(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-139976(P2017-139976A)
(43)【公開日】2017年8月17日
(54)【発明の名称】畦成形機
(51)【国際特許分類】
A01B 35/00 20060101AFI20170721BHJP
【FI】
A01B35/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-22316(P2016-22316)
(22)【出願日】2016年2月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】横浜 雅透
(72)【発明者】
【氏名】野村 拓未
【テーマコード(参考)】
2B034
【Fターム(参考)】
2B034AA02
2B034BA03
2B034BB01
2B034BC06
2B034DA03
2B034DA08
2B034DB07
2B034DB27
2B034DB28
(57)【要約】
【課題】作業速度を向上できて効率よい畦塗り作業が行える畦形成機を提供する。
【解決手段】土を盛上げ状態に供給する盛土部40と、盛土部40で盛土された土壌を押圧して畦に成形する成形部41とを有し、成形部41は、盛土部40で土を盛上げ状態とした畦形成箇所上を回転しながら通過する上面ローラ413と、円錐状ディスク411を備えた畦成形機において、盛土部40は、成形する畦に交差する方向の水平方向の回転軸に複数設けた耕耘爪401によって掘削した土壌を畦側に跳ね上げて畦形成箇所に盛上げる耕耘ロータ408を備え、耕耘ロータ408は、駆動力が入力される基部側と成形畦側の先端部が回転自在に軸受で保持されていて、成形畦側の先端部の軸受は、成形畦側の先端部に設けた耕耘爪401の先端部より内側の駆動力が入力される基部側に位置することを特徴とする畦成形機である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に装着され、該走行機体の側方にオフセットした位置に畦成形作業部が配置され、畦形成箇所に沿って移動し、畦形成箇所に土を盛上げ状態に供給する盛土部と、
該盛土部の移動方向の後方に位置して、盛土部で盛土された土壌を回転しながら押圧して畦に成形する成形部とを有し、
該成形部は、前記盛土部で土を盛上げ状態とした畦形成箇所上を回転しながら通過する上面ローラと、上面ローラの回転中心に向けた傾斜面を有する円錐状ディスクを備えた畦成形機において、
前記盛土部は、成形する畦に交差する方向の水平方向の回転軸に放射状に複数設けた耕耘爪によって旧畦と旧畦裾部の一部を掘削し、掘削した土壌を畦側に跳ね上げて畦形成箇所に盛上げる耕耘ロータを備え、該耕耘ロータは、駆動力が入力される基部側と成形畦側の先端部が回転自在に軸受で保持されていて、
成形畦側の先端部の軸受は、成形畦側の先端部に設けた耕耘爪の先端部より駆動力が入力される基部側に位置することを特徴とする畦成形機。
【請求項2】
前記耕耘ロータの成形畦側の先端部の軸受を保持する軸受板の上方部には、耕耘部から畦側に投げ出される耕耘土の通過隙間が形成されていることを特徴とする請求項1記載の畦成形機。
【請求項3】
前記軸受板の進行方向前方部には、進行方向と直交する方向の水平の回転軸によって回転自在に保持され、外周部が旧畦上面に刺さり込んで自転する円盤状のディスク板が備えられていることを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載の畦成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの後部に装着され、該トラクタからの動力を受けて駆動する盛土部及び畦成形部を備えた作業部を有して畦成形作業を行う農作業機であり、トラクタの側方に作業部をオフセットさせ水田を区画する畦の成形作業を行う畦成形機に関するもので、特に盛土装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
この種の畦成形機の従来技術として特開2014−90685号公報が開示されている。
【0003】
