【解決手段】主成分と、低糖化水飴とを含有し、液体状調味液全重量に対する重量%で、低糖化水飴が2〜10%含有され、この低糖化水飴は、水飴全重量に対する重量%で、固形分の糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が30%以下であり、かつ4糖類以上の糖分の含有量が70%以上であることを特徴とする。
水飴全重量に対する重量%で、固形分の糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が30%以下であり、かつ4糖類以上の糖分の含有量が70%超であり、請求項1〜7のうち何れか1項に記載の液体状調味液における主成分に混合されること
を特徴とする低糖化水飴。
水飴全重量に対する重量%で、固形分の糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が30%以下であり、かつ4糖類以上の糖分の含有量が70%超であり、液体状調味液に添加された場合に当該液体状調味液に含有する主成分から醸し出される旨味を長引かせる効能を発揮すること
を特徴とする低糖化水飴。
【背景技術】
【0002】
従来より、そばに対しては麺つゆ、鍋物にはポン酢、ラーメンにはラーメンスープ、寿司には醤油等のように、食品に味を付与するための液体状調味液が従来から使用されている。このような液体状調味液から醸し出される味が僅かに異なると、消費者に与える味覚の印象は全く異なるものとなる。逆に言えば、その液体状調味液の成分を僅かに改変することにより、消費者に好まれる風味、旨味を作ることができれば、その液体状調味液、ひいてはこれが付与される食品に対する需要は飛躍的に伸びることになる。
【0003】
このため、各食品メーカーや飲食店は、液体状調味液の風味、旨味を増強するべく、その成分や製造方法の研究を各種行ってきた。一般的な液体状調味液の旨味の増強方法としては、旨味を作り出す原料の含有率を増やす方法や、或いはアミノ酸化合物を新たに添加する方法等が提案されている。しかしながら、液体状調味液から醸し出される風味や旨味は、これを構成する各成分の微妙なバランスの下で成り立つものである。このため、より消費者から好まれる味を出すためには、成分の含有量の調整に多大な労力が必要となり、開発コストが大きくなってしまうという問題点があった。
【0004】
これら液体状調味液の中でも、例えば麺つゆは、醤油、砂糖(異性化糖)に加え、鰹節や昆布の出汁が相乗して独自の味と風味を醸し出しており、中でもこの出汁が効いていることで美味しさも一気に上昇する(例えば、特許文献1参照。)。このような麺つゆにおいて出汁の旨味を飛躍的に上昇させるために、出汁の含有量を多くし、或いはグルタミン酸ナトリウム等の調味料を添加する等をする場合が多い。このため、麺つゆにおける出汁の旨味感を出せたとしても、却って材料コストが上昇してしまうという問題点があった。
【0005】
これらに加えて、高血圧症や脳梗塞等からのリスク低減の為に低塩分の食品を選んで摂取する必要があるが、単純に塩分を減らすだけでは美味しくなくなってしまう。このため、めんつゆ、ダシつゆ、ポン酢、漬物、ハム、醤油あられ等塩を多く使用する調味液や加工食品の減塩製品を作る場合、塩化ナトリウムを減らす代わりに塩化カリウムを入れる方法が多く取られる。
【0006】
しかしながら、この塩化カリウムは苦味があり、減塩率を上げたくても苦味が増して食品の味を落としてしまうという問題点があった。このため、一般的に減塩食品は、健康面においては優れた特質を示すものの味覚の面では更なる改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、液体状調味液において特に調整の手間を省略及び材料コストの低減を実現しつつ、醸し出される風味、旨味を向上させ、長引かせることが可能な液体状調味液を提供することにある。
【0009】
また本発明によれば、塩化カリウムを使用した減塩調味液や減塩加工食品特有の減塩率を向上させつつ苦味を抑制し、健康面と美味しさの双方を両立させることが可能な液体状調味液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した課題を解決するために、固形分の糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が30%以下であり、かつ4糖類以上の糖分の含有量が70%以上である低糖化水飴が含有させることで、主成分の醸し出される風味、旨味を向上させることが可能な液体状調味液、並びにこれに添加されることで醸し出される旨味を長引かせる効能を発揮する上で好適な低糖化水飴、更にはこの液体状調味液が付与される飲食物を発明した。
