【解決手段】本発明の一実施形態は、発泡樹脂の押出方法である。この方法は、所定量の発泡樹脂をアキュムレータに貯留させる段階と、アキュムレータに貯留した所定量の発泡樹脂をTダイに供給する段階と、アキュムレータから供給された発泡樹脂を基に、Tダイのスリットからシート状の発泡樹脂を鉛直下方に押し出す段階と、Tダイからの発泡樹脂の押出が行われない期間の少なくとも一部において、アキュムレータとTダイの間の発泡樹脂の流路を閉塞させる段階と、を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の発泡樹脂の押出方法では、所定量の発泡樹脂を断続的に順次押出していく。このとき、発泡樹脂の押出しが完了した時点でTダイ内に残留した発泡樹脂に含まれる発泡剤が発泡しようとする圧力によってTダイの押出スリットが開口し、意図しないタイミングで発泡樹脂が押出スリットから漏れ出してしまう場合がある。
【0005】
よって、本開示は、発泡樹脂を押し出すときに、意図しないタイミングで発泡樹脂が漏れ出してしまうことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一観点は、発泡樹脂の押出方法である。
この方法は、
所定量の発泡樹脂をアキュムレータに貯留させる段階と、
アキュムレータに貯留した所定量の発泡樹脂をTダイに供給する段階と、
アキュムレータから供給された発泡樹脂を基に、Tダイのスリットからシート状の発泡樹脂を鉛直下方に押し出す段階と、
Tダイからの発泡樹脂の押出が行われない期間の少なくとも一部において、アキュムレータとTダイの間の発泡樹脂の流路を閉塞させる段階と、
を含む。
【0007】
上記押出方法では、Tダイからの発泡樹脂の押出が行われない期間において、
第1のタイミングで、前記Tダイのスリットを閉塞させる段階と、
前記第1のタイミングと同一またはそれより後の第2のタイミングで、アキュムレータとTダイの間の発泡樹脂の流路を閉塞させる段階と、
前記第2のタイミングより後の第3のタイミングで、アキュムレータとTダイの間の発泡樹脂の流路を開放させる段階と、
前記第3のタイミングと同一またはそれより後の第4のタイミングで、前記Tダイのスリットを開放させる段階と、
を含んでもよい。
【0008】
本開示の別の観点は、発泡樹脂の押出装置である。
この押出装置は、
発泡樹脂の所定量を貯留するアキュムレータと、
アキュムレータに貯留された発泡樹脂を下流側の流路へ送出するプランジャと、
アキュムレータから供給される発泡樹脂を鉛直下方に押し出すスリットを備えたTダイと、
アキュムレータとTダイの間の発泡樹脂の流路に設けられ、当該流路を開放または閉塞させるバルブと、
前記バルブを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、Tダイからの発泡樹脂の押出が行われない期間の少なくとも一部において、アキュムレータとTダイの間の発泡樹脂の流路を閉塞させるように、前記バルブを制御することを特徴とする。
【0009】
前記押出装置は、Tダイのスリットの幅を調整する調整機構、をさらに備え、
前記コントローラは、Tダイからの発泡樹脂の押出が行われない期間において、
第1のタイミングで、前記Tダイのスリットを閉塞させ、
前記第1のタイミングと同一またはそれより後の第2のタイミングで、アキュムレータとTダイの間の発泡樹脂の流路を閉塞させ、
前記第2のタイミングより後の第3のタイミングで、アキュムレータとTダイの間の発泡樹脂の流路を開放させ、
前記第3のタイミングと同一またはそれより後の第4のタイミングで、前記Tダイのスリットを開放させるように、
前記バルブおよび前記調整機構を制御してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る発泡樹脂の押出方法によれば、意図しないタイミングで発泡樹脂が漏れ出してしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る樹脂の押出装置を含む成形装置について説明する。この押出装置は、熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した発泡樹脂をシート状に押し出すものである。
