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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-141941(P2017-141941A)
(43)【公開日】2017年8月17日
(54)【発明の名称】閉塞具および管路更生方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20170721BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20170721BHJP
   E03F 3/06 20060101ALI20170721BHJP
【FI】
   F16L1/00 P
   E03F7/00
   E03F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-24972(P2016-24972)
(22)【出願日】2016年2月12日
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(71)【出願人】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(71)【出願人】
【識別番号】507157676
【氏名又は名称】株式会社クボタ工建
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】谷川 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中村 良一郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 仁
(72)【発明者】
【氏名】三山 和孝
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA19
2D063BA31
2D063BA37
2D063EA07
2D063EA09
(57)【要約】
【構成】 閉塞具10は、受枠部材12と蓋部材14とを含み、更生管(102)に形成された孔(106)を閉塞させる。受枠部材は、両端開放の円筒状に形成され、充填材の注入ガン(80)を受容可能な第1筒部20、第1筒部の一方端部に形成される鍔部22、第1筒部の内周面に形成される第1嵌合部24、および第1筒部の内周面に設けられる第1シールリング26を備える。また、蓋部材は、第1筒部に挿入される第2筒部32、第2筒部の一方端部を封止する封止部34、および第1嵌合部と嵌合される第2嵌合部36を備える。
【効果】 更生管の孔を閉塞できる上、既設管と更生管との間に充填材を注入する際の作業性を向上できる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材を用いて既設管と一体化される更生管に形成された孔を閉塞する閉塞具であって、
前記更生管の孔に固定される受枠部材と、前記受枠部材に取り付けられる蓋部材とを有し、
前記受枠部材は、
両端開放の円筒状に形成され、前記更生管の孔に挿入されると共に、前記充填材の注入ガンの先端部またはエア抜き管を受容する第1筒部、
前記第1筒部の一方端部の外周面に形成され、他端部側の面が前記更生管の内面に当接される鍔部、
前記第1筒部の内周面に形成される第1嵌合部、および
前記第1嵌合部よりも他端部側の位置において、前記第1筒部の内周面に設けられる第1シールリングを備え、
前記蓋部材は、
前記第1筒部に挿入される円筒状の第2筒部、
前記第2筒部の一方端部を封止する封止部、および
前記第2筒部の外周面に形成され、前記第1嵌合部と嵌合される第2嵌合部を備える、閉塞具。
【請求項2】
前記注入ガンの先端部の外径と前記エア抜き管の外径とは同径または略同径であって、
前記第1筒部は、前記注入ガンの先端部および前記エア抜き管の受容部として兼用可能である、請求項1記載の閉塞具。
【請求項3】
前記鍔部の一方端部側の面は、平面状に形成され、前記注入ガンの先端部に形成されるフランジ部に当接される、請求項1または2記載の閉塞具。
【請求項4】
前記第2嵌合部よりも一方端部側の位置において、前記第2筒部の外周面に設けられる第2シールリングをさらに備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の閉塞具。
【請求項5】
請求項1記載の閉塞具を用いた管路更生方法であって、
(a)既設管内に更生管を敷設するステップ、
