特開2017-14770(P2017-14770A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017014770-膜材用の緊張装置 図000003
  • 特開2017014770-膜材用の緊張装置 図000004
  • 特開2017014770-膜材用の緊張装置 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-14770(P2017-14770A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】膜材用の緊張装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/64 20060101AFI20161222BHJP
   E04H 15/54 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
   E04H15/64
   E04H15/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-131004(P2015-131004)
(22)【出願日】2015年6月30日
(71)【出願人】
【識別番号】515179358
【氏名又は名称】衛藤 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 武志
【テーマコード(参考)】
2E141
【Fターム(参考)】
2E141EE04
2E141EE31
2E141EE33
2E141HH01
(57)【要約】
【課題】膜材における緊張方向の端部に対し均等に緊張力を導入することの可能な、できるだけ簡単な構造の緊張装置を提案する。
【解決手段】当課題に対して提案する緊張装置は、互いに平行に配置した2本を1組として使用する把持棒2,3を少なくとも2組含み、該把持棒2,3により、膜材Mにおける緊張方向の端部をそれぞれ巻き込んで把持し、これら膜材端部を把持した2組の把持棒2,3をそれぞれ緊張方向へ引っ張ることで緊張力を膜材Mへ導入する仕組みとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置した2本を1組として使用する把持棒を少なくとも2組含み、
該2組の把持棒により、膜材における緊張方向の端部をそれぞれ巻き込んで把持し、これら膜材端部を把持した2組の把持棒をそれぞれ緊張方向へ引っ張ることで緊張力を前記膜材へ導入する、緊張装置。
【請求項2】
前記膜材の各端部は、互いに平行に配置された2本の前記把持棒のうちの前記緊張方向において外側に位置する外側把持棒の外方を通って方向転換した後、当該2本の把持棒のうちの前記緊張方向において内側に位置する内側把持棒に巻回されてから、当該2本の把持棒の間を通過し、この後に前記外側把持棒に巻回される、請求項1に記載の緊張装置。
【請求項3】
前記各把持棒は、前記緊張方向と交差する方向においてその両端部が前記膜材から突出する長さをもち、
この把持棒の突出した両端部に係合して前記緊張方向へ前記把持棒を引っ張る緊張力付与具をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の緊張装置。
【請求項4】
前記緊張力付与具は、前記把持棒の突出した端部を挿入する開口を備えた2つの係合板部材と、これら係合板部材を連結する連結部材と、から構成されている、請求項3に記載の緊張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
膜材を緊張させるための緊張装置に関する技術を以下に開示する。
【背景技術】
【0002】
建造物の屋根等の建築材料としての膜材、テントや農業用ハウス等に使用される膜材、工事現場や最終処分場などで使用される膜材など、一般的に膜材を使用する場合、当該膜材を緊張させて設置する必要がある。また、織物からなる膜材の製造工程には、加工等で膜材の緊張を必要とする過程が含まれ得る。このような膜材を緊張させるための装置としては、特許文献1〜6に開示されるような把持具を用いる緊張装置が主流である。すなわち、膜材端部のループに挿入してある芯材(ロープ、鋼棒等)を多数のクリップ型把持具で挟持し引っ張ることにより膜材を緊張させる緊張装置である。
【0003】
長方形の織物からなる膜材を、その長辺と平行な方向(長辺方向)に緊張させる場合を例にとると、上記緊張装置では、膜材の長辺方向(すなわち緊張方向)の端部(この場合は短辺)を把持した複数の把持具のそれぞれから緊張力が導入されるため、該膜材端部において緊張力導入部位が飛び飛びに分散することになり、長辺方向に延伸している膜材の各繊維に対し均等に緊張力を導入することができない。緊張力が不均等に導入されていると、膜材の経時劣化が早まる、加工が不均一になる、といった不具合が生じる。また、専用の把持具を多数要するので、作業に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−061343号公報
【特許文献2】実開昭63−140459号公報
【特許文献3】特開平06−346636号公報
【特許文献4】実開平07−035645号公報
【特許文献5】特開平07−229328号公報
【特許文献6】特開2000−017897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の背景に鑑みると、膜材における緊張方向の端部に対し均等に緊張力を導入することの可能な、できるだけ簡単な構造の緊張装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当課題に対して提案する緊張装置は、
互いに平行に配置した2本を1組として使用する把持棒を少なくとも2組含み、
