【解決手段】変位検出装置7は、検出した磁束密度に応じた信号を出力するものであって、磁石2の変位に応じて変化する磁束密度を検出するホール素子と、ホール素子の出力する信号を予め定めた計算方法を用いて処理し、磁石2の変位に比例した出力値を算出するとともに、磁石2とホール素子との相対位置と、温度との関係に基づいて定められる補正値を用いて当該出力値を補正するDSPとを有する。
前記信号処理部は、前記予め定めた計算方法に、一の検出方向について前記磁気検出素子の出力する信号と、他の検出方向について前記磁気検出素子の出力する信号との比を用いる請求項1又は2に記載の変位検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示す変位検出装置は、シートのクッションパッドの温度依存性による検出誤差を補正するが、磁気発生部材、ヨーク、クッションばねを含む及び磁気センサのケースの温度依存性については考慮されていない。つまり、磁気発生部材、ヨーク、クッションばねも温度により変形するものであり、かつ、磁気センサ内にはホール素子が配置され、樹脂により封止してケースとしており、当該ケースが温度に依存して変形することでホール素子の配置された位置が変化することで、ひいては磁気発生部材とホール素子との相対的位置(オフセット)が変化するが、特許文献1に示す変位検出装置は、クッションパッド以外の温度依存性を考慮しておらず、磁気発生部材とホール素子との相対的位置の温度依存性による変位を補正できない、という問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、磁気部材とホール素子との相対的位置の温度が依存して変化した場合にも出力値を補正する変位検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の変位検出装置を提供する。
【0008】
[1]検出した磁束密度に応じた信号を出力するものであって、磁気部材の変位に応じて変化する磁束密度を検出する磁気検出素子と、
前記磁気検出素子の出力する信号を予め定めた計算方法を用いて処理し、前記磁気部材の変位に比例した出力値を算出するとともに、前記磁気部材と前記磁気検出素子との相対位置と、温度との関係に基づいて定められる補正値を用いて当該出力値を補正する信号処理部とを有する変位検出装置。
[2]検出した磁束密度に応じた信号を出力するものであって、磁気部材の変位に応じて変化する磁束密度を検出する磁気検出素子と、
前記磁気検出素子の出力する信号を予め定めた計算方法を用いて処理し、前記磁気部材の変位に比例した出力値を算出する信号処理部と、
前記磁気部材と前記磁気検出素子との相対位置と、温度との関係に基づいて定められる補正値を用いて当該出力値を補正して出力信号を出力する出力部とを有する変位検出装置。
[3]前記信号処理部は、前記予め定めた計算方法に、一の検出方向について前記磁気検出素子の出力する信号と、他の検出方向について前記磁気検出素子の出力する信号との比を用いる前記[1]又は[2]に記載の変位検出装置。
【発明の効果】
【0009】
請求項1又は2に係る発明によれば、磁気部材とホール素子との相対的位置の温度が依存して変化した場合にも出力値を補正することができる。
請求項3に係る発明によれば、一の検出方向について磁気検出素子の出力する信号の温度依存性と、他の検出方向について磁気検出素子の出力する信号の温度依存性とを相殺することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
(変位検出装置の構成)
図1(a)及び(b)は、実施の形態に係る変位検出装置の構成例を示す斜視図及び側面図である。
図2(a)及び(b)は、磁気センサの構成を示す斜視図及び断面図である。
【0012】
変位検出装置7は、磁束密度の変化を検出方向D
sx及びD
szで検出する磁気センサ1と、ばね5及びロッド3に接続されて検出方向D
sxと平行な変位方向D
sに変位する磁石2と、アクチュエータ4に接続されるロッド3と、ロッド3をx方向のマイナス方向に変位させるアクチュエータ4と、アクチュエータ4の変位に対してロッド3に反力を加えるばね5と、磁気センサ1、アクチュエータ4及びばね5を保持する筐体6とを有する。
【0013】
磁気センサ1は、
図2(a)及び(b)に示すように、一例として、z方向に厚みを有する平板状の基板10と、基板10上に設けられてxy面に平行な検出面を有し、磁気検出素子として検出方向をz方向とするホール素子11
x1、11
x2、11
y1、11
y2と、ホール素子11
x1、11
x2、11
y1、11
y2上に一部が重なるように設けられてx方向及びy方向の磁束をz方向に変換してホール素子11
x1、11
x2、11
y1、11
y2に検出させる磁気コンセントレータ12と、ホール素子11
x1、11
x2、11
y1、11
y2の出力する信号を処理する信号処理部(DSP14、
図3)を有し、x、y、z方向の磁束密度を検出するホールICである。
【0014】
磁気センサ1は、磁気式ポジションセンサを用い、ホール素子11
x1と11
x2との出力の差分、ホール素子11
y1と11
