【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の超音波検査装置にあっては、以下のような不都合が生じていた。
すなわち、超音波探触子と半導体パッケージの上面との平衡調整時には、水槽の底板に固定した試料台から作業者が半導体パッケージをいったん取り外し、所定サイズのシム(スペーサ)によるこれの高さ調整を行った後、半導体パッケージを試料台に戻していた。このように、この高さ調整作業が人手による半導体パッケージの試料台からの取出し・再載置となるため、半導体パッケージの置き位置の再現が困難であり、置き位置のズレを原因として半導体パッケージとシム板との位置関係も変動し、再度シム板のサイズ変更を行う必要が生じる場合があった。その結果、この調整に長時間を要し、これを原因として半導体パッケージの超音波検査のデータを取得するまでの時間が長くなっていた。
【0005】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、液槽の底板にベース台を載置し、その上面で三角形の3頂点位置に形成された3つのねじ孔に、それぞれのねじ部をねじ込んで3本の脚を垂直に起立し、これらの脚の上端部に、高さ調整溝付きの上端面を露出して試料台を保持させれば、所定の高さ調整溝に差し込まれた治具により所定の脚を回転させることで、半導体パッケージの全域において、超音波探触子とこのパッケージとの間の距離を調整できることを突き止めた。これにより、半導体パッケージを試料台に載置したまま、超音波探触子と半導体パッケージの上面全域との距離を揃えて、半導体パッケージの平衡調整が容易かつ短時間で可能となり、その結果、半導体パッケージの超音波検査データの取得までの時間を短縮できることを知見し、この発明を完成させた。
【0006】
すなわち、この発明は、試料台上からワークを取り外すことなく、ワークの平衡調整を容易かつ短時間で行うことができる超音波検査装置用ワーク置台を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、液槽中にワークを保持し、液面下でこのワークより上方に配置した超音波発振器から発振した超音波の反射波を受信器により受信してワークの性状を検査する超音波検査装置において、前記液槽の底板に載置されるベース台と、このベース台の上面で、三角形の3頂点位置に形成された3箇所のねじ孔と、これらのねじ孔に下端部のねじ部がそれぞれねじ込まれ、かつ前記ベース台から垂直に起立する3本の脚と、これらの3本の脚の上端部にほぼ水平に支持され、前記ワークが載置される試料台とを有し、前記3本の脚の各上端面は前記試料台の上面から露出するとともに、これらの上端面には対応する脚を回転させる治具が挿入される高さ調整用溝が形成された超音波検査装置用ワーク置台である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、液槽の液(水、油などの接触媒質)面下で試料台にワークを載置し、ワークのX方向(左右方向)とY方向(奥行き方向、前後方向)の平衡調整を行う。その際、試料台を支持する三角形状に配置された3本の脚のうち、例えば2本がX方向に配置され、残りの1本がY方向に配置されるものとする。
X方向の平衡調整時には、まず(1)超音波探触子をX方向に移動させ、ワークのX方向の複数箇所で、超音波探触子とワークの表面との距離(高さ)を超音波の発振および受信により測定する。その後、(2)これらの測定結果に基づき、作業者がX方向に配置された2本の脚に対して、所定の高さ調整用溝に治具を差し込み、その脚を所定方向に回転させることで、ベース台のX方向に配置されたねじ孔へのねじ部のねじ込み量を変更する。その後、(3)超音波探触子をX方向に移動させ、先ほどの各測定箇所で超音波探触子とワークとの距離を測定し、ワークの上面のX方向における水平状態を確認する。求める検査結果が得られなければ、(1)〜(3)の操作をワークのX方向の複数箇所での水平調整が完了するまで繰り返す。
【0009】