該2組の把持棒により、膜材における緊張方向の端部をそれぞれ巻き込んで把持し、これら膜材端部を把持した2組の把持棒をそれぞれ緊張方向へ引っ張ることで緊張力を前記膜材へ導入する仕組みとする。
本提案に係る緊張装置の一態様において、前記膜材の各端部は、互いに平行に配置された2本の前記把持棒のうちの前記緊張方向において外側に位置する外側把持棒の外方を通って方向転換した後、当該2本の把持棒のうちの前記緊張方向において内側に位置する内側把持棒に巻回されてから、当該2本の把持棒の間を通過し、この後に前記外側把持棒に巻回される方式で、当該2本の把持棒に把持される。
本提案に係る緊張装置の別の態様において、前記各把持棒は、前記緊張方向と交差する方向においてその両端部が前記膜材から突出する長さをもつ。この態様の緊張装置は、前記把持棒の突出した両端部に係合して前記緊張方向へ前記把持棒を引っ張る緊張力付与具をさらに含む。一態様において、このような緊張力付与具は、前記把持棒の突出した端部を挿入する開口を備えた2つの係合板部材と、これら係合板部材を連結する連結部材と、から構成される。
【発明の効果】
【0007】
上記提案に係る緊張装置は、互いに平行に配置した2本の把持棒で膜材の端部を巻き込んで把持するようにした構造を採用してあり、膜材を緊張させる作用に伴って同時に把持棒どうしも互いに押圧され、この押圧によって膜材の把持に十分な摩擦力が生成される。すなわち、膜材の端部にそれぞれ2本の把持棒を配置する簡単な構造で確実に膜材を緊張させ、そしてその緊張を維持することが可能である。そして、緊張方向と交差する方向へ延伸した把持棒を通して緊張力が膜材へ導入されるので、膜材の端部に対し均等に緊張力を導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】緊張装置の実施形態を示した平面図。
図2図1中の矢示X方向からみた拡大端面図。
図3】緊張装置に含まれる緊張力付与具の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図3に基づいて、緊張装置の実施形態を説明する。
膜材Mは、長辺と平行な方向(長辺方向)の経糸とこれに交差する方向(短辺方向)の緯糸から織られた長方形の織物である。本実施形態において、緊張方向は、経糸が延伸する長辺方向に一致する。経糸、緯糸とも、モノフィラメント又はマルチフィラメントの繊維束からなる長繊維又は短繊維である。
【0010】
この膜材Mを緊張させるための緊張装置1は、互いに平行に配置した2本の把持棒2,3を1組として、膜材Mの緊張方向の端部をそれぞれ巻き込んで把持した構造を有する。把持棒2,3はいずれも、中実の円柱鋼材又は中空の円筒鋼材である。重さを考慮すれば、円筒鋼材を使用するのが適している。両端にある2組の把持棒2,3がそれぞれ緊張力付与具4によって互いに反対方向へ引っ張られることで、膜材Mに緊張力が付与される。
【0011】
膜材Mの緊張方向における両端部は、それぞれ2本の把持棒2,3によって、図2に示すように把持される。図2には、図1中の矢示X方向からみて拡大した端面図を示してある(緊張力付与具4は透視して示す)。膜材Mの端部は、まず、2本の把持棒2,3のうちの緊張方向において外側に位置する外側把持棒2の外方を通って180°方向転換(M1)した後、当該2本の把持棒2,3のうちの緊張方向において内側に位置する内側把持棒3に巻回(M2)される。続いて当該2本の把持棒2,3の間を通過(M3)し、そして、外側把持棒3に巻回(M4)される。
【0012】
このように膜材Mの端部を巻き込んで把持する把持棒2,3は、いずれも、緊張方向と交差する方向(本実施形態では短辺方向)においてその両端部が膜材Mの長辺から突出する、軸方向の長さLをもつ。つまり、各把持棒2,3の軸方向長さLは、膜材Mの短辺長MLよりも長い。緊張力付与具4は、その把持棒2,3の突出した両端部に係合して緊張方向へ把持棒2,3を引っ張る。このために緊張力付与具4は、図3に示すように、把持棒2,3の突出した端部を挿入する開口5を備えた2つの係合板部材6,6と、これら係合板部材6,6を連結する連結部材7と、から構成される。本実施形態の場合、係合板部材6,6及び連結部材7は、1枚の帯状鋼板の両端を同方向へ折り曲げてコ字状断面にすることで一体的に形成されている。開口5は、2本の把持棒2,3を横並びにして挿入できる矩形、すなわち、把持棒直径の2倍に相応する長辺長及び把持棒直径に相当する短辺長をもった長方形である。連結部材7には、図示はしないが、緊張力を加えるべく緊張力付与具4を引っ張るためのフック、ボルト等の手段が設けられる。
【0013】
開口5に2本の把持棒2,3の端部を挿入して係合させた緊張力付与具4を緊張方向へ引っ張って緊張力を加えると、外側把持棒2が膜材Mの方向転換部位M1から反力を受けるので、2本の把持棒2,3は互いに押圧されることになる。把持棒2,3どうしが押圧されることで、巻き込まれている膜材Mの端部M2,M3,M4が十分な摩擦力をもって把持される。したがって、緊張力付与具4から緊張力を膜材Mへ導入すると共にこの緊張力による緊張を維持することができる。また、各端部で2本組み合わせて剛体とした把持棒2,3を通して緊張力を作用させているので、把持棒2,3の撓みが少なく、このようにして緊張方向と交差する方向へ延伸した把持棒2,3を通して緊張力が膜材Mへ導入されるので、膜材Mの端部に対し均等に、すなわち緊張方向の繊維(本実施形態で経糸)に対して均等に、緊張力を導入することができる。さらに、本実施形態のような緊張装置1であれば、膜材Mの端部にループをつくって芯材を入れる加工を行う必要もない。
【符号の説明】
【0014】
1 緊張装置
2 把持棒(外側)
3 把持棒(内側)
4 緊張力付与具
5 開口
6 係合板部材
7 連結部材
図1
図2
図3