【解決手段】システムは、用いることが容易であり、医院と同様に住居にも実装されることができる。システムは、Kinectセンサ、ソフトウェア開発キット(SDK)及びプロセッサを含む。時間骨格情報は、重複歩距離、重複歩時間、立脚時間及び遊脚時間を含む歩容パラメータを評価するためにKinectセンサから取得された。固有ベクトルベースの曲率検出は、異なる速度での歩容パターンを解析するために用いられる。別の実施形態では、固有ベクトルベースの曲率検出は、身体のバランスを評価するための歩容変数に沿う静的片脚立脚(SLS)期間を検出するように用いられる。
前記人間の測定された前記静的SLS期間を、標準的な第2の導関数ベースの曲率検出アルゴリズムを用いて測定されたSLSと比較するステップを更に備える請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
人間の歩容の時間的且つ空間的パラメータの正確な測定は、重要な診断及び治療情報を提供する。人の歩容パラメータからの個人の生活の質についての有益な情報を導き出すことが可能である。これは、パーキンソン病、変形性関節症等のような疾患を検出する際にも助けとなる。歩容解析は、卒中のある成人の歩行機能障害監視のようなニューロリハビリテーションに大きな重要性を有する。卒中により、歩容速度及び歩行率(ケーデンス)が減少する一方で、歩容サイクル期間及び両脚支持時間は増加する。不全麻痺脚は、対側肢と比較して長い遊脚相及び短い立脚相を有する。歩容運動学は、卒中による患者の評価のために用いられうる。歩容測定装置の精度は、その医療適用性にとって主な課題である。
【0004】
今日、複数のシステムが人間の歩容の質を評価するために用いられる。例えば、GAITRite電子マット及びViconである。これらのシステムは、一般的に、非常に高額であり、高額なメンテナンスを要求する。また、これらの高価且つ高品質の歩容ラボを作動するために、専用の空間及び十分に訓練された技術者が必要である。よって、医院での歩容解析の使用は、非常に制限されている。装置の不足も患者に直面する主な課題である。また、ラボ環境で患者の実際の生活又は可動性要件をシミュレートすることは困難である。一方で、加速度計及びジャイロスコープ等のようなセンサに基づく解決手段は、廉価で、軽量であり、故に、住居に本質的に容易に配置可能である。このようなセンサの主な欠点は、重力、ノイズ及び信号ドリフトへの過度なそれらの固有の感受性である。また、これらのタイプの解決手段は、複数のセンサがモニタリングのために身体に取り付けられるため、患者に不安感を与える。これは、従来のセットアップのこのような技術の適用性上の大きな制限を強いる。
【0005】
同様に、片脚支持での人間の立脚の測定は、高度に重要なものである。片脚支持は、歩容サイクルでの相であり、体重が片方の脚のみにより支持され、反対側の脚が前方にスイングする。この期間は、それぞれ、反対側のつま先が地面から離れ、反対側の足裏が地面を叩くことによって制限される。この相の間、脚は、身体の前方から後方の位置へ行き、腰は伸び続ける。この相は、主に体重を運ぶことを担い、故に、身体のバランスに深く影響を与える。片脚支持相の短い期間は、バランスが良くないことを表す/様々な医療条件(変形性関節症、卒中等)から生じる歩容時を制御する。従来の研究で報告されているように、膝の変形性関節症のある患者の生活の痛みのレベル、機能及び質は、片脚立脚を測定することにより決定されうる。歩容及びバランス性能の減少は、日々の活動に影響を及ぼし、主体性を低減させる重要な要因の一つである。身体のバランスを評価するために、リハビリ測定として、被験者又は患者が片脚で立つように指示され、片脚立脚期間が演算される別々の静的運動が用いられる。静的SLS期間が姿勢安定性を示す静的片脚立脚(static single limb stance(SLS))運動(エクササイズ)として定義される。
【0006】
