【解決手段】シートガラスの洗浄装置は、シートガラスと直交する中心軸を有し、一端を固定された第1軸と、第1軸に嵌合する軸受けと、軸受けと第1軸とを収容し、軸受けを内部に固定する容器と、容器の底に一端が固定され、シートと直交する中心軸を有する第2軸と、第2軸の他端に固定され、ブラシ又はスポンジを有するブラシ部又はスポンジ部とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のシートガラスの製造方法について本実施形態に基づいて詳細に説明する。
本実施形態で製造されるシートガラスは、液晶表示装置用ディスプレイのガラス基板に用いる板状ガラスであり、例えば厚さが0.5〜0.7mmであり、2200mm×2500mm(縦×横)のサイズの薄板である。
なお、本実施形態で製造される板状ガラスは、上記に限定されず、携帯電話機などの電子機器の表示画面に用いられるカバーガラスや、プラズマ・ディスプレイ・パネル、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)などのフラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display:FPD)に用いられる板状ガラスであってもよい。
【0013】
本実施形態で製造されるシートガラスの組成は特に限定されないが、例えば、以下の組成比率のガラス板に適用され得る。
(a)SiO2:50〜70質量%、
(b)B2O3:5〜18質量%、
(c)Al2O3:10〜25質量%、
(d)MgO:0〜10質量%、
(e)CaO:0〜20質量%、
(f)SrO:0〜20質量%、
(o)BaO:0〜10質量%、
(p)RO:5〜20質量%(ただしRはMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種である)、
(q)R’2O:0.20質量%を超え2.0質量%以下(ただしR’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種である)、
(r)酸化スズ、酸化鉄および酸化セリウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を合計で0.05〜1.5質量%。
【0014】
(シートガラスの製造方法)
図1は、本実施形態のシートガラスの製造方法の流れを示すフローチャートである。
図1に示すように、溶融されたガラスが、所定の方法、例えばダウンドロー法あるいはフロート法により、所定の厚さの帯状ガラスである素板に成形される(ステップS10)。次に、成形された素板に対して、スクライブと切断が施され(ステップS20)、所定のサイズのシートガラスが得られる。この後、シートガラスの端面の研削、研磨およびコーナカットを含む端面加工が行われる(ステップS30)。上記スクライブでは、ダイヤモンドカッター等を用いて、微小のスジ状の傷である切り込み線(スクライブ線)が素板に入れられる。上記切断では、スクライブ線に沿って機械あるいはマニュアルにより切断される。あるいは、レーザ光による溶断により素板を切断することもできる。
【0015】
この後、シートガラスの洗浄が行われる(ステップS40)。洗浄については、後で詳細に説明する。
洗浄されたシートガラスは塵、汚れあるいは光学欠陥を含む傷が無いか、光学的検査が行われる(ステップS50)。検査により品質の適合した複数のシートガラスが積層されて梱包され、納入先業者に出荷される(ステップS60)。
【0016】
上記シートガラスの製造方法では、素板のスクライブと切断、およびシートガラスの端面加工等の機械加工により、ガラスの微小片が発生し、素板あるいはシートガラスの表面に塵となって付着する。あるいは、上記機械加工時に、工具や治具等に付着した汚れが素板あるいはシートガラスの表面に付着する場合もある。
