【解決手段】水晶振動子ホルダ20は、内部に保持された水晶振動子23の一方の主面と対向する底部21aを備え、当該底部21aには成膜処理中に成膜材料を内部に導入する開口部21bが形成される。測定部50は、一対の電極部に電圧を印加して水晶振動子23の共振周波数の値を検出し、当該検出された値をもとに成膜処理中のワークの表面に成膜された膜の膜厚を測定する。開口部21bは、底部21aの、水晶振動子23の対向する両主面に設けられた一対の電極部と対応する位置に形成されるとともに、当該開口部21bから水晶振動子23を見たときに、一対の電極部の双方の周縁より内側に配置される大きさで形成される。
前記一対の電極部のうちいずれか一方の電極部は、シート状の主電極部と、当該主電極部の周縁の一部から前記水晶振動子の周縁部に向けて前記水晶振動子の主面に引き出され、前記測定部と電気的に接続される引出部と、を備え、
前記開口部は、前記底部の、前記主電極部と対応する位置に形成されるとともに、当該開口部から前記水晶振動子を見たときに、前記主電極部の周縁より内側に配置される大きさで形成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜厚監視装置。
前記保持部は、前記水晶振動子ホルダの内周に形成された段部であり、当該段部は、前記開口部の開口面と平行な段面を備え、当該段面に前記水晶振動子の周縁部が載置されて前記水晶振動子が保持される、
ことを特徴とする請求項4に記載の膜厚監視装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された膜厚監視装置は、島状の電極パターンを適用することにより、島状の電極パターンの主電極パターン部が添付された水晶振動子の領域で、厚みすべり振動を安定的に発振させることができる。しかしながら、蒸着源から発生する成膜材料を取り込むための開口部の径は、主電極パターンの径より大きく形成されているため、厚みすべり振動を安定的に発振する主電極パターンの領域より外側にも成膜材料が付着する。したがって、測定される共振周波数のレートに水晶振動子ごとにバラツキが生じていた。また、主電極パターンの領域より外側にも成膜材料が付着するので、測定値にノイズとして影響がある副振動(スプリアス振動)が増加し、水晶振動子を早めに交換する必要があり、水晶振動子の測定部材としての寿命が短いという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、水晶振動子の共振周波数の測定値のバラツキを軽減し、水晶振動子の測定部材としての寿命を延ばすことのできる膜厚監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る膜厚監視装置は、
ワークに成膜処理を施す成膜室内に設置され、当該成膜処理中の当該ワークに成膜される膜の膜厚を監視する膜厚監視装置であって、
前記成膜処理により付着する成膜材料の付着量に応じて共振周波数の値が変化する水晶振動子であって、当該水晶振動子の対向する両主面に設けられた一対の電極部を備える水晶振動子を、内部に保持する凹状の水晶振動子ホルダであって、保持された前記水晶振動子の一方の主面と対向する底部を備え、当該底部には前記成膜処理中に当該水晶振動子ホルダ内部に前記成膜材料を導入する開口部が形成された水晶振動子ホルダと、
前記一対の電極部に電圧を印加して前記水晶振動子の共振周波数の値を検出し、当該検出された値をもとに前記成膜処理中の前記ワークの表面に成膜された膜の膜厚を測定する測定部と、を備え、
前記開口部は、前記一対の電極部と対応する位置に形成されるとともに、当該開口部から前記水晶振動子を見たときに、前記一対の電極部の双方の周縁より内側に配置される大きさに形成された、
ことを特徴とする。
【0008】
前記一対の電極部のうちいずれか一方の電極部は、シート状の主電極部と、当該主電極部の周縁の一部から前記水晶振動子の周縁部に向けて前記水晶振動子の主面に引き出され、前記測定部と電気的に接続される引出部と、を備え、
前記開口部は、前記底部の、前記主電極部と対応する位置に形成されるとともに、当該開口部から前記水晶振動子を見たときに、前記主電極部の周縁より内側に配置される大きさで形成されてもよい。
【0009】
前記水晶振動子は、円板状の水晶振動子であり、
