(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-148113(P2017-148113A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】医療器材作業支援システム、医療器材作業支援方法および医療器材作業支援プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 50/36 20160101AFI20170804BHJP
A61B 90/70 20160101ALI20170804BHJP
G06Q 10/00 20120101ALI20170804BHJP
A61L 2/24 20060101ALI20170804BHJP
【FI】
A61B50/36
A61B90/70
G06Q10/00 300
A61L2/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-30899(P2016-30899)
(22)【出願日】2016年2月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】花島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 健至
(72)【発明者】
【氏名】小久保 貴章
(72)【発明者】
【氏名】石野 直巳
【テーマコード(参考)】
4C058
5L049
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058AA14
4C058AA15
4C058AA16
4C058BB01
4C058CC06
4C058DD14
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】ユーザーの作業負担を軽減することができる医療器材作業支援システム、医療器材作業支援方法および医療器材作業支援プログラムを提供する。
【解決手段】医療器材作業支援システムは、表示部と、医療器材を用いる手術に向けて実施される工程である作業工程における医療器材に対する作業手順を示すデータを記憶する記憶部10と、当該記憶部10に記憶された上記データによる作業手順を表示部12に表示させる表示制御部11と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器材の作業工程における前記医療器材に対する作業を支援する医療器材作業支援システムであって、
前記作業工程は前記医療器材を用いる手術に向けて実施される工程であって、前記手術に向けて実施される工程は、少なくとも前記医療器材を手術後に回収する工程、手術後の前記医療器材を洗浄する工程、洗浄後の前記医療器材を組み立てる工程、組立後の前記医療器材に対して減菌処理を行う工程、および減菌処理後の前記医療器材を保管する工程のうち少なくとも一つの工程を含み、
表示部と、
前記作業工程における前記医療器材に対する作業手順を示すデータを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記データによる前記作業手順を前記表示部に表示させる表示制御部と、を備えた、医療器材作業支援システム。
【請求項2】
前記記憶部は、前記作業手順を示す動画データを記憶し、
前記表示制御部は、前記動画データによる動画を前記表示部に表示させるように構成されている、請求項1に記載の医療器材作業支援システム。
【請求項3】
前記医療器材は、少なくとも第1部材と、前記第1部材に対して位置決めされる第2部材とを含み、
前記作業手順は、前記第1部材に対する前記第2部材の位置決めの作業流れを示す位置決め手順であり、
前記表示制御部は、前記動画データによる前記位置決め手順を前記表示部に表示させるように構成されている、請求項2に記載の医療器材作業支援システム。
【請求項4】
前記医療器材は、操作子と、前記操作子による操作に連動して動作を行う作動部を有する第3部材とを含み、
前記作業手順は、前記作動部を前記操作子により作動させる作動手順であり、
前記表示制御部は、前記動画データによる前記作動手順を前記表示部に表示させるように構成されている、請求項2に記載の医療器材作業支援システム。
【請求項5】
前記動画データは、イラストレーションにより作成されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の医療器材作業支援システム。
【請求項6】
前記記憶部は、前記作業手順を示すイラストレーションの静止画データを記憶し、
前記表示制御部は、前記静止画データによる静止画を前記表示部に表示させるように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療器材作業支援システム。
【請求項7】
前記静止画には前記医療器材の断面図が含まれている、請求項6に記載の医療器材作業支援システム。
【請求項8】
前記静止画には前記医療器材の拡大図が含まれている、請求項6または7に記載の医療器材作業支援システム。
【請求項9】
医療器材の作業工程における前記医療器材に対する作業を支援する医療器材作業支援方法であって、
