【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の給水加温システムの実施例1を示す概略図である。
本実施例の給水加温システム1は、ボイラ2の給水タンク3への給水をヒートポンプ4で加温できるシステムであり、ボイラ2への給水を貯留する給水タンク3と、この給水タンク3への給水を貯留する補給水タンク5と、この補給水タンク5から給水タンク3への給水を加温するヒートポンプ4と、このヒートポンプ4の熱源としての熱源水を貯留する熱源水タンク6とを備える。
【0024】
ボイラ2は、蒸気ボイラであり、給水タンク3からの給水を加熱して蒸気にする。ボイラ2は、典型的には、蒸気の圧力を所望に維持するように、燃焼量を調整される。また、ボイラ2は、缶体内の水位を所望に維持するように、給水タンク3からボイラ2への給水用のポンプ7が制御される。ボイラ2からの蒸気は、各種の蒸気使用設備(図示省略)へ送られるが、蒸気使用設備からのドレン(蒸気の凝縮水)は、給水タンク3へ戻されてもよい。あるいは、蒸気使用設備からのドレンは、熱源水タンク6へ供給されてもよい。
【0025】
給水タンク3には、補給水タンク5から、ヒートポンプ4を介して給水路8により給水可能であると共に、ヒートポンプ4を介さずに補給水路9により給水可能である。本実施例では、給水路8と補給水路9とは、上流側(補給水タンク5側)において共通路10とされており、その共通路10に送水ポンプ11が設けられている。従って、補給水タンク5からの水は、送水ポンプ11より下流において、給水路8と補給水路9とに分岐される。給水路8に給水弁12が設けられる一方、補給水路9に補給水弁13が設けられている。
【0026】
給水弁12および補給水弁13は、いずれも、開度調整可能な電動弁(モータバルブ)から構成されている。給水路8を介した給水タンク3への給水は、給水の有無が給水弁12の開閉により切り替えられ、給水の流量が給水弁12の開度により調整される。一方、補給水路9を介した給水タンク3への給水は、給水の有無が補給水弁13の開閉により切り替えられ、給水の流量が補給水弁13の開度により調整される。
【0027】
送水ポンプ11は、本実施例では、出口側圧力が設定圧力未満になると起動し、設定圧力以上になると停止する。この際、設定圧力にディファレンシャル(動作隙間)を設けてもよいことはもちろんである。また、送水ポンプ11は、モータの駆動周波数ひいては回転数をインバータで変更して、出口側圧力を設定圧力に維持するように制御されてもよい。このような構成であるから、給水弁12と補給水弁13との内、一方または双方を開けると、送水ポンプ11が駆動され、給水路8および/または補給水路9を介して、給水タンク3へ給水することができる。一方、給水弁12と補給水弁13との双方を閉じると、送水ポンプ11も停止される。
【0028】
補給水タンク5は、給水タンク3への給水を貯留する。補給水タンク5への給水として、本実施例では脱気された軟水が用いられる。すなわち、補給水タンク5への給水は、硬水軟化装置14と脱酸素装置15とを順に通された後、補給水タンク5に貯留される。硬水軟化装置14は、陽イオン交換樹脂などを用いて水中の硬度成分を除去する装置である。脱酸素装置15は、本実施例では膜式の脱気装置であり、より具体的には、中空糸膜などの脱気膜を用いて、水中の酸素を除去する装置である。補給水タンク5内の水位に基づき補給水タンク5への給水を制御することで、補給水タンク5内の水位は所望に維持される。
【0029】
ヒートポンプ4は、蒸気圧縮式のヒートポンプであり、圧縮機16、凝縮器17、膨張弁18および蒸発器19が順次環状に接続されて構成される。そして、圧縮機16は、ガス冷媒を圧縮して高温高圧にする。また、凝縮器17は、圧縮機16からのガス冷媒を凝縮液化する。さらに、膨張弁18は、凝縮器17からの液冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させる。そして、蒸発器19は、膨張弁18からの冷媒の蒸発を図る。
【0030】
従って、ヒートポンプ4は、蒸発器19において、冷媒が外部から熱を奪って蒸発する一方、凝縮器17において、冷媒が外部へ放熱して凝縮することになる。これを利用して、本実施例では、ヒートポンプ4は、蒸発器19において、熱源水から熱をくみ上げ、凝縮器17において、給水路8の水を加温する。
【0031】
