【解決手段】成形されたガラス板を浮上させながら搬送する浮上搬送装置を用いて前記ガラス板を搬送する搬送工程を備えるガラス板の製造方法であって、前記浮上搬送装置は、前記ガラス板の主表面に向けて気体を吹き出す多孔質な材料からなる複数のパネル部材であって、搬送される前記ガラス板の主表面と対向するパネル平面を形成するよう、面方向に並べて配置された複数のパネル部材と、前記ガラス板を浮上させる力が小さい前記パネル平面上の位置に配置され、前記ガラス板を下方から支持し、かつ、前記ガラス板の主表面に当接して回転する回転体と、を有し、前記搬送工程では、前記回転体を用いて前記ガラス板の浮上高さが低くなるのを防止することを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
FPD用ガラス基板は、薄くてサイズが大きいために、自重によって撓みやすい。このため、ガラス基板の面内のすべての位置で、フロートパネルからの浮上高さを一定に保つことは難しい。また、隣り合ったフロートパネルを連結する接続部材からはエアが吹き出ないため、接続部材が設けられた位置では、ガラス板の浮上高さは低くなりやすい。このため、低下した浮上高さを補うために、フロートパネルからエアを強く吹き付けることが考えられる。しかし、この場合、浮上したガラス板は、振動して姿勢が不安定になりやすい。また、ガラス板が振動すると、浮上高さの高い部分と低い部分とが生じて、ガラス板Gの断面が幅方向に波打ったような形状に変形する場合があり、却って浮上高さの低い部分が生じる場合がある。浮上高さが低いと、ガラス板がフロートパネルと接触し擦れて、表面に傷が生じる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、複数のパネル部材を用いてガラス板を浮上搬送させる搬送工程において、ガラス板の表面の傷の発生を抑制することができるガラス基板の製造方法、浮上搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(1)〜(7)を提供する。
(1)成形されたガラス板を浮上させながら搬送する浮上搬送装置を用いて前記ガラス板を搬送する搬送工程を備えるガラス板の製造方法であって、
前記浮上搬送装置は、
前記ガラス板の主表面に向けて気体を吹き出す多孔質な材料からなる複数のパネル部材であって、搬送される前記ガラス板の主表面と対向するパネル平面を形成するよう、面方向に並べて配置された複数のパネル部材と、
前記ガラス板を浮上させる力が小さい前記パネル平面上の位置に配置され、前記ガラス板を下方から支持し、かつ、前記ガラス板の主表面に当接して回転する回転体と、を有し、
前記搬送工程では、前記回転体を用いて前記ガラス板の浮上高さが低くなるのを防止することを特徴とするガラス板の製造方法。
【0007】
(2)前記回転体の前記パネル平面からの突出高さは前記ガラス板の浮上高さ以下に調整されている、前記(1)に記載のガラス板の製造方法。
【0008】
(3)前記パネル部材は、前記パネル平面において頂角が直角である四角形の部材であり、ガラス板の搬送方向および前記搬送方向と直交する幅方向に並べて配置され、
前記回転体は、前記幅方向に隣り合うパネル部材の間で、かつ、前記搬送方向に隣り合うパネル部材の間の位置に配置されている、前記(1)または前記(2)に記載のガラス板の製造方法。
【0009】
(4)前記回転体は、前記ガラス板が搬送されるのに追従して回転するローラである、前記(1)から前記(3)のいずれか1つに記載のガラス板の製造方法。
【0010】
(5)前記回転体を第1の回転体というとき、前記浮上搬送装置は、さらに、前記第1の回転体と対応する第2の回転体を有し、
前記第1の回転体および前記第2の回転体は、
前記幅方向に隣り合うパネル部材の間に、互いに異なる幅方向位置に配置され、
前記パネル平面からの突出高さは同じ高さに調整されている、前記(3)または前記(4)に記載のガラス板の製造方法。
【0011】
(6)前記ガラス板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス板である、前記(1)から前記(5)のいずれか1つに記載されたガラス板の製造方法。
【0012】
(7)ガラス板を浮上させながら搬送する浮上搬送装置であって、
