特開2017-147052(P2017-147052A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-147052(P2017-147052A)
(43)【公開日】2017年8月24日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20170728BHJP
【FI】
   H01M8/04 N
   H01M8/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-26233(P2016-26233)
(22)【出願日】2016年2月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】相島 哲二
(72)【発明者】
【氏名】若林 和輝
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB26
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127EE15
(57)【要約】
【課題】燃料電池に供給される空気を冷却するインタクーラの下流における圧力損失を低減することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システムは、インタクーラ24から燃料電池へ向かう空気が流れる冷却空気流路25と、燃料電池から排出される空気が流れる空気排出流路と、インタクーラから空気排出流路へ向かう空気が流れるバイパス流路26と、を備える。冷却空気流路25の始端部25aとバイパス流路26の始端部26aは、それぞれインタクーラ24の筐体24Aに直接取り付けられ、冷却空気流路25の始端部25aに入口弁25Vが設けられ、バイパス流路26の始端部26aにバイパス弁26Vが設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、該燃料電池に供給される空気を圧送するコンプレッサと、該コンプレッサによって圧送される空気を冷却するインタクーラと、を備えた燃料電池システムであって、
前記インタクーラから前記燃料電池へ向かう空気が流れる冷却空気流路と、前記燃料電池から排出される空気が流れる空気排出流路と、前記インタクーラから前記空気排出流路へ向かう空気が流れるバイパス流路と、を備え、
前記冷却空気流路の始端部と前記バイパス流路の始端部は、それぞれ前記インタクーラの筐体に直接取り付けられ、前記冷却空気流路の前記始端部に入口弁が設けられ、前記バイパス流路の前記始端部にバイパス弁が設けられていることを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から空気と水素の供給を受けて発電する燃料電池と、該燃料電池に供給される圧縮されて昇温した空気を冷却するインタクーラとを備えた燃料電池システムが知られている(下記特許文献1を参照)。
【0003】
また、燃料電池と、該燃料電池に空気を供給する空気供給流路と、該空気供給流路に設けられ、前記燃料電池に向かって空気が流れる場合に開くリード弁と、前記燃料電池から排出された空気が流れる空気排出流路とを備える燃料電池システムが知られている(下記特許文献2を参照)。
【0004】
特許文献2に記載された燃料電池システムは、さらに、前記空気排出流路に設けられ、前記燃料電池に供給される空気の背圧を調整する調圧弁と、前記リード弁よりも上流側の前記空気供給流路と前記空気排出流路とを接続するバイパス流路と、を備えている。バイパス流路には、バイパス流路の開閉を行うバイパス弁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006―278209号公報
【特許文献2】国際公開第2011/104762号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献2に記載された燃料電池システムのバイパス流路よりも上流側の空気供給流路に対し、前記特許文献1に記載されたインタクーラを設ける構成が考えられる。この構成を採用した場合、インタクーラからリード弁までの流路長と、インタクーラからバイパス弁までの流路長が長くなり、大きな圧力損失が発生するという課題がある。