(b)前記ステップ(a)の後、前記更生管に充填材注入孔を形成し、前記充填材注入孔に前記閉塞具の受枠部材の第1筒部を挿入して固定するステップ、
(c)前記ステップ(b)の後、前記第1筒部に対して充填材の注入ガンの先端部を挿入し、前記既設管の内面と前記更生管の外面との間に充填材を注入するステップ、および
(d)前記ステップ(c)の後、前記第1筒部から前記注入ガンを抜き取って、前記受枠部材に前記閉塞具の蓋部材を取り付けるステップを含む、管路更生方法。
【請求項6】
請求項1記載の閉塞具を用いた管路更生方法であって、
(a)既設管内に更生管を敷設するステップ、
(b)前記ステップ(a)の後、前記更生管の頂部にエア抜き孔を形成し、前記エア抜き孔に前記閉塞具の受枠部材の第1筒部を挿入して固定するステップ、
(c)前記ステップ(b)の後、前記第1筒部に対してエア抜き管を挿入して取り付けるステップ、
(d)前記ステップ(c)の後、前記既設管の内面と前記更生管の外面との間に充填材を注入するステップ、および
(e)前記ステップ(d)の後、前記第1筒部から前記エア抜き管を抜き取って、前記受枠部材に前記閉塞具の蓋部材を取り付けるステップを含む、管路更生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は閉塞具および管路更生方法に関し、特にたとえば、充填材を用いて既設管と一体化される更生管に形成された孔を閉塞する、閉塞具およびそれを用いた管路更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化した既設管を更生する管路更生方法として、既設管内に更生管を設けた後、既設管の内面と更生管の外面との間に充填材を注入して、これらを一体化する管路更生方法が知られている。既設管の内面と更生管の外面との間に充填材を注入する方法としては、更生管の管端から充填材の注入ホースを導入する方法が、特許文献1等において公知である。
【0003】
しかし、既設管100が蛇行している場合など、既設管100の内面と更生管102の外面との間に注入ホースを挿通し難い場合には、図14(A)に示すように、更生管102に充填材注入孔106を形成し、その充填材注入孔106に対して、更生管102内から注入ガン80の先端部82を差し込んで充填材104を注入する場合もある。この注入ガン80の先端部82には、図14(B)に示すように、スポンジ層86を有するフランジ部84が設けられている。そして、充填材104を注入する際には、フランジ部84を更生管102の内面に押し当てるように、充填材注入孔106に注入ガン80の先端部82を差し込むことで、注入ガン80の吐出口88から吐出される充填材104が更生管102内に漏れることを防止するようにしている。
【0004】
また、図示は省略するが、既設管が上下方向に屈曲している場合、充填材の注入時には、その山の部分においてエア抜きを行う必要がある。そこで、既設管の山の部分における更生管の管頂部にエア抜き孔を形成し、このエア抜き孔にエア抜き管を取り付けることが一般的に行われる。
【0005】
上述のような更生管に形成される充填材注入孔およびエア抜き孔などの孔は、更生管内からの水漏れ、または更生管内への水の浸入を防ぐために、充填材の注入後に適切に塞いでおく必要がある。更生管に形成した孔を閉塞させるに際しては、更生管の孔に閉塞具を嵌め込んで固定する方法が知られている。
【0006】
特許文献2には、更生管に形成した孔を閉塞させる閉塞具(閉塞部材)の一例が開示される。特許文献2の閉塞具は、充填材(裏込め材)を注入する際に、更生管(ライニング管)を内側から支える支保材を取り付けるための貫通孔を閉塞させるための部材であって、本体部とこれに着脱可能な蓋部とを有する。この本体部は、一方が開口し他方が有底とされた略円筒状に形成され、その内周面には雌ねじが形成されると共に、その開口の外周には鍔部が形成される。また、蓋部の外周面には、雄ねじが形成される。そして、本体部に蓋部が螺合されることによって、本体部の開口が閉止され、本体部の内側に中空空間が形成される。
【特許文献1】特許第2843959号
【特許文献2】特開2015−175487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の閉塞具は、更生管の孔を単に閉塞させるためだけにしか利用できず、閉塞具を利用して充填材の注入作業を効率的に行うことに関しては、何ら考慮されていない。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、閉塞具および管路更生方法を提供することである。
【0009】
