(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-144064(P2017-144064A)
(43)【公開日】2017年8月24日
(54)【発明の名称】非常用排泄セット
(51)【国際特許分類】
A61F 5/452 20060101AFI20170728BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20170728BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20170728BHJP
A61F 13/495 20060101ALI20170728BHJP
【FI】
A61F5/452
A61F13/15 142
A61F13/49
A61F13/495
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-28272(P2016-28272)
(22)【出願日】2016年2月17日
(11)【特許番号】特許第6096343号(P6096343)
(45)【特許公報発行日】2017年3月15日
(71)【出願人】
【識別番号】516049799
【氏名又は名称】有限会社アキモト酸素
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】秋元 正幸
【テーマコード(参考)】
3B200
4C098
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB03
3B200BB17
3B200BB22
3B200CA03
3B200DA27
3B200DB27
4C098AA09
4C098CC19
4C098CC21
4C098CC24
4C098CC39
4C098CD01
4C098CE05
(57)【要約】
【課題】トイレのない場所で便意を催したときに、下半身を露出することなく排泄行為を行うことができ、排泄物の処理にも困らない、非常用排泄セットを提供する。
【解決手段】非常用排泄セット100は、排泄用具10(10M,10F,10U)と、被覆用具20と、皮膚払拭清浄材40と、凝固剤50と、消臭剤スプレー60と、廃棄用の袋体70と、を備えている。排泄用具10(10M,10F,10U)は、人体の腰部にパンツ状に装着可能な装着体と、装着体の内部と連通した状態で装着体の股間部分から袋状に垂下する気密性の排泄物収容部と、を有している。被覆用具20は人体の腰部回りにスカート状に装着可能であり、凝固剤50は排泄用具10(10M,10F,10U)の排泄物収容部12に収容された排泄物を固めるための薬剤である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の腰部にパンツ状に装着可能な装着体と、前記装着体の内部と連通した状態で前記装着体の股間部分から袋状に垂下する気密性の排泄物収容部と、を有する排泄用具と、
人体の腰部回りにスカート状に装着可能な被覆用具と、
前記排泄用具の排泄物収容部に収容された排泄物を固める凝固剤と、
湿式の皮膚払拭清浄材と、
消臭剤スプレーと、を備えた非常用排泄セット。
【請求項2】
前記被覆用具が、人体の下半身をスカート状に覆う被覆部材と、人体に装着した前記被覆部材の上縁付近に設けられた伸縮部と、を備えた請求項1記載の非常用排泄セット。
【請求項3】
前記装着体を形成する素材が不織布である請求項1または2記載の非常用排泄セット。
【請求項4】
前記凝固剤が、アクリル酸塩系の高吸水性樹脂(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物)を含むものである請求項1〜3のいずれかの項に記載の非常用排泄セット。
【請求項5】
少なくとも、使用後の前記排泄用具、前記被覆用具及び前記皮膚払拭清浄材と、凝固剤で固められた排泄物と、を密封状態で収容可能な袋体を備えた請求項1〜4のいずれかの項に記載の非常用排泄セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレのない場所で便意を催したときなどに使用する非常用排泄セットに関する。
【背景技術】
【0002】