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、燃料電池に供給される空気を冷却するインタクーラの下流における圧力損失を低減することができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明の燃料電池システムは、燃料電池と、該燃料電池に供給される空気を圧送するコンプレッサと、該コンプレッサによって圧送される空気を冷却するインタクーラと、を備えた燃料電池システムであって、前記インタクーラから前記燃料電池へ向かう空気が流れる冷却空気流路と、前記燃料電池から排出される空気が流れる空気排出流路と、前記インタクーラから前記空気排出流路へ向かう空気が流れるバイパス流路と、を備え、前記冷却空気流路の始端部と前記バイパス流路の始端部は、それぞれ前記インタクーラの筐体に直接取り付けられ、前記冷却空気流路の前記始端部に入口弁が設けられ、前記バイパス流路の前記始端部にバイパス弁が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の燃料電池システムは、例えば、燃料電池に空気等の酸化ガスを供給する酸化ガス供給系と、燃料電池に水素等の燃料ガスを供給する燃料ガス供給系を備えている。
【0010】
酸化ガス供給系は、前記した冷却空気流路、バイパス流路、及び空気排出流路の他に、例えば、コンプレッサの上流側に接続される空気導入流路と、コンプレッサとインタクーラを接続する圧縮空気流路と、を備えることができる。空気導入流路には、例えば、大気圧センサ、エアフローメータ、エアクリーナ等が設けられ、コンプレッサによって圧縮される空気が導入される。コンプレッサによって圧縮された空気は、圧縮空気流路を流れてインタクーラに供給される。各流路は、例えば、ゴムホースや金属製のパイプ等によって構成することができる。また、前記空気排出流路には、例えば、燃料電池に供給される空気の背圧を調整するための調圧弁が設けられる。
【0011】
燃料ガス供給系は、例えば、水素タンク等の燃料ガス供給源と、燃料ガス供給源からの燃料ガスを燃料電池へ供給する燃料ガス供給流路と、燃料電池から排出されたガスを外部へ排出する燃料ガス排出流路と、燃料ガス排出流路のガスを燃料供給流路へ流す循環流路とを備える。燃料ガス供給路には、例えば、燃料ガスの圧力を測定する圧力計が設けられる。燃料ガス排出流路には、例えば、燃料電池から排出されたガスを排出するためのパージ弁が設けられる。循環流路には、例えば、燃料ガス排出流路のガスを燃料供給流路へ循環させる循環ポンプが設けられる。
【0012】
燃料電池システムは、酸化ガス供給系によって燃料電池に供給された酸素等の酸化ガスと、燃料ガス供給系によって燃料電池に供給された水素等の燃料ガスとの電気化学反応によって発電を行う。酸化ガス供給系のコンプレッサと燃料電池との間にインタクーラが設置される場合には、例えば、インタクーラに冷却空気流路を接続し、冷却空気流路からバイパス流路を分岐させる構成が考えられる。
【0013】
しかし、この構成を採用した場合には、冷却空気流路に設けられる入口弁、及び、バイパス流路に設けられるバイパス弁を、冷却空気流路とバイパス流路との分岐点よりも下流に配置する必要がある。そのため、インタクーラから入口弁までの流路長と、インタクーラからバイパス弁までの流路長が長くなり、圧力損失が大きくなる。
【0014】
これに対し、本発明の燃料電池システムは、冷却空気流路の始端部とバイパス流路の始端部が、それぞれインタクーラの筐体に直接取り付けられる。また、冷却空気流路の始端部に入口弁が設けられ、バイパス流路の始端部にバイパス弁が設けられている。そのため、インタクーラの下流側の流路長を短くして、インタクーラの下流の圧力損失を低減することができる。
【0015】
例えば、冷却空気流路の始端部の末端に設けられた入口弁と、バイパス流路の始端部の末端に設けられたバイパス弁とを、それぞれ、インタクーラの筐体に直接取り付けることができる。これにより、インタクーラから入口弁までの流路長と、インタクーラからバイパス弁までの流路長を大幅に減少させ、又は、実質的にゼロにすることができる。なお、入口弁は、必ずしも冷却空気流路の始端部の末端に設ける必要はなく、バイパス弁は、必ずしもバイパス流路の始端部の末端に設ける必要はない。
【0016】
例えば、冷却空気流路の始端部の末端と、バイパス流路の始端部の末端を、それぞれ、インタクーラの筐体に直接取り付けてもよい。この場合、インタクーラの筐体と冷却空気流路との接続部の近傍、すなわち冷却空気流路の入口の近傍に、入口弁を配置することができる。また、インタクーラの筐体とバイパス流路との接続部の近傍、すなわちバイパス流路の入口の近傍に、入口弁を配置することができる。この場合にも、インタクーラの下流側の流路長を短くして、インタクーラの下流の圧力損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から理解できるように、本発明によれば、燃料電池に供給される空気を冷却するインタクーラの下流における圧力損失を低減することができる燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図。
