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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-146179(P2017-146179A)
(43)【公開日】2017年8月24日
(54)【発明の名称】超音波検査装置用ワーク置台
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/22 20060101AFI20170728BHJP
   G01N 29/28 20060101ALI20170728BHJP
   G01N 29/06 20060101ALI20170728BHJP
【FI】
   G01N29/22
   G01N29/28
   G01N29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-27682(P2016-27682)
(22)【出願日】2016年2月17日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)展示会名:「持込み展」、展示日:平成27年12月1日、(2)展示会名:「ものづくり補助事業成果発表・ビジネスマッチング会「中小企業 新ものづくり・新サービス展」(九州・沖縄ブロック)」、展示日平成27年12月8日〜9日
(71)【出願人】
【識別番号】595107140
【氏名又は名称】ジャパンシステムエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 渉
(72)【発明者】
【氏名】玉井 洋一
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AB07
2G047AC10
2G047AD19
2G047BA03
2G047BB01
2G047BB02
2G047BB06
2G047BC07
2G047DB12
2G047EA12
2G047GE02
2G047GG28
2G047GG30
(57)【要約】
【課題】試料台上からワークを取り外すことなく、ワークの平衡調整を容易にかつ短時間で行うことが可能な超音波検査装置用ワーク置台を提供する。
【解決手段】液槽中に保持したワークに超音波を照射してワークの性状を検査する超音波検査装置のワーク置台である。ワーク置台では、液槽の底板にベース台が載置されている。ベース台の上面には、3本の脚が立設され、脚の上端部に試料台がほぼ水平に保持されている。3本の脚は、ベース台の上面の三角形の3頂点位置に形成された3箇所のねじ孔にねじ込まれており、脚の上端面には高さ調整用溝が形成されている。この高さ調整用溝に治具を挿入して脚のねじ込み量を調整することで、試料台に載置されたワークの平衡状態を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液槽中にワークを保持し、液面下でこのワークより上方に配置した超音波発振器から発振した超音波の反射波を受信器により受信してワークの性状を検査する超音波検査装置において、
前記液槽の底板に載置されるベース台と、
このベース台の上面で、三角形の3頂点位置に形成された3箇所のねじ孔と、
これらのねじ孔に下端部のねじ部がそれぞれねじ込まれ、かつ前記ベース台から垂直に起立する3本の脚と、
これらの3本の脚の上端部にほぼ水平に支持され、前記ワークが載置される試料台とを有し、
前記3本の脚の各上端面は前記試料台の上面から露出するとともに、これらの上端面には対応する脚を回転させる治具が挿入される高さ調整用溝が形成された超音波検査装置用ワーク置台。
【請求項2】
前記高さ調整用溝は横一文字に形成された請求項1に記載の超音波検査装置用ワーク置台。
【請求項3】
前記ベース台の裏面にはザグリによる凹所が形成されるとともに、この凹所は透孔によりベース台の上方空間に連通している請求項1または請求項2に記載の超音波検査装置用ワーク置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は超音波検査装置用ワーク置台、詳しくは超音波検査装置の液槽中でワークを載置し、このワークの平衡調整を容易に行うことができる超音波検査装置用ワーク置台に関する。
【背景技術】
【0002】
