(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-140016(P2017-140016A)
(43)【公開日】2017年8月17日
(54)【発明の名称】ダブル溝型シート止め材連結用のジョイント部材
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20170721BHJP
【FI】
A01G9/14 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-236722(P2016-236722)
(22)【出願日】2016年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-22506(P2016-22506)
(32)【優先日】2016年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000221568
【氏名又は名称】東都興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090114
【弁理士】
【氏名又は名称】山名 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】小堀 武光
(72)【発明者】
【氏名】崔 世軍
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029BE02
2B029BE04
(57)【要約】
【課題】ダブル溝型シート止め材を使用して、ビニルハウス内空気の供給、循環に必要とされる通気を行う手段として、シート止め材に通気孔を設ける加工を一切無用にしてコストダウンを図り、ビニルハウス内空気の循環と空気圧を合理的に良好に実現可能に工夫した、ダブル溝型シート止め材のジョイント部材を提供する。
【解決手段】ビニルハウスの断熱空気層Aへ電動ファン17で送り込まれた空気は、同断熱空気層Aから前記中央位置のストッパー部5のエア抜き用凹部6を通じて前記ダブル溝型シート止め材1の繋ぎ板部1bの背面側空間60を経てビニルハウス内へ還流させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を幅狭に形成された2条のシート止め溝が中間の繋ぎ板部を介して一連の平行状に形成されて成るダブル溝型シート止め材を接続する受け溝が、両側縁部に起立して前記ダブル溝型シート止め材の両外側縁壁の外面を抱きかかえて支持する外側縁壁部で形成され、
同受け溝の長手方向の略中間部位に、受け溝の溝底面を幅方向に掘り下げた構造で、前記ダブル溝型シート止め材の表面等に発生した結露水等を受け入れて導く排水溝が幅方向の全長にわたって形成されており、
前記排水溝に沿う位置に、受け溝へ挿入したダブル溝型シート止め材の先端部が突き当たるストッパー部が突設されており、前記排水溝の中央部位に位置するストッパー部に空気の流通を許容するエア抜き用凹部が設けられており、
ビニルハウスの断熱空気層へ電動ファンで送り込まれた空気は、同断熱空気層から前記中央位置のストッパー部のエア抜き用凹部から前記ダブル溝型シート止め材の繋ぎ板部の背面側空間を通じてビニルハウス内へ還流させる構成であることを特徴とするダブル溝型シート止め材連結用のジョイント部材。
【請求項2】
開口部を幅狭に形成された2条のシート止め溝が中間の繋ぎ板部を介して一連の平行状に形成されて成るダブル溝型シート止め材を受け入れる溝幅で、同溝の開口幅が高さ方向に幅狭となるように両外側縁壁で形成された受け溝へ、その溝底面に沿って両端から前記ダブル溝型シート止め材を長手方向に挿し入れて一連の突き合わせ状態に接続する構成であって、
前記受け溝は、前記ダブル溝型シート止め材の横断面形状における溝底外面を受け止める平坦な溝底面と、同受け溝の両外側縁に起立して前記ダブル溝型シート止め材の両外側縁壁の外面を抱きかかかえて支持する外側縁壁部を備えて成り、
前記受け溝の長手方向の中央部位に、当該受け溝の溝底面を溝幅方向に掘り下げた溝構造で、同受け溝の横断方向の全幅に及ぶ長さの排水溝が設けられており、
同排水溝の長手方向に沿う位置に、受け溝の長手方向の両端から挿入された前記ダブル溝型シート止め材の先端部が突き当るストッパー部が設けられており、中央位置のストッパー部にエア抜き用凹部が形成されており、
