【解決手段】絶縁基板10と、絶縁基板10上に配置され、電流経路に接続されるとともに、溶断することにより電流経路を遮断する可溶導体13と、側壁21と絶縁基板10の可溶導体13が搭載された表面10a上を覆う天面22とを有するカバー部材20と、可溶導体13上に塗布されたフラックス17とを備え、カバー部材20の天面22内側には、フラックス17を可溶導体13上の所定の位置に保持するフラックス保持壁24が設けられ、フラックス保持壁24の外面24aと、カバー部材20の側壁21の内壁面21aとの最小距離Dが0.08mm以上である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が適用されたヒューズ素子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
本発明が適用されたヒューズ素子1は、例えばリチウムイオン二次電池の保護回路等の回路基板にリフローにより表面実装されることにより、リチウムイオン二次電池の充放電経路上に可溶導体13が組み込まれる。この保護回路は、ヒューズ素子1の定格を超える大電流が流れると、可溶導体13が自己発熱(ジュール熱)によって溶断することにより電流経路を遮断する。また、この保護回路は、ヒューズ素子1が実装された回路基板等に設けられた電流制御素子によって所定のタイミングで発熱体14へ通電し、発熱体14の発熱によって可溶導体13を溶断させることによって電流経路を遮断することができる。なお、
図1(A)は、本発明が適用されたヒューズ素子1を、ケースを省略して示す平面図であり、
図1(B)は、回路基板に実装されたヒューズ素子1の断面図である。
【0017】
[ヒューズ素子]
ヒューズ素子1は、
図1(A)に示すように、絶縁基板10と、絶縁基板10に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板10の両端に形成された第1の電極11及び第2の電極12と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が第1、第2の電極11,12にそれぞれ接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13と、絶縁基板10の可溶導体13が搭載された表面10a上を覆うカバー部材20とを備える。また、ヒューズ素子1は、可溶導体13上に、可溶導体13に発生する酸化膜を除去するとともに可溶導体13の濡れ性を向上させるフラックス17が保持されている。
【0018】
絶縁基板10は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって略方形状に形成される。絶縁基板10は、その他にも、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
【0019】
[第1、第2の電極]
第1、第2の電極11,12は、絶縁基板10の表面10a上に、相対向する側縁近傍にそれぞれ離間して配置されることにより開放され、後述する可溶導体13が搭載されることにより、可溶導体13を介して電気的に接続されている。また、第1、第2の電極11,12は、ヒューズ素子1に定格を超える大電流が流れ可溶導体13が自己発熱によって溶断し、あるいは発熱体14が通電に伴って発熱し可溶導体13が溶断することにより、遮断される。
【0020】
図2に示すように、第1、第2の電極11,12は、それぞれ、絶縁基板10の第1、第2の側面10b,10cに設けられたキャスタレーションを介して裏面10fに設けられた外部接続電極11a,12aと接続されている。ヒューズ素子1は、これら外部接続電極11a,12aを介して外部回路が形成された回路基板2と接続され、当該外部回路の通電経路の一部を構成する。
【0021】
第1、第2の電極11,12は、CuやAg等の一般的な電極材料を用いて形成することができる。また、第1、第2の電極11,12の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、ヒューズ素子1は、第1、第2の電極11,12の酸化を防止し、導通抵抗の上昇に伴う定格の変動を防止することができる。また、ヒューズ素子1をリフロー実装する場合に、可溶導体13を接続する接続用ハンダあるいは可溶導体13の外層に低融点金属層が形成されている場合に当該低融点金属が溶融することにより第1、第2の電極11,12を溶食(ハンダ食われ)するのを防ぐことができる。
【0022】
[発熱体]
発熱体14は、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばニクロム、W、Mo、Ru、Cu、Ag、あるいはこれらを主成分とする合金等からなる。発熱体14は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板10上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。また、発熱体14は、一端が第1の発熱体電極18と接続され、他端が第2の発熱体電極19と接続されている。