水槽の底板に試料台を載置し、この試料台の上にワーク(例えば半導体パッケージ)を保持し、ワークの上方から照射した超音波でこのワークをスキャニングし、その反射波に基づいてワークの異常部分を検知する超音波検査装置が知られている(例えば特許文献1)。
この超音波検査装置では、超音波発振器(超音波探触子)から発振した超音波が半導体パッケージに当接し、これより反射した超音波を超音波探触子に接続された受信器により受信する。
このため、スキャニング時には、超音波探触子と半導体パッケージとの位置関係が重要となる。通常、超音波探触子の移動は水平面内で行われるため、試料台に載置された半導体パッケージについてもその上面が水平となるよう常に平衡に調整される。
具体的には、試料台に搭載した半導体パッケージの上面の各位置に対して超音波を照射してその高さを測定し、その後、試料台から半導体パッケージをいったん取り外し、所定サイズ・所定厚さのシム板を試料台の半導体パッケージの載置領域(置き位置)の適宜箇所に載置してその高さを調整する。次いで、半導体パッケージを試料台上に戻し、再び超音波により計測するという操作を繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−215154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の超音波検査装置にあっては、以下のような不都合が生じていた。
すなわち、超音波探触子と半導体パッケージの上面との平衡調整時には、水槽の底板に固定した試料台から作業者が半導体パッケージをいったん取り外し、所定サイズのシム(スペーサ)によるこれの高さ調整を行った後、半導体パッケージを試料台に戻していた。このように、この高さ調整作業が人手による半導体パッケージの試料台からの取出し・再載置となるため、半導体パッケージの置き位置の再現が困難であり、置き位置のズレを原因として半導体パッケージとシム板との位置関係も変動し、再度シム板のサイズ変更を行う必要が生じる場合があった。その結果、この調整に長時間を要し、これを原因として半導体パッケージの超音波検査のデータを取得するまでの時間が長くなっていた。
【0005】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、液槽の底板にベース台を載置し、その上面で三角形の3頂点位置に形成された3つのねじ孔に、それぞれのねじ部をねじ込んで3本の脚を垂直に起立し、これらの脚の上端部に、高さ調整溝付きの上端面を露出して試料台を保持させれば、所定の高さ調整溝に差し込まれた治具により所定の脚を回転させることで、半導体パッケージの全域において、超音波探触子とこのパッケージとの間の距離を調整できることを突き止めた。これにより、半導体パッケージを試料台に載置したまま、超音波探触子と半導体パッケージの上面全域との距離を揃えて、半導体パッケージの平衡調整が容易かつ短時間で可能となり、その結果、半導体パッケージの超音波検査データの取得までの時間を短縮できることを知見し、この発明を完成させた。
【0006】
すなわち、この発明は、試料台上からワークを取り外すことなく、ワークの平衡調整を容易かつ短時間で行うことができる超音波検査装置用ワーク置台を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、液槽中にワークを保持し、液面下でこのワークより上方に配置した超音波発振器から発振した超音波の反射波を受信器により受信してワークの性状を検査する超音波検査装置において、前記液槽の底板に載置されるベース台と、このベース台の上面で、三角形の3頂点位置に形成された3箇所のねじ孔と、これらのねじ孔に下端部のねじ部がそれぞれねじ込まれ、かつ前記ベース台から垂直に起立する3本の脚と、これらの3本の脚の上端部にほぼ水平に支持され、前記ワークが載置される試料台とを有し、前記3本の脚の各上端面は前記試料台の上面から露出するとともに、これらの上端面には対応する脚を回転させる治具が挿入される高さ調整用溝が形成された超音波検査装置用ワーク置台である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、液槽の液(水、油などの接触媒質)面下で試料台にワークを載置し、ワークのX方向(左右方向)とY方向(奥行き方向、前後方向)の平衡調整を行う。その際、試料台を支持する三角形状に配置された3本の脚のうち、例えば2本がX方向に配置され、残りの1本がY方向に配置されるものとする。