【0013】
(1)第1の実施形態
本発明に係る樹脂成形品の成形装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。本実施形態では、樹脂成形品として、単一のシート状の成形品を対象としている。
【0014】
(1−1)成形装置の構成
図1に示すように、樹脂成形品の成形装置10は、押出装置12と、押出装置12の下方に配置された型締装置14とを有する。
【0015】
図1に示すように、押出装置12は、ホッパ16が付設されたシリンダ18と、シリンダ18に連結された油圧モータ20と、シリンダ18と内部が連通したアキュムレータ24と、プランジャ26と、バルブ27とを備える。プランジャ26は、アキュムレータ24に内挿されており、プランジャ26の駆動することによりプランジャ26をアキュムレータ24内で進退させ、それによってアキュムレータ24の内容積を可変とする。押出装置12には、プランジャ26を駆動するための油圧シリンダ(図示せず)が付設されている。
【0016】
押出装置12では、ホッパ16から投入された、発泡剤を添加した熱可塑性発泡樹脂が、シリンダ18内で油圧モータ20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の発泡樹脂(以下、「溶融樹脂」ともいう。)がアキュムレータ24に移送されて一定量貯留される。アキュムレータ24に貯留された溶融樹脂は、プランジャ26の駆動によりバルブ27を通してTダイ28に供給される。すなわち、プランジャ26を駆動してアキュムレータ24の内容積を小さくして、アキュムレータ24の内部に貯留された溶融樹脂を加圧してTダイ28に送り込むことで、溶融樹脂への押出圧力を発生させるようにしている。
【0017】
Tダイ28は、供給された溶融樹脂を押出スリットから連続的なシート状の溶融樹脂シートPとして下方に押し出す。押し出された溶融樹脂シートPは、間隔を隔てて配置された一対のローラ30A,30Bによって挟圧されながら下方に向かって送り出されて金型32A,32Bの間に垂下される。これにより、後に詳細に説明するように、シート状の溶融樹脂シートPが上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、金型32A,32Bの間に配置される。
【0018】
バルブ27は、アキュムレータ24とTダイ28の間に配設されており、アキュムレータ24からTダイ28への溶融樹脂の供給を制御するために設けられている。すなわち、バルブ27が開放状態のときにはアキュムレータ24からTダイ28への溶融樹脂の流路が開放し、バルブ27が閉塞状態のときにはアキュムレータ24からTダイ28への溶融樹脂の流路が閉塞する(閉じられる)。バルブ27の作用については後述する。
【0019】
溶融樹脂シートPの熱可塑性樹脂の材料は限定しないが、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。溶融樹脂シートPの樹脂材料の例として、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンや、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のアクリル誘導体のいずれか、又は2種類以上の混合物に発泡剤を添加した材料が挙げられる。例えば、溶融樹脂シートPは、発泡ポリスチレンや発泡ポリプロピレンを含む材料からなる。
発泡剤としては、物理発泡剤、化学発泡剤およびその混合物のいずれを用いてもよい。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。
溶融樹脂シートPの発泡倍率は、1.5〜15倍の範囲であり、代表的には4倍、好ましくは2.5〜10倍である。なお、発泡倍率とは、発泡前の混合樹脂の密度を、発泡後の発泡樹脂の見かけ密度で割った値である。
【0020】