前記主電極部は、円形のシート状の電極部であり、前記水晶振動子の板面の中心部付近に配置され、
前記引出部は、前記主電極部の周縁の一部から半径方向に前記水晶振動子の主面に引き出された第1の引出部と、当該第1の引出部の先端から前記水晶振動子の周方向に沿って延在する第2の引出部と、を備えてもよい。
【0010】
前記水晶振動子ホルダは、内周に前記水晶振動子の周縁部を保持する保持部を、更に備えるようにしてもよい。
【0011】
前記保持部は、前記水晶振動子ホルダの内周に形成された段部であり、当該段部は、前記開口部の開口面と平行な段面を備え、当該段面に前記水晶振動子の周縁部が載置されて前記水晶振動子が保持されてもよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る膜厚監視装置は、
ワークに成膜処理を施す成膜室内に設置され、当該成膜処理中の当該ワークに成膜される膜の膜厚を監視する膜厚監視装置であって、
前記成膜処理により付着する成膜材料の付着量に応じて共振周波数の値が変化する水晶振動子であって、当該水晶振動子の対向する両主面に設けられた一対の電極部を備える水晶振動子を、内部に保持する凹状の水晶振動子ホルダと、
前記一対の電極部に電圧を印加して前記水晶振動子の共振周波数の値を検出し、当該検出された値をもとに前記成膜処理中の前記ワークの表面に成膜された膜の膜厚を測定する測定部と、を備え、
前記水晶振動子ホルダは、
前記水晶振動子を内部に保持し、当該水晶振動子の一方の主面と対向し第1の開口部が形成された第1の底部を備える第1のホルダと、当該第1のホルダの第1の底部側に配置され、当該第1の底部と対向する第2の底部を備え、当該第2の底部に前記第1の開口部に対応して、前記成膜処理中に当該水晶振動子ホルダ内部に前記成膜材料を導入する第2の開口部が形成された第2のホルダと、を備え、
前記第1の開口部は、前記一対の電極部と対応する位置に形成されるとともに、前記第2の開口部から前記水晶振動子を見たときに、前記第1の開口部または前記第2の開口部のいずれか一方は、前記一対の電極部の双方の周縁より内側に配置される大きさで形成された、ことを特徴とする
【0013】
本発明の第3の観点に係る膜厚監視装置は、
ワークに成膜処理を施す成膜室内に設置され、当該成膜処理中の当該ワークに成膜される膜の膜厚を監視する膜厚監視装置であって、
前記成膜処理により付着する成膜材料の付着量に応じて共振周波数の値が変化する水晶振動子であって、当該水晶振動子の対向する両主面に設けられた一対の電極部を備える複数の水晶振動子が、挿入される複数の凹部が周方向に沿って形成された円板状の水晶振動子ホルダであって、保持された各前記水晶振動子の一方の主面は各前記凹部の各底部と対向し、当該各底部には前記成膜処理中に当該水晶振動子ホルダ内部に前記成膜材料を導入する第1の開口部が形成された水晶振動子ホルダと、
前記一対の電極部に電圧を印加して前記水晶振動子の共振周波数の値を検出し、当該検出された値をもとに前記成膜処理中の前記ワークの表面に成膜された膜の膜厚を測定する測定部と、
前記円板状の水晶振動子ホルダの中心軸と同軸に配置され、当該水晶振動子ホルダの板面を前記底部側から覆うカバー部であって、前記複数の凹部の前記底部に形成された複数の前記第1の開口部のうちのいずれか1つの第1の開口部と対向して配置されて形成された第2の開口部を備えたカバー部と、
前記水晶振動子ホルダと、前記カバー部と、を前記水晶振動子ホルダの中心軸を中心に相対的に回転させる回転機構と、
を備え、
前記第1の開口部は、前記一対の電極部と対応する位置に形成されるとともに、当該第2の開口部から前記水晶振動子を見たときに、前記第1の開口部または前記第2の開口部のいずれか一方は、前記一対の電極部の双方の周縁より内側に配置される大きさに形成された、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水晶振動子の共振周波数の測定値のバラツキを軽減し、水晶振動子の測定部材としての寿命を延ばすことのできる膜厚監視装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る膜厚監視装置1の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の膜厚監視装置1について
図1〜5を参照して説明する。