X方向の平衡調整時には、まず(1)超音波探触子をX方向に移動させ、ワークのX方向の複数箇所で、超音波探触子とワークの表面との距離(高さ)を超音波の発振および受信により測定する。その後、(2)これらの測定結果に基づき、作業者がX方向に配置された2本の脚に対して、所定の高さ調整用溝に治具を差し込み、その脚を所定方向に回転させることで、ベース台のX方向に配置されたねじ孔へのねじ部のねじ込み量を変更する。その後、(3)超音波探触子をX方向に移動させ、先ほどの各測定箇所で超音波探触子とワークとの距離を測定し、ワークの上面のX方向における水平状態を確認する。求める検査結果が得られなければ、(1)〜(3)の操作をワークのX方向の複数箇所での水平調整が完了するまで繰り返す。
【0009】
次に、Y方向の平衡調整時には、まず(4)ワークの上方で超音波探触子をY方向に移動させ、ワークのY方向の所定位置で、超音波探触子とワークとの距離を測定する。その後、(5)これらの測定結果に基づき、作業者がY方向に配置された1本の脚の高さ調整用溝に治具を差し込み、その脚を所定方向に回転させることで、ベース台のY方向に配置されたねじ孔へのねじ部のねじ込み量を変更する。(6)次いで、超音波探触子をY方向に移動させ、先ほどの各測定箇所で超音波探触子とワークとの距離を測定する。その後、(4)〜(6)の操作をワークのY方向の複数箇所での高さ調整が完了するまで繰り返す。
このようにして、試料台上からワークを取り外すことなく、超音波探触子とワークの上面全域との距離を揃えて、ワークの高精度での平衡調整を容易かつ短時間で行うことができる。また、従来はワークと探触子との直交度の問題で分解ができなかったワークの波形の性能評価も可能となる。なお、液槽に充填される液体としては、水、油、アルコールなどである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、高さ調整用溝は横一文字に形成された請求項1に記載の超音波検査装置用ワーク置台である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、高さ調整用溝の形状を横一文字としたため、脚が90°回転する毎にその端面の溝位置が初期位置と重なる十字穴のものに比べて、その2倍の180°回転するまで、脚の端面の溝位置がその初期位置と重ならない。これにより、脚の端面の高さ調整用溝の移動角度から、対応する脚の高さ調整量を視覚的におおよそ把握することができ、その結果、ワークの平衡調整に要する時間をさらに短縮することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、ベース台の裏面にはザグリによる凹所が形成されるとともに、この凹所は透孔によりベース台の上方空間に連通している請求項1または請求項2に記載の超音波検査装置用ワーク置台である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ベース台の裏面にはザグリによる凹所が形成され、この凹所は透孔によりベース台の上方空間に連通している。そのため、液槽中に水などの接触媒質を流し込んだとき、ベース台の凹所に残った空気を透孔から抜き出すことができる。また、超音波検査時の超音波探触子の移動動作により液槽の水などの接触媒質が攪拌され、ベース台の下面に気泡が入り込んでも、この気泡を透孔から容易に排出することができる。
【0014】
ワークとしては、超音波検査が可能なものであれば任意である。例えば、各種の半導体パッケージ、樹脂製品などがある。
超音波検査装置により検出されるワークの性状とは、例えば、ワークが半導体パッケージの場合にはボイド、パーティクル、半田の接合不良、モールドの亀裂などである。
ここでの超音波検査装置は、液面下で超音波発生器からワーク(対象物)に向かって超音波を発振し、その反射波を受信器により受信することで、超音波反射エネルギ(Echo Height)の強弱により、ワーク内部の状態を可視化する。
その際、ワークの上方で超音波探触子は水平方向に移動しながら、このワークの全体をスキャニングする。
超音波探触子の種類としては、例えば垂直探触子、斜角探触子、水浸探触子などを採用することができる。超音波発生器には、超音波発振器と、超音波発振器から発振された超音波の反射波を受信する受信器とが内蔵されている。
【0015】
ベース台の素材は限定されない。例えば、アクリル樹脂などの各種の合成樹脂を採用することができる。その他、各種のガラスなどでもよい。
