【解決手段】舗装補修材は、ひまし油変性ポリエステルポリオールを含む主剤と、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含む硬化剤とを混合してなる混合物を、アスファルト常温合材に配合して形成する。舗装の多孔質の表層に生じた損傷部分に、ひまし油変性ポリエステルポリオールを含む主剤と、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含む硬化剤とを混合してなるプライマーを塗布した後、舗装補修材を充填する。舗装補修材の表面と、舗装補修材の周辺の舗装表面に、プライマーと同じ成分のトップコートを塗布する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、舗装の表層を、開粒度アスファルトを用いて多孔質に形成することにより、降雨時の迅速な排水や、車両の走行音の低減等の効果が得られることが知られている。このような多孔質の表層を設けた舗装体として、排水性舗装や透水性舗装が存在する。以下、少なくとも表層が多孔質に形成されたアスファルト舗装を、多孔質アスファルト舗装という。
【0007】
このような多孔質アスファルト舗装は、骨材の結合力が通常の密粒度アスファルト舗装よりも小さいので、骨材が飛散しやすく、ポットホールや轍等の損傷が生じやすい。この多孔質アスファルト舗装に生じた損傷を、上記従来の補修材で補修すると、補修材の付着力が比較的小さいことに加え、補修材の硬化物の耐摩耗性と強度が比較的低いので、補修後の短期間のうちに硬化物が破壊されて飛散してしまい、耐久性が低いという問題がある。
【0008】
耐久性の高い硬化物を得るためには、補修材としてアスファルト加熱合材を用いれば解決できるが、アスファルト加熱合材は、損傷部分に充填するまで温度管理を行う必要がある。したがって、バーナ等の加熱機器が必要となると共に作業工数が増え、補修作業に手間とコストがかかる問題がある。また、アスファルト加熱合材を締め固めた後に、高温の補修材を冷却するための養生が必要であり、道路を早期に開放できないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、多孔質アスファルト舗装に生じた損傷を補修する舗装補修材及び舗装補修方法であって、硬化物が高い耐久性を有し、常温で比較的少ない工数で補修作業を行うことができ、補修後に早期に道路を解放できる舗装補修材及び舗装補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の舗装用補修材は、多孔質の表層を有する多孔質アスファルト舗装の補修に用いられる舗装用補修材であって、
骨材とアスファルトを含んで形成されたアスファルト常温合材と、
ひまし油変性ポリエステルポリオールを含む主剤と、
ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤とを混合してなることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、骨材とアスファルトを含んで形成されたアスファルト常温合材と、ひまし油変性ポリエステルポリオールを含む主剤と、ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤とが常温で混合され、主剤と硬化剤で形成されるポリウレタンポリマーとアスファルトとの相溶物により、従来よりも高い強度と、可撓性(たわみ性)と、舗装に対する高い付着力を備えた耐久性の高い硬化物が得られる。
【0012】
また、一実施形態の舗装用補修材は、上記アスファルト常温合材100重量部に対し、上記主剤と上記硬化剤の混合物5重量部以上11重量部以下を混合してなる。
【0013】
また、一実施形態の舗装用補修材は、上記主剤のひまし油変性ポリエステルポリオールは、官能基数が2以上6以下、水酸基価が155以上350以下、かつ、JIS K1557−1(A法)に従って求めた平均分子量が600以上1200以下である。
【0014】
また、一実施形態の舗装用補修材は、上記硬化剤のポリイソシアネート化合物は、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートである。
【0015】
また、一実施形態の舗装用補修材は、上記主剤と硬化剤の混合物が、混合直後の粘度が500mpa・s以上3000mpa・s以下である。
【0016】
また、一実施形態の舗装用補修材は、硬化促進剤を更に混合してなる。
【0017】