【0011】
第1発明に係る液体状調味液は、主成分と、低糖化水飴とを含有し、上記低糖化水飴は、水飴全重量に対する重量%で、固形分の糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が30%以下であり、かつ4糖類以上の糖分の含有量が70%以上であることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る液体状調味液は、第1発明において、液体状調味液全重量に対する重量%で、上記低糖化水飴が2〜10%含有されていることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る液体状調味液は、第1発明において、液体状調味液全重量に対する重量%で、上記低糖化水飴が3〜9%含有されていることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る液体状調味液は、第1〜第3発明の何れかにおいて、上記主成分は、麺つゆ、だしつゆ、ポン酢、醤油、各種スープ、ラーメンスープ、天つゆ、鰻用のたれの何れかであることを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る液体状調味液は、第1〜第4発明の何れかにおいて、柑橘類の果汁が含有されていることを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る液体状調味液は、第5発明において、上記減塩調味液は、塩化カリウムを含有してなることを特徴とする。
【0017】
第7発明に係る成人病予防用の液体状調味液は、第1〜第6発明のうち何れかの成分を含有し、上記低糖化水飴を有効成分とする。
【0018】
第8発明に係る低糖化水飴は、水飴全重量に対する重量%で、固形分の糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が30%以下であり、かつ4糖類以上の糖分の含有量が70%以上であり、第1〜第7発明のうち何れかの液体状調味液における主成分に混合されることを特徴とする。
【0019】
第9発明に係る低糖化水飴は、水飴全重量に対する重量%で、固形分の糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が30%以下であり、かつ4糖類以上の糖分の含有量が70%以上であり、液体状調味液に添加された場合に当該液体状調味液に含有する主成分から醸し出される旨味を長引かせる効能を発揮する。
【0020】
第10発明に係る飲食物は、飲食用成分を有し、上記飲食用成分に、第1〜第7発明のうち何れかの液体状調味液が付与されていることを特徴とする。
【0021】
第11発明に係る粉末調味料は、粉末状の主成分と、低糖化水飴とを含有し、上記低糖化水飴は、水飴全重量に対する重量%で、固形分の糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が30%以下であり、かつ4糖類以上の糖分の含有量が70%超であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上述した構成からなる本発明によれば、低糖化水飴を主成分に混合することにより、主成分から醸し出される旨味を長引かせることが可能となり、しかも甘さがしつこく表に出てしまうことも防止できる。その結果、食品を長きに亘り味わっているような感覚を与えることが可能となる。特に主成分が麺つゆである場合には、水飴の甘さを抑えつつ、麺つゆに含まれる鰹節や昆布からの出汁の旨味を強くし、しかも長引かせることが可能となる。
【0023】
また、上述した構成からなる本発明によれば減塩調味液や減塩加工食品特有の減塩率を向上させつつ苦味を抑制し、健康面と美味しさの双方を両立させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を適用した液体状調味液並びにこれに添加されることで醸し出される旨味を長引かせる効能を発揮する上で好適な低糖化水飴について詳細に説明をする。
【0026】
本発明を適用した液体状調味液は、主成分と、低糖化水飴とを含有している。