ビニルハウスの断熱空気層を形成する内外二重のプラスチックシートのうち温室内空気を取り込む電動ファンが設置された内側のプラスチックシートの端部は、上記ダブル溝型シート止め材における手前側位置のシート止め溝へ止着され、同じ断熱空気層を形成する外側のプラスチックシートの端部は、前記のシート止め溝を飛び越えた先側位置のシート止め溝へ止着され、前記内外二重のプラスチックシートが形成する断熱空気層へ電動ファンが給気用チューブを通じて送り込んだ空気のうち、過剰量の空気は、前記ダブル溝型シート止め材を連結したジョイント部材に設けた中央位置のストッパー部に形成されたエア抜き用凹部から、前記ダブル溝型シート止め材を形成する中間の繋ぎ板部の背面側空間を通じてビニルハウス内へ還流させる構成であることを特徴とするダブル溝型シート止め材連結用のジョイント部材。
【請求項3】
ダブル溝型シート止め材を保持する受け溝の溝底面における長手方向の両端部に、同端部から中央部に向かって漸次下る勾配の漏水防止テーパ部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載したダブル溝型シート止め材のジョイント部材。
【請求項4】
ダブル溝型シート止め材を保持する受け溝の溝底面における長手方向の両端部の溝横断方向の全幅に、漏水防止用の凸条部が堰のように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載したダブル溝型シート止め材のジョイント部材。
【請求項5】
ダブル溝型シート止め材を保持するジョイント部材の受け溝に設けた排水溝の下流側端部に、排水ホースを接続するホースジョイントが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載した発明におけるダブル溝型シート止め材のジョイント部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルハウスの被覆シートをハウス骨格へ止着する手段であるダブル溝型のシート止め材(以下、ダブル溝型シート止め材という。)を長手方向に突き合わせて一連に接続してハウス骨格を形成することに寄与せしめ、且つ同シート止め材へ被覆シートをシート止め材により止め着けてビニルハウスの屋根及び側面部に例えば二重膜構造の断熱空気層を形成することに寄与せしめると共に、同ビニルハウス内への空気の供給と循環に必要な通気流路(空気孔)をシート止め材に設けることを無用にして、しかもビニルハウス内空気の循環と一定空気圧の保持を可能にする、ダブル溝型シート止め材連結用のジョイント部材の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜や花卉類その他の植物栽培に利用されるビニルハウスとして、合成樹脂シートで成る内外二重の空気層形成フィルムで気密な空気層を形成し、その空気層へ空気を吹き込んで相当厚さの断熱空気層を膨張させ形成する、断熱空気層を形成するビニルハウス外郭体を温室の構成は既に知られており、広く実用に供されている。
【0003】
本出願人は、下記特許文献1に開示したエアハウス又はエアカーテンの空気給・排気システムを開発し、既に特許を受けた。
同特許文献1の
図8には、本願の
図13、
図14に転載したように、2本のシート止め溝1a’、1a”が平行状の配置で一連に形成され、一方のシート止め溝1a’へそれぞれハウス内側面を形成するフィルム12の一端が止着され、他方のシート止め溝1a”へ外側面のフィルム13が止着され、前記二つのシート止め溝1a’と1a”の間に位置する繋ぎ板部1b’に、排気用の空気孔1c’を長孔形状に複数設けたダブル溝型シート止め材1’をハウス長手方向(棟方向)へ設置した使用例が開示されている。
このビニルハウスには、前記内外の空気層形成フィルム12、13で気密な断熱空気層Aが形成されている。
電動ファン17で送られた空気は先ず、給気用チューブ15へ入り、次いで同チューブ15の通気孔16から断熱空気層Aへと到達する。前記断熱空気層Aの層内に位置する給気用チューブ15は、内側の空気層形成フィルム12と合一に、固定端が上記ダブル溝型シート止め材1’へ止め線1f’で止着されている(