【0018】
本実施の形態1に係る膜厚監視装置1は、
図1に示すように、成膜装置10と、水晶振動子ホルダ20と、蒸着源30と、基板ホルダ40と、測定部50と、コントローラ60と、を備える。
【0019】
成膜装置10は、真空雰囲気下で蒸着原料を加熱して、気化された蒸着原料を、成膜対象であるワーク等に膜として蒸着させる装置である。成膜装置10は、成膜室11を備え、成膜室11内に、水晶振動子ホルダ20と、蒸着源30と、基板ホルダ40と、が収容される。成膜室11は、真空ポンプ12により所定の真空度になるまで排気される。
【0020】
本実施の形態1では、真空蒸着方法による成膜処理を適用するが、成膜処理の方法は、真空蒸着方法に限定されない。例えば、アルゴン等の不活性ガスの充満した真空雰囲気下で、ターゲットに電圧をかけ、原子化されたアルゴン原子をターゲットに衝突させてターゲットの原子をたたき出して、この原子により基板を成膜するスパッタリングによる成膜処理を適用してもよい。
【0021】
水晶振動子ホルダ20は、水晶振動子23を保持するホルダであり、金属等の導電性材料で形成されている。
【0022】
水晶振動子23は、
図2、3に示すように、円板状の水晶振動子23であり、対向する主面23a、23bを備える。ここで、成膜材料が付着する側の主面を蒸着面23aといい、成膜材料が付着しない側の主面を非蒸着面23bという。本実施の形態1で用いる水晶振動子23の基本発振周波数は5MHz又は6MHzであるが、それ以外の基本発振周波数の水晶振動子23を適用してもよい。
【0023】
水晶振動子23の蒸着面23aには第1の電極部24が、非蒸着面23bには第2の電極部25が設けられている。第1の電極部24と第2の電極部25とは、それぞれ後述する測定部50に電気的に接続され、測定部50により第1の電極部24と第2の電極部25との間に、電圧が付与されることにより、水晶振動子23は振動される。
【0024】
第1の電極部24と第2の電極部25の平面図を
図3に示す。第1の電極部24は、いわゆるベタ状の円形の電極であり、水晶振動子23の蒸着面23aの全面に貼り付けられる。第2の電極部25は、いわゆる島状電極であり、円形状の主電極部25aと、主電極部25aの周縁から半径方向に非蒸着面23bに引き出された第1の引出部25bと、第1の引出部25bの先端から水晶振動子23の周方向に沿って非蒸着面23bに伸びる第2の引出部25cと、から構成される。
【0025】
第2の電極部25の主電極部25aは、円形の水晶振動子23の非蒸着面23bの略中央部付近に配置されて形成されている。したがって、水晶振動子23の厚みすべり振動が安定して発生する部分に主電極部25aが、形成される。
【0026】
図2に水晶振動子23を保持した水晶振動子ホルダ20の概略図を示す。水晶振動子ホルダ20は、ホルダ本体21と、蓋部22と、バネ電極部26と、を備える。
【0027】
ホルダ本体21は、凹状に形成され、凹状の底部21aには、円形の開口部21bが形成されている。開口部21bは、後述する蒸着源30から気化した成膜材料を、ホルダ本体21の内部に導入する孔である。水晶振動子23は、水晶振動子23の一方の主面である蒸着面23aが、底部21aと対向して配置した状態で、ホルダ本体21内部に保持される。
【0028】
ホルダ本体21の凹状の内周には、内周に沿って段部21cが形成されている。段部21cは、底部21aに形成された開口部21bの開口面と平行な段面21dを備え、この段面21dに、水晶振動子23の周縁部を載置して保持する。なお、段部21cは、ホルダ本体21の内周の全周に沿って形成されてもよいし、ホルダ本体21の内周に沿って間隔を隔てて形成されてもよい。
【0029】
蓋部22は、ホルダ本体21の底部21aと対向する開口部21e、すなわちホルダ本体21の凹状の開口部21eを閉塞する部材である。
【0030】
バネ電極部26は、金属材料から形成された弾性部材である。バネ電極部26は、水晶振動子23と蓋部22との間に挿入され、蓋部22により開口部21eを閉塞することで、圧縮されて、水晶振動子23を段面21dに押しつける。バネ電極部26は、水晶振動子23のホルダ本体21内での動きを規制するとともに、水晶振動子23の振動を許容する柔軟性を備える。
【0031】
バネ電極部26の構成について、