前記特開2014−90685号公報には、「回転しながら元畦の土を耕耘して盛り上げる盛土体と、この盛土体による盛土を締め固めて新畦を形成する畦形成体とを備え、前記盛土体は、元畦の土を耕耘して盛り上げる複数の耕耘爪を有し、これら複数の耕耘爪は、元畦の一部が板状の残耕部として残るように配置されている」畦塗り機の開示がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−90685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
畦成形機は、一般に進行方向前方部に旧畦の一部と裾部を掘削するとともに旧畦側に掘削土を盛り上げるための回転軸に掘削爪を設けた耕耘ロータ部を有する盛土部が設けられ、その後方に畦側面を成形する円錐状の成形ディスクと畦上面を成形する円筒状の上面ローラが一体となって回転し、盛土部により旧畦に盛り上げられた盛土を圧縮して畦を成形する成形部が設けられていて、畦成形作業部をトラクタの側方にオフセットさせ旧畦と平行に走行しながら畦成形作業を行う。この時、成形部の円錐状ディスクと円筒状の上面ローラは土を圧縮すると共に走行速度より速い速度で回転して土を塗りつけて畦を成形する。従来の掘削爪を設けた耕耘ロータ部は、一方端側が旧畦に当接して食い込むような状態となるため、駆動力が入力される基部側のみ保持された状態の片持ち状態である。このため、作業速度を早くしようとすると、耕耘ロータ部の回転軸の基部側に負荷が集中するため、最悪の場合破損に至る。このようなことから作業速度が規制されるため作業効率が悪いという問題があった。
【0006】
従来技術1の畦塗り機は、盛土体の元畦の切削量を少なくして、盛土体の負荷を小さくして、作業効率を向上させようとするものである。このため、土量不足によって盛土が畦の上面や側面に均等に盛土されない虞がある。
【0007】
このため本発明の目的は、作業速度を向上できて効率よい畦塗り作業が行える畦形成機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、
走行機体に装着され、該走行機体の側方にオフセットした位置に畦成形作業部が配置され、畦形成箇所に沿って移動し、畦形成箇所に土を盛上げ状態に供給する盛土部と、
該盛土部の移動方向の後方に位置して、盛土部で盛土された土壌を回転しながら押圧して畦に成形する成形部とを有し、
該成形部は、前記盛土部で土を盛上げ状態とした畦形成箇所上を回転しながら通過する上面ローラと、上面ローラの回転中心に向けた傾斜面を有する円錐状ディスクを備えた畦成形機において、
前記盛土部は、成形する畦に交差する方向の水平方向の回転軸に放射状に複数設けた耕耘爪によって旧畦と旧畦裾部の一部を掘削し、掘削した土壌を畦側に跳ね上げて畦形成箇所に盛上げる耕耘ロータを備え、
該耕耘ロータは、駆動力が入力される基部側と成形畦側の先端部が回転自在に軸受で保持されていて、成形畦側の先端部の軸受は、成形畦側の先端部に設けた耕耘爪の先端部より駆動力が入力される基部側に位置することを特徴とする畦成形機である。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記耕耘ロータの成形畦側の先端部の軸受を保持する軸受板の上方部には、耕耘部から畦側に投げ出される耕耘土の通過隙間が形成されていることを特徴とする請求項1記載の畦成形機である。
【0010】
さらに、請求項3の発明は、前記軸受板の進行方向前方部には、進行方向と直交する方向の水平の回転軸によって回転自在に保持され、外周部が旧畦上面に刺さり込んで自転する円盤状のディスク板が備えられていることを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載の畦成形機である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、盛土部の耕耘ロータの回転軸が駆動力が入力される基部側と成形畦側の先端部が回転自在に軸受で両持状態で保持されているため、作業速度が増加して耕耘ロータ部に負荷が作用しても、従来の片持ち状態に比較して回転軸に作用する負荷を少なくすることができる。このため作業速度を向上できて効率よい作業が可能になる。また、耐久性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】本発明の実施例の畦成形機の盛土部の作業時の要部正面図である。
【
図4】本発明の実施例の畦成形機の盛土部の耕耘ロータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施の一形態を、
図1乃至
図4に基いて説明する。
図1は本発明の実施例を示した畦成形機の側面図であり、本例の説明においては、