前記ガラス板の主表面に向けて気体を吹き出す多孔質な材料からなる複数のパネル部材であって、前記搬送されるガラス板の前記主表面と対向するパネル平面を形成するよう、面方向に並べて配置された複数のパネル部材と、
前記幅方向に隣り合うパネル部材の間の位置に配置され、前記ガラス板を下方から支持し、かつ、前記ガラス板の主表面に当接して回転する回転体と、を有し、
前記回転体は、前記ガラス板の浮上高さが低くなるのを防止する位置に配置されていることを特徴とする浮上搬送装置。
【発明の効果】
【0013】
上述のガラス基板の製造方法、および浮上搬送装置によれば、複数のパネル部材を用いてガラス板を浮上搬送させる搬送工程において、ガラス板の傷の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態のガラス板の製造装置および浮上搬送装置について説明する。
本実施形態のガラス板の製造装置は、成形されたガラス板を浮上させながら搬送する浮上搬送装置を用いてガラス板を搬送する搬送工程を備え、搬送工程では、浮上搬送装置の回転体を用いてガラス板の浮上高さが低くなるのを防止することを特徴とする。回転体は、ガラス板を浮上させる力が小さいパネル平面上の位置に配置され、ガラス板を下方から支持し、かつ、ガラス板の主表面に当接して回転する。パネル平面は、ガラス板の主表面に向けて気体を吹き出す多孔質な材料からなる複数のパネル部材によって、搬送されるガラス板の主表面と対向する平面として、面方向に並べて配置されることにより形成される。
この方法によれば、パネル部材上を浮上搬送されるガラス板は、ガラス板を浮上させる力(浮上力)が小さい位置であっても、回転体によって下方から支持されることによって、浮上高さが低くなることが防止され、パネル部材と接触して主表面に傷が生じることが抑制される。
【0016】
(ガラス板の製造方法の概略説明)
図1は、本実施形態のガラス板の製造方法の工程の一例を示す図である。
ガラス板の製造方法は、成形工程(S1)と、徐冷工程(S2)と、採板工程(S3)と、熱処理工程(S4)と、切断工程(S5)と、端面加工工程(S6)と、洗浄工程(S7)と、検査工程(S8)と、梱包工程(S9)と、を備える。
【0017】
成形工程(S1)では、熔融ガラスをシートガラスに成形する。成形方法には、フュージョン法(オーバーフローダウンドロー法)、フロート法等の公知の方法が用いられる。
徐冷工程(S2)では、成形されて搬送されるシートガラスを、所望の厚さにし、内部歪および反りが生じないよう冷却する。
採板工程(S3)では、徐冷されたシートガラスを所定の長さごとに採板して複数のガラス板を得る。ガラス板は、矩形形状に採板されることが好ましく、サイズは、特に制限されないが、例えば、縦長さおよび横長さがそれぞれ500mm〜2500mmである。ガラス板の板厚は、例えば、0.1〜1.1mmである。
熱処理工程(S4)では、ガラス板に対し熱処理を行う。
切断工程(S5)では、熱処理を行ったガラス板を所定のサイズに切断して複数のガラス基板を得る。ガラス基板は、矩形形状に切断されることが好ましく、サイズは、特に制限されないが、例えば、縦長さおよび横長さがそれぞれ500mm〜2500mmである。
端面加工工程(S6)では、ガラス基板に対し、端面の研削、研磨およびコーナーカットを含む端面加工を行う。
洗浄工程(S7)では、ガラス基板を洗浄する。
検査工程(S8)では、洗浄されたガラス基板に対し、表面に傷、塵、汚れがないか、あるいは、気泡、異物等の内部欠陥がないか、光学的検査を行う。なお、検査工程(S8)は、ガラス板を搬送する搬送工程を行う間に行われる。搬送工程は、後で説明する浮上搬送装置を用いて行われる。
梱包工程(S9)では、検査の結果、所望の品質に適合するガラス基板を梱包する。梱包されたガラス基板は納入先業者に出荷される。
【0018】
(ガラス板)
本実施形態で製造されるガラス板は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)に好ましく用いられる。また、本実施形態で製造されるガラス板は、高精細なディスプレイに用いられる、LTPS(低温ポリシリコン)・TFTディスプレイ、酸化物半導体・TFTディスプレイに好ましく用いられる。
【0019】
本実施形態で製造されるガラス基板として、以下のガラス組成のガラス基板が例示される。つまり、本実施形態の方法では、以下のガラス組成のガラス基板が製造されるように、熔融ガラスの原料が調合される。