【0023】
ヒューズ素子1は、発熱体14を覆うように絶縁部材15が配設され、この絶縁部材15を介して発熱体14に対向するように発熱体引出電極16が形成されている。発熱体14の熱を効率良く可溶導体13に伝えるために、発熱体14と絶縁基板10の間にも絶縁部材15を積層しても良い。絶縁部材15としては、例えばガラスを用いることができる。
【0024】
発熱体引出電極16の一端は、第1の発熱体電極18に接続されるとともに、第1の発熱体電極18を介して発熱体14の一端と連続されている。なお、第1の発熱体電極18は、絶縁基板10の第3の側面10d側に形成され、第2の発熱体電極19は、絶縁基板10の第4の側面10e側に形成されている。また、第2の発熱体電極19は、第4の側面10eに形成されたキャスタレーションを介して絶縁基板10の裏面10fに形成された外部接続電極19aと接続されている。
【0025】
発熱体14は、ヒューズ素子1が回路基板2に実装されることにより、外部接続電極19aを介して回路基板2に形成された外部回路と接続される。そして、発熱体14は、外部回路の通電経路を遮断する所定のタイミングで外部接続電極19aを介して通電され、発熱することにより、第1、第2の電極11,12を接続している可溶導体13を溶断することができる。また、発熱体14は、可溶導体13が溶断することにより、自身の通電経路も遮断されることから発熱が停止する。
【0026】
[可溶導体]
可溶導体13は、発熱体14の発熱により速やかに溶断される材料からなり、例えばハンダや、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の低融点金属を好適に用いることができる。
【0027】
また、可溶導体13は、In、Pb、Ag、Cu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする合金等の高融点金属を用いてもよく、あるいは内層を低融点金属層とし外層を高融点金属層とする等の低融点金属と高融点金属との積層体であってもよい。高融点金属と低融点金属とを含有することによって、ヒューズ素子1をリフロー実装する場合に、リフロー温度が低融点金属の溶融温度を超えて、低融点金属が溶融しても、低融点金属の外部への流出を抑制し、可溶導体13の形状を維持することができる。また、溶断時も、低融点金属が溶融することにより、高融点金属を溶食することで、高融点金属の融点以下の温度で速やかに溶断することができる。
【0028】
なお、可溶導体13は、発熱体引出電極16及び第1、第2の電極11,12へ、ハンダ等により接続されている。可溶導体13は、リフローはんだ付けによって容易に接続することができる。可溶導体13は、発熱体引出電極16上に搭載されることにより、発熱体14と重畳される。また、発熱体引出電極16を介して第1、第2の電極11,12間に亘って接続された可溶導体13は、発熱体引出電極16と第1の電極11との間、及び発熱体引出電極16と第2の電極12との間において溶断し、第1、第2の電極11,12間を遮断する。すなわち、可溶導体13は、中央部が発熱体引出電極16に支持されるとともに、発熱体引出電極16に支持された中央部の両側が溶断部13aとされている。
【0029】
また、可溶導体13は、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス17が塗布されている。可溶導体13は、フラックス17が保持されることによって、可溶導体13の酸化及び酸化に伴う溶断温度の上昇を防止して、溶断特性の変動を抑制し、速やかに溶断することができる。
【0030】
[カバー部材]
また、ヒューズ素子1は、内部を保護するために、絶縁基板10の可溶導体13が搭載された表面10a上にカバー部材20が設けられている。カバー部材20は、絶縁基板10の形状に応じて略矩形状に形成されている。また、
図1(B)に示すように、カバー部材20は、側壁21と、絶縁基板10の表面10a上を覆う天面22とを有し、可溶導体13上にフラックス17を充填、保持可能な内部空間を有する。カバー部材20は、例えば側壁21が絶縁基板10の表面10a上に接着剤により接続されることにより、ヒューズ素子1の外筐体を構成する。
【0031】
また、
