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特開2017-147544移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-147544(P2017-147544A)
(43)【公開日】2017年8月24日
(54)【発明の名称】移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 88/02 20090101AFI20170728BHJP
   H04W 24/06 20090101ALI20170728BHJP
   H04B 17/15 20150101ALI20170728BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20170728BHJP
   H04M 1/24 20060101ALI20170728BHJP
【FI】
   H04W88/02 150
   H04W24/06
   H04B17/15
   H04B17/29
   H04M1/24 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-26893(P2016-26893)
(22)【出願日】2016年2月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 真
【テーマコード(参考)】
5K067
5K127
【Fターム(参考)】
5K067AA33
5K067BB04
5K067BB21
5K067DD51
5K067EE02
5K067EE12
5K067FF18
5K067HH22
5K067HH23
5K067LL08
5K127AA05
5K127BA03
5K127BB22
5K127BB33
5K127DA11
5K127HA11
5K127JA04
5K127KA02
5K127NA02
(57)【要約】
【課題】試験対象の移動通信端末に対して準正常系の通信試験を行うことができる移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法を提供する。
【解決手段】移動通信端末試験装置10は、第1の通信条件及びその第1の通信条件を移動通信端末30に設定するタイミングを示す第1のメッセージと、第1の通信条件と異なる第2の通信条件を示す第2のメッセージを生成する実行部11と、移動通信端末30に対して第1のメッセージを送信するとともに、第1のメッセージに示されるタイミングで、第2のメッセージに示される第2の通信条件を自身に設定し、その第2の通信条件に基づいて移動通信端末30との通信を行う処理部12と、第1の通信条件で動作する移動通信端末30と第2の通信条件で動作する処理部12との通信試験の合否を判定する判定部15とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信条件及びその第1の通信条件を移動通信端末(30)に設定するタイミングを示す第1のメッセージと、前記第1の通信条件と異なる第2の通信条件を示す第2のメッセージを生成する実行部(11)と、
前記移動通信端末に対して前記第1のメッセージを送信するとともに、前記第1のメッセージに示される前記タイミングで、前記第2のメッセージに示される前記第2の通信条件を自身に設定し、前記第2の通信条件に基づいて前記移動通信端末との通信を行う処理部(12)と、
前記第1の通信条件で動作する前記移動通信端末と前記第2の通信条件で動作する前記処理部との通信試験の合否を判定する判定部(15)と、
を備えることを特徴とする移動通信端末試験装置。
【請求項2】
前記実行部は、前記移動通信端末及び前記処理部に共通の通信条件に基づいて前記移動通信端末と前記処理部との間で通信が確立されている状態で、前記処理部に前記第1のメッセージ及び前記第2のメッセージを送信することを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項3】
前記タイミングは、前記移動通信端末及び前記処理部に共通の通信条件に基づいて前記移動通信端末と前記処理部との間で通信が確立されている間の所定タイミングであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項4】
第1の通信条件及びその第1の通信条件を移動通信端末(30)に設定するタイミングを示す第1のメッセージと、前記第1の通信条件と異なる第2の通信条件を示す第2のメッセージを実行部(11)により生成する第1のステップと、
前記移動通信端末に対して前記第1のメッセージを送信するとともに、前記第1のメッセージに示される前記タイミングで、前記第2のメッセージに示される前記第2の通信条件を処理部(12)により自身に設定し、前記第2の通信条件に基づいて前記移動通信端末との通信を行う第2のステップと、
