【解決手段】本発明は、ポリウレタン樹脂を含む高分子体であり、前記ポリウレタン樹脂は、ヒドロキシ基を含む化合物に由来する第1の構成単位と、イソシアネート基を含む化合物に由来する第2の構成単位とを備え、前記第1の構成単位の1つ以上が、ヒドロキシ基を含む有機カチオン及びヒドロキシ基を含む有機アニオンの少なくとも一方に由来する、高分子体等である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記研磨パッドを用いて被研磨物を研磨する方法としては、例えば、以下の方法がある。
まず、研磨機の上定盤の下面に円盤状の被研磨物を貼り付け、また、前記研磨機の下定盤の上面に円盤状の研磨パッドを貼り付ける。そして、前記上定盤及び前記下定盤によって、前記被研磨物を前記研磨パッドに押し付ける。次に、前記被研磨物を前記研磨パッドに押し付けた状態で、前記研磨パッド上に研磨用スラリーを供給しつつ、前記上定盤及び前記下定盤を回転させることにより、前記被研磨物を研磨する。
前記研磨用スラリーとしては、水と砥粒とを含有する研磨用スラリー等が用いられている。
【0005】
ところで、被研磨物を研磨する際に研磨パッドが硬いと被研磨物に傷が生じやすい。
近年、被研磨物に傷が生じ難い研磨方法が求められることがあり、このことから、硬度が低い研磨パッドも求められることがある。
【0006】
しかし、硬度が低い研磨パッドは、取扱い性に欠けるといった問題がある。
例えば、円盤状の研磨パッドは通常直径が1000〜2500mm程度であるが、このような大きさの研磨パッドが軟らか過ぎると、運ぶ際に変形しやすく、その結果、研磨パッドを研磨機外から研磨機の定盤上の所定位置まで運び難いという問題がある。
また、研磨パッドの定盤への貼り付け方法は、通常、以下の方法である。すなわち、両面テープの一面側を研磨パッドに貼り付け、その後、研磨パッドに貼り付いた両面テープの他面側を定盤に貼り付けることにより、研磨パッドを定盤に貼り付ける。しかし、研磨パッドは、軟らか過ぎるとハンドリング性が低いので、研磨パッドに貼り付いた両面テープの他面側が、所望の位置からずれた位置で定盤に貼り付いてしまうという問題もある。
【0007】
また、研磨パッドの作製方法は、通常、研磨パッドとしての所望の大きさよりも大きな高分子体を一旦作製し、その後、この高分子体をスライスすることにより研磨パッドを作製する方法となっているが、高分子体は軟らか過ぎるとスライスし難いという問題を有する。
【0008】
このような問題に着目し、本発明者が鋭意検討したところ、硬度が低い研磨パッドが要望されるのは被研磨物を研磨するときで、硬度が高い研磨パッドが要望されるのはそれ以外のときであることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明者が鋭意検討したところ、特定の状況下において硬度が低くなる高分子体を提供することで、研磨パッドなどに適した高分子体が提供できることを見出した。
【0010】
そこで、本発明は、上記要望点に鑑み、特定の状況下において硬度が低くなる高分子体を提供するとともに、該高分子体を備える研磨パッド、及び、該高分子体を作製する高分子体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る高分子体は、ポリウレタン樹脂を含む高分子体であり、
前記ポリウレタン樹脂は、ヒドロキシ基を含む化合物に由来する第1の構成単位と、イソシアネート基を含む化合物に由来する第2の構成単位とを備え、
前記第1の構成単位の1つ以上が、ヒドロキシ基を含む有機カチオン及びヒドロキシ基を含む有機アニオンの少なくとも一方に由来する。
【0012】
斯かる高分子体に係るポリウレタン樹脂は、カチオン及びアニオンの少なくとも一方を有する化学構造となっており、その結果、液状の極性物質(水等)との親和性に優れた化学構造となっている。よって、このポリウレタン樹脂が液状の極性物質と接触することにより、ポリウレタン樹脂のポリマー分子間に極性分子(H
2O分子等)が入り込みやすくなる。その結果、このポリウレタン樹脂は、液状の極性物質と接触した状態では液状の極性物質と接触していない状態に比べて硬度が低いものとなる。
従って、斯かる高分子体は、液状の極性物質と接触した状態では液状の極性物質と接触していない状態に比べて硬度が低い高分子体となっている。
すなわち、斯かる高分子体は、特定の状況下において硬度が低くなる高分子体となっている。
【0013】
また、本発明に係る高分子体では、好ましくは、前記第1の構成単位の1つ以上が、ヒドロキシ基を含む有機カチオンに由来する。
さらに、該有機カチオン由来の構成単位は、好ましくは、イオン液体に由来する。
【0014】
さらに、本発明に係る高分子体では、好ましくは、前記ポリウレタン樹脂は、架橋構造を有している。
【0015】
