【課題】本件発明の課題は、本件発明によれば、製造時の加工が容易であり、虹フレアによる画質の低下を防止することができる回折光学素子、光学系及び撮像装置を提供することにある。
【解決手段】上記課題を解決するため、加工痕に起因する所定のピッチを有する微細周期構造を備えた光学面を含む光学系であって、前記所定のピッチをp(μm)とし、当該光学系の使用波長域において最も短波長の光線の波長をw(μm)とし、光学面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角をω’(°)としたとき、所定の条件式(1)を満足することを特徴とする光学系等を提供する。
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光学系と、当該光学系の像面側に、当該光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本件発明に係る光学系及び撮像装置の実施の形態を順に説明する。
【0014】
1.光学系
本件発明に係る光学系は、加工痕に起因する所定のピッチを有する微細周期構造を備えた光学面を含む光学系である。本件発明に係る光学系は、後述する条件式(1)を満足し、好ましくは条件式(2)〜(4)を満足するものとする。本件発明に係る光学系では、これらの条件式を満足させることにより、加工痕に起因する上記微細周期構造によって虹フレアが発生した場合も、当該虹フレア光が像面に入射しないため、虹フレアによる画質の低下を防止することができる。以下、本件発明に係る光学系の構成について説明した後、本件発明に係る光学系が満足すべき、或いは、満足することが好ましい条件式について説明する。
【0015】
1−1.光学面
まず、光学面について説明する。本件発明において光学面とは、入射光に対して屈折、反射、回折等の光学作用を有する面をいう。当該光学面の形状は特に限定されるものではなく、球面、非球面、平面等、どのような形状であってもよい。また、当該光学面は、球面、非球面、平面等の表面に回折格子が形成された回折面であってもよい。また、当該光学面はいわゆるフレネル面であってもよい。本件発明は、回折面やフレネル面等の輪帯構造を有する光学面に特に好適である。このような輪帯構造を備えた光学面では、加工痕を研磨等の手法によって除去することができず、加工痕に起因する上記微細周期構造が残存しやすいためである。以下では、当該光学面が回折面である場合を例に挙げて説明するが、以下に説明する事項は、上記列挙したいずれの形状の光学面であっても、加工痕に起因する上記微細周期構造を有する限り、同様の作用効果を奏する。
【0016】
例えば、当該光学面がブレーズ化された回折面である場合、当該回折面は下記式で表すことができる。
【0017】
Φ(h)は、位相差関数であり、
hは、同径方向における光軸からの長さであり、
C1、C2、C3、C4は、任意の係数であり、
mは、回折次数であり、
λは、設計波長である。
【0018】
なお、上記式(1)において、任意の波長を設計波長とすることができる。設計波長は、当該光学系の使用波長域内の任意の波長とすることが好ましい。例えば、当該光学系の使用波長域が可視光波長域(例えば、380nm以上780nm以下)である場合、可視光波長域内の任意の波長の光線を設計波長とすることができる。また、当該光学系が近赤外〜赤外領域の波長を使用する場合、これらの波長域内の任意の波長を設計波長とすることができる。
【0019】
1−2.微細周期構造
次に、微細周期構造について説明する。本件発明において、当該微細周期構造とは、加工痕に起因して表面に形成された微細な凹凸構造をいう。例えば、切削法により光学素子の光学面の加工を行うと、光学面にはバイト等の切削工具の切削痕が残存する場合がある。切削法では、被加工面を回転させながら、切削工具を光学面に当接させて、切削工具を外周から内周に向けて少しずつ移動させながら、光学面を所定の形状に切削する。そのため光学面には、切削痕(加工痕)が溝状に所定のピッチで周期的に形成される。本件発明では、この切削痕、すなわち加工痕に起因した微細な凹凸構造を微細周期構造と称する。当該光学面が上述した回折面である場合、回折面を切削法により加工すると、上記式(1)で定義される回折格子構造とは別にこのような加工痕に起因する意図せぬ微細周期構造が形成される。そして、当該光学面が回折面の場合、上述したとおり、表面を研磨する等の方法により、加工痕を除去することができない。表面を研磨した場合、表面に意図的に設けた回折格子の形状が変化し、所望の回折作用を得ることができなくなるためである。
【0020】