交通渋滞に巻き込まれた自動車内や公共交通機関の車内、あるいは、近くにトイレの無い場所に外出しているときに便意を催したときに使用する非常用排泄具(あるいは非常用排泄セット)については、従来、様々なアイディアが出されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された「排尿便時に使用するスカート」あるいは特許文献2に記載された「スカート付使い捨ておむつ」などがある。
【0003】
特許文献1に記載された「排尿便時に使用するスカート」は、少なくとも下辺が膝より下方に位置する丈を持ったスカート本体と、該スカート本体の両側方にあって手を挿入できる開放溝と、スカート本体に取り付けられ、上記開放溝をスカート本体の裏面側から覆う覆い片と、で構成されている。この「排尿便時に使用するスカート」は、トイレのない場所で便意を催したときに腰に巻いて使用することにより、排便中の「下半身」の露出を回避することができる。
【0004】
特許文献2に記載された「スカート付使い捨ておむつ」は、股間部から前側に延在する腹側部分と、股間部から後側に延在する背側部分とを有し、排泄物を吸収する部分である内装体と、前記内装体の周囲を覆う筒状のスカート体と、を備え、前記内装体は、前後いずれか一方の端部が前記スカート体の対応部分に固定された固定部とされるとともに、他方の端部が前記スカート体の対応部分に着脱自在に取り付けられる着脱部とされている。この「スカート付使い捨ておむつ」は、下半身の露出を避けつつ容易に穿くことができるという長所を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3041089号公報
【特許文献2】特開2011−30790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された「排尿便時に使用するスカート」は、トイレのない場所で排便するときの「下半身」の露出を回避することができるという点で優れているが、排泄物の収容手段や処理手段について考慮されていないので、実際に使用するときは、簡易トイレや排泄物捕集具が必要である。
【0007】
一方、特許文献2に記載された「スカート付使い捨ておむつ」は排泄物を吸収する部分を備えているが、常時おむつを着用する子供用のものであるため、トイレのない場所で大人が排便する際に使用するには不向きである。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、トイレのない場所で便意を催したときに、下半身を露出することなく排泄行為を行うことができ、排泄物の処理にも困らない、非常用排泄セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の非常用排泄セットは、人体の腰部にパンツ状に装着可能な装着体と、前記装着体の内部と連通した状態で前記装着体の股間部分から袋状に垂下する気密性の排泄物収容部と、を有する排泄用具と、
人体の腰部回りにスカート状に装着可能な被覆用具と、
前記排泄用具の排泄物収容部に収容された排泄物を固める凝固剤と、
湿式の皮膚払拭清浄材と、
消臭剤スプレーと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、トイレのない場所で便意を催したときは、前記被覆用具を腰部にスカート状に装着し、下半身の着衣を脱いで前記排泄用具に穿き替えた後、前記排泄用具の股間部分にある袋状の排泄物収容部内に向かって排泄することができる。排泄に伴って発生する臭気は、消臭剤スプレーから消臭剤を散布することによって抑制することができる。
【0011】
排泄が終わったら、湿式の皮膚清浄材(例えば、ウエットティッシュペーパー)で局部を払拭した後、排泄用具を脱いで、排泄物収容部内に収容されている排泄物に対して凝固剤を投入し、固化後の排泄物が漏出しないように、排泄用具を丸めたり、折り畳んだりして封止する。排泄用具を脱いだ後は、下半身に着衣を纏い、腰部をスカート状に覆っている被覆用具を腰部から取り外せば、下半身を露出させることなく、一連の排泄行為を終わらせることができる。
【0012】