斯かる高分子体は、前記ポリウレタン樹脂が架橋構造を有しているので、液状の極性物質(水等)と接触した際にこの液状の極性物質によって膨張するのを抑制でき、その結果、この液状の極性物質との接触による変形を抑制できるという利点を有する。
【0016】
また、本発明に係る高分子体では、好ましくは、前記ポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂発泡体である。
【0017】
さらに、本発明に係る高分子体は、好ましくは、研磨パッド用であり、該研磨パッドにおける少なくとも研磨面を構成する部分として用いられる。
【0018】
また、本発明に係る研磨パッドは、前記高分子体を備える。
【0019】
さらに、本発明に係る高分子体の製造方法は、ポリウレタン樹脂を含む高分子体を得る、高分子体の製造方法であって、
ヒドロキシ基を含む化合物と、イソシアネート基を含む化合物とを結合させることにより前記高分子体を得、
前記ヒドロキシ基を含む化合物が、ヒドロキシ基を含む有機カチオン及びヒドロキシ基を含む有機アニオンの少なくとも一方を有する。
【0020】
また、本発明に係る高分子体の製造方法では、好ましくは、前記ヒドロキシ基を含む化合物が、ヒドロキシ基を含む有機カチオンを有し、
前記有機カチオンがイオン液体に由来し、
前記結合を、前記イオン液体の融点以上の温度で行う。
【0021】
斯かる高分子体の製造方法では、前記結合を、前記イオン液体の融点以上の温度で行うので、前記結合前に前記イオン液体と他の材料とを均一に混合させやすくなり、均一性に優れた高分子体を得ることができるという利点がある。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、特定の状況下において硬度が低くなる高分子体を提供するとともに、該高分子体を備える研磨パッド、及び、該高分子体を作製する高分子体の製造方法を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の一実施形態について説明する。
【0025】
まず、本実施形態に係る高分子体について、ポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂発泡体である研磨パッド用高分子体を例にして説明する。
【0026】
本実施形態に係る高分子体は、前記研磨パッドにおける少なくとも研磨面を構成する部分として用いられる。
【0027】
本実施形態に係る高分子体は、ポリウレタン樹脂を含む高分子体である。
【0028】
前記ポリウレタン樹脂は、ヒドロキシ基を含む化合物(以下、「ヒドロキシ化合物」ともいう。)に由来する第1の構成単位と、イソシアネート基を含む化合物(以下、「イソシアネート化合物」ともいう。)に由来する第2の構成単位とを備える。
前記第1の構成単位の1つ以上は、ヒドロキシ基を含む有機カチオン及びヒドロキシ基を含む有機アニオンの少なくとも一方に由来する。
【0029】
前記ポリウレタン樹脂は、ヒドロキシ化合物たるポリオールと、イソシアネート化合物たるポリイソシアネートとを結合させた樹脂である。
【0030】
前記有機カチオンは、イソシアネート化合物のイソシアネート基にヒドロキシ基を反応させることでポリウレタン樹脂の分子中に取り込まれる。
前記有機カチオンは、モノオールであってもポリオールであってもよい。即ち、有機カチオンで形成される構成単位は、ポリウレタン樹脂の分子の末端に存在してもよく、また、末端よりも内部に存在してもよい。
【0031】
前記第1の構成単位の1つ以上は、ヒドロキシ基を含む有機カチオンに由来することが好ましい。
前記有機カチオン由来の構成単位は、イオン液体に由来することが好ましい。
前記イオン液体の融点は、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
なお、イオン液体の融点は、例えば、示差走査熱量計装置(DSC)を用いて求めることができる。より具体的には、予測される融点よりも30℃以上低い温度から30℃以上高い温度まで窒素ガスを流しながら5℃/minの昇温速度で試料(イオン液体)を昇温させた際に得られるDSC曲線から求めることができる。
前記イオン液体は、ヒドロキシ基を2つ以上有するカチオンを備えることが好ましい。前記イオン液体がヒドロキシ基を2つ以上有するカチオンを備えることにより、得られるポリマー内にカチオンによる電荷をより多く帯びさせることができる。その結果、液状の極性物質(水等)との親和性をより一層高めることができ、液状の極性物質と接触した状態と、液状の極性物質と接触していない状態との硬度差をより一層大きくすることができるという利点がある。
ヒドロキシ基を2つ以上有するカチオンを備えるイオン液体としては、例えば、下記式(1)〜(3)のイオン液体が挙げられる。
また、ヒドロキシ基を1つのみ有するカチオンを備えるイオン液体としては、例えば、下記式(4)、(5)のイオン液体が挙げられる。
