【解決手段】埋込磁石型回転機100は、固定子1と、回転子2と、端面固定磁石3とを備える。回転子2は、固定子1の表面に沿って回転し、固定子1に対向する面よりも内側に配置された永久磁石である埋込磁石を有する。端面固定磁石3は、回転子2の軸方向における一方の端面に固定された永久磁石である。端面固定磁石3は、回転子2の軸方向における一方の端面に対向する面である対向面32に配置される磁極31A〜31Hを備える。磁極31A〜31Hは、端面固定磁石の周方向に沿って反時計回りに位置している。磁極31A,31C,31E,31Gに、回転子2の軸方向における一方の端面側から磁束が流入する。磁極31B,31D,31F,31Hには、回転子2の軸方向の一方の端面側に向かって磁束が流出する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
{埋込磁石型回転機100の構成}
図1は、本実施の形態に係る埋込磁石型回転機100の斜視図である。
図1に示すように、埋込磁石型回転機100は、固定子1と、回転子2と、端面固定磁石3と、回転シャフト9とを備える。埋込磁石型回転機100は、回転子2が固定子1の内周側で回転するインナーロータ型である。
図1では、回転子2の一方の端面側の1つの端面固定磁石3のみを示しているが、埋込磁石型回転機100は、2つの端面固定磁石3を備えている。端面固定磁石3の詳細については、後述する。
【0021】
固定子1は、固定子ヨーク11と、複数のティース12と、複数のコイル13とを備える。
図1において、一部のティース12及び一部のコイル13に対する符号の表示を省略している。固定子ヨーク11及びティース12は、例えば、電磁鋼板、圧粉材、アモルファス磁性材料などにより形成される。
【0022】
固定子ヨーク11は、回転シャフト9の方向に伸びる中空の円筒形である。ティース12は、固定子ヨーク11の内周面から回転シャフト9に向かって伸びる。コイル13をティース12に巻くことにより、ティース12の間に形成される空間(スロット)にコイル13が配置される。以下、回転シャフト9の伸びる方向を「軸方向」、軸方向に垂直な方向を「径方向」、回転シャフト9の回転中心を中心とした円の円周方向を「周方向」と記載する。
【0023】
図2は、
図1に示す回転子2及び端面固定磁石3の斜視図である。
図2に示すように、回転軸αは、回転シャフト9の中心軸である。回転子2は、回転子コア21と、磁石配置部22A〜22Hとを備える。回転子コア21は、軸方向に伸びる円筒形である。回転子コア21は固定子ヨーク11と同様に、電磁鋼板、圧粉材、アモルファス磁性材料などにより形成される。回転子コア21は、外周面が固定子1の内周面に対向し、かつ、回転軸αを中心に回転することができるように配置される。回転子コア21とティース12の先端との間には、所定の距離の隙間が形成される。
【0024】
磁石配置部22A〜22Hの各々において、2つの永久磁石が回転子コア21内に埋め込まれている。2つの永久磁石は、回転子コア21内において、軸方向から見てV字状となるように配置される。回転子2は、コイル13に通電することにより固定子1で発生する磁界と、回転子2内部に埋め込まれた永久磁石の磁界とにより発生するマグネットトルク及びリラクタンストルクで回転する。磁石配置部22A〜22Hの詳細については、後述する。
【0025】
上述のように、埋込磁石型回転機100は、2つの端面固定磁石3を備える。2つの端面固定磁石3は、環状の極異方性磁石であり、回転子コア21の軸方向における端面にそれぞれ固定される。例えば、端面固定磁石3は、接着剤等により、回転子2の軸方向における端面に固定される。端面固定磁石3は、周方向及び軸方向に着磁される。端面固定磁石3は軸方向において複数の面を有しており、回転子コア21と対向する面を対向面32と呼び、回転子コア21と対向せず、軸方向において対向面32と反対側に位置する面を露出面35と呼ぶ。端面固定磁石3における磁極の配置等については、後述する。