図5を用いて説明する。バネ電極部26は、円板状の金属板の外周部から周方向に沿って複数の切り込みを入れ、切り込みの終端部から切り込み部分を起立させた、板バネ状の電極部である。バネ電極部26は、底板部26aと、底板部26aから起立した3つの起立部26bと、底板部26aの中央に形成された孔26cと、から構成される。
【0032】
バネ電極部26の底板部26aは、水晶振動子23がホルダ本体21に収容されると、蓋部22の板面と接触すると伴に、測定部50と電気的に接続されている。
【0033】
バネ電極部26の起立部26bの先端部26dは、第2の電極部25の第2の引出部25cと接触する。バネ電極部26の起立部26bが、第2の引出部25cと接触することで、測定部50から付与される電圧をバネ電極部26を介して、第2の電極部25に付与し、また、水晶振動子23の共振周波数の信号を、測定部50に伝達する。
【0034】
バネ電極部26の孔26cには、ネジ(図示せず)が挿入されて、ネジによりバネ電極部26は、蓋部22に固定される。
【0035】
蒸着源30は、坩堝に充填された成膜材料を、ヒータ(図示せず)等により加熱して、成膜材料を気化させる装置である。蒸着源30は、成膜室11の底部に配置され、水晶振動子ホルダ20と、基板ホルダ40とは、蒸着源30の成膜材料が蒸発する方向と対向する位置に配置される。
【0036】
基板ホルダ40は、成膜対象であるワークを保持する部材であり、本実施の形態1では、基板41を保持する。基板ホルダ40に保持された基板の蒸着面は、蒸着源30の成膜材料が蒸発する方向と対向し、蒸着面に成膜材料が蒸着される。
【0037】
測定部50は、発振器51と、算出部52とから構成される。
【0038】
発振器51は、水晶振動子23の第1の電極部24と第2の電極部25との間に交流電圧を印加することにより水晶振動子23を、所定の周波数で振動、共振させる。発振器51により印加される電圧は、第1の電極部24には、水晶振動子23が載置された段面21dを介して、第2の電極部25には、バネ電極部26を介して、印加される。
【0039】
算出部52は、発振器51により振動する水晶振動子23の共振周波数の値を測定し、経時的に変化する測定値の変化から、水晶振動子23に付着した成膜材料の膜厚を算出する。
【0040】
コントローラ60は、蒸着源30、測定部50の動作を制御し、プロセッサ、メモリ等から構成され、メモリに成膜装置10の制御プログラムを記憶している。コントローラは、この制御プログラムに従って、膜厚監視装置1全体を制御する。
【0041】
次に、水晶振動子ホルダ20の開口部21bと、第1の電極部24と、第2の電極部25との位置関係について説明する。
【0042】
上述したように、第1の電極部24はベタ状電極部であり、第2の電極部25は島状電極部である。第2の電極部25の主電極部25aは、水晶振動子23の中央部付近に形成され、第1の電極部24であるベタ状電極部の直径より小径に形成されている。
【0043】
開口部21bは、底部21aの、第2の電極部25と対応する位置に形成されている。そして、開口部21bから水晶振動子23を見たときに、開口部21bは、主電極部25aの周縁より内側に入る大きさで形成されている。すなわち、開口部21bの開口径lは、主電極部25aの直径mと同一又は小さく形成されている。
【0044】
したがって、蒸着源30から気化した成膜材料が、開口部21bから水晶振動子ホルダ20の内部に導入されると、気化した成膜材料は、水晶振動子23に形成された主電極部25aの領域に対応する蒸着面23aに付着する。よって、厚みすべり振動が変化する水晶振動子23の蒸着面23aの領域に成膜することができ、適切な共振周波数を測定することができる。
【0045】
また、開口部21bの開口径lが、主電極部25aの直径mより小さく形成されていれば、開口部21bから水晶振動子ホルダ20の内部に導入された成膜材料が、拡散して開口部21bの周縁より外側に広がっても、蒸着面23aの主電極部25aの配置された領域に対応する領域より外側に成膜材料が付着することを抑制することができる。したがって、厚みすべり振動が変化する領域より外側に、成膜材料が付着することを防止でき、適切な共振周波数を測定することができる。本実施の形態1では、開口部21bから回り込んで第1の電極部24上に形成された成膜材料付着領域の径が、主電極部25aの直径mに一致するよう、開口部21bの開口径lが設定されている。