次に、Y方向の平衡調整時には、まず(4)ワークの上方で超音波探触子をY方向に移動させ、ワークのY方向の所定位置で、超音波探触子とワークとの距離を測定する。その後、(5)これらの測定結果に基づき、作業者がY方向に配置された1本の脚の高さ調整用溝に治具を差し込み、その脚を所定方向に回転させることで、ベース台のY方向に配置されたねじ孔へのねじ部のねじ込み量を変更する。(6)次いで、超音波探触子をY方向に移動させ、先ほどの各測定箇所で超音波探触子とワークとの距離を測定する。その後、(4)〜(6)の操作をワークのY方向の複数箇所での高さ調整が完了するまで繰り返す。
このようにして、試料台上からワークを取り外すことなく、超音波探触子とワークの上面全域との距離を揃えて、ワークの高精度での平衡調整を容易かつ短時間で行うことができる。また、従来はワークと探触子との直交度の問題で分解ができなかったワークの波形の性能評価も可能となる。なお、液槽に充填される液体としては、水、油、アルコールなどである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、高さ調整用溝は横一文字に形成された請求項1に記載の超音波検査装置用ワーク置台である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、高さ調整用溝の形状を横一文字としたため、脚が90°回転する毎にその端面の溝位置が初期位置と重なる十字穴のものに比べて、その2倍の180°回転するまで、脚の端面の溝位置がその初期位置と重ならない。これにより、脚の端面の高さ調整用溝の移動角度から、対応する脚の高さ調整量を視覚的におおよそ把握することができ、その結果、ワークの平衡調整に要する時間をさらに短縮することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、ベース台の裏面にはザグリによる凹所が形成されるとともに、この凹所は透孔によりベース台の上方空間に連通している請求項1または請求項2に記載の超音波検査装置用ワーク置台である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ベース台の裏面にはザグリによる凹所が形成され、この凹所は透孔によりベース台の上方空間に連通している。そのため、液槽中に水などの接触媒質を流し込んだとき、ベース台の凹所に残った空気を透孔から抜き出すことができる。また、超音波検査時の超音波探触子の移動動作により液槽の水などの接触媒質が攪拌され、ベース台の下面に気泡が入り込んでも、この気泡を透孔から容易に排出することができる。
【0014】
ワークとしては、超音波検査が可能なものであれば任意である。例えば、各種の半導体パッケージ、樹脂製品などがある。
超音波検査装置により検出されるワークの性状とは、例えば、ワークが半導体パッケージの場合にはボイド、パーティクル、半田の接合不良、モールドの亀裂などである。
ここでの超音波検査装置は、液面下で超音波発生器からワーク(対象物)に向かって超音波を発振し、その反射波を受信器により受信することで、超音波反射エネルギ(Echo Height)の強弱により、ワーク内部の状態を可視化する。
その際、ワークの上方で超音波探触子は水平方向に移動しながら、このワークの全体をスキャニングする。
超音波探触子の種類としては、例えば垂直探触子、斜角探触子、水浸探触子などを採用することができる。超音波発生器には、超音波発振器と、超音波発振器から発振された超音波の反射波を受信する受信器とが内蔵されている。
【0015】
ベース台の素材は限定されない。例えば、アクリル樹脂などの各種の合成樹脂を採用することができる。その他、各種のガラスなどでもよい。
ベース台の形状としては、例えば矩形状、円形状、楕円形状などを採用することができる。
また、ベース台として、裏面にザグリによる凹所が形成され、この凹所に上方空間と連通する透孔を形成したものを採用してもよい。これにより、例えば液槽に水(または油などの接触媒質)を流し込んだとき、ベース台の凹所に残っていた空気を透孔から排出することができる。また、超音波検査時の超音波探触子の移動動作により液槽の水(または油などの接触媒質)が攪拌され、ベース台の下面に気泡が入り込んだ場合でも、この気泡は透孔を通して容易に排出することができる。
【0016】
ベース台に形成される3つのねじ孔がその3頂点の位置に配置される三角形としては、例えば正三角形が好ましいものの、その他、二等辺三角形、直角三角形などを採用してもよい。三角形の各辺の長さは任意とする。