【0027】
主成分は、従来より、食品に対して味を付与するために用いられてきた液体状の調味液である。この主成分は、蕎麦、米飯、鍋物、寿司、ラーメン、天ぷら、かつおエキス、こんぶエキス、鰻等のような和食を中心にした食品に付与される調味液である。この主成分の例としては、麺つゆ、だしつゆ、ポン酢、醤油、各種スープ、ラーメンスープ、天つゆ、鰻用のたれの何れかにより構成されているが、これに限定されるものではなく、従来のいかなる食品の調味液が適用されるものであってもよい。また旨味成分を含むものであれば、エキス類や抽出物であってもよい。
【0028】
以下の例において、この主成分として麺つゆが適用される場合を例にとり説明をする。この麺つゆは、出汁、醤油、みりん又は日本酒、砂糖をベースに作られるものである。麺つゆの詳細な成分は、一般的には、しょうゆ、ぶどう糖果糖液糖、米発酵調味料、砂糖、食塩、かつおぶしエキス、ふし(かつお、そうだかつお)、たん白加水分解物、こんぶエキス、醸造酢、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、アルコール等の成分で構成されるが、実際にはこれらの成分以外にいかなる成分が添加されていてもよい。麺つゆは、鰹節や昆布の出汁が相乗して独自の味と風味を醸し出しており、中でもこの出汁が効いていることで美味しさも一気に向上させることが可能となる。
【0029】
低糖化水飴は、水飴全重量に対する重量%で、固形分の糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が30%以下であり、かつ4糖類以上の糖分の含有量が70%以上である水飴である。この低糖化水飴に対して、一般的な高糖化水飴は、水飴全重量に対する重量%で、糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が70%未満であり、かつ4糖類以上の糖分の含有量が30%超である水飴である。この低糖化水飴は、高糖化水飴と比較して甘みが低く、飲食物の味に顕著な甘さを与えることなく、後味を長引かせることができる。このような低糖化水飴を主成分に混合することにより、主成分から醸し出される旨味を長引かせることが可能となり、しかも甘さがしつこく表に出てしまうことも防止できる。その結果、食品を長きに亘り味わっているような感覚を与えることが可能となる。特に主成分が上述した麺つゆである場合には、水飴の甘さを抑えつつ、麺つゆに含まれる鰹節や昆布からの出汁の旨味を強くし、しかも長引かせることが可能となる。低糖化水飴としては、三重化糧株式会社製造 OYT-70を使用するようにしてもよい。
【0030】
一方、この水飴について、固形分の糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が30%を超えてしまい、又は4糖類以上の糖分の含有量が70%未満である場合には、低糖化水飴のカテゴリーから逸脱してしまい、水飴特有の甘みが顕著に味覚として現れてしまい、主成分の旨味をこの水飴の甘みでかき消してしまい、美味しさそのものが低下してしまう。このため、本発明においては、上述した低糖化水飴を含有させることを必須としている。
【0031】
このような低糖化水飴は、液体状調味液全重量に対する重量%で(以下、単に%と記載する。)2〜10%含有されている。この低糖化水飴が2%未満である場合には、主成分から醸し出される旨味を長引かせるという低糖化水飴特有の効果を奏することができない。一方、低糖化水飴が10%を超えてしまうと、水飴の比率が高くなることで、甘みがどうしても表に出てしまい、主成分から醸し出される旨味、風味が弱くなってしまい、美味しさが失われてしまう。このため、低糖化水飴は2〜10%とされる。ちなみに低糖化水飴は、更に3〜9%とされていることにより、主成分から醸し出される旨味をより長きに亘り長引かせることができ、水飴の甘みが味覚に現れることによる旨味等の低下をより抑え込むことができる。さらにこの低糖化水飴は、7〜8%とされていることにより、上述した効果をさらに大きくすることが可能となる。
【0032】