そこで、本件発明では、当該加工痕に起因する微細周期構造に入射した光が回折し、虹フレアが発生した場合も、以下の条件式(1)を満足させることにより、製造時の加工が容易であり、虹フレアによる画質の低下を防止することを可能とした。以下、条件式(1)及び条件式(2)〜条件式(4)について、順に説明する。
【0021】
1−3.条件式
1−3−1.条件式(1)
まず、条件式(1)について説明する。本件発明に係る光学系は、以下の条件式(1)を満足することが好ましい。当該条件式(1)は軸上光線に関する条件式である。なお、当該光学系が加工痕に起因する所定のピッチを有する微細周期構造を備えた光学面を複数含む場合、少なくともいずれか一つの光学面に関して下記条件式(1)を満足すればよい。他の条件式についても同様である。
【0022】
条件式(1):1.0 > (p/w)×sinω’
【0023】
上記条件式(1)において、p(μm)は微細周期構造のピッチであり、上述したとおり当該ピッチ(所定のピッチ)は加工時の切削工具の送りピッチに相当する。w(μm)は当該光学系の使用波長域において最も短波長の光線の波長であり、ω’(°)は当該光学面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角である。
【0024】
条件式(1)を満足させることにより、軸上光線が上記微細周期構造を備える光学面に入射し、当該軸上光線が回折されて虹フレアが発生した場合であっても、当該虹フレア光が像面に入射しないため、虹フレアによる画質の低下を防止することができる。
図1を参照しながら、この点について、以下詳細に説明する。
【0025】
図1は、加工痕に起因する上記微細周期構造を備えた光学面を含む光学系において、虹フレア光と像面との関係を模式的に示した図である。光学系は、一般に、複数のレンズを組み合わせて構成されるが、どのような光学系であっても、
図1に示すように、薄肉の単レンズL
0に単純モデル化して表すことができる。ここで、
図1において、一点鎖線は光軸lを表し、IMGは像面を示す。また、光軸lと直線oy’とがなす角度は、当該光学系の半画角ω(°)に相当する。さらに、
図1において、細い実線で表す線は、当該光学系に入射した光線の光路を示す。そして、
図1では、上記微細周期構造により回折した軸上光線に関する回折光を複数の矢印により模式的に示している。
【0026】
上記微細周期構造によって回折した回折光の回折角度(θ’)は、以下の式(A)で表すことができる。
【0028】
但し、上記式(A)において、w’は入射光の波長であり、p(μm)は微細周期構造のピッチである。
【0029】
ここで、式(A)から明らかなように、回折光の回折角度(θ’)は微細周期構造に入射した入射光の波長に依存し、当該回折角度(θ’)は入射光の波長が短いほど小さくなる。そして、
図1から明らかなように、その回折角度(θ’)が当該光学系の半画角(ω)よりも大きければ、当該回折光は像面に入射しない。従って、当該光学系の使用波長域において最も短波長の光線をw(μm)としたとき、その光線について、その回折光の回折角(θ’)が当該光学系の半画角(ω)よりも大きければ、上記虹フレアが発生しても、その虹フレア光が像面に入射することはない。
【0030】
以上より、軸上光線について虹フレア光が像面に入射しない条件として、θ’>ωであることが求められる。ここで、ω<90だから、sinθ’>sinωの関係が成り立つ。従って、式(A)に基づき、虹フレア光が像面に入射しない条件として、以下の式(B)が導かれる。
【0032】
ここで、当該光学系において、光学面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角と、当該光学系の半画角とが一致していれば、上記式(B)を満足させることにより、虹フレア光が像面に入射するのを防止することができる。しかしながら、当該光学系において上記微細周期構造を備えた光学面が配置された位置によって、当該光学面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角と、当該光学系の半画角とが異なる場合がある。条件式(1)は、式(B)において、当該半画角(ω)を、光学面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角(ω’)に置き換えたものである。すなわち、条件式(1)を満足させることにより、当該光学系内における上記光学面の配置によらず、軸上光線による虹フレア光が像面に入射するのを防止することができる。
【0033】
ここで、虹フレア光は像面において一定の広がりを有する。そのため、下記条件式(1−a)を満足させることがより好ましい。条件式(1−a)を満足させることにより、軸上光線に関して虹フレア光が像面において一定の広がりを有する場合であっても、像面に虹フレア光が入射するのを防止することができる。