図2に示すように、Tダイ28の本体は、先端にダイリップ36aを有するダイ38aと、先端にダイリップ36bを有するダイ38bとを重ね合わせることにより構成される。ダイリップ36a、36b同士の間隔が押出スリット34の間隔を形成している。スリット隙間調整装置42およびスリット隙間駆動装置44が押出スリット34のスリット隙間Aの間を調整するために設けられている。
ダイリップ36aおよびダイリップ36bそれぞれの近傍には、凹溝56aおよび凹溝56bが設けられている。スリット隙間調整装置42およびスリット隙間駆動装置44により凹溝56aおよび凹溝56bを押出方向に対して直交する方向(
図2の方向D1または方向D2)にそれぞれ撓ませ、それによって、押出スリット34の間隔を調整するようにしている。スリット隙間調整装置42は、ダイリップ36aを変形させて、シートの幅方向(
図2の紙面の裏から表の方向)における厚みの均一性を調整するように機能する。スリット隙間駆動装置44は、ダイリップ36bを変形させて、押出スリット34を閉じるか、または、溶融樹脂シートの押出方向の厚みを調整するように機能する。Tダイ28に供給された発泡樹脂は、
図2に示すTダイ28の本体のマニホールドから流路35を通って押出スリット34から溶融樹脂シートとして押し出される。
【0021】
スリット隙間調整装置42としては熱膨張式または機械式があり、その両方の機能を併せ持つ装置を用いることが好ましい。スリット隙間調整装置42は押出スリット34の幅方向に沿って等間隔に複数配置され、各スリット隙間調整装置42によってスリット隙間Aをそれぞれ狭くしたり、広くしたりすることで幅方向におけるシートの厚みを均一なものとする。
【0022】
各スリット隙間調整装置42は、ダイリップ36aに向けて進退自在に設けたダイボルト46を有し、その先端に圧力伝達部を介して調整軸50が配置されている。調整軸50には締結ボルト52により係合片54が結合されており、係合片54はダイリップ36aに連結されている。ダイボルト46を前進させると圧力伝達部を介して調整軸50が先端方向に押し出されて、ダイリップ36aが押圧される。これにより、ダイリップ36aは凹溝56aの部位で変形してスリット隙間Aが狭くなる。スリット隙間Aを広くするにはこれと逆にダイボルト46を後退させる。
【0023】
さらに、上記機械式の調整手段に合わせて熱膨張式の調整手段を用いることで精度良くスリット隙間Aを調整することができる。具体的には、図示しない電熱ヒーターにより調整軸50を加熱して熱膨張させることでダイリップ36aが押圧され、スリット隙間Aが狭くなる。また、スリット隙間Aを広くするには電熱ヒーターを停止させ、図示しない冷却手段により調整軸50を冷却して収縮させる。
【0024】
スリット隙間駆動装置44(調整機構の一例)は、摺動バー58および駆動片60からなる。摺動バー58は摺動溝62内に配置されており、後述する駆動手段によって押出スリット34の幅方向に移動可能となっている。駆動片60はダイリップ36bに連結されている。摺動バー58が押出スリット34の幅方向に進退するとこれに連動して駆動片60がダイリップ36bを押し引きする。これにより、ダイリップ36bは凹溝56bの部位で変形し、スリット隙間Aを変動させることができる。
【0025】
Tダイ28より押し出された溶融樹脂シートは、金型32A,32Bの間に垂下された状態で、つまり型締めされる時点において押出し方向の厚みが均一となるように調整することが好ましい。この場合、スリット隙間Aを押出し開始から徐々に広げ、押出し終了時に最大となるように変動させる。これによりTダイ28より押し出される溶融樹脂シートの厚みは押出し開始から徐々に厚くなるが、溶融樹脂シートは自重により引き伸ばされて溶融樹脂シートの下方から上方へ徐々に薄くなるため、スリット隙間Aを広げて厚く押出した分とドローダウン現象により引き伸ばされて薄くなった分が相殺されて、溶融樹脂シートの上方から下方にわたって均一な厚みに調整することができる。
【0026】
また、本実施形態では、Tダイ28からの溶融樹脂シートの押出が行われない期間において押出スリット34から溶融樹脂シートが漏れ出すことがないように、押出スリット34を閉塞させる(つまり、スリット隙間Aをゼロにする)ように制御される。
【0027】
図3は、スリット隙間駆動装置44の実施態様を示す図である。
図3において方向E1および方向E2が、それぞれ、