図2図1に示す燃料電池システムのインタクーラの筐体を示す概略図。
図3】従来技術に基づく燃料電池システムの概略構成図。
図4図3に示す燃料電池システムのインタクーラの筐体を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の燃料電池システムの一実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システム100の概略構成図である。本実施形態の燃料電池システム100は、例えば、単位セルである燃料電池セルを複数個積層させた燃料電池スタックとして構成された燃料電池10と、燃料電池10に空気等の酸化ガスを供給する酸化ガス供給系20と、図示を省略する燃料ガス供給系とを備えている。
【0021】
酸化ガス供給系20は、例えば、空気導入流路21と、コンプレッサ22と、圧縮空気流路23と、インタクーラ24と、冷却空気流路25と、バイパス流路26と、空気排出流路27と、マフラ28とを備えている。酸化ガス供給系20の各流路は、例えば、ゴムホースや金属製のパイプ等によって構成することができる。
【0022】
空気導入流路21は、コンプレッサ22の吸入口に接続され、コンプレッサ22によって圧縮される空気をコンプレッサ22の吸入口に導入する。空気導入流路21には、例えば、図示を省略する大気圧センサ、エアフローメータ、エアクリーナ等が設けられる。
【0023】
コンプレッサ22は、空気導入流路21から導入された空気を圧縮し、圧縮された空気を吐出口から圧縮空気流路23を介してインタクーラ24へ圧送する。圧縮空気流路23は、一端がコンプレッサ22の吐出口に接続され、他端がインタクーラ24の空気入口に接続される。圧縮空気流路23には、コンプレッサ22から圧送された空気が、インタクーラ24の空気入口へ向けて流れる。
【0024】
インタクーラ24は、コンプレッサ22から圧送され、空気入口に導入された空気を通過させるときに、例えば冷媒との熱交換によって冷却する。コンプレッサ22によって圧送され、インタクーラ24によって冷却された空気は、冷却空気流路25に接続された一方の空気出口と、バイパス流路26に接続された他方の空気出口からそれぞれ排出される。
【0025】
冷却空気流路25は、一端がインタクーラ24の一方の空気出口に接続され、他端が燃料電池10の空気入口に接続されている。冷却空気流路25には、コンプレッサ22によって圧送され、インタクーラ24によって冷却されて一方の空気出口から排出された空気が、燃料電池10へ向けて流れる。冷却空気流路25には、インタクーラ24と燃料電池10との間の空気の流れを遮断するための入口弁25Vが設けられている。入口弁25Vは、インタクーラ24から燃料電池10へ向かう空気の流れによって開弁して空気を流し、燃料電池10からインタクーラ24へ向かう空気の流れによって閉弁して空気の流れを遮断する逆止弁であってもよい。
【0026】
バイパス流路26は、一端がインタクーラ24の他方の空気出口に接続され、他端が空気排出流路27に接続されている。バイパス流路26には、コンプレッサ22によって圧送され、インタクーラ24によって冷却されて他方の空気出口から排出された空気が、冷却空気流路25及び燃料電池10をバイパスして空気排出流路27へ向けて流れる。バイパス流路26には、インタクーラ24から空気排出流路27へ向けて流れる空気を遮断するためのバイパス弁26Vが設けられている。
【0027】
空気排出流路27は、一端が燃料電池10のガス排出口に接続され、他端がマフラ28に接続される。空気排出流路27には、燃料電池10に導入されて電気化学反応に用いられ、ガス排出口から排出された空気が、排出ガスとしてマフラ28へ向けて流れる。空気排出流路27には、燃料電池10に供給される空気の背圧を調整するための調圧弁27Vが設けられる。空気排出流路27の調圧弁27Vの下流側には、バイパス流路26が接続されている。マフラ28は、空気排出流路27に流れる排出ガスを、例えば、気相と液相とに分離して外部に排出する。
【0028】
図示を省略する燃料ガス供給系は、燃料電池10に水素等の燃料ガスを供給する。燃料ガス供給系は、例えば、水素タンク等の燃料ガス供給源と、燃料ガス供給源からの燃料ガスを燃料電池10へ供給する燃料ガス供給流路と、燃料電池10から排出されたガスを外部へ排出する燃料ガス排出流路と、燃料ガス排出流路のガスを燃料供給流路へ流す循環流路とを備える。燃料ガス供給路には、例えば、燃料ガスの圧力を測定する圧力計が設けられる。燃料ガス排出流路には、例えば、燃料電池10から排出されたガスを排出するためのパージ弁が設けられる。循環流路には、例えば、燃料ガス排出流路のガスを燃料供給流路へ循環させる循環ポンプが設けられる。