【0026】
{回転子2の構造}
図3は、
図2に示す回転子2を軸方向から見た正面図である。
図3に示すように、回転子2には、周方向に沿って磁石配置部22A〜22Hが形成される。
図3の上方に、磁石配置部22Aが配置され、磁石配置部22Aから反時計回りの順に、磁石配置部22B〜22Hが配置される。
【0027】
磁石配置部22A〜22Hは、各々に配置される2つの永久磁石における磁極の向き以外については、同様の構造を有する。このため、磁石配置部22Aを例にして、磁石配置部の構造を説明し、その後、磁石配置部22A〜22Hの各々に配置される永久磁石の磁極の向きについて説明する。
【0028】
図3に示す回転子2において、磁石配置部22Aには、回転子コア21を軸方向に貫通する2つの磁石挿入空間23が形成される。2つの磁石挿入空間23およびその断面形状は、回転軸αを通り、径方向に伸びる直線L1に関して線対称となる位置に形成される。すなわち、2つの磁石挿入空間23は、回転子2の軸方向から見てV字状となるように形成される。
【0029】
図3において、破線で示すブロック矢印は、磁石配置部22A〜22Hの各々に配置された永久磁石の着磁方向を示す。磁石配置部22Aにおいて、2つの永久磁石24Aは、N極が回転子コア21の外周面を向くようにそれぞれ配置される。同様に、磁石配置部22C,22E,22Gの各々において、2つの永久磁石24C、2つの永久磁石24E、及び2つの永久磁石24Gは、それぞれ、N極が回転子コア21の外周面を向くように配置される。一方、磁石配置部22B,22D,22F,22Hの各々において、2つの永久磁石24B、2つの永久磁石24D、2つの永久磁石24F、及び2つの永久磁石24Hは、それぞれ、S極が回転子コア21の外周面を向くように配置される。
【0030】
{端面固定磁石3の構造}
図4は、
図2に示す端面固定磁石3を回転子2の軸方向から見た場合における端面固定磁石3の対向面32を示す図である。
図4に示すように、端面固定磁石3は磁極31A〜31Hを有しており、この磁極31A〜31Hは対向面32に位置する。なお、
図4において、磁極31A〜31Hを示す破線領域は、磁極31A〜31Hの大まかな範囲を示しており、磁極が破線領域内に限定されることを示すものではない。
【0031】
以下に磁極配置の一例を挙げる。磁極31A,31C,31E,31GをN極とした場合、磁極31B,31D,31F,31HをS極として、各磁極が周方向に沿って交互に配置される。またN極・S極の磁極配置は上記に限定されるものではない。
【0032】
図5は磁極の配置を
図4とした場合に、回転子コア21から端面固定磁石3を軸方向に見たときの端面固定磁石3における磁束の向きを示す図である。
図5に示すように、端面固定磁石3は、磁極31Bから、磁極31A及び31Cの各々に向かって周方向に着磁される。同様に、端面固定磁石3は、磁極31Dから磁極31C及び31Eの各々に向かって着磁され、磁極31Fから磁極31E及び磁極31Gの各々に向かって着磁され、磁極31Hから磁極31G及び磁極31Aの各々に向かって着磁される。つまり、端面固定磁石3において、対向面32に形成されたS極からN極に向かう磁束33が形成される。ここで述べる磁束33とは「磁束の向き」を指しており、磁束自体を表現するものではないが、模式的に磁束として表現している。
【0033】
図6は、
図4に示す端面固定磁石3のA−A断面を示す図である。
図6に示すように、磁束33は回転軸α方向に対して向きを変えながら、対向面32に沿って形成されたS極からN極に向かう。つまり磁束33は、端面固定磁石3内の対向面32を起点及び終点として、端面固定磁石3においてU字状の経路を形成する。
【0034】
このように端面固定磁石3において、磁極31A〜31Hは対向面32側に形成されるため、磁極31A〜31Hと回転子コア21との間で磁束が形成される。一方、露出面35側には磁極が形成されないため、回転子コア21と露出面35との間で磁束は形成されない。