【0034】
条件式(1−a): 0.8 > (p/w)×sinω’
【0035】
1−3−2.条件式(2)
次に、条件式(2)について説明する。本件発明に係る光学系は、以下に示す条件式(2)を満足することがより好ましい。条件式(2)は、軸外光線に関する条件式である。なお、下記条件式(2)において、「p」、「w」、「ω’」は条件式(1)と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0036】
条件式(2): 0.5 > (p/w)×sinω’
【0037】
条件式(2)を満足させることにより、軸上光線だけではなく、軸外光線についても、上記虹フレアが発生したとしても、虹フレア光が像面に入射しないため、虹フレアによる画質の低下を防止することができる。
図2を参照しながら、この点について、以下詳細に説明する。
【0038】
図2は、
図1と同様に当該光学系を薄肉の単レンズL
0に単純モデル化して表した模式図である。
図2において、一点鎖線は光軸lを表し、光軸lと軸外光線の主光線l
0とが成す角をω
0とする。
【0039】
軸外光線が当該光学系に入射角ω
0で入射したとき、上記微細周期構造による回折光の回折角度(θ
0’)と、入射光が回折せずに出射したときの出射角(θ)との間には以下の式(B)に示す関係が成り立つ。但し、下記式において、mは回折次数であり、「w」、「p」は上記と同様である。
【0040】
式(B): sinθ
0’−sinθ=(m×w)/p
【0041】
ここで、軸外光線の回折光が像面に入射しない条件として、当該軸外光線の−1次回折光の回折角度(θ
0’)が「−ω
0」より小さいことが求められる。このことから、以下の式(C)が導き出される。
【0042】
式(C): sin(−ω
0)−sinω
0 < −w/p
【0043】
そして、上記式を変形すると、次の式(D)が導きだされる。
【0044】
式(D): 0.5> (p/w) × sinω
0
【0045】
ここで、当該光学系に入射する軸上光線の入射角(ω
0)と、上記微細周期構造を備えた光学面において、当該光学面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角(ω’)とは異なる。そこで、上記式(D)において、「ω」を「ω’」に置き換えることにより、上記式(2)が導き出される。すなわち、条件式(2)を満足させることにより、当該光学系内における上記光学面の配置によらず、軸外光線による虹フレア光が像面に入射するのを防止することができる。
【0046】
但し、一般の撮像光学系では、軸外光線に対しては瞳が小さくなっていく傾向にあり、虹フレアの原因となる虹フレア光の光量自体が少なくなる傾向にある。そのため、当該光学面の光軸を通過する光線のうち、像面に対して最大画角で入射する光線によって発生する虹フレア光を像面の外側に排除する必要がない場合がある。光量が小さく、画質に影響を与えない場合もあるためである。従って、上述した条件式(1)、好ましくは条件式(1−a)を満足させれば、虹フレアが発生したとしても画質の低下を抑制することが十分可能になる。
【0047】
1−3−3.条件式(3)
次に、条件式(3)について説明する。本件発明に係る光学系は、以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
【0048】
条件式(3): 1.0 ≧ ω’/ω
【0049】
ここで、「ω’」、「ω」は上述のとおりである。当該光学系の半画角(ω)に対して、上記加工痕に起因する微細周期構造を備える光学面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角(ω’)が条件式(3)の関係を満足する場合、虹フレアが発生した場合であっても、上記条件式(1)等を満足させることにより、虹フレア光が像面に入射しないため、虹フレアによる画質低下を良好に防止することができる。換言すれば、回折面等の加工痕を表面研磨等の手法によって除去できない光学面を含む光学系において、当該光学面を上記条件式(3)を満足する位置に配置することにより、加工痕に起因する意図せぬ微細周期構造によって回折した回折光が像面に入射するのを抑制し、虹フレアによる画質の低下を抑制することが容易になる。
【0050】
1−3−4.条件式(4)
本件発明に係る光学系において、上記条件式(3)により得られる効果がより良好になるという観点から、以下の条件式(4)を満足することがより好ましい。
【0051】
条件式(4): 0.8 > ω’/ω
【0052】
1−4.光学面の配置
