(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-143812(P2017-143812A)
(43)【公開日】2017年8月24日
(54)【発明の名称】銀杏ジャムの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 21/12 20160101AFI20170728BHJP
【FI】
A23L1/064
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-30206(P2016-30206)
(22)【出願日】2016年2月19日
(71)【出願人】
【識別番号】508030741
【氏名又は名称】愛知西農業協同組合
(74)【代理人】
【識別番号】100097434
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和久
(72)【発明者】
【氏名】磯村 覚
【テーマコード(参考)】
4B041
【Fターム(参考)】
4B041LC01
4B041LD04
4B041LK11
4B041LK26
4B041LK30
4B041LP01
4B041LP03
(57)【要約】
【課題】銀杏の実を主成分とし、団子状に固結させることなくゼリー化させた銀杏ジャムを製造する。
【解決手段】薄皮を除去した銀杏の実11を予備的に分割又は破砕し、これに、適量の水を加えて攪拌し、その水の中で、分割又は破砕素材21を微細に分割する微細分割工程を経て微細分割素材含有混合水31を得る。その後、該微細分割素材含有混合水31を加熱して煮炊きし、その加熱、煮炊き工程で適量の糖及び酸を添加してさらに加熱、煮炊き工程を継続してゼリー化させる。水を加えずに実を微細に分割するのではなく、分割素材に適量の水を加え、水中でそれを攪拌して微細に分割しているため、その状態にある微細に分割されている銀杏の実は、団子状に固結することがない。よって、このような微細分割素材含有混合水31を煮炊きし、糖及び酸を添加して煮炊きすることでゼリー化した銀杏ジャム41となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄皮を除去した銀杏の実に適量の水を加えて攪拌し、該実を微細に分割する微細分割工程を経ることによって微細分割素材含有混合水を得た後、
該微細分割素材含有混合水を加熱して煮炊きし、その加熱、煮炊き工程において適量の糖及び酸を添加し、さらに加熱、煮炊き工程を継続することによってゼリー化させる工程を含むことを特徴とする、銀杏ジャムの製造方法。
【請求項2】
薄皮を除去した銀杏の実を予備的に分割又は破砕し、この予備的に分割又は破砕してなる分割又は破砕素材に適量の水を加えて攪拌し、該分割又は破砕素材を微細に分割する微細分割工程を経ることによって微細分割素材含有混合水を得た後、
該微細分割素材含有混合水を加熱して煮炊きし、その加熱、煮炊き工程において適量の糖及び酸を添加し、さらに加熱、煮炊き工程を継続することによってゼリー化させる工程を含むことを特徴とする、銀杏ジャムの製造方法。
【請求項3】
銀杏の実は、蒸すか茹でることによる加熱工程後に薄皮を除去することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の銀杏ジャムの製造方法。
【請求項4】
前記加熱、煮炊き工程中、適量の糖及び酸を添加する前に、発生する灰汁を除去する灰汁除去工程を含めたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀杏ジャムの製造方法。
【請求項5】
前記糖の添加は、複数回に分けて行うと共に、製造される銀杏ジャムの糖度が40度以上となるように、該糖の全量を設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀杏ジャムの製造方法。
【請求項6】