一方、丸めたり、折り畳んだりして封止した排泄用具は所定の場所へ投棄することができるので、排泄物の処理に困ることもない。なお、前述したように、凝固剤は排泄後に排泄物収容部内に投入しても良いが、排泄前に予め排泄物収容部内へ投入しておくこともできる。
【0013】
ここで、前記被覆用具が、人体の下半身をスカート状に覆う被覆部材と、下半身を覆う前記被覆部材の上縁付近に設けられた伸縮部と、を備えたものとすることができる。
【0014】
また、前記装着体を形成する素材は不織布であることが望ましい。
【0015】
さらに、前記凝固剤は、アクリル酸塩系の高吸水性樹脂(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物)を含むものを使用することができる。
【0016】
また、少なくとも、使用後の前記排泄用具、前記被覆用具及び前記皮膚払拭清浄材と、凝固剤で固められた排泄物と、を密封状態で収容可能な袋体を備えることができる。この場合袋体の材質がPBT(ポリエチレンテレフタレート)であれば、袋体に収容された排泄物などから発生する臭気が袋体を透過するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、トイレのない場所で便意を催したときに、下半身を露出することなく排泄行為を行うことができ、排泄物の処理にも困らない、非常用排泄セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態である非常用排泄セットを示す図である。
【
図2】
図1に示す非常用排泄セットを構成する男小便用の排泄用具を正面側から見た図である。
【
図4】
図1に示す非常用排泄セットを構成する女小便用の排泄用具を示す縦断面図である。
【
図5】
図1に示す非常用排泄セットを構成する男女大便用の排泄用具を示す縦断面図である。
【
図6】
図1に示す非常用排泄セットを構成する被覆用具を正面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1〜
図6に基づいて、本発明の実施形態である非常用排泄セット100について説明する。
図1に示すように、非常用排泄セット100は、排泄用具10(10M,10F,10U)と、被覆用具20と、湿式の皮膚払拭清浄材40と、袋体51入りの凝固剤50と、消臭剤スプレー60と、袋体70と、を備えている。
【0020】
使用前の非常用排泄セット100は、持ち運び時の利便性を考慮して、一つのパッケージ100p内に、折り畳まれた状態の排泄用具10及び被覆用具20、袋体51入りの凝固剤50、湿式の皮膚払拭清浄材40、消臭剤60及び袋体70がコンパクトに纏めた状態で収納されている。凝固剤50は排泄用具10の排泄物収容部12に収容された排泄物を固めるための薬剤である。湿式の皮膚払拭清浄材40は、所謂、ウエットティッシュペーパーと呼ばれるものであり、排泄後の局部付近などを払拭するためのものである。
【0021】
本実施形態では、凝固剤50として、アクリル酸塩系の高吸水性樹脂(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物)を含むもの、例えば、「三洋化成工業株式会社」の「商品名:サンフレッシュ ST−500D*」を使用している。「商品名:サンフレッシュ ST−500D*」は外観が白色粉末状の凝固剤であり、自重の約400倍の水を吸収し、硬いゲルを形成する性質を有している。なお、「商品名:サンフレッシュ ST−500D*」は一例であり、これに限定するものではない。
【0022】
排泄用具10は、その用途に応じて、男小便用の排泄用具10M、女小便用の排泄用具10F及び男女大便用の排泄用具10Uの3種類が1セットになっている。前述したように、男小便用の排泄用具10M、女小便用の排泄用具10F及び男女大便用の排泄用具10Uは小さく折り畳まれた状態でパッケージ100p内に収納されている。なお、排泄用具10(10M,10F,10U)は、いずれも紫外線による殺菌処理が施された状態でパッケージ100p内に収納されている。
【0023】
図2,
図3に示すように、男小便用の排泄用具10Mは、人体の腰部にパンツ状に装着可能な装着体11と、装着体11の内部と連通した状態で装着体11の股間部分から袋状に垂下する気密性の排泄物収容部12と、を有している。装着体11を人体の腰部に着脱可能に係止するため、装着体11の上縁部11aには、弾性変形可能なゴム紐11bが内蔵されている。