これらの課題を解決するために、研究者らは、控え目な歩容解析のために、Microsoft Kinect(登録商標)を用いることを試みている。Microsoft Kinect(登録商標)は、MicrosoftのXbox 360(登録商標)又はMicrosoft Windows(登録商標)コンピュータへの外部インターフェースとして接続する周辺機器である。Kinect(登録商標)及び関連するプログラムされたコンピュータ又はXboxは、ユーザが別のコントローラを必要とせずにソフトウェア及びメディアと相互作用しうるように、ユーザの関節の形態を検知、認識及び使用する。Kinectは、歩容モニタリングのための患者の住居で容易に実装されうる。ほとんどの現在のKinectベースの方法は、主に、歩容パラメータの抽出に集中しているが、片脚又は両脚支持のような歩容変数での深い研究では提示していない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書の実施形態及び様々な特徴及びその有利な詳細が、添付の図面に例示され且つ以下の記載で詳述される非限定的な実施形態を参照してより完全に説明される。本明細書で用いられる例示は、本明細書の実施形態が実施され得るやり方の理解を容易にし且つ当業者が本明細書の実施形態を更に実施できるようにすることのみを意図している。従って、例示は、本明細書の実施形態の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0014】
文言「構成される」、「有する」、「含む」、「備える」及びそれらの他の形式は、同等な意味であり、これら文言は、これらの文言のいずれか1つに続く事項又は複数の事項のオープンなリストを意味するが、そのような事項に限定されるような排他的なリストを意味するものではなく、また、列挙された事項のみに限定されることを意味するものではない。
【0015】
また、本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる、単数形“a”、“an”、“the”は、文脈が明確に示していなければ、複数形も含むことを留意されなければならない。本明細書で説明されるシステム及び方法と同様又は同等な任意のシステム及び方法は、本開示の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、好ましい、システム及び方法が説明される。説明及び理解の目的のための以下の説明では、本開示の範囲を限定しないことを意図する多数の実施形態を参照する。
【0016】
その全ての特徴を示す、本開示の一部の実施形態がここで詳細に説明されるであろう。開示される実施形態は、本開示の単なる例示であり、様々な形態で具体化されてもよい。
【0017】
詳細な説明を示す前に、以下の全ての説明は、記載される特定の実施にかかわらず、限定的ではなく、事実上、例示的であることが留意される。
【0018】
ここで、図面、より具体的には
図1を参照し、同様の参照符号は、図面を通じて一貫して対応する構成を示し、示された好ましい実施形態が存在し、これらの実施形態は、以下の例示的なシステム及び/又は方法の文脈で記載される。
【0019】
本開示の文脈では、本開示は、特にMicrosoft Kinetic(登録商標)から受け付けた骨格データを参照して説明され、骨格データは、モーション検出装置から受け付けられることが理解される。表記Kinect(登録商標)、Kinect(登録商標) version1、Kinect(登録商標) version2、Kinectは、例示的な実施形態で用いられるモーション検出装置を意味するために以下の詳細な説明で交互に用いられ、Kinect(登録商標) version1及びKinect(登録商標) version2は、Microsoft(登録商標)の製品の2つのバージョンを意味する。
【0020】
図1は、本開示の実施形態に係る、人間の歩容及び姿勢バランスを解析するシステム100のブロック図を示す。システム100は、Kinectセンサから得られる足首関節の時空間変化を解析することのみによって人間の重複歩(ストライド)距離、重複歩時間、遊脚時間及び立脚時間を測定するように構成される自動の控え目なシステムである。なお、3D世界座標系において骨格関節位置を与えうる他のモーション追跡装置又は3Dモーションセンサの使用も同様に本開示の範囲内であることが理解されるべきである。システム100は、また、Kinect骨格データを用いて静的片脚支持(static single limb support(SLS))期間を測定することにより姿勢制御を評価するようにも構成される。
【0021】
解析に必要である歩容のいくつかの重要な中間状態を有する人間の完全な歩容サイクルが
図2に示される。特に言及しない限り、全ての定義は、事実上一般的であり、左脚又は右脚に対して等しく持続する。歩容サイクル:歩容サイクル、口語では歩行サイクル、は、一方の脚(左又は右)が地面を叩いたときに開始し、同一の脚が再び地面に接触したときに終了する。基本的な歩容サイクルは、本状況下で最適な関心のものである2つのものが以下に説明される:立脚相:脚が地面上にある間の総期間。これは、典型的には、歩容サイクルの全体の62%である。遊脚相:脚が地面に付いていない間の総期間(歩容サイクルの全体の38%)。