また、一実施形態の舗装用補修材は、上記アスファルト常温合材の骨材の粒度分布は、0.075mm以上2.36mm未満の粒径が0重量部より多く10重量部未満であり、2.36mm以上4.75mm未満の粒径が90重量部以上100重量部未満であり、かつ、上記0.075mm以上2.36mm未満の粒径と上記2.36mm以上4.75mm未満の粒径の合計が100重量部である。また、上記アスファルト常温合材の骨材の粒度分布は、0.075mm以上2.36mm未満の粒径が0重量部より多く20重量部未満であり、2.36mm以上4.75mm未満の粒径が0重量部以上30重量部未満であり、4.75mm以上13.2mm未満の粒径が70重量部以上100重量部以下であり、かつ、上記0.075mm以上2.36mm未満の粒径と上記2.36mm以上4.75mm未満の粒径と上記4.75mm以上13.2mm未満の粒径の合計が100重量部であってもよい。
【0018】
また、一実施形態の舗装用補修材は、上記アスファルト常温合材は、上記骨材100重量部に対し、上記アスファルト1重量部以上3重量部以下を配合してなる。
【0019】
本発明の舗装補修方法は、多孔質の表層を有する多孔質アスファルト舗装の損傷部分を補修する舗装補修方法であって、
上記損傷部分に、ひまし油変性ポリエステルポリオールを含む主剤とポリイソシアネート化合物を含む硬化剤とを混合してなるプライマーを塗布する工程と、
上記プライマーが塗布された損傷部分に、骨材とアスファルトを含んで形成されたアスファルト常温合材と、ひまし油変性ポリエステルポリオールを含む主剤と、ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤とを混合してなる補修材を配置する工程と
を備えることを特徴としている。
【0020】
また、一実施形態の舗装補修方法は、上記損傷部分に配置された補修材の表面と、上記損傷部分の周辺部分の表面に、ひまし油変性ポリエステルポリオールを含む主剤とポリイソシアネート化合物を含む硬化剤とを混合してなるトップコートを塗布する工程を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、舗装用補修材を用いることにより、高い耐久性を有する硬化物が得られると共に、常温で比較的少ない工数で補修作業を行うことができ、補修後に早期に道路を解放できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の舗装用補修材及び舗装用補修方法について詳細に説明する。本発明は、少なくとも表層が多孔質に形成された多孔質アスファルト舗装に適用される。多孔質の表層は、開粒度アスファルトにより作製することができる。
【0023】
本発明の舗装用補修材は、多孔質アスファルト舗装の表層の表面に生じたポットホールや轍等の損傷部分に配置され、硬化することにより、舗装の表面の凹凸を解消するものである。本発明の舗装用補修材は、アスファルト常温合材と、主剤と、硬化剤とを含有する主材料と、硬化促進剤を含む添加材料を混合して形成される。添加材料は、他の任意成分を含んでもよい。
【0024】
本発明の舗装用補修材は、主剤の活性水素化合物と、硬化剤のポリイソシアネート化合物が、アスファルト常温合材中のアスファルトと相溶した状態で反応してウレタン結合を形成し、高い耐久性を有する硬化物を形成するものである。更に、硬化促進剤を添加することにより、硬化時間を短縮することができる。
【0025】
≪主材料≫
[アスファルト常温合材]
本発明の舗装用補修材で用いるアスファルト常温合材は、アスファルトと骨材を含んで形成され、常温で保存及び使用が可能な材料である。アスファルトは、舗装に使用されるものであれば特に限定されない。例えば、原油を蒸留装置にかけ、軽質分を除去して得られる瀝青物質を主成分とするストレートアスファルトや、ストレートアスファルトに所定温度で空気を吹き込んで針入度や軟化点等を改善したセミブローンアスファルトや、カットバックアスファルトや、ポリマー改質アスファルトH型等を使用できる。骨材は、舗装用として使用されるものならば特に限定されるものではないが、砕石、砂、砂利、鉄鋼スラグ等の粒状材料を使用できる。骨材の粒度分布は、0.075mm以上2.36mm未満の粒径が0重量部より多く10重量部未満であり、2.36mm以上4.75mm未満の粒径が90重量部以上100重量部未満であり、かつ、上記0.075mm以上2.36mm未満の粒径と上記2.36mm以上4.75mm未満の粒径の合計が100重量部である。また、アスファルト常温合材の骨材の粒度分布は、0.075mm以上2.36mm未満の粒径が0重量部より多く20重量部未満であり、2.36mm以上4.75mm未満の粒径が0重量部以上30重量部未満であり、4.75mm以上13.2mm未満の粒径が70重量部以上100重量部以下であり、かつ、上記0.075mm以上2.36mm未満の粒径と上記2.36mm以上4.75mm未満の粒径と上記4.75mm以上13.2mm未満の粒径の合計が100重量部であってもよい。このような粒度分布の骨材を用いることにより、補修材の硬化物が透水性を発揮することができる。
