【解決手段】エアシリンダ3とサーボバルブ2と位置検出センサ4とコントローラ5とを有するサーボシリンダシステム1において、制御対象9を所定のホームポジションHPから移動させるようにサーボバルブ2に指令電圧を出力し、制御対象9がホームポジションHPから所定量離れたティーチングポジションX1,X2を通過するときに駆動開始指令電圧Y1,Y2を検出して記憶しておき、制御対象9を現在の位置から目標位置へ移動させる動作指示を入力した場合に、動作指示を入力したあと最初に偏差に基づいて算出した第1指令電圧に駆動開始指令電圧Y1,Y2を加算して第2指令電圧を算出し、第2指令電圧をサーボバルブ2に出力する。
圧力室の圧力に応じて制御対象を直線方向に進退させるエアシリンダと、前記圧力室に圧縮エアを給排気するサーボバルブと、前記制御対象の位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段が検出する検出位置を入力して目標位置との偏差を求め、前記偏差に基づいて前記サーボバルブに指令電圧を出力するコントローラと、を有するサーボシリンダシステムにおいて、
前記コントローラは、
前記制御対象を所定のホームポジションから移動させるように前記サーボバルブに指令電圧を出力し、前記制御対象が前記ホームポジションから所定量離れたティーチングポジションを通過するときの指令電圧を検出して、駆動開始指令電圧として記憶するティーチング手段と、
前記制御対象を現在の位置から目標位置へ移動させる動作指示を入力した場合に、前記動作指示を入力したあと最初に前記偏差に基づいて算出した第1指令電圧に前記駆動開始指令電圧を加算して第2指令電圧を算出し、前記第2指令電圧を前記サーボバルブに出力する始動時電圧調整手段を有すること、
を特徴とするサーボシリンダシステム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係るサーボシリンダシステムの実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、まずサーボシリンダシステム1の概略構成を説明する。次に、ティーチング動作について説明する。それから、通常動作について説明する。その後、ティーチング動作開始時に制御対象9を下限位置へ移動させてからホームポジションHPへ移動させる理由を説明する。そして、ティーチング規定移動量Z及び第1及び第2ティーチングポジションX1,X2(ティーチングポジションの一例)を決定する方法を説明する。そして最後に本実施形態のサーボシリンダシステム1の作用効果を説明する。
【0020】
<サーボシリンダシステムの概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係るサーボシリンダシステム1の回路図である。サーボシリンダシステム1は、サーボバルブ2と、エアシリンダ3と、位置検出センサ4と、コントローラ5を備え、制御対象9の位置を制御する。サーボシリンダシステム1は、コントローラ5が記憶するティーチングプログラム5a(後述の
図2参照)と通常動作プログラム5b(特に、後述の
図9のS26〜S29,S31に示す始動時電圧調整手段)に特徴がある。
【0021】
図1に示すようにエアシリンダ3は、制御対象9を上下方向に進退させるように配設されている。エアシリンダ3は、シリンダ本体31にピストン33が摺動可能に装填されている。シリンダ本体31の圧力室32は、ピストン33により、第1圧力室32aと第2圧力室32bに気密に区画されている。シリンダ本体31は、第1圧力室32aに連通するように第1操作ポート31aが形成され、第2圧力室32bに連通するように第2操作ポート31bが開設されている。エアシリンダ3は、第1及び第2操作ポート31a,31bが第1及び第2給排通路6b,6cを介してサーボバルブ2に接続され、第1及び第2圧力室32a,32bの内圧が制御される。ピストン33には、出力ロッド34が連結されている。制御対象9は、出力ロッド34の先端部に結合され、ピストン33と一体的に進退する。
【0022】
このようなエアシリンダ3は、第1圧力室32aの内圧による下向きの力に制御対象9の重量を加えた力と第2圧力室32bの内圧による上向きの力との差に応じてピストン33がシリンダ本体31内で往復直線運動し、制御対象9を下降(進出)させたり、上昇(後退)させたりする。位置検出センサ4は、シリンダ本体31の側面に取り付けられ、ピストン33の位置から制御対象9の位置を検出する。
【0023】
サーボバルブ2は、周知の方向切換弁である。サーボバルブ2は、コントローラ5から出力される指令電圧が電磁ソレノイド23に印加されると、スプール22が指令電圧に比例してハウジング21内で移動し、第1ポート21aと第2ポート21bと第3ポート21cと排気流路21dとの連通状態を切り換えるように、構成されている。
【0024】
第1〜第3ポート21a〜21cはハウジング21に開設されている。第1ポート21aは、入力通路6aを介して、圧縮エア供給源に接続されている。第2ポート21bは、第1給排通路6bを介してエアシリンダ3の第1操作ポート31aに接続されている。第3ポート21cは、第2給排通路6cを介してエアシリンダ3の第2操作ポート31bに接続されている。排気流路21dは、図示しない排気ポートに接続されている。スプール22は、電磁ソレノイド23に指令電圧が印加されないときには、第1ポート21aを第2ポート21bと第3ポート21cの何れにも連通させない中立位置に配置される。この状態では、サーボバルブ2は、第1及び第2圧力室32a,32bに圧縮エアを給排気しない。この場合、エアシリンダ3は、出力ロッド34の下端部に制御対象9が結合するため、制御対象9の重量によりピストン33が下降してシリンダ本体31の下端面に当接する。
【0025】