【0046】
水晶振動子23は、ホルダ本体21に形成された段部21cの段面21dに、その周縁部が載置され保持されるので、機械的振動の変位が少ない部分を保持することになり、適切な共振周波数を測定することができる。なお、水晶振動子23は、機械的振動の変位が少ないできるだけ外側の周縁部を保持されることが好ましい。したがって、ホルダ本体21に形成された段部21cの径nは、できるだけ大きくとり、水晶振動子23の最周縁部を保持する。段部21cの径nを大きくすることにより、バネ電極部26の起立部26bの先端部26dを、できるだけ外側に位置するように形成することができる。このようなバネ電極部26を適用することで、バネ電極部26と水晶振動子23との接触部分も、水晶振動子23の最周縁部とすることができる。
【0047】
水晶振動子23は、ホルダ本体21に形成された段部21cの段面21dに載置されて保持される。したがって、水晶振動子23は、段部21cのみを設けたシンプルなホルダ本体により保持することができる。
【0048】
本実施の形態1では、段部21cを水晶振動子23を保持する部材として説明したが、本発明は、段部21cに限定されず、水晶振動子23の周縁部を保持できるものであれば、いかなる態様の保持部材を適用してもよい。例えば、水晶振動子23の外周部の一部をクリップ状のような部材で挟んで保持してもよい。
【0049】
このような構成を備える膜厚監視装置1において、膜厚を監視する方法について説明する。当該方法は、コントローラ60により制御されて実行される。
【0050】
まず、成膜室11内を真空ポンプ12により真空排気して、成膜処理を開始する。成膜処理が開始されると、蒸着源30の成膜材料が加熱されて気化されて、成膜対象の基板41の蒸着面に成膜材料が蒸着される。また、水晶振動子ホルダ20の開口部21bから成膜材料が導入され、水晶振動子23の蒸着面23aに成膜材料が付着する。測定部50の発振器51により、水晶振動子23の第1の電極部24と第2電極部25とに電圧が印加され、水晶振動子23を振動させる。
【0051】
次に、算出部52により、振動された水晶振動子23の共振周波数を、所定の時間間隔おきに計測する。算出部52は、計測された水晶振動子23の共振周波数の変化を求めて、共振周波数の変化から、水晶振動子23に形成された膜の膜厚を算出する。
【0052】
算出された膜厚が、予め設定された膜厚の範囲を逸脱したときには、コントローラ60は、水晶振動子23が測定部材として寿命であると判断して、水晶振動子23の交換時期であることを、モニター等を介して操作者に通知する。
【0053】
本実施の形態1によれば、開口部21bから水晶振動子23を見たときに、開口部21bは、水晶振動子23の両主面に設けた一対の第1の電極部24と第2の電極部25の双方の電極部の周縁より、内側に配置されるように形成されている。このような構成により一対の電極部のうち小さい径の電極部の周縁より内側に開口部21bが形成されることになり、厚みすべり振動が有効に働く領域に、成膜材料を付着させることができる。したがって、水晶振動子23の安定した発振を維持することができ、共振周波数の水晶振動子23ごとのバラツキを軽減することができる。また、効率的に水晶振動子23の共振周波数を測定することができるので、水晶振動子23を使用できる寿命を延ばすことができる。
【0054】
本実施の形態1では、第1の電極部24として、ベタ状電極、第2の電極部25として、島状電極を適用したが、第1の電極部24と第2の電極部25の双方の電極部の周縁より内側に、開口部21bが配置されるような形態であれば、いかなる電極部も適用することができる。
【0055】
例えば、第1の電極部24として、島状電極、第2の電極部25として、ベタ状電極を適用してもよい。また、第1の電極部24と第2の電極部25ともに、島状電極を適用してもよい。
【0056】
また、本実施の形態1では、水晶振動子23として円板状のものを適用したが、本発明はこのような形状の水晶振動子23に限定されない。例えば、
図4に示すように、矩形状の水晶振動子27を適用することができる。矩形状の水晶振動子27を適用した場合には、水晶振動子27の蒸着面または非蒸着面に設けられる電極部は、