y2との出力の差分をとることでx方向、y方向の磁束密度に比例した出力を得ることができる。磁束密度と出力との関係は後述する。また、ホール素子11
x1と11
x2との間隔、ホール素子11
y1と11
y2との間隔は、d
s=0.2mmであり、パッケージモールド部はz方向の厚みが1.5mm、x方向の幅が4.1mm、y方向の高さが3mmである。磁気センサ1の磁気コンセントレータ12として、パーマロイを用いることができる。また、磁気センサ1は、ホール素子11
y1と11
y2を省略してもよい。
【0015】
なお、磁気センサ1は、検出方向がx方向及びz方向であればMR素子等の他の種類の素子を用いてもよいし、検出方向がx方向及びz方向を含めば複数の軸方向にそれぞれ磁気検出素子を配置した多軸磁気検出ICを用いてもよい。
【0016】
なお、ストローク方向D
sの変位量は一例として数十mm程度(±10mm)の変位であるとする。
【0017】
一対の磁石2は、フェライト、サマリウムコバルト、ネオジウム等の材料を用いて形成された永久磁石である。
【0018】
ロッド3は図示しない測定対象に接続されており、測定対象はアクチュエータによって変位され、当該変位が磁気センサ1によって検出される。
【0019】
図3は、磁気センサ1の構成の一例を示すブロック図である。
【0020】
磁気センサ1は、ホール素子11
x1、11
x2、11
y1、11
y2を総称したホール素子11と、ホール素子11の出力をデジタル信号に変換するA/D変換部13と、デジタル信号を処理する信号処理部としてのDSP14と、処理済みのデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換部15と、アナログ信号を出力する出力部16と、磁気センサ1の周囲の温度を検出する温度センサ17とを有する。DSP14は、信号処理のためのプログラムや設定値等の情報を格納するメモリ140を有する。
【0021】
(変位検出装置の動作)
次に、実施の形態の作用を、
図1−
図9を用いて説明する。
【0022】
図4は、変位検出装置7の磁気センサ1の動作を説明するための概略図である。
【0023】
磁気センサ1を透過する磁束はホール素子11
x1、11
x2、11
y1、11
y2によって感知され、磁束密度に比例した信号を出力する。以下、x方向の磁束、つまりホール素子11
x1、11
x2によって検出される磁束について説明する部分は、y方向についても同様に説明されるものである。
【0024】
磁束fのうち、平行成分B//は磁気コンセントレータ12に誘導されることで、磁束密度の大きさが平行成分B//に比例する垂直成分B⊥に変換され、1対のホール素子11
x1及び11
x2によって検出される。垂直成分であるB
Zも1対のホール素子11
x1及び11
x2によって検出される。
【0025】
つまり、図面左側のホール素子11
x1は“B⊥−B
Z”を検出する一方、図面右側のホール素子11
x2は“−B⊥−B
Z”を検出する。Y方向についても11
y1、11
y2が同様に検出する。
【0026】
従って、ホール素子11
x1の出力とホール素子11
x2の出力との差をとれば2B⊥が得られ、和をとれば−2Bzが得られる。以下において磁気センサ1は、当該Bx⊥及びBzによって磁石2の変位を検出する。
【0027】
図5(a)−(c)は、変位検出装置7の動作を説明するための概略図である。
【0028】
アクチュエータ4によりロッド3がx方向の正の方向に変位すると、磁石2が同様に変位し、
図5(a)に示すように、磁気センサ1のホール素子を貫く磁束密度Bのうち検出方向D
sx及びD
szの磁束密度B
x及びB
zは、x方向と磁束とのなす角度をα
1とすると、B
x=B
0・cosα
1<0となり負の値を、B
z=B
0・sinα
1>0となり正の値をとる。
【0029】
次に、
図5(a)に示す状態から、ロッド3がx方向の負の方向に変位すると、ある地点において、
図5(b)に示すように、磁気センサ1と磁石2とが互いに最も接近する。この状態において磁気センサ1のホール素子を貫く磁束密度Bのうち検出方向D
sx及びD
szの磁束密度は、B
x=B
0・cos0°=B
0であり、B
z=B
0・sin0°=0である。
【0030】
次に、
図5(b)に示す状態から、ロッド3がさらにxの負の方向に変位すると、
図5(c)に示すように、磁気センサ1のホール素子を貫く磁束密度Bのうち検出方向D
sx及びD
szの磁束密度B
x及びB
zは、x方向と磁束とのなす角度をα
2とすると、B
x=B
0・cosα
2<0となり負の値を、B
z=B
0・sinα
2<0となり負の値をとる。
【0031】
これらの磁石2の変位と磁気センサ1の検出する磁束密度との関係は、以下に説明する
図6(a)のように表される。また、磁気センサ1のDSP14は、上記B
x及びB
zを用いてα=Arctan(B
x/B
z)を算出し、当該αと磁石2の変位との関係は
図6(b)のように表される。
【0032】
図6(a)及び(b)は、磁石2の変位と磁気センサ1の検出する磁束密度との関係及び磁石2の変位と磁気センサ1の出力との関係を表すグラフ図である。
