【課題】従来の撮影画像を用いたひび割れ検査装置のように複雑な処理を必要とせずに、比較的大きなひびの入った卵など卵殻の外形の比較的大きな欠損や変形を検出することができる卵の表面検査装置を提供する。
【解決手段】卵Eの長軸を水平かつ当該卵の搬送方向に対して直交させた状態で搬送しながら当該卵の表面を検査する表面検査装置1であって、卵Eの長軸を中心に当該卵Eを転動させながら搬送する搬送手段2と、この搬送手段2の搬送方向Aに直交する方向に伸びる線状の光を照射する投光手段3と、この投光手段3により線状の光が照射された卵Eを撮影する撮影手段4と、この撮影手段4が撮影した線状の光に基づいて卵Eの表面の状態を判定する判定手段5とを備える。
各つづみ型ローラは、ローラ軸を中心として搬送方向と逆方向に回転することで、これらつづみ型ローラに載置している卵を搬送方向に回転させるものである請求項3記載の卵の表面検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図6を用いて説明する。
【0013】
本実施形態にかかる卵の表面検査装置1は、図示しない卵の選別装置に設けられ、比較的大きなひび割れや陥没の生じた卵を検出するためのもので、
図1〜
図3に示すように、卵Eの長軸を水平かつ当該卵Eの搬送方向A(進行方向)に対して直交させた状態で搬送しながら当該卵Eの表面を検査する装置である。この卵の表面検査装置1は、卵Eの長軸を中心に当該卵Eを転動させながら搬送する搬送手段2と、この搬送手段2の搬送方向Aに直交する方向に伸びる線状の光を照射する投光手段3と、この投光手段3により線状の光が照射された卵Eを二次元で把握する撮影手段4と、この撮影手段4が撮影した線状の光に基づいて卵Eの表面の状態を判定する判定手段5とを備えてなる。
【0014】
搬送手段2は、
図1〜
図3に示すように、搬送の前後方向に隣接する一対のつづみ型ローラ21により卵Eが保持されながら供給搬送方向Aに沿って下流側へと卵Eを移動させるもので、卵Eを保持する複数のつづみ型ローラ21と、これらつづみ型ローラ21が所定の間隔で取り付けられたローラ軸22と、このローラ軸22の端部に設けられたローラ規制部23とを主体に構成されている。この搬送手段2は、各つづみ型ローラ21が、ローラ軸22を中心として搬送方向Aと逆方向に回転(
図3のつづみ型ローラ21に付された矢印で示された、反時計回りの回転)することで、これらつづみ型ローラ21に載置している卵Eを搬送方向Aに回転(
図3の卵Eに付された矢印で示された、時計回りの回転)させるものである。
【0015】
つづみ型ローラ21は、
図1〜
図3に示すように、幅方向中央が外側より窪んだ形状をなすよく知られたものであり、本実施形態では6つのつづみ型ローラ21がローラ軸22に固定されている。なお、図では、6つのつづみ型ローラ21のうち1つのみを代表して示している。ローラ軸22は、搬送方向Aに直交する方向に伸びるようにその両端が図示しないチェーンに回転可能に取り付けられており、複数のローラ軸22は互いに平行になっている。
【0016】
ローラ規制部23は、
図1〜
図3に示すように、搬送手段2全体のうち投光手段3や撮影手段4に対応する位置に設けられたものである。このローラ規制部23は、ローラ軸22の上側に設けられたローラ規制部23とローラ軸22とが接することで生じる摩擦力により、ローラ軸22及びこのローラ軸22に固定されているつづみ型ローラ21を転動させる回転付与手段としての役割を果たす。そして、搬送方向Aの前後に隣接するつづみ型ローラ21がともに同方向に回転することにより、隣り合うつづみ型ローラ21によって保持された卵Eを回転させる。特に、本実施形態のローラ規制部23は、ローラ軸22の上部に接するようになっており、搬送方向Aと同じ方向に卵Eを転動させるものである。すなわち、搬送方向Aと逆向きにつづみ型ローラ21がローラ軸22を中心として回転するとともに、当該つづみ型ローラ21と逆向きに卵Eが回転する。なお、つづみ型ローラ21には傾斜部分24が存在するため、つづみ型ローラ21が回転すると、卵Eの長軸がローラ軸22とほぼ平行になるとともに、卵Eの胴部分が搬送路の中央を通るように卵Eの位置が調整される。
【0017】
投光手段3は、
図1〜