【0024】
排泄用具10(10M,10F,10U)を形成する装着体11は不織布で形成され、排泄物収容部12は、気液が透過しない、遮光性を有する合成樹脂シート材で形成されている。排泄物収容部12の上縁開口部12aは装着体11の股間部分に連通状に接合され、袋状の下縁部12bは排泄物が漏洩しないように閉塞されている。上縁開口部12aは、装着体11に対し気密状態に固着されている。
【0025】
装着体11に対する上縁開口部12aの固着強度を調べるため、装着体11が動かないように保持した状態で、排泄物収容部12内に錘(図示せず)を挿入して、5分間保持した後、上縁開口部12aと装着体11との固着部分の状態を目視確認するという実験を行った。この実験は、装着体11が動かないように保持した状態で、排泄物収容部12を、
図3中の矢線Xで示す方向に5分間引っ張り続けることに相当する。前述した実験手順に従い、排泄物収容部12内に挿入する錘の質量を「0.5kg」,「1.0kg」,「1.5kg」の順に増加させたところ、どの場合においても、上縁開口部12aと装着体11との固着部分に異常は見られず、実用上、問題がないことを確認できた。
【0026】
排泄用具10Mは男小便用であるため、
図3に示すように、排泄物収容部12の上縁開口部12aは、男性のペニスの位置に対応するように、装着体11の股間部分の最下部11aから股間正面部分に亘る範囲に固着され、排泄物収容部12は、装着体11の股間正面部分から前方下方に向って斜めに垂下した状態となっている。なお、
図3中に示している「110±5mm」,「230±5mm」及び「180±5mm」の数字は排泄物収容部12の各部分の寸法を示しているが、これらの数値に限定するものではない。
【0027】
図4に示すように、女小便用の排泄用具10Fは、人体の腰部にパンツ状に装着可能な装着体11と、装着体11の内部と連通した状態で装着体11の股間部分から袋状に垂下する気密性の排泄物収容部13と、を有している。排泄用具10Fを形成する装着体11は不織布で形成され、排泄物収容部13は、気液が透過しない、遮光性を有する合成樹脂シート材で形成されている。
【0028】
排泄物収容部13の上縁開口部13aは装着体11の股間部分に連通状に接合され、袋状の下縁部13bは排泄物が漏洩しないように閉塞されている。上縁開口部13aは、装着体11に対し気密状態に固着されている。装着体11に対する上縁開口部13aの固着強度を調べるため、
図3に示す排泄用具10Mに対する前述の実験と同様の実験を排泄用具10Fに対して行ったところ、排泄物収容部13内に挿入する錘の質量を「0.5kg」,「1.0kg」,「1.5kg」の順に増加させても、上縁開口部13aと装着体11との固着部分に異常は見られず、実用上、問題がないことを確認できた。
【0029】
図4に示す排泄用具10Fは女小便用であるため、女性の尿道口の位置に対応するように、排泄物収容部13の上縁開口部13aの前後方向の長さは、
図3に示す排泄用具10Mの排泄物収容部12の上縁開口部12aよりも長く設定されている。また、装着体11に対する上縁開口部13aの接合領域は、装着体11の股間正面部分から股間の最下部11aに至るまでの広い範囲に亘っている。なお、
図4中に示している「160±5mm」,「280±5mm」及び「255±5mm」の数字は排泄物収容部13の各部分の寸法を示しているが、これらの数値に限定するものではない。
【0030】
図5に示すように、男女大便用の排泄用具10Uは、人体の腰部にパンツ状に装着可能な装着体11と、装着体11の内部と連通した状態で装着体11の股間部分から袋状に垂下する気密性の排泄物収容部14と、を有している。装着体11は不織布で形成され、排泄物収容部14は気液が透過しない合成樹脂シート材で形成されている。排泄物収容部14の上縁開口部14aは装着体11の股間部分に連通状に接合され、袋状の下縁部14bは排泄物が漏洩しないように閉塞されている。上縁開口部14aは、装着体11に対し気密状態に固着されている。
【0031】