前記第1の通信条件で動作する前記移動通信端末と前記第2の通信条件で動作する前記処理部との通信試験の合否を判定部(15)により判定する第3のステップと、
を有することを特徴とする移動通信端末試験方法。
【請求項5】
前記第1のステップと前記第2のステップとの間に、前記移動通信端末及び前記処理部に共通の通信条件に基づいて前記移動通信端末と前記処理部との間で通信が確立されている状態で、前記実行部から前記処理部に前記第1のメッセージ及び前記第2のメッセージを送信する第4のステップを有することを特徴とする請求項4に記載の移動通信端末試験方法。
【請求項6】
前記タイミングは、前記移動通信端末及び前記処理部に共通の通信条件に基づいて前記移動通信端末と前記処理部との間で通信が確立されている間の所定タイミングであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の移動通信端末試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験対象の移動通信端末に対して通信試験を行う移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やモバイル機器などの移動通信端末の開発では、開発中の移動通信端末が通信規格に従って基地局と正常に通信を行うことができるか否かを試験するため、基地局をシミュレートする移動通信端末試験装置が用いられている。移動通信端末試験装置は試験シナリオを予め記憶しており、この試験シナリオには、移動通信端末試験装置の動作シーケンスや通信シーケンスなどが記述されている。このような移動通信端末試験装置は、試験シナリオに基づいて疑似基地局として動作し、試験対象の移動通信端末に対して通信試験を行う。
【0003】
通常の通信試験において、移動通信端末試験装置は、周波数やタイムスロットなどの通信条件及びその通信条件を移動通信端末に設定するタイミングなどを示すメッセージを移動通信端末に送信するとともに、そのメッセージに示されたタイミングでメッセージの通信条件に移動通信端末試験装置の装置パラメータを切り替える。また、移動通信端末は、移動通信端末試験装置からメッセージを受け取り、そのメッセージに示されたタイミング、すなわち前述の装置パラメータが切り替えられるタイミングで、メッセージに示された通信条件に端末パラメータを切り替える。なお、この切り替えが移動通信端末試験装置及び移動通信端末で同時に行われない場合には、移動通信端末試験装置と移動通信端末との間で確立されている通信が途切れることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−63323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の通常の通信試験、すなわち正常系の通信試験では、通信条件(通信に係る設定内容)が移動通信端末試験装置と移動通信端末の両方に共通となるため、移動通信端末試験装置と移動通信端末との間で通信条件は一致することになる。このため、準正常系の通信試験、すなわち通信条件が移動通信端末試験装置と移動通信端末との間で異なる場合の通信試験を行うことができない。準正常系の通信試験とは、通信条件が移動通信端末試験装置と移動通信端末との間で異なる場合に、その違いに対応する動作が正常に行われるか否かを確認する試験である。
【0006】
本発明は上記問題を解決するものであり、試験対象の移動通信端末に対して準正常系の通信試験を行うことができる移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の移動通信端末試験装置は、第1の通信条件及びその第1の通信条件を移動通信端末(30)に設定するタイミングを示す第1のメッセージと、前記第1の通信条件と異なる第2の通信条件を示す第2のメッセージを生成する実行部(11)と、前記移動通信端末に対して前記第1のメッセージを送信するとともに、前記第1のメッセージに示される前記タイミングで、前記第2のメッセージに示される前記第2の通信条件を自身に設定し、前記第2の通信条件に基づいて前記移動通信端末との通信を行う処理部(12)と、前記第1の通信条件で動作する前記移動通信端末と前記第2の通信条件で動作する前記処理部との通信試験の合否を判定する判定部(15)とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の移動通信端末試験装置は、請求項1に記載の移動通信端末試験装置であって、前記実行部は、前記移動通信端末及び前記処理部に共通の通信条件に基づいて前記移動通信端末と前記処理部との間で通信が確立されている状態で、前記処理部に前記第1のメッセージ及び前記第2のメッセージを送信することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の移動通信端末試験装置は、請求項1又は請求項2に記載の移動通信端末試