【0022】
図1を参照すると、システム100は、Kinectセンサ102又は3Dモーションセンサ102と、ソフトウェア開発キット(software development kit(SDK))104と、プロセッサ106と、を備える。Kinectセンサ102は、SDK104と接続されている。プロセッサ106は、ノイズクリーニングモジュール108、歩容パラメータ推定モジュール110及び静的SLS測定モジュール112のような複数のモジュールを更に備える。
【0023】
本開示の実施形態によれば、Microsoft SDK 1.5は、ソフトウェア開発キット104として用いられる。Kinectセンサ102及びSDK104は、3D世界座標(メートル表記)又は一秒間に30フレームで人間の20の骨格関節の骨格データを取得するために用いられる。
図3aは、Kinectセンサ102により識別される関節間の物理的な接続を示す骨格モデルを示す。SDK104は、主に、タイムスタンプと共に、各関節のx,y,z座標を記録し、ここで、「x」及び「y」は、それぞれ水平及び垂直方向を表し、「z」は、
図3bに示すようにKinectセンサ102からの距離を表す。骨格データは、足首関節データの時空間変化を含む。
【0024】
本開示の実施形態によれば、ノイズ除去モジュール108は、Kinectセンサ102を用いて人間から取得された骨格データから複数のノイズを除去するように構成される。骨格データのノイズは、人間が完全に固定されているときに事実上可視であるが、Kinectセンサ102により記録される関節位置は、時間と共に変化する。ノイズの特徴及びレベルに影響を及ぼす多くのパラメータが存在し、室内照明、IR干渉、Kinectセンサからの被験者の距離、センサアレイの位置、量子化、演算時に導入される丸め誤差等を含む。きれいな骨格データを得るために、ノイズクリーニングモジュール108を用いて被験者の物理構造に関連する構成の大きなセットに変換される。各フレームにおいて、腕、脚、身長の長さ等のような静的な構成が演算され、2つの直前及び2つの直後のフレームで変化が追跡される。ノイズクリーニング後のデータは、歩容パラメータ推定モジュール110及び静的SLS測定モジュール112への入力として用いられる。
【0025】
本開示の実施形態によれば、歩容パラメータ推定モジュール110は、各種歩容パラメータを決定するために用いられる。実施例では、歩容パラメータ推定モジュール110は、重複歩距離、重複歩時間、片足過程及び遊脚期間を推定する。
図2は、基本的な歩容サイクル移動において立脚及び遊脚相の概要を表す。歩行のプロセスにおいて、一方の脚が典型的には体重を支え、他方の脚が支持脚の役割のための準備に進められることが実際にはバイオメトリクスから明らかである。初めにこの現象を捉えるために、左(及び右)足首のx及びy座標は、フレームで追跡される。
【0026】
X方向の左及び右足首の変化の
図200は、本開示に係る
図4に示される。
図4で明らかなように、体重の調節及びバランスに加わるため、左脚が領域「A」から「B」で一時休み、右脚は前へ移動する。また、
図4は、時間(フレーム)に亘る左及び右足首の水平変位(X
AnkleLeft)も示す。同じ脚の2つの連続した足跡のヒールポイント間の距離は、重複歩距離として定義される。1つの重複歩距離の期間は、重複歩時間と呼ばれる。故に、フレーム「A」から「S1」間の距離及び経過した時間は、それぞれ左脚の重複歩距離及び重複歩時間として考慮される。「A」及び「S1」は、左脚の2つの連続した立脚相の開始を最終的に示す2つの点であることが更に観察される。
【0027】
更に、歩容パラメータ検出モジュール110は、2つの負の曲率点「A」及び「S1」を検出するための標準的な第2の導関数ベースの曲率検出アルゴリズムを用いるように構成される。X方向の変化に沿う左脚足首の速度プロファイル300は、
図5に示される。足首は、遊脚相(
図5に示される「B」と「S1」との間)中に最大水平速度に到達し、立脚相(「A」と「B」との間)でほぼゼロに到達することが当業者には広く知られている。
図5は、点「T1」、「T2」及び「P」での左足首の速度V
AnkleLeftの実質的な変化を示す。このことに留意して、対応する足首(ここでは左足首)の速度プロファイルは、所望の曲率点「A」及び「S1」を演算するために用いられている。具体的には、これらの点は、提案された方法でマーカーとして機能するであろう。曲率解析を行う前に、標準的なピーク アンド トラフ検出アルゴリズムは、