当該光学系が複数の群に分かれている場合、当該光学系の半画角(ω)と、当該光学面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角(ω’)とは必ずしも一致しない。特に、テレフォトタイプの光学系や、レトロフォーカスタイプの光学系のように、絞りの前後における屈折力配置が非対称の光学系ではその傾向が顕著になる。
【0053】
例えば、テレフォトタイプの光学系の後群では、最大画角の光線の入射角(α)は、当該光学系の半画角(ω)よりも大きくなる(
図3参照)。従って、テレフォトタイプの光学系では、すなわち、物体側から順に、正の屈折力を有する前群と、負の屈折力を有する後群とから構成され、当該光学系全系の焦点距離よりも、当該光学系の最終レンズ面から像面までの距離が短い光学系では、前群に当該光学面が含まれることが好ましい。
【0054】
これに対して、レトロフォーカスタイプの光学系の後群では、最大画角の光線の入射角(α)は、当該光学系の半画角(ω)よりも小さくなる(
図4参照)。従って、レトロフォーカスタイプの光学系では、すなわち、物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とから構成され、当該光学系全系の焦点距離よりも、当該光学系の最終レンズ面から像面までの距離が長い光学系では、後群に当該光学面が含まれることが好ましい。
【0055】
このように、光学系内における光学面の配置によっては、上記光学面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角(ω’)は変動するから、上述した条件式(3)又は条件式(4)を満足する位置に光学面が配置されることが好ましい。
【0056】
2.光学素子の加工方法
次に、本件発明に係る光学素子の加工方法の実施の形態を説明する。本件発明に係る光学素子の加工方法は、光学面に輪帯構造を備えていない光学素子にも適用可能であるが、本実施の形態では、回折光学素子やフレネルレンズ等の光学面に輪帯構造を備える光学素子を例に挙げて説明する。
【0057】
本実施の形態の光学素子の加工方法は、いわゆる切削法により光学素子の光学面を加工する方法である。このとき、切削工具の送りピッチをp(μm)とし、当該光学素子の使用波長域において最も短波長の光線の波長をw(μm)とし、当該光学面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角をω’(°)としたとき、下記条件式(5)を満足するようにして、光学面に対して前記切削工具を当接し、当該光学面を当該切削工具により切削しながら、上述した位相差関数式等で表される輪帯構造を光学面に形成する。
【0058】
条件式(5): 1.0 > (p/w)×sinω’
【0059】
光学素子の光学面を切削法により加工する際に、上記条件式(1)を満足するような送りピッチで切削工具を送りながら光学面を加工することで、当該光学面に加工痕(切削痕)が溝状に所定のピッチで周期的に形成された場合も、上述したとおり、この加工痕に起因する微細周期構造に入射した光が回折して虹フレアが発生しても、当該虹フレアが像面に入射するのを防止することができる。そのため、光学面に輪帯構造を形成する場合に、輪帯構造を形成後に加工痕を除去するための特別な方法を用いることなく、加工痕に起因する虹フレア等による画質の低下を抑制することができる。
【0060】
但し、上述したとおり、当該光学素子の加工方法は光学面に輪帯構造を備えない光学素子にも好適である。すなわち、当該加工方法によれば、例えば、球面レンズ等を切削法により加工する場合も、球面を加工した後に研磨等の手法により加工痕を除去することなく、加工痕に起因する虹フレアによる画質の低下を抑制することができる。
【0061】
3.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置の実施の形態について説明する。本実施の形態の撮像装置は、上記光学系と、当該光学系の像面側に設けられ、当該光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備える構成とすることができる。本件発明に係る撮像装置は、上記光学系を備えるため、加工痕に起因する微細周期構造を含む場合に虹フレアが発生したとしても、当該虹フレア光が像面に入射しないため虹フレアによる画質の低下を防止することができる。従って、回折面やフレネル面等の輪帯構造を有する光学面を含む光学系のように、加工痕に起因する上記微細周期構造が残存しやすい光学系を用いた場合も上記画質の低下を防止することができる。
【0062】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0063】
