特開2017-140351(P2017-140351A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-140351(P2017-140351A)
(43)【公開日】2017年8月17日
(54)【発明の名称】葬祭具
(51)【国際特許分類】
   A47G 33/02 20060101AFI20170721BHJP
【FI】
   A47G33/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-54653(P2016-54653)
(22)【出願日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-22174(P2016-22174)
(32)【優先日】2016年2月8日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
(57)【要約】      (修正有)
【課題】位牌および複数の遺骨を収納できる家庭用の葬祭具であって、位牌の経年劣化を防止できるものを提供する。
【解決手段】台座1と台座に立設された箱体2と屋根3とを有する葬祭具であって、箱体の後方と台座の双方またはいずれかに遺骨を収納する空間を有し、箱体前方に透明板で封じられた窓4を設け、故人情報を表示するシート状基材が故人情報を表示する面が窓に近接して保管されている葬祭具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と台座に立設された箱体と屋根とを有する葬祭具であって、箱体の後方と台座の双方またはいずれかに遺骨の収納部を有し、箱体前方に透明板で封じられた窓を設け、箱の窓側内に故人情報を表示するシート状基材の保管部を有し、該シート状基材の故人情報を表示する面が窓に近接して保管されていることを特徴とする納骨可能な葬祭具。
【請求項2】
故人情報を表示するシート状基材は、2本の軸に巻き取られた柔軟なシートであって、該2本の軸は箱前方の窓から視認できない箱体内側に相対してシート状基材の保管部に設置され、該シート状基材の故人情報表示面が窓に近接して展開していることを特徴とする請求項1に記載の葬祭具。
【請求項3】
全体を覆うことができるカバーを有する請求項1または2に記載の葬祭具。
【請求項4】
台座部に灯明立ておよび線香立てを有し、全体がカバーで覆われた請求項1ないし3のいずれかに記載の葬祭具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の位牌および遺骨を収容可能な葬祭具に関するもので、家庭内で旧来の仏壇に替えて使用できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
人口の都市部集中と核家族化に伴って、墓地の確保が難しくなり、遠隔地に墓地を持つ例が増えている。遠隔地に墓地を持つ場合には、墓参の機会を得にくいために、家庭内の祭壇に遺骨の全てまたは一部を祀りたいという要求も出ている。また、遠隔地に墓地を持つことは、近隣の墓地、寺院を基礎とした檀家制度から離れるという面があり、檀家制度を離れて、家庭で遺骨を祀るにふさわしい葬祭具の要求が出てきている。また、散骨という葬送儀礼も普及する中で、遺骨の一部は家庭内の葬祭具に祀りたいという場合もある。
【0003】
家庭内で遺骨を祀るために、仏壇または位牌といった従来からの葬祭具に遺骨を収納可能にしたものが提案されている。例えば、特許文献1では、台座部に遺骨収納スペースを有する位牌が提案されている。この位牌は、家庭内の祭壇としてよりも仏壇内に祀る位牌として提案されており、それ自体で独立して家庭内に置く葬祭具を目的としていない。
【0004】
更に、特許文献2では、仏壇内に遺骨収納室を設けることが提案されている。これは、家庭内の仏壇そのものに関するもので、位牌などを置くことを想定しており、昨今の住宅事情に鑑みたコンパクトな葬祭具を目的とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−321278号公報