前記酸の添加は、糖度が30度〜35度の範囲内にあるときに行うことを特徴とする請求項5に記載の銀杏ジャムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀杏(ぎんなん)を主成分とするジャムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食用に供せられる銀杏は、その最内部に位置する子葉を含む胚乳と、この胚乳を包囲する薄皮(渋皮)と、この薄皮を包囲する堅い殻と、この殻を包囲する最外側の実とからなるが、一般に、食用に供せられるのは、子葉を含む胚乳の部分、又は薄皮付の子葉を含む胚乳の部分てある。そして、銀杏は、通常、最外側の実を除去してなる殻付きの粒体として流通されている。したがって、本願において、「銀杏」というときは、最外側の植物学上の実を除去してなる殻付きの粒体を指称し、「銀杏の実」又は「実」というときは、その殻を除去した状態の粒体(薄皮付の子葉を含む胚乳、又は、薄皮を除去した子葉を含む胚乳)を指称するものとする。
【0003】
従来、銀杏は自然食品として各種の料理に利用されており、その実の栄養価も高いことから健康食品として見直されている。一方、その食べ方は、炙ったり焼いたりして、その殻をむき、さらには薄皮を剥いて塩等をまぶして食されるか、殻および薄皮を剥いた実を煮込み、吸い物の具として食される、というのが殆どである。実際、それ以外の食べ方は一般には知られていないし、銀杏の実の加工食品なるものも殆ど流通していない。
【0004】
こうした中、その加工食品である、銀杏の実を用いた餡(あん。以下、銀杏餡)があり、その製造方法が提案されている(特許文献1)。この銀杏餡は、薄皮(渋皮)を剥いて除去し、蒸すか茹でるかした実を、さらに加圧下で茹で、その後、その実をミンチ機、ミキサー、或いはロボクープで細かく刻み、裏ごしして、熱水を加えてペースト状とし、その後、砂糖等の糖を添加して煮炊きすることで得られる、とされている。
【0005】
また、銀杏餡の別の製造方法としては、殻付きの実を茹でる工程と、その後で、殻を割って薄皮(渋皮)を剥いで、糖分を加えて茹で、その後、水を加えて煮崩れるまで茹でた後で、ペースト状とし、その後、蜂蜜を加えて練る等の方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−234305号公報
【特許文献2】特開2011−62192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2には、その製造方法を経ることにより、ペースト状の銀杏餡が得られるとされているが、いずれも、それは、あくまでも銀杏餡(あん)という食材であり、銀杏を主成分とするジャム(銀杏ジャム)ではない。ここに、ジャムとは、JASによれば、炭水化物であり、糖、酸、及びペクチンの作用により、ゼリー化するまで加熱してなるもので、糖度40度以上のものと定義されている。また、餡とジャムとは、餡(ペースト)が水中に浸漬された際に、それ自体が酸を含まない非ゼリー化のものであるために分散してしまうのに対し、ジャムは水中に浸漬されてもゼリー化されているために分散しない、点でも異なるものとして認識されている。そして、通常のジャムは、ジャムをなす主成分(例えば、イチゴ、ミカン、トマト等)に、砂糖等の糖(糖類)を要求される糖度に応じて添加し、クエン酸(例えばレモン汁)等の酸を適量、添加して、加熱し煮炊きし、その後の冷却することで製造される。
【0008】
ところで、上記銀杏餡はそれがペースト状の食材である点においてジャムと共通するところがある。しかし、特許文献1に開示されているその製法におけるように、銀杏の薄皮を除去し、その後、その薄皮除去後の実を例えば粒状又は粉状に微細に分割し、その後、これを網目を通して裏ごししてペースト状にし、その後、ペースト状としたものに熱水を添加し、糖を加えて煮炊きすることで得られる、とあるところ、その食材(餡)の製法中においては、次のような課題がある。というのは、銀杏の実を粒状又は粉状に分割した後、網目を通して裏ごししてペースト状とすると、そのペーストを構成する微小な粒又は粉同士が有する独特の粘度によって、それらが結合して団子状態に固結しがちであるという問題である。