SiO
2 55〜80モル%、
Al
2O
3 8〜20モル%、
B
2O
3 0〜12モル%、
RO 0〜17モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)。
【0020】
SiO
2は60〜75モル%、さらには、63〜72モル%であることが、熱収縮率を小さくするという観点から好ましい。
ROのうち、MgOが0〜10モル%、CaOが0〜10モル%、SrOが0〜10%、BaOが0〜10%であることが好ましい。
【0021】
また、SiO
2、Al
2O
3、B
2O
3、及びROを少なくとも含み、モル比((2×SiO
2)+Al
2O
3)/((2×B
2O
3)+RO)は4.5以上であるガラスであってもよい。また、MgO、CaO、SrO、及びBaOの少なくともいずれか含み、モル比(BaO+SrO)/ROは0.1以上であることが好ましい。
【0022】
また、モル%表示のB
2O
3の含有率の2倍とモル%表示のROの含有率の合計は、30モル%以下、好ましくは10〜30モル%であることが好ましい。
また、上記ガラス組成のガラス基板におけるアルカリ金属酸化物の含有率は、0モル%以上0.4モル%以下であってもよい。
また、ガラス中で価数変動する金属の酸化物(酸化スズ、酸化鉄)を合計で0.05〜1.5モル%含み、As
2O
3、Sb
2O
3及びPbOを実質的に含まないということは必須ではなく任意である。
【0023】
(浮上搬送装置)
本実施形態の搬送工程は、
図2に示される浮上搬送装置を用いて行われる。
図2は、本実施形態の浮上搬送装置1を示す平面図である。浮上搬送装置1は、ガラス板Gを浮上させながら搬送する装置であって、複数のパネル部材3と、パネル部材3同士を連結する接続部材5と、回転体付き部材7と、を備える。
【0024】
(a)パネル部材
パネル部材3は、ガラス板Gの主表面に向けて気体を吹き出す多孔質な材料からなる部材である。気体には、例えば、空気、窒素ガス、または希ガスが用いられる。気体は、図示されない気体供給装置によって、パネル部材3の底面(
図2の紙面奥行方向の奥側の面)から、パネル部材3を厚み方向に通過して、パネル部材3の上面(
図2の紙面奥行方向の手前側の面)から吹き出されるよう吹きつけられる。パネル部材3の上面から吹き出された気体は、パネル部材3の上面と対向するよう搬送されるガラス板Gの下方の主表面に吹き付けられることにより、ガラス板Gをパネル部材3の表面から浮上させる。本明細書において、ガラス板Gの主表面とは、ガラス板Gの板厚方向の両端においてガラス板Gの板厚方向と直交するよう延在する表面をいう。
【0025】
多孔質な材料は、空気等の気体がパネル部材3の厚み方向(
図2の紙面奥行方向)に通過することができる構造を有しており、例えば、開気孔率15〜35%、平均気孔径0.4〜4μmのものが用いられる。多孔質な材料の例として、カーボンが挙げられるが、これ以外にも、アルミナ、ジルコニアを材質とするセラミックス材料を挙げることができる。
【0026】
パネル部材3は、平面視したときの形状が、長方形または正方形であってよい、4つの頂角が直角である四角形の部材であることが好ましい。このような形状のパネル部材3は、面方向に実質的に隙間をあけることなく、ガラス板Gの搬送方向Aおよび幅方向Bに並べることができ、後述するパネル平面Pを形成しやすい。幅方向は、搬送方向Aと直交する方向(
図2の上下方向)である。なお、パネル部材3の平面視したときの形状は、四角形に限定されず、実質的に隙間をあけずに面方向(
図2の紙面奥行方向と直交する方向)に並べることのできる形状であれば、例えば三角形、六角形等の他の形状であってもよい。また、パネル部材3の厚みは、パネル部材3の下方から上方に向かう気体の流れ(気流)をパネル平面Pの全体にわたって安定させられる点で、一定であることが好ましい。パネル部材3の寸法は、特に制限されないが、例えば、縦(幅方向Bと平行な方向の長さ)200〜400mm×横(搬送方向Aと平行な方向の長さ)300〜400mm×高さ(パネル部材3の厚み方向の長さ)50〜100mmである。なお、複数のパネル部材3は、互いに寸法、形状が異なっていてもよい。
【0027】
