【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物 刊行物名 精米工業 (月刊) 英文名(JOURNAL OF JAPAN RICE MILLERS ASSOCIATION) 発行年月日 2015年9月1日、 号数 No.274、発行者 一般社団法人 日本精米工業会、発表表題『佐渡産米の海洋深層水による炊飯試験』、該当箇所は第16頁〜第24頁まで
【課題】 業務用に大量に炊飯するご飯が、水道水を炊飯水とした場合と比較して、冷めてもおいしく、適度な粘り、硬さが長時間持続するような炊飯に最適の炊飯水を得ることを目的とした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
日本人の主食は古来から米であった。米は乾燥した穀物として保存されるから、これを食するには、その都度、直前に炊飯する必要がある。このため、これの炊飯方法について、昔から工夫がなされて来たことは良く知られている。
古来から衆人が英知を結集して、色々な方法が試行され、色々な提案がされ、米自体の品種改良をはじめ、炊飯方法に関しても行われて来て、炊飯方法に関することわざもある程である。
【0005】
然し乍ら、米はその食する都度、炊飯することは面倒であり、また不経済でもある。そこで、炊きたてのご飯を量り売りするビジネスがあり、また、他に無菌パック技術を用いた長期間保存のきく、「無菌パックご飯」などが販売されている。
また近年、目覚ましく進歩したのは、電気炊飯器によるおいしいご飯の炊飯方法である。
【0006】
これは、主として家庭で炊飯することを目的とするものであるが、圧力を掛けたり、加熱方法、熱の伝達方法等(加熱の経過・過程等・内釜)の改良に力を注いだものと思われる。
【0007】
当然のことであるが、おいしいご飯を炊く条件は、使用する米の品質と、これを炊く水と、炊き方(温度経歴)に集約されると思われる。
【0008】
然しながら、従来からの殆どの提案は、主として家庭で炊飯することを目的とするものである。米の生産者は米の品質の改良に力を注ぎ、電気炊飯器を生産する電器会社は、温度経歴に集中しており、炊飯水の質に言及されたものは、見られない。日本の水道は良質の水を供給しているのは、世評のとおりである。従って、これらをみると、水は身近にある水道水を使用することを前提として考えられており、特に水に注目するものは見当たらない。
【0009】
そこで、本件の発明者らは前記の家庭用のおいしいご飯の炊き方の諸条件も視野に入れながら、主として業務用商品のご飯のおいしい炊き方を追求した。
とりわけ、おいしいご飯の炊き方の三条件の一つである水の質に注目した。
【0010】
即ち、炊飯には、米の研ぎ水及び炊飯時に炊飯水として大量の水が使われる。従って、炊き上ったご飯も、大量の水を含んだ食品である。従って、炊飯水の質は、おいしいご飯のための極めて重要な条件であると考える。
【0011】
また水は、その含有するミネラルの多寡により、軟水、中硬水、硬水に分けられる。わが国では、水道水は軟水が多く、飲用水、洗濯水等の場面で、特に水の質について注意が払われている。
【0012】
一般に炊飯には、硬度の低い軟水が適しており、硬水は炊飯には適していないとされている。硬水で炊いたご飯は、ご飯の表層が硬くなるとされている。
この様な状況において一般家庭では、水道水を使うことを前提としているため、また、日本の水道は殆どが軟水のため問題が無いので、水については殆ど注意が払われて来なかったのが現状である。
【0013】
炊飯業者は冷めてもおいしく、適度な粘りと、固さが長時間保たれるご飯を求め、使用する精米の炊飯特性を調査し、最適な銘柄や、又はブレンドを見い出し、炊飯条件に付いても、最適な炊飯倍率を求めて炊飯の諸条件を定めている。