図13も参照されたい)。
ビニルハウス内空気の供給・循環に必要とされる通気は、上記ダブル溝型シート止め材1’の中間の繋ぎ板部1b’に複数の排気孔1c’を長手方向に長い長孔として適宜の配置で多数設けることにより確保している。
即ち、
図13、
図14に見られる電動ファン17を連続的に駆動して供給する空気は、先ず上記の給気用チューブ15内へ吹き込まれる。同給気用チューブ15が膨張限度に至ると、過剰空気は、給気用チューブ15に一定の配置で多数設けられた小径の通気孔16から流出させて断熱空気層A内へと吹き込まれる。こうして断熱空気層Aが膨張されて温室の断熱効果をあらしめる。
更に、断熱空気層Aを膨張させて過剰(高圧状態)となった空気は、抵抗が小さい外側の空気層形成フィルム13を押し退けて発生する隙間から、上記ダブル溝型シート止め材1’が設置された空間へ辿り着き流入する。そして、同ダブル溝型シート止着具の繋ぎ板部1b’に長孔形状に設けられた複数の通気孔1c’からハウス内空間10へ還流することで、温室内は一定の空気圧に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−75405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された従来のダブル溝型シート止め材を使用してビニルハウスを構築する場合、ハウス内空気の循環と空気圧を適切状態に維持するための通気手段は、
図14に示したように、ダブル溝型シート止め材の繋ぎ板部に、空気の流通口を多数個孔開け加工するほかなく、その孔開け加工の作業が大変面倒で煩わしくて時間がかかり、しかもコスト高になるという問題があり、解決課題になっている。
【0006】
よって、本発明の目的は、ビニルハウスの被覆シートを止着するダブル溝型シート止め材を使用して、ビニルハウス内空気の供給、循環に必要とされる通気を行う手段として、シート止め材に通気孔を設ける加工を一切無用にしてコストダウンを図り、しかもビニルハウス内空気の循環と空気圧を合理的に良好に保持可能に工夫した、ダブル溝型シート止め材のジョイント部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るダブル溝型シート止め材連結用のジョイント部材100は、
開口部を幅狭に形成された2条のシート止め溝1a’、1a”が中間の繋ぎ板部1bを介して一連の平行状に形成されて成るダブル溝型シート止め材1を接続する受け溝2が、両側縁部に起立して前記ダブル溝型シート止め材1の両外側縁壁1c、1cの外面を抱きかかえて支持する外側縁壁部4、4で形成され、
同受け溝2の長手方向の略中間部位に、受け溝2の溝底面を幅方向に掘り下げた構造で、前記ダブル溝型シート止め材1の表面等に発生した結露水等を受け入れて導く排水溝3が幅方向の全長にわたって形成されており、
前記排水溝3に沿う位置に、受け溝2へ挿入したダブル溝型シート止め材1の先端部が突き当たるストッパー部5及び50が突設されており、前記排水溝3の中央部位に位置するストッパー部5に空気の流通を許容するエア抜き用凹部6が設けられており、
ビニルハウスの断熱空気層Aへ電動ファン17で送り込まれた空気は、同断熱空気層Aから前記中央位置のストッパー部5のエア抜き用凹部6から前記ダブル溝型シート止め材1の繋ぎ板部1bの背面側空間60を通じてビニルハウス内へ還流させる構成であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明に係るダブル溝型シート止め材連結用のジョイント部材100は、
開口部を幅狭に形成された2条のシート止め溝1a’、1a”が中間の繋ぎ板部1bを介して一連の平行状に形成されて成るダブル溝型シート止め材1を受け入れる溝幅で、同溝の開口幅が高さ方向に幅狭となるように両外側縁壁4、4で形成された受け溝2へ、その溝底面2aに沿って両端から前記ダブル溝型シート止め材1、1を長手方向に挿し入れて一連の突き合わせ状態に接続する構成であって、
前記受け溝2は、前記ダブル溝型シート止め材1の横断面形状における溝底外面を受け止める平坦な溝底面2aと、同受け溝2の両外側縁に起立して前記ダブル溝型シート止め材1の両外側縁壁の外面を抱きかかかえて支持する外側縁壁部4、4を備えて成り、