パネル部材3は、図示されないが、パネル部材3の保護および接続部材5への取り付けやすさを考慮して、上面および底面を除いた側面(厚み方向に延在する表面)を取り囲む枠状のフレームが取り付けられていてもよい。フレームは、例えば金属材料からなる。フレームはパネル部材3に、例えば接着剤を用いて取り付けられる。
【0028】
以上のパネル部材3は、搬送されるガラス板Gの下方の主表面と対向するパネル平面Pを形成するよう、面方向に並べて配置されている。パネル平面Pは、搬送されるガラス板Gと対向するパネル部材3の表面を含んだ仮想の平面であり、
図2において紙面奥行方向と直交する平面である。なお、
図2では、搬送方向Aの一部の領域に配置されたパネル部材3のみを示し、搬送方向Aの他の領域に配置されたパネル部材3を省略している。
パネル部材3の形状が、例えば、上記した四角形である場合、搬送方向Aに連続するパネル部材3の列は、搬送されるガラス板Gの寸法に応じて、幅方向Bに例えば2列以上並ぶよう形成される。このような配置態様において、浮上力が小さくなる箇所を分散させられる点で、幅方向Bに隣り合う列の間では、搬送方向Aに隣り合うパネル部材3の間の位置がずれてオフセットされていることが好ましい。
【0029】
(b)接続部材
接続部材5は、隣り合ったパネル部材3を連結するための部材である。
図2に示す例において、接続部材5は、搬送方向Aに延びる形状の部材であり、幅方向Bに隣り合うパネル部材3を連結する。具体的には、接続部材5は、
図3に示されるように、幅方向Bに隣り合う2つのパネル部材3の、搬送方向Aに沿って延びる辺同士を接続する。
図3は、浮上搬送装置の構成部材を説明する分解斜視図である。
なお、
図2に示す例において、搬送方向Aに隣り合うパネル部材3は、接続部材5を介在させずに並べられているが、接続部材5を介在させてパネル同士を接続してもよい。
接続部材5は、回転体付き部材7が取り付けやすい点で、例えば金属または樹脂製の部材が用いられる。接続部材5の幅方向Bの長さは、回転体付き部材7の寸法を考慮して定められる。
【0030】
(c)回転体付き部材
回転体付き部材は、
図4に示されるように、回転体11と、回転体11の回転中心に位置し回転体11と一体に回転する軸13と、軸13が取り付けられる支持台15と、を有している。
図4は、回転体付き部材7の一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は搬送方向に見た正面図、(c)は側面図である。
回転体11は、ガラス板Gを下方から支持する部材であり、ガラス板Gの下方の主表面に当接して回転する。回転体11は、ガラス板Gの主表面に当接して回転するものであれば特に限定されないが、例えばローラが用いられる。回転体11の構成材料は、表面が汚れにくく、摩耗しにくく、ガラス板Gより硬度が小さいものであることが好ましい。回転体11は、ガラス板Gに当接する部材であるためである。硬度は、例えばロックウェル硬度である。また、回転体11は、搬送工程内の雰囲気温度(例えば70〜80℃)で変性し、劣化しないものが好ましい。このような回転体11の好ましい材料としては、例えば、超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weight Polyethylene。UPEとも称される)が挙げられる。
【0031】
軸13は、一方向に延びる形状の部材であり、一端に回転体11が取り付けられ、他端が支持台15に取り付けられている。軸13の一端には、回転体11の軸13からの抜けを防止する抜け止め13aが配置されている。なお、
図3、および後で参照する
図5〜
図7では、抜け止めの図示を省略している。
図5は、浮上搬送装置1のうち
図2の領域Sに含まれる部分を拡大して示す平面図である。
図6および
図7は、
図5と異なった、回転体付き部材の他の配置態様を示す図である。
軸13は、回転体付き部材7が、回転体11を幅方向Bの両側に備える、いわゆる両持ちである場合は、幅方向Bに沿った支持台15の両側に1本ずつ取り付けられる。また、回転体付き部材7が、
図7に示されるように、回転体11を幅方向Bの片側にだけ備える、いわゆる片持ちの部材である場合は、支持台15の片側に1本だけ取り付けられる。
【0032】