【0029】
本実施形態の燃料電池システム100は、酸化ガス供給系20によって燃料電池10に供給された空気等の酸化ガスと、燃料ガス供給系によって燃料電池10に供給された水素等の燃料ガスとの電気化学反応によって発電を行う。
【0030】
図2は、図1に示す燃料電池システム100のインタクーラ24の筐体を示す概略図である。本実施形態の燃料電池システム100は、冷却空気流路25の始端部25aとバイパス流路26の始端部26aが、それぞれインタクーラ24の筐体24Aに直接取り付けられ、冷却空気流路25の始端部25aに入口弁25Vが設けられ、バイパス流路26の始端部26aにバイパス弁26Vが設けられることを特徴としている。
【0031】
図2に示す例では、冷却空気流路25の始端部25aの末端に設けられた入口弁25Vと、バイパス流路26の始端部26aの末端に設けられたバイパス弁26Vとが、それぞれ、インタクーラ24の筐体24Aに直接取り付けられている。なお、入口弁25Vは、必ずしも冷却空気流路25の始端部25aの末端に設ける必要はなく、バイパス弁26Vは、必ずしもバイパス流路26の始端部26aの末端に設ける必要はない。
【0032】
例えば、冷却空気流路25の始端部25aの末端とバイパス流路26の始端部26aの末端とを、それぞれ、入口弁25Vとバイパス弁26Vを介さずに、インタクーラ24の筐体24Aに直接取り付けてもよい。この場合、インタクーラ24の筐体24Aと冷却空気流路25との接続部の近傍、すなわち冷却空気流路25の入口の近傍に、入口弁25Vを配置することができる。また、インタクーラ24の筐体24Aとバイパス流路26との接続部の近傍、すなわちバイパス流路26の入口の近傍に、バイパス弁26Vを配置することができる。
【0033】
また、図2に示す例では、冷却空気流路25の始端部25aが接続されたインタクーラ24の一方の空気出口24aの中心線CL1は、インタクーラ24の筐体24Aの空気の流れ方向に沿う中心線CLに対して、角度αの傾きを有している。また、バイパス流路26の始端部26aが接続されたインタクーラ24の他方の空気出口24bの中心線CL2は、インタクーラ24の空気の流れ方向に沿う中心線CLに対して、角度βの傾きを有している。
【0034】
さらに、図2に示す例では、インタクーラ24の一方の空気出口24aの中心C1とインタクーラ24の筐体24Aの中心線CLとの距離は、Hαであり、インタクーラ24の他方の空気出口24bの中心C2とインタクーラ24の筐体24Aの中心線CLとの距離は、Hβである。
【0035】
以下、従来技術に基づく燃料電池システムと比較した本実施形態の燃料電池システム100の作用について説明する。
【0036】
図3は、従来技術に基づく燃料電池システム900の概略構成図である。図4は、図3に示す燃料電池システム900のインタクーラ924の筐体924Aの概略図である。なお、図3及び図4に示す燃料電池システム900において、本実施形態の燃料電池システム100と同様の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図3及び図4に示す従来技術に基づく燃料電池システム900は、酸化ガス供給系920のコンプレッサ22と燃料電池10との間に設置されたインタクーラ924に冷却空気流路25が接続され、冷却空気流路25からバイパス流路26が分岐される構成を有している。この場合、冷却空気流路25に設けられる入口弁25V、及び、バイパス流路26に設けられるバイパス弁26Vを、冷却空気流路25とバイパス流路26との分岐点よりも下流に配置する必要がある。そのため、インタクーラ924から入口弁25Vまでの流路長L1と、インタクーラ924からバイパス弁26Vまでの流路長L2が長くなり、圧力損失が大きくなる。
【0038】
ここで、冷却空気流路25及びバイパス流路26を構成する管内を流れる流体の体積流量Q[m/s]と、流速v[m/s]との関係は、流出係数Cと流路面積A[m]を用いて、以下の式(1)によって表すことができる。
【0039】
Q=C×A×v …(1)
【0040】
また、冷却空気流路25及びバイパス流路26を構成する管の圧力損失Δp[Pa]、内径d[m]、及び長さl[m]、並びに空気の流速v[m/s]との関係は、以下のダルシー・ワイスバッハ(Darcy-Weisbach)の式(2)によって表わされる。
【0041】
Δp={(ρ×λ×l)/(2d)}×v …(2)
【0042】
したがって、燃料電池システム900では、インタクーラ924から入口弁25Vまでの流路長L1と、インタクーラ924からバイパス弁26Vまでの流路長L2が長くなり、圧力損失が大きくなる。また、燃料電池システム900では、インタクーラ924の周辺の構成の変更が困難であり、冷却空気流路25とバイパス流路26に対する圧力損失Δpの分配調整が困難である。そのため、圧力損失Δpに対する要求や制御が変更される都度、冷却空気流路25とバイパス流路26の内径dの変更や、流路長L1,L2の変更を余儀なくされる。