図1の右側が作業進行方向の前側であり、
図1の左側が後方側として説明する。
図2は本発明の実施例の畦成形機の平面図であり、図の右側が前進方向である。
図3は本発明の実施例の畦成形機の盛土部の作業時の要部正面図で、
図4は本発明の実施例の畦成形機の盛土部の耕耘ロータの断面図である。
【0014】
本例の畦成形機1は、前方部に走行機体(図示せず)との連結部である装着フレーム3が設けられ、畦を成形する畦成形作業部4が装着フレーム3に対し側方にオフセットした位置に位置付けられ作業が行われる。即ち、走行機体の側方にオフセットした状態で作業が行われる。畦成形作業部4は、装着フレーム3に対し水平回動する支持フレーム5の回動端側に設けられていて、オフセット位置を変更可能となっている。畦成形作業部4は、畦形成箇所に土を盛上げ状態に供給する盛土部40と、盛土部40の移動方向の後方に位置して、盛土部40で盛土された土壌を回転しながら押圧して畦に成形する成形部41とを有する。
【0015】
図1、
図2に示すように畦成形機1の前方部には、走行機体であるトラクタと連結するための装着フレーム3が設けられている。トラクタの後部の左右一対のロアーリンクと中央上方に設けたトップリンクとからなる3点リンクヒッチ機構(図示せず)に、これらを定型化する連結枠(クイックカプラー又はオートヒッチと称される)(図示せず)を前記ロアーリンクと前記トップリンクにそれぞれ取り付け、装着フレーム3の前方に突設して設けた左右一対のロアーピン34と該中央上方に設けたトップマスト30の前端部に位置するアッパーピン33に前記連結枠の係合部を係合させ連結される。
【0016】
連結手順は、先ずトラクタ側の連結枠上方のフックを前記トップマスト30のアッパーピン33に係合させ、トラクタの3点リンク機構を上昇させ、これに連結された連結枠を上昇させると、前記畦成形機1側のロアーピン34が連結枠側に引き寄せられ連結枠の下部の係合部と係合し連結される。下部の係合部は、連結枠に設けたフックをロアーピン34に引掛けて外れ防止をする。
【0017】
トップマスト30のアッパーピン33やロアーピン34は、装着フレーム3の前方に突設されて設けられていて、装着フレーム3後方側には支持フレーム5が後方へ延設されて設けられている。支持フレーム5は、装着フレーム3に対し垂直方向の回動軸を回動中心に水平回動するように設けられる。支持フレーム5は、支持フレーム5と装着フレーム3とに架け渡した回動シリンダ521の伸縮動によって回動され、後方側を水平回動自在に設けられる。支持フレーム5の後端部には、垂直方向の回動軸を中心に水平方向に回動可能である畦成形作業部4を有する。畦成形作業部4は、支持フレーム5側と畦成形作業部4側に架け渡した旋回シリンダ501によって回動され、支持フレーム5の回動量に応じて畦成形作業部4が作業時に常に前方を向くように構成されている。
【0018】
畦成形作業部4の駆動は、装着フレーム3前方に突設された入力軸31にトラクタからユニバーサルジョイント(図示せず)を連結して動力が伝達され、さらに装着フレーム3側と支持フレーム5の後端側の入力ケースとの間に連結されたユニバーサルジョイント7を介して畦成形作業部4側に動力が伝達され駆動される。
【0019】
この発明の1つの実施形態である畦成形機1は、畦成形作業部4に成形前の畦の上面を掘削して雑草等の除去や凸凹を均平にするための畦上面掘削部6を有している。畦上面掘削部6は、畦上面部に位置させた進行方向と直交する水平方向の回転軸である上面掘削軸60に放射状に設けた上面掘削爪61で構成され、盛土部40と成形部41との間に位置して、畦成形作業部4で成型される前の畦上面を耕耘するように設けられる。
【0020】
畦成形作業部4は、前記畦上面掘削部6の他、作業進行方向前方側に設けられる盛土部40と、盛土部40の後方側に設けられる成形部41とからなる。盛土部40は、回転軸402に耕耘爪401を多数放射状に設けた耕耘ロータ408を作業進行方向と交叉する方向に向けて回転させ、畦成形作業時には旧畦の一部と畦裾部の圃場面の一部を掘削しながら旧畦上に土を盛上げ、盛上げられた土は後方に位置する成形部41によって押圧され新畦に成形される。成形部41は畦斜面成形用の円錐面を有する円錐状ディスク411と畦上面成形用の円筒面を有する上面ローラ413を有し、これをトラクタの進行速度より速い速度で進行方向に回転させ畦を成形する。耕耘ロータ408と成形部41は、