【0035】
端面固定磁石3は、例えば、以下のようにして製造される。最初に、
図4に示すように、周方向に沿った磁束を形成する環状の極異方性磁石が製造される工程を記載する。具体的には、環状の極異方性磁石の金型に磁粉を充填し、金型の外周側の側面にコイルを配置する。コイルは、磁極31A〜31Hに対応する位置に配置される。その後、コイルにパルス電流を印加して磁場を発生させる。磁極31A〜31Hの位置に応じて、コイルに流れるパルス電流の向きが変更される。これにより、磁場の方向が周方向に沿って配向された環状の極異方性磁石が製造される。この時点では、環状の極異方性磁石の軸方向側の一方の端面(対向面35に相当)に、磁極31A〜31Hは形成されていない。
【0036】
次に、磁極31A〜31Hの形成工程を記載する。上記のように製造された極異方性磁石の軸方向における端面の上方に、コイルを配置する。コイルは、磁極31A〜31Hに対応する位置に配置される。配置されたコイルにパルス電流を印加する。磁極31A〜31Hの位置に応じて、コイルに流れるパルス電流の向きが変更される。これにより、磁極31A〜31Hを備える端面固定磁石3が製造される。
【0037】
ただし、端面固定磁石3を、上述した製造方法以外の方法により製造してもよい。すなわち、
図5及び
図6に示すような磁束33を有し、磁極31A〜31Hが対向面32に形成され、露出面35に磁極が形成されない端面固定磁石3を製造することができれば、端面固定磁石3の製造方法は特に限定されない。
【0038】
{回転子2と端面固定磁石3との位置関係}
図7は、
図3に示す回転子2の領域R1における拡大図である。
図7に示すように、
図3に示す回転子2における磁石配置部22Aと、
図4に示す端面固定磁石3の磁極31Aとの位置関係を説明する。
【0039】
2つの永久磁石24Aが、上述したように、磁石配置部22Aに形成された2つの磁石挿入空間23にそれぞれ挿入される。2つの永久磁石24Aは、N極が回転子コア21の外周面を向くように挿入される。
図7に示す矢印は、2つの永久磁石24Aの各々の着磁方向を示す。
【0040】
端面固定磁石3は、端面固定磁石3の対向面32が回転子コア21の軸方向における一方の端面に接触するようにして固定される。回転子2を軸方向から見た場合に、対向面32に形成されている磁極31Aが、磁石配置部22Aにおける2つの永久磁石24Aの間に位置するように配置される。また、端面固定磁石3の磁極31B〜31Hも同様に配置されるため、2つの永久磁石間に位置する端面固定磁石3の各磁極は、それぞれ磁石配置部における回転子コア21の外周面を向いている磁極と一致する。
【0041】
{マグネットトルクの発生}
以下、
図8を参照しながら、マグネットトルクについて説明する。
【0042】
図8は、埋込磁石型回転機100における磁束の流れを模式的に示す図である。
図8において、端面固定磁石3の磁束の経路をわかりやすく示すために、軸方向における回転子2の一方の端面21Aのみを示している。また
図8において、一部の磁石配置部及び永久磁石に対する符号の表示を省略している。以下、
図8を参照しながら、端面固定磁石3の磁極31Aから固定子1及び回転子2を経由して、端面固定磁石3に戻るまでの磁束の経路を説明する。
【0043】
磁束51の一部は、磁極31Aから回転子2の磁石配置部22Aにおける2つの永久磁石24Aの間の領域に向かって流れる。ここで述べる磁束51、および後述する磁束52〜55は「磁束の向き」を指すものであり、磁束33と同様に、模式的に磁束として表現している。
【0044】