ベース台の形状としては、例えば矩形状、円形状、楕円形状などを採用することができる。
また、ベース台として、裏面にザグリによる凹所が形成され、この凹所に上方空間と連通する透孔を形成したものを採用してもよい。これにより、例えば液槽に水(または油などの接触媒質)を流し込んだとき、ベース台の凹所に残っていた空気を透孔から排出することができる。また、超音波検査時の超音波探触子の移動動作により液槽の水(または油などの接触媒質)が攪拌され、ベース台の下面に気泡が入り込んだ場合でも、この気泡は透孔を通して容易に排出することができる。
【0016】
ベース台に形成される3つのねじ孔がその3頂点の位置に配置される三角形としては、例えば正三角形が好ましいものの、その他、二等辺三角形、直角三角形などを採用してもよい。三角形の各辺の長さは任意とする。
各脚の素材としては、例えば、ステンレス、鉄、銅などの各種の金属、アクリル樹脂などの各種の合成樹脂、各種のガラスなどを採用することができる。
各脚の長さ方向に直交する断面形状は任意である。例えば、円形、正方形を含む四角形状の多角形などを採用することができる。
各脚の下部に形成されるねじ部(ねじ孔)の直径は、脚のサイズに応じて適宜選択される。
【0017】
ここでいう「試料台が3本の脚の上端部にほぼ水平に支持される」とは、試料台が3本の脚の上端部に、高さ調整可能に支持されていることを意味する。各脚の高さ調整は、作業者が所定の脚の高さ調整用溝に治具を差し込み、その脚を回転させることで、ベース台のねじ孔へのねじ部のねじ込み量を変更することで行われる。
「試料台がほぼ水平に支持されている」とは、試料台が水平面を基準として±2°の角度差で3本の脚の上端部に支持されていることを意味する。
「脚の上端面が試料台の上面から露出する」とは、各脚と試料台との取り付けは、試料台に形成された透孔(貫通孔)に、対応する脚の上端部が挿入され、その脚の上端面がその透孔を通して試料台の上面に露出することを意味する。
【0018】
高さ調整溝の形状としては、例えば、横一文字(すりわり)を採用することができる。その他、十字穴、H形(フィリップス型)、S形、プラスマイナス、六角穴、四角穴でもよい。
治具の種類は高さ調整溝の形状に応じて適宜変更される。例えば、高さ調整溝が横一文字の場合にはマイナスドライバなどが使用され、十字穴の場合にはプラスドライバが採用される。また、六角穴の場合には六角レンチを使用する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明にあっては、3本の脚のうちの2本をX方向(左右方向)に配置し、残りをY方向(奥行き方向、前後方向)に配置した状態で、液槽の液面下で試料台にワークを載置し、ワークのX方向とY方向の平衡調整を行う。
X方向の平衡調整時には、まず超音波探触子をX方向に移動させ、ワークのX方向の複数箇所で、超音波探触子とワークの上面との距離を測定する。その測定結果に基づき、作業者がX方向の一方の脚の高さ調整用溝に治具を差し込み、その脚を所定方向に回転してベース台の対応するねじ孔へのねじ部のねじ込み量を変更し、ワークのX方向の平衡(水平度)調整を行う。その後、これらの操作を繰り返し、ワークの上面のX方向の水平状態を確保する。
【0020】
次に、Y方向の平衡調整時には、超音波探触子をY方向に移動させ、ワークのY方向の所定位置で、超音波探触子とワークの上面との距離を測定する。この測定結果に基づき、作業者がY方向の脚の高さ調整用溝に治具を差し込み、その脚を所定方向に回転してベース台の対応するねじ孔へのねじ部のねじ込み量を変更し、ワークのY方向の平衡(水平度)調整を行う。その後、これらの操作を繰り返し、ワークの上面のY方向の水平状態を確保する。
このようにして、試料台上からワークを取り外すことなく、超音波探触子とワークの上面全域との距離を揃えて、ワークの高精度での平衡調整を容易かつ短時間で行うことができる。その結果、従来はワークと探触子との直交度の問題により分解ができなかったワークの波形の性能評価も可能となった。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、高さ調整用溝の形状を横一文字としたため、脚が90°回転毎にその端面の溝位置が初期位置と重なる十字穴のものに比べて、その2倍の180°回転するまで、脚の端面の溝位置がその初期位置と重ならない。