前記受け溝2の長手方向の中央部位に、当該受け溝2の溝底面2aを溝幅方向に掘り下げた溝構造で、同受け溝2の横断方向の全幅に及ぶ長さの排水溝3が設けられており、
同排水溝3の長手方向に沿う位置に、受け溝2の長手方向の両端から挿入された前記ダブル溝型シート止め材1、1の先端部が突き当るストッパー部5及び50が設けられており、中央位置のストッパー部5にエア抜き用凹部6が形成されており、
ビニルハウスの断熱空気層Aを形成する内外二重のプラスチックシート12、13のうち温室内空気を取り込む電動ファン17が設置された内側のプラスチックシート12の端部は、上記ダブル溝型シート止め材1における手前側位置のシート止め溝1a’へ止着され、同じ断熱空気層Aを形成する外側プラスチックシート13の端部は、前記のシート止め溝1a’を飛び越えた先側位置のシート止め溝1a”へ止着され、前記内外二重のプラスチックシート12、13が形成する断熱空気層Aへ電動ファン17が給気用チューブ15を通じて送り込んだ空気のうち、過剰量の空気は、前記ダブル溝型シート止め材1を連結したジョイント部材100に設けた中央位置のストッパー部5に形成されたエア抜き用凹部6から、前記ダブル溝型シート止め材1を形成する中間の繋ぎ板部1bの背面側空間を通じてビニルハウス内へ還流させる構成であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明に係るダブル溝型シート止め材1のジョイント部材100は、請求項1又は2に記載したダブル溝型シート止め材1を保持する受け溝2の溝底面2aにおける長手方向の両端部に、同端部から中央部に向かって漸次下る勾配の漏水防止テーパ部20が形成されていることを特徴とする(
図9)。
【0010】
請求項4に記載した発明に係るダブル溝型シート止め材1のジョイント部材100は、請求項1又は2に記載したダブル溝型シート止め材1を保持する受け溝2の溝底面2aにおける長手方向の両端部の溝横断方向の全幅に、漏水防止用の凸条部21が堰のように形成されていることを特徴とする(
図10)。
【0011】
請求項5に記載した発明に係るダブル溝型シート止め材1のジョイント部材100は、請求項1乃至4のいずれか一に記載した発明におけるダブル溝型シート止め材1を保持するジョイント部材100の受け溝2に設けた排水溝3の下流側端部に、排水ホースを接続するホースジョイント7が設けられていることを特徴とする(
図10)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、2に記載した発明によるダブル溝型シート止め材1のジョイント部材100は、受け溝2の長手方向に沿う位置に、当該受け溝2へ両端部から挿し入れたダブル溝型シート止め材1、1の先端部が突き当たるストッパー部5及び50が設けられ、中央のストッパー部5の上面部にエア抜き用凹部6が形成されているので、電動ファン17が給気用チューブ15を通じて断熱空気層A(
図4及び14参照)に向かってへ空気をどんどん連続的に送り込んでも、断熱空気層A内が余剰空気(又は過剰空気圧)の状態になる懸念は無い。というのも、
図4を見ると解り易いように、給気用チューブ15及び断熱空気層A内の空気の余剰量(以下、余剰空気という。) は、上記排水溝3の中央に位置するストッパー部5の頂面に設けたエア抜き用凹部6を通じて漏れ出し、ダブル溝型シート止め材1を構成する繋ぎ板部1bの背面側空間へと流れ(
図5参照) 、それぞれ再び温室空間内へ還流される。よって、温室空間内は相変わらず適度な空気量と空気圧のバランスが保たれる。つまり、
図13に示す給気用チューブ15の使用を必要としない、但し、給気用チューブ15を併用することは自由である。
【0013】
次に、同じジョイント部材100の長手方向の略中央部位に設けた、結露水を導く排水溝3を通じても、前記過剰空気は温室内(又は温室外)へ流出させることができ、よって、温室空間内は適度な空気量バランスに保たれる。
従って、温室を構成する断熱空気層A(
図14参照)に発生する過剰空気を温室空間の内外へ流通させる手段として、
図14に示した従来例の如く、ダブル溝型シート止め材1の繋ぎ板部1bへ通気用孔1cを多数設ける加工は一切無用であり、そうした加工のための手間とコストを不要にできる。