この発明の他の目的は、更生管に形成された孔を閉塞させるだけでなく、既設管の内面と更生管の外面との間に充填材を注入する際の作業性を向上できる、閉塞具および管路更生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、充填材を用いて既設管と一体化される更生管に形成された孔を閉塞する閉塞具であって、更生管の孔に固定される受枠部材と、受枠部材に取り付けられる蓋部材とを有し、受枠部材は、両端開放の円筒状に形成され、更生管の孔に挿入されると共に、充填材の注入ガンの先端部またはエア抜き管を受容する第1筒部、第1筒部の一方端部の外周面に形成され、他端部側の面が更生管の内面に当接される鍔部、第1筒部の内周面に形成される第1嵌合部、および第1嵌合部よりも他端部側の位置において、第1筒部の内周面に設けられる第1シールリングを備え、蓋部材は、第1筒部に挿入される円筒状の第2筒部、第2筒部の一方端部を封止する封止部、および第2筒部の外周面に形成され、第1嵌合部と嵌合される第2嵌合部を備える、閉塞具である。
【0011】
第1の発明では、閉塞具は、受枠部材および蓋部材を含み、充填材を用いて既設管と一体化される更生管に形成された孔を閉塞させる。受枠部材は、両端開放の円筒状に形成される第1筒部を備える。第1筒部の一方端部には、外方に突出する鍔部が形成される。また、第1筒部の内周面には、第1嵌合部が形成されると共に、第1嵌合部よりも他端部側の位置において第1シールリングが設けられる。一方、蓋部材は、一方端部が封止部によって封止されている円筒状の第2筒部を備える。第2筒部の外周面には、第1嵌合部と嵌合される第2嵌合部が形成される。
【0012】
充填材の注入時には、先ず、閉塞具の受枠部材が更生管の孔に固定される。この際、鍔部の他端部側の面が更生管の内面に当接するまで、第1筒部が更生管の孔に挿入される。そして、第1筒部に対して充填材の注入ガンの先端部またはエア抜き管が差し込まれる。この第1筒部には、第1シールリングが設けられているので、第1筒部に注入ガンの先端部またはエア抜き管を挿入すると、第1筒部と注入ガンの先端部またはエア抜き管との間で第1シールリングが圧縮されて、この間が確実に止水される。すなわち、充填材の注入時において、更生管内への充填材の漏れが確実に防止される。
【0013】
充填材の注入後は、受枠部材の第1筒部に対して蓋部材の第2筒部を挿入し、第1嵌合部と第2嵌合部とを嵌合させることによって、受枠部材に蓋部材を取り付ける。これによって、更生管に形成された孔が容易に閉塞される。
【0014】
第1の発明によれば、充填材の漏えいを適切に防いだ状態で、更生管の孔に対して充填材の注入ガンの先端部またはエア抜き管を容易に挿通ないし設置することができる。つまり、更生管に形成された孔を容易に閉塞できる上、既設管の内面と更生管の外面との間に充填材を注入する際の作業性を向上できる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明に従属し、注入ガンの先端部の外径とエア抜き管の外径とは同径または略同径であって、第1筒部は、注入ガンの先端部およびエア抜き管の受容部として兼用可能である。
【0016】
第2の発明では、注入ガンの先端部の外径とエア抜き管の外径とが同径または略同径とされ、受枠部材の第1筒部は、注入ガンの先端部およびエア抜き管の受容部として兼用可能とされる。
【0017】
第2の発明によれば、充填材注入孔用またはエア抜き孔用として個別に閉塞具を製造する必要がなく、同一規格の閉塞具を充填材注入孔およびエア抜き孔に兼用可能である。
【0018】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、鍔部の一方端部側の面は、平面状に形成され、注入ガンの先端部に形成されるフランジ部に当接される。
【0019】
第3の発明では、注入ガンのフランジ部の受け部となる鍔部の一方端部側の面が、平面状に形成される。鍔部の一方端部側の面に対してフランジ部のスポンジ層を押し当てると、平面同士の接触となるので、スポンジ層の全体を略均一に圧縮させることができる。したがって、スポンジ層における止水性が向上される。
【0020】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、第2嵌合部よりも一方端部側の位置において、第2筒部の外周面に設けられる第2シールリングをさらに備える。
【0021】
第4の発明では、蓋部材の第2筒部は、第2嵌合部よりも一方端部側の位置に設けられる第2シールリングを備える。受枠部材に蓋部材を取り付けると、第1筒部の内周面と第2筒部の外周面との間で第2シールリングが圧縮され、この間の止水性が確保される。