また、シートガラスの製造工程では、素板の成形(ステップS10)後、微小のスジ状の傷である切り込み線(スクライブ線)を入れるスクライブおよびスクライブ線に沿った切断(ステップS20)の前に、素板は積層されて保管される場合がある。素板が保管されている間に、空中に飛遊した埃や塵などが素板のガラス面に付着する。また、素板と素板との間に合紙が挟まれて保管される場合には、合紙の成分が素板のガラス面に付着して、ガラスが汚れてしまう。
このような塵や汚れをシートガラスが有する状態では、所定の製品の出荷規格を満たすことができず、納入先業者に納品することはできない。このため、次工程において、洗浄が行われる(ステップS40)。
特に、シートガラスが、液晶表示装置用ディスプレイのガラス基板に用いられる場合、ガラス基板に半導体素子を形成するため、シートガラスに対する高い洗浄度が求められる。
【0017】
(洗浄システム)
図2(a),(b)は、洗浄を行う一ラインの洗浄システム10の概略を示す図であり、
図2(a)は洗浄システム10の平面図であり、
図2(b)は、洗浄システム10の側面図である。
洗浄システム10において、ブラシ洗浄機12と、スポンジ洗浄機14と、シャワー洗浄機16とがシートガラスGの搬送方向上流側からこの順番に配置されている。
【0018】
ブラシ洗浄機12は、洗浄ブラシと、洗浄ブラシを回転させるモータと、洗浄ブラシ及びモータを固定するフレームと、洗浄液供給装置とを備える。
洗浄ブラシは、シートガラスGの幅方向であって、搬送方向上の異なる位置(上流側の位置、下流側の位置)に、複数個が列を形成して配置される。本実施形態では、洗浄ブラシの列がシートガラスの搬送方向上の異なる位置に2列接近して設けられる(12a、12b)。洗浄ブラシの列を2列接近して設けるとは、例えば、お互いの洗浄ブラシの列が並行していることをいう。
洗浄ブラシの各列は、シートガラスGの搬送方向に直交する方向に延びている形態、搬送方向に対して傾斜した方向に直線的にあるいは湾曲して延びている形態、あるいは、途中で延びる方向が変化するように屈曲して延びている形態であってもよい。洗浄ブラシの列はシートガラスの搬送方向上の異なる位置に2列接近させて設けられる形態の他に、1列、あるいは3列、4列以上であってもよい。
洗浄ブラシの軸はシートガラスGの幅方向に延びるフレーム(図示せず)に固定されることが好ましい。フレームは、洗浄ブラシのシートガラスへの押し圧を調整できるよう、シートガラスとの距離が調整可能であることが好ましい。
シートガラスGの搬送中に、図示しないモータの駆動により、シートガラスGの搬送方向と直交する方向に並んだ複数の洗浄ブラシを回転させて、シートガラスGの両側のガラス面を洗浄する。
洗浄液供給装置は、洗浄液を貯留する洗剤タンク18と、ノズル18a,18bとを備える。洗剤タンク18に貯留された洗浄液は、ノズル18a,18bを通してシートガラスに供給される。洗浄液として、例えば、アルカリ性の洗浄液が用いられる。洗浄ブラシについては後述する。
シートガラスGは、図示されない搬送機構により搬送されながらブラシ洗浄機12で洗浄された後、図示されない搬送機構によりスポンジ洗浄機14に搬送される。
【0019】
スポンジ洗浄機14には、洗浄スポンジと、洗浄スポンジを回転させるモータと、洗浄スポンジ及びモータを固定するフレームと、洗浄液供給装置が含まれている。
スポンジ洗浄機14は、ブラシ洗浄機と同様の構成であり、ブラシをスポンジに変更すればスポンジ洗浄機の説明となる。
シートガラスGは、図示されない搬送機構によって搬送されながらスポンジ洗浄機14で洗浄された後、図示されない搬送機構によってシャワー洗浄機16に搬送される。
【0020】
シャワー洗浄機16では、純水タンク20内の水がノズル20a,20bを通して供給されて、図示されない搬送機構によってシートガラスGが搬送されながら水洗いされる。
以上の洗浄は、シートガラスGの両側のガラス面について同時に行われるように、洗浄ブラシおよび洗浄スポンジの列12a,12b,14a,14bが、ガラス面の両側に設けられている。
本実施形態では、洗浄ブラシおよび洗浄スポンジの列12a,12b,14a,14bが、ガラス面の両側に設けられているが、片側だけに設けられてもよい。すなわち、ブラシ洗浄機12とスポンジ洗浄機14は、シートガラスGの少なくとも一方のガラス面を洗浄することができる。