(注)炊飯倍率は、米を1としたときの、炊き上がったご飯の重量で示したものである。
【0014】
そこで、発明者等は、色々な硬度を有する水を炊飯水に使い、炊飯を行って、おいしいご飯に適した炊飯水を調べた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者らは、色々な種類の炊飯水の試行試験中、手近に入手できた硬度300の佐渡海洋深層水300(商品名)を炊飯水として用いて家庭用電器炊飯器で炊飯したところ、通常の水道水を使ったものよりも、おいしいご飯が炊けたことを見出した。
とりわけその中でも、炊飯に適していないと一般に言われていた硬度の高い佐渡海洋深層水300(商品名)を炊飯水にして炊飯したところ、おいしいご飯が炊けることを見出して、本願発明を完成させた。
【0016】
そこで業務用の炊飯規模の試験を行ったところ、得られたご飯は、明らかに色調が白く、糠臭が少なく、弾力、粘りともに適度にあり、甘みも強くなっていて食味が優れたご飯が得られ、冷めてもおいしいと言う、従来から業務用炊飯で解決すべき課題となっていた諸問題も解決できた。
【0017】
そして、更にこれらを精査したところ、詳細な作用機序は明らかではないが、発明者等は、この炊飯水には、カルシウムとマグネシウムの含有量が一定の割合で含まれていて、この水質により良好な結果が得られることを見い出した。これにより、おいしいご飯が炊ける条件に注目して、鋭意研究を重ねて、本発明を完成させたものである。
【0018】
いわゆる海洋深層水は、日本全国各地7か所で揚水が行われていて、例えば、室戸沖、伊豆沖等が有名で、この海水を脱塩処理した水がミネラルウォター等に加工されて販売されている。
【0019】
また、本願発明においては、海洋深層水であれば、どれも同じような効果が得られるものではないことも確認した。これは、他のメーカーの海洋深層水のものと較べた結果からも証明されている。
【発明の効果】
【0020】
この発明の炊飯水を使用して得られたご飯は、軟水の水道水を炊飯水とした場合と比較して、明らかに色調が白く、糠臭が少なく、弾力、粘りともに適度にあり、甘みも強くなっていて食味が優れたご飯が得られ、従来から業務用炊飯で解決すべき課題となっていた諸問題の解決ができた。
【0021】
この発明の炊飯水で炊いたご飯は、中食・外食で消費者に提供するご飯及びその加工品につき、冷めてもおいしく、適度な粘りと、固さが長時間保たれるご飯を提供することができる。
この発明は、お米本来のウマ味を引き出す炊飯方法である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
炊飯業務において大量炊飯の場合は、コストの関係から水道水の使用量や廃水処理能力等から、水の使用量を極力抑える方向で考えなければならない。
しかし、使用する水を節約して洗米工程を十分にしないと、糠が残り、炊き上げたご飯に糠臭などが残り商品として不都合が起こる。
また、原料に古米や古古米などもあり、また、製品の糠臭、異臭、異味などに注意を払わなければならない。
【0023】
水は、おいしいご飯の炊飯においては大きな要素を占めている。
飲用向けの水は、大別すると軟水、中硬水、硬水に分類することができる。日本では、軟水0〜100、中硬水は100を超え〜300まで、硬水は300を超えたものとされている。
【0024】
炊飯業界では、炊飯に使用する炊飯水は硬度100以下の軟水が適しており、硬度の高い水は炊飯には適していないとされていた。
然しながら、日本の水の殆どは軟水であるため、水の硬度を意識して炊飯を行うことはあまりないが、業務用で大量に炊飯する場合は、使用する炊飯水の硬度が出来上がった商品の品質を大きく左右する重要な因子となるので、注意が払われている。