【0022】
第4の発明によれば、第2シールリングを備えるので、更生管への通水開始後に、閉塞具に内水圧が作用しても、更生管からの水漏れが確実に防止される。また、地震等で既設管の外側から地下水などが浸水してきても、更生管内への浸水が確実に防止される。
【0023】
第5の発明は、第1の発明に係る閉塞具を用いた管路更生方法であって、(a)既設管内に更生管を敷設するステップ、(b)ステップ(a)の後、更生管に充填材注入孔を形成し、充填材注入孔に閉塞具の受枠部材の第1筒部を挿入して固定するステップ、(c)ステップ(b)の後、第1筒部に対して充填材の注入ガンの先端部を挿入し、既設管の内面と更生管の外面との間に充填材を注入するステップ、および(d)ステップ(c)の後、第1筒部から注入ガンを抜き取って、受枠部材に閉塞具の蓋部材を取り付けるステップを含む、管路更生方法である。
【0024】
第5の発明によれば、第1発明と同様の作用効果を奏し、更生管に形成された充填材注入孔を容易に閉塞できるだけでなく、充填材の漏えいを適切に防いだ状態で、更生管の孔に対して充填材の注入ガンの先端部を容易に挿通することができる。
【0025】
第6の発明は、第1の発明に係る閉塞具を用いた管路更生方法であって、(a)既設管内に更生管を敷設するステップ、(b)ステップ(a)の後、更生管の頂部にエア抜き孔を形成し、エア抜き孔に閉塞具の受枠部材の第1筒部を挿入して固定するステップ、(c)ステップ(b)の後、第1筒部に対してエア抜き管を挿入して取り付けるステップ、(d)ステップ(c)の後、既設管の内面と更生管の外面との間に充填材を注入するステップ、および(e)ステップ(d)の後、第1筒部からエア抜き管を抜き取って、受枠部材に閉塞具の蓋部材を取り付けるステップを含む、管路更生方法である。
【0026】
第6の発明によれば、第1発明と同様の作用効果を奏し、更生管に形成されたエア抜き孔を閉塞させるだけでなく、充填材の漏えいを適切に防いだ状態で、更生管の孔に対してエア抜き管を容易に設置することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、充填材の漏えいを適切に防いだ状態で、更生管の孔に対して充填材の注入ガンの先端部またはエア抜き管を容易に挿通ないし設置することができる。つまり、更生管に形成された孔を容易に閉塞できる上、既設管の内面と更生管の外面との間に充填材を注入する際の作業性を向上できる。
【0028】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】この発明の一実施例である閉塞具を用いて更生管に形成された孔を閉塞した様子を示す図解図である。
図2】既設管内に更生管を設けた状態を示す軸方向断面図である。
図3】既設管内に更生管を設けた状態を示す径方向断面図である。
図4】更生管を形成する部材の一例を示す図解図であって、(A)はストリップの断面図であり、(B)はジョイナの断面図である。
図5】ストリップをジョイナで接合した状態を示す断面図である。
図6】この発明の一実施例である閉塞具を示す図解図であって、(A)は閉塞具の斜視図であり、(B)は閉塞具の断面図である。
図7図6の閉塞具が備える受枠部材を示す図解図であって、(A)は受枠部材の側面図であり、(B)は受枠部材の断面図である。
図8図6の閉塞具が備える蓋部材を示す図解図であって、(A)は蓋部材の側面図であり、(B)は蓋部材の断面図である。
図9】閉塞具を用いた管路更生方法を説明するための図解図であって、既設管内に設けた更生管に充填材注入孔を形成した状態を示す。
図10図9に続く施工手順を示す図解図である。
図11図10に続く施工手順を示す図解図である。
図12】エア抜き個所における施工手順を示す図解図である。
図13図12に続く施工手順を示す図解図である。
図14】(A)は、従来工法において、更生管に形成した充填材注入孔から充填材を注入する様子を示す図解図であり、(B)は、充填材の注入ガンの外観を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1を参照して、この発明の一実施例である閉塞具10は、受枠部材12および蓋部材14を備え、充填材104を用いて既設管100と一体化される更生管102に形成された孔106,108を閉塞するために用いられる。また、詳細は後述するように、閉塞具10の受枠部材12は、止水性を有する状態で、孔106,108に対して注入ガン80の先端部82またはエア抜き管90を挿通ないし設置するためにも用いられる(図10図14参照)。