図5に示されるような速度プロファイルからピーク(「P」及び)トラフ(「T1」,「T2」)を検出するように採用される。領域「T1」から「P」及び「P」から「T2」での最終的なデータ点Xは、曲率解析に考慮される。曲率点は、データの最小変動の方向にあると仮定される。次のステップでは、正規化されたデータ
【数1】
の共分散行列
【数2】
が演算される(つまり、
【数3】
、ここでX’及びσは、それぞれ、Xの平均及び標準偏差である)。
【0028】
更に、行列の固有値分解が演算される。主成分分析(principle component analysis(PCA))も最大変動の方向を発見するために同一の原理を用いることが理解されるべきである。少なくとも固有値に対応する固有ベクトル(Eminという)は、データの最小変動の方向を提供し、そのため、曲率点に向かう方向を明らかにする。
図6は、共分散行列の固有値分解から得られた2つの方向ベクトル400を示す。(円弧「T1」から「P」の間の)曲率点「B」は、最小固有値に対応する固有ベクトルの最小投影誤差を演算することにより得られ、以下の式を用いて演算される。
【数4】
ここで、
【数5】
は、フレームr(又は時間t)における元の信号値(X
AnkleLeft (r))であり、
【数6】
は、
【数7】
に従う単位ベクトルである。
フレーム(点)「S1」は、同様に演算され、「P1」フレームと「T2」フレームとの間のデータは、固有ベクトルベースの曲率解析に用いられる。最後に、重複歩距離及び時間は、「A」フレーム及び「S」フレームそれぞれに対応する変位とタイムスタンプとの間の差異を見出すことにより測定される。曲率点「B」は、立脚相(
図5について「A」から「B」)により先行される遊脚相(
図5について「B」から「S1」)の開始を示す。よって、4つの全ての歩容変数は、以下の式を用いてモデル化される。
重複歩距離=|(「A」での)X
AnkleLeft−(「S1」での)X
AnkleLeft|、
重複歩時間=|(「A」での)タイムスタンプ−(「S1」での)タイムスタンプ|、
遊脚時間=|(「S1」での)タイムスタンプ−(「B」での)タイムスタンプ|、
立脚時間=|(「B」での)X
AnkleLeft−(「A」での)X
AnkleLeft|。
【0029】
提案されたアプローチは、遊脚相及び立脚相時の歩容速度プロファイルの概要も提供し、2つの追加パラメータ、つまり、それらの相に対応する最大及び最小速度を得ることが理解されるべきである。
【0030】
本開示の実施形態によれば、静的SLS測定モジュール112は、人間の姿勢バランスを解析するために用いられる。姿勢バランスは、静的SLS運動を用いて測定される。静的SLS運動は、一方の脚を上げて地面から離し、他方の脚により身体のバランスを維持することが全てである。静的SLS運動を用いる実験は、y座標での変化に焦点を当てる。左足首のy座標での変化(左脚が持ち上げられた)Y
AnkleLeftは、
図7に示されるような、人間が、脚(ここでは左脚)を挙げて、地面から離したときの運動タイミングについての情報を与える。
図7は、フレーム「R」及び「F」でのY
AnkleLeftの変化を示す。ゾーン「R」から「F」は、SLS姿勢の所望のゾーンである。広い視野で物事を見るために、「R」は、脚が屈曲されて床から離れるフレームであり、「F」は、脚が再び地面に接触するフレームである。「R」と「F」との間の期間は、静的SLS期間として考慮される。
【0031】
それらのフレームを検出するために、k平均法アルゴリズムを採用して、フレームにおけるY
AnkleLeftの変化を捉える。次に、片脚立脚部分(ゾーン「R」から「F」)を差別化することの助けるであろう。
図7は、k平均法アルゴリズムの出力、つまり、所望のフレーム「R」及び「F」からかなり離れたフレーム「K1」及び「K2」も示す。最後に、提案された曲率解析アルゴリズムは、領域「S」から「K1」及び「K2」から「E」のそれぞれにおけるデータ点を与える曲率点「R」及び「F」を見出すために用いられる。
【0032】
動作時に、歩容パラメータ及び姿勢バランスを解析するために含まれるステップを示すフローチャート600が