図2の紙面の表から裏の方向、および、
図2の紙面の裏から表の方向に相当し、図示しないダイリップ36bは、方向E4に位置する。ダイリップ36bは摺動バー58を収容し、摺動バー58の可動ガイドとなる摺動溝62がダイリップ36bと平行に設けられている。さらに、摺動バー58には突起64が設けられており、破線で示す駆動片60には同様に破線で示す傾斜溝66が設けられている。傾斜溝66は摺動バー58の移動方向に対して傾斜角をもって一定の長さで形成されている。傾斜溝66内には摺動バー58の突起64が係合されている。摺動バー58を摺動溝62に沿って摺動させると突起64が傾斜溝66の壁面を押して摺動バー58の移動方向と垂直方向に駆動片60が移動する構造となっている。
【0028】
具体的には、駆動手段によって、摺動バー58を
図3において方向E2に摺動させると、摺動バー58に設けられた突起64が、傾斜溝66のダイリップ36b側の壁面(
図3において方向E4側の壁面)を押圧して駆動片60をダイリップ36bの側(
図3において方向E4)へ移動させる。これにより駆動片60に連結されたダイリップ36bに力が伝達されて、スリット隙間Aを狭くするようにダイリップ36bが変形する。スリット隙間Aを完全に閉塞させることもできる。
【0029】
逆に、駆動手段によって、摺動バー58を
図3において方向E1に摺動させると、突起64が傾斜溝66のダイリップ36から離れた側の壁面(
図3において方向E3側の壁面)を押圧して駆動片60をダイリップ36bの反対側(
図3において方向E3)へ移動させる。これにより、駆動片60に連結されたダイリップ36bはスリット隙間Aを広くするように変形する。以上の操作をアキュムレータ24からTダイ28に供給された熱可塑性樹脂の押出しに連動させることで、押出スリットの開閉、および、スリット隙間Aから押し出される溶融樹脂シートの押出し方向の肉厚調整が可能となる。
【0030】
駆動手段としては、摺動バー58を
図3において方向E1または方向E2に移動させるためのものであれば適宜選択することが可能であるが、押圧力および送り精度などの観点からアクチュエータを用いることが好ましい。本実施形態では、当該アクチュエータをコントローラ15が制御する。
図3には、アクチュエータとして油圧シリンダを用いた場合の駆動手段を例示している。
図3に示すように、油圧シリンダ82等の直線方向の動力を駆動源とする場合には、摺動バー58の移動方向と平行に油圧シリンダ82を配置することができ、動力を直接摺動バー58に与えることができる。油圧シリンダ82は位置センサ84により移動距離を精度良く調整することが可能である。油圧シリンダ82のピストンロッド86先端にスライドブロック76を一体に固定する。スライドブロック76にはブラケット80を介して摺動バー58が締結ボルト81により固定されている。スライドブロック76がガイドバー78に沿って移動することで、摺動バー58は
図3において方向E1または方向E2に移動させられる。
【0031】
次に、
図4を参照して、バルブ27の構成および動作を説明する。
図4は、本実施形態の押出装置12のバルブ27の動作を示す図であり、一部を断面によって表している。
図4に示すように、バルブ27は、バルブ本体271、シャフト272、および、モータ273を備える。バルブ本体271とモータ273は、シャフト272によって連結されている。モータ273は、コントローラ15によって制御される電気モータであり、コントローラ15からの指令に基づいて、シャフト272を通してバルブ本体271を回転駆動する。
アキュムレータ24とバルブ27の間には、アキュムレータ24に貯留された溶融樹脂の流路274が設けられている。バルブ27とTダイ28(より具体的には、Tダイ28の本体のマニホールド)の間には、流路275が設けられている。
【0032】
図4に示すように、コントローラ15からバルブ本体271を閉塞させる制御信号を受けると(つまり、弁閉塞時)、モータ273は、閉塞位置となるようにバルブ本体271を駆動する。バルブ本体271は、閉塞位置において流路274と流路275を遮断するように構成されている。他方、コントローラ15からバルブ本体271を開放させる制御信号を受けると(つまり、弁開放時)、モータ273は、開放位置となるようにバルブ本体271を駆動する。バルブ本体271は、開放位置において流路274と流路275を連通させるように構成されている。