また、本発明を適用した液体状調味液は、上述した成分に加えて、更に柑橘類の果汁を含有させたポン酢のようなもので具現化されるものであってもよい。この柑橘類の例としては、例えばミカンのほか、オレンジ、ユズ、ダイダイ、ウンシュウミカン、ナツミカン、ハッサク、ザボン、ヤマトタチバナ、レモン、ライム、グレープフルーツ、ネーブルオレンジ、ポンカン、シトロン、ブシュカン等である。これらの果汁を液体状調味液に含有させることで、主成分からの出汁の風味に加えて、更に柑橘類における柑橘風味が混ざり合い、一部の消費者にとっては、やみつきになるような味覚を醸し出すことが可能となる。そして、上述した低糖化水飴を含有していることにより、水飴の甘みを抑えつつ、柑橘風味を増強させることができ、しかもこの柑橘風味も長きに亘り後味を長引かせることができる。なお、液体状調味液全重量に対する重量%で、柑橘類の果汁は適量(例えば5〜30%程度)含有されていてもよい。
【0033】
本発明を適用した液体状調味液の製造方法は、単に主成分に低糖化水飴を混合させるのみで完成となる。この今後の過程において、適宜攪拌を加えるようにしてもよいことは勿論である。また柑橘類の果汁を含有させる場合においても、単にこれを主成分等に混合するのみで製造することができる。
【0034】
また本発明は、上述した液体状調味液における主成分に混合される低糖化水飴として具現化されるものであってもよい。この低糖化水飴は、液体状調味液に添加された場合に当該液体状調味液に含有する主成分から醸し出される旨味を長引かせる効能を発揮することとなる。
【0035】
また本発明は、飲食用成分を有し、飲食用成分に、上述した構成からなる液体状調味液が付与されているものであってもよい。この飲食用成分は、蕎麦、鍋物の具材、ラーメン、おでん、天ぷら、生もの、米飯、寿司、鰻等の食用成分、お茶、蕎麦湯、水等の飲用成分等である。
【0036】
更に本発明は、上述した液体状調味液に具現化される場合以外に、粉末状の調味料(粉末調味料)として具現化されるものであってもよい。かかる場合において、粉末状の主成分と、上述した構成からなる低糖化水飴とを含有する。粉末状の主成分としては、かつおエキス粉末、こんぶエキス粉末等の賦形剤にデキストリン等を使用するようにしてもよい。また他のいかなる主成分の食材を粉末状にしたものを使用するようにしてもよい。
【0037】
低糖化水飴は、乾燥性が高く、これを粉末状にした上で、上述の如き粉末状の主成分に含有させることができる。低糖化水飴の物性や含有比率は、いずれも液体状調味液と同様である。
【0038】
このような粉末調味料によれば、かつおやこんぶの旨味成分を引き出し、後味として長く残すことができる。このような粉末調味料においても、上述と同様に柑橘類の果汁は適量混合させた粉末果汁として具現化されるものであってもよいことは勿論である。
【0039】
また、本発明は塩分の含有率を低減させた減塩調味液に適用するようにしてもよい。水飴全重量に対する重量%で、固形分の糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が30%以下であり、かつ4糖類以上の糖分の含有量が70%以上である低糖化水飴を、減塩調味液に混合することにより当該液体状調味液を構成している。ここでいう減塩調味液とは、上述した主成分の例と同様であり、麺つゆ、だしつゆ、ポン酢、醤油、各種スープ、ラーメンスープ、天つゆ、鰻用のたれの何れかにより構成されている。これら減塩調味液は、何れも塩分を通常よりも塩分の含有量を減少させることにより構成してもよい。また、この減塩調味液は、塩化ナトリウムの減らすと共に、塩化カリウムを含有させることで減塩させるものであってもよい。塩化カリウムを介して塩味を発現させることができるためである。このとき、塩化ナトリウムの含有量を0にし、塩化カリウムのみで塩味を発言させるようにしてもよい。かこの塩化カリウムは、苦味を発揮する。
【0040】
また減塩調味液としては、上述した例に限定されるものではなく、従来のいかなる食品の調味液が適用されるものであってもよい。また旨味成分を含むものであれば、エキス類や抽出物であってもよい。
【0041】
減塩調味液を混合した液体状調味液全重量に対する重量%で、低糖化水飴が2〜10%含有されていることが望ましい。これにより、低糖化水飴のもつ出汁感増長効果が、減塩に伴う苦味を軽減させることができ、ひいては出汁感を増長させて舌に残すことが可能となる。特に塩化ナトリウムを減らして塩化カリウムを増量させた場合、その塩化カリウムに基づく苦味が発現することとなるが、その苦味を低糖化水飴を介して抑制することができる。
【実施例1】
【0042】
以下、本発明を適用した液体状調味液の実施例1について説明をする。
【0043】