図8に示される。先ず、ステップ602において、人間の骨格データは、Kinectセンサ102を用いて検知される。一般的に、Kinectセンサ102から検知される骨格データは、ノイズだらけである。したがって、ステップ604において、ノイズクリーニングモジュール108を用いて骨格データからノイズを除去する。次のステップ606において、人間の足首座標をx及びy面に沿って追跡する。次のステップ608において、歩容パラメータ算出モジュール110を用いる固有値ベクトルベースの曲率解析を用いて複数の歩容パラメータを算出する。最後に、ステップ610において、静的SLS測定モジュール112は、静的SLSを測定することにより人間の姿勢バランスを測定する。静的SLSの測定は、人間の姿勢バランスを解析及び維持することを助ける。
【0033】
システム100は、歩容パラメータを解析することによりニューロリハビリテーションに用いられうることが理解されるべきである。システム100は、使用しやすく、医院と同様に住居にも実装されうる。固有ベクトルベースの曲率検出は、異なる速度の歩容パターンを解析するために用いられ、これは、非常に正確且つロバストである。これは、また、住居での患者の在宅リハビリテーションも可能にする。
【0034】
本開示の実施形態によれば、人間の姿勢バランスを解析する方法は、以下の実験的結果により有効性が立証されうる。
【0035】
(下半身歩容解析のためのデータセット生成)
実験は、神経学的及び筋骨格疾患又は症状のない6名の健康な参加者(女性3名、男性3名、年齢:23.5−37歳、身長:1.55m−1.75m、体重:50−79kg)で行われた。
【0036】
実験を開始する前に、参加者は、歩容パラメータを演算するGAITRiteシステムに導かれた。10セットの歩容データが各参加者の異なる歩行速度で記録され、歩行速度は、歩行トライアル中にランダムに変更された(トライアルは、GAITRiteの一端から他端への完全な歩行として定義される)。各トライアル後には1分間の休憩が設けられた。データは、GAITRite及び2つのKinectセンサ(Version1又はV1)からなるKinectセットアップの両方を用いて同時に取得された。GAITRiteシステムとKinectコントローラとの間の時間同期は、ネットワークタイムプロトコル(Network Time Protocol(NTP))により実現される。以前のKinectベースの歩容解析とは異なり、本セットアップは、各2つのKinectを用い、各センサが3.52mの水平FOVを有するため、8メートル(m)のGAITRite歩行路全体をカバーする。2つのKinectは、被験者から2m−2.3mの距離、及び地面から1.5mの高さで歩行路に平行に位置決めされる。これらは、FOVの重複による最小限のIR干渉を実現するために2.5m離れて配置される。FOVが重複する場合、両方のKinectの深さデータは、破損されるであろう。したがって、1つのFOVから別のFOVへの遷移がIR干渉を含むため、2つのKinectから得られるデータは、個別に解析される。
図9は、使用された歩行経路のおおよその形跡(平面図)に沿うKinectセンサの典型的なレイアウトを示す。
【0037】
(静的SLS期間測定のデータセット生成)
骨格データを用いる静的SLS期間を推定するための公的なデータセットが存在しないため、データセットは、Kinect V1を用いて生成された。神経学的疾患の予め存在する症状、主な整形外科的傷害又は前庭障害のない35名の健康なボランティア(年齢:21−65歳、体重:45kg−120kg、及び身長:1.42m−1.96m)が、静的片足バランス解析のために検査される。参加者は、裸足で、眼を開き、真っ直ぐ前を見て腕を腰に当て、Kinectの前方2.1−2.4mの距離で立って検査を行う。グラウンドトルースのために、時間同期されたデータキャプチャは、Kinect及びフォースプレートベースのセットアップを用いて行われた。
【0038】
(下半身歩容解析の評価)
左及び右脚の重複歩距離、重複歩時間、立脚時間及び遊脚時間は、各Kinectセンサに対して歩行ごとに別々に演算され、提案されたシステムの性能を評価する。これは、
【数8】
と定義された平均絶対誤差(mean absolute error(MAE))の推定の厳密な研究に続き、ここで、m
i及びm’
iは、それぞれ、GAITRite(グラウンドトルース/GT)及びKinect測定に対応し、nは、取られた歩行トライアルの回数を表す。表1は、(提案された方法を用いて)演算された歩容パラメータとGAITRite測定との誤差を示す。表1は、Kinect測定がグラウンドトルースに非常に近いが、測定誤差は歩行速度と共に増加していることも明らかにする。事実、両方の脚について、誤差の大きさは、平均歩行速度が0.13m/sを超えるときに非常に増加している。これは、主に、Kinectが、速い歩行シーケンスに対する歩容パターンの微小な変化の取得をしばしば失敗するためであり、よって、変位(つまり、フレームでのX