ヒートポンプ4は、さらに、凝縮器17と膨張弁18との間に、過冷却器20を備えるのが好ましい。過冷却器20は、凝縮器17より上流側の給水路8の水と、凝縮器17から膨張弁18への冷媒との間接熱交換器である。過冷却器20により、凝縮器17への給水で、凝縮器17から膨張弁18への冷媒を過冷却することができると共に、凝縮器17から膨張弁18への冷媒で、凝縮器17への給水を加温することができる。ヒートポンプ4の冷媒は、好適には、凝縮器17において潜熱を放出し、過冷却器20において顕熱を放出する。
【0032】
その他、ヒートポンプ4には、圧縮機16の入口側にアキュムレータを設置したり、圧縮機16の出口側に油分離器を設置したり、凝縮器17の出口側(凝縮器17と過冷却器20との間)に受液器を設置したりしてもよい。
【0033】
また、ヒートポンプ4は、その出力を変更可能とされてもよい。たとえば、圧縮機16のモータの駆動周波数ひいては回転数をインバータで変更することで、ヒートポンプ4の出力を変更することができる。但し、以下においては、ヒートポンプ4は、圧縮機16のモータの駆動周波数が一定に維持され、一定出力で運転される例について説明する。
【0034】
本実施例の給水加温システム1は、さらに廃熱回収熱交換器21を備える。廃熱回収熱交換器21は、過冷却器20より上流側の給水路8の水と、蒸発器19を通過後の熱源水との間接熱交換器である。従って、補給水タンク5からの給水は、給水路8を介して、廃熱回収熱交換器21、過冷却器20および凝縮器17に、順に通される。一方、熱源水タンク6からの熱源水は、熱源供給路22を介して、蒸発器19および廃熱回収熱交換器21に、順に通される。そして、廃熱回収熱交換器21において、蒸発器19を通過後の熱源水により、過冷却器20への給水を加温することができる。
【0035】
熱源水タンク6は、熱源水を貯留する。熱源水とは、たとえば廃温水(工場などから排出される温水)である。熱源水タンク6には、熱源水の供給路23が設けられると共に、所定以上の熱源水をあふれさせるオーバーフロー路24が設けられている。
【0036】
熱源水タンク6の熱源水は、前述したとおり、熱源供給路22を介して、蒸発器19に通された後、廃熱回収熱交換器21に通される。熱源供給路22には、蒸発器19より上流側に熱源供給ポンプ25が設けられており、この熱源供給ポンプ25を作動させることで、熱源水タンク6からの熱源水を、蒸発器19と廃熱回収熱交換器21とに順に通すことができる。
【0037】
給水タンク3には、水位検出器26が設けられる。この水位検出器26は、その構成を特に問わないが、本実施例では電極式水位検出器とされる。この場合、給水タンク3には、長さの異なる複数の電極棒27〜31が、その下端部の高さ位置を互いに異ならせて差し込まれて保持される。本実施例では、給水弁12を制御用の給水開始電極棒27および給水停止電極棒28の他、補給水弁13を制御用の補給水開始電極棒29、補給水停止電極棒30および補給水量切替電極棒31が、給水タンク3に挿入されている。この際、詳細は後述するが、本実施例では、給水停止電極棒28、補給水停止電極棒30、給水開始電極棒27、補給水開始電極棒29および補給水量切替電極棒31の順に、下端部の高さ位置を低くして、給水タンク3に挿入されている。
【0038】
各電極棒27〜31は、その下端部が水に浸かるか否かにより、下端部における水位の有無を検出する。以下において、給水開始電極棒27が検出する水位を給水開始水位H1、給水停止電極棒28が検出する水位を給水停止水位H2、補給水開始電極棒29が検出する水位を補給水開始水位H3、補給水停止電極棒30が検出する水位を補給水停止水位H4、補給水量切替電極棒31が検出する水位を補給水量切替水位H5という。
【0039】
熱源水タンク6には、熱源水の有無を確認するために、水位検出器32が設けられる。この水位検出器32は、その構成を特に問わないが、本実施例では電極式水位検出器とされる。この場合、熱源水タンク6には、低水位検出電極棒33が差し込まれており、熱源水の水位が設定を下回っていないかを監視する。
【0040】
給水路8には、凝縮器17の出口側に、出湯温度センサ34が設けられる。出湯温度センサ34は、凝縮器17を通過後の水温を検出する。出湯温度センサ34の検出温度に基づき、給水弁12が制御される。ここでは、給水弁12は、出湯温度センサ34の検出温度を目標温度に維持するように開度調整される。これにより、給水路8を介した給水タンク3への給水は、凝縮器17の出口側水温を目標温度に維持するように、流量が調整される。