排泄用具10Uは男女大便用であるため、男性及び女性の肛門の位置から女性の尿道及び男性のペニスの位置に対応するように、排泄物収容部14の上縁開口部14aの前後方向の長さは、
図4に示す排泄用具10Fの排泄物収容部13の上縁開口部13aの前後方向の長さよりも長く設定されている。また、装着体11に対する上縁開口部14aの接合領域は、装着体11の股間の正面寄りの部分から股間の最下部11aを経て股間の背面寄りの部分に至るまでの広い範囲に亘っている。
【0032】
装着体11に対する上縁開口部14aの固着強度を調べるため、
図3に示す排泄用具10Mに対する前述の実験と同様の実験を排泄用具10Uに対して行ったところ、排泄物収容部14内に挿入する錘の質量を「0.5kg」,「1.0kg」,「1.5kg」の順に増加させても、上縁開口部14aと装着体11との固着部分に異常は見られず、実用上、問題がないことを確認できた。
【0033】
排泄用具10Uにおいて、排泄物収容部14の容積は、
図3に示す排泄物収容部12及び
図4に示す排泄物収容部13の容積よりも大きく設定されている。このため、大便を排泄しているときに小便が出ることがあっても、漏れなく排泄物収容部14内へ収容することができる。なお、
図5中に示している「300±5mm」,「340±5mm」及び「400±5mm」の数字は排泄物収容部14の各部分の寸法を示しているが、これらの数値に限定するものではない。
【0034】
このように、
図1に示す非常用排泄セット100は、男小便用の排泄用具10M、女小便用の排泄用具10F及び男女大便用の排泄用具10Uの3種類を具備しているため、使用者の性別や便意の状態など応じて使い分けることができ、便利である。
【0035】
なお、排泄物収容部12,13,14の大きさ(容積)や上縁開口部12a,13a,14aの前後方向の長さや、装着体11と上縁開口部12a,13a,14aの接合領域は前述した内容に限定するものではないので、例えば、
図3に示す排泄用具10Mにおいて、排泄物収容部12の上縁開口部12aの接合領域を、装着体11の股間部分の前後に亘って広く設定するとともに、排泄物収容部12の容積を大きくすることにより、一つの排泄用具で、男小便用、女小便用及び男女大便用の全てに対応できるようにすることもできる。
【0036】
次に、
図6に基づいて、被覆用具20について説明する。
図6に示すように、被覆用具20は、人体の下半身をスカート状に覆うことができる腰巻状の被覆部材21と、下半身を覆う被覆部材21の上縁付近に設けられた伸縮部22と、を備えている。胴回り方向の被覆部材21の辺縁部21a,21b付近は、着用中に互いに重なり合うように形成されている。被覆部材21は透けて見えない程度の遮光性を有する布(または不織布)で形成されている。被覆用具20を人体の腰部に着脱可能に係止するため、伸縮部22には弾性変形可能なゴム紐(図示せず)が内蔵されている。
【0037】
凝固剤50は袋体51内に密封されており、使用時には袋体51を破り、その中に収容されている凝固剤50を排泄物収容部12などの内部へ投入する。前述したように、凝固剤50は、アクリル酸塩系の高吸水性樹脂(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物)を含む「三洋化成工業株式会社」の「商品名:サンフレッシュ ST−500D*」を使用しているが、これに限定するものではない。
【0038】
消臭剤スプレー60は、排泄中に発生する臭気を消すために空気中に消臭剤を散布したり、排泄用具10Mの排泄物収容部12などの内部に収容された排泄物から発生する臭気を消すために排泄物収容部12などの内部へ消臭剤を散布したりすることができる。
【0039】
廃棄用の袋体70は、開口部72を開閉可能に封止するシール部71を有しており、使い終わった後、丸めたり、折り畳んだりした排泄用具10M,10F,10U、被覆用具20、使用後の皮膚払拭清浄材40などを開口部72から入れて、シール部71を封止することにより、臭気が漏れないように密封状態に保つことができる。袋体70の材質はPBT(ポリエチレンテレフタレート)であるため、袋体70内の収容物から発生する臭気が外部へ漏洩するのを防止することができる。本実施形態では、PBT製の袋体70として、「株式会社アーランド」の「商品名:におわん袋」を使用しているが、これに限定するものではない。