【0031】
先ず、閉塞具10の具体的な説明に先立ち、更生管102およびそれを構成する部材50,60の一例について説明する。
【0032】
図2および図3に示すように、更生管102は、ストリップ(帯板状部材)50を螺旋状に巻回すと共に、その側縁部同士をジョイナ(嵌合部材)60を用いて接続することによって、既設管100内で製管される。そして、既設管100の内面と更生管102の外面との間に、セメントミルク系の充填材(裏込材)104を注入することで、既設管100と更生管102とが一体化した複合管が形成される。充填材104としては、2液混合型の充填材などが用いられる。
【0033】
また、既設管100の内面と更生管102の外面との間には、その頂部においてスペーサ110が設けられる。スペーサ110は、既設管100と更生管102との間に充填材104の注入ホースを導入するための案内通路を形成すると共に、注入した充填材104によって更生管102が浮上してしまうことを防止し、また、形成した更生管102の強度を向上させる。ただし、後述のように、この実施例では、更生管102に形成した充填材注入孔106から充填材104を注入するので、スペーサ110は必ずしも設けられる必要はない。
【0034】
図4(A)に示すように、ストリップ50は、帯状のストリップ本体52を含み、たとえば、硬質塩化ビニル等の合成樹脂の押出成形によって形成される。ストリップ本体52の第1主面52aは、更生管102の内面を構成する。また、ストリップ本体52の第2主面52bには、幅方向に所定間隔で配置される複数のリブ54が形成される。さらに、ストリップ本体52の両側縁部には、後述するジョイナ60の第2係合部64と嵌め合わされる第1係合部56が形成される。これらリブ54および第1係合部56は、ストリップ本体52の長手方向の全長に亘って形成される。
【0035】
また、図4(B)に示すように、ジョイナ60は、帯状のジョイナ本体62を含み、たとえば、硬質塩化ビニル等の合成樹脂の押出成形によって形成される。ジョイナ本体62の第1主面62aは、ストリップ50の第1主面52aと共に更生管102の内面を構成する。また、ジョイナ本体62の両側縁部には、ストリップ50の第1係合部56に嵌め合わされる第2係合部64が形成される。この第2係合部64には、エラストマなどの止水材66が設けられる。さらに、ジョイナ本体62の中央部には、第2主面62b側に突出するU字状の溝部68と、溝部68全体を覆うように第2主面62b同士を連結するフレキシブル部70とが設けられる。これら第2係合部64、止水材66、溝部68およびフレキシブル部70は、ジョイナ本体62の長手方向の全長に亘って形成される。
【0036】
ただし、上述したストリップ50およびジョイナ60の具体的構成ないし形状は、単なる一例であり、適宜変更可能である。また、必ずしもジョイナ60を用いてストリップ50の側縁部同士を接続する必要はなく、ストリップ50の両側縁部に互いに嵌り合う嵌合部を形成することによって、ストリップ50の側縁部同士を直接接続するようにしてもよい。
【0037】
既設管100内に更生管102を形成する際には、図5に示すように、ストリップ50を螺旋状に巻回しながら、ストリップ50の第1係合部56とジョイナ60の第2係合部64と嵌め合わせて、ジョイナ60によってストリップ50の側縁部同士を接続する。そして、上述のように、既設管100の内面と更生管102の外面との間に充填材104を注入することによって、既設管100と更生管102とを一体化させる。この実施例では、更生管102に形成した充填材注入孔106(図9参照)から充填材104を注入する。閉塞具10は、この充填材注入孔106を閉塞させると共に、充填材140の注入ガン80(図14(B)参照)の先端部82を充填材注入孔106に対して止水性を有する状態で挿通するため等に用いられる。
【0038】
以下、図6図8を参照して、閉塞具10の構成について具体的に説明する。図6に示すように、閉塞具10は、更生管102に形成された充填材注入孔106に固定される受枠部材12と、受枠部材12に取り付けられる蓋部材14とを含む。閉塞具10は、硬質塩化ビニル等の合成樹脂などによって形成される。
【0039】