【0026】
アスファルト常温合材の配合は、上記骨材100重量部に対し、上記アスファルト1重量部以上3重量部以下である。アスファルトが1重量部未満であると、骨材の結合力が低下して補修材の硬化物の耐摩耗性及び強度が低下する一方、アスファルトが3重量部を超えると、粘性が過大となり補修材の硬化物の強度が低下する。また、アスファルト常温合材は、任意の改質剤を含んでもよい。
【0027】
[主剤]
本発明の舗装用補修材で用いる主剤は、活性水素化合物であるポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリアミドポリオール類、ポリカプロラクトンポリエステルポリオール類、ポリブタジエンポリオール類、ひまし油系ポリオール、低分子量ジオール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール等が例示される。特に、ひまし油系ポリオール、ひまし油変性ポリエステルポリオール、ダイマー酸ひまし油変性アジペートが好ましく、ひまし油変性ポリエステルポリオールが最も好ましい。主剤は、JIS K1557−1(A法)に従って求めた平均分子量が600以上1200以下であるのが好ましい。また、主剤は、官能基数が2以上6以下であるのが好ましい。また、主剤は、ひまし油変性ポリエステルポリオールに、上記活性水素化合物を1種又は2種以上混合したものでもよい。
【0028】
[硬化剤]
本発明の舗装用補修材で用いる硬化剤は、ポリイソシアネート化合物であり、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、65/35−トリレンジイソシアネート、80/20−トリレンジイソシアネート、4,4´ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、その他の芳香族ジイソシアネート類、その他の脂環族ジイソシアネート類等が例示される。これらのポリイソシアネート化合物を1種又は2種以上混合して用いてもよい。特に、これらのうち、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが、耐久性、安全性及びコスト面で好ましい。また、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートに、上記ポリイソシアネート化合物を1種又は2種以上混合して用いてもよい。
【0029】
≪添加材料≫
[硬化促進剤]
硬化促進剤としては、イソシアネート基と活性水素原子との反応を促進する公知のものを使用できる。例えば、オクチル酸錫やジブチル錫ジラウレート等の有機錫系触媒や、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒や、ナフテン酸鉛、酢酸カリウム等のカルボキシレート触媒や、トリエチルホスフェート、ハロゲン化ホスフェート等の有機リン系触媒や、カルボン酸ビスマス、オクタン酸ビスマス等のビスマス系触媒等を用いることができる。硬化促進剤は、例えばジブチル錫ジラウレートを用いた場合、希釈用の有機溶剤100重量部に0.5重量部以上3重量部以下のジブチル錫ジラウレートを混合してなる促進剤希釈物を、主剤と硬化剤の混合物100重量部に対して1重量部以上5重量部以下添加するのが好ましい。ここで希釈用に使用される有機溶剤は、芳香族系ではなく、酢酸エチルなどのエステル系やアセトンなどのケトン系等が好ましい。これは、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系の有機溶剤では、アスファルトが溶解し、多孔質アスファルト舗装に対する接着力の不足や、骨材の結合力の不足による飛散を招く恐れがあるからである。硬化促進剤は、補修作業を行う環境の温度が15℃未満の場合に添加するのが好ましいが、硬化時間を短縮するために、環境温度に関わらず、添加することができる。
【0030】
≪補助材料≫
[プライマー]
本発明の舗装用補修材は、舗装の損傷部分にプライマーを塗布し、このプライマー上に配置されることにより、舗装への付着力を向上することができる。プライマーは、主剤としての活性水素化合物と、硬化剤としてのポリイソシアネート化合物との混合物により形成される。プライマーは、舗装用補修材の主剤及び硬化剤と同じ主剤及び硬化剤を用いて形成してもよい。