そして、一たん、このような団子状態となったものに熱水をかけ、或いはこのものを熱水中に入れて煮炊きし(水分を無くし)たとしても、その煮炊き対象物の全体が柔軟なペースト状の餡とはならず、多数の固結した団子塊が混在するペースト状のものとなってしまう。こうしたことから、銀杏の実は、通常のジャムの製法によっては、これを例えその煮炊き過程で、酸を添加したとしても所望とするゼリー化されたジャムとして製造することはできないとされていた。このように、例え、銀杏餡がペースト状の食材であり、ジャム類と類似の食材であるとしても、上記製法により製造された銀杏餡は、単に、ゼリー化していないというだけでなく、その餡中には、その製造過程(分割過程)での素材をなすべき銀杏の実の粉又は粒が固結した多数の団子塊を含むものとなる。こうしたことから、銀杏の実を上記した通常のジャムと同様の製法で製造したとしても、ジャムとは似て非なる食感の食材となる。
【0009】
また、特許文献2に開示されているその製法にて銀杏餡を製造する場合においても、銀杏は、その性質上、その粒状の実に、砂糖等の糖類及び水を添加し、加熱し、煮炊きしても、その粒(銀杏の実)の状態が煮崩れしないだけでなく、その粒の状態において固化してしまうという問題がある。このため、この製法においても、その煮炊き過程で、クエン酸等の適度の酸を添加してもゼリー化させることはできない。また、このように煮炊きした後、灰汁を除去して、すり鉢内ですりおろしてペースト状したとしても、やはり、全体が柔軟な餡とはならない。そればかりか、多数の固結した団子塊が混在するペーストとなってしまう。このようなことから、従来は、銀杏の実を主成分とするジャムは得られないものとされていた。
【0010】
こうした中、本願発明者は、銀杏の実を主成分とするペースト状の食材でありながら、多数の固結した団子塊が発生、混在することのない食材であって、ゼリー化しているジャム(銀杏ジャム)を得るべく、鋭意、研究、開発を重ねてきたところ、所定の工程を経ることで、そのような団子塊の発生、混在を招くことを防止でき、銀杏の実を主成分としてゼリー化させたジャムが得られることを知るに至った。本発明は、かかる知見に基づいて得られたものであり、銀杏を主成分とする銀杏ジャムの好適な製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために請求項1に記載の本発明にかかる銀杏ジャムの製造方法は、薄皮を除去した銀杏の実に適量の水を加えて攪拌し、該実を微細に分割する微細分割工程を経ることによって微細分割素材含有混合水を得た後、
該微細分割素材含有混合水を加熱して煮炊きし、その加熱、煮炊き工程において適量の糖及び酸を添加し、さらに加熱、煮炊き工程を継続することによってゼリー化させる工程を含むことを特徴とする。
請求項2に記載の本発明にかかる銀杏ジャムの製造方法は、薄皮を除去した銀杏の実を予備的に分割又は破砕し、この予備的に分割又は破砕してなる分割又は破砕素材に適量の水を加えて攪拌し、該分割又は破砕素材を微細に分割する微細分割工程を経ることによって微細分割素材含有混合水を得た後、
該微細分割素材含有混合水を加熱して煮炊きし、その加熱、煮炊き工程において適量の糖及び酸を添加し、さらに加熱、煮炊き工程を継続することによってゼリー化させる工程を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の本発明は、銀杏の実は、蒸すか茹でることによる加熱工程後に薄皮を除去することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の銀杏ジャムの製造方法である。
請求項4に記載の本発明は、前記加熱、煮炊き工程中、適量の糖及び酸を添加する前に、発生する灰汁を除去する灰汁除去工程を含めたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀杏ジャムの製造方法である。
【0013】
請求項5に記載の本発明は、前記糖の添加は、複数回に分けて行うと共に、製造される銀杏ジャムの糖度が40度以上となるように、該糖の全量を設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀杏ジャムの製造方法である。