験装置であって、前記タイミングは、前記移動通信端末及び前記処理部に共通の通信条件に基づいて前記移動通信端末と前記処理部との間で通信が確立されている間の所定タイミングであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の移動通信端末試験方法は、第1の通信条件及びその第1の通信条件を移動通信端末(30)に設定するタイミングを示す第1のメッセージと、前記第1の通信条件と異なる第2の通信条件を示す第2のメッセージを実行部(11)により生成する第1のステップと、前記移動通信端末に対して前記第1のメッセージを送信するとともに、前記第1のメッセージに示される前記タイミングで、前記第2のメッセージに示される前記第2の通信条件を処理部(12)により自身に設定し、前記第2の通信条件に基づいて前記移動通信端末との通信を行う第2のステップと、前記第1の通信条件で動作する前記移動通信端末と前記第2の通信条件で動作する前記処理部との通信試験の合否を判定部(15)により判定する第3のステップとを有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の移動通信端末試験方法は、請求項4に記載の移動通信端末試験方法であって、前記第1のステップと前記第2のステップとの間に、前記移動通信端末及び前記処理部に共通の通信条件に基づいて前記移動通信端末と前記処理部との間で通信が確立されている状態で、前記実行部から前記処理部に前記第1のメッセージ及び前記第2のメッセージを送信する第4のステップを有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の移動通信端末試験方法は、請求項4又は請求項5に記載の移動通信端末試験方法であって、前記タイミングは、前記移動通信端末及び前記処理部に共通の通信条件に基づいて前記移動通信端末と前記処理部との間で通信が確立されている間の所定タイミングであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る移動通信端末試験装置又は移動通信端末試験方法によれば、試験対象の移動通信端末に対して準正常系の通信試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の一形態に係る通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の一形態に係る移動通信端末試験装置が行う準正常系の通信試験の流れを示すフローチャートである。
図3】本発明の実施の一形態に係るPacket Timeslot Reconfigureメッセージの各パラメータと、装置用PHY設定及び装置用RLC/MAC設定の各パラメータとの関係を示す図である。
図4】本発明の実施の一形態に係る装置用PHY設定の各パラメータを説明する図である。
図5】本発明の実施の一形態に係る装置用RLC/MAC設定の各パラメータを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(基本構成)
図1に示すように、本発明の実施の一形態に係る通信システム1は、移動通信端末試験装置10と、サーバ20と、移動通信端末30とを備えている。移動通信端末試験装置10は、移動通信端末30を試験するため、疑似基地局として機能する。また、サーバ20は、コンテンツなどのデータを管理し、要求に応じて送受信する。移動通信端末30は、携帯電話機やモバイル機器などの試験対象となる端末である。なお、図1の例では、移動通信端末試験装置10が移動通信端末30を制御し、サーバ20と移動通信端末30との間の通信を確立する。
【0017】
移動通信端末試験装置10は、実行部11と、処理部12と、記憶部13と、二つのタイミング管理部14と、判定部15とを具備している。なお、タイミング管理部14の個数は特に限定されるものではない。
【0018】
実行部11は、試験シナリオ11aを記憶しており、要求に応じて試験シナリオ11aを読み込んで実行するシナリオ実行部として機能する。この実行部11は、読み込んだ試験シナリオ11aを解析し、解析結果の手順(動作シーケンスや通信シーケンス)に従って処理部12を制御する。このとき、実行部11は、試験シナリオ11aに基づいたメッセージ情報を生成し、必要に応じて処理部12に送信する。試験シナリオ11aは、試験に関する各種情報を含んでおり、例えば、移動通信端末試験装置10と移動通信端末30との間でやり取りされる様々な通信手順を定義している。
【0019】