前記作業工程は前記医療器材を用いる手術に向けて実施される工程であって、前記手術に向けて実施される工程は、少なくとも前記医療器材を手術後に回収する工程、手術後の前記医療器材を洗浄する工程、洗浄後の前記医療器材を組み立てる工程、組立後の前記医療器材に対して減菌処理を行う工程、および減菌処理後の前記医療器材を保管する工程のうち少なくとも一つの工程を含み、
前記作業工程における前記医療器材に対する作業手順を示すデータを記憶するステップと、
前記記憶部に記憶された前記データによる前記作業手順を表示部に表示させるステップと、を備えた、医療器材作業支援方法。
【請求項10】
医療器材の作業工程における前記医療器材に対する作業を支援する医療器材作業支援プログラムであって、
前記作業工程は前記医療器材を用いる手術に向けて実施される工程であって、前記手術に向けて実施される工程は、少なくとも前記医療器材を手術後に回収する工程、手術後の前記医療器材を洗浄する工程、洗浄後の前記医療器材を組み立てる工程、組立後の前記医療器材に対して減菌処理を行う工程、および減菌処理後の前記医療器材を保管する工程のうち少なくとも一つの工程を含み、
前記作業工程における前記医療器材に対する作業手順を示すデータを記憶する処理と、
前記記憶された前記データによる前記作業手順を表示部に表示させる処理と、をコンピュータに実行させるための医療器材作業支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器材に対する作業を支援する医療器材作業支援システム、医療器材作業支援方法および医療器材作業支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、手術用器具等の在庫管理や殺菌処理の管理を行う管理システムが用いられている。例えば特許文献1には、再使用可能な手術用器具の在庫管理を行う管理システムが開示されている。この管理システムでは、再使用可能な手術用器具に識別標識を付与し、当該識別標識に基づいてデータベースを作成する。そして、それらの手術用器具の使用回数をカウントし、カウントした使用回数が耐用回数を超えた手術用器具の破棄や補充を行う。
【0003】
また、例えば特許文献2には、使用済みの内視鏡等の手術用器具、つまり術後に殺菌を必要とする殺菌対象物が未洗浄や未殺菌の場合に当該殺菌対象物の使用を禁止する殺菌管理システムが開示されている。この管理システムでは、通信可能でデータ書き換え可能なICタグが設けられた内視鏡を管理する。例えば内視鏡洗浄装置により内視鏡の洗浄が済んだ際には、当該内視鏡のICタグに洗浄済みを示す情報および洗浄日時を示す情報が書き込まれる。そして、内視鏡を使用する際に、ICタグリーダーによって内視鏡のICタグに記憶された情報が読み取られる。このとき、読み取られた情報に基づいて未洗浄であると判断されると、内視鏡の使用を禁止する旨がモニタに表示される。このような方法によって、未洗浄の内視鏡が手術において使用されることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−237586号公報
【特許文献2】特開2008−54732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、手術用器具等の医療器材に対する作業として、当該医療器材を各パーツに分解した状態での洗浄、洗浄後の組み立ておよび組み立て後の減菌処理などがある。ユーザーは、作業説明書の説明文や写真を確認しつつ作業を遂行していた。しかしながら、従来の作業説明書では作業手順の途中の内容が省略されていたり、作業で注意すべき点が分かり難かった。そのため、作業内容の理解に長い時間を要することがあり、ユーザーに著しく負担が掛かっていた。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザーの作業負担を軽減することができる医療器材作業支援システム、医療器材作業支援方法および医療器材作業支援プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る医療器材作業支援システムは、医療器材の作業工程における前記医療器材に対する作業を支援する医療器材作業支援システムであって、前記作業工程は前記医療器材を用いる手術に向けて実施される工程であって、前記手術に向けて実施される工程は、少なくとも前記医療器材を手術後に回収する工程、手術後の前記医療器材を洗浄する工程、洗浄後の前記医療器材を組み立てる工程、組立後の前記医療器材に対して減菌処理を行う工程、および減菌処理後の前記医療器材を保管する工程のうち少なくとも一つの工程を含み、表示部と、前記作業工程における前記医療器材に対する作業手順を示すデータを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記データによる前記作業手順を前記表示部に表示させる表示制御部と、を備えている。上記の作業手順には、医療器材に触れて遂行する作業のみならず、当該医療器材に触れないで遂行する作業(例えば確認作業)も包含される。
【0008】