一方、スプール22は、電磁ソレノイド23に指令電圧が印加されると、その指令電圧に応じて、第1位置又は第2位置へ向かって移動する。第1位置では、第2ポート21bが第1ポート21aに連通し、第3ポート21cが排気流路21dに連通する。この場合、エアシリンダ3は、第1圧力室32aに圧縮エアが供給され、第2圧力室32bから圧縮エアが排気されるため、制御対象9を下降させる。一方、第2位置では、第3ポート21cが第1ポート21aに連通し、第2ポート21bが排気流路21dに連通する。この場合、エアシリンダ3は、第2圧力室32bに圧縮エアが供給され、第1圧力室32aから圧縮エアが排気されるため、制御対象9を上昇させる。尚、サーボバルブ2は、スプール22が指令電圧に比例して移動することにより開度調整され、圧縮エアの給排気量を制御する。
【0026】
位置検出センサ28は、スプール22の位置を検出する。比較部26と調整部27は、位置検出センサ28が検出するスプール22の位置をコントローラ5の指令に一致させるように、コントローラ5からサーボバルブ2に出力される指令電圧を調整する。
【0027】
コントローラ5は、周知のマイクロコンピュータである。コントローラ5は、位置検出ライン7を介して位置検出センサ4に電気的に接続され、位置検出センサ4が検出した制御対象の位置(検出位置)を入力する。また、コントローラ5は、指令電圧出力ライン8を介してサーボバルブ2に接続され、サーボバルブ2の動作を制御する指令電圧をサーボバルブ2に出力する。コントローラ5は、ティーチングプログラム5aと通常動作プログラム5bとをメモリに格納している。ティーチングプログラム5aと通常動作プログラム5bの詳細は、後述する。
【0028】
ところで、エアシリンダ3は、物理的には、ピストン33がシリンダ本体31の下端面に当接するまで制御対象9を降下(進出)させることができる(このときの制御対象9の位置を「下端位置」という。)。また、エアシリンダ3は、物理的には、ピストン33がシリンダ本体31の上端面に当接するまで制御対象9を上昇(後退)させることができる(このときの制御対象9の位置を「上端位置」という。)。この物理的な制御対象9の移動範囲を「物理的移動範囲」という。しかし、サーボシリンダシステム1は、第1及び第2圧力室32a,32bの内圧を調整することによりエアシリンダ3を駆動させ、制御対象9の位置を制御する。そのため、サーボシリンダシステム1は、物理的移動範囲より狭い範囲でしか制御対象9の位置を制御できない。この制御範囲を「制御可能範囲」という。そこで、以下の説明において、圧力室32の圧力でピストン33をシリンダ本体31の下端面側へ最大限移動させたときの制御対象9の位置(制御可能範囲の中で最も低い位置、制御対象9を最も進出させるように制御できる位置)を「下限位置(最大進出位置の一例)」といい、圧力室32の圧力でピストン33をシリンダ本体31の上端側へ最大限移動させたときの制御対象9の位置(制御可能範囲の中で最も高い位置、制御対象9を最も後退させるように制御できる位置)を「上限位置」という。
【0029】
<ティーチング動作について>
次に、
図2及び
図3に基づいてティーチング動作について説明する。
図2は、ティーチングプログラム5aのフローチャートである。
図3は、ティーチング動作を説明するグラフであって、横軸に時間を示し、左側縦軸に位置検出センサ4が検出する制御対象9の位置を示し、右側縦軸にコントローラ5がサーボバルブ2に出力する指令電圧を示す。
【0030】
ティーチング動作は、コントローラ5が
図2に示すティーチングプログラム5aを実行することにより、行われる。ティーチング動作では、サーボシリンダシステム1を実際に稼動させて、エアシリンダ3を始動させるために必要な駆動開始指令電圧を検出し、コントローラ5に記憶する。ティーチング動作は、電源投入直後、必ず1回行う。電源を切らなければ、再度実行する必要はない。
【0031】
コントローラ5は、ティーチング動作を開始すると、先ず
図2のステップ1(以下「S1」と略記する。)において、制御対象9を下限位置へ移動させる。具体的には、
図3に示すように、コントローラ5は、サーボバルブ2のスプール22を第1位置の方向へ移動させるように指令電圧を出力する。エアシリンダ3は、第1圧力室32aを加圧され、第2圧力室32bを減圧され、制御対象9を下降させ始める。コントローラ5は、制御対象9が下限位置に近づくと、エアシリンダ3が制御対象9の下降速度を弛めて制御対象9を下限位置で精度良く停止させるように、指令電圧をサーボバルブ2に出力する。
【0032】
そして、
図2のS2において、コントローラ5は、制御対象9をホームポジションHPへ移動させる。ここで、ホームポジションHPとは、駆動開始指令電圧を検出する場合に、エアシリンダ3を始動させる基準になる位置をいう。本実施形態では、上限位置をホームポジションHPとする。本処理を具体的に説明すると、
図3に示すように、コントローラ5は、サーボバルブ2のスプール22を第2位置の方向へ移動させる指令電圧を出力する。これにより、エアシリンダ3は、第2圧力室32bの内圧による上向きの力が、第1圧力室32aの内圧による下向きの力に制御対象9の重量を加えた力より大きくなり、ピストン33が制御対象9と一体的に上昇する。
【0033】
図2のS3に示すように、コントローラ5は、制御対象9がホームポジションHPに到達すると、1秒間待つ。具体的には、コントローラ5は、
図3のS3に示すように、位置検出センサ4の検出位置を入力し、制御対象9がホームポジションHP(上限位置)に到達したことを確認すると、制御対象9をホームポジションHPに停止させるように指令電圧を出力する。これにより、指令電圧と制御対象9の位置が安定する。尚、この待機時間は任意に設定できる。
【0034】
図2のS4において、コントローラ5は、制御対象9をティーチング規定移動量Zだけ下降させ始める。ここで、ティーチング規定移動量Zとは、駆動開始指令電圧を検出するために、制御対象9をホームポジションHPから下降(進出)及び上昇(後退)させる距離をいう。また、制御対象9が、ホームポジションHPからティーチング規定移動量Zだけ移動した位置を「ティーチング規定移動位置」という。ティーチング規定移動量Zは、後述する方法により、決定される。本実施形態では、ティーチング規定移動量Zを4mmとする。具体的には、