上述した本発明の効果を検証するために、以下の実験を行った。表1に実験用のサンプルとして作成した麺つゆの本発明例1並びに比較例1、2の成分を示す。各成分組成における表中の数値は、液体状調味液全重量に対する重量%である。比較例1は一般的な麺つゆの処方である。本発明例1は、比較例1の麺つゆに対して低糖化水飴を含有させた例である。低糖化水飴としては、三重化糧株式会社 製造 OYT-70を使用する。比較例2は、比較例1の麺つゆに対して高糖化水飴を含有させた例である。各例において、醤油、ぶどう糖(果糖、液糖)、グルタミン酸ナトリウム、5´−ホスクレタイドナトリウム、かつおエキス、食塩の各含有量は何れも同一である。本発明例1に含有する低糖化水飴の含有比率は5%、比較例2に含有する高糖化水飴の含有比率は5%である。なお、麺つゆの残りの成分については、水にて調整することで合計100%とする。
【0044】
【表1】
【0045】
このようにして作成した各サンプルについて10人のパネラーに試食してもらい、出汁風味が強いか否か感想を述べてもらった。パネラーの人員構成は、男性6名、女性4名であり、男性の年齢層は、40歳代2名、50歳代2名、60歳代1名、70歳代1名である。女性の年齢層は、40歳代3名、50歳代1名である。
【0046】
表1においてそのパネラーによる評価結果も示す。出し風味が強いと回答した人数は、比較例1、2はいずれも0人であるのに対し、本発明例1は、出し風味が強いと回答した人数が10人であり、パネラーから100%その旨の回答を受けた。
【0047】
図1は、実際にパネラーからの感想に基づいて作成した、味覚の強さ、種類に対する経過時間の関係である。横軸の経過時間は、各サンプルを口腔内の舌に接触させた時点からの時間を示している。なお、この
図1はあくまでパネラーからのインタビューに基づくイメージ図であり、定量的に測定した結果ではない。
【0048】
既存の麺つゆに相当する比較例1は、
図1(a)に示すように、醤油味、塩味、甘味、出汁風味を順に感じていくが、この出汁風味の後味を長く引っ張ることができず、食後における出汁の余韻を長く楽しむことができない。
【0049】
これに対して、本発明例1は、
図1(b)に示すように、醤油味、塩味、甘味、出汁風味を順に感じていくが、この出汁風味の後味を長く引っ張ることができ、食後における出汁の余韻を長く楽しむことができることが示されている。低糖化水飴は、出汁の旨味成分を包み込み、舌に長く残すことができるため、パネラーは出汁風味を長く感じたものと考えられる。
【0050】
また比較例2は、
図1(c)に示すように、醤油味、塩味を順に感じていくが、高糖化水飴に基づく甘味の強さが大きすぎるため、出汁風味が失われてしまっている。
【0051】
上述した結果から、即ち、この高糖化水飴は、甘味度が砂糖の40〜50%と強くの甘味が麺つゆの出汁風味をぼかしてしまうが、低糖化水飴は、甘味度が砂糖の10〜20%と低いため、甘味が麺つゆの味のバランスを崩さないことも出汁感の増長を助けているものと考えられる。
【実施例2】
【0052】
以下、本発明を適用した液体状調味液の他の実施例2について説明をする。この実施例2においては低糖化水飴の含有量に対する出汁の味覚をパネラーを介して検証している。パネラーは、
30代男性2名、50代男性1名、60代男性1名、50代女性1名としている。
【0053】
表2に示す比較例3〜5、並びに本発明例2〜9は、何れも低糖化水飴の含有量を異ならせている。この低糖化水飴の含有量は、液体状調味液全重量に対する重量%で示されるものであり、残りの成分は、比較例1と同様の麺つゆの成分である。
【0054】
【表2】
【0055】
比較例3〜5、並びに本発明例2〜9につきパネラーに試食してもらい、比較例1と比較して、出汁の味覚が増えた場合は、正の数からなる評価値でその程度に合わせて最高が3点、最低が1点とし、比較例1と出汁の味覚が特段変わらない場合には、0点、比較例1と比較して出汁の味覚が逆に減った場合には、負の数からなる評価値でその程度に合わせて最高が−1点、最低が−3点とした、合計7段階での評価を行った。各パネラー評価結果並びに合計点数も表2に示す。
【0056】