支持台15は、軸13を介して回転体11を支持して、回転体11の上端を一定の高さ位置に保つ。支持台15は、軸13の他端が嵌合される軸受け(不図示)を備える。支持台15が接続部材5に固定されることで、回転体付き部材7は接続部材5に取り付けられる。支持台15は、接続部材5に対して、特に制限されないが、例えば、
図3に示されるようにネジ止めによって固定される。支持台15は、回転体11の回転中心線が幅方向Bと平行になるように接続部材5に取り付けられる。これにより、回転体11は、ガラス板Gに当接してガラス板Gに追従して回転することができる。
【0033】
回転体付き部材7は、ガラス板Gを浮上させる力(浮上力)が小さいパネル平面P上の位置に回転体11が配置されるよう、接続部材5に取り付けられる。浮上力の小さい位置に回転体11が位置することによって、ガラス板Gは回転体11によって下方から支持され、これにより、ガラス板Gが下方向に撓むように変形してパネル部材3と接触し、ガラス板Gの表面に傷が生じることが抑制される。浮上力が小さい位置は、パネル部材3からの気体の吹き出し量が小さい位置であり、具体的には、搬送方向Aおよび幅方向Bに隣り合ったパネル部材3の間の位置である。中でも、幅方向Bに隣り合ったパネル部材3の間には、接続部材5が配置されるため、パネル部材3が配置された領域と比べて気体の吹き出し量は大きく低下する。したがって、
図2および
図5〜
図7に示されるように、幅方向Bに隣り合うパネル部材3の間に回転体11が配置されることで、ガラス板Gのパネル部材3への接触を効果的に抑制できる。なお、浮上力の小さい位置は、回転体11が配置された場合に、ガラス板Gの浮上高さが低くなるのを防止できる点で、ガラス板Gの浮上高さが低くなるのを防止する位置、と言い換えることができる。
【0034】
回転体付き部材7の好ましい配置態様として、
図6および
図7に示すように、幅方向Bに隣り合うパネル部材3の間であって、かつ、搬送方向Aに隣り合うパネル部材3の間に、配置することが挙げられる。
図6は、両持ちの回転体付き部材7を用いた配置態様を示し、
図7は、片持ちの回転体付き部材7を用いた配置態様を示す。これらの配置態様が好ましい理由は、搬送方向Aに隣り合うパネル部材3の間も、気体の吹き出し量がパネル部材3の領域と比べ小さいためである。
なお、両持ちの回転体付き部材7は、
図4〜
図6に示されるように、2つの回転体11が搬送方向Aの同じ位置に配置されていてもよく、図示されないが、搬送方向Aの異なる位置に配置されていてもよい。また、片持ちの回転体付き部材7は、同じ接続部材5に取り付けられた複数の回転体付き部材7の間で、
図7に示されるように、回転体11が異なる幅方向位置に位置するよう配置されてもよい。このように、幅方向Bに隣り合うパネル部材3の間であって、かつ、幅方向Bの異なる位置に配置された回転体11(第1の回転体及び第2の回転体)同士は、ガラス板Gをパネル平面Pと平行に保ちやすい点で、パネル平面Pからの突出高さが等しいことが好ましく、互いに搬送方向Aに接近して(例えば、パネル部材3の搬送方向Aの長さよりも短い間隔で)配置されていることが好ましい。
【0035】
回転体11の突出高さ(回転体11の上端のパネル部材3の上面からの高さ)は、ガラス板Gの浮上高さ以下に調整されることが好ましい。回転体11の突出高さがガラス板Gの浮上高さより高いと、ガラス板Gの主表面に回転体11が当接した跡が付く場合があるためである。また、ガラス板Gが回転体11に当接した位置を起点として上方に膨らむように撓んで、却ってガラス板Gがパネル部材3に接触しやすくなるためである。なお、ガラス板Gの浮上高さは、例えば、ガラス板Gの主表面の複数の位置で、パネル部材3の上面とガラス板Gの下方の主表面との距離を測定し、平均した値で表される。回転体11の突出高さは、ガラス板Gの浮上高さを考慮して定められ、例えば、ガラス板Gの浮上高さが1mmである場合に、1mm以下に調整されることが好ましい。
一方、回転体11の突出高さが低すぎると、ガラス板Gがパネル部材3に接触して傷が生じるおそれがある。このため、回転体11の突出高さは、0mmを超えることが好ましい。
【0036】