図7に示すように、受枠部材12は、両端開放の円筒状に形成される第1筒部20を備える。第1筒部20は、更生管102の充填材注入孔106に挿入される部分であって、その外径は、充填材注入孔106の径と略同じ大きさに設定される。第1筒部20の外径は、たとえば45mmであり、その軸方向長さは、たとえば20mmである。また、第1筒部20には、一方端部側(更生管102の内側)から蓋部材14が嵌め込まれるが、蓋部材14を装着する前においては、第1筒部20は、注入ガン80の先端部82を受容可能である。第1筒部20の内径は、蓋部材14および注入ガン80の先端部82の外径と略同じ大きさに設定され、たとえば36mmである。ただし、第1筒部20の内周面は、蓋部材14および注入ガン80の先端部82等を挿入し易いように、一方端部側の部分がテーパ状に少し拡径されている。
【0040】
第1筒部20の一方端部には、外方に突出する円環状の鍔部22が形成される。受枠部材12を充填材注入孔106に固定するときには、鍔部22の他端部側の面(他端面)22bが更生管102の内面に当接され、この当接面同士が接着接合される。また、鍔部22は、平板状に形成されており、その一方端部側の面(一方端面)22aは平面状とされる。
【0041】
第1筒部20の内周面には、その軸方向中央部において、雌ねじ(第1嵌合部)24が形成される。また、第1筒部20の内周面には、雌ねじ24よりも他端部側の位置において、周方向に延びる環状溝が形成され、この環状溝に第1シールリング26が設けられる。
【0042】
さらに、第1筒部20の外周面には、一方端部側(鍔部22側)に面する段差面28aを有する環状の窪み部28が形成される。また、この窪み部28には、軸方向に沿って延びる平板状の複数(この実施例では2つ)の突条30が形成される。
【0043】
一方、図8に示すように、蓋部材14は、短円筒状に形成される第2筒部32を備える。この第2筒部32の一方端部は、円板状の封止部34によって封止されている。第2筒部32の軸方向長さは、受枠部材12の第1筒部20の軸方向長さよりも短く設定され、たとえば12.5mmである。
【0044】
第2筒部32の外周面には、第1筒部20の雌ねじ24と螺合(嵌合)される雄ねじ(第2嵌合部)36が形成される。また、第2筒部32の外周面には、雄ねじ36よりも一方端部側の位置において、周方向に延びる環状溝が形成され、この環状溝に第2シールリング38が設けられる。さらに、封止部34の一方端面34aには、一方端部側に開口する断面円形の2つの治具穴40が形成される。
【0045】
このような受枠部材12と蓋部材14とは、図6に示すように、第1筒部20に対して第2筒部32を挿入し、雌ねじ24と雄ねじ36とを螺合させることによって組み合わされる。受枠部材12と蓋部材14とを一体化した状態では、鍔部22の一方端面22aと封止部34の一方端面34aとが面一となる。そして、第1筒部20の内周面と第2筒部32の外周面との間で第2シールリング38が圧縮され、この間の止水性が確保される。
【0046】
続いて、図9図11を参照して、閉塞具10を用いた管路更生方法について説明する。図9に示すように、既設管100を更生する際には、先ず、従来通りに、既設管100の内面頂部にスペーサ110を設置した後、既設管100の内面に沿うように更生管102を敷設する。つまり、ストリップ50を螺旋状に巻回すと共に、その側縁部同士をジョイナ60で接続することによって、既設管100内に更生管102を敷設する。その後、穿孔機を用いて更生管102に充填材注入孔106を穿孔する。充填材注入孔106は、たとえば、管軸方向に対して2〜3m毎に形成するとよく、更生管102の管頂部から周方向に10cm程度交互にずらす千鳥配置で形成するとよい。また、更生管102の管端部には、既設管100の内面と更生管102の外面との間を封止する充填材ストッパ112等を適宜設けておく。
【0047】
更生管102に充填材注入孔106を形成すると、次に、図10(A)に示すように、充填材注入孔106のそれぞれに対して閉塞具10の受枠部材12を固定する。ここでは、更生管102の内側から受枠部材12の第1筒部20を充填材注入孔106に挿入し、鍔部22の他端面22bと更生管102の内面とを接着剤114を用いて接着接合する。
【0048】
続いて、図10(B)に示すように、充填材注入孔106に固定した受枠部材12の第1筒部20に対して充填材104の注入ガン80(図14(B)参照)の先端部82を挿入する。そして、鍔部22の一方端面22aに注入ガン80のフランジ部84のスポンジ層86を押し当てた状態で、注入ガン80の吐出口88から既設管100の内面と更生管102の外面との間に充填材104を注入する。なお、充填材104の注入作業は、下流側の充填材注入孔106から行い、順に上流側に移動していくとよい。また、充填材104の注入作業は、1つの充填材注入孔106から充填材104を1度に注入し過ぎないように、複数回に分けて段階的に行うとよい。
【0049】