実施例1の光学系は、
図5に示すように、物体側から順に、正の屈折力を有する前群GFtと、負の屈折力を有する後群GRtとからなるテレフォトタイプの光学系である。具体的には、前群GFtは1枚の正レンズから構成され、後群GRtは、物体側から順に像面側に凸形状の負のメニスカスレンズと、正レンズとから構成されている。前群GFtを構成する正レンズの物体側面は回折面である。また、図中に示す「IMG」は像面を表している。具体的なレンズ面データ、回折面データ、緒元は以下のとおりである。但し、レンズ面データにおいて、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の番号、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」はd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、「ν」はd線に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、回折面データにおいて、「m」は回折次数を表し、「C2」、「C3」、「C4」は当該回折面を上記位相差関数で表したときの回折係数を表す。これらの事項は他の実施例においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0064】
(1)レンズ面データ
面番号 r d n ν 備考
1 48.60 12.00 1.51633 64.1 絞り/回折面
2 162.00 70.00
3 -29.50 3.00 1.62041 60.3
4 -106.20 0.50
5 -150.00 10.00 1.62004 36.3
6 -60.50 64.75
【0065】
(2)回折面データ
面番号 m C2 C3 C4 正規化半径
1 1 -2.62E+00 1.30E-03 2.40E-07 1.000
【0066】
(3)緒元
焦点距離 199.8mm
Fナンバー 5.6
半画角ω 6.12°
【0067】
実施例1の光学系において、第1面を回折面とし、当該回折面を加工する際の切削工具の送りピッチ(p)を3.00μmとした。また、当該光学系の使用波長域において最も短波長の光線の波長(w)及び、当該第1面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角(ω’)、条件式(1)の値はそれぞれ以下のとおりである。
【0068】
p 3.00μm
w 0.436μm
ω’ 6.12°
【0069】
条件式(1):(p/w)×sinω’=0.73
【0070】
また、
図6に、実施例1の光学系において、回折面に起因して発生した軸上光線の虹フレア光と、軸上光線、及び最大画角の7割、10割の画角の光線によるスポットダイアグラムを示す。
【0071】
実施例1の光学系では、回折面を有する第1面に絞りが配置されているため、回折面の中心、すなわち光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角(ω’)は、当該光学系の半画角(ω)と等しい。そのため、
図4に示すように、軸上光線による虹フレア光は最大画角(10割)の外側に分布しており、像面に当該虹フレア光が入射しないことが分かる。従って、回折面を加工する際の切削工具の送りピッチを上記条件式(1)を満足するようにすることで、虹フレアが発生しても、当該虹色フレア光により画質が低下することを抑制可能である。軸外光線については、虹フレア光の一部が画面内に入射するおそれがあるが、切削工具の送りピッチを比較的大きく設定することができるため、加工時間の短縮、加工精度の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0072】
次に、実施例2の光学系について説明する。実施例2の光学系は、第1面を加工する際の切削工具の送りピッチを1.60μmにしたことを除いて、実施例1の光学系と同じである。従って、ここでは実施例2の光学系の構成、レンズ面データ、回折面データ及び緒元に関する説明を省略し、以下にp、w、ω’の値及び条件式(1)の数値のみを示す。
【0073】
p 1.60μm
w 0.436μm
ω’ 6.12°
【0074】
条件式(1):(p/w)×sinω’=0.39
【0075】
また、
図7に実施例2の光学系において、回折面に起因して発生した最大画角の光線による虹フレア光と軸上光線、及び最大画角の7割、10割の画角の光線によるスポットダイアグラムを示す。
【0076】