各脚の素材としては、例えば、ステンレス、鉄、銅などの各種の金属、アクリル樹脂などの各種の合成樹脂、各種のガラスなどを採用することができる。
各脚の長さ方向に直交する断面形状は任意である。例えば、円形、正方形を含む四角形状の多角形などを採用することができる。
各脚の下部に形成されるねじ部(ねじ孔)の直径は、脚のサイズに応じて適宜選択される。
【0017】
ここでいう「試料台が3本の脚の上端部にほぼ水平に支持される」とは、試料台が3本の脚の上端部に、高さ調整可能に支持されていることを意味する。各脚の高さ調整は、作業者が所定の脚の高さ調整用溝に治具を差し込み、その脚を回転させることで、ベース台のねじ孔へのねじ部のねじ込み量を変更することで行われる。
「試料台がほぼ水平に支持されている」とは、試料台が水平面を基準として±2°の角度差で3本の脚の上端部に支持されていることを意味する。
「脚の上端面が試料台の上面から露出する」とは、各脚と試料台との取り付けは、試料台に形成された透孔(貫通孔)に、対応する脚の上端部が挿入され、その脚の上端面がその透孔を通して試料台の上面に露出することを意味する。
【0018】
高さ調整溝の形状としては、例えば、横一文字(すりわり)を採用することができる。その他、十字穴、H形(フィリップス型)、S形、プラスマイナス、六角穴、四角穴でもよい。
治具の種類は高さ調整溝の形状に応じて適宜変更される。例えば、高さ調整溝が横一文字の場合にはマイナスドライバなどが使用され、十字穴の場合にはプラスドライバが採用される。また、六角穴の場合には六角レンチを使用する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明にあっては、3本の脚のうちの2本をX方向(左右方向)に配置し、残りをY方向(奥行き方向、前後方向)に配置した状態で、液槽の液面下で試料台にワークを載置し、ワークのX方向とY方向の平衡調整を行う。
X方向の平衡調整時には、まず超音波探触子をX方向に移動させ、ワークのX方向の複数箇所で、超音波探触子とワークの上面との距離を測定する。その測定結果に基づき、作業者がX方向の一方の脚の高さ調整用溝に治具を差し込み、その脚を所定方向に回転してベース台の対応するねじ孔へのねじ部のねじ込み量を変更し、ワークのX方向の平衡(水平度)調整を行う。その後、これらの操作を繰り返し、ワークの上面のX方向の水平状態を確保する。
【0020】
次に、Y方向の平衡調整時には、超音波探触子をY方向に移動させ、ワークのY方向の所定位置で、超音波探触子とワークの上面との距離を測定する。この測定結果に基づき、作業者がY方向の脚の高さ調整用溝に治具を差し込み、その脚を所定方向に回転してベース台の対応するねじ孔へのねじ部のねじ込み量を変更し、ワークのY方向の平衡(水平度)調整を行う。その後、これらの操作を繰り返し、ワークの上面のY方向の水平状態を確保する。
このようにして、試料台上からワークを取り外すことなく、超音波探触子とワークの上面全域との距離を揃えて、ワークの高精度での平衡調整を容易かつ短時間で行うことができる。その結果、従来はワークと探触子との直交度の問題により分解ができなかったワークの波形の性能評価も可能となった。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、高さ調整用溝の形状を横一文字としたため、脚が90°回転毎にその端面の溝位置が初期位置と重なる十字穴のものに比べて、その2倍の180°回転するまで、脚の端面の溝位置がその初期位置と重ならない。これにより、脚の端面の高さ調整用溝の移動角度から、対応する脚の高さ調整量を視覚的におおよそ把握することができ、その結果、ワークの平衡調整時間をより短縮することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、液槽中に液体(水、油などの接触媒質)を流し込んだとき、ベース台の凹所に残った空気を透孔から抜き出すことができる。また、超音波検査時の超音波探触子の移動動作により液槽の液体が攪拌され、ベース台の下面に気泡が入り込んでも、この気泡は透孔を介して容易に排出することができる。