図3に示すように、カバー部材20の天面22内側には、フラックス17を可溶導体13上の所定の位置に保持するフラックス保持壁24が設けられている。フラックス保持壁24は、カバー部材20の天面22よりヒューズ素子1の内部に突出して設けられ、例えば、環状に形成された突条部からなる。カバー部材20は、フラックス保持壁24によって、絶縁基板10の表面10a側に円筒状に突出するフラックス保持部23が形成される。ヒューズ素子1は、フラックス17がフラックス保持部23と可溶導体13との間に充填されることで、フラックス17がフラックス保持壁24との張力によって、可溶導体13の表面と、円筒状に突出するフラックス保持部23の内部及びその周辺との間に保持される。
【0032】
フラックス保持部23は、可溶導体13と対峙する位置に形成され、好ましくは発熱体14と重畳する可溶導体13の略中央に対向する位置に形成され、フラックス17を可溶導体13の発熱体引出電極16及び発熱体14と重畳する位置に保持する。このため、フラックス保持部23は、カバー部材20の天面22の略中央に形成されることが好ましい。
【0033】
フラックス保持部23が可溶導体13の略中央に対向して設けられることにより、フラックス17が可溶導体13の表面を広範囲にカバーすることができ、発熱体14の発熱により、フラックス17を可溶導体13の全面にわたって均一に拡散させる。したがって、ヒューズ素子1は、可溶導体13の酸化防止や濡れ性の向上によって、第1、第2の電極11,12間の電流経路を速やかに溶断することができる。
【0034】
このとき、フラックス保持部23が発熱体14と重畳して形成されることで、フラックス17が発熱体14の熱により可溶導体13の発熱体14との重畳位置から外縁部にかけて拡散し、可溶導体13の全面にわたって均一に拡散することで、可溶導体13を速やかに溶断することができる。
【0035】
なお、フラックス保持部23は、フラックス保持壁24の一部に、高さ方向のスリットを形成してもよい。また、フラックス保持部23は、フラックス保持壁24の一部に、開口部を形成してもよい。また、ヒューズ素子1は、円筒状に突出するフラックス保持部23が、可溶導体13の長手方向に沿って並列するあるいは発熱体14の長手方向に沿って並列する等、フラックス保持部23を複数形成してもよい。
【0036】
また、フラックス保持部23は、同心円状の複数の円筒であってもよい。また、フラックス保持部23は、円筒形状に限らず、楕円形状等、フラックス17を保持できるあらゆる形状を採用することができる。
【0037】
このようなヒューズ素子1は、近年の電子機器の小型化に伴い、小型化、低背化が図られており、例えば絶縁基板10に応じてカバー部材20の外形寸法が3mm×2.2mm、側壁21の厚さが0.2mm、内部寸法が2.6mm×1.8mmとされている。カバー部材20は、これ以外の寸法で形成することができることは勿論である。
【0038】
[フラックス保持壁の外面と側壁の内壁面との最小距離D]
また、カバー部材20は、フラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dが0.08mm以上とされている。フラックス保持壁24の外面24aとは、フラックス保持壁24の側壁21と対向する面をいい、
図3に示すカバー部材20においては、円筒状に突出するフラックス保持部23を形成するフラックス保持壁24の外周面をいう。また、側壁21の内壁面21aとは、側壁21のカバー部材20の内側の壁面をいう。なお、内壁面21aは、側壁21の壁面となる部位で仮にフラックス17が接触した場合にはその張力が作用し得る程度に広範囲な面であり、局所的に突出するような部位は含まれない。
【0039】
フラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dが0.08mm以上とされることにより、ヒューズ素子1は、リフロー実装等によって加熱されフラックス17が軟化した場合にも、フラックス17がカバー部材20の側壁21側に付着、吸引され、フラックス保持部23から流出することを防止でき、フラックス17をフラックス保持部23及びその周辺に保持することができる。
【0040】
すなわち、ヒューズ素子1は、小型化、低背化によってカバー部材20の内部空間が狭小化されていくなかでも、可溶導体13の酸化を防止するとともに溶断特性を維持するために、フラックス保持部23を大きくとり、フラックス17はできるだけ多く供給することが好ましい。一方で、フラックス保持部23を構成するフラックス保持壁24の外周面とカバー部材20の側壁21の内壁面21aとが近接すると、側壁21にフラックス17が接触して側壁21側に吸引されてしまう。このため、ヒューズ素子1は、フラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dを0.08mm以上確保したうえで、フラックス保持部23を最大限大きく設けてフラックス17をできるだけ多く保持するとともに、供給されたフラックス17を安定的に保持し、リフロー加熱を経てもフラックス保持部23及びその周辺にフラックス17を保持することができる。
【0041】