本発明例2〜9は、低糖化水飴の含有量が、何れも本発明において規定した、液体状調味液全重量に対する重量%で2〜10%の範囲に入っている。このため、パネラーの評価結果の合計点数が何れも2以上であり出汁の味覚が強くなっていることが確認できる。これに対して、比較例3は、低糖化水飴の含有量が1%であり、本発明において規定した低糖化水飴の含有量の下限を下回っている。このため、合計点数が0点であり、出汁の味覚が特段強くならなかった。また、比較例4は、低糖化水飴の含有量が11%であり、本発明において規定した低糖化水飴の含有量の上限を下回っている。このため、合計点数が1点であり、出汁の味覚が特段強くならなかった。同様に比較例5は、低糖化水飴の含有量が13%であり、本発明において規定した低糖化水飴の含有量の上限を下回っている。このため、合計点数が0点であり、出汁の味覚が特段強くならなかった。水飴の比率が高くなることで、甘みがどうしても表に出てしまい、麺つゆから醸し出される出汁の旨味、風味が弱くなってしまったことが示唆されている。
【0057】
本発明例2〜9においては、特に本発明例6の合計点数が最も高く9点であった。このため、本発明例6において規定されている、低糖化水飴の含有量が7%の場合が最も出汁の旨味を効果的に引き出すことができることを意味している。本発明例3〜8は、低糖化水飴の含有量が3〜9%であり、合計点数が4以上であり、より出汁の旨味を効果的に引き出すことができることが示されている。本発明例5〜7は、低糖化水飴の含有量が6〜8%であり、合計点数が7以上であり、出汁の旨味を更に効果的に引き出すことができることが示されている。
【実施例3】
【0058】
以下、本発明を適用した液体状調味液の他の実施例3について説明をする。この実施例3においては低糖化水飴に加え、柑橘類の果汁成分を含んだ液体状調味液のサンプルについて、その味覚につきパネラーを介して検証している。パネラーは、30代男性2名、40代男性1名、50代男性1名、50代女性1名としている。
【0059】
使用したサンプルは、ポン酢(株式会社ミツカン、味ぽん MILD)に、低糖化水飴を液体状調味液全重量に対する重量%で5%含有させた。ちなみにポン酢を構成する成分は、本醸造醤油、米酢、ぶどう糖(果糖、液糖)、砂糖、食塩、醸造酢、昆布出汁、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、酸味料、香料、オレンジ果汁である。即ち、このポン酢は、旨味を醸し出す昆布出汁に加えて、柑橘系の風味を醸し出す性質を持つ。これに対して実際に、低糖化水飴を加えた場合における、出汁に基づく旨味風味の強さと、柑橘類の果汁成分に基づく柑橘系風味についてそれぞれ評価を行った。この評価では、低糖化水飴を添加していないポン酢と比較して、各風味が強くなった場合が2点、やや強い場合が1点、変わらない場合が0点、やや弱くなった場合が−1点、弱い場合が−2点としている。評価結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
この評価結果により、低糖化水飴を添加することにより、パネラー全員から、旨味風味、柑橘系風味が増強されている旨が評価された。従って、ポン酢のような旨味と柑橘系の2つの風味を醸し出す液体状調味液において低糖化水飴を含有させることにより、旨味風味のみならず、柑橘系風味をも増強させることができることを検証することができた。
【実施例4】
【0062】
以下、本発明を適用した液体状調味液の他の実施例4について説明をする。この実施例4においては、低糖化水飴を液体状調味液に加えることにより、出汁の味覚を維持しつつ減塩化が可能か否かを検証している。
【0063】
比較用サンプルとして、市販のだしつゆ(株式会社ミツカン、追いかつおつゆ)を水により2倍に希釈したものを準備した。また本発明サンプルとして、上述しただしつゆを水により2.5倍に希釈したものに、低糖化水飴を液体状調味液全重量に対する重量%で5%含有させたものを準備した。このだしつゆの詳細な構成成分は、醤油、ぶどう糖(果糖、液糖)、食塩、砂糖、かつおぶし、醸造酢、たん白加水分解物、酵母エキス、濃縮だし、魚介エキス、こんぶエキス、アルコール、調味料等である。パネラーは、30代男性2名、40代男性1名、50代男性1名、50代女性1名としている。
【0064】
これらの各サンプルについてパネラーA〜Eに試食させ、本発明サンプルが比較サンプルと比較して醤油味の濃さを評価した。比較用サンプルと比較して、醤油味の濃さが強い場合は2点、やや強い場合は1点、変わらない場合は0点、やや弱い場合は−1点、弱い
場合は−2点としている。評価結果を表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】