【0025】
この発明の炊飯水に使用した佐渡海洋深層水硬度300(商品名)の中硬水は、1リットル当たりカルシウム14.6mg、マグネシウム65.2mg含まれており、マグネシウムがカルシウムの4.5倍の比率となっている。 例えば、同じ中硬水であっても、ウトコビューティ&ヘルシーウォター(商品名・室戸海洋深層水(株))製は、1リットル中にカルシウム2.6mg、マグネシウム70.0mg含まれており、マグネシウムがカルシウムの26.9倍であり、同じく天海の水(商品名・赤穂化成(株)製)は、1リットル中にカルシウム17.8mgマグネシウム50.0mg含まれており、マグネシウムがカルシウムの2.8倍に過ぎない。従って、海洋深層水毎に夫々成分が異なっており、一様ではないことがわかる。
【0026】
また、カルシウムは澱粉の糊化を阻害する効果があることが良く知られている事実であり、カルシウムの少ない佐渡海洋深層水300(商品名)では、澱粉の糊化を阻害しないので、ご飯に悪影響を及ぼさない。また、米の中のマグネシウムは食味に好影響を及ぼすことも知られている。マグネシウムの含有量の高い佐渡海洋深層水300(商品名)を炊飯水とした場合は、食味は向上するものと認められる。
【0027】
この発明で使用する海洋深層水は、深海の約300メートルの海底からくみ上げた塩分を含んだ深層海水を、次の処理で飲料水に加工する。
逆浸透膜(RO:Reverse Osmosis membrane equipment)装置で、海水から膜を使い淡水を生産する造水装置であり、また濃縮海水から食塩やにがりを製造することにも使われる。
【0028】
海水をRO装置に通すと、海水中に含まれる様々なイオン、NaとかCl、Ca、Mg等が除去された淡水と、様々なイオンが濃縮された状態の濃縮海水と呼ぶ2種類の水ができる。この淡水は、水の硬度10(mg/リットル)以下の柔らかな軟水である。
一方、濃縮海水は海水の成分がすべて濃縮されており、精製食塩やにがりの製造に利用される。濃縮したRO水をさらに煮詰めてゆくと、最初に硫酸カルシウム(CaSO
4)が結晶として析出し除去することができる。この硫酸カルシウムは苦み成分として食塩やにがりの製造には望ましくない成分である。この溶液をさらに煮詰めてゆくと、次いで食塩(NaCl)が析出し、これが精製塩の原料となる。残った液は塩化マグネシウム(MgCl
2)を主成分とするいわゆるにがりとして利用される。このにがりをRO脱塩水(淡水)で希釈したものが飲用の海洋深層水として販売されている。この海洋深層水は、Caイオンが最初の結晶の硫酸カルシウム(CaSO
4)として除去されているので、Mgが高濃度の海洋深層水とすることができる。
【0029】
また、ED(ED:Electrodialyser)は、電気透析装置で、海水から膜を用いて淡水を生産する造水装置であり、飲用の海洋深層水を製造する。EDで飲用の海洋深層水を製造する場合は、味(苦味)を悪くする硫酸イオン・SO
4ーーを除去するために一価のカチオンと一価、二価のアニオンを選択的に除去する膜を用いNa
+、Cl
−、SO
4−−を除去する。したがってCa、Mgイオンは濃縮水に残りミネラル成分として利用される。この場合Ca、Mgの比率は原水の海水に近いままとなるがED膜の運転条件等によっては二価のカチオンも多少膜を通過するため、Mg/Ca比率の多少の変動は可能であるが、大きく変えることはできない。
一方、EDで食塩を製造する場合は、一価のカチオン、アニオンのみを選択的に通過する膜を使用するので、RO水のようににがりを製造するためにはふさわしくない。
【0030】
炊飯水の調整について