請求項6に記載の本発明は、前記酸の添加は、糖度が30度〜35度の範囲内にあるときに行うことを特徴とする請求項5に記載の銀杏ジャムの製造方法である。
【0014】
本発明において、銀杏の実について、これを微細に分割するとは、ミキサー、フードカッタ−の様な調理機械(調理機器)を用いて、実、又はこれを分割又は破砕してなる分割又は破砕素材に、適量の水を添加して攪拌等することによって微細に分割することをいい、実、又はこれを分割又は破砕してなる分割又は破砕素材の状態において、水を添加することなく微細に分割することを含まない。
【発明の効果】
【0015】
上記したように、銀杏の実は、その加熱の前後にかかわらず、これを水を加えることなく、微細に分割すると、その実がもつ独特の粘度により、相互に結合しがちであるという性質があり、これをミキサー等に投入し、水を加えることなくミキシング(攪拌)して微細に分割しようとすると、一旦は、微細に分割されても直ぐに、団子状に固結(固化)して塊となってしまう。そして、このように固結すると、いくら煮込んでも、その団子(塊)状態を煮崩すことができない。これに対し、本発明では、銀杏の実に適量の水を加えて攪拌し、該実を微細に分割する微細分割工程を経ること、又は銀杏の実を予備的に分割又は破砕し、この予備的に分割又は破砕してなる分割又は破砕素材に適量の水を加えて攪拌し、該分割又は破砕素材を微細に分割する微細分割工程を経ること、としている。このように本発明では、その正確なメカニズムは分からないが、微細に分割した際でも、その分割後の微細分割素材は水中にあることで、団子状に固結(固化)して塊となることが防止される。これは、水が、粘度を低下させ、結合を防止していると考えられる。そして、このような微細分割素材含有混合水を得たで後、該微細分割素材含有混合水を加熱して煮炊きし、その加熱、煮炊き工程において適量の糖及び酸を添加し、さらに加熱、煮炊き工程を継続することによって、団子状に固結(固化)して塊となることもなく、ゼリー化したジャムが得られることになった。
【0016】
本発明において、微細分割素材含有混合水を得るにあたっては、請求項1に記載のように、薄皮を除去した銀杏の実に適量の水を加えて攪拌し、該実を微細に分割する微細分割工程を経ることによることとしてもよいが、請求項2に記載のように、薄皮を除去した銀杏の実を予備的に分割又は破砕し、この予備的に分割又は破砕してなる分割又は破砕素材に適量の水を加えて攪拌し、該分割又は破砕素材を微細に分割する微細分割工程を経ることによることとするのがよい。なお、実を予備的に分割又は破砕するのは、複数回の工程(複数の工程)において行うこととしてもよい。このように、実を予備的に粗目に分割又は破砕した後で、水中で微細に分割することとすることにより、団子状の固結がより発生しにくい結果が得られた。また、このように、銀杏の実を予備的に分割又は破砕しておくことで、微細に分割する微細分割工程の短時間化が図られ、製造工程全体としてもその短時間化が図られる。なお、微細に分割された実は、粉体、粒体、又は樹枝状、フレーク状などの形態として細分化されたものや、これらの混合体も含む集合体であるが、これら以外の形態を呈するものとして細分化されたものの集合体でもよい。また、粒体等はミクロ的(微視的)なものでも、それらの形態が肉眼で見分けられる程度のものでもよい。そして、微細に分割された実は、その中に適度に粗目のものが含まれていてもよい。すなわち、微細に分割する微細分割工程を経ることによって得られる微細分割素材含有混合水中には、その中に適度に粗目のものが含まれていてもよい。
【0017】