イオン液体としては、分子内に多くの電荷を付与できるという観点から、ヒドロキシ基を2つ以上有するカチオンを備えるイオン液体が好ましい。
【0037】
前記有機アニオンは、イソシアネート化合物のイソシアネート基にヒドロキシ基を反応させることでポリウレタン樹脂の分子中に取り込まれる。
前記有機アニオンは、モノオールであってもポリオールであってもよい。即ち、有機アニオンで形成される構成単位は、ポリウレタン樹脂の分子の末端に存在してもよく、また、末端よりも内部に存在してもよい。
【0038】
前記有機アニオンは、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)(下記式(6)の化合物)等に由来する。なお、DMBAは、「COOH基」が「COO
−」と「H
+」に解離することができる。
【0040】
前記ポリオールは、ポリオールモノマーや、ポリオールプレポリマーが挙げられる。
【0041】
該ポリオールモノマーとしては、例えば、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、エチレングリコール、プロピレングリコール1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量400以下のポリエチレングリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の直鎖脂肪族グリコールが挙げられ、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の分岐脂肪族グリコールが挙げられ、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添加ビスフェノールA等の脂環族ジオールが挙げられ、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能ポリオールなどが挙げられる。
【0042】
前記ポリオールモノマーとしては、反応時の強度がより高くなりやすく、製造された発泡ポリウレタンを含む研磨パッドの剛性がより高くなりやすく、比較的安価であるという点で、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。
【0043】
前記ポリオールプレポリマーとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオールおよびポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。なお、ポリオールプレポリマーとしては、ヒドロキシ基を分子中に3以上有する多官能ポリオールプレポリマーも挙げられる。
【0044】
詳しくは、前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコ−ル(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレンオキサイド付加ポリプロピレンポリオールなどが挙げられる。
【0045】
前記ポリエステルポリオールとしては、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペートおよびポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。
【0046】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオ−ルとしては、ポリカプロラクトンポリオールなどのポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させて得られた反応混合物をさらに有機ジカルボン酸と反応させた反応生成物などが挙げられる。
【0047】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールなどのジオールと、ホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)又は環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物などが挙げられる。
【0048】
前記ポリオールプレポリマーとしては、弾性のある発泡ポリウレタンが得られやすいという点で、数平均分子量が800〜8000であるものが好ましく、具体的には、ポリテトラメチレングリコ−ル(PTMG)、エチレンオキサイド付加ポリプロピレンポリオールが好ましい。
【0049】
前記ポリイソシアネートとしては、ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマーが挙げられる。
【0050】