図4に示すような、第3の電極部28を適用することができる。第3の電極部28は、矩形状の主電極部28aと、主電極部28aの対向する角部から、矩形状の水晶振動子27の角部に向けて伸びる引出部28bと、から構成される。
【0057】
本実施の形態1によれば、第1の電極部24と第2の電極部25とのうち、第2の電極部25を、主電極部25aと、主電極部25aの周縁から水晶振動子23の主面に引き出された引出部25b、25cとで構成した。したがって、水晶振動子23の主面には、電極部が形成されていない領域が形成され、水晶振動子23の副振動を抑制することができる。また、開口部21bと主電極部25aとの位置関係から、共振周波数の水晶振動子23ごとのバラツキを軽減することができる。
【0058】
本実施の形態1によれば、第2の電極部25は、円板状の水晶振動子23の板面の中央部付近に形成された主電極部25aと、主電極部25aの周縁から半径方向に引き出された第1の引出部25bと、第2の引出部25bの先端から水晶振動子23の周方向に沿って延在する第2の引出部25cとから構成されている。したがって、水晶振動子23の厚みすべり振動が有効に検出できる水晶振動子23の中央部に、主電極部25aが位置し、主電極部25aに対応する位置に開口部21bが配置されることになり、水晶振動子23の共振周波数を効果的に測定することができる。また、水晶振動子23の副振動の発生も抑制することができる。
【0059】
(変形例)
本実施の形態1では、水晶振動子ホルダ20はホルダ本体21を備え、ホルダ本体21に開口部21bが形成されると説明した。しかしながら、本実施の形態1は、このようなホルダ本体21の形状に限定されない。ホルダ本体21が2つのホルダに分割されて、第1のホルダ70と第2のホルダ71とから構成されてもよい。本変形例では、実施の形態1と同様な水晶振動子23、バネ電極部26、及び蓋部22を適用する。これらの詳細な説明については省略する。
【0060】
図6に示すように、第1のホルダ70は、凹状に形成されており、内部に水晶振動子23を保持する。第1のホルダ70は、保持された水晶振動子23の蒸着面23aと対向する第1の底部70aを備え、第1の底部70aには第1の開口部70bが形成される。また、第1のホルダ70の内部には、第1の開口部70b径方向の外側に載置部70cが形成され、水晶振動子23は、載置部70cに周縁部が載置されて、第1のホルダ70内に保持される。
【0061】
第2のホルダ71は、第1のホルダ70の第1の底部70aの側を覆い、第1のホルダ70を収納する。第2のホルダ71は、第1のホルダ70の底部70aと対向した第2の底部71aを備える。第2の底部71aには、第1の開口部70bに対応する位置に第2の開口部71bが形成されている。
【0062】
第1のホルダ部70の第1の開口部70bの径yは、第2のホルダ部71の第2の開口部71bの径wよりも大きく形成されている。また、第2の開口部71bの径wは、第2の開口部71bから水晶振動子23を見たときに、水晶振動子23の非蒸着面23bに配置された第2の電極部25の径mより小さく形成されている。
【0063】
第1のホルダ70により水晶振動子23の周縁部を保持するとともに、第1のホルダ70に第2のホルダ71を組み合わせて使用することで、成膜材料を厚みすべり振動が有効に働く領域に、成膜材料を付着させることができる。このように、水晶振動子23の保持機能と、厚みすべり振動の有効領域に成膜させる機能とを、それぞれ別々の第1のホルダ70と第2のホルダ71に役割を分担させた。したがって、既存品として存在する第1のホルダ70に、第2のホルダ71を組み合わせることにより容易に厚みすべり振動の有効領域に成膜させる水晶振動子ホルダ20を提供することができる。
【0064】
また、本変形例では、第1のホルダ70の第1の開口部70bの径yが、第2のホルダ71の第2の開口部71bの径wよりも大きく形成され、第2の開口部71bの径wが、第2の開口部71bから水晶振動子23を見たときに、第2の電極部25の径mより小さく形成されている。しかしながら、本発明はこのような構造に限定されず、厚みすべり振動の有効領域に成膜させることができれば、第1の開口部70bと第2の開口部71bとの径の比率は、いかなるものも適用することができる。例えば、第1の開口部70bの径yが、第2の開口部71bの径w小さく形成され、第1の開口部70bが第2の電極部25の径mより小さく形成されていてもよい。このような第1のホルダ70と第2のホルダ71を備える水晶振動子ホルダ20を適用することで、厚みすべり振動の有効領域に成膜させることができる第1のホルダ70を、既存の第2のホルダ71に固定して使用することが可能となる。
