウジングが変位して位置ずれしても、当接部が当接受け部に突き当たるので、内側ハウジングが三次元方向で変位可能でも弓状の湾曲変形を確実に抑制できる。
【0017】
前記本発明の外側ハウジングは対向壁の外面に平坦面を有する。
これによれば、平坦面を自動実装用の吸着ノズルの吸着箇所として利用して自動実装に対応することができる。
【0018】
前記本発明の当接部は、端子の配列方向に沿う長さを有する突出壁として構成できる。
当接部が端子の配列方向に沿う長さを有する突出壁であるため、内側ハウジングの端子の配列方向に沿う所定の長さにわたって当接部が外側ハウジングに突き当たり内側ハウジングの弓状の湾曲変形を抑制できる。
【0019】
この当接部の突出壁は、例えば内側ハウジングが矩形状である場合、その長手方向に沿って伸長する突出壁として形成できる。また、内側ハウジングが正方形である場合、その一辺に沿って伸長する突出壁ものとして形成できる。当接部の長さは、内側ハウジングの弓状の湾曲変形を抑制できるものであれば、柱状に設ける形態、当接部を破線状に複数離散的に設ける形態、線状の当接部を一つ設ける形態のいずれでもよく、またそれらの組み合わせであってもよい。
【0020】
前記本発明の当接部は、端子の配列方向における複数の位置に設けた突出壁として構成できる。
これによれば端子の配列方向における複数位置で当接部が外側ハウジングに突き当たり内側ハウジングの弓状の湾曲変形を抑制できる。
【0021】
ここで「端子の配列方向における複数の位置」とは、端子が1極である場合には、端子の周辺の複数位置に設ける意味である。また、端子が複数極である場合には、端子列の両端の外側位置、隣接する端子の間の位置のいずれをも含む意味である。
このような突出壁は、前述した「複数の位置」に設けられていればよく、各位置に設ける突出壁は、例えば柱状、線状、破線状など様々な形状で設けることができる。
【0022】
前記本発明は、内側ハウジングが端子保持部を有しており、前記突出壁を端子保持部に隣接して設けることができる。
突出壁が端子保持部に隣接するため、端子保持部、即ち端子に近い位置で内側ハウジングの弓状の湾曲変形を確実に抑制できる。
【0023】
前記本発明は、突出壁を隣接する端子保持部の間に設けることができる。
突出壁を隣接する端子保持部の間に設けたため、各端子保持部の延長上位置に、隣接する突出壁で区画された空間を形成することができる。この空間は端子保持部にある接触部の発熱を逃がす放熱通路とすることができる。したがってこの可動コネクタによれば大電流を流す用途に用いることができる。また、大電流用途のコネクタの場合、隣接する端子間で放電しないよう耐電圧に配慮する必要があるが、本発明の可動コネクタでは隣接する端子保持部の間に設けた突出壁によって絶縁性を高めて耐電圧を向上することができる。
【0024】
前記本発明は、内側ハウジングが孔状の端子保持部を有し、外側ハウジングが内側ハウジングの端子保持部の延長上位置に孔部を有する。
これによれば、内側ハウジングの端子保持部の延長上に位置する孔部を通じて、外側ハウジングの内部から端子の発熱を逃がすことができる。したがってこの可動コネクタによれば大電流を流す用途に用いることができる。
【0025】
前記本発明は、端子が接続対象物と導通接触する接触部を有し、接触部は、接続対象物と押圧接触して接触位置を固定する接触保持力が、接続対象物に対して接触部が接続対象物の挿抜方向で位置ずれする可動片の変位荷重よりも大きいものとすることができる。
これによれば内側ハウジングが変位しても接触部の接続対象物に対する接触保持力が可動片の変位荷重に負けることがなく、接触部に対して接続対象物が位置ずれしない。そのため接触部の微摺動を抑制して接続対象物との接触位置を保持し続ける。したがって内側ハウジングが変位しても、接触部が微摺動することによる各種不具合(例えば接続対象物のめっき剥がれ、金属の削りカスの発生等)の発生を抑制できる利点がある。