【0033】
本実施形態では、バルブ27は、溶融樹脂の押出が行われない期間において閉塞され、それによってアキュムレータ24の圧力がTダイ28のダイリップ36a,36bに掛からないようにする。これにより、溶融樹脂の押出が行われない期間において溶融樹脂が押出スリット34から漏れ出すことを防止することができる。
【0034】
次に、
図5および
図6を参照して、型締装置14の構成と動作について説明する。
図5は、本実施形態の成形装置10において、溶融樹脂シートが金型32A,32Bの間に配置された状態を示す概略側面図である。
図6は、本実施形態の成形装置10において、金型32A,32Bが型締される状態を示す概略側面図である。
図5に示すように、型締装置14は、2つの金型32A,32Bと、金型32A,32Bを溶融状態の溶融樹脂シートの供給方向に対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動させる金型駆動装置(図示せず)とを有する。
【0035】
図5に示すように、2つの金型32A,32Bは、金型32Aに形成されたキャビティ116を対向させた状態で配置される。キャビティ116の表面には、溶融状態の溶融樹脂シートPに基づいて成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸部が設けられる。2つの金型32A,32Bそれぞれにおいて、キャビティ116のまわりには、ピンチオフ部(図示せず)が形成され、このピンチオフ部は、キャビティ116のまわりに環状に形成され、対向する金型32A,32Bに向かって突出する。これにより、2つの金型32A,32Bを型締する際、それぞれのピンチオフ部の先端部が当接し、溶融状態の溶融樹脂シートPの周縁にパーティングラインが形成されるようにしている。少なくとも金型32Aには、真空装置(図示せず)が設けられている。
【0036】
樹脂成形品を形成するには先ず、
図5に示すように、Tダイ28から溶融樹脂シートPを下方に所定の押出速度で押し出す。押し出された溶融樹脂シートPは、ローラ30A,30Bによって下方に送られる。このとき、ローラ30A,30Bの間隔および回転速度を調整することで、溶融樹脂シートPは、押出方向に一様な厚みを形成した状態で、金型32A,32Bの間に配置される。
【0037】
次いで、摺動部33Aを、金型32Aに対して金型32Bに向かって突出させることで、金型32A,32B間に配置された溶融樹脂シートPの一方の側面に当接させ、摺動部33Bを、金型32Bに対して金型32Aに向かって突出させることで、金型32A,32B間に配置された溶融樹脂シートPの他方の側面に当接させる。次に、真空装置(図示せず)を用いてキャビティ116内の空気を吸引することで、溶融樹脂シートPがキャビティ116の外表面に沿った形状に賦形される。次に、
図6に示すように、金型32A,32Bを型締し、それぞれのピンチオフ部の先端部が当接することで、溶融状態の溶融樹脂シートPの周縁にパーティングラインが形成される。その後、金型32A,32Bを開型して樹脂成形品を取り出す。
【0038】
(1−2)押出装置の動作
次に、本実施形態の押出装置12の動作について、本実施形態において溶融樹脂を押し出すときのスリット隙間駆動装置44による押出スリット34とバルブ27の開閉動作に着目し、
図7および
図8を参照して説明する。
図7および
図8には、本実施形態において、連続する2回分の押出工程であるN回目の押出工程からその次のN+1回目の押出工程までの、押出スリット34とバルブ27の各々の開閉動作の例を示すタイミングチャートが示されている。前述したように、スリット隙間駆動装置44とバルブ27はコントローラ15によって制御される。
【0039】
(1−2−1)第1の動作例(
図7)
図7に示す第1の動作例において、時刻t2は、第1のタイミングおよび第2のタイミングの一例であり、時刻t3は、第3のタイミングおよび第4のタイミングの一例である。
【0040】