そして、ダブル溝型シート止め材1を構成する2条のシート止め溝1a、1aに結露して成長した結露水は、同シート止め溝1a、1aの流水勾配にしたがって下位側に位置するジョイント部材100の排水溝3へと自然に導かれる。よって、ホースジョイント7へ排水ホース等を接続することにより、温室内外へ適宜に排除処理することができ、溜まり水を発生する懸念は皆無である。
仮に、前記結露水がジョイント部材100の受け溝2へ回り込むことがあっても、同受け溝2の端部には請求項3に記載した漏水防止テーパ20、又は請求項4に記載した漏水防止凸条部21を形成することで漏水の害を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明によるダブル溝型シート止め材のジョイント部材の実施例を示した平面図である。
【
図2】ダブル溝型シート止め材を本発明のジョイント部材を使用して突き合わせ接続する要領を示した平面図である。
【
図3】ジョイント部材を
図1に指示したIII−III線矢視の位置で切断した断面図である。
【
図4】同上のジョイント部材の使用状態の一例を示した側面図である。
【
図5】同ジョイント部材でダブル溝型シート止め材を接続した状態を背面側から示した斜視図である。
【
図6】ダブル溝型シート止め材をジョイント部材を使用して突き合わせ接続する直前状態を示した正面図である。
【
図7】ジョイント部材の第2実施例を示した正面図である。
【
図8】
図7に示したジョイント部材の側面図である。
【
図9】Aは
図7のD−D矢視断面図、BはA図中の円で囲んだテーパ部の拡大詳細図である。
【
図10】第2実施例のジョイント部材を示す斜視図である。
【
図11】Aは漏水防止用凸部を備えたジョイント部材を
図9Aと同じ視点で示した断面図、BはA図中の円で囲んだ部分の拡大詳細図である。
【
図12】異なるジョイント部材の実施例3を示した正面図である。
【
図13】従来技術における断熱空気層A内の空気の循環流動の状況を例示した説明図である。
【
図14】従来のダブル溝型シート止め材の使用例を要部について示した斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明によるダブル溝型シート止め材1の連結用ジョイント部材100の実施例及び最良の実施形態を説明する。
本発明で言うダブル溝型シート止め材1とは、
図2及び
図3〜
図6に示したとおり、横断面の方向に見ると、開口部が幅狭の蟻溝形状をなす2条のシート止め溝1a’と1a”がそれぞれ、中間の繋ぎ板部1bを仲介として平行状態に連接された配置で一体的に形成されたシート止め材を指す。
これに対応して、本発明によるダブル溝型シート止め材1用のジョイント部材100は、
図1〜
図5に使用状態を例示したように、上記のダブル溝型シート止め材1を一連に長く接続してビニルハウスの屋根面等を形成する等の場合に好適に使用できるものである。
【0016】
本発明によるダブル溝型シート止め材1用のジョイント部材100は、例えば金属製又は合成樹脂成形品等として製作されるもので、
図1〜
図3等に好ましい実施形態を示した通り、溝2の両側縁部に、上記ダブル溝型シート止め材1の底部外面及び両側縁壁1c、1cの外面をきっちり抱え持って拘束し支持する外側縁壁部4、4が、
図4に例示したとおり、上記ダブル溝型シート止め材1における両外側縁壁1c、1cの外面を抱きかかえて保持する形に拘束し支持する溝形状に形成された溝底面2aとの組み合わせで、
図1、
図3及び
図4に示すように、開口部が幅狭形状の受け溝2が形成されている。
ジョイント部材100の外側縁壁部4、4と溝底面2aとで形成された開口部が幅狭形状の受け溝2に関しては、溝底面2aの長手方向の両端部が、長さ方向の中央部に向かって各々1.5°程度の下り勾配で漸次下る傾斜面20に形成され(
図9A、Bを参照)、前記のダブル溝型シート止め材1との接続部分から漏水が発生することを未然に防ぐ構成とされている。前記受け溝2の底面壁2a及び両側縁壁4、4の厚さは約3.4mm程度とされている。両外側縁壁部4、4間の幅方向外寸は81mm、内寸は74mm程度の大きさである。
上記のダブル溝型シート止め材1は、上記ジョイント部材100の両外側縁壁部4、4で形成された受け溝2内へぴったり嵌め合わせて接続できる構成とされている。