本発明に係る医療器材作業支援システムによれば、手術に向けて実施される作業工程における作業手順の内容が表示部に表示される。これにより、ユーザーは、上記作業工程において遂行すべき作業内容を順に把握することができる。このように、本発明によれば、従来のように作業手順の内容が一部省略されていたり、これに起因して作業で注意すべき点が分かり難くなるようなことがない。例えば、医療器材の第1パーツを第2パーツに挿入して位置決めするといった作業を遂行する場合、従来の作業説明書では第1パーツのどの部分を第2パーツのどの部分に挿入すべきかが把握し難いことがあった。これに対して、本発明では例えば第1パーツの所定部分を第2パーツの所定箇所に挿入するための一連の作業手順、すなわち挿入前から挿入後に至る作業手順が表示される。これにより、ユーザーが作業内容の理解に長い時間を要するようなことがなくなる。このことによって、ユーザーの作業負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザーの作業負担を軽減することが可能な医療器材作業支援システム、医療器材作業支援方法および医療器材作業支援プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医療器材作業支援システムを示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る医療器材作業支援システムが用いられる医療作業工程の説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るユーザー端末の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るユーザー端末のタッチパネルを示す図である。
【
図5】(a)、(b)は本発明の一実施形態に係るユーザー端末に表示される医療器材の作動手順の動画の断片画像を示す図である。
【
図7】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係るユーザー端末に表示されるハンドピースにおけるピンの挿通手順の動画の断片画像を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るユーザー端末に表示される医療器材の動画の断片画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る医療器材作業支援システム1について説明する。
図1に示すように、医療器材作業支援システム1は、複数のユーザー端末2と、アンテナ3と、サーバー4とを備えている。複数のユーザー端末2のうち一のユーザー端末2は、管理者によって使用される。
図1においては、3つのユーザー端末2が設けられているが、医療器材作業支援システム1におけるユーザー端末2の数は、1つでも2つでもよく、4つ以上でもよい。ユーザー端末2は、アンテナ3に対して無線により情報を送受信することのできる例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、またはタブレット端末等である。本実施形態では、ユーザー端末2として、ユーザーが持ち運びし易くかつ表示が見易いタブレット端末を好適に用いることができる。以下では、ユーザー端末2がタブレット端末である場合を例に説明する。なお、ユーザー端末2はアンテナ3と有線により通信を行ってもよい。アンテナ3は、例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)によりサーバー4に接続されている。サーバー4には、医療器材に対する作業に関係する各種情報が保存されている。ユーザー端末2は、アンテナ3を介してサーバー4に対して情報の送受信を行うことができる。
【0012】
本実施形態の医療器材作業支援システム1は、ユーザーが医療器材に対する作業工程、例えば洗浄や組み立て等の作業工程を遂行する際に、その作業手順を当該ユーザーに示して支援するものである。以下、本実施形態の医療器材作業支援システム1による作業支援について詳しく説明する。
【0013】
最初に、医療器材作業支援システム1が用いられる作業工程(以下、医療作業工程と呼ぶ)について説明する。医療作業工程は、医療器材を用いる手術工程に向けて実施される作業工程である。医療器材とは、例えば鉗子、剪刃、メス、メスホルダー、カニューレ、鑷子、開創器、スケール、ゾンデ、エレバ、ラスパ、吸引管、開胸器、閉胸器、持針器、注射器、金属ボール、膿盆、コップ、ピン、ミラー、やすり、開口器、クレンメ、ハンドピース、エレパトリューム、ノミ、鋭匙、剥離子、鏡、縫合針、スタンツェ、受水器、針、圧子、ブジー、通気管、骨片打ち込み棒、リウエル、ラジオペンチ、ハンマー、角度計、穿孔器、スポイト、金属綿棒、浣腸器、シリンジ等の器材である。但し、上記例は一部を列挙したものに過ぎず、医療器材は上記例に限定されるものではない。
図2に示すように、医療作業工程には、手術工程に向けた例えば5つの工程がある。詳しくは、医療作業工程は、例えば回収工程、洗浄工程、組立工程、減菌工程、および保管工程等を含む。回収工程は、手術後の医療器材を回収する工程である。洗浄工程は、回収された手術後の医療器材を分解した状態で洗浄装置により洗浄する工程である。組立工程は、洗浄後の医療器材を組み立てる工程である。減菌工程は、組立後の医療器材に対して減菌処理を行う工程である。保管工程は、減菌処理後の医療器材を手術に向けて保管する工程である。医療器材作業支援システム1は、上記医療作業工程を構成する5つの工程のうち少なくとも一つの工程で用いられる。
【0014】
医療器材作業支援システム1のユーザー端末2(
図1参照)は、