【0033】
ロッド3がアクチュエータ4によって動かされていない状態(
図5(c)の状態)をストローク0.5mmであるとすると、ロッド3がアクチュエータ4に押されるに従ってストロークが増加する。磁石2の変位と磁気センサ1の検出する2方向(D
sx、D
sz)の磁束密度との関係は、
図6(a)に示すようになる。また、磁石2の変位と磁気センサ1のDSP14が算出したαとの関係は、
図6(b)に示すように、ストロークが正に増加するに従い磁束密度が増加するものであり、ストローク0.5〜1.5mmの間では直線性(ダイナミックレンジが80deg)が確保されたものとなる。
【0034】
また、磁気センサ1のDSP14は、通常は算出したαに比例した電圧V
ddを出力値として出力部16から出力するが、算出したαをメモリ140に予め用意された条件に基づいて以下に示す
図7のように変換した電圧V
ddを出力値として出力してもよい。
【0035】
図7は、磁気センサ1のDSP14が変換した電圧V
ddと角度αとの関係を示すグラフ図である。
【0036】
出力部16から出力される電圧V
ddは、角度αの範囲α
s−α
1、α
1−α
2、α
2−α
3、α
3−α
4、α
4−α
5、α
5−α
6、α
6−、を利用者が指定し、各範囲の傾きを指定することで決定される。この変換により、例えば、フューエルタンクの燃料面の高さと燃料残量との関係のように、ロッド3の変位と、ロッド3に接続された測定対象の変化量とが比例していない場合に対応することができる。
【0037】
次に、磁気センサ1のDSP14は、メモリ140に予め用意された条件に基づいて、温度センサ17から入力された温度Tに対応した補正値Δαを以下の
図8に示すように定める。
【0038】
図8は、補正値Δαと温度Tとの関係を示すグラフ図である。
【0039】
補正値Δαは、常温(T=25℃)の補正量を0とし、各温度の範囲の傾きを指定することで定められる。これは、変位検出装置7が置かれた環境の温度において、ばね5の自然長や弾性係数、ロッド3及びアクチュエータ4の初期位置及び変位、ホール素子11の磁気センサ1内における位置が変化し、磁石2と磁気センサ1との相対的な位置が変化することを考慮して定められたものである。
【0040】
次に、磁気センサ1のDSP14は、以下の
図9に示すように、算出したαにΔαを加算して、電圧V
ddに変換する。
【0041】
図9は、磁気センサ1のDSP14が変換した電圧V
ddと角度αとの関係を示すグラフ図である。
【0042】
図9に示すように、角度αと出力される電圧V
ddとの関係は、Δαを加算する前と比較して、
図7に示したグラフを横方向にΔαだけシフトしたものとなる。つまり、αの全範囲に対して傾きを変換したものではなく、スタートポイントであるα
sがα
s+Δαにシフトしたものとなる。
【0043】
(実施の形態の効果)
上記した実施の形態によれば、DSP14において算出された角度αに温度に依存する補正値Δαを加算するようにしたため、磁気部材である磁石2と、磁気センサ1のホール素子11
x1、11
x2、11
y1、11
y2との相対的位置が温度に依存して変化する場合にも、磁気センサ1の出力値を補正することができる。
【0044】
また、ホール素子が磁束密度に対して出力する信号は、常温から離れるほどに直線性が低下していくが、αの算出においてB
xとB
zとの比を用いているため、当該直線性の低下を相殺することができる。
【0045】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々な変形が可能である。
【0046】
上記嫉視の形態では、磁気部材としての磁石2がロッド3とともに変位する例を示したが、磁気センサ1の下に磁石を固定して、磁石2の代わりにロッド3とともに変位する軟磁性体を磁気部材として用意し、軟磁性体の変位によって変化する磁束密度の変化を磁気センサ1によって検出するようにしてもよい。また、磁石の形状や磁化方向も特に限定されるものではない。
【0047】
また、磁気センサ1は、磁界の角度を検出するものであれば磁気検出方向はx方向及びz方向に限るものではなく、任意の方向で検出が可能である。また、算出する磁界の角度はαに限られるものではなく、検出した方向に応じて適宜変更可能である。
【0048】
また、上記実施の形態では、温度に依存する補正値ΔαをDSP14においてαに加算したが、以下の
図10に示すように、温度に依存する補正値ΔVを出力部16において加算するようにしてもよい。
【0049】
図10は、磁気センサ1の出力部16が変換した電圧V
ddと角度αとの関係を示すグラフ図である。
【0050】
図10に示すように、角度αと出力される電圧V
ddとの関係は、ΔVを加算する前と比較して、
図7に示したグラフを縦方向にΔVだけシフトしたものとなる。なお、電圧V
1及びV
6は、ΔVだけシフトしていないが、これは実際にはΔVだけシフトした後、その後段に設けられるクランプ設定により出力される最小電圧V
1及び最大電圧V
6に制限されているためである。なお、
図9に示す例もクランプ設定により最小電圧V
1及び最大電圧V
6が制限されたものである。