【0017】
上記ジョイント部材100の受け溝2の長手方向の中央部位に、
図1と
図2に示した通り、同受け溝2の全幅方向に横断する溝構造に掘り込んだ排水溝3が形成されている。上記したダブル溝型シート止め材1を受け溝2の両側端部から挿し入れると、排水溝3の位置に沿って形成されたストッパー部5及び50へ先端が突き当たって止まり、各ダブル溝型シート止め材1、1の先端が排水溝3を覗き込む状態に接続される。排水溝3は、一例として幅11mm、深さ約9mm程度に凹んだ半筒形状に形成されている(
図5も参照)。
この排水溝3の下流側端部に、外側縁壁部4から外方へ突き出すホースジョイント7が接続されている。このホースジョイント7へ図示を省略した排水ホースを接続することにより、排水溝3に受け入れた結露水等は、ビニルハウスの内外の所望位置へ廃棄等の処分が行える。
【0018】
上記ジョイント部材100の排水溝3の長さ方向の中央部に立つストッパー部5は、同排水溝3の溝幅方向の中央部位で、且つ同排水溝3の長手方向に沿う薄板形状、即ち排水溝3の溝幅が6mmである場合に、板厚5mm程度で溝底から立ち上がる構成で設けられている。
この中央位置のストッパー部5はまた、
図3と
図4に例示したとおり、上記ダブル溝型シート止め材1の平行な2条のシート止め溝1a、1aの中間部に形成された繋ぎ板部1bの横断面形状(
図4、
図5参照)と略同形同大に設けられている。
このストッパー部5の上端面(頂面)の中央部に、温室内空気を循環させる通気用の凹部6が形成されている。
更に、ジョイント部材100には、前記ストッパー部5と協同して働く2個の側部ストッパー部50、50が、
図1〜
図4に示したように、ジョイント部材100の受け溝2を形成する両側の外側縁壁部4、4の内縁部にそれぞれ、排水溝3の方へ覗き出して、ジョイント部材100の受け溝2へ左右から挿し入れたダブル溝型シート止め材1、1の先端部が必ず突き当たって止まる形状に設けられている。
因みに、上記の側部ストッパー部50は、縦×横が約5×5.7mm程度の大きさで、上記排水溝3の両端部の上方位置に、ジョイント部材100の受け溝2、2を形成する両側の外側縁壁部4、4の内縁部から排水溝3を覗き出す内向き形状に突設されている。
【0019】
上記した3個のストッパー部5及び50、50により、当該ジョイント部材100の受け溝2へ左右の端部から挿し入れたダブル溝型シート止め材1、1の先端部が突き当たり、その先端部間に排水用の隙間を生じる。そして、ダブル溝型シート止め材1、1の表面に発生した結露水は必ず前記隙間からジョイント部材100の排水溝3へと流れ落ち、同排水溝3の下流側に設けた前記ホースジョイント7へ接続した図示省略の排水ホースを通じて、ビニルハウス内外の所望の場所へ導いて、利用又は廃棄処分等ができる構成とされている
【0020】
上記した中央位置のストッパー部5の上端面(頂面)の中央部位に設けたエア抜き用の凹部6は、
図4に例示したように、ビニルハウスの断熱空気層Aを形成する内側のプラスチックシート12及び給気用チューブ15へ共通に設置された通気・循環用の電動ファン17の連続運転により、ビニルハウス内から誘引した空気(
図13、14を参照)を、先ずは給気用チューブ15へ供給してこれを膨張させる。同給気用チューブ15を膨張させた空気は、チューブ15の空気圧の上昇に伴い、次には同給気用チューブ15の全周面に適度な配置で設けられた小径の吹き出し孔16(
図14を参照)から順次に吹き出され、内外のプラスチックシート12、13により形成した断熱空気層Aへ流入してこれを膨張させる。こうして断熱空気層Aが空気で充満され適度な圧力で膨張される結果、温室の断熱効果が発揮される。
【0021】
そして、内外のプラスチックシート12、13による閉鎖形状の断熱空気層Aの空気圧が高められると、同断熱空気層A内の空気は、空気圧抵抗が小さい外側のプラスチックシート13を押し退けて、
図4に示した通り給気用チューブ15との隙間からジョイント部材100の方へ流出を始める。このジョイント部材100の排水溝3の溝底上に立つストッパー部5のエア抜き用凹部6は、ジョイント部材100へ左右から差し込み接続したダブル溝型シート止め材1、1の平行な2条のシート止め溝1a、1aの中間部に形成された繋ぎ板部1b(
図2参照)の背面側空間(