図3に示すように、コントローラ5は、サーボバルブ2のスプール22を第1位置側へ移動させる指令電圧を出力する。エアシリンダ3は、第1圧力室32aの内圧による下向きの力に制御対象9の重量を加えた力が、第2圧力室32bの内圧による上向きの力より大きくなると、ピストン33が制御対象9と一体的に下降し始める。
【0035】
コントローラ5は、S5において、制御対象9が第1ティーチングポジションX1を通過したか否かを判断する。ここで、第1ティーチングポジションX1とは、エアシリンダ3が制御対象9を下降させ始めるときにコントローラ5が出力する指令電圧を検出する位置をいう。第1ティーチングポジションX1は、ホームポジションHPと第1ティーチング規定移動位置との間に設定される。第1ティーチングポジションX1の決定方法は、後述する。本実施形態では、ホームポジションHPから0.7mm下降した位置を第1ティーチングポジションX1とする。
【0036】
図2及び
図3に示すように、コントローラ5は、第1ティーチングポジションX1を通過するまでは(S5:NO)、指令電圧を検出せずに、制御対象9を下降させための指令電圧をサーボバルブ2に出力する。一方、コントローラ5は、制御対象9が第1ティーチングポジションX1を通過したら(S5:YES)、S6において、サーボバルブ2に現在出力している指令電圧を、下降用駆動開始指令電圧Y1(駆動開始指令電圧の一例)として保存する。このように、コントローラ5は、当該サーボシリンダシステム1を構成するエアシリンダ3、サーボバルブ2、位置検出センサ4を稼動させて、エアシリンダ3が制御対象9を下降させ始めるときの下降用駆動開始指令電圧Y1を検出して記憶するので、システム構成部品の現時点の特性や状態を反映した下降用駆動開始指令電圧Y1を認識できる。
【0037】
その後、コントローラ5は、
図2のS7において、制御対象9がティーチング規定移動位置に到達したか否かを判断する。
図2及び
図3に示すように、コントローラ5は、制御対象9がティーチング規定移動位置に到達するまでは(S7:NO)、エアシリンダ3が制御対象9を下降させるようにサーボバルブ2に指令電圧を出力する。一方、コントローラ5は、制御対象9がティーチング規定移動位置に到達したと判断すると(S7:YES)、4秒間待機する。すなわち、コントローラ5は、制御対象9をティーチング規定移動位置で4秒間停止させるようにサーボバルブ2に指令電圧を出力する。これにより、指令電圧と制御対象9の位置が安定する。この待機時間は、任意に設定できる。
【0038】
それから、
図2のS9において、コントローラ5は、制御対象9をホームポジションHPへ向かって上昇(後退)させ始める。具体的には、
図3に示すように、コントローラ5は、サーボバルブ2のスプール22を第2位置側へ移動させるように指令電圧を出力する。エアシリンダ3は、第2圧力室32bの内圧による上向きの力が、第1圧力室32aの内圧による下向きの力に制御対象9の重量を加えた力より大きくなると、ピストン33が制御対象9と一体的に上昇し始める。
【0039】
そして、
図2のS10において、コントローラ5は、制御対象9が第2ティーチングポジションX2を通過したか否かを判断する。ここで、第2ティーチングポジションX2とは、エアシリンダ3が制御対象9を上昇させ始めるときにコントローラ5が出力する指令電圧を検出する位置をいう。第2ティーチングポジションX2は、ティーチング規定移動位置とティーチングポジションHPとの間に設定される。第2ティーチングポジションX2は、後述する決定方法により決定される。本実施形態では、第2ティーチングポジションX2は、ホームポジションHPから3.3mm下降した位置(ティーチング規定移動位置から0.7mm上昇した位置)とする。
【0040】
図2及び
図3に示すように、コントローラ5は、制御対象9が第2ティーチングポジションX2を通過するまでは(S10:NO)、サーボバルブ2に出力する指令電圧を検出せずに、エアシリンダ3に制御対象9を上昇させるための指令電圧をサーボバルブ2に出力する。一方、コントローラ5は、制御対象9が第2ティーチングポジションX2を通過したら(S10:YES)、S11において、サーボバルブ2に現在出力している指令電圧を検出し、上昇用駆動開始指令電圧Y2(駆動開始指令電圧の一例)として保存する。これにより、コントローラ5は、エアシリンダ3やサーボバルブ2、位置検出センサ4を実際に使用して上昇用駆動開始指令電圧Y2を検出して記憶するので、システム構成備品の現時点の特性や状態を反映した上昇用駆動開始指令電圧Y2を認識できる。
【0041】
その後、
図2に示すように、S12において、コントローラ5は、制御対象9がホームポジションHPに到達したか否かを判断する。制御対象9がホームポジションHPに到達していない場合には(S12:NO)、コントローラ5は、
図3に示すように、エアシリンダ3が制御対象9を上昇させるようにサーボバルブ2に指令電圧を出力し続ける。一方、
図2に示すように、制御対象9がホームポジションHPに到達したと判断した場合には(S12:YES)、処理を終了する。具体的には、
図3に示すように、コントローラ5は、位置検出センサ4がピストン33を介して制御対象9の上限位置を検出すると、上限位置で停止するようにサーボバルブ2の指令電圧を制御する。この場合、エアシリンダ3は、制御対象9をホームポジションHP(上限位置)に配置した状態で停止する。これにより、後述する通常動作を行う際に、エアシリンダ3やサーボバルブ2が動き出しやすい。
【0042】
<通常動作について>
次に、通常動作を説明する。コントローラ5は、通常動作プログラム5bを実行することにより、制御対象9を現在の位置から目標位置へ移動させる。
【0043】
すなわち、
図9のS21に示すように、コントローラ5は、例えば作業者がスタートスイッチを押下すると、動作指示を受け取る。そして、コントローラ5は、S22において、制御対象9の現在位置を確認する。具体的には、コントローラ5は、位置検出センサ4がピストン33を介して検出する制御対象9の検出位置を入力する。そして、S23において、コントローラ5は、制御対象9の現在位置と目標位置との偏差(現在位置から目標位置までの距離)を算出する。そして、コントローラ5は、S24において、偏差が0より大きいか否かを判断する。