発明者らは、炊飯水として適しているMg/Caの最適の比率が存在すると考え、RO水から調整したCa含有が少なくMg含有が多いRO水(I)と、比較的Caの含有が多くMgの少ないED水(II)を混合し、硬度の低いRO脱塩水(III)で希釈すると、同じ硬度300の中硬水でCaとMg比率の異なる海洋深層水を任意に作成し、これを食味試験に供することができた。
【0031】
例えば
I Ca 12.8mg、Mg1450mg(Mg/Ca=113)を含む硬度6000mg/LのRO水
II Ca 506mg、Mg 1150mg(Mg/Ca=2.3)を含む硬
度6000mg/LのED水
III 硬度 8mg/LのRO脱塩水 (計算上は硬度0とする)
この3種類のED水、RO水を次の表の様な比率で混合するとMg/Ca比率が2.5〜7までの異なる、硬度300の中硬水を得ることができた。
【0033】
平成26年度産あきたこまち(商品名)を用いて、[表1]の5種類のMg/Ca比の異なる海洋深層水(硬度300)を炊飯水として炊飯を行い食味の比較を行った。
平成26年度産あきたこまち(商品名)450gを通常の水道水で洗米後、十分な水切りを行い[表1]の炊飯水各々630ccを加え、一時間浸漬後に象印炊飯器(NP−NH18型)で早炊きモードで炊飯を行った。比較のための基準としては同じ条件で水道水(硬度71)を用いて炊飯したものとした。
【0034】
炊飯後の炊飯倍率は基準を含め何れも2.23〜2.25の中に納まっており、水分量による硬さや粘りへの影響はほぼないものと思われる。蒸らし後、それぞれの炊飯したものについて5名のパネルを用いて外観、香り、味、硬さ、粘り、総合評価の6項目について基準に対して評価し、その結果を 基準より非常に良い(+3)、かなり良い(+2)、やや良い(+1)、基準と同じ(0)、基準よりやや悪い(−1)、かなり悪い(−2)、非常に悪い(−3) の7段階で評価で+3〜−3の得点を付けた。
5名のパネルの結果を平均したものを[表2]に示した。
【0036】
全ての海洋深層水で総合評価は基準(水道水で炊飯したもの)よりも高く、良好な結果となったが、特にMg/Caが3.0、4.5、6.0の場合は非常に評価が高かった。中でも4.5の時は最も高い評価で海洋深層水の炊飯における改良効果が著しい事が解った。
【0037】
Mg/Caが3.0、4.5、6.0の海洋深層水について、各項目で見ると外観は白さが増し、香りでは基準と比較して糠臭の残存が少なく、味については甘味が増した結果となった。硬さ、粘りは4.5において最もバランスが良く、3.0と6.0においても高い評価であった。
これらの結果が海洋深層水のMg/Ca比率は3.0〜6.0が、効果が高く、中でも4.5が特に優れていた。
【0038】
カルシウムとマグネシウムとの含有比率が2.5のものは、6評価項目の内にマイナス評価の項目があり、総合点では評価が低く、特に顕著な効果が得られなかった。
また、カルシウムとマグネシウムとの含有比率が7,0のものも、6評価項目の内にマイナス評価の項目があり、総合点では評価が低く、特に顕著な効果が得られなかった。
【0039】
この試験ではMg/Ca=4.5の炊飯水は、ROとEDの2種類の製法の異なる海洋深層水を混合し作成したが、EDの運転条件を適度に調整(電気伝導値を調整する等)すれば、Mg/Ca=2.3〜5.0までは調整でき、4.5の海洋深層水はEDとRO脱塩水で作成することも可能である。
佐渡海洋深層水300(商品名)はこの方法によって製造されている。
【0040】
他の種類の水と、その炊飯効果を比較するために、種類の異なる炊飯水で炊飯した例を、以下に試験例として示す。
【0041】
(試験例1)
平成26年産米あきたこまち(商品名)を用いて、佐渡海洋深層水300(商品名)と同じ硬度300のエビアン(商品名)を炊飯水に用いて炊飯した。この米飯について、水道水を基準として、専門パネル4名による食味の比較を行った。