図3に模式的に示すように、隣接した2つのつづみ型ローラ21に保持され回転する卵Eに向けて照射するもので、搬送手段2の上方に固定配置されている。図では一つの卵Eに向けて光を照射しているが、1つの光源で複数列にわたって照射するようにしてもよいのはもちろんである。本実施形態の投光手段3は、扇状の平面に広がる光を放出するもので、例えば、図示しない点光源とシリンドリカルレンズなどを組み合わせて使用している。この投光手段3により、搬送手段2上及びその搬送手段2上に位置する卵Eの表面上に、搬送方向Aに直交した幅方向に延びる1本のラインL(輝線)が形成される。この一直線に伸びるラインLは、ローラ軸22に平行なものである。
【0018】
なお、光のラインLは、平面に照射されるときには直線となるが、卵Eに照射される際には、
図1、
図4及び
図5に示すように、その卵Eの外形形状を反映した曲線となる。
図4に示すように、大きな割れや陥没のない卵の場合には、卵の滑らかな形状に沿った形状が表れる。一方、
図5に示すように、大きな割れや陥没のある卵の場合には、その部分がへこんでいるのに対応して、光のラインLも折れ曲がる。
図4及び
図5の各図の下側に示したグラフは、卵Eに照射された光のラインLの位置データをX、Yの2次元で表したものである。
【0019】
撮影手段4は、
図1〜
図3に模式的に示すように、卵Eに投光された1本のラインLを撮影できる位置に設けられたカメラであり、搬送装置の斜め上方で、投光手段3よりも上流側に固定配置されている。このように、投光手段3の投光角度と撮影手段4の撮像角度とを所定角度で傾斜させておくことで、撮影手段4から得られた情報から、いわゆる三角測量の原理によって輝線上における各位置の、搬送手段2における卵Eの基準面からの高さを求めることができ、卵Eの表面上に形成された輝線に沿った各位置の高さ情報を卵Eの外形(表面)形状として把握できる。
【0020】
判定手段5は、
図3に模式的に示すように、撮影された画像の輝線の形状に基づいて表面の状態を判定するものであり、例えば、輝線から得られる位置データ中に「割れや陥没などが生じていない正常な卵の際には表れない凹/凸となる部分」があるか否かによって、撮影された卵Eの卵殻の表面の状態を判断する。なお、判定手段5(画像処理手段)は、撮影された画像に基づいて卵Eの表面の状態を判定できるものであればどのようなものであってもよく、以下に説明する実施形態に限られないのはもちろんである。
【0021】
本実施形態の卵の表面検査装置1の各部を制御するための制御装置(図示しない)は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェースなどを有したマイクロコンピュータシステムである。
【0022】
次に、本実施形態における卵の表面検査方法について説明する。
【0023】
まず、卵Eが載せられた状態のつづみ型ローラ21を搬送方向Aに移動させる。その際、ローラ規制部23の作用により、つづみ型ローラ21及び卵Eが回転しながら投光手段3及び撮影手段4の配置された検出位置6に搬送される。検出位置6においては、検出位置6に搬送される卵Eの表面に照準を合わせた光のラインLが形成されるように、投光手段3から予め光を連続的に照射させておく。
【0024】
そして、
図6に示すように、検査すべき卵Eの長軸に沿って光のラインLが投光された状態を撮影手段4により撮影し(ステップS1)、その画像データを判定手段5(画像処理手段)内に取り込む(ステップS2)。判定手段5(画像処理手段)は、画像上でのラインLの位置データを抽出する(ステップS3)。
【0025】
この位置データで(Y軸方向)下側に凹んでいる部分がある場合には(ステップS4)、卵Eの表面に割れや陥没が生じていると判定する(ステップS5)。一方、ステップS4で、下側に凹んでいる部分がない場合には、卵Eの表面に割れや陥没が生じていないと判定する(ステップS6)。割れや陥没などが生じている位置・大きさ・形状にもよるが、ステップS4では、例えば、位置データの微分などを行って、その傾きに注目すればよい。なお、ステップS4〜S6に準じて、「上側に」凸となる部分があるか否かによって、卵Eの表面に異物が付着しているか否かを判定することも考えられる。
【0026】
以上説明した撮影から判定までの一連の流れは、卵Eが搬送方向Aと同じ方向に回転しながら次々と卵Eの異なる面に投光されるのに伴って、卵Eの全周について繰り返される。なお、一度「卵の表面に割れや陥没が生じている」と判断したら、その卵Eに対する上述した検査を中止するようにしてもよい。