【0040】
次に、非常用排泄セット100の使い方について説明する。トイレのない場所で便意を催したときは、パッケージ100pを開封して被覆用具20を取り出し、被覆用具20を足元から穿くか、頭から被るかして、腰部にスカート状に装着し、伸縮部22をウエストの位置に合わせて止めると、使用者の下半身は被覆用具20でスカート状に覆われた状態となる。また、使用者の性別や便意の状況に応じて、排泄用具10M,10F,10Uのいずれかをパッケージ100pから取り出す。なお、本実施形態では、以下、
図5に示す排泄用具10Uを使用した場合について説明するが、これに限定するものではない。
【0041】
この後、下半身の着衣及び下着を脱ぎ、例えば、排泄用具10Uを、パンツを穿くように穿き、装着体11の上縁部11aを腰部まで引き上げ、排泄用具10Uの股間部分にある袋状の排泄物収容部14を排便(排尿)に適した位置に合わせる。この後、排泄物収容部14内に向かって排泄(排便、排尿)する。このとき、排泄に伴って発生する臭気を消すため、消臭剤スプレー60を使用して消臭剤を散布することができる。
【0042】
排泄が終わったら、排泄物収容部14内に収容された排泄物(図示せず)が漏出しないように注意しながら、排泄用具10Uを下半身から脱いだ後、排泄物収容部14内に収容されている排泄物に対して、袋体51中の凝固剤50を投入する。このとき、排泄物収容部14内に向かって消臭剤スプレー60から消臭剤を散布してもよい。排泄物収容部14内へ凝固剤50を投入すると、自重の約400倍の水を吸収し、硬いゲルを形成する性質を有する凝固剤50が速やかに水分を吸収して、排泄物とともに凝固するので、凝固後の排泄物が漏出しないように、排泄用具10Uを丸めたり、折り畳んだりして封止する。排便後の局部付近や手などは、皮膚払拭清浄材40を使用して払拭することができる。
【0043】
排泄用具10Uを脱いだ後は、下半身に着衣を纏い、被覆用具20の収縮部22を緩め、腰部をスカート状に覆っている被覆部材21を腰部から取り外せば、使用者は下半身を露出させることなく、一連の排泄行為を終わらせることができる。
【0044】
排便後、固化した排泄物とともに丸めたり、折り畳んだりした排泄用具10Uや被覆用具20、及び使用後の皮膚払拭材40などは、袋体70の開口部72を開いて、その中へ収容し、シール部71を封止することにより、臭気が漏れないように密封状態に保つことができる。使用後の排泄用具10Uや固化した排泄物などが収容された袋体70は、法律などで定められた所定の場所へ投棄することができるので、排泄物の処理に困ることもない。また、排泄用具10M,10Fについても、前述と同様の手順で使用することができる。
【0045】
なお、使用前の排泄用具10(10M,10F,10U)、被覆用具20、皮膚払拭材40、凝固剤50及び消臭剤スプレー60などを袋体70に収容して非常用排泄セットを構成し、排便に使用した後は、使用後の排泄用具10(10M,10F,10U)や固化した排泄物などを再び袋体70に収容して廃棄するような使い方をすることもできる。
【0046】
凝固剤50を排泄物収容部14などの内部へ投入するタイミングについては、前述したように、排泄を終えて、排泄用具10Uなどを脱いだ後に投入しても良いが、排泄後、排泄用具10Uなどを腰部から若干ズリ下げた状態にして、凝固剤50を排泄物収容部14などの内部へ投入することもできる。そのほか、排泄用具10Uなどを身体に装着する直前(排泄前)の段階で、凝固剤50を排泄物収容部14などの内部へ投入しておくこともできる。
【0047】
以上のように、トイレのない場所で便意を催したときに、非常用排泄セット100を使用すれば、使用者は下半身を露出することなく排泄行為を済ませることができ、排泄物の処理に困ることもない。なお、
図1〜
図6に基づいて説明した非常用排泄セット100は本発明の一例を示すものであり、本発明の非常用排泄セットは前述した非常用排泄セット100に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の非常用排泄セットは、交通渋滞に巻き込まれた自動車内や公共交通機関の車内、あるいは旅行先など、トイレのない場所で便意を催したときの対応手段として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10,10M,10F,10U 排泄用具