平成26産米あきたこまち(商品名)450gを通常の水道水で洗米後、十分に水切りを行い、下記の各種の炊飯水を使用してそれぞれ炊飯をした。
【0042】
1. 水道水(東京 硬度71)
2. 佐渡海洋深層水300(硬度300)(商品名)
この佐渡海洋深層水硬度300(商品名)の硬水は、1リットル当たり、カルシウム14.6mg、マグネシウム65.2mg含まれており、マグネシウムがカルシウムの4.5倍となっている。
3.エビアン(商品名)(硬度 300)
それぞれ用意した米毎に、上記の種類の各水630ccずつを、炊飯水として加えたものを、象印炊飯器(NP−NH18型)で1時間浸漬後、早炊きモードで炊飯した。
【0043】
蒸らし後、水道水で炊飯したものを基準として、外観、香り、味、硬さ、粘り、総合評価の6項目について比較し、パネルの平均的な評価結果を示した。また、室温で24時間放置したものを、同様に食味評価を行った。
【0044】
〔結果〕
炊飯の結果、炊飯倍率がそれぞれ水道水の2.26、海洋深層水2.25、エビアン2.25(商品名)とほぼ同じ炊飯倍率となった。食味の結果を[表3]に示した。
【0046】
・1 佐渡海洋深層水300(商品名)を炊飯水としたものは明らかに全ての項目で基準とした水道水を上回る評価を得た。
・2 特にご飯の白さが目立ち、糠臭が明らかに消えていた。粘りもやや強く、硬さについては適度な弾力性があり総合的に良好であった。
・3 また、佐渡海洋深層水300(商品名)と同じ硬度のエビアン(商品名)を炊飯水としたときは、水道水よりも全体的に評価が悪く、特に香りでは糠臭が強く出て、より黄色味が強いのが特徴であった。粘りにおいてもややボソボソ感があり、炊飯には適した水ではなかった。
・4 室温に24時間放置の後の食味評価は、水道水、エビアン(商品名)共に糠臭は感じられなくなったが、その他の評価項目では、同じような差が認められた。
【0047】
〔考察〕
・1 一般に硬水で炊飯するとご飯の表層が硬くなり、炊飯には適さないと言われているが、硬度300のエビアン(商品名)を炊飯水とした時は、ご飯の質は水道水を炊飯水としたものより、明らかに低下した。
・2 一方、同じ硬度300の佐渡海洋深層水300(商品名)では、硬度71の水道水よりも明らかに良好な結果であった。
【0048】
佐渡海洋深層水300(商品名)と、エビアン(商品名)は、共に硬度300の硬水であるが、マグネシウムとカルシウムの含有比率が下記[表4]の如く、大きな違いがあることが原因と思われる。
【00050】
なお、佐渡海洋深層水の場合、Mg/Ca比率は、4.5である。
なお、エビアンの場合、Mg/Ca比率は、0.3である。
【0051】
・3 おいしいお米の指標の一つとして玄米中のMg/K(マグネシウム/カリウム)比が重要であることは知られている。玄米中のミネラルはその殆どが糠に含まれており、精米したものには殆ど残っていないとされる。もし、マグネシウムが食味に影響するとしたら、マグネシウム含有量の高い佐渡海洋深層水300(商品名)を炊飯水とすれば、食味は向上する、とも考えられる。
・4 また、カルシウムは澱粉の糊化を阻害する効果があることも知られているので、カルシウムの少ない佐渡海洋深層水300(商品名)を炊飯水とした時は、澱粉の糊化に悪影響を及ぼすことなく、エビアン(商品名)ではカルシウムの含有量が高いため食味に影響を及ぼしたと考えられる。
【0052】
以上の知見からすれば、炊飯水としての良否は、単純に水の硬度のみで判断するのではなく、含まれるミネラルの種類とその量やそのバランス等で良否を総合的に判断する必要があるものと思われる。
【0053】
(試験例2)