【0027】
以上説明したように、本実施形態にかかる卵の表面検査装置1は、卵Eの長軸を水平かつ当該卵Eの搬送方向Aに対して直交させた状態で搬送しながら当該卵Eの表面を検査するものであって、卵Eの長軸を中心に当該卵Eを転動させながら搬送する搬送手段2と、この搬送手段2の搬送方向Aに直交する方向に伸びる線状の光を照射する投光手段3と、この投光手段3により線状の光が照射された卵Eを二次元で把握する撮影手段4と、この撮影手段4が撮影した線状の光に基づいて卵Eの表面の状態を判定する判定手段5とを備えた。すなわち、本実施形態の卵の表面検査装置1は、「光切断法」と呼ばれる、検査したい対象物にライン状に光を照射して、その反射光を位置データとして取得する方法を卵に応用したものである。
【0028】
卵殻に比較的大きなひび、割れ、陥没が生じている卵Eは、外形形状が正常なものと大きく異なっている。そのため、上述した線状の光を用いて外形形状の輪郭を表すことで、ひび、割れ、陥没などが生じているか否かを判定することができる。本実施形態においても卵Eの撮影画像の画像処理を行っているが、輝線の位置情報のみに注目しているので、非常に簡単に処理を行うことができる。すなわち、従来の画像を用いたひび割れ検査装置の画像処理で行われていた、卵殻と背景とを区別するなどの特徴抽出処理が不要となる。さらに、このような光切断法を用いたものの場合、水分の付着などによる卵殻の光沢や卵殻色の影響を受けにくいという利点もある。
【0029】
特に、本実施形態における卵の表面検査装置1は、卵Eを転動させながら搬送する搬送手段2を備えているので、卵Eの全周にわたってその表面を検査することができる。
【0030】
また、本実施形態の搬送手段2は、搬送方向Aと同じ方向に卵Eを正回転(卵Eの長軸を中心として、搬送方向Aと同じ方向に回転)させるものであるので、投光手段3や撮影手段4を1箇所で固定しておくことができる。従来からよく知られている汚卵検査装置などで用いられる搬送手段でも卵を転動させているが、汚卵検査装置の場合は卵を逆回転(卵の長軸を中心として、搬送方向に対して逆方向に回転)させており、1つの卵に対して上流側から下流側にわたって複数箇所に設置したカメラで撮影していた。卵の回転速度にもよるが、1箇所で固定した投光手段や撮影手段の下で卵を逆回転させると、卵のほとんど同じ箇所に対して投光/撮影を繰り返すことになる。
【0031】
一方、本実施形態に示した搬送手段2では、つづみ型ローラ21と卵Eの回転方向の正逆が、従来のものと反対である。詳述すれば、正方向に進むローラ軸22に対して、ローラ軸22を中心として逆方向に回転するつづみ型ローラ21と、このつづみ型ローラ21の回転と逆方向に回転する卵Eという関係を備えている。すなわち、この搬送手段2は、各々のつづみ型ローラ21がローラ軸22を中心として搬送方向Aに対して逆方向に回転をすることで、これらつづみ型ローラ21に載置している卵Eを搬送方向Aに回転させるものであるので、固定された1箇所の投光手段3・撮影手段4を用いて、卵Eの全周が検査できるという効果がある。そのため、表面検査装置1をコンパクトに設計することができるとともに、当該表面検査装置1の製造コストを抑えることができる点で好ましい。なお、搬送方向Aに沿って投光手段3や撮影手段4を複数箇所に配置することにより、卵Eの回転速度にかかわらず卵Eの全周にわたって検査ができ、上述した実施形態と逆方向に卵Eが回転した場合であっても、卵Eの全周を検査することが可能である。
【0032】
本実施形態の搬送手段2は、ローラ軸22に固定されたつづみ型ローラ21であり、隣接する一対のつづみ型ローラ21により卵Eを保持するものであるので、卵Eの長軸を搬送幅方向に沿わせながら搬送させることができる。また、つづみ型ローラ21上の一番安定する場所で卵Eの左右方向の位置が決まるため、撮影手段4で卵Eを撮影する際の幅方向の設定も行いやすい。
【0033】
搬送手段2は、ローラ軸22の上側に設けられたローラ規制部23とローラ軸22とが接することで、つづみ型ローラ21を転動させるものであるので、ローラ規制部23の簡単な構造でつづみ型ローラ21を所望の方向に回転させることができ、その上に載った卵Eも回転させることができる。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