ここで、フラックス17としては、軟化したときの粘度が略3〜20Pa・sのものを用いることができる。ヒューズ素子1は、フラックス保持部23を構成するフラックス保持壁24の外面24aとカバー部材20の側壁21の内壁面21aとの最小距離Dを0.08mm以上とすることで、軟化したときの粘度が略3Pa・sと低粘度のフラックス17を用いた場合にもフラックス保持部23に保持することができる。
【0042】
なお、フラックス17の軟化したときの粘度が20Pa・sを超えると可溶導体13上に供給する際の作業性が悪くなるが、本発明においては本質的な問題ではなく、ヒューズ素子1に適用可能である。また、フラックス保持壁24の高さは、ヒューズ素子1の小型化、低背化によって狭小化されているカバー部材20の内部空間に応じて低背化され、例えば0.1mmに形成されている。
【0043】
また、フラックス保持部23を複数並列した場合にも、各フラックス保持部23を構成するフラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dが0.08mm以上とされる。隣接するフラックス保持壁24同士の最小距離は問わず、0.08mm未満で、フラックス17が隣接するフラックス保持壁24に付着しても構わない。フラックス保持部23を同心円状の複数の円筒により形成した場合、最外周のフラックス保持壁24の外周24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dが0.08mm以上とされる。
【0044】
なお、カバー部材20の側壁21は、絶縁基板10の表面10aに接着剤26によって接続されている。ヒューズ素子1は、接着剤26の余剰分が側壁21の内壁面21aに沿って這い上がってきた場合にも、フラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dを0.08mm以上確保することで、内壁面21aに沿って這い上がってきた接着剤とフラックス17とが接触して内壁面21a側に吸引されることもない。
【0045】
このようなヒューズ素子1は、例えばリチウムイオン二次電池の保護回路等の外部回路が構成される回路基板にリフロー等により表面実装されることにより当該外部回路の通電経路上に組み込まれる。このとき、ヒューズ素子1は、リフロー加熱によりフラックス13が軟化した場合にも、フラックス保持壁24の外周24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dが0.08mm以上とされることで、軟化したフラックス17が側壁21の内壁面21aに接触しフラックス保持部23から流出することが防止されている。
【0046】
したがって、ヒューズ素子1は、フラックス17を可溶導体13上の所定の位置に保持することができ、可溶導体13の酸化及び酸化に伴う溶断温度の上昇を防止し、溶断特性を安定化させることができる。
【0047】
そして、ヒューズ素子1は、外部接続電極19aを介して発熱体14が通電、発熱されると、可溶導体13が溶融し、その濡れ性によって、第1、第2の電極11,12及び発熱体引出電極16上に引き寄せられる。その結果、ヒューズ素子1は、可溶導体13が溶断することにより、第1、第2の電極11,12間にわたる電流経路を遮断することができる。また、可溶導体13が溶断することにより発熱体14への給電経路も遮断されるため、発熱体14の発熱も停止する。
【0048】
また、ヒューズ素子1は、第1、第2の電極11,12間にわたる通電経路上に定格を超える予期しない大電流が流れた場合に、可溶導体13が自己発熱により溶断することによって、電流経路を遮断することができる。
【0049】
なお、上述したヒューズ素子1では、発熱体14を備え、定格を超える大電流による可溶導体13の自己発熱遮断の他、発熱体14の発熱によっても可溶導体13を溶断させる構成について説明したが、本発明が適用されたヒューズ素子1は、発熱体14を備えずに、定格を超える大電流による可溶導体13の自己発熱遮断によって電流経路を遮断させるものであってもよい。
【0050】
[回路基板]
ヒューズ素子1が実装される回路基板2は、例えばガラスエポキシ基板やガラス基板、セラミック基板等のリジッド基板や、フレキシブル基板等、公知の絶縁基板が用いられる。また、回路基板2は、
図1(B)に示すように、ヒューズ素子1がリフロー等によって表面実装される実装部を有し、実装部内にヒューズ素子1の絶縁基板10の裏面10fに設けられた外部接続端子11a,12a,19aとそれぞれ接続される接続電極が設けられている。なお、回路基板2は、ヒューズ素子1の発熱体14に通電させるFET等の素子が実装されている。
【0051】
[回路モジュールの使用方法]
次いで、ヒューズ素子1及びヒューズ素子1が回路基板2に表面実装された回路モジュール3の使用方法について説明する。
図4に示すように、回路モジュール3は、例えば、リチウムイオン二次電池のバッテリパック内の回路として用いられる。