図7において、時刻t1にプランジャ26を駆動させてN回目の押出しを開始する。同時に、バルブ27および押出スリット34を閉状態から開状態にし、それによってアキュムレータ24に貯留されている溶融樹脂が、バルブ27を介してTダイ28の押出スリット34から押し出される。時刻t1〜t2の間はTダイ28の押出スリット34から溶融樹脂の押し出しが継続的に行われるが、その間、溶融樹脂シートの肉厚調整のために押出スリット34のスリット隙間Aの幅が調整される。
時刻t2に達すると、バルブ27および押出スリット34を同時に開状態から閉状態にし、それによってN回目の溶融樹脂の押し出しが完了する。
【0041】
時刻t2〜t3の間は、バルブ27および押出スリット34の閉状態が維持される。この時点でTダイ28の本体のマニホールドや流路35等の溶融樹脂の流路には、時刻t1〜t2の間に押し出されなかった溶融樹脂(発泡樹脂)が残留している。そのため、仮に時刻t2〜t3の間にアキュムレータ24とTダイ28が連通していたならば、アキュムレータ24に溶融樹脂を貯留しているときに生ずるアキュムレータ24の圧力によってTダイ28のダイリップ36bを撓ませ、押出スリット34を開ける方向の力が働くことから、Tダイ28内に残留している溶融樹脂が押出スリット34から漏れ出す可能性がある。それに対して本動作例では、時刻t2〜t3の間はバルブ27が閉状態となっており、アキュムレータ24の圧力がバルブ27によって遮断されているため、Tダイ28内に残留している溶融樹脂が押出スリット34から漏れ出すことが抑制される。
【0042】
時刻t3に達すると、プランジャ26を駆動させてN+1回目の押出しを開始する。同時に、バルブ27および押出スリット34を閉状態から開状態にし、それによってアキュムレータ24に貯留されている溶融樹脂が、バルブ27を介してTダイ28の押出スリット34から押し出される。時刻t3〜t4の間はTダイ28の押出スリット34から溶融樹脂の押し出しが継続的に行われる。
【0043】
(1−2−2)第2の動作例(
図8)
図8に示す第2の動作例は、バルブ27の開閉タイミングと押出スリット34の開閉タイミングが一致していない点で、
図7に示す第1の動作例と異なる。
図8に示す第2の動作例において、時刻T3,T4,T5,T6はそれぞれ、第1,第2,第3,第4のタイミングの一例である。
【0044】
この動作例では、N回目の押し出しを行う前の時刻T1において、バルブ27を閉状態から開状態にし、それによってアキュムレータ24とTダイ28の間を溶融樹脂が連通可能な状態にする。時刻T1より後の時刻T2において、押出スリット34を閉状態から開状態にする。このように、押出スリット34をバルブ27よりも後に開状態にするのは、極力一様な発泡状態の溶融樹脂(発泡倍率や気泡径が一様な溶融樹脂)を押し出すためである。仮に、バルブ27よりも先に押出スリット34を開状態にすると、大気圧に晒されて発泡ガスを放出した状態にあるTダイ28内の溶融樹脂が先に押し出され、その後にアキュムレータ24内の溶融樹脂が押し出されるため、発泡倍率や気泡径が極端に異なる溶融樹脂が1枚の溶融樹脂シートとして押し出されることになる。つまり、押出の初期段階での気泡が粗大になって、1ショット内での気泡性状の変動が大きくなる。かかる状況を避けるために、本動作例では、押出スリット34を開状態にする前にバルブ27を開状態にして、押し出し前にTダイ28内の溶融樹脂が発泡してしまうのを抑えるようにしている。
【0045】
時刻T2に押出スリット34を開状態とすると同時に、プランジャ26を駆動させてN回目の押出しを開始する。既にバルブ27は開状態となっているため、プランジャ26の駆動とともに溶融樹脂は押出スリット34から押し出される。
時刻T2〜T3の間はTダイ28の押出スリット34から溶融樹脂の押し出しが継続的に行われるが、その間、溶融樹脂シートの肉厚調整のために押出スリット34のスリット隙間Aの幅が調整される。
【0046】