【0065】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の膜厚監視装置100について、
図7、8を参照して説明する。
【0066】
本実施の形態2に係る膜厚監視装置100は、実施の形態1の膜厚監視装置1の水晶振動子ホルダ20の代わりに、水晶振動子ホルダ200を適用したものであり、膜厚監視装置1の構成に加えて更に、回転機構300、カバー部400を備える。その他の構成である成膜装置10、蒸着源30、基板ホルダ40、測定部50、コントローラ60は、実施の形態1の膜厚監視装置1と同一の構成であるので、具体的な説明を省略する。また、水晶振動子23も、実施の形態1で使用した水晶振動子23と同一のものを使用する。
【0067】
水晶振動子ホルダ200は、
図7、8に示すように、ヘッド部210と、ホルダ本体220と、から構成される。
【0068】
ヘッド部210は、一端部に複数のバネ電極部26が取り付けられた円筒部材である。バネ電極部26は、実施の形態1で適用したバネ電極部26と同一の部材を用い、ヘッド部210の円形の一端面の周方向に沿って、複数取付けられる。バネ電極部26は、底板部26aの孔26cにネジ26eが挿入され、ネジ26eがヘッド部210に設らけれたネジ溝(図示せず)に螺合することで、ヘッド部210の当該一端面に固定される。また、ヘッド部210は、後述する回転機構300により回転軸201を中心に回転される。
【0069】
ホルダ本体220は、金属等の導電性材料で形成された円板状の部材である。ホルダ本体220は、ヘッド部210のバネ電極部26が設けられた一端面と対向して配置され、複数の水晶振動子23を保持する。ホルダ本体220は、円板の中心からヘッド部210に向けて突出した円筒嵌合部221を備える。円筒嵌合部221に、ヘッド部210の回転軸201の軸端が嵌合して、ホルダ部材220は、ヘッド部210に取付けられる。ホルダ本体220は、ヘッド部210の回転軸201と同軸に回転される。
【0070】
ホルダ本体220のヘッド部210と対向する板面には、凹状に形成された単位ホルダ222が、周方向に沿って複数設けられている。各単位ホルダ222の凹部に水晶振動子23が挿入されて、水晶振動子23はホルダ本体220に保持される。
図8には、説明のため1つの単位ホルダ222に水晶振動子23が挿入された状態を示す。本実施の形態2では、ホルダ本体220に周方向に沿って、6つの凹状の単位ホルダ222が形成され、6つの水晶振動子23を保持することができる。
【0071】
単位ホルダ222は、実施の形態1で説明したホルダ本体21と同一の形状で構成されている。単位ホルダ222は、水晶振動子23を内部に収容したときに、水晶振動子23の主面(蒸着面23a)と対向する底部222aを備える。当該底部222aには、第1の開口部222bが形成され、この第1の開口部222bを介して、蒸着源30から気化された成膜材料を単位ホルダ222内部に導入する。バネ電極部26の起立部26bは、単位ホルダ222に保持された水晶振動子23の第2の電極部25と接触し、測定部50との信号のやりとりが可能となる。
【0072】
また、単位ホルダ222の凹部の内周には、段部222cが形成され、段部222cの第1の開口部222bの開口面と平行な段面222dに、水晶振動子23が載置されて保持される。
【0073】
回転機構300は、ヘッド部210を回転軸201を中心に回転させる駆動部材であり、例えば、パルスモータが適用される。
【0074】
カバー部400は、ホルダ本体220を、底部222a側から覆う円板状のカバーである。カバー部400には、ホルダ本体220に形成された第1の開口部222bと同一径に形成された第2の開口部401が形成されている。第2の開口部401は、ホルダ本体220に形成された複数の第1の開口部222bのいずれか1つと対応するように配置される。
【0075】
このような構成を備える膜厚監視装置100において、膜厚を監視する方法について説明する。当該方法は、コントローラ60により制御されて実行される。