磁石配置部22Aにおいて、2つの永久磁石24AのN極が、回転子コア21の外周面を向くように配置されている。このため、磁束51は、2つの永久磁石24Aの間の領域から、固定子1に向かって流れる。以下、固定子1に向かって流れる磁束51を、磁束52と記載する。磁束52は、固定子1と回転子2との間のエアギャップを通り、固定子1のティース12に向かって流れる。その後、磁束52は、ティース12から固定子ヨーク11及び他のティース12を通り、固定子1と回転子2とのエアギャップを通り、回転子2に再び向かう。回転子2に再び向かう磁束52の一部は、磁石配置部22Bにおける2つの永久磁石24Bの間の領域に流れる。以下、固定子1から2つの永久磁石24Bの間の領域へ流れる磁束52を、磁束53と記載する。
【0045】
磁束53は、2つの永久磁石24Bの間の領域から、磁極31Bに向かって流れる。つまり、磁束51の一部は、磁極31A、磁石配置部22A、固定子1、磁石配置部22Bを経由して、磁極31Bに流れる磁束を形成する。同様に、端面固定磁石の磁極31C、31E、31Gから発する磁束の一部は、それぞれ、磁石配置部22C、22E、及び22Gを通る。そして、これらの磁束は、固定子1と、磁石配置部22B、22D、22F、および22Hのいずれかを経由して、端面固定磁石3に流れる磁束を形成する。
【0046】
{リラクタンストルクの発生}
以下、
図9を参照しながら、埋込磁石型回転機100におけるリラクタンストルクの発生について説明する。その後、埋込磁石型回転機100が端面固定磁石3を備えることにより、リラクタンストルクの減少を抑制するメカニズムを説明する。
【0047】
図9は、
図1に示すコイル13によって生ずる磁束の回転子2における流れを模式的に示す図である。以下、コイル13によって生ずる磁束を、固定子1で発生する磁束と表記する。
図9は
図3と同様に、軸方向から回転子2を見た正面図に相当する。また、
図9において、磁石配置部22A〜22H及び磁石挿入空間23の符号の表示を省略している。
【0048】
図9において磁束61は、固定子1で発生する磁束のうち回転子2のq軸方向に流れる磁束であり、磁束62は、回転子2のd軸方向に流れる磁束である。
【0049】
磁束61は、回転子2の軸方向から見たV字に沿って流れる。つまり、磁束61は、回転子2において、パーミアンスが大きい回転子コア21の部分(q軸)を流れる。具体的に述べると
図9に示すように、例えば磁束61は、2つの永久磁石24Aで形成されるV字状の内側(図示なし)および外側の領域において、それぞれV字状に沿って流れる。
【0050】
一方で磁束62は、回転子2において各々V字状をなす永久磁石24A〜24Hの隣り合う一方の永久磁石同士を通るように流れる。具体的には
図9に示すように、例えば、磁束62は、永久磁石24Aと永久磁石24Bとを通るように流れる。つまり、磁束62は、パーミアンスが小さい領域(d軸)を流れる。
【0051】
磁束62は磁束61と比べて、回転子2においてパーミアンスが小さい領域(d軸)を流れる。先に述べたように、このd軸方向のインダクタンスの増加を抑制することで、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスの差が大きくなり、結果、リラクタンストルクを大きくすることができる。
【0052】
次に、埋込磁石型回転機100が端面固定磁石3を備えることにより、リラクタンストルクの減少を抑制することができる理由を説明する。
【0053】
特許文献1記載の埋込磁石型回転機のように、回転子2の軸方向における端面に永久磁石が固定され、軸方向においてこの永久磁石と対向し、かつ接触したパーミアンスが大きいロータヨークが配置された場合を考える。この場合、d軸方向に流れる磁束62は、
図9に示す破線矢印に沿って流れるだけではなく、回転子2の軸方向端面に固定された永久磁石と、ロータヨークとを流れることになる。
図9に示すように例えば磁束62は、V字状をなす2つの永久磁石24Bの間の領域から、端面に固定された永久磁石を通ってロータヨークへ流れる。ロータヨークへ流れた磁束62は、端面に固定された永久磁石を通り、2つの永久磁石24Aの間の領域に流れる磁束を形成する。