AnkleLeft 又はX
AnkleRight)曲率の性質に影響を及ぼす。
図10は、Kinectのノイズ態様を正当化する。また、Kinectは、解析において誤差も組み込んだ閉塞効果による正確な左及び右足首を追跡することをしばしば失敗する。
図11は、正確でない追跡により左及び右足首の骨格データがどのように交換されたかを示す。全ての参加者及び全ての歩行速度に亘る重複歩距離、重複歩時間、遊脚及び立脚時間の平均MAEは、それぞれ、0.037m、0.15s、0.05s、0.041sである。
【0039】
これから離れて、どのような種類の偏りが2つのシステムから由来する測定間に存在するかを理解するために、Bland−Altman一致度解析も行われる。
図12は、正方形の点(トライアル)が、速い歩行速度によって主に生じた相対的に大きい誤差を有することを明らかにする。傾斜の信頼区間(Confidence Interval(CI))の95%は、重複歩距離測定については、重大な非常に比例バイアスを示していない。
図13は、遊脚時間測定のBland−Altman解析を示す。プロットは、また、どのように遊脚時間が歩行速度によって影響を及ぼされるかも表現する。同一の解析は、また、立脚及び重複歩期間測定に良好に保持する。固有値ベクトルベースの曲率検出アルゴリズムは、測定値の全てにおいて重要な役割を果たす。アプローチのロバスト性を実現するために、提案された曲率解析法は、既存技術と比較される。最先端のアルゴリズムによって検出される曲率点は、所望のものとは非常に遠い(平均で5フレーム)。これは、固有ベクトルベースのアルゴリズムが良好に扱うことができるノイズのある骨格データによるものである。曲率点検出の不正確さは、歩容パラメータ抽出にも影響を及ぼす。表2は、左脚の主張を明確に有効にするが、観察は、右脚と同様に等しく適する。
【0042】
(静的SLS期間測定)
提案された解決手段は、骨格データから静的SLS期間を測定することも可能である。この実験は、立脚及び遊脚相を解析する際に決定的な役割を果たす考案された曲率検出技術の有効性を評価することの助けとなる。提案された技術を用いて演算された静的SLS期間(3.3に記述)は、フォースプラットフォームベースのシステムによってなされたグラウンドトルース測定値と比較される。フォースベースのシステムでは、グラウンドリアクションフォースでの変化は、SLS期間を得るために主に追跡される。基準として標準グラウンドトルース(GT)システムを保つ提案された方法と最先端の曲率検出アルゴリズムとの比較は、表3によって示される。
【0044】
前述の観点から、本開示は、Kinectシステムを用いて人間の歩容パラメータ及び姿勢バランスを見出し、解析するための方法及びシステムを提供することが理解されるであろう。先の記載は、様々な実施形態を参照して提示されている。本願が属する技術分野の当業者であれば、記載された構造及び動作の方法の代替及び変化が原理、精神及び範囲から有意に逸脱することなく行われ得ることを理解するであろう。
【0045】
明細書は、当業者が本発明の実施形態を使用及び作成できるように主題を記載している。本明細書に定義された主題の実施形態の範囲は、当業者が思い付く他の修正を含み得る。このような他の修正は、請求項の文字通りの記載とは異ならない類似の要素を有する場合、又は文字通りの記載との非実質的な相違を有する均等要素を含む場合、範囲に含まれることが意図されている。
【0046】
しかしながら、保護範囲がこのようなプログラムに、及びメッセージを有するコンピュータ可読手段に加えて拡張されることが理解される。このようなコンピュータ可読記憶手段は、プログラムがサーバ又はモバイル装置又は任意の適切なプログラム可能装置で実行される場合に、方法の1つ以上のステップを実装するためのプログラムコード手段を含む。ハードウェア装置は、例えば、サーバ又はパーソナルコンピュータ等、又はこれらの任意の組み合わせ等の任意の種類のコンピュータを含むプログラム可能な任意の種類の装置であり得る。また、装置は、例えば、ASIC(application−specific integrated circuit)、FPGA(field−programmable gate array)等のハードウェア手段、又はハードウェアとソフトウェア手段の組み合わせ、例えば、ASICとFPGA、又は少なくとも1つのマイクロプロセッサ、及びその中にソフトウェアモジュールが位置する少なくとも1つのメモリ等であり得る。従って、手段は、ハードウェア手段及びソフトウェア手段の両方を含み得る。本明細書に記載の方法の実施形態は、ハードウェア及びソフトウェアで実装され得る。また、装置は、ソフトウェア手段を含んでもよい。代替的に、本発明は、例えば、複数のCPUを使用して、異なるハードウェア装置で実装されてもよい。