【0031】
プライマーの主剤は、活性水素化合物であるポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリアミドポリオール類、ポリカプロラクトンポリエステルポリオール類、ポリブタジエンポリオール類、ひまし油系ポリオール、低分子量ジオール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール等が例示される。特に、ひまし油系ポリオール、ひまし油変性ポリエステルポリオール、ダイマー酸ひまし油変性アジペートが好ましく、ひまし油変性ポリエステルポリオールが最も好ましい。主剤は、JIS K1557−1(A法)に従って求めた平均分子量が600以上1200以下であるのが好ましい。また、主剤は、官能基数が2以上6以下であるのが好ましい。また、主剤は、ひまし油変性ポリエステルポリオールに、上記活性水素化合物を1種又は2種以上混合したものでもよい。
【0032】
プライマーの硬化剤は、ポリイソシアネート化合物であり、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、65/35−トリレンジイソシアネート、80/20−トリレンジイソシアネート、4,4´ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、その他の芳香族ジイソシアネート類、その他の脂環族ジイソシアネート類等が例示される。これらのポリイソシアネート化合物を1種又は2種以上混合して用いてもよい。特に、これらのうち、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが、耐久性、安全性及びコスト面で好ましい。また、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートに、上記ポリイソシアネート化合物を1種又は2種以上混合して用いてもよい。
【0033】
プライマーは、主剤100重量部に、硬化剤30重量部以上100重量部以下を配合して作製する。プライマーは、粘度を500mpa・s以上3000mpa・s以下に調整するのが好ましい。プライマーの粘度が500mpa・s未満であると、舗装の損傷部分に塗布したプライマーが舗装中に浸透してしまい、補修材の舗装への付着力が不十分になりやすい。プライマーの粘度が3000mpa・sを超えると、舗装の損傷部分への塗布が困難になる。
【0034】
プライマーは、主剤及び硬化剤に加えて、補修材と同様の硬化促進剤を添加するのが好ましい。硬化促進剤の具体的な材料及び添加量は、補修材と同じである。
【0035】
[トップコート]
本発明の舗装用補修材は、舗装の損傷部分に配置した後、舗装用補修材の表面及び舗装用補修材の周囲の舗装の表面に、トップコートを塗布することにより、舗装用補修材の骨材飛散の抑制と、舗装用補修材の多孔質アスファルト舗装への付着力の向上を得ることができる。また、舗装用補修材と多孔質アスファルト舗装との境界に段差が生じた場合、この段差を緩和して表面の連続性を得ることができる。トップコートは、主剤としての活性水素化合物と、硬化剤としてのポリイソシアネート化合物との混合物により形成される。トップコートの配合及び粘度は、プライマーと同じでよいが、トップコートの粘度は500mPa・s以上1500mPa・s以下に調整するのが好ましい。トップコートの粘度が500mPa・s未満であると、舗装用補修材の周囲の舗装に勾配が存在する場合に、表面に塗布したトップコートが流れてしまう。また、トップコートの粘度が1500mPa・sを超えると、舗装用補修材の表面に塗布したトップコートが舗装用補修材に浸透しにくくなり、舗装用補修材の骨材飛散の抑制と多孔質アスファルト舗装との付着力の向上を得ることができない。
【0036】
≪補修方法≫
本発明の舗装用補修材を用いて、以下のような方法で舗装を補修することができる。
【0037】
[混合物の作製]
まず、主剤と硬化剤を十分に混合及び撹拌して、混合物を作製する。
【0038】
特に、主剤がひまし油変性ポリエステルポリオール、硬化剤がポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートである場合、硬化剤であるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートのNCOと、主剤であるひまし油変性ポリエステルポリオールのOHの当量比、即ち、NCO/OH当量比は、0.5/1.0〜2.0/1.0の範囲内に設定するのが好ましい。主剤と硬化剤の配合は、主剤100重量部に対し、硬化剤30重量部以上100重量部以下である。硬化剤が30重量部未満では、粘度が高くなり作業性が低下する場合があることに加え、道路の用途において求められる強度が得られにくい。硬化剤が100重量部を超えると、発泡が多くなり硬化物の物性に悪影響を与える場合がある。