ここで、充填材104を注入する際、従来のように、充填材注入孔106に注入ガン80の先端部82を直接差し込み、更生管102の内面に押し当てたフランジ部84のスポンジ層86で止水するだけでは、止水が不十分ないし不安定となって、更生管102内に充填材104が漏れてしまう恐れがある。これに対して、この実施例では、受枠部材12の第1筒部20に対して注入ガン80の先端部82を差し込む。この第1筒部20には第1シールリング26が設けられているので、第1筒部20に注入ガン80の先端部82を挿入すると、第1筒部20と注入ガン80の先端部82との間で第1シールリング26が圧縮されて、この間が確実に止水される。すなわち、閉塞具10の受枠部材12を用いることで、止水性を有する状態で、充填材注入孔106に対して注入ガン80の先端部82を容易に挿通することができる。
【0050】
また、従来のように、更生管102の内面にスポンジ層86を直接押し当てると、フランジ部84が平面状であるのに対して更生管102の内面は曲面状であるので、スポンジ層86の一部しか圧縮させることができない。これに対して、この実施例では、受枠部材12の鍔部22の一方端面22aが平面状に形成されるので、鍔部22の一方端面22aにフランジ部84のスポンジ層86を押し当てることで、平面同士の接触となり、スポンジ層86の全体を略均一に圧縮させることができる。したがって、スポンジ層86における止水性が向上される。
【0051】
すなわち、この実施例では、第1シールリング26における止水と、注入ガン80のスポンジ層86における止水とのダブルシールによって、更生管102内への充填材104の漏れを確実に防止できる。
【0052】
充填材104の最終注入作業が終了した充填材注入孔106については、注入ガン80を受枠部材12の第1筒部20から抜き取った後、図10(C)に示すように、第1筒部20にゴム栓116などを挿入して充填材注入孔106を仮封止し、充填材104が硬化するまで待つ。
【0053】
充填材104が硬化したら、図11(D)に示すように、第1筒部20からゴム栓116を引き抜く。この際、第1筒部20の外周面には、一方端部側に面する段差面28aを有する窪み部28が形成されているので、窪み部28内に入り込んだ充填材104によって段差面28aが係止されることで、受枠部材12を一方端部側に引き抜く力に対する抜け止め効果が発揮され、充填材注入孔106から受枠部材12が外れてしまうことが防止される。
【0054】
その後、図11(E)に示すように、ゴム栓116を引き抜くことで形成された空隙118にエポキシ系コーキング材などのパテ120を埋め込む。
【0055】
そして、パテ120が硬化する前に、図11(F)に示すように、受枠部材12に蓋部材14をねじ込む。つまり、受枠部材12の第1筒部20に対して蓋部材14の第2筒部32を挿入し、雌ねじ24と雄ねじ36とを螺合させることによって、受枠部材12に蓋部材14を取り付ける。たとえば、蓋部材14に形成される治具穴40にねじ回し(ドライバ)等の棒状治具を差し込んで、蓋部材14を回転させるとよい。この際、第1筒部20の外周面には、軸方向に沿って延びる突条30が形成されているので、窪み部28内に入り込んだ充填材104によって突条30が係止されることで、受枠部材12が周方向に回転する力に対する回転防止効果が発揮され、充填材注入孔106から受枠部材12が外れてしまうことが防止される。なお、蓋部材14を取り付ける際、蓋部材14の雄ねじ36には、接着剤を塗布しておくとよい。これにより、受枠部材12と蓋部材14とがより強固に固定される。
【0056】
充填材104の最終注入作業が終了し、全ての受枠部材12に対する蓋部材14の取り付け作業が終了すると、片付け作業を適宜実施することによって、既設管100の更生作業が終了する。
【0057】
更生管102への通水開始後においては、第1筒部20の内周面と第2筒部32の外周面との間に第2シールリング38が設けられていることから、閉塞具10に内水圧が作用しても、更生管102からの水漏れが確実に防止される。また、地震等で既設管100の外側から地下水などが浸水してきても、更生管102内への浸水が確実に防止される。
【0058】
また、閉塞具10は、充填材注入孔106に用いる代わりに、エア抜き孔108に用いることも可能である。すなわち、既設管100が上下方向に屈曲している場合、充填材104の注入時には、既設管100の山の部分における更生管102の管頂部にエア抜き孔108を形成し、このエア抜き孔108にエア抜き管90を取り付ける。閉塞具10は、このエア抜き孔108を閉塞させると共に、エア抜き管90を充填材注入孔106に対して止水性を有する状態で設置するためにも用いられる。