図5を参照)を通じて温室空間と連通している。
【0022】
同温室空間の空気圧は、電動ファン17の連続運転により膨張させた断熱空気層Aの空気圧よりも低い(
図4参照)。よって、同断熱空気層Aの空気は、当然、ジョイント部材100のストッパー部5に形成したエア抜き用凹部6を通り、ダブル溝型シート止め材1の平行な2条のシート止め溝1a、1aの中間部に形成された繋ぎ板部1bの背面側空間(
図5を参照)を通じて温室内空間へと順次流れて循環を生じ平衡状態を保つのである。
したがって、電動ファン17をスイッチオンにしたまま連続運転を継続しても、同電動ファン17で送られる空気は、上記した循環を繰り返して平衡状態を保つので、何らの問題も無い。むしろ温室内空気の循環効果で作物の生育に好影響をもたらすのである。
【0023】
次に、
図9〜
図11に示したジョイント部材100の異なる実施形態について説明する。
先ず、
図9A、Bに示した実施例は、上述したジョイント部材100とダブル溝型シート止め材1との接続機能(密着度)を高めて漏水を防止するため、受け溝2の左右両端部に、中央部位の排水溝3に向かって若干の下り勾配で傾斜する漏水防止用底面が形成された構成を特徴とする。
同
図9Bには、A図に円aで囲った部分を拡大して漏水防止テーパ部20の詳細な構成を詳しく図示した。受け溝2の左右の両端部20aの最大厚さtは4.2mmのフラット面20aに形成され、つづく中央寄り部分は本来の受け溝2に向かって漸次薄くなる傾斜のテーパ面に形成されている。
【0024】
次に、
図10には、漏水防止凸条部21を採用したジョイント部材100の実施例を示している。本実施例の漏水防止凸条部21は、ジョイント部材100の受け溝2の左右の両端部に、漏水防止用として、高さ2mmの漏水防止凸条部21を溝横断方向に形成した構成である。フラットな溝底面2aが中央部の排水溝3に向かって形成され、低い段差状(高さ3mm)の凸条部21が端縁に沿って形成されている。
【0025】
なお、上述したジョイント部材は、ストッパーを取り外した形態でも実施可能である。すなわち、ジョイント部材の中央部における上下一対の側部ストッパー部50、50と中央のストッパー部5は、ニッパーなどで切り取ることで簡単に実施できる。
このジョイント部材の使用方法は、ダブル溝型シート止め材1の背面の外側縁壁1cにおける上部外面に、ジョイント部材の上部の側縁(外側縁壁部4)を掛け留め、そのまま付勢して同背面側の外側縁壁1cにおける下部外面に、ジョイント部材の下部の側縁2a(外側縁壁部4)を弾性変形させて掛け留めることにより、ダブル溝型シート止め材1の背面に取り付けて使用される(
図5、
図6参照)。
【0026】
なお、上記ストッパーの有無に拘わらず、本発明のジョイント部材2によれば、シート止め材1の表面に発生した結露水が成長して液摘化して溜まった結露水が、重力作用で、溝底面2aの左右の両端部に形成されたテーパ状の漏水防止テーパ部20や漏水防止凸条部21を伝わり、テーパ状の下方側壁の外側縁壁部4を下って排水溝3に到達する。仮に結露水が漏水しても、この逆テーパ状の漏水防止テーパ部20や漏水防止凸条部21によって堰き止められ、溝底面2aの左右の両側縁からぽたぽた落ちる虞がない。かくして排水溝3へと集められた結露水は同排水溝3と連通するホースジョイント7内を流下し、同ホースジョイント7に接続されたホース(図示は両略)を通じて下方に排出される。
【0027】
以上に本発明の実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではない。その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【符号の説明】
【0028】
1 ダブル溝型シート止め材
1a’ シート止め溝
1a” シート止め溝
1b 繋ぎ板部
1c 外側縁壁
2 受け溝
2a 溝底面
20 漏水防止テーパ部
20a 端部
21 漏水防止凸条部
3 排水溝
4 外側縁壁部
5 ストッパー部
50 側部ストッパー部
6 エア抜き用凹部
60 背面側空間
7 ホースジョイント
12 内側のプラスチックシート(空気層形成フィルム)
13 外側のプラスチックシート(空気層形成フィルム)
15 給気用チューブ
A 断熱空気層
100 ジョイント部材