【0021】
(洗浄ブラシ、洗浄スポンジ)
図3は、本発明のシートガラスの洗浄装置のブラシ洗浄機12およびブラシ洗浄機14における洗浄ブラシおよび洗浄スポンジの配置を説明する図である。
以降、洗浄ブラシおよび洗浄スポンジは同じ配置及び形態を有するので、代表して洗浄ブラシを用いて説明する。
【0022】
図3に示すブラシ洗浄機12の列12aには、複数の洗浄ブラシ22a,22b,22c,22d,・・・が設けられている。複数の洗浄ブラシ22a,22b,22c,22d,・・・を纏めて説明するとき洗浄ブラシ22という。洗浄ブラシ22のそれぞれは、シートガラスGの表面に直交する軸24a,24b,24c,24d,・・・を有する(纏めて説明するとき、軸24という)。列12bにも列12aと同様に、複数の洗浄ブラシ22がシートガラスGの搬送方向Xと直交する方向Yに沿って設けられる。ただし、列12bの洗浄ブラシ22の軸24のY方向における位置は、列12aの隣り合う2つの洗浄ブラシ22の回転中心軸24のY方向における位置の中間の位置に設けられることが好ましい。すなわち、列12a,12bの洗浄ブラシ22は、互い違いに(千鳥状に)設けられることが好ましい。このように、配置することにより、より均一に洗浄し洗浄度もより向上させることができる。
洗浄ブラシ22の軸は、フレーム(図示せず)に固定されることが好ましい。フレームは、シートガラスから一定距離を有し、シートガラスの幅方向に延び、同一列に属する複数個の洗浄ブラシの軸を固定できることが好ましい。
なお、本実施形態では、複数の洗浄ブラシ22が千鳥状に設けられているが、千鳥状に設けられていなくてもよく、さらには、1列に配置されてもよい。
【0023】
洗浄ブラシは、軸と、軸の一端に固定したブラシと、軸に嵌合する軸受けとを備える。軸受けは、軸を安定して高速回転させるために用いるものであるが、
図4に示す通り、軸受け28と軸24とが接触する部分(以下、嵌合部34とする。)から、経時変化及び金属疲労の原因により紛体が発生する。軸及び軸受けが金属製の場合には、紛体は金属粉である。これがシートガラスに落下すると、シートガラスの傷又は汚れの原因となるので、本実施形態では、嵌合部を覆う容器を設けてシートガラスの傷又は汚れを抑制する。
図5に、本実施形態の洗浄装置を示す。
洗浄装置は、一端が固定され、シートガラスと直交する中心軸を有する第1軸24aと、第1軸24aに嵌合する軸受け28と、軸受け28と第1軸24aとを収容し、軸受け28を内部に固定する容器32と、容器32の底部に一端が固定され、上記中心軸と同一の中心軸を有する(上記中心軸の延長線上に中心軸を有する)第2軸24bと、第2軸24bの他端に固定され、ブラシ又はスポンジを有するブラシ部又はスポンジ部とを備える。
第1軸24aは、それ自体は回転するものではなく、シートガラスの幅方向に延び、シートガラスと一定の距離を有するフレームに一端が固定されることが好ましい。第1軸24aは強度を得るため金属製であることが好ましい。
軸受け28は、ブラシ又はスポンジを安定して高速回転させるために容器32に固定される。強度を得るために金属製であることが好ましい。
図5には軸受けが2つ描かれているが、数は限定されるものではなく、2つ以上でもよい。軸受けの種類は特に限定されないが、ブラシ又はスポンジを、より安定して高速回転させるために、ボールベアリングが好ましい。
また、第1軸24aを持ちあげた際に、軸受け28が抜け落ちないように、軸受け28と嵌合していない部分の第1軸24aの直径を、軸受け28の内径より大きくして、軸受け28の第1軸24aに対する高さ位置を一定してもよい。
容器32は、第1軸24aと軸受け28とを収容し、嵌合部から発生する紛体を溜めるものであれば、特に形状は限定されない。容器32は、第2軸24bと共に回転するため、回転中心に対して対称な構造となっていることが好ましい。
図5に示す容器32は上部が開放されているが、蓋があることが好ましい。容器32は、樹脂製でも金属製でもよいが、洗浄工程で使用するものであるため、錆にくい材料、例えばステンレス製が好ましい。