【0052】
たとえば、ヒューズ素子1は、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル41〜44からなるバッテリスタック45を有するバッテリパック40に組み込まれて使用される。
【0053】
バッテリパック40は、バッテリスタック45と、バッテリスタック45の充放電を制御する充放電制御回路50と、バッテリスタック45の異常時に充電を遮断する本発明が適用されたヒューズ素子1と、各バッテリセル41〜44の電圧を検出する検出回路46と、検出回路46の検出結果に応じてヒューズ素子1の動作を制御する電流制御素子47とを備える。
【0054】
バッテリスタック45は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル41〜44が直列接続されたものであり、バッテリパック40の正極端子40a、負極端子40bを介して、着脱可能に充電装置55に接続され、充電装置55からの充電電圧が印加される。充電装置55により充電されたバッテリパック40の正極端子40a、負極端子40bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0055】
充放電制御回路50は、バッテリスタック45から充電装置55に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子51、52と、これらの電流制御素子51、52の動作を制御する制御部53とを備える。電流制御素子51、52は、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETと呼ぶ。)により構成され、制御部53によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック45の電流経路の導通と遮断とを制御する。制御部53は、充電装置55から電力供給を受けて動作し、検出回路46による検出結果に応じて、バッテリスタック45が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子51、52の動作を制御する。
【0056】
ヒューズ素子1は、たとえば、バッテリスタック45と充放電制御回路50との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子47によって制御される。
【0057】
検出回路46は、各バッテリセル41〜44と接続され、各バッテリセル41〜44の電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路50の制御部53に供給する。また、検出回路46は、いずれか1つのバッテリセル41〜44が過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子47を制御する制御信号を出力する。
【0058】
電流制御素子47は、たとえばFETにより構成され、検出回路46から出力される検出信号によって、バッテリセル41〜44の電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、ヒューズ素子1を動作させて、バッテリスタック45の充放電電流経路を電流制御素子51、52のスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0059】
以上のような構成からなるバッテリパック40において、ヒューズ素子1の構成について具体的に説明する。
【0060】
まず、本発明が適用されたヒューズ素子1は、
図5に示すような回路構成を有する。すなわち、ヒューズ素子1は、発熱体引出電極16を介して直列接続された可溶導体13と、可溶導体13の接続点を介して通電して発熱させることによって可溶導体13を溶融する発熱体14とからなる回路構成である。また、ヒューズ素子1では、たとえば、可溶導体13が充放電電流経路上に直列接続され、発熱体14が電流制御素子47と接続される。ヒューズ素子1の第1の電極11は、外部接続電極11aを介してバッテリスタック45の開放端と接続され、第2の電極12は、外部接続電極12aを介してバッテリパック40の正極端子40a側の開放端と接続される。また、発熱体14は、発熱体引出電極16を介して可溶導体13と接続されることによりバッテリパック40の充放電電流経路と接続され、また発熱体引出電極16及び外部接続電極19aを介して電流制御素子47と接続される。
【0061】
このようなバッテリパック40は、ヒューズ素子1の発熱体14が通電、発熱されると、可溶導体13が溶融し、その濡れ性によって、発熱体引出電極16上に引き寄せられる。その結果、ヒューズ素子1は、可溶導体13が溶断することにより、確実に電流経路を遮断することができる。また、可溶導体13が溶断することにより発熱体14への給電経路も遮断されるため、発熱体14の発熱も停止する。