【0039】
上記配合の主剤と硬化剤を混合した混合物は、粘度を500mpa・s以上3000mpa・s以下に調整するのが好ましい。混合物の粘度が500mpa・s未満であると、アスファルト常温合材と混合したときに、骨材とアスファルトを分離してしまい、混合物がアスファルトと共に舗装中に浸透する不都合が生じる。一方、混合物の粘度が3000mpa・sを超えると、アスファルト常温合材と混合したときに、混合物とアスファルトの相溶性が低く、硬化物の物性に悪影響を与える場合があり、また、作業性が低下する場合がある。
【0040】
混合物は、補修材の材料に用いるものと、プライマー及びタックコートに用いるものとを同時に作製するのが好ましい。プライマー及びタックコートに用いる混合物は、粘度を500mpa・s以上3000mpa・s以下に調整するのが好ましい。
【0041】
次に、補修作業を行う環境の温度が15℃未満の場合、主剤と硬化剤の混合物に、硬化促進剤を配合する。硬化促進剤の配合は、ジブチル錫ジラウレートを用いた場合、希釈用の有機溶剤100重量部に0.5重量部以上3重量部以下のジブチル錫ジラウレートを混合してなる促進剤希釈物を、主剤と硬化剤の混合物100重量部に対して1重量部以上5重量部以下添加する。硬化促進剤は、補修材の材料に用いる混合物と、プライマー及びトップコートに用いる混合物との両方において、同じものを用いることができる。硬化促進剤を添加した混合物を、更に混合し、撹拌する。なお、硬化促進剤は、主剤に予め添加しておいてもよく、この硬化促進剤を添加した主剤に硬化剤を混合し、撹拌して、混合物を作成してもよい。なお、硬化促進剤は、補修作業を行う環境の温度が15℃以上の場合に混合してもよく、この場合の配合は、発揮すべき硬化速度に応じて適宜設定することができる。
【0042】
[補修材の作製]
続いて、主剤と硬化剤の混合物と、アスファルト常温合材とを混合し、撹拌して補修材を作製する。補修材は、アスファルト常温合材100重量部に対し、主剤と硬化剤の混合物を5重量部以上11重量部以下配合する。主剤と硬化剤の混合物が5重量部を下回ると、補修材の硬化物の耐久性が不十分になる場合があり、主剤と硬化剤の混合物が11重量部を超えると、補修材の骨材と分離して舗装の損傷部分の底に溜まる場合がある。混合物とアスファルト常温合材は、モルタルミキサーやニーダー等で混合及び撹拌する。混合物とアスファルト常温合材との混合及び撹拌は、常温で行うが、補修作業を行う環境の温度が15℃未満の場合は、上述のように、硬化促進剤を配合した混合物を用いる。
【0043】
[プライマー塗布]
舗装の損傷部分へ、主剤と硬化剤の混合物をプライマーとして塗布する。プライマーは、ローラー刷毛や刷毛等を用いて塗布する。プライマーの塗布は、常温で行うが、補修作業を行う環境の温度が15℃未満の場合は、上述のように、硬化促進剤を配合した混合物をプライマーとして用いる。プライマーの塗布量は、0.1kg/m
2以上0.5kg/m
2以下が特に好ましい。
【0044】
[補修材の配置]
上記補修材を、プライマーを塗布した損傷部分に配置する。補修材は、締固めによる見かけの体積の減少を考慮し、表面が舗装の表面と同一になるよりも多く配置する。
【0045】
[締固め]
舗装の損傷部分に配置した補修材を、振動コンパクターやハンドガイドローラー等で締め固める。
【0046】
[道路の解放]
締固められた補修材は硬化が進行し、補修材の主剤と硬化剤の混合物と、アスファルト常温合材とを混合した時から60〜180分で、道路を解放できる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づいて本発明の舗装補修材をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