【0041】
熱源供給路22には、蒸発器19の入口側に、熱源温度センサ35が設けられる。熱源温度センサ35は、蒸発器19へ供給される熱源水の温度を検出する。但し、熱源温度センサ35は、場合により、熱源水タンク6に設けられてもよい。詳細は後述するが、熱源温度センサ35の検出温度に基づき、ヒートポンプ4(より具体的には圧縮機16)の発停と、前記目標温度の変更が可能とされる。
【0042】
次に、本実施例の給水加温システム1の制御(運転方法)について説明する。以下に説明する一連の制御は、図示しない制御器を用いて自動でなされる。すなわち、制御器は、ヒートポンプ4、給水弁12、補給水弁13、熱源供給ポンプ25、給水タンク3の水位検出器26、熱源水タンク6の水位検出器32、出湯温度センサ34および熱源温度センサ35などに接続されており、以下の一連の制御を実行する。
【0043】
まず、給水タンク3への給水は、給水タンク3に設けた水位検出器26の検出信号に基づき、給水弁12と補給水弁13とを制御することでなされる。つまり、給水路8を介した給水タンク3への給水は、給水タンク3内の水位が給水開始水位H1を下回ると開始し、この給水開始水位H1よりも高い給水停止水位H2を上回ると停止する。また、補給水路9を介した給水タンク3への給水は、給水タンク3内の水位が補給水開始水位H3を下回ると開始し、この補給水開始水位H3よりも高い補給水停止水位H4を上回ると停止する。さらに、詳細は後述するが、補給水路9を介した給水タンク3への給水中、給水タンク3内の水位が補給水量切替水位H5を下回ると、補給水弁13の開度を大きくして、補給水路9を介した給水流量を増加させる。なお、補給水開始水位H3は、給水開始水位H1よりも低く設定され、補給水停止水位H4は、給水開始水位H1よりも高いが給水停止水位H2よりも低く設定され、補給水量切替水位H5は、補給水開始水位H3よりも低く設定される。
【0044】
このような構成であるから、いま、給水停止電極棒28が水位を検知しているとすると、給水タンク3内の水位が十分にあるとして、給水弁12を閉じると共に、補給水弁13も閉じている。給水タンク3からボイラ2への給水により、給水タンク3内の水位が下がり、給水開始電極棒27が水位を検知しなくなると、給水弁12を開ける。これにより、給水路8を介して給水タンク3に給水されるが、給水停止電極棒28が水位を検知すると、給水弁12を閉じる。一方、給水弁12を開けても給水タンク3内の水位を回復できず、給水タンク3内の水位がさらに下がり、補給水開始電極棒29が水位を検知しなくなると、補給水弁13も開ける。この際、本実施例では、補給水弁13を全開とせずに、第一設定開度とする。すなわち、補給水弁13は、全開を開度100%、全閉を開度0%としたとき、第一設定開度として全開でも全閉でもない中途の開度とされ、本実施例ではたとえば開度20%とされる。
【0045】
補給水弁13を開けることで、補給水路9を介しても給水タンク3に給水される。これにより、通常、給水タンク3内の水位は回復するが、万一、給水タンク3内の水位がさらに下がり、補給水量切替電極棒31が水位を検知しなくなると、補給水弁13の開度をさらに大きくする。すなわち、補給水弁13の開度を、第一設定開度よりも大きな第二設定開度とする。第二設定開度は、第一設定開度よりも大きければよいが、典型的には全開(開度100%)である。
【0046】
その後、給水タンク3内の水位が回復して、補給水開始電極棒29が水位を検知すると、補給水弁13の開度を第一設定開度に戻す。さらに給水タンク3内の水位が回復して、補給水停止電極棒30が水位を検知すると、補給水弁13を閉じ、さらに水位が回復して、給水停止電極棒28が水位を検知すると、給水弁12も閉じる。なお、給水弁12を開けて、給水路8を介した給水タンク3への給水中、熱源供給ポンプ25も作動させる。
【0047】
このように、本実施例では、補給水路9を介した給水タンク3への給水は、給水タンク3内の水位が補給水開始水位H3を下回ると、補給水弁13を第一設定開度として第一設定流量で開始し、補給水開始水位H3よりも低い補給水量切替水位H5を下回ると、補給水弁13を第二設定開度として前記第一設定流量よりも多い第二設定流量に切り替える。その後、給水タンク3内の水位が補給水開始水位H3を上回ると、補給水弁13を第一設定開度に戻し、さらに補給水停止水位H4を上回ると、補給水弁13を閉じる。
【0048】