【0044】
コントローラ5は、偏差が0より大きい場合には(S24:YES)、S25において、偏差に応じた指令電圧を計算する。この指令電圧は、位置検出センサ4の検出位置のみに基づいて算出されており、駆動開始指令電圧が反映されていない。
【0045】
そして、S26において、コントローラ5は、動き始めか否かを判断する。具体的には、コントローラ5は、動作指示を受け取った後(S1参照)の最初(1回目)の指令電圧制御か否かにより判断する。コントローラ5は、今回の制御が動き始めであると判断した場合には(S26:YES)、S27において、制御対象9を上昇させるのか下降させるのかを判断する。制御対象9が上昇する場合と下降する場合とで、エアシリンダ3が実際に動き始めるときに必要な駆動開始指令電圧(上昇用駆動開始指令電圧Y2、下降用駆動開始指令電圧Y1)が異なるため、制御対象9が移動する方向を確認する必要があるからである。
【0046】
コントローラ5は、制御対象9を上昇させる場合には(S27:YES)、S28においてエアシリンダ3を上昇させる動作指示を受け取ったあと最初に(1回目に)算出した第1指令電圧に、ティーチング動作により記憶した上昇用駆動開始指令電圧Y2を加算して第2指令電圧を算出する。そして、S29において、コントローラ5は、第2指令電圧をサーボバルブ2に出力する。これにより、サーボバルブ2には、エアシリンダ3を確実に上昇させ始める上昇用駆動開始指令電圧Y2以上で、第1指令電圧より大きい第2指令電圧が動作指示を入力した直後に印加される。そのため、エアシリンダ3は、構成部品の特性が他の製品と異なったり、構成部品が劣化したりして、第1指令電圧がサーボバルブ2に印加されるだけでは上昇し始めなくても、第2指令電圧がサーボバルブ2に印加されると直ぐに上昇し始める。そのため、第2指令電圧が出力されてからエアシリンダ3が制御対象9を上昇させ始めるまでの応答時間が極力短くなる。その後、S22に戻る。
【0047】
一方、コントローラ5は、制御対象9を下降させる場合には(S27:NO)、S31においてエアシリンダ3を下降させるために動作指示を受け取ったあと最初に(1回目に)算出した第1指令電圧に、ティーチング動作により記憶した下降用駆動開始指令電圧Y1を加算して、第2指令電圧を算出する。その後、S29において、コントローラ5は、第2指令電圧をサーボバルブ2に出力する。これにより、サーボバルブ2には、エアシリンダ3を確実に下降させ始める下降用駆動開始指令電圧Y1以上で、第1指令電圧より大きい第2指令電圧が印加される。そのため、エアシリンダ3は、構成部品の特性が他の製品と異なったり、構成部品が劣化したりして、第1指令電圧がサーボバルブ2に印加されただけでは下降し始めなくても、第2指令電圧がサーボバルブ2に印加されると直ぐに下降し始める。そのため、第2指令電圧が出力されてからエアシリンダ3が制御対象9を下降させ始めるまでの応答時間が極力短くなる。その後、S22に戻る。
【0048】
コントローラ5は、S22に戻り、制御対象9を目標位置へ向かって移動させる。具体的には、コントローラ5は、S22〜S24において、制御対象9の現在位置と目標位置との偏差を求め、偏差が0より大きいか否かを判断する。制御対象9が目標位置に到達しない場合には、偏差が0より大きいので(S24:YES)、コントローラ5は、S25において、検出位置と目標位置との偏差応じた指令電圧を算出する。この時点では、エアシリンダ3は動き始めた後であり、動き始めでない(動作指示を入力したあと最初の指令電圧制御ではない)ので(S26:NO)、S30において、S25で算出した指令電圧をそのまま第2指令電圧としてサーボバルブ2に出力する。その後、S22に戻る。この処理を繰り返すことにより、制御対象9が目標位置へ向かって移動する。つまり、コントローラ5は、エアシリンダ3が動き始めた後は、周知技術と同様にして、位置検出センサ4が検出する検出位置に基づいて制御対象9の位置をフィードバック制御する。コントローラ5は、制御対象9が目標位置に到達し、制御対象9の現在位置と目標位置との偏差が0になると(S24:NO)、処理を終了する。
【0049】
<ティーチング動作時に制御対象9を下限位置へ移動させてからホームポジションHPへ移動させる理由について>
図2のS1,S2に示すように、ティーチングプログラム5aは、制御対象9を一旦下限位置へ移動させてから、ホームポジションHP(上限位置)へ移動させる。これは、ティーチング動作時に、エアシリンダ3が制御対象9をホームポジションHPに短時間で安定して移動させるようにするためである。これについて
図4に基づいて具体的に説明する。
図4は、制御対象の移動開始位置の差によるエアシリンダの動き方の違いを説明する図である。
【0050】
図4(a)に示すように、エアシリンダ3は、図中P1に示すように上端位置からホームポジションHPへ制御対象9を移動させる場合、図中P2に示すようにホームポジションHPを超えて制御対象9を下降させる。その後、エアシリンダ3は、図中P3に示すようにホームポジションHPへ向かって制御対象9を上昇させてから、制御対象9をホームポジションHPに安定させる。
【0051】
また例えば、
図4(b)に示すように、エアシリンダ3は、図中P11に示すようにホームポジションHPと下限位置との間の位置からホームポジションHPへ制御対象9を移動させる場合、図中P12に示すように、ホームポジションHPを超えて制御対象9を上昇させる。その後、エアシリンダ3は、図中P13に示すように、ホームポジションHPへ向かって制御対象9を下降させてから、制御対象9をホームポジションHPに安定させる。
【0052】
更に例えば、
図4(c)に示すように、エアシリンダ3は、図中P21に示すように、下限位置から制御対象9を移動させる場合、安定した制御を行うのに十分な距離があるため、オーバーシュートを低減し、制御対象9をホームポジションHPに早く安定させることができる。
【0053】