以下の実施例1〜6と、比較例1〜3について、舗装補修材の試験体を作製し、骨材飛散抵抗性と、動的安定度と、圧縮強度と、曲げ強度について試験を行った。骨材飛散抵抗性は、舗装調査・試験法便覧(公益社団法人日本道路協会発行)B010カンタブロ試験方法に準拠して試験を行った。動的安定度は、舗装調査・試験法便覧(公益社団法人日本道路協会発行)B003ホイールトラッキング試験方法に準拠して試験を行った。圧縮強度は、舗装調査・試験法便覧(公益社団法人日本道路協会発行)[4]−69,CAEの一軸圧縮試験に準拠して試験を行った。曲げ強度は、JIS A 1106コンクリートの曲げ強度試験方法に準拠して試験を行った。また、補修材の作業性と硬化速度について評価を行った。実施例1〜6と、比較例3では、いずれも、粘度100〜200mPa・sのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの硬化剤を用いた。ここで、主剤のひまし油変性ポリエステルポリオールとしては、伊藤製油株式会社製のURICシリーズ、豊国製油株式会社製のHSシリーズ、クラレ株式会社製のPシリーズ、又は、日立化成ポリマー株式会社製のテスラックシリーズを使用可能である。また、硬化剤のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとしては、東ソー株式会社製のミリオネートシリーズ、三井化学株式会社製のコスモネートシリーズ、又は、住化バイエルウレタン株式会社製のスミジュールシリーズを使用可能である。
[実施例1]
官能基数4〜6、平均分子量900〜1200、粘度900〜2500mPa・sのひまし油変性ポリエステルポリオールの主剤と、硬化剤との混合物に、アスファルト常温合材を混合して舗装補修材を作成した。硬化促進剤は配合しない。
[実施例2]
官能基数2〜4、平均分子量600〜1000、粘度600〜700mPa・sのひまし油変性ポリエステルポリオールの主剤と、硬化剤との混合物に、アスファルト常温合材を混合して舗装補修材を作成した。硬化促進剤は配合しない。
[実施例3]
官能基数1〜2、平均分子量800〜1000、粘度200〜300mPa・sのひまし油変性ポリエステルポリオールの主剤と、硬化剤との混合物に、アスファルト常温合材を混合して舗装補修材を作成した。硬化促進剤は配合しない。
[実施例4]
官能基数1〜2、平均分子量300〜500、粘度300〜500mPa・sのひまし油変性ポリエステルポリオールの主剤と、硬化剤との混合物に、アスファルト常温合材を混合して舗装補修材を作成した。硬化促進剤は配合しない。
[実施例5]
実施例1と同じ主剤及び硬化剤を用いて混合物を作製し、更に硬化促進剤を添加したものに、アスファルト常温合材を混合して補修材を作製した。
[実施例6]
実施例2と同じ主剤及び硬化剤を用いて混合物を作製し、更に硬化促進剤を添加したものに、アスファルト常温合材を混合して補修材を作製した。
[比較例1]
1液型ウレタン接着剤と、アスファルト常温合材を混合し、補修材を作製した。
[比較例2]
2液型エポキシ接着剤と、アスファルト常温合材を混合し、補修材を作製した。
[比較例3]
官能基数4〜6、平均分子量900〜1200、粘度900〜2500mPa・sの実施例1と同様のひまし油変性ポリエステルポリオールの主剤と、硬化剤との混合物に、骨材のみを混合して補修材を作成した。骨材は、実施例1〜6及び比較例1,2の常温合材の骨材と同じ粒度分布を有するものを用いた。
実施例1〜6及び比較例1,2のいずれも、アスファルト常温合材は昭和瀝青工業株式会社製のタフストックポーラスを用いた。
主剤、硬化剤及び硬化促進剤の配合と、アスファルト常温合材に対する補修材の混合割合は、表1に示すとおりである。
【0049】
実施例1〜6と、比較例1〜3について、各試験結果及び評価は、表1に示すとおりである。
【表1】
【0050】
表1において、作業性の評価基準は、粘度に起因する混合及び配置作業の困難性の度合を示し、○は容易、×は困難を示す。硬化速度の評価基準は、主剤と硬化剤の混合から道路解放が可能となるまでの時間の長さを示し、Aは1時間未満、Bは1時間以上3時間未満、Cは3時間以上を示す。
【0051】
表1から明らかなように、主剤のひまし油変性ポリエステルポリオールと、硬化剤のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとの混合物と、アスファルト常温合材とを配合してなる舗装用補修材を用いることにより、骨材の飛散抵抗性が高いと共に耐流動性が高くて良好な耐久性を有する硬化物が得られる。また、この舗装用補修材を用いることにより、常温で比較的少ない工数で補修作業を行うことができるので、補修後に早期に道路を解放できる。特に、主剤のひまし油変性ポリエステルポリオールは、官能基数2〜6、水酸基価155〜350、平均分子量600〜1200、粘度600〜2500mPa・sであるのが、耐久性の点で好ましい。
【0052】