平成26年産米 富山コシヒカリ(商品名)を用いて、炊飯水とし、佐渡海洋深層水(硬度300、商品名) 天海の水(硬度 250、商品名)、海洋深層水ウトコビューティー&ヘルシーウォーター(硬度 300、商品名)について、水道水を基準として専門パネル4名による食味の比較試験を行った。
前記コシヒカリ(商品名)450gを通常の水道水で洗米後、十分に水切りを行い、
1、 佐渡海洋深層水 硬度300(商品名)
2、 天海の水(商品名)硬度 250
3、 ウトコビューティー&ヘルシーウォーター(商品名)硬度 300(以下「ウトコ深層水」という。)
それぞれを炊飯水として630gずつ加え、一時間浸漬後、象印炊飯器(NP−NH18型)で早炊きモードで炊飯した。炊飯倍率は、三者とも2.34倍となり、同一の条件で炊飯ができた。
蒸らし後、水道水を炊飯水としたものを基準として、外観、香り、味、硬さ、粘り、総合評価の6項目について比較し、パネルの平均的な評価結果を示した[表5]。
【0055】
1.佐渡海洋深層水300(商品名)を炊飯水としたものは明らかに全ての項目で基準を上回り非常に高い評価であった。
2.天海の水は全体的に基準の水道水と同程度であったが、やや硬いものの弾力がすくなかった。
3.「ウトコ深層水」は明らかに基準より劣り、粘りが少なく弾力性(硬さ)にも欠け、旨味が基準より劣るため、総合的にもかなり基準より劣った。
4.室温で24時間放置後の食味は糠臭が感じられなく、その他の項目は同じような差が認められた。
【0056】
〔考察〕
1.佐渡海洋深層水300(商品名)は、1リットル当たりCaが14.6mg、Mgが65.2mg(Mg/Ca=4.5)で硬度が300であり、三者の中で最も炊飯に適した海洋深層水であった。
2.天海の水は1リットル当たりCaが17.8mgMgが50.0mg(Mg/Ca=2.8)で硬度が250である比較的Caが多くMgが少ない海洋深層水である。Caが多い為澱粉の膨潤阻害があり、硬さは基準よりやや高くなったものと思われる。
3.「ウトコ深層水」は1リットル当たりCaが2.6mg、Mgが70.0mg(Mg/Ca=26.9)である。Caが非常に少なくMg/Caの高い海洋深層水である。この炊飯水ではMgが多いためか、ご飯の白さが目立ったが、Caが少ないため食感はむしろ柔らかく、腰のないものになったと思われる。
【0057】
この比較試験から、海洋深層水であれば、どの地域の海洋深層水でも、どの様な製法の海洋深層水でも、炊飯水として良好な結果が得られるものでないことが解かる。
良好な結果が得られるのは、カルシウムとマグネシウムの両者の含有するバランス(比率)が重要であると考えられる。
【0058】
(比較例1)
佐渡海洋深層水硬度300(商品名)と硬度600(商品名)および、これを水道水で希釈して硬度400、200、150としたものを炊飯水として[試験例2]記載と同じ条件で炊飯し、水道水で炊飯したものを基準として5名の専門パネルで食味を比較調査した。
【0059】
【表6】
水道水(基準)に比べて、差があるかどうかを−3〜+3までの尺度で評価
・▲1▼硬度600をそのまま希釈しないで用いると硬さが強くなりすぎて、僅かに炊飯ムラ的傾向もみられることから、硬さ・粘りはマイナス評価となった。
・▲2▼硬度600を1.5倍に希釈して硬度400にすると香りと粘りが基準に対して良好となり、評価はプラスであった。
・▲3▼硬度600を3倍に希釈して硬度200にすると、硬さが好ましくなり、評価はプラスとなった。
・▲4▼硬度600を4倍に希釈して、硬度150にしたものは、海洋深層水としての効果は全く見られず、基準とした水道水と同じ結果であった。
・▲5▼その結果、硬度300の中硬水が最も評価が高く、次いで硬度400、と200、評価が悪かったのは硬度600で、硬度150の効果は全く見られなかった。
【0060】
(比較例2)