前記ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0051】
前記芳香族ジイソシアネートとしては、アニリンとホルムアルデヒドを縮合して得られるアミン混合物を不活性溶媒中でホスゲンと反応させることなどにより得られる粗ジフェニルメタンジイソシアネート(粗MDI)、該粗MDIを精製して得られるジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアMDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、及びこれらの変性物などを用いることができ、また、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を用いることができる。なお、これらの芳香族ジイソシアネートは、単独物で、又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0052】
ジフェニルメタンジイソシアネートの変性物としては、例えば、カルボジイミド変性物、ウレタン変性物、アロファネート変性物、ウレア変性物、ビューレット変性物、イソシアヌレート変性物、オキサゾリドン変性物等が挙げられる。斯かる変性物としては、具体的には、例えば、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(カルボジイミド変性MDI)が挙げられる。
【0053】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどが用いられる。
【0054】
前記脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロヘキシレン)=ジイソシアネートなどが用いられる。
【0055】
前記ポリイソシアネートプレポリマーとしては、ポリオールと、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートの少なくとも何れかのジイソシアネートが結合されてなるプレポリマー等が挙げられる。
【0056】
前記ポリイソシアネートとしては、その蒸気圧がより低く揮発しにくいことから、作業環境を制御しやすいという点で、ジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアMDI)、ポリメリックMDI、又はその変性物が好ましい。また、粘度がより低く、取り扱いが容易であるという点で、カルボジイミド変性MDI、ポリメリックMDI、又はこれらとMDIとの混合物が好ましい。
【0057】
前記ポリウレタン樹脂は、架橋構造を有していることが好ましい。
前記架橋構造は、イソシアネート基及びヒドロキシ基の少なくとも一方の官能基を有し、且つ、イソシアネート基とヒドロキシ基とを合計3つ以上有する多官能化合物に由来することが好ましい。
該多官能化合物としては、例えば、下記式(7)の化合物などが挙げられる。ここで、「下記式(7)」の「R」は、「(C
nH
2n)」(nは、正の整数である。例えば、n=1〜10)が挙げられる。
下記式(7)の化合物としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(R=C
6H
12)が挙げられる。
また、前記多官能化合物は、イオン液体たる上記式(1)の化合物であってもよい。
【0059】
前記ポリウレタン樹脂における前記架橋濃度は、0.06〜0.80mmol/gであることが好ましい。
なお、架橋濃度は、ポリウレタン樹脂1gにおける架橋点の量をモル単位で表したものである。
【0060】
本実施形態に係る高分子体は、上記の如く構成されてなるが、次に、本実施形態に係る高分子体の製造方法について説明する。
【0061】
本実施形態に係る高分子体の製造方法では、ポリウレタン樹脂を有する高分子体を得る。
また、本実施形態に係る高分子体の製造方法では、ヒドロキシ基を含む化合物と、イソシアネート基を含む化合物とを結合させることにより、前記高分子体を得る。
本実施形態に係る高分子体の製造方法では、具体的には、ヒドロキシ基を含む化合物と、イソシアネート基を含む化合物と、発泡剤とを混合して混合物を得、該混合物を重合発泡させることにより、高分子体を得る。
前記ヒドロキシ基を含む化合物は、ヒドロキシ基を含む有機カチオン及びヒドロキシ基を含む有機アニオンの少なくとも一方を有する。
【0062】
本実施形態に係る高分子体の製造方法では、好ましくは、前記ヒドロキシ基を含む化合物が、ヒドロキシ基を含む有機カチオンを有し、前記有機カチオンがイオン液体由来であり、前記結合を、前記イオン液体の融点以上の温度で行う。
【0063】