銀杏の実の薄皮の除去は、請求項3に記載の本発明のように、蒸すか茹でた後で行うのが、その過程において剥離現象が発生することから、容易となり好ましい。なお、蒸すか茹でるかは、殻を割って除去した実の状態において行うのが好ましい。また、前記加熱、煮炊き工程中においては、請求項4に記載の本発明のように、適量の糖及び酸を添加する前に、発生する灰汁を除去する灰汁除去工程を含めるとよい。そして、前記糖の添加は、請求項5に記載の本発明のように、複数回に分けて行うと共に、製造される銀杏ジャムの糖度が40度以上となるように、該糖の全量を設定するのがよい。さらに、前記酸の添加は、糖度が30度〜35度の範囲内にあるときに行うのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の製造方法を具体化した実施の形態例を説明する工程図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る銀杏ジャムの製造方法を具体化した実施の形態例について、
図1の工程図を参照しながら説明する。ただし、本例では、薄皮を除去した銀杏の実を出発素材11として説明する。このような出発素材11は、殻を割って得た薄皮付きの銀杏の実を、鍋内の沸騰する熱湯中に投入して茹でることにより容易に得られる。すなわち、このようにすることで、熱湯中で薄皮が自然剥離しだすことから、その開始後の適当時間後に例えばザルにて取り出すことで、その薄皮は容易に剥ける。本例では、薄皮の無い実を、1kg(950g〜105gの範囲内)用意し、これを出発素材11とする。なお、使用する砂糖は所望とする糖度が得られるように、その種類、量(重量)を設定すればよいが、本例ではジャムにおける目標の糖度(最終糖度)を45度とし、使用する砂糖は、グラニュー糖で、1.9kg(1850g〜1950gの範囲内)とし、また、添加剤である酸としてはレモン果汁を用い、20g(18g〜22gの範囲内)とする。
【0020】
次に、このような出発素材(薄皮を剥いた実)11を、本例では、最初の予備的な分割工程(分割又は破砕の工程)として、粗目(3〜6mm角程度)の粒状に、分割又は破砕(以下、単に分割ともいう)する。これにより分割又は破砕素材21を得る。この分割は、薄皮を剥いた実を、適度に潰し、或いはそのままで軽くミキサーにかけることとしてもよい。なお、この段階では、米粒大程度の粒か、米粒程度の太さ(短径)のタブレット状のものに分割するのがよいが、その太さを厚さとするフレーク状のものとしても、その太さの樹枝状のものとしてもよい。いずれにしても、大気中で微細な粒径の粉体(粉)とすると、銀杏の実の持つ独特の粘度に基づき、団子状に固結するため、そのような固結を招かない程度の粗目に、分割すればよい。
【0021】
次に、このように、粗目に分割又は破砕することで得られた銀杏の実、すなわち、分割又は破砕素材21をミキサー(図示せず)の攪拌槽に移し、その槽内に適量の水(例えば、2.5リットル)を加える。そして、ミキサーを稼働して攪拌し、該分割又は破砕素材21をその水中にて微細に分割し、このような攪拌、微細分割工程を経ることによって微細分割素材含有混合水31を得る。この攪拌(ミキシング)においては、なめらかな食感のジャムを得るため、素材21ができるだけ、微細な粒径の粉体になるようにするのがよい。そして、このように、素材が微細な粒径の粉体になるとしても、水中での攪拌、分割のため、その粉体相互が団子状に固結することはない。すなわち、室内において、銀杏の実を単に、粉体にする場合には、銀杏特有の粘度により、団子状に固結するという問題があるのに対し、水中での攪拌をしながらの分割、粉砕になるため、団子状に固結することもなく、その粉体を含有する微細分割素材含有混合水31として保持される。
【0022】
続いて、このような微細分割素材含有混合水31を適当な鍋(図示せず)に移し、加熱、沸騰させて煮炊きする。この加熱、煮炊き工程においては、その過程で発生し、浮遊する灰汁(アク)をすくい取り除去するのがよい。そして、その除去後の加熱、煮炊き工程において、所定の煮炊き時間後、所定量の砂糖を投入し、引き続き加熱、沸騰させながら、要すれば攪拌をする。この砂糖の投入は、一括投入でもよいが、本例では、まず3/4を投入して、加熱、攪拌を継続して糖度を30度まで引き上げ、その段階(糖度が30〜35度の範囲内にあるとき)において、酸としてレモン果汁を所定量、投入し、加熱、攪拌を続ける。そして、加熱、攪拌を続けながら、砂糖を残り1/4投入し、糖度を40度に高めると共に、水分が適量にまで減少し(煮詰められ)、ゼリー化するまで加熱を続ける。この加熱、煮炊き工程では焦げ付きが発生しないように注意する。なお、要すれば、糖度を45度にしたいときは、さらに、別途、砂糖を添加して、加熱、攪拌をすればよい。