図1における側面視において、畦上面掘削部6の上面掘削軸60の回転中心と同軸の回動軸を中心に上下に回動可能で、成形部41側と畦成形作業部4の保持フレーム側とに架け渡したディスク回動シリンダ415の伸縮動によって上下に回動する。回動させることによって耕耘ロータ408と成形部41の上下方向の相対位置関係が変更され、成形する畦の高さを変更調整することが可能である。
【0021】
盛土部40の耕耘ロータ408上方部は、耕耘爪401で耕耘され飛散した土壌が上方に飛散するのを押さえ、成形する畦側に飛散するようにロータ軸カバー403が設けられている。ロータ軸カバー403の成形する畦側の端部には、耕耘ロータ408の回転軸402の端部を保持するための軸受板405が取付けられ垂下している。軸受板405の下方端部には、回転軸402の端部を支持する保持軸が固着されていて、これに取り付けられた軸受404を介して回転自在に回転軸402の外側端は保持されている。
【0022】
また、軸受板405のロータ軸カバー403への取付位置は、耕耘ロータ408の回転軸402の中心より側面視前方に設けられていて、ロータ軸カバー403と回転軸402との上下間に解放部である通過隙間406を形成できるように構成されている。通過隙間406は耕耘ロータ408から飛散する土壌が成形畦側に飛散するのを軸受板405で阻害するのを回避する。
【0023】
軸受板405は、ロータ軸カバー403への取付面と下方部の回転軸402取付面部は正面視段差が設けられ、回転軸402を保持する軸受404の取付部が回転軸402の基部側にオフセットした位置に設けられている。そして、回転軸402の端部に取り付けられた耕耘爪401が外側にL字状に湾曲され、軸受404と回転軸402取付面部が耕耘爪401先端部より回転軸402の基部側に位置するように位置付けられる。この構造によって、軸受404部が耕耘爪401によって耕耘された部分を通過するため進行方向の抵抗が発生しない。
【0024】
耕耘ロータ408の回転軸402の基部側は、入力軸31から入力された動力が伝達される駆動ケース409から突設されて設けられている。回転軸402の駆動ケース409内にはスプロケットが固着されていて、ローラーチェーンによって動力が伝達され耕耘ロータ408は回転駆動される。駆動ケース409には軸受407によって回転軸402は回転自在に保持されている。
【0025】
ロータ軸カバー403の進行方向前方右端部には前方に突出して設けられたディスク板42が設けられている。ディスク板42は、進行方向と直交する方向の水平の回転軸によって回転自在に保持され、外周部が旧畦上面に刺さり込んで自転する円盤状で、外周端部が鋭角となっていて成形前の畦上面の夾雑物等を切断して、後方に位置する軸受板405や畦上面掘削部6への夾雑物等の引っ掛かりを防止する。ディスク板42の左右方向の位置は、軸受板405のロータ軸カバー403への取付位置の近傍に位置する。
【0026】
成形部41は、畦斜面成形用の円錐面を有する円錐状ディスク411と畦上面成形用の円筒面を有する上面ローラ413を有し、前方上方部を耕耘ロータ408部から飛散される耕耘土を案内する成形部カバー416が設けられ、さらに、その側方に垂下され弾性部材で成型された側方カバー417によって側方への飛散を防止して上面ローラ413前方に耕耘土を盛り上げる。
【0027】
畦成形作業部4の成形部41の内側部には、略進行方向に回転自在の円板状の抵抗輪412が設けてあり、抵抗輪412の外周は作業時圃場面に刺さり込み、成形部41の畦成形時の押し付け反力を受け止める。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は、水田等の矩形の圃場において、その周囲に設ける畦の成形作業を行う畦成形機に利用でき、作業効率を改善可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 畦成形機
3 装着フレーム
30 トップマスト
31 入力軸
33 アッパーピン
34 ロアーピン
4 畦成形作業部
40 盛土部
401 耕耘爪
402 回転軸
403 ロータ軸カバー
404 軸受
405 軸受板
406 通過隙間
407 軸受
408 耕耘ロータ
409 駆動ケース
41 成形部
411 円錐状ディスク
412 抵抗輪
413 上面ローラ
415 ディスク回動シリンダ
42 ディスク板
5 支持フレーム
501 旋回シリンダ
521 回動シリンダ
6 畦上面掘削部
60 上面掘削軸
61 上面掘削爪
7 ユニバーサルジョイント