よって、ティーチング動作時には、制御対象を下限位置へ移動させてからホームポジションHPへ移動させると、制御対象9をホームポジションHPに到達させるときのオーバーシュートを低減し、ホームポジションHPに早く到達させて安定させることができる。
【0054】
<ティーチング規定移動量及びティーチングポジションの決定方法について>
次に、ティーチング規定移動量及びティーチングポジションの決定方法について、
図5〜
図8を参照して説明する。まず、これらを決定する必要性について説明する。
【0055】
発明者らは、1個のサーボシリンダシステム1について、ティーチング動作を開始するときの制御対象9の位置を上端位置とした第1事例と、ティーチング動作を開始するときの制御対象9の位置を、上端位置と下端位置との中間位置とした第2事例と、ティーチング動作を開始するときの制御対象9の位置を下端位置とした第3事例について、ティーチングプログラム5aを実行し、コントローラ5が出力する指令電圧の変動を調べる実験を行った。その結果を、
図5に示す。
図5は、ティーチング動作開始時の制御対象の位置の差による上昇用及び下降用の駆動開始指令電圧の違いを説明する図であって、横軸に時間を示し、左側縦軸に制御対象9の位置を示し、右側縦軸にコントローラ5がサーボバルブ2に出力する指令電圧を示す。
【0056】
図5に示すように、第1〜第3事例は、ティーチング動作を開始するときの制御対象9の位置によって、制御対象9の位置変動や指令電圧の変動に差が生じる。
【0057】
図6は、
図5のA部を拡大した図である。図中太線に示すように、第1事例では、制御対象9がホームポジションHPから第1ティーチングポジションX1まで下降したときの指令電圧Y11が、5.225Vであった。図中太い点線に示すように、第2事例では、制御対象9がホームポジションHPから第1ティーチングポジションX1まで下降したときの指令電圧Y12が、5.177Vであった。図中太い二点鎖線に示すように、第3事例では、制御対象9がホームポジションHPから第1ティーチングポジションX1まで下降したときの指令電圧Y13が、5.110Vであった。よって、ティーチング動作を開始するときの制御対象9の位置によって、下降用駆動開始指令電圧Y11〜Y13には、0.115Vの差が生じる。
【0058】
また図中細い実線に示すように、第1事例では、制御対象9がティーチング規定移動位置から第2ティーチングポジションX2まで上昇したときの指令電圧Y21が、4.140Vであった。図中細い点線に示すように、第2事例では、制御対象9がティーチング規定移動位置から第2ティーチングポジションX2まで上昇したときの指令電圧Y22が、4.125Vであった。図中細い二点鎖線に示すように、第3事例では、制御対象9がティーチング規定移動位置から第2ティーチングポジションX2まで上昇したときの指令電圧Y23が、4.135Vであった。よって、ティーチング動作を開始するときの制御対象9の位置によって、下降用駆動開始指令電圧Y21〜Y23には、0.015Vの差が生じる。
【0059】
このように、ティーチング動作は、ティーチング動作開始時における制御対象9の位置の差によって、下降用駆動開始指令電圧Y1の差と上昇用駆動開始指令電圧Y2の差を生じる。この下降用駆動開始指令電圧Y1の差と上昇用駆動開始指令電圧Y2の差が大きいと、通常動作時に、エアシリンダ3が始動するときの応答性を改善できない恐れがある。具体的には、通常動作開始時に制御対象9が上端位置にある場合、第1事例によって記憶した下降用駆動開始指令電圧Y21(5.225V)をサーボバルブ2に出力しなければ、エアシリンダ3が下降し始めない。しかし、ティーチング動作を第3事例によって行った場合、通常動作時開始時に制御対象9を上端位置に配置するエアシリンダ3は、コントローラ5が下降指令開始電圧Y23(5.110V)をサーボバルブ2に出力しても、指令電圧が不足し、エアシリンダ3が応答性良く下降し始めない。よって、制御対象9の位置によって生じる下降用駆動開始指令電圧Y1の差と上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は、極力小さくすることが望ましい。ティーチング動作開始時の制御対象9の位置によって、通常動作時のエアシリンダ3が始動するときの応答性がばらつくのを低減するためである。
【0060】
そこで、発明者らは、ティーチング動作時に、制御対象9の位置によって生じる下降用駆動開始指令電圧Y1の差と上昇用駆動開始指令電圧Y2の差を小さくするように、ティーチング規定移動量Zと第1及び第2ティーチングポジションX1,X2を決定することにした。この決定方法を
図7及び
図8に基づいて説明する。
【0061】
まず、ティーチング規定移動量を決定する方法を説明する。発明者らは、ティーチング規定移動量Zと下降用駆動開始指令電圧Y1と上昇用駆動開始指令電圧Y2との関係を調べるティーチング規定移動量試験を行った。ティーチング規定移動量試験では、ティーチング動作を開始するときの制御対象9の位置が異なる点と、ティーチング規定移動量Zが異なる点を除き、同じティーチング動作で下降用駆動開始指令電圧Y1と上昇用駆動開始指令電圧Y2を測定した。
【0062】
この試験では、ホームポジションHPを上限位置とする点、第1ティーチングポジションX1をホームポジションHPから0.7mm下降した位置とする点、第2ティーチングポジションX2をホームポジションHPから3.3mm下降した位置(ティーチング規定移動位置から0.7mm上昇した位置)とする点が、共通する。一方、ティーチング動作開始時の制御対象9の位置は、上端位置と、上端位置と下端位置との間の中間位置と、下端位置とする点で相違する。また、ティーチング規定移動量Zは、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mmとする点で、相違する。
【0063】