【0054】
このように従来の埋込磁石型回転機では、d軸方向に関して2つの磁気回路によって並列回路が形成され、この並列回路のパーミアンスは、2つの磁気回路の各々のパーミアンスよりも大きい。磁気回路全体のパーミアンスが大きくなると、d軸インダクタンスは増加するため、d軸方向のインダクタンスとq軸方向のインダクタンスとの差が小さくなる。この結果、従来の埋込磁石型回転機では、ロータヨークを設けることに伴ってリラクタンスが低下する。
【0055】
しかし、本発明の埋込磁石型回転機100においては、ロータヨークを設ける必要がない。よって、上述のような並列回路が形成されないため、d軸方向のインダクタンスの増加が抑制される。結果、d軸方向のインダクタンスとq軸方向のインダクタンスの差が維持されるため、リラクタンストルクの低下を防ぐことができる。
【0056】
また、従来の埋込磁石型回転機では、回転子2のd軸方向におけるインダクタンスが増加する。インダクタンスの増加は、コイル13における電流と電圧との位相差を90°に近づける方向に働く。この結果、従来の埋込磁石型回転機では、力率が低下する。一方、埋込磁石型回転機100では、インダクタンスの増加が抑制されるため、従来の埋込磁石型回転機に比べて力率の低下が抑制される。
【0057】
また、従来の埋込磁石型回転機では、回転子2の永久磁石24A〜24Hと、ロータヨークを通る磁束が短絡することがある。短絡した磁束は固定子1に向かわないため、従来の埋込磁石型回転機ではマグネットトルクは低下する。一方、本発明の埋込磁石型回転機100ではロータヨークが設けられないため、回転子2の永久磁石24A〜24Hとロータヨークとの間で磁束が短絡することが抑制される。従って本発明の埋込磁石型回転機100は、従来の埋込磁石型回転機に比べてマグネットトルクを有効に利用することができるため、高出力及び高効率で駆動することが可能となる。
【0058】
{変形例}
なお、上記実施の形態において、端面固定磁石3が環状の極異方性磁石である場合を説明したが、これに限られない。円弧形状の複数の極異方性磁石を環状に配列することにより、端面固定磁石3を構成してもよい。
図10Aは、中心角が90度の円弧状の極異方性磁石61を示す図である。
図10Bは、
図10Aに示す極異方性磁石61におけるB−B断面図である。
【0059】
図10Aに示すように、極異方性磁石61は、磁極61A〜61Cを有する。磁極61A〜61Cは、軸方向における回転子コア21の端面に対向する対向面65に位置する。磁束33が、磁極61Bから61Aに向かって形成され、磁極61Cから磁極61Aに向かって形成される。従って、磁束33は、極異方性磁石61の周方向に沿って流れる。
図10Bに示すように、磁束33は周方向に沿って形成されるだけでなく、軸方向に関してU字を描くようにして形成される。従って、4つの極異方性磁石61を環状に配列することにより、
図4及び
図5に示す磁束33を形成する端面固定磁石3を構成することができる。
【0060】
また、極異方性磁石を用いることなく、端面固定磁石3を構成してもよい。例えば、端面固定磁石3は、直線状に着磁された永久磁石を複数用いてハルバッハ配列を形成することにより構成してもよい。
図11は、ハルバッハ配列で構成した場合の端面固定磁石3の断面図である。
図11に示す断面図は、
図4に示すA−A断面図に対応する。
【0061】
図11に示すように、端面固定磁石3は、永久磁石71〜77を含む複数の永久磁石により構成される。永久磁石71〜77の各々における矢印は、着磁方向を示す。永久磁石は、それぞれ直線状に着磁される。永久磁石71は、磁極31Bから磁極31Cに向かう磁束33を形成するため、着磁方向が磁極31Bから磁極31Cに向く方向(
図11では、左向き)となるように配置される。
【0062】
永久磁石72は、磁極31B(S極)に対応し、着磁方向が対向面32から露出面35に向く方向(