[硬度300の佐渡海洋深層水300(商品名)と硬度72の水道水との比較]
精米したうるち米[平成26年度秋田産米あきたこまち](商品名)450g計量し、通常に洗米した後、十分に水切りし、硬度300の佐渡海洋深層水300(商品名)を加えて1070gとした。同じ精米450gを洗米した後、同量の硬度72の水道水を炊飯水として加えて1070gとしたものを、それぞれ家庭用の電気自動炊飯器で通常に炊飯した。
【0061】
両者の食味を専門パネル5名で比較した。
炊飯倍率は両者とも2.25倍となり差はなく、その食味結果は[表3]に示したように、水道水で炊飯したご飯と比較して、硬度300の佐渡海洋深層水300(商品名)で炊飯したご飯は、色調、臭い、粘り、硬さの点で明らかに優れており、味についても甘味が強いと判定された。
【0062】
(比較例3)
佐渡海洋深層水300(商品名)と硬度600と、これを水道水で希釈して硬度200としたものを炊飯水として[比較例2]と同じく炊飯し、水道水で炊飯したものを基準として5名の専門パネルで食味を比較評価した[表7]。
【0063】
【表7】
※水道水(基準)に比べて、差があるかどうかをー2〜+2までの尺度で評価
・▲1▼硬度600をそのまま希釈しないで用いると硬さが強く成り過ぎて、僅かに炊飯ムラ的傾向も見られることから、硬さ・粘りはマイナス評価となった。
・▲2▼硬度600を3倍に希釈して、硬度200にすると硬さも好ましく成り、評価はプラスとなった。
・▲3▼しかし、硬度300の中硬水が最も評価が高く、次いで硬度200、評価が悪かったのは硬度600であった。
【0064】
(比較例4)
[硬度300の佐渡海洋深層水と硬度300のミネラルウォーターのエビアン(商品名)との比較]
精米したうるち米[平成26年秋田産米あきたこまち](商品名)450gを計量し、通常に洗米した後、十分に水切りし、硬度300の佐渡海洋深層水300(商品名)を炊飯水として加えて1070gとした。同じ精米450gを洗米し、同量の硬度300の市販ミネラルウォーターのエビアン(商品名)を炊飯水として加えて1070gとした。それぞれを家庭用電気自動炊飯器で通常に炊飯した。
【0065】
両者の食味を専門パネル5名で比較した。炊飯倍率は[比較例1]と同じ2.25倍であった。その食味結果は[表3]に示した通りである。
佐渡海洋深層水300(商品名)は[比較例1]と同じように色調が白く、糠臭が消失した食感、甘味等に優れていたが、比較した硬度300のエビアン(商品名)を使用した時は、硬水特有の色調が黄色くなり、ボソボソして、粘り、弾力がなく、食味も劣るものであった。
【0066】
種々のカルシウムとマグネシウムとの含有比率を変えた水で、炊飯を行ってその効果を確かめた。その結果、炊飯水にはカルシウムとマグネシウムとの含有比率が重要な要素をなしていることが確認された。その効果の相違が生ずる詳しい理由は、分からないが、実験でこのことが確かめられた。
【実施例1】
【0067】
平成26年産米あきたこまち(商品名)を、佐渡海洋深層水300(商品名)を炊飯水に用いて炊飯した。
平成26産米あきたこまち(商品名)450gを通常の水道水で洗米後、十分に水切りを行い、この炊飯水を使用して炊飯をした。
この佐渡海洋深層水硬度300(商品名)の硬水は、1リットル当たり、カルシウム14.6mg、マグネシウム65.2mg含まれており、マグネシウムがカルシウムの4.5倍となっている。
【0068】
用意した米に、上記炊飯水630ccを、加えたものを、象印炊飯器(NP−NH18型)で1時間浸漬後、早炊きモードで炊飯した。
炊飯倍率は、2.25であった。蒸らし後、水道水で炊飯したものを基準として、外観、香り、味、硬さ、粘り、総合評価の6項目について比較し、パネルの平均的な評価結果を示した。また、室温で24時間放置したものを、同様に食味評価を行った。評価結果は、[表3]に記載の通りだった。