ここで、前述のメッセージ情報は、Packet Timeslot Reconfigureメッセージ(第1のメッセージ)及び装置設定用メッセージ(第2のメッセージ)を含んでいる。Packet Timeslot Reconfigureメッセージは、正常系の通信試験を行う場合、移動通信端末30及び移動通信端末試験装置10の設定に用いられ、準正常系の通信試験を行う場合、移動通信端末30の設定だけに用いられる。このメッセージは、例えば周波数やタイムスロットなどの第1の通信条件及びその第1の通信条件を機器(移動通信端末30や移動通信端末試験装置10)に設定するタイミングを示す情報である。また、装置設定用メッセージは、移動通信端末試験装置10独自のものであり、準正常系の通信試験を行う場合、移動通信端末試験装置10の設定だけに用いられる。このメッセージは、前述の第1の通信条件と異なる第2の通信条件(例えば周波数やタイムスロットなど)を示す情報である。なお、装置設定用メッセージを第1の通信条件と同じ情報とすることで、正常系の通信試験と同等の試験を行うことも可能である。
【0020】
処理部12は、PHY部(Physical Layer:物理層)12a、RLC/MAC部(Radio Link Control Layer:無線リンク制御層/Medium Access Control Layer:媒体アクセス制御層)12b、GRR部(GPRS(General Packet Radio Service) Radio Resource Layer:無線リソース管理層)12c、LLC部(Logical Link Control Layer:論理リンク制御層)12d、SNDCP部(SubNetwork Dependent Convergence Protocol Layer:ネットワーク統合プロトコル制御層)12e、TE部(Terminal Equipment Layer:ターミナルイクイプトメント層)12fとを有している。この処理部12は、所定の通信規格に対応して各レイア(層)の通信プロトコル処理を行うレイア処理部として機能する(詳しくは、後述する)。
【0021】
記憶部13は、GRR部12cに接続されており、実行部11から受けたメッセージ情報を一時的に記憶する。また、記憶部13は、実行部11からのデータ通信の要求に応じ、通信前にGRR部12cがサーバ20から受信したパケットデータを一時的に記憶する。なお、図1の例では、記憶部13がGRR部12cと別構成とされているが、これに限るものではなく、GRR部12c内に含まれていても良い。
【0022】
タイミング管理部14は、PHY部12a及びRLC/MAC部12bに一つずつ接続されており、タイミングを取るためのカウント機能を有している。これにより、タイミング管理部14は、前述の装置設定用メッセージに基づきPHY部12a又はRLC/MAC部12bの各パラメータを設定するときのタイミングを管理する。
【0023】
判定部15は、正常系の通信試験(通常の通信試験)と準正常系の通信試験において、移動通信端末30に対する通信試験の合否を判定する。正常系の通信試験とは、通信条件(通信に係る設定内容)が移動通信端末試験装置10と移動通信端末30との間で同じである場合の通信試験(動作試験)である。一方、準正常系の通信試験とは、通信条件が移動通信端末試験装置10と移動通信端末30との間で異なる場合の通信試験である。例えば、準正常系試験は、通信条件が移動通信端末試験装置10と移動通信端末30との間で異なる場合に、その違いに対応する動作が正常に行われるか否かを確認する試験である。
【0024】
(処理部)
次に、前述の処理部12の各部12a〜12fについて詳しく説明する。なお、各部12a〜12fはそれぞれ層処理部として機能する。
【0025】
PHY部12aは、伝送路上のデータ表現形式及びインタフェース形状を規定する物理層を制御する物理層制御ブロックとして機能する。このPHY部12aでは、無線信号により試験対象の移動通信端末30とパケットデータやメッセージ情報などの通信データのやり取りを行う。このPHY部12aは、通信データを符号化、変調、周波数変換してRF信号を生成して移動通信端末30に送信し、また、移動通信端末30からのRF信号を受信し、周波数変換、復調、復号して通信データを得る送受信部として機能する。
【0026】
RLC/MAC部12bは、移動通信端末30などの通信相手まで確実にさらに効率良くデータを届けるため、例えば、データ分割や結合、再送制御、各通信チャネルの変換など、無線に関わるリンク制御を行う無線リンク/媒体アクセス制御ブロックとして機能する。
【0027】
GRR部12cは、GSM(登録商標)(Global System for Mobile communications)通信方式におけるデータ通信方式であるGPRS方式用の無線リソース割当を行うGPRS用無線リソース管理ブロックとして機能する。このGRR部12cは、試験対象の移動通信端末30又は実行部11からのパケットデータ通信の要求があると、記憶部13に記憶されたメッセージ情報に応じて通信を行うために無線リソース割当て処理を行う。
【0028】