回転体11の突出高さは、種々の方法で調整することができる。図示されないが、例えば、支持台15が、互いに上下方向に相対移動が可能な2つの部材で構成さていて、上方の部材に軸13が取り付けられ、下方の部材が接続部材5に固定される場合に、これら2つの部材を上下方向に接近または離反させることで調整することができる。これら2つの部材の接近および離反は、例えば、これら2つの部材を上下方向に接続するネジ部材のねじ込み量によって調節できる。また、例えば、支持台15の下方に、スペーサとなる所定の厚みを有する部材を配置することで、回転体付き部材7を底上げするように、回転体11の突出高さを調整することができる。
【0037】
以上説明した回転体付き部材7は、回転体11の高さ調整が可能で、接続部材5の任意の位置への取り付けが可能であるため、例えば、浮上力の小さくなる位置が変化した場合に、回転体付き部材7を、新たに浮上力が小さくなった位置に、適切な回転体11の突出高さに調整して、配置することができる。
なお、搬送方向Aに隣り合って配置される回転体付き部材7の間隔は、搬送工程の間、ガラス板Gを安定して搬送する観点から、等間隔であることが好ましい。
以上、回転体として、ローラを例に説明したが、本実施形態の回転体は、例えば球状の回転体が用いられてもよい。球状の回転体の場合は、回転体付き部材は、球と、球の形状に合わせた形状の受け部である球保持部と、を備え、軸を備えなくてもよい。
【0038】
浮上搬送装置1を用いてガラス板Gを浮上搬送させるとき、ガラス板Gの幅方向の両端は、図示されない吸着機構によって、搬送方向Aの複数の位置で吸着され支持されながら搬送方向Aに搬送される。このような吸着機構には、例えば、空気を吸引することでガラス板の主表面と吸着パッドとの間の空間を負圧にしてガラス板の主表面を吸着パッドに吸着させる機構が用いられる。一方、ガラス板Gの搬送方向の端は、吸着機構を用いて支持、搬送されないために、ガラス板Gは幅方向には撓んで変形しやすい。このため、搬送方向Aに隣り合うパネル部材3の間の位置よりも、上記説明したように幅方向Bに隣り合うパネル部材3の間の位置に、優先的に回転体付き部材7を配置することが好ましい。
【0039】
本実施形態の浮上搬送装置1は、特に限定されないが、例えば、ガラス板Gを搬送しながら検査工程を行う場合に適している。検査工程は、例えば、搬送方向Aに隣り合うパネル部材3の間にカメラを設置し、搬送されるガラス板Gを撮影して、撮影した画像を解析することで行われる。
以上説明した浮上搬送装置1を用いて、本実施形態の搬送工程を行うことができる。
【0040】
本実施形態のガラス板の製造方法によれば、複数のパネル部材3を用いてガラス板Gを浮上搬送させる搬送工程において、浮上力の小さい位置、すなわち、ガラス板Gの浮上高さが低くなるのを防止する位置に回転体付き部材が位置することによって、パネル平面P上の浮上力が小さい位置において、ガラス板Gが下方向に撓むように変形してパネル部材3と接触し、ガラス板Gの表面に傷が生じることが抑制される。
【0041】
また、回転体11の突出高さがガラス板Gの浮上高さ以下に調整されることで、ガラス板Gの表面に回転体11が当接した跡が付くのを回避でき、また、ガラス板Gが回転体11に当接した位置を起点として上方に膨らむように撓むのを回避できる。
また、回転体11が、幅方向Bに隣り合うパネル部材3の間であって、かつ、搬送方向Aに隣り合うパネル部材3の間に配置されることによって、ガラス板Gの浮上高さが低くなるのをより効果的に防止することができる。
【0042】
また、回転体11がガラス板Gの下方の主表面に当接してガラス板Gに追従して回転することで、ガラス板Gがよりスムーズに搬送され、ガラス板Gに回転体11の跡が付くのをより確実に抑えることができる。
また、幅方向Bに隣り合うパネル部材3の間であって、かつ、幅方向Bの異なる位置に配置された回転体11同士は、パネル平面Pからの突出高さが同じ高さに調整されることで、ガラス板Gがパネル平面Pと平行に保たれやすくなる。
【0043】
FPD用ガラス板は、近年のFPDの大型化に伴って比較的サイズが大きく、かつ、薄くなっている。このようなガラス板を浮上搬送させる場合に、浮上力が小さい場所があると、容易に撓んでパネル部材3と接触しやすくなる。本実施形態の方法では、浮上力が小さい位置に回転体11を配置したことで、FPD用ガラス板であっても、パネル部材3との接触を回避してガラス板の表面に傷が生じるのを抑えることができる。
【0044】
以上、本発明のガラス板の製造方法および浮上搬送装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。