N回目の押し出しが終了する時刻T3において、押出スリット34を開状態から閉状態とする。そして時刻T3より後の時刻T4において、バルブ27を開状態から閉状態にする。このように、バルブ27を押出スリット34よりも後に閉状態にするのは、以下の理由による。すなわち、仮に、バルブ27を押出スリット34よりも先に閉状態にしたならば、アキュムレータ24からの圧力がバルブ27で遮断されるため、Tダイ28内に発泡した溶融樹脂が残留する。そのため、次のN+1回目の押し出しの初期段階で発泡状態が一様でない溶融樹脂が押し出される可能性が高くなる。かかる状況を避けるために、本動作例では、N回目の押し出しにおいてバルブ27を押出スリット34よりも後に閉状態にすることで、次のN+1回目の押し出し開始時点で溶融樹脂がTダイ28内に残留する可能性を低くし、それによってN+1回目に押し出される溶融樹脂の発泡状態を一様とするようにしている。
【0047】
時刻T4〜T5の間は、押出スリット34およびバルブ27が閉状態となっている。バルブ27が閉状態となっているため、アキュムレータ24の圧力がバルブ27によって遮断され、Tダイ28内に残留している溶融樹脂が押出スリット34から漏れ出すことが抑制される。
【0048】
次に、N+1回目の押し出しを行う前の時刻T5において、バルブ27を閉状態から開状態にし、それによってアキュムレータ24とTダイ28の間を溶融樹脂が連通可能な状態にする。時刻T5より後の時刻T6において、押出スリット34を閉状態から開状態にし、溶融樹脂シートの押し出しが開始される。時刻T5〜T6では、アキュムレータ24とTダイ28の間を溶融樹脂が連通可能な状態になっているため、溶融樹脂の押し出し開始時刻となる時刻T6から、発泡状態が一様な溶融樹脂が押し出されることになる。
N+1回目の押し出しが終了する時刻T7において、押出スリット34を開状態から閉状態とする。そして時刻T7より後の時刻T8において、バルブ27を開状態から閉状態にする。すなわち、N+2回目の押し出しに備えて、バルブ27を押出スリット34よりも後に閉状態にする。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の発泡樹脂の押出方法によれば、Tダイ28からの発泡樹脂の押出が行われない期間(
図7の時刻t1〜t2、あるいは
図8の時刻T2〜T3等)の少なくとも一部において、バルブ27によってアキュムレータ24とTダイ28の間の発泡樹脂の流路を閉塞させる。そのため、Tダイ28内に残留している溶融樹脂が押出スリット34から漏れ出すことが抑制される。
好ましくは、発泡樹脂の押出開始時においてバルブ27を押出スリット34よりも先に開状態にし、発泡樹脂の押出終了時においてバルブ27を押出スリット34よりも後に閉状態にする。それによって、Tダイ28から一様な発泡状態の発泡樹脂を押し出すことが可能となる。
【0050】
(2)第2の実施形態
以下に、本発明の第2の実施形態について、
図9〜13を参照して説明する。
第2の実施形態の成形装置100は、2枚の溶融樹脂シートを押出し、中空部を有する樹脂成形品を成形する点で第1の実施形態と異なる。
【0051】
図1に示すように、樹脂成形品の成形装置100は、押出装置120と、押出装置120の下方に配置された型締装置140とを有する。
押出装置120は、ホッパ16A,16Bが付設されたシリンダ18A,18Bと、シリンダ18A,18Bに連結された油圧モータ20A,20Bと、シリンダ18A,18Bと内部が連通したアキュムレータ24A,24Bと、プランジャ26A,26Bと、バルブ27A,27Bとを備える。
すなわち、押出装置120は、溶融樹脂シートPを押し出すための2系統の押出機構が備えられている。各系統の押出機構は、第1の実施形態で説明した押出装置12と同じである。
【0052】
Tダイ28A,28Bは、それぞれ、供給された溶融樹脂を押出スリットから連続的なシート状の溶融樹脂シートPとして下方に押し出す。Tダイ28Aから押し出された溶融樹脂シートPは、間隔を隔てて配置された一対のローラ30AA,30ABによって挟圧されながら下方に向かって送り出される。Tダイ28Bから押し出された溶融樹脂シートPは、間隔を隔てて配置された一対のローラ30BA,30BBによって挟圧されながら下方に向かって送り出される。一対の溶融樹脂シートP,Pは、金型32A,32Bの間に垂下される。
【0053】