なお、GRR部12cは、メッセージ登録処理機能、受信メッセージ識別処理機能、メッセージ送信処理機能、パケット状態管理処理機能、パケットデータ保存処理機能を有している。メッセージ登録処理機能は、実行部11から受けたメッセージ情報を記憶部13に一時的に保存する。受信メッセージ識別処理機能は、受信したメッセージ情報を解析して識別する。メッセージ送信処理機能は、受信メッセージ識別処理機能によるメッセージ識別結果に応じてメッセージを送信する。パケット状態管理処理機能は、パケット状態の管理を行う。パケットデータ保存処理機能は、パケット通信開始前に受信したパケットデータを記憶部13に一時的に保存する。
【0029】
LLC部12dは、パケットデータ送受信時のパケット通信路を確立するためのリンク制御を行う論理リンク制御ブロックとして機能する。
【0030】
SNDCP部12eは、パケットデータ通信に係るプロトコルの整合をネットワークと装置との間で制御するネットワーク統合プロトコル制御ブロックとして機能する。
【0031】
TE部12fは、例えば、サーバ20などの外部接続機器とのインタフェースとして機能する。
【0032】
なお、前述のような構成の移動通信端末試験装置10は、ハードウェアのみで実現されても良いし、または、ハードウェア及びソフトウェアの両方で実現されても良い。後者の場合には、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアと、記憶デバイスに記憶されたソフトウェアとの協働により、移動通信端末試験装置10の各機能ブロックを実現することが可能である。
【0033】
(準正常試験の流れ)
次に、前述の移動通信端末試験装置10が行う通信試験処理、すなわち準正常系の通信試験の流れについて図2を参照して説明する。
【0034】
図2に示すように、ステップS1において、準正常系の通信試験前、移動通信端末試験装置10と移動通信端末30との間で周波数が800kHzであるデータ通信が確立されている。準正常系の通信前には、移動通信端末試験装置10、すなわち処理部12と移動通信端末30との互いの周波数が同じであり、データ通信が可能な状態になっている。
【0035】
ステップS2において、実行部11は、試験シナリオ11aに基づくメッセージ情報をGRR部12cに送信する。このメッセージ情報は、Packet Timeslot Reconfigureメッセージ(第1のメッセージ)及び装置設定用メッセージ(第2のメッセージ)を含んでいる。
【0036】
Packet Timeslot Reconfigureメッセージは、RLC/MAC Controlメッセージの一つである。このPacket Timeslot Reconfigureメッセージは、複数のパラメータを含んでおり、一例として、パラメータの一種類であるAbsolute Frame Number Encodingで切り替えタイミングをFrame Number(FN)=1000に設定し、パラメータの一種類であるARFCNにより周波数を900MHzに設定するように定められている。この900MHzの周波数はあくまでも一例であり、前述の800MHzのままでも良い。また、装置設定用メッセージも、複数のパラメータを含んでおり、一例として、パラメータの一種類であるFrequencyにより周波数を1000MHzに設定するように定められている。なお、メッセージの各種のパラメータの説明については後述する。
【0037】
ここで、通信試験が正常系の通信試験である場合には、メッセージ情報は、Packet Timeslot Reconfigureメッセージのみを含んでいる。この場合、Packet Timeslot Reconfigureメッセージは、移動通信端末30の設定、PHY部12aの設定及びRLC/MAC部12bの設定に用いられる。このため、正常系の通信試験では、メッセージに示される通信条件が移動通信端末試験装置10及び移動通信端末30で共通に用いられるため、移動通信端末試験装置10と移動通信端末30との間で通信条件は同じになる。
【0038】
ステップS3において、GRR部12cは、実行部11から送信されたメッセージ情報を受信し、その受信したメッセージ情報を解析して、Packet Timeslot Reconfigureメッセージ及び装置設定用メッセージを分類する。このとき、装置設定用メッセージにおいては、PHY部12aの設定用データとRLC/MAC部12bの設定用データも分類する。
【0039】
ステップS4において、GRR部12cは、Packet Timeslot Reconfigureメッセージ(例えば、周波数900MHz、切り替えFN=1000)を、RLC/MAC部12b及びPHY部12aを介して、移動通信端末30に送信する。このとき、GRR部12cは、Packet Timeslot Reconfigureメッセージから切り替えタイミング(FN=1000)を取り出して把握する。
【0040】
ステップS5において、GRR部12cは、把握した切り替えタイミング(FN=1000)と一緒に、RLC/MAC部12bの設定用データをRLC/MAC部12bに送信する。
【0041】