試験では、ティーチング規定移動量Z毎に、ティーチング動作開始時の制御対象9の位置を上端位置にした場合の下降用駆動開始指令電圧Y1及び上昇用駆動開始指令電圧Y2と、ティーチング動作開始時の制御対象9の位置を中間位置にした場合の下降用駆動開始指令電圧Y1及び上昇用駆動開始指令電圧Y2と、ティーチング動作開始時の制御対象9の位置を下端位置にした場合の下降用駆動開始指令電圧Y1及び上昇用駆動開始指令電圧Y2を測定した。そして、ティーチング規定移動量Z毎に、制御対象9の位置による下降用駆動開始指令電圧Y1の差と上昇用駆動開始指令電圧Y2の差を算出した。その結果を、
図7に示す。
【0064】
図7に示すように、ティーチング規定移動量が1mmの場合、下降用駆動開始指令電圧Y1の差は0.173V、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は0.136Vであった。ティーチング規定移動量が2mmの場合、下降用駆動開始指令電圧Y1の差は0.096V、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は0.037Vであった。ティーチング規定移動量が3mmの場合、下降用駆動開始指令電圧Y1の差は0.047V、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は0.014Vであった。ティーチング規定移動量が4mmの場合、下降用駆動開始指令電圧Y1の差は0.033V、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は0.006Vであった。ティーチング規定移動量が5mmの場合、下降用駆動開始指令電圧Y1の差は0.036V、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は0.005Vであった。ティーチング規定移動量が6mmの場合、下降用駆動開始指令電圧Y1の差は0.034V、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は0.007Vであった。
【0065】
よって、ティーチング規定移動量Zが1mm以上4mm未満の範囲では、下降用駆動開始指令電圧Y1の差(実線)と上昇用駆動開始指令電圧Y2の差(点線)のどちらも、減少傾向を示した。一方、ティーチング規定移動量Zが4mm以上になると、下降用駆動開始指令電圧Y1の差(実線)と上昇用駆動開始指令電圧Y2の差(点線)のどちらも安定した。よって、ティーチング規定移動量Zを4mm以上にすることにより、ティーチング動作開始時における制御対象9の位置によって生じる下降用駆動開始指令電圧Y1の差と上昇用駆動開始指令電圧Y2の差を共に小さくできる。
【0066】
次に、第1及び第2ティーチングポジションX1,X2を決定する方法を説明する。発明者らは、第1及び第2ティーチングポジションX1,X2と指令電圧との関係を調べるティーチングポジション試験を行った。ティーチングポジション試験では、制御対象9をホームポジションHPへ移動させる前の位置が異なる点と、ティーチングポジションが異なる点を除き、同じティーチング動作で下降用駆動開始指令電圧Y1と上昇用駆動開始指令電圧Y2を検出した。
【0067】
この試験では、ホームポジションHPを上限位置とする点と、ティーチング規定移動量Zを4mmとする点が、共通する。一方、第1ティーチングポジションX1をホームポジションHPから0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm下降した位置にする点、第2ティーチングポジションX2をティーチング規定移動位置から0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm上昇した位置(ホームポジションHPから3.6mm、3.5mm、3.4mm、3.3mm、3.2mm、3.1mm下降した位置)にする点が相違する。
【0068】
試験では、第1及び第2ティーチングポジションX1,X2毎に、ティーチング動作開始時の制御対象9の位置を上端位置にした場合の下降用駆動開始指令電圧Y1及び上昇用駆動開始指令電圧Y2と、ティーチング動作開始時の制御対象9の位置を中間位置にした場合の下降用駆動開始指令電圧Y1及び上昇用駆動開始指令電圧Y2と、ティーチング動作開始時の制御対象9の位置を下端位置にした場合の下降用駆動開始指令電圧Y1及び上昇用駆動開始指令電圧Y2を測定した。そして、第1及び第2ティーチングポジションX1,X2毎に、下降用駆動開始指令電圧Y1の差と上昇用駆動開始指令電圧Y2の差を算出した。その結果を、
図8に示す。
【0069】
図8に示すように、第1ティーチングポジションX1がホームポジションHPから0.4mm下降した位置、第2ティーチングポジションX2がティーチング規定移動位置から0.4mm上昇した位置では、下降用駆動開始指令電圧Y1の差は0.054V、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は0.007Vであった。第1ティーチングポジションX1がホームポジションHPから0.5mm下降した位置、第2ティーチングポジションX2がティーチング規定移動位置から0.5mm上昇した位置では、下降用駆動開始指令電圧Y1の差は0.044V、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は0.006Vであった。第1ティーチングポジションX1がホームポジションHPから0.6mm下降した位置、第2ティーチングポジションX2がティーチング規定移動位置から0.6mm上昇した位置では、下降用駆動開始指令電圧Y1の差は0.036V、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は0.005Vであった。第1ティーチングポジションX1がホームポジションHPから0.7mm下降した位置、第2ティーチングポジションX2がティーチング規定移動位置から0.7mm上昇した位置では、下降用駆動開始指令電圧Y1の差は0.030V、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は0.007Vであった。第1ティーチングポジションX1がホームポジションHPから0.8mm下降した位置、第2ティーチングポジションX2がティーチング規定移動位置から0.8mm上昇した位置では、下降用駆動開始指令電圧Y1の差は0.029V、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は0.006Vであった。第1ティーチングポジションX1がホームポジションHPから0.9mm下降した位置、第2ティーチングポジションX2がティーチング規定移動位置から0.9mm上昇した位置では、下降用駆動開始指令電圧Y1の差は0.030V、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差は0.007Vであった。