【0076】
まず、成膜室11内を真空ポンプ12により真空排気して、成膜処理が開始する。成膜処理が開始されると、蒸着源30の成膜材料が加熱されて気化され、成膜対象の基板41の表面の成膜材料が蒸着する。一方、ホルダ本体220と、カバー部400とは、複数の単位ホルダ222に形成された複数の第1の開口部222bのうちいずれか1つの第1の開口部222bと、カバー部400の第2の開口部401とが対応するように配置されている。そして、第2の開口部401と対応する第1の開口部222bから、ホルダ本体220の内部に成膜材料が導入され、水晶振動子23の蒸着面23aに成膜材料が付着する。
【0077】
次に、測定部50の発振器51により、成膜材料が付着した水晶振動子23の第1の電極部24と第2の電極部25とに電圧が印加され、水晶振動子23を振動させる。
【0078】
算出部52により、振動された水晶振動子23の共振周波数を、所定の時間間隔おきに測定する。算出部52は、測定された水晶振動子23の共振周波数の変化を求めて、共振周波数の変化から水晶振動子23に形成された膜の膜厚を算出する。
【0079】
算出された膜厚が、予め設定された膜厚の範囲を逸脱したときには、コントローラ60は、水晶振動子23が測定部材として寿命であると判断して、ヘッド部210を、ヘッド部210の回転軸201を中心に所定の角度回転させるように、回転機構300を制御する。ヘッド部210が所定角度回転すると、ホルダ本体220も所定の角度回転し、カバー部400の第2の開口部401は、新しい水晶振動子23を保持する単位ホルダ222に形成された第1の開口部222bと、対応するように移動する。
【0080】
本実施の形態2によれば、第1の開口部222bは、第1の開口部222bから水晶振動子23を見たときに、主電極部25aの周縁より内側に入る大きさで形成されているので、厚みすべり振動が有効に働く領域に、成膜材料を付着させることができる。したがって、水晶振動子23の安定した発振を維持することができ、共振周波数の水晶振動子ごとのバラツキを軽減することができる。
【0081】
また、本実施の形態2によれば、水晶振動子23の安定した発振を維持することができるので、1つの水晶振動子23を使用できる期間が長くなり、ホルダ本体220を新しいホルダ220本体に交換するまでの時間を長くとることができる。したがって、連続して膜厚を監視できる時間が長くなる。
【0082】
本実施の形態2において、1つの水晶振動子23の寿命がきた場合には、ヘッド部210とホルダ本体220とが所定角度回転して、第1の開口部222bと第2の開口部401との位置を変更していたが、本発明はこのような方法に限定されない。例えば、ヘッド部210とホルダ本体220は固定し、カバー部400を回転させて第1の開口部222bと第2の開口部401との位置を変更してもよい。
【0083】
本実施の形態2では、カバー部400には、ホルダ本体220に形成された第1の開口部222bと同一径に形成された第2の開口部401が形成されているとして説明した。しかしながら、本発明は、第1の開口部222bと第2開口部401が同一径であるものに限定されない。第1の開口部222bと第2開口部401のどちらかの径が、第1の電極部24及び第2の電極部25の双方の径より小さければよい。したがって、第1の開口部222bの径が第2の開口部401の径より大きくても、第2の開口部401の径が第1の開口部の径より大きくてもよい。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれまで説明した実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更が加えられたものを含む。
【0085】
本実施の形態1及び2では、一枚の基板41を保持す基板ホルダ40を例として説明したが、本発明はこのような基板ホルダ40に限定されない。例えば、ドーム型の基板ホルダ40の内面に複数の基板を保持して、ドームを回転させて、一度に複数枚の基板を一緒に処理する場合にも適用される。
【0086】
本実施の形態1及び2では、バネ電極部26を用いて水晶振動子23を段面21dに押圧していたが、段面21dへ押圧させる付勢部材であれば、他の付勢部材、例えば、巻線状のバネを適用してもよい。