【特許文献2】特開2004−105701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、位牌を収納しながら、複数の遺骨を収納できる家庭用の葬祭具を提供することにある。位牌は、他の仏具とともに仏壇に収められて、古くから家庭内で故人を祀るものとして定着している。位牌は戒名などを記した木片札とするのが一般であるが、本発明の目的は、位牌として木片に限定せずに、故人の霊を示すものとしての位牌を想起させる態様で戒名などの故人情報を表示するものを収納し、かつ複数の遺骨を収納できる葬祭具を提供することを目的とする。
【0007】
家庭内の葬祭具は、数世代にわたって引き継がれるべきものであるために、経年劣化しにくいものであることが必要となる。特に位牌は、戒名などの表記部分が変色したりかすれたりすることがある。本発明の他の目的は、戒名などの故人情報を表示する部分が経年劣化しにくい構造の葬祭具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、すなわち本発明は、
[1]台座と台座に立設された箱体と屋根とを有する葬祭具であって、箱体の後方と台座の双方またはいずれかに遺骨の収納部を有し、箱体前方に透明板で封じられた窓を設け、箱の窓側内に故人情報を表示するシート状基材の保管部を有し、該シート状基材の故人情報を表示する面が窓に近接して保管されていることを特徴とする納骨可能な葬祭具、
[2]故人情報を表示するシート状基材は、2本の軸に巻き取られた柔軟なシートであって、該2本の軸は箱前方の窓から視認できない箱体内側に相対してシート状基材の保管部に設置され、該シート状基材の故人情報表示面が窓に近接して展開していることを特徴とする[1]に記載の葬祭具、
[3]全体を覆うことができるカバーを有する[1]または[2]に記載の葬祭具、
[4]台座部に灯明立ておよび線香立てを有し、全体がカバーで覆われた[1]ないし[3]のいずれかに記載の葬祭具、
である、
【発明の効果】
【0009】
本発明の葬祭具は、従来の位牌の概念を大きく変更しない構造であって、複数の位牌、遺骨を収納でき、これ自体で家庭内の葬祭具として仏壇に替えて用いることができ、位牌部の戒名や故人情報などの表示部分が経年劣化しにくいという効果を奏する。また、本発明の葬祭具は、家庭内で家具の一部あるいは置物として使用できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の葬祭具の一例で、全体斜視図。
図2】故人情報表示用窓とシート状基材の保管部を示す、断面図。
図3】柔軟な故人情報表示シート状基材の端部を2本の軸に固着して巻き込み展開する例の斜視図(a)と断面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を更に詳しく説明する。本発明の葬祭具の全体構成は、台座と台座に立設された箱体と屋根とを有するものである。その外観形状は、堂塔を想起させるものであって、家庭内の葬祭具として、旧来からの宗教儀礼の概念を残す趣旨である。屋根部は装飾的なものであるが、屋根部がないとすると遺骨を収納することもあって墓石を印象付けるものとなり、家庭内で家具の一部あるいは置物として扱われる本発明の葬祭具の対象とはならない。箱体は、角形であっても、断面が楕円または円の筒状であってもよい。箱体の形状に合わせて、台座部は台形あるいは角形であっても、断面が楕円または円の筒状であってもよい。
【0012】
本発明の葬祭具の台座、箱体、屋根部の材質に特に制限はなく、木材や、アルミニウム、鉄などの金属、有機樹脂、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。家庭内で用いる葬祭具であることから家具の一部とするという点から木製が好ましいが、家具の一部あるいは置物となるにふさわしいものであればよい。
【0013】
本発明の葬祭具は、箱体の後方と台座部分の双方またはいずれかに遺骨の収納部を有するものである。これら遺骨の収納部は、台座にあっては空洞構造とすること、箱体の後方については仕切り板によって収納の空間を形成することができ、これら空間の形状に制限はない。これら空間への遺骨の収納は、遺骨をそのまま収納する方法であってもよいが、遺骨を容器に収納して、この遺骨容器を収納する方法が好ましい。本発明の葬祭具の遺骨収納部は、写真などの遺品を保管するスペースとしても用いることができるため、遺骨容器として収納する方法が好ましい。複数の遺骨の収納を容易とするために、遺骨の収納空間は台座と箱体の双方にあることが好ましい。台座への遺骨の収納のための構造は任意であり、箱体を台座部から着脱可能とし、台座の上から遺骨あるいは遺骨容器を収納できる構造、あるいは、台座の後方には扉を設け、遺骨容器を収納する構造をとることができる。台座の後方に扉を設ける方法が、収納が容易である点で好ましい。箱体への遺骨の収納も、屋根を着脱可能とする方法と後部に扉を設ける方法があるが、後に説明する個人情報表示シート基材の収納を容易にするという点から、屋根を着脱可能とする方法が好ましい。