【0070】
よって、下降用駆動開始指令電圧Y1の差(実線)は、第1ティーチングポジションX1をホームポジションHPから0.4mm以上0.7mm未満にすると、減少傾向を示す。しかし、下降用駆動開始指令電圧Y1の差(実線)は、第1ティーチングポジションX1をホームポジションHPから0.7mm以上下降させる位置にすると、安定した。よって、第1ティーチングポジションX1をホームポジションHPから0.7mm以上下降した位置にすることにより、ティーチング動作開始時の制御対象9の位置によって生じる下降用駆動開始指令電圧Y1の差を小さくできる。
【0071】
これに対して、上昇用駆動開始指令電圧Y2の差(点線)は、第2ティーチングポジションX2の違いにより、大きな差が見られなかった。よって、第2ティーチングポジションX2は、第1ティーチングポジションX1より自由に決定できる。そこで、制御を容易にするために、第2ティーチングポジションX2は、ホームポジションHPから第1ティーチングポジションまでの距離と同じ距離だけ、ティーチング規定移動位置から上昇した位置にすると良い。
【0072】
このように、ティーチング規定移動量Zと第1及び第2ティーチングポジションX1,X2は、ティーチング動作開始時に制御対象9の位置によって生じる下降用駆動開始指令電圧Y1と上昇用駆動開始指令電圧Y2の差が小さくなる(安定する)ように決定される。そのため、ティーチング動作開始時に制御対象9の位置が異なっても、下降用駆動開始指令電圧Y1と上昇用駆動開始指令電圧Y2の差を小さくできる。そのため、ティーチング動作を行った時の制御対象9の位置がどこであったとしても、下降用駆動開始指令電圧Y1以上で第1指令電圧より大きい第2指令電圧をサーボバルブ2に出力したときに、第2指令電圧を出力したときからエアシリンダ3が制御対象9を下降させ始めるまでの応答時間のばらつきを小さくできる。また、ティーチング動作を行った時の制御対象9の位置がどこであったとしても、上昇用駆動開始指令電圧Y2以上の第2指令電圧をサーボバルブ2に出力したときに、第2指令電圧を出力したときからエアシリンダ3が制御対象9を上昇させ始めるまでの応答時間のばらつきを小さくできる。
【0073】
<作用効果について>
以上説明したように、本実施形態は、圧力室32の圧力に応じて制御対象9を直線方向に進退させるエアシリンダ3と、圧力室32に圧縮エアを給排気するサーボバルブ2と、制御対象9の位置を検出する位置検出センサ4(位置検出手段の一例)と、位置検出センサ4が検出する検出位置を入力して目標位置との偏差を求め、偏差に基づいてサーボバルブ2に指令電圧を出力するコントローラ5と、を有するサーボシリンダシステム1において、コントローラ5は、制御対象9を所定のホームポジションHPから移動させるように(ティーチング規定移動位置まで下降させた後、ティーチング規定移動位置からホームポジションHPまで上昇させるように)サーボバルブ2に指令電圧を出力し、制御対象9がホームポジションHPから所定量離れたティーチングポジション{ホームポジションHPから第1規定量(0.7mm)下降側へ離れた第1ティーチングポジションX1、及び、ホームポジションHPから第2規定量(3.3mm)下降側に離れた(ティーチング規定移動位置から0.7mm上昇側へ離れた)第2ティーチングポジションX2}を通過するときの指令電圧を検出して、駆動開始指令電圧(下降用駆動開始指令電圧Y1、上昇用駆動開始指令電圧Y2)として記憶するティーチングプログラム5a(ティーチング手段の一例)と、制御対象9を現在の位置から目標位置へ移動させる動作指示を入力した場合に、動作指示を入力したあと最初に偏差に基づいて算出した第1指令電圧に駆動開始指令電圧(下降用駆動開始指令電圧Y1又は上昇用駆動開始指令電圧Y2)を加算して第2指令電圧を算出し、第2指令電圧をサーボバルブ2に出力する通常動作プログラム5b(特に、
図9のS26〜S29、S31、始動時電圧調整手段の一例)を有すること、を特徴とする。
【0074】
上記実施形態のサーボシリンダシステム1では、コントローラ5が、ティーチングプログラム5aを実行することにより、サーボシリンダシステム1の構成部品を実際に稼動させてサーボバルブ2に指令電圧を出力し、制御対象9をホームポジションHPから移動させる(ティーチング規定移動位置まで下降させた後、ティーチング規定移動位置からホームポジションHPまで上昇させる)。このとき、コントローラ5は、制御対象9がホームポジションHPから所定量離れたティーチングポジション{ホームポジションHPから第1規定量(0.7mm)下降側へ離れた第1ティーチングポジションX1、及び、ホームポジションHPから第2規定量(3.3mm)下降側に離れた(ティーチング規定移動位置から0.7mm上昇側へ離れた)第2ティーチングポジションX2}を通過するときの指令電圧を検出して、駆動開始指令電圧(下降用駆動開始指令電圧Y1又は上昇用駆動開始指令電圧Y2)として記憶する。そのため、駆動開始指令電圧は、当該サーボシリンダシステム1がエアシリンダ3を確実に始動させることができる(下降させ始める又は上昇させ始める)値になる。
【0075】
コントローラ5は、制御対象9を現在の位置から目標位置へ移動させる動作指示を入力した場合に、位置検出センサ4が検出する検出位置と目標位置との偏差に基づいてサーボバルブ2に指令電圧を出力する。このとき、コントローラ5は、通常動作プログラム5bのS26〜S29,S31(