【0059】
以下、図12および図13を参照して、閉塞具10を用いた管路更生方法の他の例について説明する。なお、上述の管路更生方法の説明と重複する部分については、説明を省略または簡略化する。また、充填材104は、上述したように更生管102に形成した充填材注入孔106から注入ガン80によって注入されてもよいし、更生管102の管端から導入した充填材注入ホース(図示せず)を用いて注入されてもよい。
【0060】
図12(A)に示すように、既設管100を更生する際には、先ず、既設管100の内面頂部にスペーサ110を設置した後、既設管100の内面に沿うように更生管102を敷設する。その後、既設管100の山の部分における更生管102の管頂部に、穿孔機を用いてエア抜き孔108を穿孔する。
【0061】
更生管102にエア抜き孔108を形成すると、次に、図12(B)に示すように、エア抜き孔108に対して閉塞具10の受枠部材12を固定する。そして、充填材注入孔106に固定した受枠部材12の第1筒部20に対して、エア抜き管90を挿入して設置する。この際、この第1筒部20には第1シールリング26が設けられているので、第1筒部20とエア抜き管90との間で第1シールリング26が圧縮されて、この間が確実に止水される。すなわち、閉塞具10の受枠部材12を用いることで、止水性を有する状態で、充填材注入孔106に対してエア抜き管90を容易に設置することができる。また、エア抜き管90の外径と注入ガン80の先端部82の外径とを同径または略同径としておけば、受枠部材12の第1筒部20は、注入ガン80の先端部82およびエア抜き管90の受容部として兼用可能である。つまり、充填材注入孔106用またはエア抜き孔108用として個別に閉塞具10を製造することなく、同一規格の閉塞具10を充填材注入孔106およびエア抜き孔108に用いることができる。
【0062】
エア抜き孔108に受枠部材12およびエア抜き管90を取り付けると、続いて、図12(C)に示すように、既設管100の内面と更生管102の外面との間に充填材104を注入し、充填材104が硬化するまで待つ。
【0063】
充填材104が硬化したら、図13(D)に示すように、第1筒部20からエア抜き管90を引き抜き、その後、図13(E)に示すように、エア抜き管90を引き抜くことで形成された空隙118にエポキシ系コーキング材などのパテ120を埋め込む。
【0064】
そして、パテ120が硬化する前に、図13(F)に示すように、受枠部材12に蓋部材14をねじ込む。つまり、受枠部材12の第1筒部20に対して蓋部材14の第2筒部32を挿入し、雌ねじ24と雄ねじ36とを螺合させることによって、受枠部材12に蓋部材14を取り付ける。このように、閉塞具10を用いることで、充填材104の注入後に、エア抜き孔108を容易に閉塞させることができる。
【0065】
以上のように、この実施例によれば、充填材104の漏えいを適切に防いだ状態で、更生管102に形成した孔106,108に対して注入ガン80の先端部82またはエア抜き管90を容易に挿通ないし設置することができる。つまり、更生管102に形成された孔106,108を容易に閉塞できる上、既設管100の内面と更生管102の外面との間に充填材104を注入する際の作業性を向上できる。
【0066】
なお、上述の実施例では、受枠部材12および蓋部材14に形成する第1および第2嵌合部として、ねじ式の嵌合手段(雌ねじ24および雄ねじ36)を採用しているが、これに限定されない。たとえば、第1および第2嵌合部として、バヨネット式の嵌合手段を採用してもよい。
【0067】
また、上述の実施例では、更生管102の一例として、帯状のストリップ50を螺旋状に巻き回して製管するものを挙げたが、これに限定されない。閉塞具10は、充填材を用いて既設管と一体化される更生管であれば、各種の更生管に適用可能である。
【0068】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 …閉塞具
12 …受枠部材
14 …蓋部材
20 …第1筒部
22 …鍔部
24 …雌ねじ(第1嵌合部)
26 …第1シールリング
32 …第2筒部
34 …封止部
36 …雄ねじ(第2嵌合部)
38 …第2シールリング
50 …ストリップ
60 …ジョイナ
80 …注入ガン
90 …エア抜き管
100 …既設管
102 …更生管
104 …充填材
106 …充填材注入孔
108 …エア抜き孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14