11 装着体
11a 上縁部
11b ゴム紐
12,13,14 排泄物収容部
12a,13a,14a 上縁開口部
12b,13b,14b 下縁部
20 被覆用具
21 被覆部材
22 伸縮部
40 皮膚払拭清浄材
50 凝固剤
51,70 袋体
60 消臭剤スプレー
71 シール部
72 開口部
100 非常用排泄セット
100p パッケージ
【手続補正書】
【提出日】2017年1月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の腰部回りにスカート状に装着可能な被覆用具と、
前記被覆用具を人体の腰部回りにスカート状に装着し人体の下半身の着衣及び下着を脱いだ状態で前記腰部にパンツ状に装着可能な装着体と、前記装着体の内部と連通した状態で前記装着体の股間部分に上縁開口部が接合され前記股間部分から袋状に垂下する気密性の合成樹脂シートで形成された排泄物収容部と、を有する排泄用具と、
前記排泄用具の排泄物収容部に収容された排泄物を固める凝固剤と、
湿式の皮膚払拭清浄材と、
消臭剤スプレーと、
少なくとも、使用後の前記排泄用具、前記被覆用具及び前記皮膚払拭清浄材と、凝固剤で固められた排泄物と、を開口部から入れて収容可能であって前記開口部を密封状態に封止するシール部を有する廃棄用の袋体と、を備え、
前記被覆用具、前記排泄用具、前記凝固剤、前記皮膚払拭清浄剤、前記消臭剤スプレー及び前記袋体を一つのパッケージ内に収納した非常用排泄セット。
【請求項2】
前記被覆用具が、人体の下半身をスカート状に覆うことができる腰巻状の被覆部材と、人体に装着した前記被覆部材の上縁付近に設けられた伸縮部と、を備えた請求項1記載の非常用排泄セット。
【請求項3】
前記装着体を形成する素材が不織布である請求項1または2記載の非常用排泄セット。
【請求項4】
前記凝固剤が、アクリル酸塩系の高吸水性樹脂(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物)を含むものである請求項1〜3のいずれかの項に記載の非常用排泄セット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の非常用排泄セットは、
人体の腰部回りにスカート状に装着可能な被覆用具と、
前記被覆用具を人体の腰部回りにスカート状に装着し人体の下半身の着衣及び下着を脱いだ状態で前記腰部にパンツ状に装着可能な装着体と、前記装着体の内部と連通した状態で前記装着体の股間部分
に上縁開口部が接合され前記股間部分から袋状に垂下する気密性
の合成樹脂シートで形成された排泄物収容部と、を有する排泄用具と
、
前記排泄用具の排泄物収容部に収容された排泄物を固める凝固剤と、
湿式の皮膚払拭清浄材と、
消臭剤スプレーと
、
少なくとも、使用後の前記排泄用具、前記被覆用具及び前記皮膚払拭清浄材と、凝固剤で固められた排泄物と、を開口部から入れて収容可能であって前記開口部を密封状態に封止するシール部を有する廃棄用の袋体と、を備え、
前記被覆用具、前記排泄用具、前記凝固剤、前記皮膚払拭清浄剤、前記消臭剤スプレー及び前記袋体を一つのパッケージ内に収納したことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
ここで、前記被覆用具が、人体の下半身をスカート状に覆う
ことができる腰巻状の被覆部材と、下半身を覆う前記被覆部材の上縁付近に設けられた伸縮部と、を備えたものとすることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
また、
本発明の非常用排泄セットは、少なくとも、使用後の前記排泄用具、前記被覆用具及び前記皮膚払拭清浄材と、凝固剤で固められた排泄物と、
を開口部から入れて収容可能であって前記開口部を密封状態に封止するシール部を有する廃棄用の袋体を備え
ている。この場合袋体の材質がPBT(ポリエチレンテレフタレート)であれば、袋体に収容された排泄物などから発生する臭気が袋体を透過するのを防止することができる。