【0047】
本明細書の実施形態は、ハードウェア及びソフトウェア要素を含み得る。ソフトウェアで実装される実施形態は、限定されないが、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む。本明細書に記載された本開示のシステムを含む様々なモジュールにより実行される機能は、他のモジュール又は他のモジュールの組み合わせで実行されてもよい。この記載の目的で、コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、又は機器により又はこれらと接続して使用されるプログラムを含む、記憶する、通信する、伝播する、又は搬送することができる任意の装置であり得る。
【0048】
媒体は、電気、磁気、光、電磁気、赤外線、若しくは半導体システム(又は、装置、デバイス)、又は伝播媒体であってもよいコンピューター可読媒体の例としては、半導体又は固体メモリー、磁気テープ、リムーバブルコンピューターディスケット、ランダムアクセスメモリー(RAM)、リードオンリーメモリー(ROM)、固体磁気ディスク、及び光ディスクが挙げられる。光ディスクの最近の例としては、コンパクトディスクリードオンリーメモリー(CD−ROM)、コンパクトディスク−リード/ライト(CD−R/W)、及びDVDが挙げられる。
【0049】
プログラムコードを記憶及び/又は実行するための適切なデータ処理システムは、システムバスを介してメモリ要素に直接又は間接的に結合される少なくとも1つのプロセッサを含む。メモリ要素は、プログラムコードの実際の実行中に利用されるローカルメモリ、大容量記憶装置、及び実行中に大容量記憶装置からコードを取得しなければならない回数を減らすために少なくとも一部のプログラムコードを一時的に記憶するキャッシュメモリを含み得る。
【0050】
入力/出力(I/O)デバイス(これに限定されるものではないが、例えば、キーボード、ディスプレイ、ポインティングデバイス等)は、直接的又はI/Oコントローラーを介してシステムに接続される。また、ネットワークアダプターは、システムに接続され、データ処理システムが、プライベートネットワーク又はパブリックネットワークを介して、他のデータ処理システム、遠隔プリンター、又はストレージデバイスに接続されることを可能とする。モデム、ケーブルモデム、及びイーサネット(登録商標)カードがネットワークアダプターの現在使用可能なタイプのいくつかである。
【0051】
本実施形態を実施するための代表的なハードウェア環境は、本実施形態に係る情報操作/コンピューターシステムのハードウェア構成を含む。本システムは、少なくとも1つのプロセッサー、又は中央処理ユニット(CPU)を含む。CPUは、システムバスを介して様々なデバイス(例えば、ランダムアクセスメモリー(RAM)、リードオンリーメモリー(ROM)、及び入力/出力(I/O)アダプター)に相互接続される。I/Oアダプターは、周辺デバイス(例えば、ディスクユニット、テープドライブ、及びシステムによって読み出し可能なその他プログラムストレージデバイス)を接続可能である。システムは、プログラムストレージデバイス上の本発明の命令を読み出し可能であり、これら命令に従い、本実施形態の方法を実行可能である。
【0052】
更に、システムは、キーボード、マウス、スピーカー、マイク、及び/又はタッチスクリーンデバイス(図示せず)のようなその他ユーザーインターフェースデバイスをバス接続し、ユーザー入力を収集するユーザーインターフェースアダプターを含む。更に、通信アダプターは、バスをデータ処理ネットワークに接続し、更に、ディスプレイアダプターは、バスを、例えば、モニター、プリンター、送信機のような出力デバイスとして具体化可能なディスプレイデバイスに接続する。先の記載は、様々な実施形態を参照して提示されている。本願が属する技術分野の当業者であれば、記載された構造及び動作の方法の代替及び変化が原理、精神及び範囲から有意に逸脱することなく行われ得ることを理解するであろう。