ステップS6において、GRR部12cは、把握した切り替えタイミング(FN=1000)と一緒に、PHY部12aの設定用データ(例えば、周波数1000MHz)を、RLC/MAC部12bを介してPHY部12aに送信する。
【0042】
ステップS7において、RLC/MAC部12bは、タイミング管理部14によるカウント数が1000(FN=1000)になったか否かを判断し、カウント数が1000になった場合に切り替えタイミングの到来を検出する。
【0043】
ステップS8において、RLC/MAC部12bは、切り替えタイミングの到来に応じ、RLC/MAC部12bの設定用データに基づき、RLC/MAC部12bに関する装置パラメータを変更して設定する。これにより、装置設定用メッセージに基づいたRLC/MAC部12bの設定用データが装置パラメータに反映される。
【0044】
同様に、ステップS9において、PHY部12aは、タイミング管理部14によるカウント数が1000(FN=1000)になったか否かを判断し、カウント数が1000になった場合に切り替えタイミングの到来を検出する。
【0045】
ステップS10において、PHY部12aは、切り替えタイミングの到来に応じて、PHY部12aの設定用データに基づき、PHY部12aに関する装置パラメータを変更し、例えば周波数を1000MHzに設定する。これにより、装置設定用メッセージに基づいたPHY部12aの設定用データが装置パラメータに反映される。
【0046】
同様に、ステップS11において、移動通信端末30は、タイミング管理処理によるカウント数が1000(FN=1000)になったか否かを判断し、カウント数が1000になった場合に切り替えタイミングの到来を検出する。
【0047】
ステップS12において、移動通信端末30は、切り替えタイミングの到来に応じて、Packet Timeslot Reconfigureメッセージの設定用データに基づき、移動通信端末30に関する端末パラメータを変更し、例えば周波数を900MHzに設定する。これにより、Packet Timeslot Reconfigureメッセージに基づいた設定用データが端末パラメータに反映される。
【0048】
このように、RLC/MAC部12bに関する装置パラメータの設定、PHY部12aに関する装置パラメータの設定、及び、移動通信端末30に関する端末パラメータの設定は同じタイミングで行われ、同期することになる。なお、前述の切り替えタイミングは、移動通信端末試験装置10及び移動通信端末30の通信中、すなわち処理部12及び移動通信端末30の互いの通信が確立されている間の所定タイミングである。
【0049】
最後に、ステップS13において、判定部15は、PHY部12aが切り替えタイミングから所定時間内に移動通信端末30から信号を受信するか否かを判断し、通信の切断の有無を検出することによって準正常系の通信試験の合否を判定する。
【0050】
判定部15は、PHY部12aが切り替えタイミングから所定時間内に移動通信端末30から信号を受信しなかったと判断した場合、通信が切断されたことを検出し、通信試験の合格を判定する。一方、PHY部12aが切り替えタイミングから所定時間内に移動通信端末30から信号を受信したと判断した場合には、通信が切断されていないことを検出し、通信試験の不合格を判定する。この準正常系の通信試験の一例では、通信が切断されれば、通信試験は合格であり、通信が切断されなければ、不合格である。移動通信端末試験装置10及び移動通信端末30の互いの通信周波数が異なると、データ通信が不可能な状態になるため、通信が途切れることが正常の動作となる。
【0051】
このような準正常系の通信試験処理によれば、移動通信端末試験装置10と移動通信端末30との通信中、すなわち互いの通信が確立されている状態において、移動通信端末試験装置10と移動通信端末30との間で、通信条件を同時に設定して不一致にすることが可能となる。これにより、通信条件が移動通信端末試験装置10と移動通信端末30との間で異なる場合、その違いに対応する動作が正常に行われるか否かを確認する準正常系の通信試験を行うことができる。
【0052】
(メッセージの各パラメータと装置用設定の各パラメータとの関係)
次に、Packet Timeslot Reconfigureメッセージの各パラメータ(端末パラメータ)と、装置用PHY設定及び装置用RLC/MAC設定の各パラメータ(装置パラメータ)との関係について図3から図5を参照して説明する。
【0053】
図3には、Packet Timeslot Reconfigureメッセージの各パラメータと、装置用PHY設定及び装置用RLC/MAC設定の各パラメータとの関係が示されている。また、図4には、装置用PHY設定の各パラメータの説明が示されており、図5には、装置用RLC/MAC設定の各パラメータの説明が示されている。
【0054】