ヒートポンプ4は、基本的には、給水路8を介した給水中(それに伴い熱源供給路22に熱源水を通水中)に作動するが、後述するように所定の場合に停止する。ヒートポンプ4は、その圧縮機16の作動の有無により、運転と停止が切り替えられる。ヒートポンプ4の運転中、圧縮機16は、モータの駆動周波数が一定に維持され、一定出力を維持される。
【0049】
給水路8を介した給水タンク3への給水中、出湯温度センサ34の検出温度を目標温度に維持するように、給水弁12の開度が調整される(出湯温度一定制御)。後述するように、状況に応じて、目標温度は変更される。
【0050】
ところで、補給水弁13を第一設定開度で開いた際の第一設定流量は、蒸発器19への熱源流体温度に拘わらず、給水路8を介した給水タンク3への給水流量との合計流量が、給水タンク3内の貯留水の平均使用流量以上となるように設定されるのがよい。言い換えれば、補給水路9経由の第一設定流量は、熱源水温度が最小時における給水路8経由の給水流量との合計流量が、給水タンク3からボイラ2への平均給水量以上となるように設定されるのがよい。つまり、給水路8経由の給水流量が熱源水温度で増減しても、ボイラ2への平均給水量以上が確保されるように、第一設定流量が規定されるのがよい。これにより、通常は、補給水弁13を第一設定開度で開くと、給水タンク3内の水位を回復することができ、補給水量切替水位H5を下回るのが防止される。そして、万一、補給水量切替水位H5を下回ると、補給水弁13を全開として、給水タンク3内の貯留水の枯渇を防止することができる。
【0051】
図2は、本実施例の給水加温システム1の運転状態の一例を示す概略図であり、給水タンク3内の水位(縦軸)と経過時間(横軸)との関係を示している。なお、熱源水温度が一定である場合について示しており、また、最下部に示した吹出しは、各区間A,B,C,…における給水路8経由の給水の有無(下段)と補給水弁13の開度(上段)とを示している。また、
図2中、破線の折れ線は、補給水量の調整が不能な従来技術(補給水弁13をオンオフ制御)の場合を示しており、最上部に示した吹出しは、この従来技術について、各区間a,b,cにおける給水路8経由の給水の有無(下段)と補給水弁13の開度(上段)とを示している。
【0052】
いま、補給水量切替水位H5を下回っている場合、給水路8を介した給水がなされると共に、補給水弁13の開度は100%とされる。これにより、区間Aに示すように水位が回復するが、補給水開始水位H3を上回ると、補給水弁13の開度を20%とするので、区間Bに示すように、水位の上昇速度を落とすことができる。その後、補給水停止水位H4を上回ると、補給水弁13を閉じることで、区間Cに示すように、さらに水位の上昇速度を落とすことができる。そして、給水停止水位H2を上回ると、給水弁12も閉じる。
【0053】
これに対し、仮に、従来技術のように、水位H3での20%開度での制御がなく、補給水弁13を単にオンオフ制御する場合(つまり水位H5を下回ると全開、水位H4を上回ると全閉する制御を行う場合)、水位H5で全開とされた補給水弁13は、補給水停止水位H4まで100%開度のままとなるので、給水タンク3内の水位上昇速度が速くなり、給水路8経由の給水が停止されやすくなる。従って、ヒートポンプ4の稼働時間が短くなると共に、ヒートポンプ4の発停回数が多くなる。また、給水弁12のオンオフ回数も多くなる。
【0054】
ところが、本実施例によれば、補給水路9を介した給水が必要な際にも、基本的には補給水弁13は中途の開度(第一設定開度)とされるので、補給水弁13を開けた際にも、給水タンク3内の水位上昇速度を抑えることができる。これにより、給水路8経由の給水時間、ひいてはヒートポンプ4の稼働時間を延ばすことができる。
図2の例では、従来技術と比較して、時間Xだけ、給水路8経由の給水時間が延びていることが分かる。これにより、ヒートポンプ4の発停回数や、給水弁12のオンオフ回数を削減することもできる。
【0055】
前述したように、本実施例の給水加温システム1では、給水タンク3内の水位に基づき、給水路8を介した給水タンク3への給水が制御されるが、給水路8を介した給水タンク3への給水中、熱源温度センサ35により蒸発器19への熱源水温度を監視し、その温度が設定温度以上になると、ヒートポンプ4を停止させるのがよい。その場合でも、給水タンク3内の水位に基づく給水条件が満たされる限りは、給水路8を介して給水タンク3へ給水する。
【0056】
より詳細には、本実施例では、次のように制御される。すなわち、給水路8を介した給水タンク3への給水中、熱源温度センサ35の検出温度が設定温度(たとえば60℃)未満であれば、ヒートポンプ4を作動させた状態で、出湯温度センサ34の検出温度を第一目標温度(たとえば75℃)に維持するように、給水弁12の開度を調整して、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整する(第一制御)。なお、ここでは、第一目標温度は、前記設定温度よりも高い温度とされる。
【0057】
一方、給水路8を介した給水タンク3への給水中、熱源温度センサ35の検出温度が設定温度(たとえば60℃)以上になると、第二制御に切り替える。第二制御では、ヒートポンプ4を停止させる。その場合でも、給水タンク3内の水位に基づく給水条件が満たされる限りは、給水路8を介して給水タンク3へ給水するが、凝縮器17の出口側水温の制御目標温度を下げるのが好ましい。つまり、出湯温度センサ34の検出温度を第一目標温度よりも低い第二目標温度(たとえば60℃)に維持するように、給水弁12の開度を調整して、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整する。なお、ここでは、第二目標温度は、前記設定温度と同一温度とされるが、場合により、前記設定温度よりも低い温度とされてもよい。
【0058】
このように、蒸発器19への熱源水温度が設定温度未満であれば、ヒートポンプ4を作動させた状態で、凝縮器17の出口側水温を第一目標温度に維持するように、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整することで、給水源の水温や熱源水の温度に拘わらず、所望温度の温水を得ることができる。一方、蒸発器19への熱源水温度が設定温度以上になると、ヒートポンプ4を停止させるので、圧縮機16の保護を図ることができる。但し、その場合でも、廃熱回収熱交換器21において、給水と熱源水とを熱交換して、熱源水からの熱回収を図ることができる。しかも、凝縮器17の出口側水温の制御目標温度を、第一目標温度よりも低い第二目標温度に切り替えることで、給水路8を介した給水タンク3への給水流量をある程度以上に確保して、熱源水からの熱回収を有効に図ることができる。
【0059】
第二制御から第一制御への切替えは、次のように行われる。すなわち、ヒートポンプ4を停止した状態で、出湯温度センサ34の検出温度を第二目標温度に維持するように、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整中(つまり第二制御中)、熱源温度センサ35の検出温度が設定温度未満を設定時間(たとえば60秒)継続した場合には、第一制御に戻される。つまり、ヒートポンプ4を再起動して、出湯温度センサ34の検出温度を第一目標温度に維持するように、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整する制御に切り替えればよい。
【0060】
但し、第二制御から第一制御への切替えは、次のように行ってもよい。すなわち、ヒートポンプ4を停止した状態で、出湯温度センサ34の検出温度を第二目標温度に維持するように、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整中(つまり第二制御中)、熱源温度センサ35の検出温度が設定温度よりも低い所定温度(たとえば58℃)未満になった場合には、第一制御に戻される。つまり、ヒートポンプ4を再起動して、出湯温度センサ34の検出温度を第一目標温度に維持するように、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整する制御に切り替えればよい。
【0061】
いずれにしても、蒸発器19への熱源水温度が所定に下がると、ヒートポンプ4を停止させた第二制御から、ヒートポンプ4を稼働させた第一制御に戻すことができる。このようにして、蒸発器19への熱源水温度に応じて、第一制御と第二制御との切り替えが行われる。
【実施例2】
【0062】
図3は、本発明の給水加温システムの実施例2を示す概略図である。
本実施例2の給水加温システム1は、基本的には前記実施例1と同様である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0063】
前記実施例1では、給水路8と補給水路9との上流部に補給水タンク5を設けたが、本実施例2では、補給水タンクは設けられない。すなわち、本実施例2では、硬水軟化装置14からの水は、補給水タンクに一旦貯留されることなく、直接に給水路8と補給水路9とに供給可能とされる。この場合において、図示例では、硬水軟化装置14よりも下流の管路(共通路10、給水路8および補給水路9)には、前記実施例1のような送水ポンプ11は設けられていない。つまり、給水路8および補給水路9には、硬水軟化装置14よりも上流側からの給水圧により通水可能とされる。たとえば、硬水軟化装置14への給水路に、前記実施例1のような送水ポンプが設けられており、給水弁12または補給水弁13が開けられると、送水ポンプが作動する構成とされる。
【0064】
給水路8と補給水路9との上流側は、前記実施例1と同様に、共通路10とされており、その共通路10が、前述したとおり、補給水タンクを介することなく、硬水軟化装置14の軟水出口に接続される。また、共通路10には、流量計(またはフロースイッチ)36が設けられる。そして、この流量計36も制御器に接続されている。但し、この流量計36は、硬水軟化装置14への給水路に設けられてもよいし、硬水軟化装置14が備えていてもよい。
【0065】
本実施例2では、給水タンク3の水位検出器26は、給水開始水位H1、給水停止水位H2の他、補給水量切替水位H5を検出できれば足りる。そのため、本実施例2では、給水タンク3には、給水停止電極棒28、給水開始電極棒27および補給水量切替電極棒31が、下端部の高さを順に低くして挿入されている。
【0066】
本実施例2では、給水タンク3内の水位が給水開始水位H1を下回ると、給水弁12を開けて給水路8を介して給水タンク3へ給水し、給水停止水位H2を上回ると、給水弁12を閉じて給水路8を介した給水タンク3への給水を停止する。給水路8を介した給水タンク3への給水中、前記実施例1と同様に、出湯温度一定制御を行うことができる。つまり、出湯温度センサ34の検出温度を設定温度に維持するように、給水弁12の開度を調整してもよい。
【0067】
また、前記実施例1と同様に、熱源温度センサ35の検出温度に基づき、ヒートポンプ4の発停を切り替えたり、出湯温度一定制御の目標温度を切り替えたりしてもよい。すなわち、給水路8を介した給水タンク3への給水中、熱源温度センサ35の検出温度が設定温度未満であれば、ヒートポンプ4を作動させた状態で、出湯温度センサ34の検出温度を第一目標温度に維持するように、給水弁12の開度を調整する。一方、給水路8を介した給水タンク3への給水中、熱源温度センサ35の検出温度が設定温度以上になると、ヒートポンプ4を停止させた状態で、出湯温度センサ34の検出温度を前記第一目標温度よりも低い第二目標温度に維持するように、給水弁12の開度を調整する。
【0068】
いずれにしても、本実施例2では、給水路8を介した給水タンク3への給水中、硬水軟化装置14の通水流量が設定流量になるように、補給水路9を介した給水タンク3への給水流量を調整する。言い換えれば、補給水路9を介した給水タンク3への給水流量は、給水路8と補給水路9とによる合計流量が設定流量になるように、補給水弁13の開度が調整される。具体的には、給水タンク3内の水位が給水開始水位H1を下回り、給水弁12が開かれると(出湯温度一定制御中)、流量計36の検出水量が設定流量になるように、補給水弁13の開度が調整される。もし給水路8経由の給水流量だけで設定流量を超える場合、補給水弁13は閉じた状態とされ、給水路8経由の給水流量だけでは設定流量に至らない場合、設定流量になるように補給水弁13の開度が調整される。
【0069】
ここで、前記設定流量は、硬水軟化装置14に要求される最低流量以上で設定される。つまり、硬水軟化装置14には、硬度漏れを防止するために、通水流量について最低流量が規定されているが、この最低流量以上で定められた設定流量(具体的には最低流量に所定の安全値を加算した値)になるように、補給水弁13の開度が調整される。なお、硬水軟化装置14には、硬度漏れを防止するために、通水流量について、最低流量だけでなく最大流量も規定されているが、給水路8と補給水路9との合計流量がこの最大流量以下で設定されるのは言うまでもない。
【0070】
ところで、給水弁12の開放時、確実に、硬水軟化装置14に最低流量以上の通水が確保されるように、補給水弁13の最低開度を規定しておいてもよい。この場合、流量計36の検出流量に拘わらず、まずは、給水弁12の開放時、補給水弁13を所定の最低開度だけ開ける。その後、設定タイミング(たとえば所定時間経過後)において、流量計36の検出流量が設定流量になるように補給水弁13を開度調整する制御に切り替えればよい。
【0071】
このような制御中、万一、給水タンク3内の水位が給水開始水位H1よりも低い補給水量切替水位H5を下回ると、補給水弁13を全開とするのが好ましい。あるいは、これに代えてまたはこれに加えて、
図3において二点鎖線で示すように、補給水路9と並列に、緊急補水路37を設けておき、補給水量切替水位H5を下回った場合、この緊急補水路37に設けた緊急補水弁38を開けてもよい。その後、給水タンク3内の水位が給水開始水位H1を上回ると、元の制御(つまり(緊急補水弁38を閉じた状態で)流量計36の検出流量を設定流量とするように補給水弁13の開度を調整する制御)に戻し、さらに水位が回復して、給水停止水位H2を上回れば、給水弁12および補給水弁13を閉じればよい。
【0072】
本実施例2によれば、硬水軟化装置14からの軟水を、一旦タンク受けすることなく、給水路8と補給水路9とに分岐して、硬水軟化装置14よりも上流側からの給水圧により、給水タンク3へ供給することができる。そのため、硬水軟化装置14の出口に補給水タンクを設ける必要がないし、給水路8や補給水路9にポンプを設ける必要もない。さらに、給水路8を介した給水タンク3への給水中、硬水軟化装置14の通水流量が設定流量になるように、補給水路9を介した給水タンク3への給水流量を調整することで、硬水軟化装置14に要求される最低流量以上で通水することができ、流量不足による硬水軟化装置14からの硬度漏れを防止することができる。その他は、前記実施例1と同様のため、説明を省略する。
【0073】
本発明の給水加温システム1は、前記各実施例の構成(制御を含む)に限らず、適宜変更可能である。特に、凝縮器17を介して給水路8により給水可能であると共に、凝縮器17を介さずに補給水路9により給水可能な給水タンク3を備え、補給水路9を介した給水タンク3への給水流量は、給水タンク3内の水位に基づき変更されるか、給水路8と補給水路9との合計流量に基づき変更されるのであれば、その他の構成は適宜に変更可能である。
【0074】
たとえば、前記各実施例において、過冷却器20と廃熱回収熱交換器21との内、一方または双方の設置を省略してもよい。
【0075】
また、前記各実施例では、給水タンク3の水位検出器26として、電極式水位検出器を用いたが、水位に応じた連続的な出力を得られるアナログ式水位検出器を用いてもよい。具体的には、給水タンク3内の水位に応じて水圧が変わることを利用した水圧式の水位検出器を用いることができるが、これに代えて圧力センサを用いることもできる。あるいは、静電容量式の水位検出器を用いることもできる。いずれの場合も、前記各実施例と同様の制御を実施することができる。
【0076】
また、前記実施例1では、給水タンク3内が補給水量切替水位H5を下回ると、典型的には補給水弁13を全開とし、その後、補給水開始水位H3を上回ると、補給水弁13を第一設定開度に戻し、さらに補給水停止水位H4を上回ると、補給水弁13を全閉したが、水位上昇時、補給水弁13を全開のままとしてもよい。つまり、給水タンク3内が補給水量切替水位H5を下回ると、補給水弁13を全開とし、その後、補給水停止水位H4を上回るまで、補給水弁13を全開のままとしてもよい。
【0077】
また、前記実施例1では、補給水路9を介した給水タンク3への給水流量は、補給水開始水位H3と補給水量切替水位H5とにより二段階で切り替えたが、三段階以上で切り替えてもよい。たとえば、三段階で切り替える際、水位が高い方から順に、補給水開始水位H3、第一補給水量切替水位H5’および第二補給水量切替水位H5”を検出可能としておけばよい。そして、補給水路9を介した給水流量は、給水タンク3内の水位低下時、補給水開始水位H3を下回ると、第一設定流量(たとえば補給水弁13の開度20%)で開始し、第一補給水量切替水位H5’を下回ると、第一設定流量よりも多い第二設定流量(たとえば補給水弁13の開度50%)とし、第二補給水量切替水位H5”を下回ると、第二設定流量よりも多い第三設定流量(たとえば補給水弁13の開度100%)とすればよい。この場合、給水タンク3内の水位上昇時、第一補給水量切替水位H5’を上回ると、第二設定流量に切り替えられ、補給水開始水位H3を上回ると、第一設定流量に切り替えられ、補給水停止水位H4を上回ると、補給水弁13を閉じればよい。
【0078】
また、前記実施例1において、補給水路9を介した給水タンク3への給水流量は、段階的に切り替える以外に、連続的に変動させてもよい。すなわち、補給水路9を介した給水タンク3への給水流量は、補給水開始水位H3を下回ると開始され、給水タンク3内の水位が低くなるほど連続的に増加し、給水タンク3内の水位が高くなるほど連続的に減少させてもよい。そして、補給水停止水位H4を上回ると、補給水路9経由の給水を停止すればよい。
【0079】
また、前記実施例1では、給水弁12の開度を調整して、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整する一方、補給水弁13の開度を調整して、補給水路9を介した給水タンク3への給水流量を調整したが、次のように構成してもよい。すなわち、
図1において、送水ポンプ11の設置を省略すると共に、給水弁12の代わりに給水ポンプを設置し、補給水弁13の代わりに補給水ポンプを設置してもよい。そして、給水ポンプをインバータ制御して、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整する一方、補給水ポンプをインバータ制御して、補給水路9を介した給水タンク3への給水流量を調整する。
【0080】
また、前記実施例1では、給水路8と補給水路9とは、上流側において共通路10とされ、その共通路10に送水ポンプ11が設けられたが、給水路8と補給水路9とは、個別に補給水タンク5に接続されてもよい。その場合、給水路8には、給水弁12より上流側に給水ポンプが設けられる一方、補給水路9には、補給水弁13よりも上流側に補給水ポンプが設けられる。そして、給水弁12を開放中には、給水ポンプを作動させ、補給水弁13を開放中には、補給水ポンプを作動させる。但し、給水弁12の設置を省略して、給水ポンプをインバータ制御してもよいし、補給水弁13の設置を省略して、補給水ポンプをインバータ制御してもよい。
【0081】
また、前記各実施例では、給水路8と補給水路9とは、下流側において、個別に給水タンク3に接続されたが、上流側と同様に共通路として(つまり合流させて)給水タンク3に接続されてもよい。
【0082】
また、
図1では、給水タンク3への給水を貯留するために補給水タンク5を設置したが、場合により補給水タンク5の設置を省略して、
図3と同様に、給水源から直接に給水路8および補給水路9に水を通してもよい。特に、
図1において脱酸素装置15を設置しない場合、
図3と同様に、補給水タンク5の設置を省略することができる。
【0083】
また、前記各実施例では、ボイラ2の給水タンク3への給水をヒートポンプ4で加温できるシステムについて説明したが、給水タンク3の貯留水の利用先は、ボイラ2に限らず適宜に変更可能である。
【0084】
また、前記各実施例では、ヒートポンプ4の熱源として熱源水を用いた例について説明したが、ヒートポンプ4の熱源流体として、熱源水に限らず、空気や排ガスなど各種の流体を用いることができる。
【0085】
また、前記各実施例では、ヒートポンプ4を運転する際、圧縮機16のモータの駆動周波数を一定に維持したが、場合により、圧縮機16の吐出圧を所定に維持するように制御してもよい。あるいは、給水タンク3内の水位、または蒸発器19への熱源水温度などに基づき、圧縮機16の出力を調整してもよい。
【0086】
また、ヒートポンプ4は、単段に限らず複数段とすることもできる。ヒートポンプ4を複数段にする場合、隣接する段のヒートポンプ同士は、間接熱交換器を用いて接続されてもよいし、直接熱交換器(中間冷却器)を用いて接続されてもよい。後者の場合、低段ヒートポンプの圧縮機からの冷媒と高段ヒートポンプの膨張弁からの冷媒とを受けて、両冷媒を直接に接触させて熱交換する中間冷却器を備え、この中間冷却器が低段ヒートポンプの凝縮器であると共に高段ヒートポンプの蒸発器とされる。このように、複数段(多段)のヒートポンプには、一元多段のヒートポンプの他、複数元(多元)のヒートポンプ、あるいはそれらの組合せのヒートポンプが含まれる。
【0087】
さらに、前記各実施例では、ヒートポンプ4の圧縮機16は、電気モータにより駆動されたが、圧縮機16の駆動源は特に問わない。たとえば、圧縮機16は、電気モータに代えてまたはそれに加えて、蒸気を用いて動力を起こすスチームモータ(蒸気エンジン)に駆動されたり、ガスエンジンにより駆動されたりしてもよい。