【0014】
遺骨容器は、本発明の目的を達成できるものであれば、その形状、材質に特に制限はない。陶器製のいわゆる骨壺であってもよいし、遺骨の収納部の形状に合わせた、有機樹脂製あるいは木製の容器であってもよい。
【0015】
本発明の葬祭具は、箱体前方に透明板で封じられた窓を設け、箱の窓側内に故人情報を表示するシート状基材の保管部を有するものである。ここで故人情報とは、戒名、法名、名前、没年月日、写真およびこれらを組み合わせたものであり、戒名や法名を表示するシート状基材は典型的には位牌に相当するものであるが、戒名以外に、写真や故人に関わるものを表示することを排除しない趣旨で、故人情報を表示するシートとしている。
【0016】
本発明の葬祭具の窓は、箱体前方に矩形または楕円状の開口部を設け、透明板で封じたものである。透明板で封じるのは、内部が視認できながら、油煙や線香の煙、埃などが内部に侵入するのを防止し、箱体内部の故人情報表示シートの劣化を防止するためで、本発明の葬祭具における必須の構成要素の一つである。透明板としては、ガラス板あるいはアクリル樹脂などの透明樹脂板を用いることができる。
【0017】
透明板の取り付け方法は、一般に窓ガラスの取り付けなどに用いられる公知の方法を用いることができ、油煙や線香の煙、埃などが内部に侵入するのを防止できるものであればよい。透明板により内部の汚れ、劣化を防止するとしても、透明板自体の清掃あるいは交換が必要になることを考慮して、取り外しが容易な取り付け構造であることが好ましい。
【0018】
本発明の葬祭具は、箱の窓側内に故人情報を表示するシート状基材の保管部を有し、該シート状基材の故人情報を表示する面が窓に近接して保管されている。該シート状基材は、木片や樹脂シート、紙、紙を布または木片に貼合わせたものなどであり、表面に故人情報を書き込みあるいは転写できるものであれば、特に制限はない。
【0019】
故人情報を表示するシート状基材の形状は、箱の窓部を覆うことができる大きさの短冊状のものであっても、箱の窓部の開口部よりも広幅で長尺のシートであってもよい。短冊状のものに、故人情報として戒名や命日などを1名または2名分を表示する場合には、位牌そのものといえるものである。本発明の葬祭具は、この位牌に相当するものを複数枚、該シート状基材の保管部に並べてあるいは重ねて保管することができる。
【0020】
故人情報を表示するシート状基材が、箱の窓部の開口部よりも広幅で長尺のシートである場合には、複数の故人情報を表示することができる。この広幅なシートに戒名を含む故人情報を数名分表示する場合には、過去帳に相当するものとなる。この広幅で柔軟なシートを2本の軸に巻き取り、シート状基材の保管部内に個人情報を表示する面が箱体前方の窓に近接するように設置することができる。具体的には、該2本の軸を、箱前方の窓から視認できない箱体内側に、相対して設置し、軸に巻き取られた面を窓に近接して展開することができる。該2本の軸は、水平方向であっても垂直方向であってもよいが、軸を垂直方向とする方が、故人情報を縦書きで表示する場合にシートの長さを短くできるために好ましい。
【0021】
故人情報を表示するシート状基材が、箱の窓部の開口部よりも広幅で長尺のシートである場合の、該2本の軸への広幅で柔軟なシートの巻取りは、該シートの端部の各々を2本の回転自在の軸に固着して巻き取る方法、あるいは、該シートの端部をつなぎ合わせたエンドレスベルト状とし、ベルトの内側の2本の軸で伸展する方法であってもよい。2本の軸に固着して巻き取る方が、故人情報の表示面を広くとれる点で好ましい。シートの端部を各々2本の軸に固着して巻取り、故人情報表示面を窓側に向けて展開する場合には、展開の状態によって、2本の軸の巻取り量が異なる場合があり、展開面が窓と平行にならない場合が起きる。展開面が常に窓と平行になるように、窓と平行に設置されるガイド板あるいはガイドポールにシート状基材を沿わせることにより故人情報表示面を窓と平行にすることができる。