【実施例2】
【0069】
業務用の製品に対応するために、炊飯規模をスケールアップしたもので、実施した。炊飯釜(7升・10.5キログラム)用を使用して、実施例1の条件を20倍にスケールアップして、実施した。
即ち、平成26年産米あきたこまち(商品名)9Kgを用意し、佐渡海洋深層水300(商品名)を炊飯水に用いて炊飯した。加熱経歴は、特別に考慮しないで通常の白米の炊飯条件で炊飯した。
実施例1と同様なパネルによる評価をしたが、[表3]の佐渡海洋深層水と同じ、評価が得られた。
詳細は不明であるが、スケールアップした場合であっても、得られたご飯の良好な結果は、加熱経歴よりも、むしろ炊飯水の影響が大きいものと思われる。
【実施例3】
【0070】
平成26年度産あきたこまち(商品名)450gを通常の水道水で洗米後、た十分な水切りを行い[表1]のMg/Ca比率3.0の炊飯水630ccを加え、一時間浸漬後に象印炊飯器(NP−NH18型)で早炊きモードで炊飯を行った。
【0071】
このご飯を専門パネル5名で外観、香り、味、硬さ、粘り、総合評価の6項目について基準に対して試食・評価したところ、前記[表2]に記載の評価となった。
【実施例4】
【0072】
平成26年度産あきたこまち(商品名)450gを通常の水道水で洗米後、十分な水切りを行い[表1]のMg/Ca比率6.0の炊飯水630ccを加え、一時間浸漬後に象印炊飯器(NP−NH18型)で早炊きモードで炊飯を行った。
【0073】
このご飯を専門パネル5名で外観、香り、味、硬さ、粘り、総合評価の6項目について基準に対して評価したところ、前記[表2]に記載の評価となった。
【実施例5】
【0074】
硬度を調整した炊飯水により、炊飯を行った。炊飯にこれらの調整した炊飯水を使用するものである。
佐渡深層水の中で、硬度300の海洋深層水300を調整するのに使用される、ED処理で最も硬度の高い硬度6000の海洋深層水高ミネラル水を、硬度71の水道水で希釈し、これを炊飯水として炊飯を行った。
【0075】
硬度300にするために硬度6000の高ミネラル水40g(cc)に、硬度71の水道水960g(cc)を加え希釈し、計算上の硬度を308とした。
比較のために炊飯水として佐渡海洋深層水300(商品名)を用いた。
平成27年度産富山コシヒカリ450gを通常通り洗米し水切りしたものをそれぞれを炊飯水として630gずつ加え、一時間浸漬後。象印炊飯器(NP−NH18型)で早炊きモードで炊飯した。炊飯倍率は両者とも2.31倍となり、同一の条件で炊飯ができた。
蒸らし後、佐渡海洋深層水300(商品名)で炊飯したものを基準として、外観、香り、味、硬さ、粘り、総合評価の6項目について比較し、パネルの平均的な評価結果を[表8]に示した。
【0076】
【表8】
【0077】
高ミネラル水は硬度6000でMg/Caは硬度300と同じ4.5である。炊飯した結果、食味評価では基準とした佐渡海洋深層水300(商品名)と何ら変わることなく、高硬度の佐渡海洋深層水を希釈した炊飯水でも、食味の改善効果は変わらなかった。
【実施例6】
【0078】
天海の水(商品名) 硬度1000
ウトコビューティ&ヘルシー(商品名) 硬度800
これらの硬度800〜1000の海洋深層水を水道水で希釈して、それぞれを硬度300に調整した炊飯水を得た(調整水)
この調整した炊飯水で[試験例2]記載と同じ条件で炊飯したものを食味評価したが、[試験例2]と同じ評価が得られた。[表10]
【0079】
【表10】
即ち、天海の水(商品名)は水道水とあまり変わらず、ウトコ深層水(商品名)は矢張り基準より劣った、この結果は[試験例2]と同じ結果であった。[表10]