実施例2の光学系の場合、図示しない最大画角の光線以外による虹フレア光を含め、全ての虹フレア光が最大画角のスポット位置の外側に分布している。実施例1と比較すると第1面を加工する際の切削工具の送りピッチが小さいが、虹フレア光が像面内に一切入射しないため、輪郭の鮮鋭なクリアで高コントラストな像が得られる。
【実施例3】
【0077】
実施例3の光学系は、
図8に示すように、物体側から順に、負の屈折力を有する前群GFrと、正の屈折力を有する後群GRrとからなるレトロフォーカスタイプの光学系である。具体的には、前群GFrは物体側から順に、物体側に凸形状の負のメニスカスレンズと、物体側に凸形状の正のメニスカスレンズとから構成される。また、後群GRrは像側に凸の正レンズから構成されている。後群GRrを構成する正レンズの物体側面は回折面であり、且つ、非球面である。また、図中に示す「S」は開口絞りを表し、「IMG」は像面を表している。具体的なレンズ面データ、回折面データ、非球面データ、緒元は以下のとおりである。但し、非球面データは、下記式により非球面を表したときの非球面係数及び円錐定数である。
【0078】
ここで、非球面は次式で定義されるものとする。
z=ch
2/[1+{1-(1+k)c
2h
2}
1/2]+A4h
4+A6h
6+A8h
8+A10h
10・・・
(但し、cは曲率(1/r)、hは光軸からの高さ、kは円錐係数、A4、A6、A8、A10・・・は各次数の非球面係数)
【0079】
(1)レンズ面データ
面番号 r d n ν 備考
1 73.30 3.00 1.51633 64.1
2 14.60 10.00
3 28.20 8.00 1.80518 25.4
4 52.00 7.40
5 - 1.00 絞り
6 -100.00 10.00 1.62041 60.3 回折面/非球面
7 -20.30 50.0
【0080】
(2)回折面データ
面番号 m C2 C3 C4 正規化半径
6 1 -1.63E+01 6.00E-02 0.00E+00 1.000
【0081】
(3)非球面データ
面番号 A4 A6
6 -1.70E-05 2.50E-08
【0082】
(4)緒元
焦点距離 35.5mm
Fナンバー 5.0
半画角ω 34.20°
【0083】
実施例1の光学系において、0.91μmとした。また、当該光学系の使用波長域において最も短波長の光線の波長(w)及び、当該第1面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角(ω’)、条件式(1)の値はそれぞれ以下のとおりである。
【0084】
p 0.91μm
w 0.436μm
ω’ 25.88°
【0085】
条件式(1):(p/w)×sinω’=0.91
【0086】
また、
図9に、実施例3の光学系において、回折面に起因して発生した軸上光線の虹フレア光と軸上光線、及び最大画角の7割、10割の画角の光線によるスポットダイアグラムを示す。
【0087】
実施例3の光学系では、絞りよりも物体側に負の屈折力を有する前群を備えるため、後群に含まれる回折面の光軸を通過する光線のうち、最大画角の光線の入射角(ω’)は、当該光学系の半画角(ω)よりも小さい。また、
図9に示すように、軸上光線による虹フレア光は最大画角(10割)の外側に分布しており、像面に当該虹フレア光が入射しないことが分かる。従って、回折面を加工する際の切削工具の送りピッチを上記条件式(1)を満足するようにすることで、虹フレアが発生しても、当該虹フレア光により画質が低下することを抑制可能である。軸外光線については、虹フレア光の一部が画面内に入射するおそれがあるが、切削工具の送りピッチを比較的大きく設定することができるため、加工時間の短縮、加工精度の向上を図ることができる。
【実施例4】
【0088】
次に、実施例4の光学系について説明する。実施例4の光学系は、第6面の回折面を加工する際の切削工具の送りピッチを0.48μmにしたことを除いて、実施例3の光学系と同じである。従って、ここでは実施例4の光学系の構成、レンズ面データ、回折面データ、非球面データ及び緒元に関する説明を省略し、以下にp、w、ω’の値及び条件式(1)の数値のみを示す。
【0089】
p 0.48μm
w 0.48μm
ω’ 25.88°
【0090】
条件式(1):(p/w)×sinω’=0.48
【0091】
また、
図10に実施例4の光学系において、回折面に起因して発生した最大画角の光線による虹フレアと軸上光線、および最大画角の7割、10割の画角の光線によるスポットダイアグラムを示す。
【0092】
実施例4の光学系の場合、図示しない最大画角の光線以外による虹フレア光を含め、全ての虹フレア光が最大画角のスポット位置の外側に分布している。すなわち、虹フレアが像面内に一切入射しないため、輪郭の鮮鋭なクリアで高コントラストな像が得られる。