【0035】
搬送手段は、卵の長軸の方向を保ちつつ転動させながら搬送するものであればどのようなものであってもよい。上述した実施形態では、6列で搬送するようにしていたが、何列で搬送してもよく、例えば1列のみで搬送してもよい。また、つづみ型ローラは、既知の他のローラ等に置き換えてもよいのはもちろんである。
【0036】
ローラ規制部は、卵を転動させるべくローラを回転可能なものであれば、図示したものには限られず種々変更可能である。例えば、ローラ規制部23が、
図7及び
図8に示したような、つづみ型ローラ21の下側に設けられるベルトコンベヤ25であってもよい。このベルトコンベヤ25の上面側とつづみ型ローラ21とが接することで生じる摩擦力により、つづみ型ローラ21を転動させる回転付与手段としての役割を果たす。本変形例にかかる搬送手段2は、各々のつづみ型ローラ21がローラ軸22を中心として搬送方向と逆方向に回転することで、これらつづみ型ローラ21に載置している卵Eを搬送方向に回転させるものである。具体的な一例としては、搬送方向と同じ方向にベルトコンベヤ25の上面が移動するものであって、ベルトコンベヤ25の走行速度Vbはつづみ型ローラ21の走行速度Vaよりも大きく設定すればよい。この場合、ローラ軸22よりも大きな径を有するつづみ型ローラ21のローラ本体をベルトコンベア25が直接回転させるため、固定された1箇所の投光手段3・撮影手段4を用いて検査する場合には、その走行速度Vbを走行速度Vaに比べてかなり速く設定する必要がある。なお、
図7及び
図8においては、上述した実施形態に対応する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0037】
投光手段は、卵に照射された光が、撮影手段においてライン(輝線)として検出できるものであればどのようなものであってもよく、いわゆる「光切断法」に用いられるものであれば、種々適用可能である。例えば、上述した点光源に代えて、レーザとシリンドリカルレンズなどを組み合わせて用いてもよい。また、投光手段は、1本のラインが卵に照射されるものに限られず、複数本のラインを形成する光を放出するもの、縞状などの模様を形成する光を放出するものなども適用可能である。
【0038】
判定手段や判定方法についても、上述した実施形態には限られない。例えば、卵を撮影した画像データにおいて、卵の表面のうち光が当たっている部分と当たっていない部分の区別がわかりにくい場合には、撮影画像を2値化して、光が当たっている部分を取り出すようにすればよい。
【0039】
また、ライン(輝線)の位置データ中で下側に凹んでいる部分を検出する方法も上述したものには限られない。例えば、まず、一の画像データ中の各位置データから推定される、割れや陥没が生じていない場合にとり得る理想外形位置を算出する。そして、この理想外形位置と実際の位置データの座標とを比較する。理想外形位置よりも実際の位置データのY座標の値が小さければ、位置データの対応するX座標の位置で下側に凹んでいる部分があるといえる。一方、理想外形位置よりも実際の位置データのY座標の値が(ほぼ)同じであれば、位置データの対応するX座標の位置で凹凸がない(割れや陥没などの生じていない理想的な外形を有している)と考えられる。さらに、理想外形位置よりも実際の位置データのY座標の値が大きければ、位置データの対応するX座標の位置で上側に凸となる部分があるといえる。
【0040】
さらに他の方法としては、一の画像データから得られる位置データと、同じ卵の他の画像データ(卵の回転により異なる位置で撮影された画像データ)から得られる位置データとを比較して、下側に凹んでいる部分を見つけるようにしてもよい。または、一の画像データから得られる位置データと、他の複数の(割れや陥没などの生じていない正常な)卵の画像データから得られる位置データの平均とを比較して、下側に凹んでいる部分を見つけるようにしてもよい。
【0041】
撮像手段は、上述した実施形態では投光手段よりも上流側に固定配置されていたが、投光手段よりも下流側に固定されているものであってもよい。
【0042】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。