【0043】
これに対し、本実施形態の燃料電池システム100は、図2に示すように、冷却空気流路25の始端部25aとバイパス流路26の始端部26aが、それぞれインタクーラ24の筐体24Aに直接取り付けられ、冷却空気流路25の始端部25aに入口弁25Vが設けられ、バイパス流路26の始端部26aにバイパス弁26Vが設けられている。そのため、図3及び図4に示す燃料電池システム900と比較して、インタクーラ24の下流側の流路長を短くして、インタクーラ24の下流の圧力損失を低減することができる。
【0044】
より詳細には、本実施形態の燃料電池システム100において、冷却空気流路25の始端部25aの末端に設けられた入口弁25Vと、バイパス流路26の始端部26aの末端に設けられたバイパス弁26Vとは、それぞれ、インタクーラ24の筐体24Aに直接取り付けられている。これにより、インタクーラ24から入口弁25Vまでの流路長と、インタクーラ24からバイパス弁26Vまでの流路長を大幅に減少させ、又は、実質的にゼロにすることができる。したがって、図3及び図4に示す燃料電池システム900と比較して、インタクーラ24の下流の圧力損失を大幅に低減することができる。
【0045】
なお、入口弁25Vは、必ずしも冷却空気流路25の始端部25aの末端に設ける必要はなく、バイパス弁26Vは、必ずしもバイパス流路26の始端部26aの末端に設ける必要はない。例えば、冷却空気流路25の始端部25aの末端と、バイパス流路26の始端部26aの末端を、それぞれ、インタクーラ24の筐体24Aに直接取り付けてもよい。
【0046】
この場合、インタクーラ24の筐体24Aと冷却空気流路25との接続部の近傍、すなわち冷却空気流路25の入口の近傍に、入口弁25Vを配置することができる。また、インタクーラ24の筐体24Aとバイパス流路26との接続部の近傍、すなわちバイパス流路26の入口の近傍に、入口弁25Vを配置することができる。この場合にも、図3及び図4に示す燃料電池システム900と比較して、インタクーラ24の下流側の流路長を短くして、インタクーラ24の下流の圧力損失を低減することができる。
【0047】
さらに、本実施形態の燃料電池システム100では、冷却空気流路25の始端部25aが接続されたインタクーラ24の一方の空気出口24aの中心線CL1は、インタクーラ24の筐体24Aの空気の流れ方向に沿う中心線CLに対して、角度αの傾きを有している。また、バイパス流路26の始端部26aが接続されたインタクーラ24の他方の空気出口24bの中心線CL2は、インタクーラ24の空気の流れ方向に沿う中心線CLに対して、角度βの傾きを有している。
【0048】
また、インタクーラ24の一方の空気出口24aの中心C1とインタクーラ24の筐体24Aの中心線CLとの距離は、Hαであり、インタクーラ24の他方の空気出口24bの中心C2とインタクーラ24の筐体24Aの中心線CLとの距離は、Hβである。そのため、距離Hα、距離Hβ、角度α、及び角度βを調節することで、インタクーラ24の空気出口24a,24bの面積、すなわち冷却空気流路25及びバイパス流路26の有効断面積をコントロールすることができる。
【0049】
したがって、本実施形態の燃料電池システム100では、インタクーラ24の周辺の構成を大きく変更することなく、主流側の冷却空気流路25における圧力損失と分流側のバイパス流路26における圧力損失との適切な分配が可能になる。具体的には、例えば、主流側の圧力損失を低減させたい場合、距離Hα若しくは角度αを小さくするか、又は、距離Hβ若しくは角度βを大きくすればよい。このような圧力損失の最適な分配は、例えばシミュレーションによって決定することができ、これにより配管部品点数の削減、コスト低減、及び重量の低減を実現することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システム100によれば、従来技術の組み合わせに係る燃料電池システム900と比較して、燃料電池10に供給される空気を冷却するインタクーラ24の下流における圧力損失を低減することができる。
【0051】
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
10 燃料電池
22 コンプレッサ
24 インタクーラ
24A 筐体
25 冷却空気流路
25a 始端部
25V 入口弁
26 バイパス流路
26a 始端部
26V バイパス弁
27 空気排出流路
100 燃料電池システム
図1
図2
図3
図4