図3に示すように、記憶部10、表示制御部11および表示部12を備えている。記憶部10は、例えばハードディスクやメモリ等により実現可能である。表示制御部11は、公知のパーソナルコンピュータ、汎用コンピュータやタブレット端末などに設けられるCPU(中央演算処理装置)と、CPUが実行するプログラム等が格納されたROM(リードオンリメモリ)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)等により実現可能である。前記のROMには、医療器材に対する作業を支援するためのプログラムが記憶されている。前記プログラムは、例えばCD(コンパクトディスク)やDVD(デジタルバーサタイルディスク)等の記録媒体KBから読み込まれる。なお、前記プログラムを、インターネットを通じてダウンロードするようにしてもよい。表示部12は例えばタブレット端末のタッチパネル等である。なお、ユーザー端末2をパーソナルコンピュータとした場合には、表示部12をディスプレイとすることができる。
【0015】
記憶部10には、医療器材に対する作業を支援するための作業手順を示すイラストレーションの動画データおよびイラストレーションの静止画データが予め記憶されている。表示制御部11は、記憶部10に記憶された上記動画データ等を表示部12に表示させるように構成されている。以下、具体例を用いて説明する。
【0016】
まず、表示部12の表示例について説明する。なお、以下に説明する表示部12の表示例は一例であって、これに限定されるものではない。
図4に示すように、表示部12には、表示領域12a,12b,12c,12dが設けられている。表示領域12aには、所定の医療作業工程における所定の医療器材に対する作業の項目を示すボタン(以下、作業項目ボタンと称呼する)が表示される。表示領域12bには、医療器材に対する作業の内容が画像(すなわち、イラストレーション動画等)および文字によって表示される。表示領域12cには、品質重点作業として設定された作業項目が表示される際に確認ボタンが表示される。表示領域12dには、1つの作業項目に含まれる1または複数の工程のページ数が表示される。なお、表示領域12cに表示される確認ボタンは、上記複数の工程のうち何れかの工程に係る作業が完了したときにユーザーにより押下される。この確認ボタンが押下されないと、次の工程が表示されない、または作業完了を示す完了表示が実行されないように構成されている。これによって、ユーザーに念入りに作業および確認させることにより、品質重点作業として設定された作業の品質が担保されるようになっている。なお、ユーザーが上記確認ボタンを押下すると、その情報が履歴としてサーバー4(
図1参照)に残るように構成されている。これによって、上述の管理者が、ユーザーにより確実に品質重点管理(ゲート管理ともいう)が行われたことをサーバー4にアクセスして容易に確認することができる。
【0017】
医療器材の例として、
図5(a)に示す電動式鉗子22が知られている。電動式鉗子22は、操作子20と、当該操作子20がユーザーに操作されることにより連動する把持部21aを有する鉗子部21とを備えている。操作子20は、鉗子部21に対する遠隔位置から当該鉗子部21の図示しない制御部に指示を与えるリモートコントローラである。操作子20は、一対のダイアル20aを有している。ユーザーは、操作子20のダイアル20aを回すことによって鉗子部21の把持部21aを回動させることができる。
図5(a)は把持部21aが開いた状態を示し、
図5(b)は当該把持部21aが閉じた状態を示している。記憶部10(
図3参照)には、ユーザーにより操作子20のダイアル20aが回されている様子と、当該ダイアル20aの回動に連動して開閉する把持部21aの様子とを示す動画データが記憶されている。ユーザーにより表示領域12a(
図4参照)の所定の作業項目ボタンが押下されると、表示制御部11(
図3参照)は、表示部12の表示領域12bに
図5(a)および(b)の画像を含む動画を表示させる。ユーザーは、表示部12を視認することで、ダイアル20aを回す方向と把持部21aの開閉とをリンクさせて容易に理解することができる。
【0018】
表示部12には、次のような動画も表示される。医療器材の例として、
図6に示すハンドピース23が知られている。ハンドピース23は、第1管部23aと、当該第1管部23aと同軸状に設けられ第1管部23aよりも小径で直線状に延びる第2管部23bと、先端部が突出するように当該第2管部23bに挿通され位置決めされたピン23cとを備えている。記憶部10(
図3参照)には、ピン23cが第1管部23aおよび第2管部23bの順で挿通されていく様子を示す動画データが記憶されている。すなわち、前記動画データは、第2管部23bに対するピン23cの位置決めの流れを示す位置決め手順を表すデータである。ユーザーにより表示領域12a(
図4参照)の所定の作業項目ボタンが押下されると、表示制御部11(
図3参照)は、表示部12の表示領域12bに
図7(a),(b)および(c)の画像を含む動画を表示させる。ユーザーは、表示部12を視認することで、ピン23cの挿通方法および位置決め手順を容易に理解することができる。
【0019】
さらに、表示部12には、次のような動画も表示される。
図8は医療器材の部分的な細部を示す図である。
図8に示すように、医療器材24は、中心軸L1回りに回転する回転部材25を備えている。記憶部10(