これにより、脚の端面の高さ調整用溝の移動角度から、対応する脚の高さ調整量を視覚的におおよそ把握することができ、その結果、ワークの平衡調整時間をより短縮することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、液槽中に液体(水、油などの接触媒質)を流し込んだとき、ベース台の凹所に残った空気を透孔から抜き出すことができる。また、超音波検査時の超音波探触子の移動動作により液槽の液体が攪拌され、ベース台の下面に気泡が入り込んでも、この気泡は透孔を介して容易に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明の実施例1に係る超音波検査装置用ワーク置台を示す正面図である。
図2】この発明の実施例1に係る超音波検査装置用ワーク置台の背面図である。
図3】この発明の実施例1に係る超音波検査装置用ワーク置台の底面図である。
図4】この発明の実施例1に係る超音波検査装置用ワーク置台の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施例を、図面を参照して具体的に説明する。ここでは、説明の都合上、超音波検査装置用ワーク置台を平面視したときの左方向をX1方向、右方向をX2方向、前方向をY1方向、後方向をY2方向とし、そのワーク置台を正面視したときの下方向をZ1方向、上方向をZ2方向とする。
【実施例】
【0025】
図1図4において、この発明の実施例1に係る超音波検査装置は、液槽11中にワーク12を保持し、その液(水などの接触媒質であって、この場合は水)面下でこのワーク12より上方に配置した超音波探触子Aによりワーク12の性状(剥離などの異常部分等)を検査するものである。
超音波検査装置用ワーク置台10は、箱型の液槽11の水平な底面を形成する底板15に載置される所定厚さの板材のベース台16と、このベース台16の上面で、正三角形の3頂点位置に形成された3箇所のねじ孔17と、これらのねじ孔17に下端部のねじ部18がそれぞれねじ込まれるとともに、このベース台16から垂直に起立する3本の脚19と、これらの脚19の上端部に保持されることによりほぼ水平に支持された試料台20とを有している。
【0026】
液槽11はアクリル板からなる矩形底面を有する直方体形状の箱形容器で、その底板15の矩形の上面の略中央部にベース台16が載置される。
ベース台16は、平面視して正方形の厚肉なステンレス板であって、その裏面の中央部には、ザグリによる正方形の凹所21が形成されている。この凹所21によりベース台16はその軽量化とともにその把持が容易となるよう形成されている。この凹所21の中央部には、ベース台16の表裏面を貫通した透孔22が1つ形成されている。
また、ベース台16には、正三角形の3つの頂点位置、すなわちそのX1−Y1側の隅部と、X1−Y2側の隅部と、Y2側の辺部の長さ方向の中間部とに、合計3つの前記ねじ孔17が形成されている。
各ねじ孔17には、その下端部に形成されたねじ部18を介して、3本の脚19がそれぞれねじ込まれている。すなわち、同じ長さの3本の脚19がベース台16の上面で三角形の頂点位置に垂直に立設されているのである。また、ベース台16の各ねじ孔17の形成部の上面には、3つのスペーサ24がそれぞれ介装されている。なお、このねじのピッチは細目ねじのそれとすることで、ねじ込み量の微調整が可能となされている。
【0027】
各脚19は、六角柱形状の例えばステンレス製であって、その上端部には、試料台20の厚さより若干長い小径な円柱である挿通ピン部25がそれぞれ形成されている。各挿通ピン部25は、対応する脚19の約半分の直径のものである。
各挿通ピン部25の上端面には、前記試料台20の上面から露出した横一文字の高さ調整溝(すりわり)26がそれぞれ形成されている。各高さ調整溝26には、対応する脚19を回転させるマイナスドライバ(治具)27が差し込まれる。
試料台20は、ベース台16と同一サイズの正方形の薄肉なステンレス板で、その平坦な上面の中央部にワーク(ここでは、矩形状の半導体パッケージ)12が載置される。試料台20には、そのX1−Y1側の隅部(図3図4を参照)と、X2−Y1側の隅部と、Y2側の辺部の長さ方向の中間部とに、合計3つのピン挿通孔28が形成されている。各ピン挿通孔28は、対応する挿通ピン部25よりわずかに大径な孔である。そのため、試料台20を各脚19に取り付ける際には、各挿通ピン部25を各挿通孔28に挿通することで、3本の脚19の上端部に現出した座面29に、試料台20の対峙部分の裏面が当接して保持される。これにより、試料台20は、前記3本の脚19の上端部においてほぼ水平に支持されていることとなる。