図3では、斜線により塗りつぶされている第1の部分及びドットにより塗りつぶされている第2の部分は、Packet Timeslot Reconfigureメッセージの各パラメータと、装置用PHY設定及び装置用RLC/MAC設定の各パラメータにおいて、関連性を有するパラメータを示す。第1の部分は周波数などに関連するパラメータを示し、第2の部分は装置用PHY設定と装置用RLC/MAC設定の両方に関連するTimeslot関連パラメータを示す。一方、塗りつぶされていない部分は、関連性を有さないパラメータを示す。
【0055】
また、図3中の黒丸は、Packet Timeslot Reconfigureメッセージの各パラメータと、装置用PHY設定及び装置用RLC/MAC設定の各パラメータにおいて、不一致にする(準正常系の通信試験を行う)ことができるパラメータを示す。例えば、Packet Timeslot Reconfigureメッセージの「DOWNLINK_TIMESLOT_ALLOCATION」の欄を確認すると、装置用PHY設定の「Timeslot」及び装置用RLC/MAC設定の「SLOT_VALUE」に黒丸があるため、「DOWNLINK_TIMESLOT_ALLOCATION」と、「Timeslot」及び「SLOT_VALUE」との各数値を不一致にすることができる。このようなパラメータを用いて、移動通信端末試験装置10と移動通信端末30との間で、通信条件を不一致にすることができる。
【0056】
(切り替えタイミングの設定方法)
次いで、前述の切り替えタイミングの設定方法について説明する。(1)切り替えタイミングの設定方法が指定されていない場合、(2)切り替えタイミングの設定方法が相対値による設定方法に指定されている場合、(3)切り替えタイミングの設定方法が絶対値による設定方法に指定されている場合、切り替えタイミングは以下のようになる。
【0057】
(1)切り替えタイミングの設定方法が指定されない場合、切り替えタイミングは、Packet Timeslot Reconfigureメッセージが送信されるタイミングから、規格で決められた時間が経過後に設定を切り替えるタイミングである。
【0058】
(2)切り替えタイミングの設定方法が相対値による設定方法に指定されている場合、切り替えタイミングは、Packet Timeslot Reconfigureメッセージが送信されるタイミングから、Packet Timeslot Reconfigureメッセージ内のRelative Frame Number Encoding(図3参照)で設定された時間が経過後に設定を切り替えるタイミングである。
【0059】
(3)切り替えタイミングの設定方法が絶対値による設定方法に指定されている場合、切り替えタイミングは、Packet Timeslot Reconfigureメッセージ内のAbsolute Frame Number Encoding(図3参照)で設定された時間で設定を切り替えるタイミングである。
【0060】
なお、移動通信端末試験装置10の内部のタイミング管理は絶対値で行われているため、前述の(1)、(2)の場合には、メッセージ送信タイミングから切り替えタイミングの絶対値を計算する。一方、前述の(3)の場合には、絶対値をそのまま利用することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の通信条件及びその第1の通信条件を移動通信端末30に設定するタイミングを示す第1のメッセージ(Packet Timeslot Reconfigureメッセージ)と、第1の通信条件と異なる第2の通信条件を示す第2のメッセージ(装置設定用メッセージ)が実行部11により生成される。そして、移動通信端末30に対して第1のメッセージが送信されるとともに、その第1のメッセージに示されるタイミングで、第2のメッセージに示される第2の通信条件が処理部12により自身に設定され、その第2の通信条件に基づいて移動通信端末30との通信が行われる。第1の通信条件で動作する移動通信端末30と第2の通信条件で動作する処理部12との通信試験の合否が判定部15により判定される。このようにして、移動通信端末試験装置10と移動通信端末30との間で、通信条件を同時に設定して不一致にすることが可能となるので、通信条件が移動通信端末試験装置10と移動通信端末30との間で異なる場合に、その違いに対応する動作が正常に行われるか否かを確認する準正常系の通信試験を行うことができる。
【0062】
なお、本発明は、前述の実施形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、前述の実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 通信システム
10 移動通信端末試験装置
11 実行部
11a 試験シナリオ
12 処理部
12a PHY部
12b RLC/MAC部
12c GRR部
12d LLC部
12e SNDCP部
12f TE部
13 記憶部
14 タイミング管理部
15 判定部
20 サーバ
30 移動通信端末
図1
図2
図3
図4
図5