図3参照)には、回転部材25が回転する様子を示す動画データが記憶されている。ユーザーにより表示領域12a(
図4参照)の所定の作業項目ボタンが押下されると、表示制御部11(
図3参照)は、表示部12の表示領域12bに
図8の画像を含む動画を表示させる。ユーザーは、表示部12を視認することで、回転部材25が回転することを容易に理解することができる。
【0020】
以上のように、本実施形態によれば、手術に向けて実施される作業工程における作業手順の内容が表示部12に表示される。これにより、ユーザーは、上記作業工程において遂行すべき作業内容を順に把握することができる。このように、本実施形態によれば、従来のように作業手順の途中の内容が省略されていたり、これに起因して作業で注意すべき点が分かり難くなるようなことがない。例えば、医療器材の第1パーツを第2パーツに挿入して位置決めするといった作業を遂行する場合、従来の作業説明書では第1パーツのどの部分を第2パーツのどの部分に挿入すべきかが把握し難かった。これに対して、本実施形態の医療器材作業支援システムによれば、例えば第1パーツの所定部分を第2パーツの所定箇所に挿入するための一連の作業手順、すなわち挿入前から挿入後に至る手順が表示される。このようなことから、ユーザーが作業内容の理解に長い時間を要するようなことがなくなる。これによって、ユーザーの作業負担を軽減することができる。
【0021】
また、本実施形態によれば、手術に向けて実施される作業工程における作業手順の内容が動画により表示される。これにより、作業手順の一連の流れを表し易くなる。これによって、ユーザーは作業内容を容易に理解できるようになる。
【0022】
また、本実施形態によれば、医療器材の位置決め手順の内容が動画により表示される。これにより、ユーザーは医療器材の位置決め手順を容易に理解できるようになる。上述した例でいえば、ユーザーは、ピン23cの通し方、すなわちピン23cを第1管部23aおよび第2管部23bの順で挿通する方法を容易に理解することが可能となる。
【0023】
また、本実施形態によれば、医療器材の作動手順の内容がイラストレーション動画により表示される。これにより、ユーザーは作動手順を容易に理解できるようになる。上述した例でいえば、ユーザーは、操作子20のダイアル20aを一方向に回すことで把持部21aを開くことができ、当該ダイアル20aを逆方向に回すことで当該把持部21aを閉じることができることを容易に理解することが可能となる。
【0024】
また、本実施形態によれば、動画をイラストレーションにより作成することによって、実際の撮影により動画を作成し難い場合、例えばピン23cを第1管部23aおよび第2管部23bの順で挿通するような場合であっても、作業手順を示す動画を容易に準備することができる。また、イラストレーションによれば、作業手順に大きく関係しないような医療器材の部分を省略して動画を作成することが可能になるので、ユーザーが表示に対してフォーカスを当て易くなり、作業手順を理解し易くなる。
【0025】
以上、本実施形態に係る医療器材作業支援システム1について述べたが、当該医療器材作業支援システム1は上記技術的特徴に限定されるものではなく、次のような変形を施して実施することが可能である。
【0026】
上記実施形態では、イラストレーションの動画を表示するようにしたが、これに限定されずに、実際の撮影から作成された動画を表示するようにしてもよい。また、イラストレーションの静止画を表示する代わりに、写真データを表示するようにしてもよい。
【0027】
イラストレーション静止画によって医療器材の断面図および拡大図を表示するようにしてもよい。例えば、医療器材の内部構成を写真で表すことは比較的困難であるので、このような場合に当該内部構成をイラストレーションの断面図により表示することができる。また、医療器材の内部構成を理解し易くするために、当該内部構成をイラストレーションの拡大図により表示するようにしてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、ユーザー端末2として、タブレット端末を採用する場合を説明したが、これに限定されるものではない。ユーザー端末2としては、パーソナルコンピュータやスマートフォン等も採用することができる。パーソナルコンピュータを採用する場合には、ユーザーはディスプレイの表示を視認しつつマウスの操作によって表示の切り替えを行うことができる。なお、スマートフォンを採用する場合の表示の切り替えについては、タブレット端末における上述の操作と基本的に同じである。
【0029】
さらに、上記実施形態では、医療作業工程が回収工程、洗浄工程、組立工程、減菌工程、および保管工程のうち少なくとも一つの工程を含む場合について説明したが、当該医療作業工程は上記5つの工程以外の工程を含んでもよい。すなわち、医療作業工程は、手術工程に向けて実施される工程であることを充足するものであればよい。
【符号の説明】
【0030】
1 医療器材作業支援システム
2 ユーザー端末
3 アンテナ
4 サーバー
10 記憶部
11 表示制御部
12 表示部
20 操作子
21 鉗子部(第3部材)
21a 把持部(作動部)
23 ハンドピース
23a 第1管部(第1部材)
23b 第2管部(第1部材)
23c ピン(第2部材)
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