前記発泡剤としては、前記発泡ポリウレタンが成形される際に、気体を発生させて気泡となり、前記発泡ポリウレタン中に気泡を形成させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、加熱により分解してガスを発生させる有機化学発泡剤、沸点が−5〜70℃の低沸点炭化水素、ハロゲン化炭化水素、水、液化炭酸ガスなどを単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0064】
前記有機化学発泡剤としては、例えば、アゾ系化合物(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、アゾジカルボン酸バリウム等)、ニトロソ化合物(N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジニトロソ−N,N’−ジメチルテレフタルアミド等)、スルホニルヒドラジド化合物〔p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p−トルエンスルホニルヒドラジド等〕等が挙げられる。
前記低沸点炭化水素としては、例えば、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、及びこれらの混合物などが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、HFC(ハイドロフルオロカーボン類)等が挙げられる。
【0065】
また、前記発泡剤は、加熱膨張性微小球状体であってもよい。該加熱膨張性微小球状体の粒径は、例えば、20〜30μmである。該加熱膨張性微小球状体は、熱可塑性樹脂で形成された中空体と、中空体の中空部分に設けられた液状の炭化水素とを備える。前記加熱膨張性微小球状体としては、例えば、日本フィライト社製のExpancel(登録商標)や、松本油脂製薬社製の熱膨張性マイクロカプセルなどが挙げられる。
【0066】
発泡ポリウレタン樹脂を作製する際に発泡剤として水を用いる場合には、前記イオン性化合物によって水が混合物中で分散しやすくなるので、発泡ポリウレタン樹脂の気泡が微細なものとなりやすくなるという利点がある。言いかえれば、発泡ポリウレタン樹脂に粗大気泡が生じ難くなるという利点がある。その結果、被研磨物に傷が生じ難くなるという利点がある。
【0067】
本実施形態に係る研磨パッドは、本実施形態に係る高分子体を備える。
【0068】
なお、本発明に係る高分子体、研磨パッド、および、高分子体の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る高分子体、研磨パッド、および、高分子体の製造方法は、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明に係る高分子体、研磨パッド、および、高分子体の製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0069】
すなわち、本実施形態に係る高分子体は、前記混合物に発泡剤を含有させて形成されてなるが、撹拌により前記混合物に空気を混入させて形成されてもよい。
【0070】
また、本実施形態に係る高分子体は、ポリウレタン樹脂発泡体であるが、本発明に係る高分子体は、不織布にポリウレタン樹脂が含浸された高分子体であってもよい。
さらに、本発明に係る高分子体のポリウレタン樹脂は、前記混合物に微小中空体を含有させて形成されてもよい。
【0071】
また、本実施形態に係る高分子体は、研磨パッド用の高分子体であるが、本発明に係る高分子体は、他の用途に用いられてもよく、例えば、化粧品の材料、事務用スポンジ、洗浄用スポンジ、樹脂改質用のフィラー等として用いてもよい。
【実施例】
【0072】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0073】
(実施例1)
トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリプロピレングリコール(PPG)、及び、ジエチレングリコール(DEG)を反応させることで得られるウレタンプレポリマーと、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体とを混合することにより主剤を作製した。また、下記式(1)のイオン液体と、1,4−ベンゼンジメタノールと、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとを混合することにより硬化剤を作製した。そして、前記主剤、前記硬化剤、及び、発泡剤としての水を混合し、70℃で反応させることにより、高分子体を得た。
なお、主剤、硬化剤、及び、発泡剤におけるイオン液体の濃度は5質量%とした。
【0074】
【化8】
【0075】
(比較例1)
トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、及び、ジエチレングリコール(DEG)を反応させることで得られるウレタンプレポリマーと、メチレンビス−o−クロロアニリン(MOCA)と発泡剤としての水とを混合し、70℃で反応させることにより、高分子体を得た。
【0076】
(吸水試験)
実施例1及び比較例1の高分子体を吸水試験に供した。
すなわち、まず、高分子体(縦:50mm、横:50mm、高さ:1mm)の質量(G1)を測定した。そして、40℃の温水に高分子体を24時間浸漬させ、浸漬後の高分子体の質量(G2)を測定した。そして、下記式によって吸水率Pを算出した。
P = (G2−G1)/G1 ×100(%)
【0077】
実施例1の高分子体の吸水率は20%であった。一方で、比較例1の高分子体の吸水率は5%であった。
従って、実施例1の高分子体は、比較例1の高分子体に比して吸水率が高く、水を吸収しやすい構造となっていることがわかる。
【0078】
(実施例2)
トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリプロピレングリコール(PPG)、及び、ジエチレングリコール(DEG)を反応させることで得られるウレタンプレポリマーと、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体とを混合することにより主剤を作製した。また、下記式(3)のイオン液体と、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとを混合することにより硬化剤を作製した。そして、前記主剤、前記硬化剤、及び、発泡剤としての水を混合し、70℃下で反応させることにより、高分子体を得た。
なお、主剤、硬化剤、及び、発泡剤におけるイオン液体の濃度は10質量%とした。
【0079】
【化9】
【0080】
(比較例2)
前記イオン液体の代わりに、トリエタノールアミン(TEOA)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして高分子体を得た。
【0081】
(実施例3)
前記イオン液体の代わりに、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして高分子体を得た。
【0082】
(密度)
密度(見掛け密度)は、高分子体の直方体状の試験片の縦、横、厚さを測定し、更に、この試験片の質量を測定することにより求めた。
【0083】
(硬度(JIS−A))
硬度(JIS−A)は、JIS K7312−1996のタイプAによる硬さ試験に準拠して23℃下で測定した。
なお、湿潤時の硬度は、40℃の温水に高分子体を24時間浸漬した高分子体の硬度を意味する。
【0084】
(硬度(Asker−C))
硬度(Asker−C)は、SRIR0101に準拠して23℃下で測定した。
によって測定した。
なお、湿潤時の硬度は、40℃の温水に高分子体を24時間浸漬した高分子体の硬度を意味する。
【0085】
(スライス試験)
円筒状の高分子体(直径:90mm、厚み:90mm)を刃物で厚み1〜2mmにスライスした。ここで、高分子体を固定し、該高分子体に向けて刃物を水平方向に移動させることにより該高分子体をスライスした。前記刃物としては、超硬刃物と呼ばれる、炭化タングステンとコバルトとの混合物を焼き固めた刃物を用いた。
そして、以下の基準で評価した。
○:スライス可能
×:スライス不可
【0086】
(気泡の大きさ)
気泡の大きさを確認するため、走査型電子顕微鏡(SEM)で高分子体の断面を撮影した。
【0087】
SEM写真の結果を
図1〜3に示す。また、それ以外の結果を下記表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示すように、実施例2、3の高分子体は、比較例2の高分子体に比べて、水との接触によって硬度が大幅に低下した。よって、本発明によれば、特定の状況下において硬度が低くなる高分子体となっていることが分かる。
【0090】
また、表1に示すように、実施例2の高分子体は、実施例3の高分子体に比べて、水との接触によって硬度が大幅に低下した。よって、実施例2の高分子体は、実施例3の高分子体に比べて、特定の状況下において硬度が低くなる高分子体となっていることが分かる。
この結果は、以下の理由によるものと推測される。実施例3の高分子体は、構成単位にカルボン酸を含む構造となっている。カルボン酸は、pKaが4程度であり、pH7の水と接触した場合には、カルボキシ基がアニオンになるのは0.01%程度であると考えられる。一方で、イオン液体は、水と接触した場合には、大部分がカチオンで存在し得る。その結果、実施例2の高分子体は、実施例3の高分子体に比べて、水との接触によって硬度が大幅に低下したと考えられる。
【0091】
図1〜3に示すように、実施例2の高分子体は、比較例2及び実施例3の高分子体に比べて、気泡が小さかった。