【0023】
かくして、微細分割素材含有混合水31が加熱、煮炊き工程を経ることによってゼリー化することで製造され、得られた食材は、団子状の固化もない銀杏ジャム41となる。すなわち、水を用いることなく、裏ごしや粉砕することで得られた銀杏(粉体、粒体等)の実は、銀杏の実が持つ独特の粘性によって団子状に固結してしまうのに対し、本例では、実を予備的に分割した実に、水を加えて前記混合水とし、その混合水の状態において攪拌しながら微細に分割しているため、それによって得られた微細分割素材含有混合水において含まれており、微細に分割されている銀杏の実は、団子状に固結しない。そして、このような混合水を、加熱、攪拌して、所望とする糖、酸を添加して煮詰めたことにより、銀杏ジャム41が得られる。以後は、これを要すれば、充填器に移し替え、所定の容器に小分けし、パック詰め、或いはビン詰めし、沸騰水中に浸漬して加熱、殺菌し、その後冷却することで、銀杏ジャム(商品)として供給できる。
【0024】
本例では、予備的に分割して得た分割又は破砕素材に水を加えて攪拌、分割し、該分割又は破砕素材を微細に分割する微細分割工程を経ることによって微細分割素材含有混合水を得た場合で説明したが、薄皮を剥いた銀杏の実に、適量の水を加えて攪拌、分割し、該実を微細に分割する微細分割工程を経ることによって微細分割素材含有混合水を得るようにしてもよい。すなわち、上記製法において、予備的な分割又は破砕の工程を省略してもよい。本発明では、銀杏の実を、水を加えた状態において(水中にて)攪拌、分割して微細に分割する微細分割工程を経ることによって微細分割素材含有混合水を得ることができればよいためである。したがって、微細に分割する性能、能力があるミキサー等を用いることができ、或いは、予備的な分割工程を経ていないために、微細に分割するのに工程ないし時間を要することが許容できる場合には、予備的な分割工程を経ることなく、直接に微細分割素材含有混合水を得るようにしてもよい。なお、水を加えた状態において攪拌して微細に分割するための装置、機器としては、ミキサーのほか、ロボク−プ等の公知のものを用いればよい。
【0025】
本発明の銀杏ジャムは、要求される適度の、糖度(甘味)に応じ、糖の添加割合を設定すればよい。また、上記例において砂糖の投入は、3/4の投入後に1/4を投入する2段階の投入としたが、適宜の割合で、例えば、1/2ずつとしてもよいし、3段階以上に分けて投入するようにしてもよい。そして、ジャムとして要求される酸味を出すためのレモン汁についても、適度の量(割合)とすればよいし、その添加も複数回に分けて行うこととしてもよい。また、レモン汁(酸)の投入は、設定した糖度の達成時に投入し、攪拌することとしてもよい。さらに、糖としては、グラニュー糖、オリゴ糖、上白糖等の公知のものを使用すればよいし、酸としても、酸味の要求される一般の食材に添加される市販のもの(クエン酸)を用いてもよい。また、ゼリー化を高めるため、別途、ペクチンを適量添加してもよい。
【0026】
なお、本発明の銀杏ジャムの製造方法は、上記した実施形態のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜に変更して具体化できる。銀杏の実の他の材料配分も、甘味、酸味、食感に応じて、変更すればよいし、加熱、煮炊き時間も、所望とするゼリー化が得られるように、適宜のものとすればよい。そして、ジャムの食感や風味の好みに応じ、別途の食材、添加剤(香料、調味料等)を添加してもよい。また、銀杏ジャムにおいて適度に粒を噛むような粒感が好まれる場合には、別途、大きめに分割又は破砕した銀杏の実(粒)を、微細分割素材含有混合水において追加し、或いは加熱、煮炊きの途中で添加材として添加してもよい。
【符号の説明】
【0027】
11 薄皮を除去した銀杏の実
21 分割又は破砕素材
31 微細分割素材含有混合水
41 銀杏ジャム