図11では、下向き)となるように配置される。永久磁石73は、磁極31Bから磁極31Aに向かう磁束33を形成するため、着磁方向が磁極31Bから磁極31Aに向く方向(
図11では、右向き)となるように配置される。なお、図示はしていないが、永久磁石72と永久磁石73との間には、右斜め下向きの磁束が形成される。換言すれば、永久磁石72の着磁方向と永久磁石73の着磁方向の間の経路を補完するように磁束が形成される。
【0063】
永久磁石74は、磁極31A(N極)に対応し、着磁方向が露出面35から対向面32に向く方向(
図11では、上向き)となるように配置される。永久磁石75は、磁極31Hから磁極31Aに向かう磁束33を形成し、着磁方向が磁極31Hから磁極31Aに向かう方向(
図11では、左向き)となるように配置される。
【0064】
永久磁石76は、磁極31H(S極)に対応し、着磁方向が対向面32から露出面35に向く方向(
図11では、下向き)となるように配置される。永久磁石77は、磁極31Hから磁極31Gに向かう磁束33を形成し、着磁方向が磁極31Hから磁極31Gに向く方向(
図11では、右向き)となるように配置される。
【0065】
このように、直線状に着磁された永久磁石を複数用いてハルバッハ配列を形成することにより、端面固定磁石3を構成することができる。なお、
図11では、ハルバッハ配列の分割数が3である場合を示しているが、分割数は4以上であってもよい。ハルバッハ配列により端面固定磁石3を構成する場合、直線状に着磁された永久磁石の数は、分割数に応じて変化する。この構成を採用することにより、用途に応じて適宜変更可能であり、設計自由度が向上する。
【0066】
また、上記実施の形態において、端面固定磁石3が環状である場合を説明したが、これに限られない。端面固定磁石3における外周の形状及び内周の形状は、多角形であってもよい。つまり、端面固定磁石3は、軸方向における回転子2の端面に固定され、回転子2の端面側から磁束が流入するS極と、回転子2の端面側に向かって磁束が流出するN極と、S極からN極に向かう磁束とを有していればよい。
【0067】
また、上記実施の形態において、端面固定磁石3の全体が露出している例を説明したが、これに限られない。例えば、非磁性体からなる保持部材を用いて、端面固定磁石3の少なくとも一部を覆うようにしてもよい。
【0068】
図12は、保持部材4が装着された端面固定磁石3を示す図である。
図12に示すように、保持部材4は、端面固定磁石3の周方向側の側面と、露出面35との一部を覆うように端面固定磁石3に装着される。保持部材4は、非磁性体で形成される。
【0069】
コイル13で生ずる磁束61は、この保持部材4を用いた場合であっても、保持部材4が非磁性体で形成されるため、上記実施の形態と同様に、リラクタンストルク及びマグネットトルクの低下を抑制することができる。また、端面固定磁石3とともに保持部材4を回転子コア21に固定することにより、端面固定磁石3の回転子2に対する固定強度を高めることができるとともに、端面固定磁石3が、回転子2から外れることを防ぐことができる。また、回転子2の回転により端面固定磁石3が破損した場合であっても、破損した端面固定磁石3の飛散を防ぐことができる。
【0070】
また、上記実施の形態において、2つの端面固定磁石が、軸方向における回転子2の2つの端面の両方にそれぞれ固定される例を説明したが、これに限られない。この場合、1つの端面固定磁石が、軸方向における回転子2の2つの端面の一方のみに固定されていてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態において、埋込磁石型回転機100がインナーロータ型である例を説明したが、埋込磁石型回転機100は、回転子2が固定子1の外周側で回転するアウターロータ型であってもよい。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。