表4に示すように、本発明サンプルは、比較用サンプルよりもだしつゆの濃度は低くなっているにも係わらず、各パネラーの平均の評価結果によれば、醤油味の濃さは変わらなかった。即ち、低糖化水飴の糖組成が醤油のコク味を増長し、薄くなった醤油味を補っているものと考えられる。このため、このような醤油を使用した食品に、低糖化水飴を添加するのみで、醤油を減量しても、減量前と同等の醤油味の濃さを維持することができる。このため、この低糖化水飴を含有させることで減塩食品を提供することも可能となる。
【0067】
これにより、高血圧の症状を持つ人に対して、味のバランスを崩すことなく、醤油の旨味を引き出した減塩食品を提供することが可能となる。
【実施例5】
【0068】
以下、本発明を適用した液体状調味液の他の実施例5について説明をする。この実施例5においては、低糖化水飴を減塩調味液に加えることにより、出汁の味覚を維持しつつ減塩化が可能か否かを検証している。
【0069】
本実施例5において使用した減塩調味液は、減塩だしつゆで効果を検証した。使用した減塩だしつゆは、(ヤマキ株式会社 減塩だしつゆ 塩分50%カット)であり、減塩だしつゆと水とを体積比1:2で混合した比較サンプルと、減塩だしつゆと水とを体積比1:2で混合した上で低糖化水飴を添加した本発明例サンプルを調製した。本発明例サンプルは、低糖化水飴を、低糖化調味液全重量に対する重量%で5%含有させてなり、だしつゆから醸し出される味覚を変えることなく、苦味だけを軽減できるか否か検証を行った。
【0070】
ちなみに、使用した減塩だしつゆの成分は醤油、砂糖、しょうゆ加工品、かつおぶしエキス、みりん、かつおぶし、醸造酢、酵母エキス、かつおエキス、調味料(無機塩等)、酸味料、ポリグルタミン酸、甘味料(アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム・Lフェニルアラニン化合物)である。
【0071】
これらのサンプルを5人のパネラーA〜E(30代男性2人、40代男性1人、50代男性1人、50代女性1人)に試食させ、苦味の変化、出汁感の変化、全体の評価をそれぞれ行った。苦味の変化は、本発明例サンプルが、比較サンプルより苦味が減っている場合は1点、変わらない場合は0点、苦くなった場合は−1点で評価している。出汁感の変化は、本発明例サンプルが、比較サンプルより出汁感増長している場合は1点、変わらない場合は0点、出汁感が減った場合は−1点で評価している。更に全体の評価としては、本発明例サンプルが比較サンプルより美味しい場合は1点、変わらない場合は0点、美味しくない場合は−1点としている。
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
苦味の変化については、表5に示すようにパネラー全員が苦味が軽減された旨を評価した。出汁感の変化については表6に示すように、殆どのパネラーが出汁感が増長した旨を評価した。表5、6の結果から、水飴全重量に対する重量%で、固形分の糖構成が3糖類以下の糖分の含有量が30%以下であり、かつ4糖類以上の糖分の含有量が70%以上である低糖化水飴を混合させていることで、減塩調味液に含まれる塩化カリウム特有の苦味が発現する前に出汁感を効果的に引き出すことが可能となり、その後に発現されてくる苦味をうまくマスキングしていると考えられる。
【0076】
表7の全体の味の評価結果では、殆どのパネラーが全体の味覚が向上した旨を評価した。この結果からも、苦味が軽減し出汁感が増長したことにより、減塩だしつゆ本来のダシの効いたつゆの美味しさが引き出されているものと考えられる。
【0077】
図2は、実際にパネラーからの感想に基づいて作成した、味覚の強さ、種類に対する経過時間の関係である。横軸の経過時間は、各サンプルを口腔内の舌に接触させた時点からの時間を示している。なお、この
図2はあくまでパネラーからのインタビューに基づくイメージ図であり、定量的に測定した結果ではない。
【0078】
比較サンプルは、
図2(a)に示すように、醤油味、塩味、甘味、出汁風味の後に苦味が後味を長く引っ張ることとなる。これに対して本発明例サンプルは、
図2(b)に示すように、出汁感が増長したことにより苦味がより低く抑えられていることが分かる。しかもそれ以外の味覚は、比較サンプルとほぼ同様であることから減塩だしつゆ本来のダシの効いたつゆの美味しさが引き出されている。このため、本発明例サンプルは、比較サンプルよりも味覚全体が向上しているといえる。従って、本発明によれば減塩調味液や減塩加工食品特有の減塩率を向上させつつ苦味を抑制し、健康面と美味しさの双方を両立させることが可能となる。