型締装置140は、金型32A,32Bを有する。金型32A,32Bには、それぞれ摺動部33A,33Bが設けられている。摺動部33A,33Bは互いに対向している。摺動部33Aは溶融樹脂シートPに対して直交する方向に摺動可能であり、それによって金型32Aの形成面116A(
図10参照)に対して相対移動可能に構成されている。同様に、摺動部33Bは溶融樹脂シートPに対して直交する方向に摺動可能であり、それによって金型32Bの形成面116B(
図10参照)に対して相対移動可能に構成されている。
【0054】
溶融樹脂シートP,Pを金型32A,32Bの間に垂下させた後、
図10に示すように、摺動部33A,33Bを互いに近接する方向に移動(スライド)させることで、摺動部33A,33Bの先端を溶融樹脂シートPに接続させる。それによって、金型32Aの形成面116Aと溶融樹脂シートPの間に密閉空間SP1が形成され、金型32Bの形成面116Bと溶融樹脂シートPの間に密閉空間SP2が形成される。
図示しないが、金型32A,32Bにはそれぞれ真空チャンバが内蔵され、当該真空チャンバと形成面116A,116Bの間には真空吸引のための連通路が設けられている。そして、真空チャンバによって連通路から密閉空間SP1,SP2内の空気を吸引する。この吸引により、
図11に示すように、一対の溶融樹脂シートP,Pがそれぞれ形成面116A,116Bに押圧させられ、形成面116A,116Bに沿った形状に成形(賦形)される。
【0055】
次に、
図12に示すように、金型32A,32Bの型締めを行って、溶融樹脂シートP,Pを挟み込む。金型32A,32Bの外周には、金型32A,32Bの形成面116A,116Bを取り囲むようにピンチオフ部が設けられており、型締めによって溶融樹脂シートP,Pがピンチオフ部において一対の溶融樹脂シートP,Pの周縁が溶着させられ、パーティングラインが形成される。
次に、
図13に示すように、金型32A,32Bを開型して中空部を有する樹脂成形品を取り出す。
【0056】
本実施形態の押出装置120の動作について、本実施形態において溶融樹脂を押し出すときのTダイ28Aの押出スリットとバルブ27Aの開閉動作、および、Tダイ28Bの押出スリットとバルブ27Bの開閉動作は、第1の実施形態の押出装置12と同じである。
すなわち、Tダイ28A,Tダイ28Bからの発泡樹脂の押出が行われない期間の少なくとも一部において、バルブ27A,27Bによってアキュムレータ24A,24BとTダイ28A,28Bの間の発泡樹脂の流路を閉塞させる。そのため、Tダイ28A,28B内に残留している溶融樹脂が押出スリットから漏れ出すことが抑制される。
好ましくは、発泡樹脂の押出開始時においてバルブ27A,27BをTダイ28A,28Bの押出スリットよりも先に開状態にし、発泡樹脂の押出終了時においてバルブ27A,27BをTダイ28A,28Bの押出スリットよりも後に閉状態にする。それによって、Tダイ28A,28Bから一様な発泡状態の発泡樹脂を押し出すことが可能となる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の変更あるいは修正が可能である。
【0058】
例えば、上述した各実施形態では、スリット隙間駆動装置44に用いられる駆動手段の駆動源が油圧シリンダである場合を例示したが、それに限られない。スリット隙間駆動装置44に用いられる駆動手段の駆動源は、サーボモータであってもよい。
上述した各実施形態では、ローラが、Tダイ28、または、Tダイ28A,28Bから押し出される発泡樹脂を挟圧しながら下方に向かって送り出す場合について説明したが、この場合に限られない。すなわち、ローラを設けなくてもよい。Tダイによって押し出された発泡樹脂をローラで挟圧しないことで、より発泡倍率の高い樹脂成形品を得ることができる。
上述した第2の実施形態では、中空部を有する樹脂成形品を得る場合を例として説明したが、この例に限られない。中空部に芯材を配置させることで、軽量で剛性の高い樹脂成形品を得ることもできる。中空部に芯材を配置させるには、一対の溶融樹脂シートP,Pを形成面116A,116Bに沿った形状に賦形させた状態で、芯材をいずれかの溶融樹脂シートに溶着させた後に、金型32A,32Bの型締めを行う。