【0028】
次に、図1図4を参照して、この発明の実施例1に係る超音波検査装置用ワーク置台10を使用してのワーク12の超音波検査方法を説明する。
まず、図1に示すように、水が満たされた液槽11にあってその底板15の上面にベース台16を載置する。このとき、ベース台16には3本の脚19が起立して設けられており、そのうちの2本の脚19はX方向に離間して配置され、残りの1本の脚19はY方向に配置されている(図3図4参照)。また、これら3本の脚18の上端部には試料台20が保持され、さらにこの試料台20の上面の中央部にはワーク12が載置されている。
次に、図1図4を参照して、水面下(水中)で行われるワーク12のX方向とY方向の平衡調整について説明する。
X方向の平衡調整時には、まず水浸された超音波探触子Aをワーク12の上方でX方向に移動させ、ワーク12のX方向の複数箇所で、超音波を照射し、その反射波を受信することにより、超音波探触子Aとワーク12の上面との間の距離をそれぞれ測定する。
次いで、これらの測定結果に基づき、作業者がX1方向またはX2方向の脚19の高さ調整用溝に治具であるマイナスドライバ27の先端を差し込み、その脚19を所定方向に回転してベース台16の対応するねじ孔17へのねじ部18のねじ込み量を変更することにより、ワーク12のX方向の水平度の調整(平衡調整)を行う。その後、これらの操作を繰り返し、ワーク12の上面のX方向での水平状態(平衡状態)を確保する。
【0029】
次に、Y方向の平衡調整時には、超音波探触子AをY方向に移動させ、ワーク12のY方向の所定位置で、上記と同様に、超音波探触子Aとワーク12の上面との間の距離を測定する。この測定結果に基づき、作業者がY1方向またはY2方向の脚19の高さ調整用溝にマイナスドライバ27を差し込み、その脚19を所定方向に回転してベース台16の対応するねじ孔17へのねじ部18のねじ込み量を変更することにより、ワーク12のY方向の水平度の調整(平衡調整)行う。その後、これらの操作を繰り返し、ワーク12の上面のY方向の水平状態(平衡状態)を確保する。
このようにワーク12の水平出しが完了した後は、超音波検査装置によるワーク12の超音波検査が行われる。すなわち、水面下のワーク12上で超音波探触子AをX方向およびY方向に移動しながらワーク12の全面をスキャニングし、超音波探触子Aの超音波発振器から発振した超音波の当該位置での反射波を受信し、ワーク12の性状を検査する。なお、検査結果については画像表示などを行うことができる。
【0030】
このように構成したことで、試料台20上からワーク12を取り外すことなく、超音波探触子Aとワーク12の上面全域との間の距離を揃えて、ワーク12の高精度な平衡調整を容易かつ短時間で行うことができる。その結果、従来はワークと探触子との直交度の問題により分解ができなかったワークの波形の性能評価も可能となる。
また、高さ調整用溝の形状を横一文字としたため、脚19が90°回転毎にその端面の溝位置が初期位置と重なる十字穴のものに比べて、その2倍の180°回転するまで、脚19の端面の溝位置がその初期位置と重ならない。これにより、脚19の端面の高さ調整用溝の移動角度から、対応する脚19の高さ調整量を視覚的におおよそ把握することができ、その結果、ワーク12の平衡調整のための時間をより短縮することができる。
さらに、ベース台16の裏面の凹所21の中央部に透孔22を形成したため、液槽11中に水を流し込んだとき、ベース台16の凹所21に残った空気を透孔22から抜き出すことができる。また、超音波検査時の超音波探触子Aの移動動作により液槽11の水が攪拌され、ベース台16の下面に気泡が入り込んでも、この気泡を透孔22から容易に排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明は、液槽中の試料台に載置したワークと超音波探触子との平衡を調整する技術として有用である。
【符号の説明】
【0032】
10 超音波検査装置用ワーク置台、
11 液槽、
12 ワーク、
15 底板、
16 ベース台、
17 ねじ孔、
18 ねじ部、
19 脚、
20 試料台、
21 凹所、
22 透孔、
26 高さ調整溝、
27 マイナスドライバ(治具)。
図1
図2
図3
図4