該2本の軸に巻き取る広幅で柔軟なシートの材質は、軸に巻取り可能な柔軟さを有し、故人情報を表示できるものであれば特に制限はない。シートの材質として、具体的には、紙、布、紙を布または柔軟な樹脂シートに張り合わせたもの、柔軟で故人情報表示のための表面処理された樹脂シートをあげることができる。シート状基材の端部の各々を2本の回転自在の軸に固着して巻き取る方法において、回転自在の軸の構造に特に限定はなく、軸へシートを巻き取る公知の構造とすることができる。例えば、回転自在の軸にシート状基材を直接固着して巻き取る構造や、固定軸に鞘あるいは滑動自在のエンドレスベルトを巻き付けて回転自在とし、このさやあるいはベルトにシート状基材を固着して巻き取る構造とすることができる。また、複数本の固定軸全体にエンドレスベルトを巻き付ける構造とすることもでき、固定軸の間隔と位置を調整することにより、実質的に1本の径の大きい軸にシート状基材を巻き付けたと同様な効果を奏する。
【0022】
本発明の葬祭具は、箱体前面に扉あるいは取り外し可能なカバーを設けることで、箱体前面の窓部分を覆う構造とすることができる。本発明の葬祭具は、家庭内で用いるために家具の一部または置物の一種として扱われることがあるため、故人情報が常に目につく形を好まない場合のためであり、装飾的な要素を付与可能とするためでもある。同様な趣旨で、本発明の葬祭具全体を覆う角形または円筒形のカバーを設けることも本発明の実施態様の一つである。カバーは、樹脂製、木製あるいは金属製であって、家具の一部となるような装飾を施すことができる。カバーが円筒状で上部がドーム型である場合に、全体または上部を金属製とすると、家庭内の仏壇で一般にリンとも呼ばれる鐘に類似したものとなり、取り外して鐘として用いることができる。カバーが金属製でない場合あるいは鐘として用いるに適当でない場合には、鐘として用いることができる金属製のカバーを屋根上に置くことができ、この場合には、更に全体を覆うカバーを設けることもできる。また、本発明の葬祭具の実施態様の一つとして、台座部分に灯明台および線香台をあらかじめ据え付けることができ、更に全体をカバーで覆うことができる。灯明台および線香台を据え付けた本発明の葬祭具を覆うカバーが鐘として機能する金属製である場合、あるいは鐘を屋根上に置いたうえでカバーで覆う場合には、仏壇の付属品として用いられる主要な要素をすべて備えた葬祭具とすることができ、本発明の実施態様の一つである。
【0023】
以下に本発明の実施形態を図面を用いて説明するが、本発明は図面に示されたものに限定されない。図1は、本発明の葬祭具の例として、台形の台座(1)で角形の箱体(2)および屋根(3)を有するものの斜視図である。箱体の前面には透明板で封じられた矩形の透明板窓(4)が設けられ、箱体の前方には故人情報を表示するシート状基材の保管部(5)が、後部および台座には直方体形状の遺骨の収納部(6)が設けられている。
【0024】
図2は、図1の葬祭具について、箱体(2)の断面図であり、透明板窓(4)側の故人情報を表示するシート状基材の保管部(5)には、短冊形の故人情報を表示するシート状基材(7)複数枚が重ねて保管されており、後部には遺骨の収納部(6)がある。
【0025】
図3は、広幅で横長の柔軟な故人情報表示シート状基材(7)の端部を、垂直の2本の軸(8)に固着して巻き込み展開する例を示す斜視図(a)と断面図(b)である。軸(8)は上下のサポート(9)に回転自在に保持され、軸(8)へのシート状基材(7)の巻取り量が異なっても、軸の間のシート状基材(7)が軸と平行になるように、サポート(9)にはシートガイド(10)が立設されている。軸(8)とサポート(9)、シートガイド(10)を一体として、図2のシート状基材の保管部(5)に載置できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の葬祭具は、従来の位牌の概念を大きく変更しない構造であって、複数の位牌、遺骨を収納でき、これ自体で家庭内の葬祭具として仏壇に替えて用いることもでき有用である。
【符号の説明】
【0027】
1 台座
2 箱体
3 屋根
4 透明板窓
5 故人情報を表示するシート状基材の保管部
6 遺骨の収納部
7 故人情報を表示するシート状基材
8 巻取り軸
9 回転軸のサポート
10 シートガイド
図1
図2
図3