【0062】
また、バッテリパック40は、充放電経路上にヒューズ素子1の定格を超える予期しない大電流が流れた場合に、可溶導体13が自己発熱により溶断することによって、電流経路を遮断することができる。
【0063】
なお、本発明が適用されたヒューズ素子1は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん適用可能である。また、ヒューズ素子1は、電流経路や信号経路の遮断を行う保護素子(SCP)の他にも、可溶導体の溶融導体を介して電流経路や信号経路を接続する短絡素子や、可溶導体を溶断するとともに可溶導体の溶融導体を介して電流経路や信号経路を切り替える切替素子に用いることができる。
【実施例】
【0064】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、小型化、低背化が図られたカバー部材を用いて、可溶導体13の略中央に対向する位置に設けたフラックス保持部23の寸法、及びフラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dを変えて、リフロー温度に相当する温度(260℃)で加熱した後の、フラックスの流動の有無を確認した。
【0065】
実施例及び比較例に係るカバー部材20は、
図3に示すように、外形寸法が3mm×2.2mm、側壁21の厚さが0.2mm、内部寸法が2.6mm×1.8mmとされている。フラックス保持部23はフラックス保持壁24が円筒状に突出することにより形成されている。フラックス保持壁24は、厚さ0.1mmで、カバー部材の天面からの突出高さは0.1mmである。
【0066】
各実施例及び比較例とも20個のヒューズ素子サンプルを用意し、リフロー温度に相当する温度(260℃)で加熱した後、カバー部材20を外してフラックスの流出の有無を確認した。
【0067】
[実施例1]
実施例1では、フラックス保持部23の内径φを1.44mm、フラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dを左右とも0.08mmとした。実施例1に係るヒューズ素子は、フラックスがフラックス保持部23より流出した個数が20個中4個であった。
【0068】
[実施例2]
実施例2では、フラックス保持部23の内径φを1.4mm、フラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dを左右とも0.1mmとした。実施例2に係るヒューズ素子は、フラックスがフラックス保持部23より流出した個数が20個中0個であった。
【0069】
[実施例3]
実施例1では、フラックス保持部23の内径φを1.3mm、フラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dを左右とも0.15mmとした。実施例3に係るヒューズ素子は、フラックスがフラックス保持部23より流出した個数が20個中0個であった。
【0070】
[実施例4]
実施例4では、フラックス保持部23の内径φを1.2mm、フラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dを左右とも0.2mmとした。実施例4に係るヒューズ素子は、フラックスがフラックス保持部23より流出した個数が20個中0個であった。
【0071】
[比較例1]
比較例1では、フラックス保持部23の内径φを1.5mm、フラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dを左右とも0.05mmとした。比較例1に係るヒューズ素子は、フラックスがフラックス保持部23より流出した個数が20個中16個であった。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示すように、フラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dを0.05mmとした比較例1に比して、0.08mmとした実施例1では、フラックスの流出が生じたヒューズ素子の数が16個から4個へと激減した。また、フラックス保持壁24の外面24aと側壁21の内壁面21aとの最小距離Dを0.1mm以上とした実施例2〜4では、フラックスの流出が生じたヒューズ素子の数が0個であった。
【0074】
すなわち、ヒューズ素子において、カバー部材のフラックス保持壁の外面と側壁の内壁面との最小距離Dを0.08mm以上とすることで、リフロー加熱を経てもフラックスをフラックス保持部に保持することができることが分かる。また、フラックス保持壁の外面と側壁の内壁面との最小距離Dを0.1mm以上とすることで、より確実にフラックスの流出を防止できることが分かる。