以下の実施例7〜9について、主剤と硬化剤の混合物と、アスファルト常温合材との配合割合を複数例設定して補修材を作製し、各々について骨材飛散抵抗性の試験を行うと共に、空隙率を測定した。各実施例の試験体は、カンタブロ試験方法に準拠して作製した。空隙率は、舗装調査・試験法便覧〔第3分冊〕B008−2開粒度アスファルト混合物の密度試験方法に準拠して試験を行った。実施例7〜9は、いずれも、平均分子量900〜1200、粘度900〜2500mPa・sのひまし油変性ポリエステルポリオールの主剤と、粘度100〜200mPa・sのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの硬化剤との混合物に、アスファルト常温合材を混合して舗装補修材を作製した。硬化促進剤は配合しない。なお、主剤は、実施例1と同じものを用いてもよい。実施例7及び8の配合及び試験結果は、表2のとおりである。
【表2】
【0053】
一般的に、多孔質アスファルト舗装において求められる骨材飛散抵抗性は、カンタブロ損失率で20%以下である。また、多孔質アスファルト舗装において求められる空隙率は、透水性を考慮し、20%以上である。ここで、実施例7〜9のカンタブロ損失率の結果に関して回帰分析を行ったところ、相関係数rが0.9763の回帰式y=119.6e
−0.289xが得られた。ここで、yはカンタブロ損失率、xはアスファルト常温合材に対する主剤及び硬化剤の混合物の割合である。この回帰式によれば、カンタブロ損失率が20%に達するのは、アスファルト常温合材に対する主剤及び硬化剤の混合物の割合が6.2%のときである。また、実施例7〜9の空隙率の結果に関して回帰分析を行ったところ、相関係数rが0.9815の回帰式y=33.276e
−0.049xが得られた。ここで、yは空隙率、xはアスファルト常温合材に対する主剤及び硬化剤の混合物の割合である。この回帰式によれば、空隙率が20%に達するのは、アスファルト常温合材に対する主剤及び硬化剤の混合物の割合が10.4%のときである。したがって、適切な骨材飛散抵抗性を有しながら空隙率を確保できるのは、アスファルト常温合材に対する主剤及び硬化剤の混合物の割合が、6.2%以上10.4%以下の場合である。
【0054】
以下の実施例10〜12について、補修材の接着強度に対するプライマーの影響を評価するため、せん断付着強度試験を行った。この試験では、スレート板の表面に補修材を作製し、スレート板に対する補修材のせん断付着強度を測定した。補修材は、カンタブロ試験方法に準拠して作製した。スレート板を固定し、補修材の側面に5mm/minの速度で水平方向に変位を与える載荷を行った。実施例10〜12の補修材は、いずれも、平均分子量900〜1200、粘度900〜2500mPa・sのひまし油変性ポリエステルポリオールの主剤100重量部と、粘度100〜200mPa・sのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの硬化剤90重量部とを混合してなる混合物を、アスファルト常温合材に対して7wt%の割合で混合して作製した。硬化促進剤は配合しない。なお、主剤は、実施例1と同じものを用いてもよい。この補修材を、実施例10では、スレート板に本発明のプライマーを0.2kg/m
2の使用量にて塗布した上に配置した。本発明のプライマーは、官能基数4〜6、平均分子量900〜1200、粘度900〜2500mPa・sのひまし油変性ポリエステルポリオールの主剤100重量部と、粘度100〜200mPa・sのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの硬化剤90重量部とを混合して作製した。実施例11は、スレート板上に、プライマーとしてアスファルト乳剤を0.2kg/m
2の使用量にて塗布した上に、補修材を配置した。アスファルト乳剤は、ニチレキ株式会社製PK−3を用いた。実施例12は、プライマーを塗布することなく、スレート板の表面に補修材を直接設置した。実施例10〜12の試験結果は、表3のとおりである。
【表3】
【0055】
表3に示すように、本発明のプライマーを塗布した実施例10は、水平方向の最大荷重及び最大応力が、アスファルト乳剤のプライマーを塗布した実施例11と、プライマーを塗布しない実施例12のいずれよりも大きいと共に、最大変位が実施例11及び12よりも大きい。したがって、本発明のプライマーは、高い靭性を有し、補修材の接着強度を高めることができる。
【0056】
トップコートによる骨材飛散抵抗性の向上の効果を確認するために、実施例7の補修材を用いて作製した供試体の表面の全体に、0.5kg/m
2のトップコートを塗布したもの(実施例13)と、塗布しないもの(実施例14)について、カンタブロ試験を行った。その結果、表4に示すように、トップコートを塗布していない実施例14と比べて、塗布した実施例13のカンタブロ損失率が1/3程度小さくなり、トップコートが補修材の骨材飛散抵抗性を高めることができることを確認した。
【表4】