第2軸24bは、図示しないモータにより回転する。第2軸24bは、強度を得るため金属製であることが好ましい。
ブラシ部又はスポンジ部30は、基部36と、ブラシ又はスポンジ22とを備えることが好ましい。
基部36は、円柱、多角柱であってもよいが、円柱であって側面に平歯が形成されていることが好ましい。複数の洗浄ブラシから構成される列(
図3の12a,b)の端部においてフレームにモータが設置され、モータの平歯とモータに隣接する洗浄ブラシの平歯とが噛み合わさり、隣接する洗浄ブラシの平歯同士が噛み合わさるよう配置されることが好ましい。これにより、1のモータにより同一列の複数の洗浄ブラシを回転させることができる。
ブラシは繊維であり、例えば、ナイロン繊維である。ブラシ部は、基部36にナイロン繊維が均一な密度で植毛されているものであってもよい。また、スポンジ部は、基部36に一定の気孔率を持つ多孔質材料を接着剤で接着したものであってもよい。
モータ駆動すると、第2軸24bと、容器32と、軸受け28と、ブラシ部又はスポンジ部30とが一体となって回転し、ガラスGを洗浄することができる。回転速度は、ブラシの場合は100〜1000rpm、スポンジの場合は100〜300rpmであることが好ましい。
軸受け28と第1軸24aとの嵌合部は、容器内32に収容されているため、発生した金属粉は容器32内に溜められてシートガラスG上に落下しない。したがって、シートガラスの汚れと、シートガラス洗浄時の金属粉によるシートガラスの傷とを抑制することができる。
以下に洗浄ブラシの実施例を説明するが、ブラシをスポンジに読み替えて、洗浄スポンジの実施例とすることができる。
【実施例1】
【0024】
図2に示す洗浄システム10のブラシ洗浄機を用いて、0.5mm厚、2200mm×2500mmのサイズのFPD用の板状ガラスを洗浄した。
ブラシ洗浄機の一列当たりの洗浄ブラシは25個であって、洗浄ブラシの列をシートガラスの幅方向に2列配置とした。各洗浄ブラシの構成については
図6に示す。
図6に示す通り、洗浄ブラシは、シートガラスGと直交する中心軸を有し、シートガラスGの流れに垂直な方向に延びるフレーム(図示せず)に一端を固定された第1軸24aと、第1軸24aに嵌合する軸受け28と、軸受け28と第1軸とを収容し、軸受け28を内部に固定した容器32と、容器32の底に一端が固定され、回転中心軸上に軸を有する第2軸24bと、第2軸24bの他端に固定され、ブラシを有するブラシ部とを備える。
第1軸24a、軸受け28、第2軸24bは、金属製である。軸受けは、2つのボールベアリングからなる。ブラシ部は、金属製の基部36にナイロン繊維が均一な密度で植毛されたている。基部36は側面に平歯を有する。フレーム側部に設置されたモータは、1の洗浄ブラシと平歯で噛み合わさり、洗浄ブラシ同士も互いに平歯で噛み合わさり、モータの回転により一列に並べられた洗浄ブラシが回転するよう構成されている。
容器32は、ステンレス製の円筒であり、ボールベアリングの外縁が容器内壁と当接して固定される。容器の上部に蓋を備える。蓋は、第1軸24aを中心に回転する際に容器の回転を妨げないよう、第1軸24aとの間に隙間が設置されている。
第2軸24bと共に、容器32と、軸受け28と、第2軸24bと、ブラシ部又はスポンジ部30とが一体となって回転するよう構成されている。
モータを駆動して各洗浄ブラシを回転させ、シートガラスGの両面を洗浄した。回転速度は、100〜600rpmであった。
10時間連続して洗浄した後、モータの回転を停止した。軸受け28と第1軸24aとは蓋を有する容器内32に収納されているので、嵌合部から発生した金属粉は容器32内に溜められ、シートガラスGに落下しなかった。したがって、シートガラスの汚れと、シートガラス洗浄時の金属粉によるシートガラスの傷とを抑制することができた。
【0025】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてよいのはもちろんである。