(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-146095(P2017-146095A)
(43)【公開日】2017年8月24日
(54)【発明の名称】検体液採取器具
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20170728BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20170728BHJP
【FI】
G01N1/00 101K
G01N1/10 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-25429(P2016-25429)
(22)【出願日】2016年2月15日
(71)【出願人】
【識別番号】507404064
【氏名又は名称】日本マイクロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105810
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 宏
(72)【発明者】
【氏名】澤田 鎮雄
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA06
2G052AA29
2G052AD06
2G052BA02
2G052BA14
2G052JA09
(57)【要約】
【課題】検体液を一定量採取可能な器具において、検体液の一定量採取の確度を向上すること。
【解決手段】一方側が検体液に接しこの検体液を一定量吸収するための吸収部10と、吸収部10の他方側に結合されて、孔25が形成されているポンプ部20とを備え、吸収部10の内部には、吸収した検体液の容量が自身の内側容積より多い場合には、吸収部10の内部に溢れさせる吸い込み管15が設けられている検体液採取装置1である。そして、吸い込み管15の上部の端面は、傾斜面とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側が検体液に接しこの検体液を吸収するための吸収部(10)と、
前記吸収部の他方側に結合され、孔(25)が形成されているポンプ部(20)と、
前記吸収部(10)の内部に設けられ、吸収した検体液の容量が自身の内側容積より多い場合にその多い分の検体液を前記吸収部(10)の内部に溢れさせる吸い込み管(15)と、を備える器具(1)において、
前記吸い込み管(15)の上部の端面は、傾斜面とされていることを特徴とする検体液採取器具。
【請求項2】
請求項1に記載の検体液採取器具において、
前記傾斜面は、親水性処理が施されていることを特徴とする検体液採取器具。
【請求項3】
請求項1および2の内のいずれか一項に記載の検体液採取器具において、
前記吸収部(10)は、
透明または半透明の部材で形成されていることを特徴とする検体液採取器具。
【請求項4】
請求項1、2および3の内のいずれか一項に記載の検体液採取器具において、
前記吸収部(10)と前記ポンプ部(20)とは、
結合部(30)で着脱容易に結合されていることを特徴とする検体液採取器具。
【請求項5】
請求項1、2、3および4の内のいずれか一項に記載の検体液採取器具において、
前記吸収部(10)は、外観視概略円錐状に形成され、
前記吸い込み管(15)は、
前記円錐の頂点側から直立する概略円筒状に形成され、
前記頂点とは反対側の前記円柱の端面が斜面とされていることを特徴とする検体液採取器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、汗等の人体から抽出した液体、試薬、工業過程で発生した排水などの検査対象となる様々な液体(以下「検体液」)を一定量採取する可能な器具に係わり、特に一定量採取の確度を向上するための器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血液の検査や生物化学・薬学等の成分分析法にあっては、測定感度の向上面で格段の進歩を遂げており、高感度測定は採取する検体液の微量化に繋がるもので望ましいことである。特に、涙などの検体液は元々少量のものであり、この少量の検体液を一定量採取するための装置の提供が望まれていた。特許文献1に記載の検体液採取器具は、検体液を取り込むための毛細管と、この毛細管の一方の末端にあって空気穴を有する空気溜部とを含んで成っていて、更にこの毛細管は、その長さ方向に空隙部をおいて並べられる2以上の支持部材と、この空隙部を覆うように支持部材と重なる2以上の透明フィルムによって形成されている。
【0003】
そして、毛細管内部に検体液を取り込み、その取り込み量を、支持部材に印刷された目盛を基準とし読み上げることにより、検体液の取り込み量を把握する(特許文献1参照。)。この発明は、生体から得られる検体液を迅速に採取できるようにすることを目的としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−234446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、
図1に示すような検体液採取器具1において、ポンプ部20を操作することによって、吸い込み管15の下部先端から検体液を吸い込ませ、吸い込ませた検体液が、吸い込み管15の内側容積より多い場合には、多い分の検体液を吸収部10の内部にオーバーフローさせる。ところが、
図3に示すように、従来の吸い込み管(吸い込み管の壁面16)の上部端面17は平坦となっており、この平坦部分に対する表面張力によって、検体液の一部A(例えば一滴)が付く場合がある。
【0006】
そして、この不安定な付着物である検体液Aが規定量にプラスされてしまうという問題があった。つまり、採取者が一定量の検体液を採取したと思っても、実際の採取容量はこの付着した検体液Aの容量だけ大きくなってしまうので、正確な定量採取が行えなかった。そこで、本発明者は、付着する検体液Aが検体液の一定量採取に誤差を生じさせるという新規な課題に注目した。
【0007】
本発明は、かかる従来の課題を解決するためになされたもので、吸い込み管によって検体液を一定量採取可能な器具において、検体液の一定量採取の確度を向上可能な器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、一方側が検体液に接しこの検体液を吸収するための吸収部(10)と、
前記吸収部(10)の他方側に結合され、孔(25)が形成されているポンプ部(20)と、
前記吸収部(10)の内部に設けられ、吸収した検体液の容量が自身の内側容積より多い場合にその多い分の検体液を前記吸収部(10)の内部に溢れさせる吸い込み管(15)と、を備えた器具(1)において、
前記吸い込み管(15)の上部端面は、傾斜面とされていることを特徴としている。
【0009】
ここで「検体液」は、生体から採取された血液、汗等の液体、試薬、工業過程で発生した排水などの検査対象となる様々な液体のことを指す。
【0010】
この検体液採取装置によれば、ポンプ部を操作することによって、吸い込み管の下部先端から検体液を吸い込ませる。吸い込ませた検体液が、吸い込み管の内側容積より多い場合には、その多い分の検体液が、吸収部の内部に溢れる。そして、従来技術であれば、吸い込み管の上部端面は平坦であり、この平坦部分に検体液の一部が付く場合がある。例えば、検体液が吸収部の内部に溢れ出る場合等にこの検体液の付着が生じる。この付着された検体液は不安定なものであり、採取者が一定量の検体液を採取したと思っても、この不安定な付着分が加わってしまうため、正確な一定量採取が行えなかった。
【0011】
一方、本発明によれば、吸い込み管の上部端面が傾斜しているため、付着液体の自重が表面張力に打ち勝って、吸い込み管から離れる。これにより、吸い込み管の内部に採取される検体液の容量が、吸い込み管の内側容積と正確に等しくなるので、検体液の一定量採取確度が向上する。傾斜面に親水性処理を施せば、検体液が流れ落ち易くなるので一層好ましい。
【0012】
また、この検体液採取器具(1)において、前記吸収部(10)を、透明または半透明の部材で形成すれば、この透明または半透明部材を介して、吸い込み管15による検体液の吸い込み状況等を容易に把握することができる。更に、この器具において、前記吸収部(10)と前記ポンプ部(20)とを結合部(30)で着脱容易に結合した構成とすれば操作性が向上するという効果も奏する。また、結合部を持って操作することが可能になることからも操作性が向上する。
【0013】
また、前記吸収部(10)を外観視概略円錐状に形成し、前記吸い込み管(15)は、前記円錐の頂点側から直立する概略円筒状に形成され、前記頂点とは反対側の前記円筒の端面が斜面とされる構成とすれば、シンプルな構造でコスト低減を図る事も可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吸い込み管によって検体液を一定量採取する可能な器具において、検体液の一定量採取の確度を向上可能な器具を提供することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】検体液採取器具1の平面図、および、A−A矢視図である。
【
図4】本発明の実施形態における吸い込み管15の構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態である検体液採取器具1の正面図、
図2(a)は、検体液採取器具1の平面図、
図2(b)は、
図1にけるA−Aの矢視図である。なお、以下に説明するのは一実施形態であり、形状、寸法等は適宜変更し得る。
【0017】
(構成)
図1は検体液採取器具1の正面図であり、この検体液採取器具1は縦方向の軸心に対して対称な構造であるため、正面図、側面図および背面図は等しい。検体液採取器具1は、その一方側の先端(図面下側)が検体液に接しすることにより検体液を吸収するための吸収部10と、この吸収部10の他方側(図面上側)に結合部30を介して結合され、その上面に孔25が形成されているポンプ部20と、を備えている。
【0018】
また、吸収部10の内部には、吸収した検体液の容量が自身の内側容量より多い場合に、その多い部分の検体液を吸収部10の内部に溢れさせるための吸い込み管15が設けられている。従来の吸い込み管は、単に、円筒状に形成されていてその端面は平坦である。吸収部10は、外観視概略円錐状に形成されており、吸い込み管15は、この外観視概略円錐状の円錐頂点側から直立する外観視概略円筒状に形成され、この円錐頂点とは反対側の円筒端面が「斜面」されている点が本実施形態の特徴である。なお、一設計例では吸い込み管15の内側容量は「60(μL)」である。吸い込み管15の内側容量は検体液採取における採取量である。
【0019】
かくして、検体液採取装置1の平面図は、
図2(a)のようになり、また、
図1におけるA−A矢視図は、
図2(b)のようになる。ポンプ部20の孔25は、ポンプ部20の操作によって検体液の吸い込み時の吸い込み調整等に使用し、その形状は円形としているが孔15の形状は円形に限られない。また、吸収部10は、透明または半透明の部材で形成されていて、この透明または半透明部材を介して、吸い込み管15による検体液の吸い込み状況等を容易に把握することができる。特に検体液を吸い込んで、吸い込み管15の上端面と液面とが面一になったか否か、換言すれば検体液の一定量採取が完了したか否かが把握容易となり操作性が向上する。
【0020】
図5は結合部30の構造の模式的な説明図である。吸収部10は正面図で図示し、ポンプ部20は縦断面を図示している。吸収部10の上側先端には平面視が円形の突起部12が形成され、この突起部12の突起半径よりも若干大きな半径の凸部11が、突起部12の縦方向中央部に形成されている。一方、ポンプ部20の下側内部には、平面視円形状の凹部21が、ポンプ部20の内壁に溝状に形成されている。
【0021】
そして、吸収部10側の凸部11と、ポンプ部20側の凹部21とを嵌め込むことにより、吸収部10とポンプ部20とが結合される。一方、凸部11と凹部21との嵌め込みを解くことにより、吸収部10とポンプ部20との結合が解かれる。この際、凸部11の突起寸法、凹部21の窪み寸法等を適宜決定し両者の結合がタイトでもルーズでもないようにしておく。
【0022】
かくして、吸収部10とポンプ部20とを容易に着けたり外したりすることができ、吸収部10のみを測定器にかける事などが可能になる。なお、
図5に示すのは結合部30の一例であり、この例の他、例えば吸収部10に対してポンプ部20をねじ込む構造、吸収部10の上部先端側をテーパー状にしてポンプ部20を締め付ける構造などの様々な構造が適用可能である。
【0023】
図4は吸い込み管15の構造の説明図である。
図4(a)は縦方向断面図、
図4(b)はB−B矢視図、
図4(c)は斜面部の拡大図である。
図4に示すように、吸い込み管15は外観視概略円筒であるが、その下部先端は2段のテーパー状となっている。そして、
図4(a)に示すように、吸い込み管15の上部端面は傾斜する斜面18となっている。つまり、
図4(c)に示すように、上部端面は、水平から角度θだけ傾いている。この傾きによって、不要な液体が付着するのを防ぐことができるので一定量採取の確度が向上する。
【0024】
実験等によれば、「θ=45度」以上であることが好ましく、また、斜面18に親水性処理を施せば、検体液がその自重によって流れ落ち易くなるので一層好ましい。親水性処理は例えば公知の親水性膜を形成したり、公知の親水性材料で斜面18を形成したりすること等が挙げられる。また、斜面18だけではなく吸い込み管15の外面全体に対して親水性処理をすると一層効果的である。
【0025】
(操作手順)
次に検体液の定量採取操作について説明する。まず、検体液を採取する前に、検体液採取器具1の内部の空気を十分に押し出す。そのために、ポンプ部10を手で握ってポンプ部20を圧縮して、孔25を指で押さえる。
【0026】
次に、吸収部10の先端、つまり、吸い込み管15の下部先端を検体液に浸す。そして、ポンプ部20の圧縮を徐々に解放する。すると、検体液が吸い込み管15内を上昇してくる。採取者は、検体液の液面が吸い込み管15の上面と面一になった時点で採取を止める。かくして、吸い込み管15の内側容積が検体液の採取量となるので、検体液を一定量採取することが可能となる。この際、孔25を押さえていた指を離す。
【0027】
なお、吸収した検体液の容量が吸い込み管15の内側容積より多くなった場合には、その多い部分の検体液が吸収部10の内部に溢れることになる。この際、従来技術では付着していた検体液(
図3参照)が、傾斜18によって流れ落ちるため、一定採取容量の精度は向上する。
【0028】
(寸法等)
本発明者が設計・製造した検体液採取器具1によれば、
図4(a)に示す吸い込み管15の最大内径は「1.0(mm)」、図面上下方向の長さは「30(mm)」である。また、吸い込み管15と吸収部10とは一体成型で製造した。つまり、吸い込み管15の下側先端の外側と吸収部10の内側とが繋がっている。また、吸収部10は、「透明・アクリル樹脂又はポリスチレン樹脂、半透明・ポリプロプレン樹脂」、ポンプ部20は「軟質ポリスチレン樹脂」などで製造した。なお、吸い込み管15の外径は「2.0(mm)」以下、内径は「0.18(mm)」以下であることが好ましいことを確認している。
【0029】
(その他)
図6はポンプ部20の他の実施形態の平面図である。この形態では、平面視概略楕円のポンプ部20の中央に円形状の孔15を形成している。このようにポンプ部20の形状は操作性等を考慮して種々のものが提案される。また吸収部10の形状等も適宜変形しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明してきたように、例えば血液、涙等の検体液を一定容量採取することが必要な場合などに利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 検体液採取器具
10 吸収部
11 凸部
12 突起部
15 吸い込み管
18 斜面
20 ポンプ部
21 凹部
25 孔
30 結合部