図9参照)により、動作指示を入力したあと最初に偏差に基づいて算出した第1指令電圧に、上記のティーチング動作で記憶した駆動開始指令電圧(下降用駆動開始指令電圧Y1又は上昇用駆動開始指令電圧Y2)を加算することにより、第2指令電圧を算出し、その第2指令電圧をサーボバルブ2に出力する。エアシリンダ3は、第1指令電圧よりも大きい第2指令電圧が印加されるので、サーボバルブ2に第2指令電圧が出力されると直ぐに始動し、制御対象9を現在の位置から目標位置へ向かって移動させ始める。エアシリンダ3やサーボバルブ2は、始動時に大きな力を要するが、始動後はスムーズに動きやすい。そのため、サーボシリンダシステム1は、エアシリンダ3が始動した後は、コントローラ5が検出位置と目標位置との偏差に基づいて出力する指令電圧に応じて制御対象9を目標位置へ移動させる。
【0076】
このように、上記構成のサーボシリンダシステム1は、動作指示を入力すると、最初に、偏差のみに基づいて算出した第1指令電圧よりも大きい第2指令電圧をサーボバルブ2に出力するので、サーボシリンダシステム1を構成するエアシリンダ3やサーボバルブ2などの構成部品が特性を製品間で異ならせたり、経年劣化したりしても、エアシリンダ3を応答性良く始動させる(下降させ始める又は上昇させ始める)ことができる。そのため、上記構成のサーボシリンダシステム1は、製品の特性や劣化状態に応じて応答性を改善し、位置制御性能を製品間で均一化できると共に、初期の位置制御性能を維持できる。
【0077】
また、本実施形態のサーボシリンダシステム1では、ティーチングプログラム5aは、ホームポジションHPへ移動する前における制御対象9の位置によって生じる駆動開始指令電圧(下降用駆動開始指令電圧Y1、上昇用駆動開始指令電圧Y2)の差が小さくなる範囲に、ティーチングポジション(第1又は第2ティーチングポジションX1,X2)が設定されている。そのため、ティーチング動作開始時に制御対象9がどの位置で停止していても、ティーチング動作で検出する駆動開始指令電圧(下降用駆動開始指令電圧Y1又は上昇用駆動開始指令電圧Y2)の差が小さくなる。そのため、ティーチング動作を行った時の制御対象9の位置がどこであったとしても、制御対象9を目標位置へ移動させる場合に、動作指示を入力したあと最初に偏差のみに基づいて算出した第1指令電圧より大きい第2指令電圧をサーボバルブに出力し、エアシリンダ3を直ぐに始動させる(下降させ始める、又は、上昇させ始める)ことができる。よって、本実施形態のサーボシリンダシステム1によれば、制御対象9の位置に応じてティーチング動作や通常動作の制御を変えなくても、応答性を改善できる。
【0078】
また、本実施形態のサーボシリンダシステム1では、ティーチングプログラム5aは、制御対象9をホームポジションHPへ移動させる前に、最も進出(下降)した位置である最大進出位置(下限位置)に制御対象9を移動させるように、サーボバルブ2に指令電圧を出力する準備手段(
図2のS1、S2参照)を有する。これにより、サーボシリンダシステム1は、ティーチング動作時に安定した制御を行うのに十分な距離があるので、制御対象9を最大進出位置(下限位置)以外の位置からホームポジションHPに到達させる場合よりも、オーバーシュートを低減し、制御対象9を早くホームポジションHPに到達させることができる。よって、本実施形態のサーボシリンダシステム1によれば、制御対象9をホームポジションHPに短時間で精度良く到達させることができる。
【0079】
従って、本実施形態のサーボシリンダシステム1によれば、エアシリンダ3が始動するときの応答性を改善し、位置制御性能の均一化と維持を図ることができるサーボシリンダシステム1を提供することができる。
【0080】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
【0081】
(1)例えば、上記実施形態では、ピストン33の位置から制御対象9の位置を検出する位置検出センサ4により位置検出手段を構成した。これに対して、位置検出手段は、出力ロッド34の位置又は圧力室32の圧力を検知して制御対象9の位置を検出するものであっても良いし、制御対象9の位置を直接検出するものであっても良い。また、位置検出手段は、エアシリンダ3のピストン33の位置や圧力室32の圧力、出力ロッド34の位置をセンサで検出し、その検出結果をコントローラ5に出力し、コントローラ5が検出結果から制御対象9の位置を算出するように構成しても良い。
【0082】
(2)例えば、上記実施形態では、1個のサーボバルブ2によって第1及び第2圧力室32a,32bに供給する圧縮エアを制御した。これに対して、第1操作ポート31aと第2操作ポート31bにそれぞれ1個ずつ給排気弁を設け、これら一対の給排気弁でサーボバルブを構成しても良い。
【0083】
(3)例えば、上記実施形態では、ティーチングプログラム5aが制御対象9を下限位置へ移動させてからホームポジションHPへ移動させるようにサーボバルブ2に指令電圧を出力したが、制御対象9を下限位置以外の位置[例えば上限位置や、下限位置より僅かに(例えば0.1mm)上の位置など]へ移動させてからホームポジションへ移動させるようにサーボバルブ2に指令電圧を出力するようにしても良い。
【0084】
上記実施形態では、エアシリンダ3が出力ロッド34を下向きに突出させるように配置されている。これに対して、エアシリンダ3は、出力ロッド34を上向きに突出させるように配置してもよいし、出力ロッド34を水平方向に往復運動させるように配置しても良い。
【0085】
上記実施形態では、1回のティーチング動作により、下降用及び上昇用駆動開始指令電圧を検出して記憶するようにしたが、下降用駆動開始指令電圧と上昇用駆動開始指令電圧は、別個のティーチング動作で検出して記憶するようにしても良い。
【0086】
上記実施形態では、ホームポジションHPを上限位置にしたが、制御可能範囲内であればホームポジションHPは任意の位置(例えば下限位置や、上限位置と下限位置との間の中間位置など)に設定しても良い。この場合、本実施形態と同じようにティーチング動作時に制御対象9の位置を制御しやすい。